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  • 特許-複合粒子、正極および全固体電池 図1
  • 特許-複合粒子、正極および全固体電池 図2
  • 特許-複合粒子、正極および全固体電池 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】複合粒子、正極および全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241119BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241119BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241119BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241119BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0562
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022113131
(22)【出願日】2022-07-14
(65)【公開番号】P2024011259
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 勝
(72)【発明者】
【氏名】三木 秀教
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/099201(WO,A1)
【文献】特開2016-115654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質粒子と、
コーティング膜と、
を含む複合粒子であって、
前記コーティング膜は、前記正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
前記コーティング膜は、フッ素リンおよびガラスネットワーク形成元素み、
前記ガラスネットワーク形成元素は、ホウ素であり、
下記式(1):
/(C +C )≦0.2 (1)
の関係を満たし、
上記式(1)中、
、C 、C は、X線光電子分光法により測定される元素濃度を示し、
は、フッ素の元素濃度を示し、
は、リンの元素濃度を示し、
は、前記ガラスネットワーク形成元素の元素濃度を示す、複合粒子。
【請求項2】
前記コーティング膜は、金属元素をさらに含み、
前記金属元素は、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複合粒子と、硫化物固体電解質と、を含む、正極。
【請求項4】
請求項に記載の正極を含む、全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合粒子、正極、全固体電池および複合粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2003-338321号公報)は、正極活物質の表面に、リチウム(Li)を含む無機固体電解質を被覆した高電圧全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-338321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極活物質粒子の表面にコーティング膜を形成することが提案されている。例えば、硫化物系全固体電池においては、硫化物固体電解質と正極活物質粒子との直接接触を、コーティング膜が阻害することにより、初期抵抗の低減が期待される。ただし、高電圧下における耐久試験後の抵抗増加率に改善の余地がある。
【0005】
本開示の目的は、抵抗増加率の低減にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0007】
〔1〕 正極活物質粒子と、
コーティング膜と、
を含む複合粒子であって、
前記コーティング膜は、前記正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
前記コーティング膜は、フッ素(F)と、リン(P)およびガラスネットワーク形成元素からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む、複合粒子。
【0008】
上記〔1〕の複合粒子によれば、抵抗増加率が抑制されたコーティング膜(特に、高電圧下における耐久性に優れるコーティング膜)を提供することができる。
【0009】
本発明者らは、コーティング膜に添加する材料を検討した結果、Pおよびガラスネットワーク形成元素からなる群より選択される少なくとも1種を含むコーティング膜について、さらにFを含有することで、耐久試験後の抵抗増加率が低減することを見出した。
【0010】
〔2〕 前記ガラスネットワーク形成元素は、ホウ素(B)、珪素(Si)、窒素(N)、硫黄(S)、ゲルマニウム(Ge)、および水素(H)からなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕に記載の複合粒子。
【0011】
〔3〕 下記式(1):
(C +C ≦0.2 (1)
の関係を満たし、
上記式(1)中、
、C、Cは、X線光電子分光法により測定される元素濃度を示し、
は、フッ素の元素濃度を示し、
は、リンの元素濃度を示し、
は、前記ガラスネットワーク形成元素の元素濃度を示す、〔1〕または〔2〕に記載の複合粒子。
【0012】
〔4〕 前記コーティング膜は、金属元素をさらに含み、
前記金属元素は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)からなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の複合粒子。
【0013】
〔5〕 〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の複合粒子と、硫化物固体電解質と、を含む、正極。
【0014】
〔6〕 〔5〕に記載の正極を含む、全固体電池。
〔7〕 (a)コーティング液と正極活物質粒子とを混合することにより、混合物を準備すること、および
(b)前記混合物を乾燥することにより、複合粒子を製造すること、
を含み、
前記コーティング液は、溶質と溶媒とを含み、
前記溶質は、Fと、Pおよびガラスネットワーク形成元素からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む、複合粒子の製造方法。
【0015】
正極活物質粒子の表面に付着したコーティング液が乾燥することにより、コーティング膜が生成し得る。上記〔7〕に記載のコーティング液により、上記〔1〕に記載のコーティング膜が生成し得る。
【0016】
〔8〕 前記コーティング液は、金属元素をさらに含み、
前記金属元素は、Al、TiおよびZrからなる群より選択される少なくとも1種である、〔7〕に記載の複合粒子の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態における複合粒子を示す概念図である。
図2図2は、本実施形態における全固体電池を示す概念図である。
図3図3は、本実施形態における複合粒子の製造方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
【0019】
<用語の定義等>
「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0020】
「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0021】
単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
【0022】
各種方法に含まれる複数のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その実行順序が記載順序に限定されない。例えば、複数のステップが同時進行してもよい。例えば複数のステップが相前後してもよい。
【0023】
例えば「m~n%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0024】
化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0025】
「D50」は、体積基準の粒子径分布において、粒子径が小さい側からの頻度の累積が50%に到達する粒子径を示す。D50は、レーザ回折法により測定され得る。例えば、島津製作所社製のレーザー回折式粒子径分布測定装置「製品名 SALD-7500」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。
【0026】
「ガラスネットワーク形成元素」は、ガラス形成能を有する元素を示す。「ガラス形成能」は、対象元素が酸素(O)と結合することにより、ネットワーク構造を有する酸化物ガラスを形成し得ることを示す。
【0027】
《XPS測定》
(粒子表面の組成比)
上記式(1)中のC、C、Cは、次の手順で測定され得る。XPS装置が準備される。例えば、アルバック・ファイ社製のXPS装置「製品名 PHI X-tool」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。複合粒子からなる試料粉末がXPS装置にセットされる。224eVのパスエネルギーにより、ナロースキャン分析が実施される。測定データが解析ソフトフェアにより処理される。例えば、アルバック・ファイ社製の解析ソフトフェア「製品名 MulTiPak」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。F1sスペクトルのピーク面積(積分値)が、Fの元素濃度(C)に変換される。P2pスペクトルのピーク面積が、Pの元素濃度(C)に変換される。Zについては、その種類に応じて、適切なスペクトルが選択される。例えば、Bの場合、B1sスペクトルのピーク面積が、Bの元素濃度(C)に変換される。Cが、CおよびCの加算で除されることにより、粒子表面のFの組成比(C(C +C )が求まる。
【0028】
(被覆率)
被覆率もXPSにより測定される。上記の測定データが解析されることにより、C1s、O1s、F1s、P2p、B1s、M2p3等の各ピーク面積から、各元素の比率が求まる。
【0029】
例えば、下記式(2)により、被覆率が求まる。
θ=(F+P+Z)/(F+P+Z+M)×100 (2)
上記式(2)中、θは被覆率(%)を示す。F、P、Z、Mは、各元素の比率を示す。
【0030】
なお「M2p3」および上記式(2)中のMは、正極活物質粒子の構成元素であって、Liおよび酸素(O)以外の元素を示す。すなわち、正極活物質粒子は下記式(3)により表されてもよい。
【0031】
LiMO2 (3)
Mは、1種の元素からなっていてもよいし、複数の元素からなっていてもよい。Mは、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)およびアルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。Mが複数の元素を含む時、各元素の組成比の合計は1であってもよい。
【0032】
例えば、正極活物質粒子が「LiNi1/3Co1/3Mn1/32」である時、上記式()は、下記式(3’)に変形され得る。
【0033】
θ=(F+P+Z)/(F+P+Z+Ni+Co+Mn)×100 (3’)
上記式(3’)中のNiは、Ni2p3のピーク面積から求まるニッケルの元素比率を示す。Coは、Co2p3のピーク面積から求まるコバルトの元素比率を示す。Mnは、Mn2p3のピーク面積から求まるマンガンの元素比率を示す。
【0034】
《膜厚測定》
膜厚(コーティング膜の厚さ)は、次の手順で測定され得る。複合粒子が樹脂材料に包埋されることにより、試料が準備される。イオンミリング装置により、試料に断面出し加工が施される。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のイオンミリング装置「製品名 Arblade(登録商標)5000」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。試料の断面がSEM(Scanning Electron Microscope)により観察される。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製のSEM装置「製品名 SU8030」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。10個の複合粒子について、それぞれ、20個の視野で膜厚が測定される。合計で200箇所の膜厚の算術平均が、膜厚とみなされる。
【0035】
<複合粒子>
図1は、本実施形態における複合粒子を示す概念図である。複合粒子5は、例えば「被覆正極活物質」等と称され得る。複合粒子5は、正極活物質粒子1とコーティング膜2とを含む。複合粒子5は、例えば凝集体を形成していてもよい。すなわち1個の複合粒子5が、2個以上の正極活物質粒子1を含んでいてもよい。複合粒子5は、例えば、1~50μmのD50を有していてもよいし、1~20μmのD50を有していてもよいし、5~15μmのD50を有していてもよい。
【0036】
《コーティング膜》
コーティング膜2は、複合粒子5のシェルである。コーティング膜2は、正極活物質粒子1の表面の少なくとも一部を被覆している。
【0037】
コーティング膜2は、Fと、Pおよびガラスネットワーク形成元素からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む。ガラスネットワーク形成元素は、例えば、B、Si、N、S、Ge、およびHからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。コーティング膜2がFと、Pおよびガラスネットワーク形成元素からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことにより、抵抗増加率が低減され得る。
【0038】
被覆率は、例えば80%以上であってもよい。被覆率が80%以上であることにより、電池抵抗の低減が期待される。被覆率は、例えば、85%以上であってもよいし、90%以上であってもよい。被覆率は、例えば100%であってもよいし、99%以下であってもよいし、95%以下であってもよい。被覆率は、例えば、80~100%であってもよい。
【0039】
コーティング膜2は、例えば、5~100nmの厚さを有していてもよいし、5~50nmの厚さを有していてもよいし、10~30nmの厚さを有していてもよいし、20~30nmの厚さを有していてもよい。
【0040】
ガラスネットワーク形成元素と、Oとが、酸化物ガラスを形成していてもよい。すなわちコーティング膜2は、ネットワーク構造を有する酸化物ガラスを含んでいてもよい。酸化物ガラスは、例えば、リン酸骨格およびホウ酸骨格等を含んでいてもよい。すなわち、コーティング膜2は、例えば、リン酸骨格およびホウ酸骨格からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば、複合粒子5のTOF-SIMS(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)において、PO2 -、PO3 -等のフラグメントが検出される時、コーティング膜2がリン酸骨格を含むとみなされる。例えば、複合粒子5のTOF-SIMSにおいて、BO2 -、BO3 -等のフラグメントが検出される時、コーティング膜2がホウ酸骨格を含むとみなされる。
【0041】
複合粒子5は、例えば、下記式(1)の関係を満たしていてもよい。
(C +C ≦0.2 (1)
、C、Cは、XPSにより測定される元素比率を示す。Cは、Fの元素比率を示す。Cは、Pの元素比率を示す。Cは、ガラスネットワーク形成元素の元素比率を示す。コーティング膜2が複数種のガラスネットワーク形成元素を含む場合、Cは、各ガラスネットワーク形成元素の元素比率の合計を示す。C(C +C が0.2以下である場合、抵抗増加率の低減が期待される。C(C +C は、例えば、0.15以下であってもよいし、0.1以下であってもよい。
【0042】
また、複合粒子5は、例えば、下記式(4)の関係を満たしていてもよい。
/C≦0.2 (4)
/Cが0.2以下である場合、抵抗増加率の低減が期待される。C/Cは、例えば、0.15以下であってもよいし、0.1以下であってもよい。
【0043】
コーティング膜2は、例えば、Li、炭素(C)等を含んでいてもよい。また、コーティング膜2は、Al、TiおよびZrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素をさらに含んでいてもよい。
【0044】
複合粒子5は、例えば、下記式(5)の関係を満たしていてもよい。
(C +C ≦0.1 (5)
は、XPSにより測定されるAl、TiおよびZrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の元素比率を示す。コーティング膜2が複数種の金属元素を含む場合、Cは、各金属元素の元素比率の合計を示す。C(C +C が0.1以下である時、抵抗増加率の低減がさらに期待される。C(C +C は、例えば、0.05以下であってもよいし、0.03以下であってもよい。
【0045】
上記式(5)中のCは、前述の測定方法で測定され得る。Yについては、その種類に応じて、適切なスペクトルが選択される。例えば、Alの場合、Al2pスペクトルのピーク面積が、Alの元素濃度(C)に変換される。Cが、CおよびCの加算で除されることにより、粒子表面のAl、TiおよびZrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の組成比(C(C +C )が求まる。
【0046】
コーティング膜2が、Al、TiおよびZrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素をさらに含む場合、例えば、下記式(6)により、被覆率が求まる。被覆率は、前述の測定方法で測定され得る。
【0047】
θ=(F+P+Z+Y)/(F+P+Z+Y+M)×100 (6)
《正極活物質粒子》
正極活物質粒子1は、複合粒子5のコアである。正極活物質粒子1は、二次粒子(一次粒子の集合体)であってもよい。正極活物質粒子1(二次粒子)は、例えば、1~50μmのD50を有していてもよいし、1~20μmのD50を有していてもよいし、3~15μmのD50を有していてもよい。一次粒子は、例えば、0.1~3μmの最大フェレ径を有していてもよい。
【0048】
正極活物質粒子1は任意の成分を含み得る。正極活物質粒子は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.5Co0.2Mn0.32、LiNi0.8Co0.1Mn0.12等を含んでいてもよい。
【0049】
<全固体電池>
図2は、本実施形態における全固体電池を示す概念図である。全固体電池100は、例えば、外装体(不図示)を含んでいてもよい。外装体は、例えば、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。外装体が、発電要素50を収納していてもよい。発電要素50は、正極10とセパレータ層30と負極20とを含む。すなわち全固体電池100は、正極10とセパレータ層30と負極20とを含む。
【0050】
《正極》
正極10は層状である。正極10は、例えば、正極活物質層と、正極集電体とを含んでいてもよい。例えば、正極集電体の表面に正極合材が塗着されることにより、正極活物質層が形成されていてもよい。正極集電体は、例えば、Al箔等を含んでいてもよい。正極集電体は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
【0051】
正極活物質層は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層は、セパレータ層30に密着している。正極活物質層は正極合材を含む。正極合材は、複合粒子と硫化物固体電解質とを含む。すなわち正極10は、複合粒子と硫化物固体電解質とを含む。複合粒子の詳細は前述のとおりである。
【0052】
硫化物固体電解質は、正極活物質層内にイオン伝導パスを形成し得る。硫化物固体電解質の配合量は、100体積部の複合粒子(正極活物質)に対して、例えば、1~200体積部であってもよいし、50~150体積部であってもよいし、50~100体積部であってもよい。硫化物固体電解質は、Sを含む。硫化物固体電解質は、例えば、Li、P、およびSを含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えば、O、Si等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばハロゲン等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばヨウ素(I)、臭素(Br)等をさらに含んでいてもよい。硫化物固体電解質は、例えばガラスセラミックスであってもよいし、アルジロダイトであってもよい。硫化物固体電解質は、例えば、LiI-LiBr-Li3PS4、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P25、LiI-Li2O-Li2S-P25、LiI-Li2S-P25、LiI-Li3PO4-P25、Li2S-P25、およびLi3PS4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0053】
例えば、「LiI-LiBr-Li3PS4」は、LiIとLiBrとLi3PS4とが任意のモル比で混合されることにより生成された硫化物固体電解質を示す。例えば、メカノケミカル法により硫化物固体電解質が生成されてもよい。「Li2S-P25」はLi3PS4を含む。Li3PS4は、例えばLi2SとP25とが「Li2S/P25=75/25(モル比)」で混合されることにより生成され得る。
【0054】
正極活物質層は、例えば導電材をさらに含んでいてもよい。導電材は、正極活物質層内に電子伝導パスを形成し得る。導電材の配合量は、100質量部の複合粒子(正極活物質)に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0055】
正極活物質層は、例えばバインダをさらに含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の複合粒子(正極活物質)に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0056】
《負極》
負極20は層状である。負極20は、例えば、負極活物質層と、負極集電体とを含んでいてもよい。例えば、負極集電体の表面に負極合材が塗着されることにより、負極活物質層が形成されていてもよい。負極集電体は、例えば、銅(Cu)箔、Ni箔等を含んでいてもよい。負極集電体は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
【0057】
負極活物質層は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層は、セパレータ層30に密着している。負極活物質層は負極合材を含む。負極合材は、負極活物質粒子と硫化物固体電解質とを含む。負極合材は、導電材およびバインダをさらに含んでいてもよい。負極合材と正極合材との間で、硫化物固体電解質は同種であってもよいし、異種であってもよい。負極活物質粒子は、任意の成分を含み得る。負極活物質粒子は、例えば、黒鉛、Si、酸化珪素〔SiOx(0<x<2)〕、およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0058】
《セパレータ層》
セパレータ層30は、正極10と負極20との間に介在している。セパレータ層30は、正極10を負極20から分離している。セパレータ層30は、硫化物固体電解質を含む。セパレータ層30はバインダをさらに含んでいてもよい。セパレータ層30と正極合材との間で、硫化物固体電解質は同種であってもよいし、異種であってもよい。セパレータ層30と負極合材との間で、硫化物固体電解質は同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0059】
<複合粒子の製造方法>
図3は、本実施形態における複合粒子の製造方法の概略フローチャートである。以下「本実施形態における複合粒子の製造方法」が「本製造方法」と略記され得る。本製造方法は、「(a)混合物の準備」および「(b)複合粒子の製造」を含む。本製造方法は、例えば「(c)熱処理」等をさらに含んでいてもよい。
【0060】
《(a)混合物の準備》
本製造方法は、コーティング液と正極活物質粒子とを混合することにより、混合物を準備することを含む。正極活物質粒子の詳細は前述のとおりである。混合物は、例えば、懸濁液であってもよいし、湿粉であってもよい。例えば、コーティング液中に正極活物質粒子(粉末)が分散されることにより、懸濁液が形成されてもよい。例えば、粉末中に、コーティング液が噴霧されることにより、湿粉が形成されてもよい。本製造方法においては、任意の混合装置、造粒装置等が使用され得る。
【0061】
コーティング液は、溶質と溶媒とを含む。溶質は、コーティング膜の原料として、Fと、Pおよびガラスネットワーク形成元素からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む。コーティング液は、例えば、懸濁物(不溶解成分)、沈殿物等をさらに含んでいてもよい。
【0062】
溶質量は、100質量部の溶媒に対して、例えば、0.1~20質量部であってもよいし、1~15質量部であってもよいし、5~10質量部であってもよい。溶媒は、溶質が溶解する限り、任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、水、アルコール等を含んでいてもよい。溶媒は、例えば、イオン交換水等を含んでいてもよい。
【0063】
ガラスネットワーク形成元素の詳細は、前述の通りである。
溶質は、例えば、ガラスネットワーク形成元素のオキソ酸、およびガラスネットワーク形成元素の酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。溶質は、例えば、リン酸、ホウ酸、ケイ酸、硝酸、硫酸、およびゲルマニウム酸からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。溶質は、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、オルトホウ酸、メタホウ酸等を含んでいてもよい。
【0064】
上記のコーティング液において、例えば、下記式(7)の関係が満たされていてもよい。
【0065】
(n +n ≦0.2 (7)
上記式(7)中、nは、Fのモル濃度を示し、nは、Pのモル濃度を示し、nは、ガラスネットワーク形成元素のモル濃度を示す。コーティング液が複数種のガラスネットワーク形成元素を含む場合、nは、各ガラスネットワーク形成元素のモル濃度の合計を示す。該モル比が0.2以下である場合、抵抗増加率の低減が期待される。n(n +n は、例えば、0.15以下であってもよいし、0.1以下であってもよい。
【0066】
また、上記のコーティング液において、例えば、下記式(8)の関係が満たされていてもよい。
【0067】
/n≦0.2 (8)
該モル比が0.2以下である場合、抵抗増加率の低減が期待される。n/nは、例えば、0.15以下であってもよいし、0.1以下であってもよい。
【0068】
溶質は、Al、TiおよびZrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素をさらに含んでいてもよい。該コーティング液において、例えば、下記式(9)の関係が満たされていてもよい。
【0069】
(n +n ≦0.1 (9)
は、Al、TiおよびZrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素のモル濃度を示す。コーティング液が複数種の金属元素を含む場合、nは、各金属元素のモル濃度の合計を示す。該モル比が0.1以下である場合、抵抗増加率の低減がさらに期待される。n(n +n は、例えば、0.05以下であってもよいし、0.03以下であってもよい。
【0070】
溶質は、リチウム化合物をさらに含んでいてもよい。溶質は、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム等を含んでいてもよい。
【0071】
《(b)複合粒子の製造》
本製造方法は、上記の混合物を乾燥することにより、複合粒子を製造することを含む。正極活物質粒子の表面に付着したコーティング液が乾燥することにより、コーティング膜が生成される。本製造方法においては、任意の乾燥方法が使用され得る。
【0072】
例えば、スプレードライ法により、複合粒子が形成されてもよい。すなわち、懸濁液がノズルから噴霧されることにより、液滴が形成される。液滴は、正極活物質粒子とコーティング液とを含む。例えば、熱風により、液滴が乾燥されることにより、複合粒子が形成され得る。スプレードライ法の使用により、例えば、被覆率の向上が期待される。
【0073】
スプレードライ用の懸濁液の固形分率は、体積分率で、例えば、1~50%であってもよいし、10~30%であってもよい。ノズル径は、例えば、0.1~10mmであってもよいし、0.1~1mmであってもよい。熱風温度は、例えば、100~200℃であってもよい。
【0074】
例えば、転動流動層コーティング装置により、複合粒子が製造されてもよい。転動流動層コーティング装置においては、「(a)混合物の準備」および「(b)複合粒子の製造」が同時に実施され得る。
【0075】
《(c)熱処理》
本製造方法は、複合粒子に熱処理を施すことを含んでいてもよい。熱処理によりコーティング膜が定着し得る。熱処理は「焼成」とも称され得る。本製造方法においては、任意の熱処理装置が使用され得る。熱処理温度は、例えば、150~300℃であってもよい。熱処理時間は、例えば、1~10時間であってもよい。例えば、空気中で熱処理が実施されてもよいし、不活性(窒素)雰囲気下で熱処理が実施されてもよい。
【実施例
【0076】
以下、実施例を用いて本実施形態を説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0077】
《No.1》
(正極)
870.4質量部の過酸化水素水(質量濃度 30%)が容器に投入された。次に、987.4質量部のイオン交換水と、44.2質量部のニオブ酸〔Nb25・3H2O〕とが容器に投入された。次に、87.9質量部のアンモニア水(質量濃度 28%)が容器に投入された。容器の内容物が十分攪拌されることにより、コーティング液が形成された。コーティング液は、Nbのペルオキソ錯体を含むと考えられる。
【0078】
正極活物質粒子として、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2が準備された。50質量部の正極活物質粒子の粉末が、53.7質量部のコーティング液に分散されることにより、懸濁液が準備された。BUCHI社製のスプレードライヤー「製品名 Mini Spray Dryer B-290」が準備された。懸濁液がスプレードライヤーに供給されることにより、複合粒子の粉末が製造された。スプレードライヤーの給気温度は200℃であり、給気風量は0.45m3/minであった。複合粒子が空気中で熱処理された。熱処理温度は200℃であった。熱処理時間は5時間であった。なお、No.1の複合粒子において、コーティング膜はLiNbOを含むと考えられる。前述の手順により、被覆率が測定された。結果は、下記表1に示される。なお、後述するNo.2~6においても同様に被覆率が測定された。
【0079】
下記材料が準備された。
硫化物固体電解質:10LiI-15LiBr-75Li3PS4
導電材:VGCF
バインダ:SBR
分散媒:ヘプタン
正極集電体:Al箔
複合粒子と、硫化物固体電解質と、導電材と、バインダと、分散媒とが混合されることにより、正極スラリーが準備された。複合粒子と硫化物固体電解質との混合比は「複合粒子/硫化物固体電解質=6/4(体積比)」であった。導電材の配合量は、100質量部の複合粒子に対して3質量部であった。バインダの配合量は、100質量部の複合粒子に対して3質量部であった。超音波ホモジナイザ―(製品名「UH-50」、SMT社製)により、正極スラリーが十分攪拌された。正極スラリーが正極集電体の表面に塗工されることにより、塗膜が形成された。ホットプレートにより、塗膜が100℃で30分間乾燥された。これにより正極原反が製造された。正極原反から、円盤状の正極が切り出された。正極の面積は1cm2であった。
【0080】
(負極)
下記材料が準備された。
【0081】
負極活物質粒子:黒鉛
硫化物固体電解質:10LiI-15LiBr-75Li3PS4
導電材:VGCF
バインダ:SBR
分散媒:ヘプタン
負極集電体:Cu箔
攪拌装置(フィルミックス(登録商標)「形式 30-L型」、プライミクス社製)により、硫化物固体電解質と、導電材と、バインダと、分散媒とが混合されることにより、スラリーが準備された。攪拌速度(回転数)は2000rpmであり、攪拌時間は30分であった。30分攪拌後、負極活物質粒子がスラリーに追加され、スラリーがさらに攪拌された。攪拌速度は15000rpmであり、攪拌時間は60分であった。
【0082】
負極活物質粒子と硫化物固体電解質との混合比は「負極活物質粒子/硫化物固体電解質=6/4(体積比)」であった。導電材の配合量は、100質量部の負極活物質粒子に対して1質量部であった。バインダの配合量は、100質量部の負極活物質粒子に対して2質量部であった。
【0083】
スラリーが負極集電体の表面に塗工されることにより、塗膜が形成された。ホットプレートにより、塗膜が100℃で30分間乾燥された。これにより負極原反が製造された。負極原反から、円盤状の負極が切り出された。負極の面積は1cm2であった。
【0084】
(セパレータ層)
下記材料が準備された。
【0085】
硫化物固体電解質:LiI-Li2S-P25(ガラスセラミックス型、D50=2.5μm)
プレス加工用の金型として、内径断面積が1cm2の筒状のセラミックスが準備された。該硫化物固体電解質64.8mgを金型に入れ、平滑にした後、1ton/cm2の圧力によりプレスをして押し固めることで、セパレータ層を得た。
【0086】
(全固体電池)
上記金型内において、セパレータ層の片面に正極が、もう一方の面に負極が、配置された。6ton/cm2の圧力により1分間、負極、セパレータ層および正極がまとめてプレスされた。正極および負極にステンレス棒を入れ、0.5ton/cm2で拘束することで、発電要素が形成された。筐体として、アルミラミネートフィルム製のパウチが準備された。発電要素が筐体に封入された。これにより、全固体電池が形成された。
【0087】
《No.2》
166質量部のイオン交換水に、10.8質量部のメタリン酸(富士フイルム和光純薬社製)が溶解されることにより、リン酸溶液が形成された。さらにPに対するBのモル比が1.0となるように、リン酸溶液にホウ酸(ナカライテスク社製)が溶解されることにより、コーティング液が準備された。これらを除いては、No.1と同様に、複合粒子、正極および全固体電池が製造された。なお、No.2の複合粒子において、コーティング膜は、例えば、BPOなどのBxPOy(x、yは任意の数である。)を含むと考えられ、後述するNo.3~6においても同様である。
【0088】
《No.3》
No.2と同じコーティング液が準備されたこと、複合粒子に対する熱処理の条件を、窒素雰囲気下、400℃で行ったことを除いては、No.1と同様に、複合粒子、正極および全固体電池が製造された。
【0089】
《No.4》
No.2のコーティング液に、さらにPおよびガラスネットワーク形成元素であるBに対するFのモル比が0.1となるように、フッ化アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)が溶解されることにより、コーティング液が準備された。これ以降は、No.1と同様に、複合粒子、正極および全固体電池が製造された。また、前述の手順により、粒子表面の組成比(C(C +C )(Z:B)が測定された。結果は、下記表1に示される。なお、後述するNo.5~6においても同様に粒子表面の組成比(C(C +C )が測定された。
【0090】
《No.5》
No.4と同じコーティング液が準備されたこと、複合粒子に対する熱処理の条件を、窒素雰囲気下、400℃で行ったことを除いては、No.1と同様に、複合粒子、正極および全固体電池が製造された。
【0091】
《No.6》
No.4のコーティング液に、さらにPおよびBに対する金属元素であるAlのモル比が0.05となるように、硝酸アルミニウム九水和物(富士フイルム和光純薬社製)が溶解されることにより、コーティング液が準備された。これ以降は、No.1と同様に、複合粒子、正極および全固体電池が製造された。また、前述の手順により、粒子表面の組成比(C(C +C )(Y:Al、Z:B)が測定された。結果は、下記表1に示される。
【0092】
<評価>
全固体電池(以下「セル」とも記される。)の初期容量が確認された。充放電条件は下記のとおりである。
【0093】
充電:定電流-定電圧方式、レート=1/3C
放電:定電流方式、レート=1/3C
初期容量の確認後、セルのSOCが40%に調整された。2Cのレートにより、セルが5秒間放電された。5秒経過時の電圧降下量から初期抵抗が求められた。結果は、下記表1に示される。
【0094】
初期抵抗の測定後、セルが60℃の恒温槽内で14日間保存された。保存中、正極電位が4.5Vを維持するように、セルにトリクル充電が施された。14日経過後、初期抵抗と同じ条件により耐久後抵抗が測定された。耐久後抵抗が初期抵抗で除されることにより抵抗増加比が求められた。結果は、下記表1に示される。
【0095】
【表1】
【0096】
<結果>
コーティング膜が、Fと、Pおよびガラスネットワーク形成元素からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むNo.4~6において、抵抗増加率が低減している。
【0097】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0098】
1 正極活物質粒子、2 コーティング膜、5 複合粒子、10 正極、20 負極、30 セパレータ層、50 発電要素、100 全固体電池。
図1
図2
図3