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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/005 20060101AFI20241119BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B05C17/005
B65D83/00 G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022563809
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2021042279
(87)【国際公開番号】W WO2022107825
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2020193893
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】堀江 隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠
(72)【発明者】
【氏名】早川 祐生
(72)【発明者】
【氏名】伊達 憲昭
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-182249(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068799(WO,A1)
【文献】特開平10-337523(JP,A)
【文献】特開平08-048358(JP,A)
【文献】特開2002-308331(JP,A)
【文献】特開2007-276879(JP,A)
【文献】実公平06-046863(JP,Y2)
【文献】特開2008-230692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00-21/00
B65D 67/00-79/02
83/00,
83/08-83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された内容物を吐出するノズル部を備える内容器と、
前記内容器を内包すると共に外周壁に開口部が形成された硬質樹脂製の筒状の外容器と、
前記外周壁に設けられ、前記開口部を覆うエラストマー製の押圧部と、
前記外容器から突出した前記ノズル部を覆い、前記外容器に着脱可能とされたキャップと、
を備え、
前記押圧部は、前記外容器の周方向に巻かれて前記外周壁の一部を被覆するエラストマー製の部材の一部であって前記開口部を覆う部分であり、
前記内容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム、錫又は鉛の何れかで形成された可撓性材料であり、
前記外容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ナイロン又はポリエチレンテレフタレートで形成された硬質樹脂である、
容器。
【請求項2】
前記キャップとは反対側の前記外容器の端部に台座をさらに備える、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記押圧部で覆われる前記開口部は、前記外容器の中心軸に対して軸対称に一対設けられている、請求項1又は請求項2に記載の容器。
【請求項4】
充填された内容物を吐出するノズル部を備える内容器と、
前記内容器を内包すると共に外周壁に開口部が形成された硬質樹脂製の筒状の外容器と、
前記外周壁に設けられ、前記開口部を覆うエラストマー製の押圧部と、
前記外容器から突出した前記ノズル部を覆い、前記外容器に着脱可能とされたキャップと、
を備え、
前記押圧部で覆われる前記開口部は、前記外容器の中心軸に対して軸対称に一対設けられ、
一対の前記押圧部は、前記外容器の外周壁に巻かれるように一体に連結している前記エラストマー製の連結部をさらに有し、
前記内容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム、錫又は鉛の何れかで形成された可撓性材料であり、
前記外容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ナイロン又はポリエチレンテレフタレートで形成された硬質樹脂である、
容器。
【請求項5】
前記キャップとは反対側の前記外容器の端部に台座をさらに備え、
前記連結部から前記外容器の前記台座に向けて延びる前記エラストマー製の延長部をさらに有する請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記キャップの外周部には複数のリブが形成されている請求項1~5の何れか1項に記載の容器。
【請求項7】
前記外容器の前記外周壁は、前記キャップ側の端部から前記台座へ行くに従い拡径している、請求項2に記載の容器。
【請求項8】
前記内容物は、接着剤である、請求項1~7の何れか1項に記載の容器。
【請求項9】
前記内容器は、ポリオレフィン製である、請求項8に記載の容器。
【請求項10】
前記キャップは、ポリオレフィン製である、請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記台座の内側に乾燥剤を備える、請求項2に記載の容器。
【請求項12】
前記押圧部の表面には、凹部が形成されている、請求項1~11の何れか1項に記載の容器。
【請求項13】
前記押圧部は、前記外容器の外周壁より盛り上がっている盛り上がり部を有する、請求項1~12の何れか1項に記載の容器。
【請求項14】
前記盛り上がり部の最大厚みは、0.2mm以上であって1.0mm以下の範囲内である、請求項13に記載の容器。
【請求項15】
前記エラストマーは、A硬度が40以上であって80未満の範囲内である、請求項1~14の何れか1項に記載の容器。
【請求項16】
前記エラストマーは、JIS Z 0208に準拠して測定される厚さ0.5mmの試料での透湿度が2.0g/m・24hr未満である、請求項1~15の何れか1項に記載の容器。
【請求項17】
前記エラストマーは、JIS K 7126に準拠して測定される酸素透過係数が1.0×10-15mol・m/Pa・s・m未満である、請求項1~16の何れか1項に記載の容器。
【請求項18】
前記エラストマー製の部材は、
前記外周壁に掲載された凹部を被覆し、前記押圧部以外の部位が前記凹部の周囲の外周壁と面一に形成されている、
請求項1に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2019-508236号公報には、接着剤および/またはシーリング剤を塗布するための装置であって、容器を収容するためのハウジングを備え、前記ハウジングが、前記容器を収容するための収容空間と、前記収容空間に接続され、前記接着剤および/またはシーリング剤を排出し得る閉鎖可能な塗布先端部と、前記収容空間のための安定ケーシングと、変形可能な圧力領域として設計され、前記収容空間に配置可能な前記容器上に外部から圧力を加えることができる、前記ハウジングの少なくとも1つの領域と、を含む、装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019-508236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特表2019-508236号公報に記載される装置は、容器に圧力を加える変形可能な圧力領域が、ハウジングにスリットを形成して構成された板ばねである。このことから明らかなように、この装置では、ハウジング自体の密閉性は考慮されていない。また、上記特許文献1に記載される装置は、塗布先端部がハウジングに収容されておらず、閉鎖キャップが塗布先端部の一部のみを覆っている。すなわち、上記特許文献1に記載される装置は、ハウジングによる容器の密閉性が確保されておらず、塗布先端部全体が保護されていない。このため、容器内への空気の侵入および塗布先端部の劣化が起こりやすく、容器内の接着剤および/またはシーリング剤が劣化する虞がある。
また、特表2019-508236号公報に記載される装置は、板ばねの自由端部を押さないと板ばねが撓まず、容器に圧力を加えることができない。
本開示は、上記現状を鑑みて成されたものであり、エアバリヤ性が向上し、且つ外容器に内包されている内容器の内容物を容易に吐出できる容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係る容器は、充填された内容物を吐出するノズル部を備える内容器と、前記内容器を内包すると共に外周壁に開口部が形成された硬質樹脂製の筒状の外容器と、前記外周壁に設けられ、前記開口部を覆うエラストマー製の押圧部と、前記外容器から突出した前記ノズル部を覆い、前記外容器に着脱可能とされたキャップと、を備える。
【0006】
第2態様に係る容器は、第1態様に記載の容器において、前記キャップとは反対側の前記外容器の端部に台座をさらに備える。
【0007】
第3態様に係る容器は、第1態様又は第2態様に記載の容器において、前記押圧部で覆われる前記開口部は、前記外容器の中心軸に対して軸対称に一対設けられている。
【0008】
第4態様に係る容器は、第3態様に記載の容器において、一対の前記押圧部が前記外容器の外周壁に巻かれるように一体に連結させる前記エラストマー製の連結部をさらに有する。
【0009】
第5態様に係る容器は、第4態様に記載の容器において、前記連結部から前記外容器の前記台座に向けて延びる前記エラストマー製の延長部をさらに有する。
【0010】
第6態様に係る容器は、第1態様~第5態様の何れか一態様に記載の容器において、前記キャップの外周部には複数のリブが形成されている。
【0011】
第7態様に係る容器は、第1態様~第6態様の何れか一態様に記載の容器において、前記外容器の前記外周壁は、前記キャップ側の端部から前記台座へ行くに従い拡径している。
【0012】
第8態様に係る容器は、第1態様~第7態様の何れか一態様に記載の容器において、前記内容物は、接着剤である。
【0013】
第9態様に係る容器は、第8態様に記載の容器において、前記内容器は、ポリオレフィン製である。
【0014】
第10態様に係る容器は、第9態様に記載の容器において、前記キャップは、ポリオレフィン製である。
【0015】
第11態様に係る容器は、第2態様~第10態様の何れか一態様に記載の容器において、前記台座の内側に乾燥剤を備える。
【0016】
第12態様に係る容器は、第1態様~第11態様の何れか一態様に記載の容器において、前記押圧部の表面には、凹部が形成されている。
【0017】
第13態様に係る容器は、第1態様~第12態様の何れか一態様に記載の容器において、前記押圧部は、前記外容器の外周壁より盛り上がっている盛り上がり部を有する。
【0018】
第14態様に係る容器は、第13態様に記載の容器において、前記盛り上がり部の最大厚みは、0.2mm以上であって1.0mm以下の範囲内である。
【0019】
第15態様に係る容器は、第1態様~第14態様の何れか一態様に記載の容器において、前記エラストマーは、A硬度が40以上であって80未満の範囲内である。
【0020】
第16態様に係る容器は、第1態様~第15態様の何れか一態様に記載の容器において、前記エラストマーは、JIS Z 0208に準拠して測定される厚さ0.5mmの試料での透湿度が2.0g/m・24hr未満である。
【0021】
第17態様に係る容器は、第1態様~第16態様の何れか一態様に記載の容器において、前記エラストマーは、JIS K 7126に準拠して測定される酸素透過係数が1.0×10-15mol・m/Pa・s・m未満である。
【発明の効果】
【0022】
第1態様に係る容器によれば、外容器の外周壁に形成された開口部がエラストマー製の押圧部で覆われている。これにより、押圧部を指で押して内容器を押圧することで、内容器に充填されている内容物をノズル部から容易に吐出させることができる。
【0023】
また、第1態様に係る容器によれば、キャップが外容器に装着され、外容器から突出したノズル部を覆っている。このため、キャップが内容器に着脱可能に設けられている構成と比して、容器のエアバリヤ性を向上させることができる。
【0024】
また、第1態様に係る容器によれば、硬質樹脂製の筒状の外容器で内容器を内包している。これにより、容器を不用意に押しても内容器のノズル部から内容物が吐出されることが抑制される。
【0025】
第2態様に係る容器によれば、台座を下にしてノズル部を上に向けた状態で作業台等の上に容器を立てることができる。
【0026】
第3態様に係る容器によれば、一対の押圧部を押圧してノズル部から内容物を吐出させるときに、一対の押圧部を親指と人差し指でつまんで押圧しやすい。
【0027】
第4態様に係る容器によれば、一対の押圧部が一体に連結されていない構成と比して、押圧部の外容器からの剥離が抑制される。
【0028】
第5態様に係る容器によれば、延長部を有さない構成と比して、押圧部の外容器からの剥離が抑制される。
【0029】
第6態様に係る容器によれば、キャップを着脱させるときにキャップを把持しやすい。
【0030】
第7態様に係る容器によれば、外容器がキャップ側の端部から台座へ行くに従い拡径している。このため、ノズル部を上に向けた状態で作業台等に置かれているときにおいて倒れにくい。
【0031】
第8態様に係る容器によれば、内容器に充填されている接着剤が不使用時において劣化しにくい。
【0032】
第9態様に係る容器によれば、内容器の内部に残留している接着剤が硬化しにくい。
【0033】
第10態様に係る容器によれば、キャップに覆われたノズル部の先端部に残留している接着剤が硬化しにくい。
【0034】
第11態様に係る容器によれば、容器の内部空間を乾燥させることができる。
【0035】
第12態様に係る容器によれば、押圧部の押圧において親指と人差し指を凹部にフィットさせることができる。
【0036】
第13態様に係る容器によれば、手探りで押圧部の位置を判別することができる。
【0037】
第14態様に係る容器によれば、盛り上がり部の最大厚みが0.2mm未満である構成と比して、手探りで押圧部の位置を判別しやすい。また、盛り上がり部の最大厚みが1.0mmを超える構成と比して、親指と人差し指による押圧部の押圧によって内容器を押圧しやすい。
【0038】
第15態様に係る容器によれば、エラストマーのA硬度が40未満である構成と比して、押圧部の押圧による内容物の吐出量を調整しやすい。また、エラストマーのA硬度が80以上である構成と比して、押圧部の押圧による内容物の吐出量を調整しやすい。
【0039】
第16態様に係る容器によれば、厚さ0.5mmの試料でのエラストマーの透湿度が2.0g/m・24hr以上である構成と比して、容器の水蒸気バリヤ性が向上する。
【0040】
第17態様に係る容器によれば、エラストマーの酸素透過係数が1.0×10-15mol・m/Pa・s・m以上である構成と比して、容器のエアバリヤ性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本開示の実施形態に係る容器の正面図である。
図2】本開示の実施形態に係る容器の側面図である。
図3】本開示の実施形態に係る容器の正面断面図である。
図4】本開示の実施形態に係る容器の、キャップが取り外されている状態における正面断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る容器の、押圧部まわりを拡大した正面断面図である。
図6】本開示の実施形態に係る容器の斜視図である。
図7】本開示の実施形態に係る容器の、キャップが取り外されている状態における斜視図である。
図8】本開示の実施形態に係る容器の分解斜視図である。
図9】本開示の実施形態に係る外容器の斜視図である。
図10】本開示の実施形態に係る外容器を親指と人差し指でつまんでいる概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示の実施形態に係る容器の一例について図1図10に従って説明する。
【0043】
ここで示される事項は例示的なもの、及び本開示の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本開示の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本開示の根本的な理解のために必要である程度以上に本開示の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本開示の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0044】
(容器10)
本実施形態に係る容器10は、図8に示されるように、内容物が充填されている内容器20と、内容器20を内包して保護する外容器70と、を備えている。外容器70には、キャップ40と、台座50と、が取付けられている。また、台座50の中には、乾燥剤60が収容されている。
【0045】
(内容器20)
内容器20は、本体部22と、ノズル部24と、を備える。本体部22は、図3図4及び図8に示されるように、一方向に延びる有底円筒状の部材である。本体部22は、可撓性を有している。本体部22は、底22aと、底22aとは反対側の端部に形成されている開口22bと、を有する。また、本体部22における開口22b側の端部の外周壁には、雄ねじ部22cが形成されている。
【0046】
本体部22の内側には、内容物の一例として液状、ペースト状、又はゼリー状の接着剤が充填されている。接着剤の具体例として、2-シアノアクリレート系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ゴム系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤が挙げられる。
【0047】
なお、本開示における内容器20の本体部22に充填される内容物は、接着剤に限定されず、またその性状も液状、ペースト状、又はゼリー状のものに限定されない。本開示における内容物は、例えば、硬化剤、コーティング剤、靴墨、ワックス等の化成品、山葵、生姜、辛子、大蒜、チョコレート等の食料品、練り歯磨き、化粧品、髪染め等の日用品、軟膏等の医薬品、絵の具等の文具等であってもよい。
【0048】
(ノズル部24)
ノズル部24は、本体部22の開口22b側の端部に設けられ、一方向に延びており両端部が長手方向に向けて開口している略円筒状の部材である。ノズル部24は、本体部22の開口22bとは反対側の先端部24aがテーパ状に縮径している。ノズル部24は、本体部22の開口22b側端部に、他のノズル部24の周壁よりも拡径している周壁である拡径部24bを有する。また、ノズル部24において拡径部24bの内周壁には、本体部22の雄ねじ部22cに対応している雌ねじ部24cが形成されている。ノズル部24は、雌ねじ部24cが雄ねじ部22cに螺結されることで、本体部22と接続されている。
【0049】
内容器20の本体部22は可撓性を有する。これにより、本体部22の周壁が押圧されることにより本体部22に充填されている接着剤等の内容物がノズル部24の先端部24a側の開口から吐出される。
【0050】
内容器20は、接着剤に対して不活性であり、且つ接着剤に対する浸透性又は透過性を有さない素材で形成されていることが好ましい。具体的には、内容器20は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、又はポリエチレンテレフタレートで形成されていることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂で形成されていることがより好ましい。すなわち、内容器20は、ポリオレフィン製であることがより好ましい。なお、本開示に係る内容器20を形成する素材は、特に限定されず、アルミニウム、錫、鉛等の金属等の材料であってもよい。
【0051】
(外容器70)
外容器70は、図9に示されるように、内容器20をノズル部24の先端が突出している状態で内包している部材である。外容器70は、本体部72と、エラストマー部80と、を備える。
【0052】
(本体部72)
本体部72は、一方向に延びており両端部が長手方向に向けて開口している略円筒状の部材である。本体部72は、内容器20のノズル部24側の端部からノズル部24とは反対側の端部に向けて、外周壁が略テーパ状に拡径している。図8に示されるように、本体部72の内側には、内容器20のノズル部24の先端が突出する側とは反対側の開口から、内容器20が挿入されている。また、本体部72は、図3及び図4に示されるように、本体部72に挿入された内容器20のノズル部24の先端が突出するように、内容器20の拡径部24bの外径部と嵌合可能な構造を有する。
【0053】
本体部72は、内容器20のノズル部24側の端部の外周壁に雄ねじ部72aが形成されている。また、本体部72は、内容器20のノズル部24の先端が突出する側とは反対側の端部に、後述する台座50の外周壁の内壁と嵌合可能な構造を有する嵌合部72bが形成されている。
【0054】
本体部72の外周壁には、図3図4図9に示されるように、本体部72の径方向から見て、内容器20の本体部22の雄ねじ部22cよりも底側の部位と重なっている部位に、外周壁を略矩形状に貫通する開口部74が形成されている。開口部74は、本体部72の径方向から見て長方形状であり、本体部72の外周壁において、本体部72の中心軸に対して軸対称である位置に一対形成されている。すなわち、外容器70の外周壁には、開口部74が外容器70の中心軸に対して軸対称に一対設けられている。
【0055】
本体部72の外周壁には、図9に示されるように、少なくとも開口部74の周囲において、該外周壁に対して凹であり、後述するエラストマー部80が被覆される部位である被覆部76が形成されている。被覆部76は、雄ねじ部72aと嵌合部72bとの間に形成された第1被覆部77と、嵌合部72bに形成された第2被覆部78と、を有する。
【0056】
第1被覆部77は、一対の開口部74まわりにおいて、本体部72の外周壁に周方向に巻かれるように形成されている。換言すると、本体部72の軸方向における、第1被覆部77の両側の縁部の間には、開口部74が位置している。また、第1被覆部77の、周方向において一対の開口部74に挟まれている部位の一部には、軸方向に沿って延びており、本体部72の外周壁と面一になるように径方向に立つ一対のリブ部77aが形成されている。また、第1被覆部77は、嵌合部72bに向けて外容器の軸方向に沿って延びており、第2被覆部78と繋がっている溝状の第1延長溝77bを有する。
【0057】
第2被覆部78は、嵌合部72bの周壁の一部が、他の嵌合部72bの外周壁に周方向で環状に巻かれるように形成されている。また、第2被覆部78は、第1被覆部77の第1延長溝77bに向けて外容器70の軸方向に沿って延びており、第1延長溝77bに食い込んでいる溝状の第2延長溝78bを有する。
【0058】
本体部72は、硬質樹脂で形成されている。本体部72を形成する硬質樹脂は、接着剤に対して不活性であり、且つ接着剤に対する浸透性又は透過性を有さない合成樹脂が好ましい。具体的には、本体部72を形成する硬質樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、又はポリエチレンテレフタレートが好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0059】
本体部72の外周壁において、径方向から見て内容器20の本体部22と重なっている部位は、最大厚みが1.0mm以上であって2.0mm以下の範囲内であることが好ましい。また、該部位の最大厚みは、1.2mm以上であって1.8mm以下の範囲内であることがより好ましい。実施形態における該部位の最大厚みは、1.5mmである。
【0060】
なお、エラストマー部80の詳細については後述する。
【0061】
(キャップ40)
キャップ40は、図1~3、図6図8に示されるように、内容器20のノズル部24が突出する側である外容器70の端部に着脱可能に設けられている。また、キャップ40は、外容器70から突出した内容器20のノズル部24を覆う、筒状の部材である。キャップ40は、外筒部42と、内筒部44と、を有する。
【0062】
外筒部42は、一方の端部が閉鎖され、他方の端部が開口している筒状の部位である。外筒部42の閉鎖されている部位は、頂部42aである。外筒部42の開口側の内周部には、外容器70の雄ねじ部72aに対応している雌ねじ部42bが形成されている。キャップ40は、外筒部42の雌ねじ部42bが外容器70の雄ねじ部72aに螺結されることで、外容器70に装着されている。外筒部42は、頂部42aから開口にかけてテーパ状に拡径している。キャップ40が外容器70に装着されているとき、外筒部42の外周部の壁面は、外容器70の外周壁の壁面に沿っており略面一である。
【0063】
外筒部42には、外筒部42の外周部から径方向に立っており、外筒部42の軸方向に沿って延びている複数のリブ42cが形成されている。具体的には、外筒部42には、4つのリブ42cが外筒部42の中心軸に対して軸対称に形成されている。
【0064】
内筒部44は、外筒部42の頂部42aの内壁から外筒部42の開口に向けて立つ、筒状の部位である。外筒部42の開口側の内筒部44の端部は、開口している。キャップ40が外容器70に装着されているとき、内筒部44は、内容器20のノズル部24の先端部24aの外周壁と嵌合して先端部24aを内側に収容する。
【0065】
キャップ40は、硬質樹脂で形成されている。キャップ40を形成する硬質樹脂は、接着剤に対して不活性であり、且つ接着剤に対する浸透性又は透過性を有さない合成樹脂が好ましい。具体的には、キャップ40を形成する硬質樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、又はポリエチレンテレフタレートが好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0066】
(台座50)
台座50は、図1~3、図6図8に示されるように、外容器70の嵌合部72bに着脱可能に設けられた筒状の部材である。台座50は、外筒部52と、内筒部54と、連結部56と、を有する。
【0067】
外筒部52は、両側の端部が開口している筒状の部位である。外筒部52の一方の端部は、該端部の内周壁が外容器70の嵌合部72bの外周壁と嵌合することで外容器70に装着されている嵌合部52aである。外筒部52の嵌合部52aとは反対側の端部は、脚部52bである。外容器70に装着されている外筒部52の脚部52bの端面は、外容器70の中心軸と直交している。外筒部52の外周部は、嵌合部52a側から脚部52b側にかけて拡径している。台座50が外容器70に装着されているとき、外筒部52の外周部の壁面は、外容器70の外周壁の壁面に沿っており略面一である。
【0068】
内筒部54は、外筒部52の内側に配置され、嵌合部52a側の端部が開口している有底円筒状の部位である。連結部56は、外筒部52と内筒部54とを連結しており、外筒部52と内筒部54とに挟まれた空間を、嵌合部52a側と脚部52b側とが通気しないように仕切っている部位である。
【0069】
台座50は、硬質樹脂で形成されている。台座50を形成する硬質樹脂は、接着剤に対して不活性であり、且つ接着剤に対する浸透性又は透過性を有さない合成樹脂が好ましい。具体的には、台座50を形成する硬質樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、又はポリエチレンテレフタレートが好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0070】
台座50及びキャップ40が外容器70に装着されているとき、容器10の内部空間は、密閉状態となる。すなわち、台座50及びキャップ40が外容器70に装着されているとき、容器10は、エアバリヤ性を有する。
【0071】
(乾燥剤60)
乾燥剤60は、台座50の内筒部54の内側に収容される、円柱状の部材である。乾燥剤60は、外容器70と、キャップ40と、台座50と、に包囲された空間内の空気に含まれる水分を吸収する。すなわち、乾燥剤60は、容器10の内部空間の空気に含まれる水分を吸収する。
【0072】
(エラストマー部80)
エラストマー部80は、図1図4図8図9に示されるように、本体部72の外周壁に設けられ、被覆部76を被覆しているエラストマー製の部材である。エラストマー部80は、第1被覆部77を被覆している第1エラストマー部82と、第2被覆部78を被覆している第2エラストマー部90と、を有する。
【0073】
(第1エラストマー部82)
第1エラストマー部82は、本体部72の第1被覆部77を被覆するように設けられ、本体部72の外周壁に周方向に巻かれるように形成されている。第1エラストマー部82は、押圧部84と、連結部86と、を有する。第1エラストマー部82は、押圧部84以外の部位が、本体部72の外周壁と略面一となるように形成されている。
【0074】
(押圧部84)
押圧部84は、第1エラストマー部82において、本体部72の開口部74を覆っている部位である。押圧部84は、一対の開口部74に対応して一対形成されている。押圧部84は、盛り上がり部84aと、凹部84bと、を有する。
【0075】
盛り上がり部84aは、図1図2図5図9に示されるように、押圧部84において、本体部72の外周壁より盛り上がっている、本体部72の径方向から見て略矩形状の部位である。本体部72の径方向における盛り上がり部84aの最大厚みTmaxは、0.2mm以上であって1.0mm以下の範囲内であることが好ましい。また、盛り上がり部84aの最大厚みTmaxは、0.3mm以上であって0.5mm以下の範囲内であることがより好ましい。実施形態における盛り上がり部84aの径方向の最大厚みTmaxは、0.35mmである。
【0076】
凹部84bは、盛り上がり部84aの表面の中央部分に形成され、盛り上がり部84aに対して凹である、径方向から見て楕円状の窪みである。凹部84bの最大深さは、0.2mm以上であって0.8mm以下の範囲内であることが好ましい。また、凹部84bの最大深さは、0.4mm以上であって0.6mm以下の範囲内であることがより好ましい。実施形態における凹部84bの最大深さは、0.5mmである。
【0077】
押圧部84は、本体部72の内周壁側の部位が、本体部72の内周壁と略面一となるように形成されている。また、押圧部84は、外周側から径方向に押圧されて弾性変形し、内容器20の本体部22に到達することで、本体部22の外周壁を押圧可能である。
【0078】
(連結部86)
連結部86は、第1エラストマー部82において、一対の押圧部84を本体部72の外周壁の第1被覆部77に周方向に巻かれるように一体に連結している部位である。連結部86は、第1被覆部77に沿って形成されている。連結部86は、第1被覆部77の第1延長溝77bに形成された第1延長部86aを有する。第1延長部86aは、嵌合部72bに向けて第1延長溝77bに沿って延びており、第2エラストマー部90と繋がっている。すなわち、連結部86の第1延長部86aは、嵌合部72bと嵌合する台座50に向けて延びている。第1延長部86aは、延長部の一例である。
【0079】
(第2エラストマー部90)
第2エラストマー部90は、嵌合部72bの第2被覆部78を被覆するように設けられ、嵌合部72bの外周壁の第2被覆部78に周方向に巻かれるように形成されている。第2エラストマー部90は、嵌合部72bの第2延長溝78bに形成されており、第2エラストマー部90を第1エラストマー部82の第1延長部86aと一体に連結している第2延長部92を有する。第2エラストマー部90は、嵌合部72bの外周壁と略面一となるように形成されている。
【0080】
(エラストマー部80の材料に関して)
エラストマー部80を形成するエラストマーは、柔軟性(A硬度)、エアバリヤ性(透湿度、酸素透過係数)、成形性、融着性を兼ね備えていることが好ましい。具体的には、該エラストマーは、イソブチレン系重合体ブロック及び芳香族ビニル系重合体ブロックから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体Aと中・低圧法ポリエチレン樹脂Bを含有するエラストマー組成物Xであることが好ましい。本実施形態におけるエラストマー部80は、上記エラストマー組成物Xで形成されている。
【0081】
イソブチレン系重合体ブロックは、イソブチレン系化合物に由来する構造単位(以下、イソブチレン系化合物単位ともいう)を含有するブロックである。
【0082】
イソブチレン系重合体ブロックを構成する全構造単位中、イソブチレン系化合物単位の含有量は、高温下での水蒸気バリヤ性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0083】
イソブチレン系重合体ブロックは、本開示の効果を損なわない範囲でイソブチレン以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、脂肪族オレフィン類、脂環式オレフィン類、芳香族ビニル類、ジエン類、ビニルエーテル類、ビニルシラン類、ビニルカルバゾール、β-ピネン、アセナフチレン等が挙げられる。
【0084】
イソブチレン系重合体ブロックの含有量は、イソブチレン系ブロック共重合体A中、好ましくは50~90質量%、より好ましくは55~85質量%、さらに好ましくは60~80質量%である。
【0085】
芳香族ビニル系重合体ブロックは、芳香族ビニル系化合物に由来する構造単位(以下、芳香族ビニル系化合物単位ともいう)を含有する。該芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、これらの2種類以上が併用されてもよい。これらの中では、入手が容易なスチレンが好ましい。
【0086】
芳香族ビニル系重合体ブロックを構成する全構造単位中の、芳香族ビニル系化合物単位の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0087】
芳香族ビニル系重合体ブロックは、本開示の効果を損なわない範囲で芳香族ビニル系化合物以外の単量体に由来する構造単位を含有してもよい。他の単量体としては、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等のイオン重合し得る共重合性単量体等が挙げられる。
【0088】
芳香族ビニル系重合体ブロックの含有量は、成形性の観点から、イソブチレン系ブロック共重合体A中、好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。
【0089】
イソブチレン系ブロック共重合体Aの重量平均分子量は、エアバリヤ性の観点から、10,000以上が好ましく、柔軟性と成形性の観点から、300,000以下が好ましい。これらの観点から、イソブチレン系ブロック共重合体Aの重量平均分子量は、好ましくは10,000~300,000、より好ましくは20,000~200,000、さらに好ましくは30,000~100,000である。
【0090】
イソブチレン系ブロック共重合体AのA硬度は、好ましくは10~50、より好ましくは15~45、さらに好ましくは20~40である。
【0091】
イソブチレン系ブロック共重合体Aの密度は、好ましくは0.920~0.970g/cm、より好ましくは0.930~0.960g/cm、さらに好ましくは0.940~0.950g/cmである。
【0092】
イソブチレン系ブロック共重合体Aの含有量は、エラストマー組成物X中、好ましくは、25~99質量%、より好ましくは25~98質量%、さらに好ましくは50~95質量%である。
【0093】
本開示の容器に用いられるエラストマー組成物は、融着性の観点から、ポリエチレン樹脂を含有することが好ましい。
ポリエチレン樹脂は、製造方法の違いにより、中・低圧法ポリエチレン樹脂と高圧法ポリエチレン樹脂とに大別できるが、中・低圧法により直鎖状の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)が、高圧法により長鎖分岐のある低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)が得られる。高密度ポリエチレン樹脂はエアバリヤ性が高く、低密度ポリエチレン樹脂はエアバリヤ性が低い。そしてさらに、近年では、中圧法により製造した第三のポリエチレン樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)も知られており、エアバリヤ性は、高圧法ポリエチレン樹脂よりは高い。従って、本開示における中・低圧法ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の少なくともいずれかが好ましく、高密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。
【0094】
高密度ポリエチレン樹脂は、低圧法ではチーグラー触媒(チタン系)、中圧法ではフィリップス触媒(クロム系)等を用いて、50~250℃の温度で、50~200気圧をかけてエチレンを重合させる方法で製造される。
【0095】
高密度ポリエチレン樹脂の密度は、エアバリヤ性の観点から、好ましくは0.942g/cm以上であり、より好ましくは0.945~0.970g/cmである。
【0096】
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の密度は、エアバリヤ性の観点から、好ましくは0.915~0.935g/cm、より好ましくは0.918~0.930g/cmである。
【0097】
高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)と低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)がホモポリエチレン重合体であるのに対し、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L-LDPE)は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。かかるα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチルペンテン-1、1-オクテン、1-デセン、4-メチルペンテン-1等が挙げられる。
【0098】
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を構成する全構造単位中、α-オレフィンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは4~17質量%、より好ましくは5~15質量%である。
【0099】
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、中圧法に用いられるフィリップス型触媒を用いて、エチレンとα-オレフィンとを共重合することにより製造されたものであり、従来の高密度ポリエチレン樹脂を共重合成分により短い枝分かれ構造とし、密度もこの短鎖枝分かれを利用して適当に低下させたものである。
従って、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、従来の高圧法により製造された低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)より直鎖性があり、かつ、高密度ポリエチレン樹脂より枝分かれが多い構造のポリエチレン樹脂である。直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、流動床反応器、撹拌床反応器、管型反応器等を用いる気相重合法の製造プロセスを適用し、例えば、特開昭54-148093号、同54-154488号等に記載されている方法(流動床反応器を使用した気相重合法)に基づいて製造することができる。
【0100】
中・低圧法ポリエチレン樹脂Bのメルトマスフローレイト(MFR)は、成形性の観点から、190℃、荷重21.2Nで、好ましくは0.5~50g/10min、より好ましくは1~30g/10min、さらに好ましくは1.5~25g/10minである。
【0101】
中・低圧法ポリエチレン樹脂Bの透湿度は、2.0g/m・24h未満が好ましく、より好ましくは1.8g/m・24h未満、さらに好ましくは1.6g/m・24h未満、さらに好ましくは1.0g/m・24h未満である。ここで、透湿度とは、JIZ 0208(カップ法)により測定された厚さ0.5mmのシート状の試料の、40℃での透湿度である。
【0102】
中・低圧法ポリエチレン樹脂Bの酸素透過係数は、1.0×10-15mol・m/Pa・s・m未満が好ましく、より好ましくは0.8×10-15mol・m/Pa・s・m未満、さらに好ましくは0.6×10-15mol・m/Pa・s・m未満である。ここで、酸素透過係数とは、JIS K 7126に準拠した方法により測定した値である。
【0103】
中・低圧法ポリエチレン樹脂Bの含有量は、イソブチレン系ブロック共重合体A 100質量部に対して、成形性と融着性の観点から、5質量部以上であり、柔軟性の観点から、300質量部以下である。これらの観点から、中・低圧法ポリエチレン樹脂Bの含有量は、イソブチレン系ブロック共重合体A 100質量部に対して、1~100質量部であり、好ましくは2~70質量部、より好ましくは3~60質量部、さらに好ましくは5~30質量部である。
【0104】
また、エラストマー組成物X中の中・低圧法ポリエチレン樹脂Bの含有量は、柔軟性の観点から、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは4~25質量%である。
【0105】
エラストマー組成物Xは、柔軟性、及び成形性の観点から、さらに、ゴム用軟化剤Cを含有していてもよい。ゴム用軟化剤Cとしては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、芳香族オイル等の鉱物油、ポリα-オレフィン、ポリブテン等のポリオレフィン系オイル等の合成軟化剤等が挙げられ、これらの中では、水蒸気バリヤ性の観点から、ポリオレフィン系オイルが好ましく、ポリブテンオイルがより好ましい。
【0106】
ゴム用軟化剤Cの40℃での動粘度は、長期耐熱性及びエアバリヤ性の観点から、好ましくは3,000~20,000mm/s、より好ましくは4,000~17,500mm/s、さらに好ましくは5,000~15,000mm/sである。
【0107】
ゴム用軟化剤Cの数平均分子量は、長期耐熱性及びエアバリヤ性の観点から、好ましくは600~2000、より好ましくは800~1500、さらに好ましくは900~1200である。
【0108】
また、エラストマー組成物X中のゴム用軟化剤Cの含有量は、成形性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0109】
エラストマー組成物Xは、L-LDPEへの融着性の観点から、さらに、結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン・α-オレフィンブロックを有するブロック共重合体Dを含有していてもよい。
【0110】
α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-オクテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1等が挙げられる。なかでも1-ブテンが好ましく、ブロック共重合体Dとしては、結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン・ブテンブロックを有するブロック共重合体(CEBC)が好ましい。本開示において、ブロック共重合体Dを、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0111】
また、ブロック共重合体Dは、ブロックの結合状態として、リニア構造とラジアル構造を持つものがある。リニア構造を持つ市販品の例として、ダイナロン6101、ダイナロン6200P(JSR社製)等が挙げられ、ラジアル構造を持つ市販品の例としては、ダイナロン6201B(JSR社製)等が挙げられる。本開示においてはいずれの構造のものも好ましく用いることができるが、同じ重量平均分子量の場合は、溶融流動性の高いラジアル構造のものがより好ましい。
【0112】
ブロック共重合体DのA硬度は、イソブチレン系ブロック共重合体Aと中・低密度ポリエチレン樹脂Bとの相溶化の観点から、40以上が好ましく、組成物の柔軟性の観点から、95以下が好ましい。これらの観点から、ブロック共重合体DのA硬度は、好ましくは40~95、より好ましくは50~90、さらに好ましくは60~80である。
【0113】
ブロック共重合体Dの含有量は、イソブチレン系ブロック共重合体A 100質量部に対して、イソブチレン系ブロック共重合体Aと中・低密度ポリエチレン樹脂Bの相溶化の観点から、1質量部以上が好ましく、柔軟性の観点から、50質量部以下が好ましい。これらの観点から、ブロック共重合体Dの含有量は、イソブチレン系ブロック共重合体A 100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0114】
また、エラストマー組成物Xは、水蒸気バリヤ性の観点から、無機フィラーEを含有していてもよい。
【0115】
無機フィラーEとしては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、焼成クレー、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等が挙げられ、これらの中では、水蒸気バリヤ性及び分散性の観点から、タルクが好ましい。
【0116】
無機フィラーには、粒状、板状、棒状、繊維状、ウィスカー状等の様々な形状のものが知られているが、本開示では、水蒸気バリヤ性及びエアバリヤ性の観点から、板状のものが好ましい。板状とは、長径と厚みの比(長径/厚み)が5以上、好ましくは10~500である形状をいう。
【0117】
無機フィラーEの体積基準メジアン径は、分散性の観点から、1.5μm以上が好ましく、水蒸気バリヤ性の観点から、50μm以下が好ましい。これらの観点から、板状の無機フィラーの体積基準メジアン径は、好ましくは1.5~50μm、より好ましくは1.75~30μm、さらに好ましくは2.0~15μmである。
【0118】
無機フィラーEの含有量は、イソブチレン系ブロック共重合体A 100質量部に対して柔軟性の観点から、500質量部以下が好ましい。これらの観点から、無機フィラーEの含有量は、イソブチレン系ブロック共重合体A 100質量部に対して、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、さらに好ましくは300質量部以下である。
【0119】
また、エラストマー組成物Xは、必要に応じて、本開示の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤;絶縁性熱伝導性フィラー、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0120】
また、エラストマー組成物Xは、本開示の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。
【0121】
本開示におけるエラストマー組成物Xは、イソブチレン系ブロック共重合体A及び中・低圧法ポリエチレン樹脂B、さらに必要に応じて、ゴム用軟化剤C、ブロック共重合体D、無機フィラーE等の添加剤を適宜混合し、固化させて得られる。
【0122】
本開示でいう「混合」とは、各種原料が良好に混合される方法であれば特に限定されず、各種原料を溶解可能な有機溶媒中に溶解させて混合してもよいし、加熱溶融混練によって混合してもよい。但し、原料の混合は、イソブチレン系ブロック共重合体A及び中・低圧法ポリエチレン樹脂Bが溶融する温度条件下で行うことが好ましい。
【0123】
各種原料を加熱溶融混練する場合には、任意の加熱溶融混錬機を用いる事ができ、例えば、バンバリーミキサー、ロールミキサー、押出機等を用いることができ、均一混合と生産性の面から、二軸押出機を使用することが好ましい。押出機への供給は、予めヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて各種成分を混合したものを一つのホッパーから供してもよいし、二つのホッパーにそれぞれの成分を仕込みホッパー下のスクリュー等で定量しながら供してもよい。
【0124】
エラストマー組成物Xを構成する原料を混合して得られる生成物は、用途に応じて、ペレット、粉体、シート等の形状とすることができる。例えば、押出機によって溶融混練してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状等のペレットに切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形によって所定のシート状成形品や金型成形品とする。また、溶融混練物をルーダー等でペレットにし成形加工原料とすることもできる。
【0125】
本開示に係るエラストマー組成物XのA硬度は、内容物の吐出量の調整のし易さの観点から、好ましくは40以上であって80未満の範囲内である。より好ましくは50以上であって75未満の範囲内であり、さらに好ましくは60以上であって70未満である。
【0126】
本開示に係るエラストマー組成物Xのメルトマスフローレイト(MFR)は、成形性、及び融着性の観点から、190℃、荷重21.2Nで、好ましくは0.1g/10min以上、より好ましくは1.0~15.0g/10min、さらに好ましくは1.0~10.0g/10min、なおさらに好ましくは2.0~4.0g/10min以上である。
【0127】
本開示に係るエラストマー組成物Xの透湿度は、内容物の保護(長期保存)の観点から、好ましくは2.0g/m・24h未満、より好ましくは1.8g/m・24h未満、さらに好ましくは1.6g/m・24h未満である。ここで、透湿度とは、JIS Z 0208(カップ法)により測定した厚さ0.5mmの試料における40℃での透湿度である。
【0128】
本開示に係るエラストマー組成物Xの酸素透過係数は、容器内容物の保護(長期保存)の観点から、1.0×10-15mol・m/Pa・s・m未満が好ましく、より好ましくは0.8×10-15mol・m/Pa・s・m未満、さらに好ましくは0.6×10-15mol・m/Pa・s・m未満である。ここで、酸素透過係数とは、JIS K 7126に準拠した方法により測定した値である。
【0129】
本開示に係る外容器70は、エラストマー組成物Xとポリオレフィン系樹脂とを二色成形することで、エラストマー部80が本体部72に融着している状態で得られる。
【0130】
本開示において、融着は、エラストマー組成物Xの融点以上の熱を加えて、融液にした後、融点以下の温度にして固化することで、融着対象の界面に固着する現象をいう。熱を加えるには、熱プレス機、加熱ロール機、熱風発生機、加熱蒸気、超音波ウェルダー、高周波ウェルダー、レーザー等を用いることができる。従って、融着部の界面が複雑な立体形状であっても、複雑な立体形状にうまくなじみ成形一体化することができる。
【0131】
従って、エラストマー組成物Xは、ポリオレフィン系樹脂と一体となって複合成形体とすることができる。これにより、複雑な接合面を有する部材や、互いに異なる形状の接合面を有する部材の複合化も可能となる。この複合成形体は、射出成形、射出圧縮成形、インサート成形、多色成形、真空成形、圧空成形、ブロー成形、熱プレス成形、発泡成形、レーザー融着成形、押出成形等の方法により、成形加工して得ることができる。
【0132】
(実施例)
以下に、本開示に係るエラストマー組成物Xとポリオレフィン系樹脂と、で構成される複合成形体の実施例を具体的に説明する。実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0133】
<成分A:イソブチレン系ブロック共重合体等>
〔ブロック共重合体の組成〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)によって、プロトンNMR測定を行い、スチレンの特性基の定量を行うことによってスチレン及び/又はスチレン誘導体の含有量、即ち芳香族ビニル系重合体ブロックの含有量を決定する。他の単量体単位の含有量もプロトンNMR測定により求めることができる。
【0134】
〔重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
【0135】
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光(株))製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工(株)製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工(株)製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/min
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工(株)製ポリスチレン
【0136】
〔A硬度〕
厚さ2mmのプレート状の射出成形体試料を3枚重ね(合計6mm)としたものについて、JIS K6253に準拠したA硬度(試験開始から15秒後の値)を測定する。測定は上記射出成形体試料を温度23℃、湿度50%の室内で1日状態調節の後、実施する。
【0137】
〔密度〕
アルファミラージュ社製の精密電子比重計「SD-200L」を用いて、23℃の条件下で大気中と水中とで質量を測定し、密度を算出する。
【0138】
<成分B:ポリエチレン樹脂等>
〔密度〕
アルファミラージュ社製の精密電子比重計「SD-200L」を用いて、23℃の条件下で大気中とエタノール中とで質量を測定し、密度を算出する。
【0139】
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
ASTM D1238に準拠して、190℃、荷重21.2Nの条件で測定する。
【0140】
〔透湿度〕
JIS Z 0208(カップ法)に準拠し、安田精機製作所製の透湿カップ(直径70mm)を用いて、条件:40℃×90%RH、シート厚さ:0.5mmで測定する。
【0141】
〔酸素透過係数〕
JIS K 7126に準拠した方法により、東洋精機製作所製のガス透過率測定装置「BR-3」を用いて23℃で測定する。試験片には、90mm×90mm×0.5mmt、透過面積38.5cmのものを使用する。
【0142】
<成分C:ゴム用軟化剤>
〔動粘度〕
JIS Z 8803に従って、40℃の温度で測定する。
【0143】
〔数平均分子量〕
成分Aと同様の方法により、ポリスチレン換算で数平均分子量を求める。
【0144】
<成分D:結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン・α-オレフィンブロックを有するブロック共重合体>
〔A硬度〕
厚さ2mmのプレート状の射出成形体試料を3枚重ね(合計6mm)としたものについて、JIS K6253に準拠したA硬度(試験開始から15秒後の値)を測定する。測定は上記射出成形体試料を温度23℃、湿度50%の室内で1日状態調節の後、実施する。
【0145】
〔密度〕
アルファミラージュ社製の精密電子比重計「SD-200L」を用いて、23℃の温度条件下で大気中とエタノール中とで質量を測定し、密度を算出する。
【0146】
<成分E:無機フィラー>
〔体積基準メジアン径〕
JIS M8511に定めるレーザー回折・散乱法に準じて、試料0.1gを10mLの脱イオン水に分散させ、70wの超音波で30秒間分散させたスラリーを、マルバーン社製「マスターサイザー2000」によりで粒度分布を測定し、体積基準の積算分率における50%値を体積基準メジアン径とする。
【0147】
(1) エラストマー組成物(ペレット)の作製
軟化剤(成分C)以外の原料をドライブレンドした後、これに軟化剤を含浸させて混合物を作製した。その後、混合物を下記の条件で、押出機で溶融混練して、ストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって、直径3mm程度、厚さ3mm程度に切断し、エラストマー組成物のペレットを製造した。
【0148】
〔溶融混練条件〕
押出機:KZW32TW-60MG-NH(商品名、(株)テクノベル製)
シリンダー温度:180~220℃
スクリュー回転数:300r/min
【0149】
エラストマー組成物のペレットの製造で使用した原料の詳細を、以下の表1~表3に示す。また、エラストマー組成物のペレットの製造にあたっては、夫々の原料の比率が異なる実施例1~7及び比較例1~5のエラストマー組成物のペレットを製造した。なお、実施例1~7及び比較例1~5のエラストマー組成物の詳細については後述する。
【0150】
(表1)

【0151】
(表2)

【0152】
(表3)

【0153】
(2)熱可塑性エラストマー組成物の成形体の作製
実施例1~7及び比較例1~5のエラストマー組成物のペレットを、下記の条件で射出成形し、厚さ2mm×幅125mm×長さ125mmのプレートを作製した。
【0154】
〔射出成形条件〕
射出成形機:100MSIII-10E(商品名、三菱重工業(株)製)
射出成形温度:200℃
射出圧力:30%
射出時間:3sec
金型温度:40℃
【0155】
(3)複合成形体の作製
ポリオレフィン系樹脂として、HDPE(東ソー社製のニポロンハード4020)、及びL-LDPE(プライムポリマー社製のエボリューSP2520)のペレットを、それぞれ下記の条件で射出成形し、厚さ2mm×幅125mm×長さ125mmの樹脂プレートを作製し、切断機でカットして、厚さ2mm×幅25mm×長さ125mmの融着試験基材を得た。
【0156】
〔樹脂プレート成形条件〕
ゲート:フィルムゲート
シリンダー温度:200℃
計量値:55mm
保圧切替位置:3.8mm
【0157】
厚さ4mm×幅25mm×長さ125mmの金型内に作製した樹脂プレートをインサートし、実施例1~7及び比較例1~5のエラストマー組成物を射出成形して、短冊状の複合成形体を作製した。
【0158】
<射出成形条件>
射出成形機:三菱重工業(株)製、100MSIII-10E
射出成形温度:240℃
射出圧力:98MPa、射出速度:50%、保持圧:20%、保持時間:10sec
射出時間:2sec
金型温度:40℃
【0159】
実施例1~7及び比較例1~5のエラストマー組成物及び該エラストマー組成物を用いた複合成形体について、下記の評価を行った。実施例1~7及び比較例1~5のエラストマー組成物の組成及び評価結果を表4及び表5に示す。
【0160】
〔エラストマー組成物のA硬度〕
厚さ2mmのプレート状の射出成形体試料を3枚重ね(合計6mm)としたものについて、JIS K6253に準拠したA硬度(試験開始から15秒後の値)を測定する。測定は上記射出成形体試料を温度23℃、湿度50%の室内で1日状態調節の後、実施する。
【0161】
〔エラストマー組成物のMFR〕
ASTM D1238に準拠し、190℃、荷重21.2Nの条件で測定した。
【0162】
〔エラストマー組成物の透湿度〕
エラストマー組成物を厚さ0.5mm×幅100mm×長さ120mmのプレス用型枠に入れ、200℃に加熱された熱プレス機(東邦マシーナリー社、油圧成形機TB-50-2型)を用いて2分間熱プレス、次いで3分間冷却プレスを行って、厚さ0.5mmのシート状のプレス成形体を試験片として作製した。
JIS Z 0208(カップ法)に準拠し、安田精機製作所製の透湿カップ(直径70mm)を用いて、条件:40℃×90%RH、シート厚さ:0.5mmで測定した。
【0163】
〔エラストマー組成物の酸素透過係数〕
エラストマー組成物を厚さ0.5mm×幅100mm×長さ120mmのプレス用型枠に入れ、200℃に加熱された熱プレス機(東邦マシーナリー社、油圧成形機TB-50-2型)を用いて2分間熱プレス、次いで3分間冷却プレスを行って、厚さ0.5mmのシート状のプレス成形体を試験片として作製した。試験片寸法は90mmかける90mmかける0.5mmt、透過面積38.5cmのものを使用した。
JIS K 7126に準拠した方法により、東洋精機製作所製のガス透過率測定装置「BR-3」を用いて23℃で測定した。
【0164】
〔複合成形体の融着性〕
複合成形体を用い、雰囲気温度23℃でエラストマー組成物の層(表皮材層)とポリオレフィン系樹脂の層(基材層)とを180°方向に50mm/minで引張試験を行い、表皮材層と基材層の剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。剥離強度は、120N/25mm以上が好ましい。
【0165】
(表4)

【0166】
(表5)


【0167】
以上の表4及び表5に示される結果より、実施例1~7の複合成形体は、エラストマー組成物のエアバリヤ性に優れ、エラストマー組成物とポリエチレン樹脂との融着も強固であることが分かる。
これに対し、エラストマー組成物がポリエチレン樹脂を含有していない比較例1及び比較例2は、透湿度が2.0g/m・24hrを超えており、実施例1~7と比して水蒸気バリヤ性に劣っている。エラストマー組成物が、ポリエチレン樹脂として高圧ポリエチレン樹脂である低密度ポリエチレン樹脂を含有した比較例3と、ポリエチレン樹脂の代わりにポリプロピレン樹脂を含有した比較例4とは、HDPEに対する融着性が不十分である。また、イソブチレン系ブロック共重合体の代わりに、SEBSを含有した比較例5は、透湿度が2.0g/m・24hrを超えており、実施例1~7と比して水蒸気バリヤ性に劣っている。
なお、参考例1は、成分Aの「SIBSTAR 062T」の物性を実施例及び比較例のエラストマー組成物と同様にして測定した結果であり、イソブチレン系ブロック共重合体そのものでは、HDPEにはほとんど融着しないが、所定量の中・低圧法ポリエチレン樹脂と混合することでHDPEへの融着性が現れることが分かる。
【0168】
(作用及び効果)
次に、実施形態の作用及び効果について説明する。なお、この説明において、実施形態に対する比較形態を記載するときに、実施形態の容器10と同様の部品等を用いる場合、その部品等の符号及び名称をそのまま用いて説明する。
【0169】
実施形態の容器10は、外容器70の外周壁に形成された開口部74がエラストマー製の押圧部84で覆われている構成を有している。よって、容器10は、図4及び図7に示されるように、キャップ40が外容器70から取り外されているときに、押圧部84を指等で押圧して内容器20の本体部22を押圧することで、内容器20の内容物をノズル部24から容易に吐出させることができる。
【0170】
また、実施形態の容器10は、キャップ40が外容器70に着脱可能に設けられている構成を有している。そして、実施形態の容器10は、キャップ40が外容器70に装着され、外容器70から突出した内容器20のノズル部24を覆っている。これにより、キャップ40が内容器20に着脱可能に設けられている構成と比して、容器10のエアバリヤ性を向上させることができる。
【0171】
また、実施形態の容器10は、硬質樹脂製の外容器70が、内容器20を内包している構成を有している。よって、実施形態の容器10は、容器10を不用意に押しても内容器20のノズル部24から内容物が吐出されることが抑制される。
【0172】
また、実施形態の容器10は、キャップ40とは反対側の外容器70の端部に台座50を備える構成を有している。よって、実施形態の容器10は、台座50を下にしてノズル部24の先端部24aを上に向けた状態で容器10を作業台等の上に立てることができる。これにより、容器10のユーザーが内容器20に充填された内容物を吐出させる作業を中断するときに、該ユーザーは容器10を作業台等の上に立てて内容物をノズル部24から漏れないようにすることができる。
【0173】
また、実施形態の容器10は、開口部74が、外容器70の中心軸に対して軸対称に一対設けられている構成を有している。よって、実施形態の容器10は、一対の押圧部84を押圧してノズル部24から内容物を吐出させるときに、一対の押圧部84を親指と人差し指でつまんで押圧しやすい(図10参照)。
【0174】
また、実施形態の容器10は、一対の押圧部84を外容器70の外周壁に巻かれるように一体に連結させる連結部86を有している。よって、実施形態の容器10では、一対の押圧部84が一体に連結されていない構成と比して、押圧部84の外容器70からの剥離が抑制される。
【0175】
また、実施形態の容器10は、連結部86から台座50に向かって延びる第1延長部86aを有している。よって、実施形態の容器10は、第1延長部86aを有さない構成と比して、エラストマー部80の外容器70に対する融着面積を大きいことで、押圧部84の外容器70からの剥離が抑制される。
【0176】
また、実施形態の容器10は、キャップ40の外筒部42の外周壁に複数のリブ42cが形成されている構成を有している。よって、実施形態の容器10は、ユーザーが手作業でキャップ40を着脱させるときに、指がリブに引っ掛かるので、キャップを把持させやすくすることができる。
【0177】
また、実施形態の容器10は、外容器70の外周壁が、キャップ40側の端部から台座50へ行くに従い拡径している構成を有している。よって、実施形態の容器10は、ノズル部24の先端部24aを上に向けた状態で作業台等に置かれているときにおいて倒れにくい。
【0178】
また、実施形態の容器10は、内容器20の内容物が接着剤である構成を有している。よって、実施形態の容器10は、エアバリヤ性を有していることで、内容器20に充填されている接着剤が不使用時において劣化しにくい。
【0179】
また、実施形態の容器10は、内容器20がポリオレフィン製である構成を有している。よって、実施形態の容器10は、ノズル部24の内側に残留している接着剤が硬化しにくい。
【0180】
また、実施形態の容器10は、キャップ40がポリオレフィン製である構成を有している。よって、実施形態の容器10は、キャップ40に覆われたノズル部24の先端部24aに残留している接着剤が硬化しにくい。
【0181】
また、実施形態の容器10は、台座50の内側に乾燥剤60を備える構成を有している。よって、実施形態の容器10は、容器10の内部空間内の空気に含まれる水分を吸収することで、該空間を乾燥させることができる。
【0182】
また、実施形態の容器10は、押圧部84の表面に凹部84bが形成されている構成を有している。よって、実施形態の容器10は、押圧部84の押圧において親指と人差し指を凹部84bにフィットさせることができる(図10参照)。
【0183】
また、実施形態の容器10は、押圧部84が盛り上がり部84aを有している。よって、実施形態の容器10は、ユーザーが手探りで押圧部84の位置を判別することができる。
【0184】
また、実施形態の容器10は、盛り上がり部84aの最大厚みTmaxが0.2mm以上であって1.0mm以下の範囲内である構成を有している。よって、実施形態の容器10は、盛り上がり部84aの最大厚みTmaxが0.2mm未満である構成と比して、ユーザーが手探りで押圧部84の位置を判別しやすい。また、実施形態の容器10は、盛り上がり部84aの最大厚みTmaxが1.0mmを超える構成と比して、親指と人差し指による押圧部84の押圧によって内容器20を押圧しやすい。
【0185】
また、実施形態の容器10は、エラストマー組成物XのA硬度が40以上であって80未満の範囲内である構成を有している。よって、実施形態の容器10は、押圧部84を形成するエラストマーのA硬度が40未満である構成と比して、押圧部84の押圧による内容物の吐出量を調整しやすい。また、実施形態の容器10は、押圧部84を形成するエラストマーのA硬度が80以上である構成と比して、押圧部84の押圧による内容物の吐出量を調整しやすい。
【0186】
また、実施形態の容器10は、JIS Z 0208に準拠して測定される、厚さ0.5mmの試料でのエラストマー組成物Xの透湿度が2.0g/m・24hr未満である構成を有している。よって、実施形態の容器10は、押圧部84を形成するエラストマーの、厚さ0.5mmの試料での透湿度が2.0g/m・24hr以上である構成と比して、容器10の水蒸気バリヤ性が向上する。
【0187】
また、実施形態の容器10は、JIS K 7126に準拠して測定される酸素透過係数が1.0×10-15mol・m/Pa・s・m未満である構成を有している。よって、実施形態の容器10は、押圧部84を形成するエラストマーの酸素透過係数が1.0×10-15mol・m/Pa・s・m以上である構成と比して、容器10のエアバリヤ性が向上する。
【0188】
以上のとおり、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想の範囲内にて種々の変形、変更、改良が可能である。
【0189】
例えば、実施形態の容器10は、台座50を備えるものとした。しかしながら、本開示に係る容器10は、外容器70とキャップ40のみで内容器20に対するエアバリヤ性を有しているのであれば、台座50を備えない構成であってもよい。
【0190】
また、実施形態において開口部74は、外容器70の中心軸に対して軸対称に一対設けられているものとした。しかしながら、本開示に係る開口部74は、外容器70の中心軸に対して軸対称に一対設けられているものに限定されない。本開示における開口部74は、外容器70の外周壁に1つのみ設けられている構成であってもよく、また3つ以上設けられている構成であってもよい。また、本開示における外容器70に複数設けられた開口部74は、外容器70の中心軸に対して軸対称でないものであってもよい。
【0191】
また、実施形態の容器10は、一対の押圧部84が連結部86によって一体となって連結されている構成を有するものとした。しかしながら、本開示に係る一対の押圧部84は、一体となって連結されていない構成であってもよい。
【0192】
また、実施形態の容器10は、第1延長部86aを有するものとした。しかしながら、本開示に係る容器10は、第1延長部86aを有さない構成であってもよい。また、本開示に係る容器10は、第1エラストマー部82と第2エラストマー部90とが繋がっていない構成であってもよい。また、本開示に係る容器10は、第2エラストマー部90を有さない構成であってもよい。
【0193】
また、実施形態のキャップ40は、リブ42cが形成されているものとした。しかしながら、本開示に係るキャップ40は、リブ42cが形成されていないものであってもよい。
【0194】
また、実施形態に係る外容器70と、キャップ40と、台座50と、は、キャップ40側の端部から台座50へ行くに従い拡径している構成を有するものとした。しかしながら、本開示に係る外容器70と、キャップ40と、台座50と、は、拡径又は縮径している構成を有さないものであってもよく、夫々の外周壁の外径が一様である構成であってもよい。また、本開示に係る外容器70と、キャップ40と、台座50と、は、夫々の外周壁が異なっており互いに面一でない構成であってもよい。
【0195】
また、実施形態において押圧部84の凹部84bは、径方向から見て楕円状とした。しかしながら、本開示における凹部84bは、楕円状のものに限定されない。本開示に係る凹部84bは、径方向から見て円状であってもよく、またしずく状であってもよい。また、本開示における凹部84bは、径方向から見て三角形、四角形等の多角形状であってもよい。
【0196】
また、実施形態において押圧部84の盛り上がり部84aには、盛り上がり部84aに対して凹である凹部84bが形成されているものとした。しかしながら、本開示に係る盛り上がり部84aには、盛り上がり部84aに対して凸である凸部が形成されていてもよい。また、本開示に係る押圧部84は、凹部84b又は該凸部が形成されていなくてもよい。
【0197】
また、実施形態の容器10は、押圧部84が盛り上がり部84aを有するものとした。しかしながら、本開示に係る容器10は、押圧部84が盛り上がり部84aを有さなくてもよい。
【0198】
また、実施形態の容器10は、エラストマー部80が外容器70の本体部72の外周壁に対して略面一であるとした。しかしながら、本開示に係るエラストマー部80は、外容器70の本体部72の外周壁に対して段差を有するものであってもよい。
【0199】
また、実施形態の容器10は、外容器70の本体部72が略円筒状であるものとした。しかしながら、本開示に係る外容器70は、筒状のものであれば、略円筒状のものに限定されず、径方向から見て略矩形状であって筒状のものであってもよい。
【0200】
また、実施形態の容器10は、乾燥剤60を備えるものとした。しかしながら、本開示に係る容器10は、乾燥剤60を備えていなくてもよい。
【0201】
2020年11月20日に出願された日本国特許出願2020-193893号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載されたすべての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10