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  • 特許-関節機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】関節機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20241119BHJP
   F16H 55/36 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B25J17/00 G
F16H55/36 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022082499
(22)【出願日】2022-05-19
(65)【公開番号】P2023170617
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】西井 一敏
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-043279(JP,A)
【文献】特許第6545768(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
F16H 55/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リンク及び第2リンクと、
前記第1リンク及び前記第2リンクを回転可能に連結する関節部と、
前記関節部に設けられたプーリーと、
前記第1リンク側の一端から、途中で前記プーリーに巻き付けられ、前記第2リンク側の他端まで延びる線状部材と、を備え、
前記関節部の伸展時と屈曲時における前記線状部材の経路長変化が小さくなるように、前記関節部の回転中心が前記プーリーの中心に対してオフセットしており
前記関節部の回転中心と前記線状部材の他端との距離をlとし、
前記プーリーの半径をrとし、
前記線状部材の一端及び他端を通る線と平行で前記プーリーの中心を通る線と、前記線状部材の一端と、の距離をaとし、
前記線状部材の一端及び他端を通る線に垂直で前記関節部の回転中心を通る線と、前記プーリーの中心と、の距離をbとした場合、
以下の式により求めた差分値Δが所定値以下となるように、前記関節部の回転中心が前記プーリーの中心に対してオフセットしている、
差分値Δ=
((l-a) +(r-b) 1/2 +πr/2-((l+b) +(r-a) 1/2
関節機構。
【請求項2】
請求項記載の関節機構であって、
前記差分値Δが0となるように、前記関節部の回転中心が前記プーリーの中心に対してオフセットしている、関節機構。
【請求項3】
請求項記載の関節機構であって、
a=bとなるように、前記関節部の回転中心が前記プーリーの中心に対してオフセットしている、関節機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットなどの関節機構に関する。
【背景技術】
【0002】
第1リンク及び第2リンクと、第1リンク及び第2リンクを回転可能に連結する関節部と、関節部に設けられたプーリーと、第1リンク側の一端から、途中でプーリーに巻き付けられ、第2リンク側の他端まで延びる線状部材と、を備える関節機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6545768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記関節機構においては、関節部の回転に伴い線状部材の経路長が変化する虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、関節部が回転しても線状部材の経路長変化を抑制できる関節機構を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
第1リンク及び第2リンクと、
前記第1リンク及び前記第2リンクを回転可能に連結する関節部と、
前記関節部に設けられたプーリーと、
前記第1リンク側の一端から、途中で前記プーリーに巻き付けられ、前記第2リンク側の他端まで延びる線状部材と、を備え、
前記関節部の伸展時と屈曲時における前記線状部材の経路長変化が小さくなるように、前記関節部の回転中心が前記プーリーの中心に対してオフセットしている、
関節機構、
である。
この一態様において、
前記関節部の回転中心と前記線状部材の他端との距離をlとし、
前記プーリーの半径をrとし、
前記線状部材の一端及び他端を通る線と平行で前記プーリーの中心を通る線と、前記線状部材の一端と、の距離をaとし、
前記線状部材の一端及び他端を通る線に垂直で前記関節部の回転中心を通る線と、前記プーリーの中心と、の距離をbとした場合、
以下の式により求めた差分値Δが所定値以下となるように、前記関節部の回転中心が前記プーリーの中心に対してオフセットしていてもよい。
差分値Δ=
((l-a)+(r-b)1/2+πr/2-((l+b)+(r-a)1/2
この一態様において、
前記差分値Δが0となるように、前記関節部の回転中心が前記プーリーの中心に対してオフセットしていてもよい。
この一態様において、
a=bとなるように、前記関節部の回転中心が前記プーリーの中心に対してオフセットしていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、関節部が回転しても線状部材の経路長変化を抑制できる関節機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る関節機構の概略的構成を示す簡略図である。
図2】肘関節部とプーリーとの関係を示す図である。
図3】肘関節部の伸展時と屈曲時におけるワイヤーの経路長変化を小さくする方法を説明するための図である。
図4】a=0の場合の、bとプーリーの半径rとの関係を示す図である。
図5】b=0の場合の、aとプーリーの半径rとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る関節機構の概略的構成を示す簡略図である。本実施形態に係る関節機構1は、例えば、ロボットアームの関節機構として構成されている。関節機構1は肩関節部2と、肘関節部3と、手首関節部4と、肩関節部2と肘関節部3とを連結する第1リンク5と、肘関節部3と手首関節部4とを連結する第2リンク6と、を有している。肘関節部3は第1リンク5及び第2リンク6を回転可能に連結する。肘関節部3は、関節部の一具体例である。
【0011】
図2は、肘関節部とプーリーとの関係を示す図である。肘関節部3には、プーリー31が設けられている。ワイヤー7は、第1リンク側の一端である肩関節部2から、途中でプーリー31の外周面に巻き付けられ、第2リンク側の他端である手首関節部4まで延びている。ワイヤー7は、線状部材の一具体例である。例えば、ワイヤー7の一端側が引張されることで、手首関節部4が回転駆動される。
【0012】
ところで、従来、図2に示す如く、肘関節部3の回転中心O1と、プーリー31の中心O2が一致している。このため、肘関節部3が回転し屈曲すると、Lの部分だけ、ワイヤー7の経路長が延び変化することとなる。なお、理論的には、プーリー31の径が0に近付ければ、上記ワイヤー7の経路長変化を抑制できるが、その場合、屈曲半径が小さくなるためワイヤー7の耐久性が低下する問題が生じる。
【0013】
これに対し、本実施形態に係る関節機構1においては、図3に示す如く、肘関節部3の伸展時と屈曲時におけるワイヤー7の経路長変化が小さくなるように、肘関節部3の回転中心O1がプーリー31の中心O2に対してオフセットしている。これにより、肘関節部3の伸展時と屈曲時におけるワイヤー7の経路長変化を小さくできる。すなわち、肘関節部3が回転してもワイヤー7の経路長変化を抑制できる。
【0014】
図3は、肘関節部の伸展時と屈曲時におけるワイヤーの経路長変化を小さくする方法を説明するための図である。なお、図3左側は、肘関節部3が伸展時の状態を示している。図3右側は、肘関節部3が屈曲時の状態を示している。なお、肘関節部3は、例えば、伸展状態である回転角=0degの状態から、屈曲状態である回転角=90degの状態まで動作するものとする。
【0015】
肘関節部3の伸展時と屈曲時におけるワイヤー7の経路長変化量である差分値Δは、図3に示す如く、Δ=L2-L1により算出できる。
【0016】
ここで、肘関節部3の回転中心O1とワイヤー7の第2リンク側の他端(手首関節部)4との距離をlとし、プーリー31の半径をrとする。ワイヤー7の第1リンク側の一端(肩関節部)2及び第2リンク側の他端4を通る線と平行でプーリー31の中心O2を通る線と、ワイヤー7の第1リンク側の一端2と、の距離をaとする。ワイヤー7の第1リンク側の一端2及び第2リンク側の他端4を通る線に垂直で肘関節部3の回転中心O1を通る線と、プーリー31の中心O2と、の距離をbとする。
【0017】
上記のようにパラメータを設定すると、幾何学的に以下の式が導出できる。
L1=((l+b)+(r-a)1/2
L2=((l-a)+(r-b)1/2+πr/2
【0018】
以上から、以下の差分値Δを求める式が導出できる。
差分値Δ=L2-L1
((l-a)+(r-b)1/2+πr/2-((l+b)+(r-a)1/2
【0019】
肘関節部3の伸展時と屈曲時におけるワイヤー7の経路長変化量である差分値Δを所定値以下の小さな値となるように、肘関節部3の回転中心O1をプーリー31の中心O2に対してオフセットさせるのが好ましい。これにより、肘関節部3が回転してもワイヤー7の経路長変化を所定値以下の小さな値に抑制できる。なお、例えば、ワイヤー7の経路長変化量として問題がない値が実験的に求められ、上記所定値として設定される。
【0020】
肘関節部3の伸展時と屈曲時におけるワイヤー7の経路長変化量である差分値Δを0にするのが最も好ましい。これにより、肘関節部3が回転してもワイヤー7の経路長変化を無くすことができる。
【0021】
また、図4に示す如く、a=0としてもよい。この場合、bは、プーリー31の半径rよりも大きくなり、肘関節部3の回転中心O1は、プーリー31の外側に位置する。
【0022】
同様に、図5に示す如く、b=0としてもよい。この場合、aは、プーリーの半径rよりも大きくなり、肘関節部3の回転中心O1は、プーリー31の外側に位置する。
【0023】
なお、ワイヤー7がプーリー31に巻き付く距離が長くなるほど、ワイヤー7の摺動抵抗が増加する。したがって、a=bとなるように、肘関節部3の回転中心O1をプーリー31の中心O2に対してオフセットさせるのが好ましい。これにより、ワイヤー7の摺動抵抗を低減できる。
【0024】
以上、本実施形態に係る関節機構1において、肘関節部3の伸展時と屈曲時におけるワイヤー7の経路長変化が小さくなるように、肘関節部3の回転中心O1がプーリー31の中心O2に対してオフセットしている。これにより、肘関節部3の伸展時と屈曲時におけるワイヤー7の経路長変化を小さくできる。すなわち、肘関節部3が回転してもワイヤー7の経路長変化を抑制できる。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0026】
上記実施形態では、ロボットアームの関節機構1に適用されているが、これに限定されない。例えば、ロボットの脚部の関節機構に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 関節機構、2 肩関節部、3 肘関節部、4 手首関節部、5 第1リンク、6 第2リンク、7 ワイヤー、31 プーリー
図1
図2
図3
図4
図5