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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20241119BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/153 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/181 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/375 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/547 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/559 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/56 20210101ALI20241119BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M10/052
H01M10/0587
H01M50/109
H01M50/133
H01M50/153
H01M50/169
H01M50/181
H01M50/184 E
H01M50/188
H01M50/193
H01M50/375
H01M50/545
H01M50/547 101
H01M50/559
H01M50/56
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022550385
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2021027129
(87)【国際公開番号】W WO2022059337
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020156154
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 盛朗
(72)【発明者】
【氏名】渡部 利恵
(72)【発明者】
【氏名】本多 一輝
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-157415(JP,A)
【文献】特開2012-038522(JP,A)
【文献】特開2018-190591(JP,A)
【文献】特開2005-183360(JP,A)
【文献】特開2016-162755(JP,A)
【文献】国際公開第2012/011470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
50/30-50/392
50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1底部および第2底部を含む扁平かつ柱状の外装部材と、
前記第1底部により支持され、前記第1底部から絶縁された電極端子と、
前記外装部材の内部に収納され、第1電極および第2電極を含む電池素子と
前記第1底部と前記電極端子との間に配置された絶縁部材と
を備え、
前記第1底部は、前記電極端子の周囲に窪みを有し、
前記第1底部は、貫通孔を有し、
前記電極端子は、
前記貫通孔に挿入された第1端子部と、
前記外装部材の内部に配置され、前記第1端子部の外径よりも大きい外径を有する第2端子部と、
前記外装部材の外部に配置され、前記第1端子部の外径よりも大きい外径を有する第3端子部と
を含み、
前記絶縁部材は、
前記第1端子部および前記第2端子部のそれぞれと前記第1底部との間に配置され、第1高分子化合物を含む第1絶縁部と、
前記第3端子部と前記第1底部との間に配置され、前記第1高分子化合物の融点よりも低い融点を有する第2高分子化合物を含む第2絶縁部と
を含む、
二次電池。
【請求項2】
前記窪みは、前記電極端子の周囲を連続的または断続的に囲んでいる、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1底部は、複数の前記窪みを有する、
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1底部の厚さは、前記第2底部の厚さよりも小さい、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記外装部材は、さらに、前記第1底部および前記第2底部のそれぞれに連結された側壁部を含み、
前記第1底部の厚さは、前記側壁部の厚さよりも小さい、
請求項4記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1底部は、前記外装部材の内部に向かって前記第1底部が部分的に突出するように折れ曲げられることにより形成された折り曲げ部を有する、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電極端子のうちの少なくとも一部は、前記折り曲げ部の内部に配置されている、
請求項6記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1高分子化合物は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体およびポリフェニレンサルファイドのうちの少なくとも一方を含み、
前記第2高分子化合物は、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンのうちの少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記外装部材は、さらに、前記第1底部および前記第2底部のそれぞれに連結された側壁部を含み、
前記外装部材は、
前記第1底部である蓋部と、
前記電池素子を内部に収納し、前記第2底部および前記側壁部である収納部と
を含み、
前記蓋部は、前記収納部に溶接されている、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1電極は、前記電極端子に電気的に接続されており、
前記第2電極は、前記外装部材に電気的に接続されている、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
リチウムイオン二次電池である、
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能である電源として二次電池の開発が進められている。この二次電池は、外装部材の内部に収納された正極、負極および電解質を備えており、その二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている。
【0003】
具体的には、封口ケースおよびキャップケースがガスケットを介して互いに加締められているコイン型の二次電池において、高温時の内圧上昇に起因する二次電池の破裂を防止するために、そのキャップケースに1個以上の切欠部が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。この二次電池では、高温時において内圧が上昇すると、ガスケットの軟化変形に起因して切欠部の周辺においてガスケットが緩むため、その内圧が放出される。
【0004】
また、セルカップおよびセルカバーが互いに加締められているボタン型の二次電池において、高温時の内圧上昇に起因する二次電池の破裂を防止するために、セルカップにガス抜け穴が設けられている(例えば、特許文献2参照。)。この二次電池では、高温時において内圧が上昇すると、セルカバーがスライドすることに起因してガス抜け穴が開放されるため、その内圧が放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-045379号公報
【文献】米国特許第9178251号明細書
【発明の概要】
【0006】
二次電池の諸特性を改善するために様々な検討がなされているが、その二次電池の安全性は未だ十分でないため、改善の余地がある。
【0007】
よって、優れた安全性を得ることが可能である二次電池が望まれている。
【0008】
本技術の一実施形態の二次電池は、互いに対向する第1底部および第2底部を含む扁平かつ柱状の外装部材と、その第1底部により支持され、その第1底部から絶縁された電極端子と、その外装部材の内部に収納され、第1電極および第2電極を含む電池素子とを備え、その第1底部が電極端子の周囲に窪みを有するものである。
【0009】
本技術の一実施形態の二次電池によれば、扁平かつ柱状の外装部材のうちの第1底部により電極端子が支持されており、その電極端子が第1底部から絶縁されており、その第1底部が電極端子の周囲に窪みを有しているので、優れた安全性を得ることができる。
【0010】
なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本技術の一実施形態における二次電池の構成を表す斜視図である。
図2図1に示した二次電池の構成を表す断面図である。
図3図2に示した二次電池の構成を表す平面図である。
図4図2に示した電池素子の構成を表す断面図である。
図5】二次電池の動作を説明するための断面図である。
図6】二次電池の製造工程に用いられる外装缶の構成を表す斜視図である。
図7】変形例2の二次電池の構成を表す平面図である。
図8】変形例3の二次電池の構成を表す平面図である。
図9】変形例4の二次電池の構成を表す平面図である。
図10】変形例5の二次電池の構成を表す断面図である。
図11】変形例5の二次電池の動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.二次電池
1-1.構成
1-2.動作
1-3.製造方法
1-4.作用および効果
2.変形例
【0013】
<1.二次電池>
まず、本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
【0014】
ここで説明する二次電池は、いわゆるコイン型およびボタン型などと呼称される二次電池であり、扁平かつ柱状の立体的形状を有している。この二次電池は、後述するように、互いに対向する一対の底部と、その一対の底部のそれぞれに連結された側壁部とを含んでおり、その二次電池では、外径よりも高さが小さくなっている。この「外径」とは、一対の底部のそれぞれの直径(最大直径)であると共に、「高さ」とは、一方の底部から他方の底部までの距離(最大距離)である。
【0015】
二次電池の充放電原理は、特に限定されないが、以下では、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる場合に関して説明する。この二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えており、その二次電池では、負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを抑制するためである。
【0016】
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
【0017】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0018】
<1-1.構成>
図1は、二次電池の斜視構成を表している。図2は、図1に示した二次電池の断面構成を表している。図3は、図2に示した二次電池の平面構成を表している。図4は、図2に示した電池素子40の断面構成を表している。
【0019】
以下では、便宜上、図1および図2のそれぞれにおける上側を二次電池の上側として説明すると共に、図1および図2のそれぞれにおける下側を二次電池の下側として説明する。
【0020】
図2では、正極リード51および負極リード52のそれぞれに網掛けを施している。図3では、二次電池を上方から見た状態を示している。また、図3では、折り曲げ部12Hに淡い網掛けを施していると共に、開裂用窪み12Mに濃い網掛けを施している。図4では、電池素子40の断面の一部を拡大している。
【0021】
この二次電池は、図1に示したように、外径Dおよび高さHを有しており、上記したように、その外径Dよりも高さHが小さい立体的形状、すなわち扁平かつ柱状の立体的形状を有している。ここでは、二次電池の立体的形状は、扁平かつ円筒(円柱)状である。
【0022】
二次電池の寸法は、特に限定されないが、一例を挙げると、外径D=3mm~30mm、高さH=0.5mm~70mmである。ただし、高さHに対する外径Dの比(寸法比D/H)は、1よりも大きくなっている。寸法比D/Hの上限値は、特に限定されないが、25以下であることが好ましい。
【0023】
具体的には、二次電池は、図1図4に示したように、外装缶10と、外部端子20と、電池素子40とを備えている。ここでは、二次電池は、さらに、ガスケット30と、正極リード51および負極リード52と、シーラント60とを備えている。
【0024】
[外装缶]
外装缶10は、図1図3に示したように、扁平かつ柱状の外装部材であり、電池素子40などを収納するために中空の構造を有している。
【0025】
ここでは、外装缶10は、扁平かつ円柱状である二次電池の立体的形状に応じて、扁平かつ円柱状の立体的形状を有している。このため、外装缶10は、互いに対向する上底部M1および下底部M2を含んでおり、より具体的には、上底部M1および下底部M2と共に、その上底部M1および下底部M2のそれぞれに連結された側壁部M3を含んでいる。
【0026】
上底部M1は、互いに対向する第1底部および第2底部のうちの第1底部であると共に、下底部M2は、その第2底部である。側壁部M3は、上底部M1と下底部M2との間に配置されている。これにより、側壁部M3の上端部は、上底部M1に連結されていると共に、その側壁部M3の下端部は、下底部M2に連結されている。上記したように、外装缶10は円柱状であるため、上底部M1および下底部M2のそれぞれは円形の板状であると共に、側壁部M3は凸型の湾曲面を有する筒状である。
【0027】
また、外装缶10は、収納部11および蓋部12を含んでおり、その収納部11は、蓋部12により封止されている。ここでは、蓋部12は、収納部11に溶接されている。
【0028】
収納部11は、電池素子40などを内部に収納する扁平かつ円柱状の器状部材であり、下底部M2および側壁部M3である。この収納部11は、上端部が開放されると共に下端部が閉塞された中空の構造を有しているため、その上端部に開口部11Kを有している。
【0029】
蓋部12は、収納部11に設けられている開口部11Kを遮蔽する円盤状の板状部材であり、上底部M1である。この蓋部12は、貫通孔12Kを有しており、開口部11Kにおいて収納部11に溶接されている。この蓋部12には、外部端子20が取り付けられているため、その蓋部12は、外部端子20を支持している。
【0030】
蓋部12の厚さ(肉厚)は、特に限定されない。中でも、蓋部12の厚さは、収納部11の厚さよりも小さいことが好ましい。すなわち、上底部M1である蓋部12の厚さは、下底部M2の厚さよりも小さいことが好ましい。蓋部12(上底部M1)の物理的強度が収納部11(下底部M2)の物理的強度よりも低下するため、内圧の上昇時において後述する開裂用窪み12Mを利用して蓋部12が開裂しやすくなるからである。なお、内圧が上昇する原因は、特に限定されない。一例を挙げると、二次電池が過充電状態に陥った場合である。また、二次電池が高温環境中において使用または保存された場合である。
【0031】
この場合において、蓋部12の厚さは、さらに、側壁部M3の厚さよりも小さいことがより好ましい。蓋部12(上底部M1)の物理的強度が収納部11(側壁部M3)の物理的強度よりも低下するため、内圧の上昇時において開裂用窪み12Mを利用して蓋部12がより開裂しやすくなるからである。
【0032】
一例を挙げると、収納部11(下底部M2および側壁部M3)の厚さは、80μm~200μmであると共に、蓋部12(上底部M1)の厚さは、60μm~180μmである。
【0033】
ここでは、外装缶10(収納部11)の内部に向かって蓋部12が部分的に突出するように折れ曲がっているため、その蓋部12が部分的に窪んでいる。すなわち、蓋部12の一部は、その蓋部12の中心に向かって段差を形成するように折れ曲がっているため、段差を形成している。これにより、蓋部12は、収納部11の内部に向かって蓋部12が部分的に突出するように折り曲げられることにより形成された折り曲げ部12Hを有しており、貫通孔12Kは、折り曲げ部12Hに設けられている。折り曲げ部12Hが設けられている蓋部12では、上記したように、その蓋部12の一部が外装缶10の内部に向かって突出しているため、内圧の上昇時において蓋部12が外部に向かって押されやすくなるからである。また、段差の近傍(段差の内側および外側)において歪みが発生するため、折り曲げ部12Hを利用して蓋部12が変形しやすくなるからである。これにより、蓋部12が開裂用窪み12Mを利用してより開裂しやすくなる。
【0034】
この蓋部12は、折り曲げ部12Hを形成するために1段階に折れ曲がっているため、その折り曲げ部12Hを有する蓋部12には、1段の段差が形成されている。ただし、蓋部12が2段階以上に折れ曲がっているため、その蓋部12に2段以上の段差が形成されていてもよい。
【0035】
特に、蓋部12は、外部端子20の周囲に開裂用窪み12Mを有している。この開裂用窪み12Mは、二次電池の内部の圧力(内圧)の上昇時において、その内圧の上昇に応じて蓋部12を部分的または全体的に開裂させるための窪みである。これにより、開裂用窪み12Mが設けられている箇所における蓋部12の厚さは、その開裂用窪み12Mが設けられている箇所における蓋部12の厚さよりも小さくなっている。ここでは、開裂用窪み12Mは、蓋部12の外側(上面)に設けられている。
【0036】
ここでは、開裂用窪み12Mは、外部端子20の周囲のうちの全体に設けられている。すなわち、開裂用窪み12Mは、外部端子20の周囲において途中で途切れないように連続しているため、その外部端子20の周囲を連続的に囲んでいる。内圧の上昇時において蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂しやすくなるからである。
【0037】
開裂用窪み12Mの平面形状は、特に限定されない。ここでは、折り曲げ部12Hおよび外部端子20のそれぞれの平面形状が略円形であるため、開裂用窪み12Mの平面形状は略円形のリング状である。すなわち、蓋部12は、リング状である開裂用窪み12Mを有している。折り曲げ部12H、開裂用窪み12Mおよび外部端子20は、同心円状となるように配置されている。ただし、リング状である開裂用窪み12Mの平面形状は、円形に限定されずに、多角形でもよいし、円形と多角形とが互いに組み合わされた形状でもよい。
【0038】
開裂用窪み12Mの設置場所は、特に限定されない。中でも、蓋部12が折り曲げ部12Hを有している場合には、開裂用窪み12Mは、蓋部12のうちの折り曲げ部12Hが設けられていない部分に設けられており、すなわち折り曲げ部12Hよりも外側または内側に配置されていることが好ましい。内圧の上昇に起因して蓋部12を外側に向かって押す力(押圧)が発生した際に、折り曲げ部12Hの外側および内側において押圧の差異が発生しやすくなるからである。これにより、押圧の差異に起因して蓋部12に歪みが発生しやすくなるため、開裂用窪み12Mを利用して蓋部12がより開裂しやすくなる。
【0039】
この場合において、開裂用窪み12Mの位置は、できるだけ折り曲げ部12Hに近いことが好ましい。上記した歪みがより発生しやすくなるため、開裂用窪み12Mを利用して蓋部12がさらに開裂しやすくなるからである。
【0040】
なお、開裂用窪み12Mの数は、特に限定されない。ここでは、蓋部12は、1個の開裂用窪み12Mを有している。もちろん、開裂用窪み12Mの幅および深さのそれぞれは、特に限定されないため、任意に設定可能である。一例を挙げると、開裂用窪み12Mの幅は、0.01mm~1mmであると共に、その開裂用窪み12Mが設けられている箇所における蓋部12の厚さは、0.01mm~0.15mmである。蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂しやすくなるからである。
【0041】
上記したように、外装缶10は、2個の部材(収納部11および蓋部12)が互いに溶接されている缶(いわゆる溶接缶)である。これにより、溶接後の外装缶10は、全体として物理的に1個の部材であるため、事後的に2個の部材(収納部11および蓋部12)に分離できない状態である。
【0042】
この溶接缶である外装缶10は、互いに折り重なった部分を有していないと共に、2個以上の部材が互いに重なった部分を有していない。
【0043】
「互いに折り重なった部分を有していない」とは、外装缶10の一部が互いに折り重なるように加工(折り曲げ加工)されていないことを意味している。また、「2個以上の部材が互いに重なった部分を有していない」とは、二次電池の完成後において外装缶10が物理的に1個の部材であるため、その外装缶10が事後的に2個以上の部材に分離できないことを意味している。すなわち、外装缶10は、事後的に分離できるように2個以上の部材が互いに組み合わされている状態でない。
【0044】
特に、溶接缶である外装缶10は、加締め加工を用いて形成されたクリンプ缶とは異なる缶(いわゆるクリンプレス缶)である。外装缶10の内部において素子空間体積が増加するため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加するからである。この「素子空間体積」とは、充放電反応に関与する電池素子40を収納するために利用可能である外装缶10の内部空間の体積(有効体積)である。
【0045】
ここでは、外装缶10(収納部11および蓋部12)は、導電性を有しており、電池素子40(負極42)に電気的に接続されている。より具体的には、外装缶10は、負極リード52を介して負極42に接続されているため、その負極42の外部接続用端子として機能する。二次電池が外装缶10とは別個に負極42の外部接続用端子を備えていなくてもよいため、その負極42の外部接続用端子の存在に起因する素子空間体積の減少が抑制されるからである。これにより、素子空間体積が増加するため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。
【0046】
具体的には、外装缶10(収納部11および蓋部12)は、金属材料および合金材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、鉄合金、銅合金およびニッケル合金などである。ステンレスの種類は、特に限定されないが、具体的には、SUS304およびSUS316などである。ただし、収納部11の形成材料と蓋部12の形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0047】
なお、外装缶10(蓋部12)は、後述するように、正極41の外部接続用端子として機能する外部端子20からガスケット30を介して絶縁されている。外装缶10(負極42の外部接続用端子)と外部端子20(正極41の外部接続用端子)との接触が抑制されるからである。
【0048】
[外部端子]
外部端子20は、図1および図2に示したように、二次電池が電子機器に搭載される際に、その電子機器に接続される電極端子である。この外部端子20は、上記したように、外装缶10に取り付けられており、より具体的には、蓋部12に取り付けられている。これにより、外部端子20は、ガスケット30を介して蓋部12から絶縁されながら、その蓋部12により支持されている。
【0049】
ここでは、外部端子20は、導電性を有しており、電池素子40(正極41)に電気的に接続されている。より具体的には、外部端子20は、正極リード51を介して正極41に接続されているため、その正極41の外部接続用端子として機能する。これにより、二次電池の使用時には、外部端子20(正極41の外部接続用端子)および外装缶10(負極42の外部接続用端子)を介して二次電池が電子機器に接続されるため、その電子機器が二次電池を電源として用いて動作可能になる。
【0050】
また、外部端子20は、ガスケット30を介して折り曲げ部12Hの内部に配置されている。これにより、外部端子20は、上記したように、ガスケット30を介して蓋部12から絶縁されている。ここでは、外部端子20が蓋部12(折り曲げ部12H)よりも上方に突出していない。外部端子20が蓋部12よりも上方に突出している場合と比較して、二次電池の高さHが小さくなるため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加するからである。
【0051】
ただし、外部端子20の一部は、蓋部12よりも上方に突出していてもよい。二次電池が外部端子20を介して電子機器に接続されやすくなるからである。
【0052】
なお、外部端子20の外径は、折り曲げ部12Hの内径よりも小さいため、その外部端子20は、周囲において蓋部12から離隔されている。これにより、ガスケット30は、折り曲げ部12Hの内部において外部端子20と蓋部12との間の領域のうちの一部だけに配置されており、より具体的には、ガスケット30が存在しなければ外部端子20と蓋部12とが互いに接触し得る場所だけに配置されている。
【0053】
特に、外部端子20は、蓋部12に設けられている貫通孔12Kに挿入されているため、外装缶10の外部において部分的に露出していると共に、その外装缶10の内部において部分的に露出している。外部端子20が電子機器に接続可能になるとと共に、その外部端子20が電池素子40(正極41)に接続可能になるからである。ただし、外部端子20は、上記したように、ガスケット30を介して蓋部12から絶縁されている。
【0054】
外部端子20の構成(立体的形状)は、特に限定されない。ここでは、外部端子20は、端子部20A,20B,20Cを含んでいる。
【0055】
端子部20Aは、貫通孔12Kに挿入されている第1端子部であり、略円柱状の立体的形状を有している。この端子部20Aは、貫通孔12Kの内径よりも小さい外径を有している。外部端子20(端子部20A)と蓋部12との間にガスケット30を介在させるためである。
【0056】
端子部20Bは、外装缶10の内部に配置されていると共に端子部20Aの下端部に連結されている第2端子部であり、略円柱状の立体的形状を有している。この端子部20Bは、端子部20Aの外径よりも大きい外径を有している。端子部20Aの外径と端子部20Bの外径との差異を利用して、外部端子20が蓋部12から脱落しにくくなるからである。また、内圧の上昇時において、大外径の端子部20Bを利用して外部端子20が外部に向かって押されやすくなるからである。なお、端子部20Bの一部または全部は、後述する巻回中心空間40Kの内部に配置されていてもよい。
【0057】
端子部20Cは、外装缶10の外部に配置されていると共に端子部20Aの上端部に連結されている第3端子部であり、略円柱状の立体的形状を有している。この端子部20Cは、端子部20Aの外径よりも大きい外径を有している。端子部20Aの外径と端子部20Cの外径との差異を利用して、外部端子20が蓋部12から脱落しにくくなるからである。また、大外径の端子部20Cを利用して二次電池が電子機器に接続されやすくなるからである。
【0058】
端子部20Bの外径と端子部20Cの外径との関係は、特に限定されない。ここでは、端子部20Cの外径は、端子部20Bの外径よりも大きくなっている。端子部20Cの露出面積が増加するため、二次電池が外部端子20(端子部20C)を介して電子機器に接続されやすくなるからである。ただし、端子部20Cの外径は、端子部20Bと外径と同じでもよいし、その端子部20Bの外径より小さくてもよい。
【0059】
また、外部端子20は、金属材料および合金材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、アルミニウムおよびアルミニウム合金などである。
【0060】
[ガスケット]
ガスケット30は、図2に示したように、外装缶10(蓋部12)と外部端子20との間に配置された絶縁部材であり、その外部端子20は、ガスケット30を介して蓋部12に固定されている。ここでは、ガスケット30は、貫通孔12Kに対応する箇所に貫通孔を有するリング状の平面形状を有している。このガスケット30は、絶縁性の高分子化合物などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性材料は、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
【0061】
ガスケット30の設置範囲は、特に限定されないため、任意に設定可能である。ここでは、ガスケット30は、上記したように、折り曲げ部12Hの内部において蓋部12の上面と外部端子20の下面との間に配置されている。
【0062】
[電池素子]
電池素子40は、図1図4に示したように、充放電反応を進行させる発電素子であり、外装缶10の内部に収納されている。この電池素子40は、正極41および負極42を含んでいる。ここでは、電池素子40は、さらに、セパレータ43と、液状の電解質である電解液(図示せず)とを含んでいる。
【0063】
具体的には、電池素子40は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、電池素子40では、正極41および負極42がセパレータ43を介して互いに積層されていると共に、その正極41、負極42およびセパレータ43が巻回されている。これにより、正極41および負極42は、互いに対向しながら巻回されているため、電池素子40は、正極41および負極42のそれぞれが巻回されている中心に円柱状の巻回中心空間40Kを有している。
【0064】
ここでは、正極41、負極42およびセパレータ43は、そのセパレータ43が最外周および最内周のそれぞれに配置されるように巻回されている。正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれの巻回数は、特に限定されないため、任意に設定可能である。
【0065】
この電池素子40は、外装缶10の立体的形状と同様の立体的形状、すなわち扁平かつ円柱状の立体的形状を有している。電池素子40が外装缶10の立体的形状とは異なる立体的形状を有している場合と比較して、その外装缶10の内部に電池素子40が収納された際に、いわゆるデッドスペース(外装缶10と電池素子40との間の余剰空間)が発生しにくくなるため、その外装缶10の内部空間が有効に利用されるからである。これにより、素子空間体積が増加するため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。
【0066】
(正極)
正極41は、充放電反応を進行させるために用いられる第1電極であり、図4に示したように、正極集電体41Aおよび正極活物質層41Bを含んでいる。
【0067】
正極集電体41Aは、正極活物質層41Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体41Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、アルミニウムなどである。
【0068】
ここでは、正極活物質層41Bは、正極集電体41Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層41Bは、正極41が負極42に対向する側における正極集電体41Aの片面だけに設けられていてもよい。また、正極活物質層41Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などを含んでいてもよい。正極活物質層41Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などである。
【0069】
正極活物質は、リチウム化合物を含んでいる。このリチウム化合物は、リチウムを構成元素として含む化合物の総称であり、より具体的には、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物である。高いエネルギー密度が得られるからである。ただし、リチウム化合物は、さらに、他の元素(リチウムおよび遷移金属元素以外の元素)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。リチウム化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiCoO2 およびLiMn2 4 などであると共に、リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 およびLiMnPO4 などである。
【0070】
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴムなどであると共に、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどである。正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
【0071】
(負極)
負極42は、充放電反応を進行させるために用いられる第2電極であり、図4に示したように、負極集電体42Aおよび負極活物質層42Bを含んでいる。
【0072】
負極集電体42Aは、負極活物質層42Bが設けられる一対の面を有している。この負極集電体42Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、銅などである。
【0073】
ここでは、負極活物質層42Bは、負極集電体42Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層42Bは、負極42が正極41に対向する側における負極集電体42Aの片面だけに設けられていてもよい。また、負極活物質層42Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などを含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。負極活物質層42Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0074】
負極活物質は、炭素材料および金属系材料のうちの一方または双方を含んでいる。高いエネルギー密度が得られるからである。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛(天然黒鉛および人造黒鉛)などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料であり、その金属元素および半金属元素は、ケイ素およびスズのうちの一方または双方などである。ただし、金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよいし、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。金属系材料の具体例は、TiSi2 およびSiOx (0<x≦2または0.2<x<1.4)などである。
【0075】
ここでは、負極42の高さは、正極41の高さよりも大きくなっている。この場合には、負極42が正極41よりも上方に突出していると共に正極41よりも下方に突出している。正極41から放出されたリチウムの析出が抑制されるからである。この「高さ」とは、上記した二次電池の高さHに対応する寸法であり、すなわち図1および図2のそれぞれにおける上下方向の寸法である。ここで説明した高さの定義は、以降においても同様である。
【0076】
(セパレータ)
セパレータ43は、図2および図4に示したように、正極41と負極42との間に介在する絶縁性の多孔質膜であり、その正極41と負極42との短絡を抑制しながらリチウムイオンを通過させる。このセパレータ43は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0077】
ここでは、セパレータ43の高さは、負極42の高さよりも大きくなっている。この場合には、セパレータ43が負極42よりも上方に突出していると共に負極42よりも下方に突出している。これにより、正極リード51は、セパレータ43を介して電池素子40(負極42)から絶縁されている。
【0078】
(電解液)
電解液は、溶媒および電解質塩を含んでおり、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに含浸されている。溶媒は、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などの非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0079】
[正極リード]
正極リード51は、図2に示したように、外装缶10の内部に収納されていると共に、正極41および外部端子20のそれぞれに接続されている。より具体的には、正極リード51は、正極集電体41Aに接続されていると共に、端子部20Bに接続されている。
【0080】
ここでは、二次電池は、1本の正極リード51を備えている。ただし、二次電池は、2本以上の正極リード51を備えていてもよい。電池素子40の電気抵抗が低下するからである。
【0081】
正極リード51の接続方法は、特に限定されないが、具体的には、溶接法である。溶接法の種類は、特に限定されないが、具体的には、抵抗溶接法およびレーザ溶接法などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。ここで説明した溶接法に関する詳細は、以降においても同様である。
【0082】
正極リード51の形成材料に関する詳細は、正極集電体41Aの形成材料に関する詳細と同様である。ただし、正極リード51の形成材料と正極集電体41Aの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0083】
正極41(正極集電体41A)に対する正極リード51の接続位置は、特に限定されない。すなわち、正極リード51は、最外周の正極41に接続されていてもよいし、最内周の正極41に接続されていてもよいし、最外周と最内周との間における巻回途中の正極41に接続されていてもよい。図2では、正極リード51が巻回途中の正極41に接続されている場合を示している。
【0084】
なお、正極リード51は、正極集電体41Aから物理的に分離されているため、その正極集電体41Aとは別体化されている。ただし、正極リード51は、正極集電体41Aと物理的に連続しているため、その正極集電体41Aと一体化されていてもよい。
【0085】
[負極リード]
負極リード52は、図2に示したように、外装缶10の内部に収納されていると共に、負極42および外装缶10のそれぞれに接続されている。より具体的には、負極リード52は、負極集電体42Aに接続されていると共に、下底部M2に接続されている。ただし、負極リード52は、上底部M1または側壁部M3に接続されていてもよい。
【0086】
ここでは、二次電池は、1本の負極リード52を備えている。ただし、二次電池は、2本以上の負極リード52を備えていてもよい。電池素子40の電気抵抗が低下するからである。
【0087】
負極リード52の形成材料に関する詳細は、負極集電体42Aの形成材料に関する詳細と同様である。ただし、負極リード52の形成材料と負極集電体42Aの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0088】
負極42(負極集電体42A)に対する負極リード52の接続位置は、特に限定されない。すなわち、負極リード52は、最外周の負極42に接続されていてもよいし、最内周の負極42に接続されていてもよいし、最外周と最内周との間における巻回途中の負極42に接続されていてもよい。図2では、負極リード52が最外周の負極42に接続されている場合を示している。
【0089】
なお、負極リード52は、負極集電体42Aから物理的に分離されているため、その負極集電体42Aとは別体化されている。ただし、負極リード52は、負極集電体42Aと物理的に連続しているため、その負極集電体42Aと一体化されていてもよい。
【0090】
[シーラント]
シーラント60は、図2に示したように、正極リード51の周囲を部分的に被覆している。このシーラント60は、絶縁性の高分子化合物などの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その絶縁性材料は、ポリイミドなどである。これにより、正極リード51は、シーラント60を介して外装缶10(収納部11および蓋部12)および電池素子40(負極42)のそれぞれから絶縁されている。
【0091】
なお、正極リード51が外装缶10および電池素子40のそれぞれから離隔(絶縁)されていれば、シーラント60は省略されてもよい。
【0092】
[その他]
なお、二次電池は、さらに、図示しない他の構成要素のうちのいずれか1種類または2種類以上を備えていてもよい。
【0093】
具体的には、二次電池は、安全弁機構を備えている。この安全弁機構は、外装缶10の内圧が一定以上に到達すると、その外装缶10と電池素子40(負極42)との電気的接続を切断する機構である。外装缶10の内圧が一定以上に到達する原因の具体例は、二次電池の内部において短絡が発生する場合および二次電池が外部から加熱される場合などである。安全弁機構の設置場所は、特に限定されないが、中でも、上底部M1および下底部M2のうちのいずれかであることが好ましく、外部端子20が設けられていない下底部M2であることがより好ましい。
【0094】
また、二次電池は、絶縁フィルムを備えている。この絶縁フィルムは、貫通孔12Kに対応する箇所に貫通孔を有するリング状の平面形状を有しており、その絶縁フィルムの形成材料に関する詳細は、シーラント60の形成材料に関する詳細と同様である。ただし、シーラント60の形成材料と絶縁フィルムの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0095】
具体的には、絶縁フィルムは、正極リード51と電池素子40との間に配置されており、すなわちシーラント60と電池素子40との間に配置されているため、その正極リード51と負極42との接触を抑制する。また、絶縁フィルムは、外装缶10(蓋部12)と正極リード51との間に配置されており、すなわち蓋部12とシーラント60との間に配置されているため、その蓋部12と正極リード51との接触を抑制する。さらに、絶縁フィルムは、電池素子40と外装缶10(下底部M2)との間に配置されているため、正極41と下底部M2との接触を抑制する。
【0096】
なお、外装缶10には、開裂弁が設けられている。この開裂弁は、外装缶10の内圧が一定以上に到達した際に開裂するため、その内圧を開放する。開裂弁の設置場所は、特に限定されないが、中でも、上記した安全弁機構の設置場所と同様に、上底部M1および下底部M2のうちのいずれかであることが好ましく、その下底部M2であることがより好ましい。
【0097】
<1-2.動作>
図5は、二次電池の動作を説明するために、図2に対応する断面構成を表している。
【0098】
二次電池の充電時には、電池素子40において、正極41からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極42に吸蔵される。一方、二次電池の放電時には、電池素子40において、負極42からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極41に吸蔵される。これらの充放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵放出される。
【0099】
この場合には、外装缶10の内部においてガスGが発生したため、そのガスGの発生に起因して内圧が上昇すると、その内圧の上昇に起因する押圧に応じて蓋部12が外部に向かって押される。これにより、押圧の力が開裂用窪み12Mにおける蓋部12の物理的強度を上回ると、図5に示したように、蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂するため、その蓋部12が部分的に開口する。よって、外装缶10の外部にガスGが放出されるため、内圧が開放される。
【0100】
ただし、蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂する場合には、その開裂用窪み12Mの一部において蓋部12が開裂するため、その蓋部12が部分的に開口してもよい。すなわち、蓋部12の一部(開裂用窪み12Mよりも内側の部分)が他の部分(開裂用窪み12Mよりも外側の部分)から完全に分離されずに、その蓋部12の一部が他の部分と部分的に連結されていてもよい。この場合においても、ガスGが放出されるため、内圧が開放される。
【0101】
<1-3.製造方法>
図6は、二次電池の製造工程に用いられる外装缶10の斜視構成を表しており、図1に対応している。ただし、図6では、収納部11に蓋部12が溶接される前であるため、その蓋部12が収納部11から分離されている状態を示している。
【0102】
以下の説明では、図6と共に、既に説明した図1図4を参照する。
【0103】
ここでは、外装缶10を形成するために、図6に示したように、互いに物理的に分離されている収納部11および蓋部12を用いる。収納部11は、下底部M2と側壁部M3とが互いに一体化された器状部材であり、開口部11Kを有している。蓋部12は、上底部M1に該当する板状部材であり、開裂用窪み12Mを有している。蓋部12(折り曲げ部12H)に設けられている貫通孔12Kには、あらかじめ外部端子20が挿入されているため、その外部端子20は、ガスケット30を介して蓋部12に固定されている。
【0104】
ただし、下底部M2と側壁部M3とが互いに分離されているため、その側壁部M3に下底部M2を溶接することにより、収納部11を形成してもよい。
【0105】
[正極の作製]
有機溶剤などの溶媒に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤などの混合物(正極合剤)を投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。続いて、正極集電体41Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層41Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて正極活物質層41Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層41Bを加熱してもよいと共に、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極41が作製される。
【0106】
[負極の作製]
正極41の作製手順と同様の手順により、負極42を作製する。具体的には、有機溶剤などの溶媒に、負極活物質、負極結着剤および負極導電剤などの混合物(負極合剤)を投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製したのち、負極集電体42Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層42Bを形成する。こののち、負極活物質層42Bを圧縮成型してもよい。これにより、負極42が作製される。
【0107】
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
【0108】
[二次電池の組み立て]
最初に、溶接法を用いて、シーラント60により周囲を部分的に被覆されている正極リード51を正極41(正極集電体41A)に接続させると共に、負極リード52を負極42(負極集電体42A)に接続させる。
【0109】
続いて、セパレータ43を介して、正極リード51が接続されている正極41と、負極リード52が接続されている負極42とを互いに積層させたのち、その正極41、負極42およびセパレータ43を巻回させることにより、図6に示したように、巻回体40Zを作製する。この巻回体40Zは、正極41、負極42およびセパレータ43のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子40の構成と同様の構成を有している。ただし、図6では、図示内容を簡略化するために、正極リード51および負極リード52のそれぞれの図示を省略している。
【0110】
続いて、正極リード51および負極リード52のそれぞれが接続されている巻回体40Zを開口部11Kから収納部11の内部に収納する。この場合には、溶接法を用いて、負極リード52を収納部11(下底部M2)に接続させる。
【0111】
続いて、開口部11Kから収納部11の内部に電解液を注入する。これにより、巻回体40Z(正極41、負極42およびセパレータ43)に電解液が含浸されるため、巻回電極体である電池素子40が作製される。
【0112】
最後に、溶接法を用いて、開口部11Kにおいて蓋部12を収納部11に溶接する。この場合には、溶接法を用いて、正極リード51を外部端子20(端子部20B)に接続させる。これにより、外装缶10が形成されると共に、その外装缶10の内部に電池素子40などが封入されるため、二次電池が組み立てられる。
【0113】
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの各種条件は、任意に設定可能である。これにより、負極42などの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。よって、二次電池が完成する。
【0114】
<1-4.作用および効果>
この二次電池によれば、外装缶10の蓋部12により外部端子20が支持されており、その外部端子20が蓋部12から絶縁されており、その蓋部12が外部端子20の周囲に開裂用窪み12Mを有している。
【0115】
この場合には、蓋部12に開裂用窪み12Mが設けられている。これにより、開裂用窪み12Mが設けられている箇所では蓋部12の厚さが部分的に薄くなっているため、その蓋部12の物理的強度が部分的に低下している。よって、内圧が上昇すると、その内圧の上昇時に発生する押圧に起因して蓋部12が外部に向かって押されるため、その蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂しやすくなる。
【0116】
しかも、開裂用窪み12Mが外部端子20の周囲に配置されている。これにより、内圧が上昇すると、上記した押圧に起因して外部端子20が外部に向かって押されるため、開裂用窪み12Mよりも内側の領域では、蓋部12が外部端子20と一緒に外部に向かって激しく押される。すなわち、外部端子20は、押圧に応じて蓋部12を外部に向かって押し上げるため、開裂用窪み12Mよりも内側の領域において蓋部12を局所的に変形させる機能を果たす。これにより、外部端子20の周囲において蓋部12が歪みやすくなるため、その蓋部12が開裂用窪み12Mを利用してより開裂しやすくなる。
【0117】
これらのことから、内圧の上昇時において蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂しやすくなるため、その蓋部12が必要時において容易かつ安定に開口しやすくなる。これにより、蓋部12が開口した箇所においてガスGが放出されるため、内圧が開放されやすくなる。よって、内圧が上昇しても二次電池が破損しにくくなるため、優れた安全性を得ることができる。
【0118】
この二次電池では、特に、以下で説明する一連の利点も得られる。
【0119】
第1に、蓋部12に外部端子20および開裂用窪み12Mの双方が設けられており、すなわち押圧に起因して外部端子20と一緒に外部に向かって激しく押される蓋部12に開裂用窪み12Mが設けられているため、その押圧の方向に蓋部12が開口する。これにより、押圧の方向(外部端子20および蓋部12が一緒に押される方向)と蓋部12の開口方向(内圧の開放方向)とが互いに一致するため、その外部端子20および開裂用窪み12Mのそれぞれの設置位置に応じて内圧の開放方向(ガスGの放出方向)が制御される。よって、所望の方向となるように内圧の開放方向を制御可能であるため、この観点においても優れた安全性を得ることができる。
【0120】
より具体的には、人体に装着されるウェアラブル型の電子機器に二次電池が搭載される場合には、その人体に向かう方向とは異なる方向となるように内圧の開放方向を設定すれば、その内圧の開放時において飛散物が人体に到達しにくくなる。このウェアラブル型の電子機器とは、イヤホン、時計およびメディカル用センサーパッチなどであると共に、飛散物とは、内圧の上昇に起因して二次電池が破裂した際に飛散する構成部品および破損物などである。よって、内圧の上昇に起因する二次電池の破損時において、ウェアラブル型の電子機器の使用者が負傷しにくくなるため、二次電池の破損を抑制する観点だけでなく、その二次電池の破損時において使用者の負傷を抑制する観点においても、優れた安全性を得ることができる。
【0121】
もちろん、人体に向かう方向とは反対の方向となるように内圧の開放方向を設定すれば、飛散物が人体により到達しにくくなるため、安全性をより向上させることができる。
【0122】
第2に、内圧の上昇時において蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂するため、上記した特許文献2(米国特許第9178251号明細書)に開示されているボタン型の二次電池とは異なり、内圧を開放するために蓋部12はスライドする必要がない。これにより、二次電池が搭載される電子機器の内部に蓋部12のスライド用のスペースを確保しなくてもよいため、その電子機器の内部における二次電池の搭載スペースが小さくて済む。よって、二次電池が搭載される電子機器の小型化を実現しながら、優れた安全性を得ることができる。
【0123】
第3に、外径Dが小さい小型の二次電池では、その二次電池の内部体積(容積)が小さいため、内圧が急激に上昇しやすい傾向にある。しかしながら、二次電池の容積が小さくても、内圧の上昇に応じて蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して迅速に開裂するため、その内圧が迅速に開放される。よって、外径Dが小さい小型の二次電池においても、優れた安全性を担保することができる。
【0124】
この他、開裂用窪み12Mが外部端子20の周囲を連続的に囲んでいれば、蓋部12が開裂用窪み12Mを利用してより開裂しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0125】
また、蓋部12(上底部M1)の厚さが収納部11(下底部M2)の厚さよりも小さくなっていれば、その蓋部12が開裂用窪み12Mを利用してより開裂しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、蓋部12の厚さが収納部11(側壁部M3)の厚さよりも小さくなっていれば、その蓋部12が開裂用窪み12Mを利用してさらに開裂しやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。
【0126】
また、蓋部12が折り曲げ部12Hを有していれば、内圧の上昇時において蓋部12が外部に向かってより押されやすくなると共に、その折り曲げ部12Hの外側および内側における押圧の差異を利用して蓋部12がより歪みやすくなる。よって、蓋部12が開裂用窪み12Mを利用してより開裂しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0127】
この場合には、外部端子20(端子部20C)が折り曲げ部12Hの内部に配置されていれば、二次電池の高さHが小さくなるため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。よって、電池容量が担保されながら、優れた安全性が得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0128】
また、蓋部12に設けられている貫通孔12Kに外部端子20が挿入されており、その外部端子20が小外径の端子部20Aおよび大外径の端子部20B,20Cを含んでいれば、その大外径の端子部20Bを利用して内圧の上昇時に外部端子20が外部に向かって押されやすくなると共に、その大外径の端子部20Cを利用して二次電池が電子機器に接続されやすくなる。よって、電子機器に対する二次電池の接続容易性が担保されながら、優れた安全性が得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0129】
また、外装缶10が収納部11および蓋部12を含んでおり、その蓋部12が収納部11に溶接されていれば、その外装缶10の内部において素子空間体積が増加するため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。よって、電池容量が担保されながら、優れた安全性が得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0130】
まあ、正極41が外部端子20に電気的に接続されていると共に、負極42が外装缶10に電気的に接続されていれば、その外装缶10が負極42の外部接続用端子として機能するため、別途、二次電池が負極42の外部接続用端子を備えていなくてもよい。これにより、二次電池の寸法が小型化されるため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。よって、電池容量が担保されながら、優れた安全性が得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0131】
また、二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、リチウムの吸蔵放出を利用して十分な電池容量が安定に得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0132】
<2.変形例>
二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例のうちの任意の2種類以上は、互いに組み合わされてもよい。
【0133】
[変形例1]
図3では、蓋部12の外側(上面)に開裂用窪み12Mが設けられている。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、開裂用窪み12Mは、蓋部12の内側(下面)に設けられていてもよいし、その蓋部12の外側および内側の双方に設けられていてもよい。この場合においても、蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂するため、同様の効果を得ることができる。
【0134】
[変形例2,3]
図3では、開裂用窪み12Mが外部端子20の周囲を連続的に囲んでいる。しかしながら、開裂用窪み12Mは、外部端子20の周囲を断続的に囲んでいてもよい。
【0135】
具体的には、図3に対応する図7に示したように、蓋部12に1個の非窪み部12Xが設けられているため、その1個の非窪み部12Xを介して開裂用窪み12Mが外部端子20の周囲を断続的に囲んでいてもよい(変形例2)。
【0136】
または、図3に対応する図8に示したように、蓋部12に2個の非窪み部12Xが設けられているため、その2個の非窪み部12Xを介して開裂用窪み12Mが外部端子20の周囲を断続的に囲んでいてもよい(変形例3)。2個の非窪み部12Xの位置関係は、特に限定されないが、図8では、その2個の非窪み部12Xが折り曲げ部12Hを介して互いに対向している場合を示している。
【0137】
これらの場合においても、蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂するため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、蓋部12が非窪み部12Xでは開裂しないと、その蓋部12のうちの開裂した部分がそれ以外の部分から脱離しにくくなるため、その蓋部12のうちの開裂した部分が落下することなどを抑制することができる。ただし、内圧の上昇に起因して発生する押圧の大きさによっては、蓋部12が非窪み部12Xにおいて開裂してもよい。
【0138】
なお、非窪み部12Xの幅は、特に限定されないため、任意に設定可能である。一例を挙げると、非窪み部12Xの幅は、0.01mm~1mmである。もちろん、非窪み部12Xの数は、1個または2個に限らず、3個以上でもよい。
【0139】
なお、開裂用窪み12Mに非窪み部12Xが設けられている場合において、その開裂用窪み12Mが連続している範囲は十分に大きいことが好ましく、その開裂用窪み12Mが連続している範囲は十分に大きい一方で非窪み部12Xの幅は十分に小さいことがより好ましい。蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して安定かつ十分に開裂するからである。
【0140】
[変形例4]
図3では、蓋部12が1個の開裂用窪み12Mを有している。しかしながら、蓋部12が複数個の開裂用窪み12Mを有していてもよい。複数個の開裂用窪み12Mのそれぞれの幅および深さは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0141】
具体的には、図3に対応する図9に示したように、蓋部12が2個の開裂用窪み12Mを有していてもよい。ここでは、1個目の開裂用窪み12Mが折り曲げ部12Hよりも外側に設けられていると共に、2個目の開裂用窪み12Mが1個目の開裂用窪み12Mよりも外側に設けられている。すなわち、2個のリング状の開裂用窪み12Mは、外部端子20(折り曲げ部12H)を中心として同心円状となるように配置されている。
【0142】
この場合においても、蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂するため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、開裂用窪み12Mの数が1個だけである場合と比較して蓋部12がより開裂しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0143】
[変形例5]
図2では、ガスケット30が外部端子20を外装缶10(蓋部12)から絶縁させる機能だけを果たしている。しかしながら、ガスケット30は、さらに、内圧の上昇時において、その内圧を開放する機能を果たしてもよい。
【0144】
具体的には、図2に対応する図10に示したように、ガスケット30は、内圧の上昇時においてガスGの放出経路を形成するために、互いに融点が異なる2種類の絶縁部30A,30Bを含んでいてもよい。ただし、図10では、外部端子20およびガスケット30の周辺部分だけを抜粋および拡大している。
【0145】
絶縁部30Aは、蓋部12の内側に配置されている第1絶縁部であり、より具体的には端子部20A,20Bのそれぞれと蓋部12との間に配置されている。この絶縁部30Aは、絶縁性の第1高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この第1高分子化合物は、十分に高い融点を有しており、より具体的には、後述する絶縁部30Bに含まれている第2高分子化合物の融点よりも高い融点を有している。
【0146】
第1高分子化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)およびポリフェニレンサルファイド(PPS)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。PFAなどは、十分に高い融点(=約310℃)を有していると共に、封止性、耐熱性および耐電解液性に優れているからである。
【0147】
絶縁部30Bは、蓋部12の外側に配置されている第2絶縁部であり、より具体的には端子部20Cと蓋部12との間に配置されている。この絶縁部30Bは、絶縁性の第2高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この第2高分子化合物は、十分に低い融点を有しており、より具体的には、絶縁部30Aに含まれている第1高分子化合物の融点よりも低い融点を有している。
【0148】
第2高分子化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリプロピレン(PP)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。PBTなどの融点(一例を挙げると、PBTの融点=約225℃~267℃)は、上記したPFAなどの融点よりも十分に低いからである。
【0149】
ここで、第1高分子化合物と第2高分子化合物との具体的な組み合わせを挙げると、PFAおよびPBT、PPSおよびPBT、PFAおよびPP、PPSおよびPPなどである。
【0150】
なお、絶縁部30A,30Bのそれぞれの厚さは、特に限定されないが、具体的には、300μm以下である。
【0151】
この二次電池において、ガスケット30(絶縁部30A,30B)を利用して内圧が開放される原理は、以下で説明する通りである。
【0152】
二次電池が高温かつ短時間で加熱された場合、すなわち二次電池が高温の熱源により急速加熱された場合には、電池素子40(電解液)が異常かつ過剰に反応するため、大量のガスGが短時間で発生し得る。これにより、内圧が急激に増加した場合には、開裂用窪み12Mを利用した蓋部12の開裂動作が間に合わないため、その蓋部12が開裂用窪み12Mを利用して開裂する前に二次電池が発火または破損する可能性がある。
【0153】
しかしながら、ガスケット30(絶縁部30A,30B)を備えている二次電池では、その二次電池が急速加熱されると、図10に対応する図11に示したように、そのガスケット30が内圧の開放機能を発揮する。
【0154】
この場合には、押圧に応じて蓋部12および外部端子20のそれぞれが外部に向かって押されながら、絶縁部30Aの融点よりも低い融点を有している絶縁部30Bが熱変形する。これにより、蓋部12と外部端子20との間に隙間が発生することに起因してガスGの放出経路が形成されるため、内圧が開放される。また、二次電池が急速加熱されたことに起因して上記した内圧の開放(ガスGの放出)が間に合わない場合、および絶縁部30Bが熱変形しない温度範囲においてガスGが発生した場合においても、蓋部12が変形すると共に外部端子20が蓋部12を押し上げることに起因して開裂用窪み12Mを利用して蓋部12が開裂するため、二次電池が破裂する前に内圧(ガスG)が開放される。
【0155】
これらのことから、ガスケット30(絶縁部30A,30B)を備えている場合には、二次電池の急速加熱時などにおいても内圧(ガスG)が開放される。よって、内圧がより開放されやすくなるため、より優れた安全性を得ることができる。
【0156】
[変形例6]
図2では、正極41(第1電極)が外部端子20に電気的に接続されていると共に、負極42(第2電極)が外装缶10に電気的に接続されている。このため、外部端子20が正極41の外部接続用端子として機能すると共に、外装缶10が負極42の外部接続用端子として機能する。
【0157】
しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、正極41(第2電極)が外装缶10に電気的に接続されていると共に、負極42(第1電極)が外部端子20に電気的に接続されていてもよい。このため、外装缶10が正極41の外部接続用端子として機能すると共に、外部端子20が負極42の外部接続用端子として機能してもよい。
【0158】
外部端子20は、負極42の外部接続用端子として機能するために、金属材料および合金材料の導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、鉄合金、銅合金およびニッケル合金などである。外装缶10は、正極41の外部接続用端子として機能するために、金属材料および合金材料の導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスなどである。
【0159】
この場合においても、外部端子20(負極42の外部接続用端子)および外装缶10(正極41の外部接続用端子)を介して二次電池が電子機器に接続可能であるため、同様の効果を得ることができる。
【0160】
以上、一実施形態を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
【0161】
具体的には、外装缶が溶接缶(クリンプレス缶)である場合に関して説明したが、その外装缶の構成は、特に限定されないため、加締め加工されたクリンプ缶でもよい。このクリンプ缶では、互いに分離された収納部および蓋部がガスケットを介して互いに加締められる。
【0162】
また、電池素子の素子構造が巻回型である場合に関して説明したが、その電池素子の素子構造は、特に限定されないため、電極(正極および負極)が積層された積層型でもよいし、その電極がジグザグに折り畳まれた九十九折り型でもよいし、それら以外の他の素子構造でもよい。
【0163】
また、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。このため、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0164】
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11