IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大真空の特許一覧

<>
  • 特許-圧電振動デバイス 図1
  • 特許-圧電振動デバイス 図2
  • 特許-圧電振動デバイス 図3
  • 特許-圧電振動デバイス 図4
  • 特許-圧電振動デバイス 図5
  • 特許-圧電振動デバイス 図6
  • 特許-圧電振動デバイス 図7
  • 特許-圧電振動デバイス 図8
  • 特許-圧電振動デバイス 図9
  • 特許-圧電振動デバイス 図10
  • 特許-圧電振動デバイス 図11
  • 特許-圧電振動デバイス 図12
  • 特許-圧電振動デバイス 図13
  • 特許-圧電振動デバイス 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
H03B5/32 A
H03B5/32 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022574035
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2021048747
(87)【国際公開番号】W WO2022149541
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021002000
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】古城 琢也
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139053(JP,A)
【文献】特開2010-283475(JP,A)
【文献】特開2018-196105(JP,A)
【文献】特開2005-165630(JP,A)
【文献】特開2018-014705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコア部を備えた圧電振動デバイスであって、
前記コア部には、振動部が気密封止された3枚重ね構造の圧電振動子と、発熱体が含まれ、
前記圧電振動子の少なくとも一主面全体が、前記発熱体と熱的に結合され
前記コア部が、絶縁材料からなるパッケージの内部に実装されるとともに、前記パッケージに蓋が接合されることによって気密に封止され、
前記コア部には、前記発熱体に接合材を介して接合された基板が含まれており、
前記基板は、前記パッケージよりも熱伝導率が低い絶縁材料によって形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動子上には、発振用ICが搭載されており、前記発振用ICの能動面全体が、前記圧電振動子または前記発熱体と熱的に結合されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動子の熱容量が、前記発熱体の熱容量よりも小さいことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記絶縁材料は、水晶、ガラス、または樹脂であることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項5】
請求項に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記基板が、第1の接着剤を介して前記パッケージに接合されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項6】
請求項に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動子と前記発熱体とが第2の接着剤を介して接合され、
前記第2の接着剤の熱伝導率が、前記第1の接着剤の熱伝導率よりも高いことを特徴とする圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の動作周波数の高周波化や、パッケージの小型化や低背化(薄型化)が進んでいる。そのため、高周波化やパッケージの小型化や低背化にともなって、圧電振動デバイス(例えば、水晶振動子、水晶発振器等)も高周波化やパッケージの小型化や低背化への対応が求められている。
【0003】
この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が略直方体形状のパッケージで構成されている。このパッケージは、例えばガラスや水晶からなる第1封止部材および第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された圧電振動板とから構成されている。そして、第1封止部材と第2封止部材とが圧電振動板を介して積層して接合されて、パッケージの内部(内部空間)に配された圧電振動板の振動部が気密封止されている。
【0004】
ところで、水晶振動子等の圧電振動子は、固有の周波数温度特性に基づいて、温度に応じて振動周波数が変化する。そこで、圧電振動子の周囲の温度を一定に保つために、恒温槽内に圧電振動子を封入した恒温槽型圧電発振器(Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator:以下、「OCXO」とも言う。)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6376681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような圧電振動デバイスにおいて、圧電振動子と発熱体(例えばヒータ用ICやヒータ基板等)とが離間して配置された場合、圧電振動子と発熱体との間で温度差が発生する可能性があり、これに起因して、OCXOによる温度調整の精度が悪化する可能性がある。このため、OCXOの発振周波数が不安定になることが懸念される。
【0007】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、振動部が気密封止された3枚重ね構造の圧電振動子と、発熱体とを含むコア部の温度をより速く目的の温度に昇温させることが可能な圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、少なくともコア部を備えた圧電振動デバイスであって、前記コア部には、振動部が気密封止された3枚重ね構造の圧電振動子と、発熱体が含まれ、前記圧電振動子の少なくとも一主面全体が、前記発熱体と熱的に結合され、前記コア部が、絶縁材料からなるパッケージの内部に実装されるとともに、前記パッケージに蓋が接合されることによって気密に封止され、前記コア部には、前記発熱体に接合材を介して接合された基板が含まれており、前記基板は、前記パッケージよりも熱伝導率が低い絶縁材料によって形成されていることを特徴とする。なお、前記圧電振動子上には、発振用ICが搭載されていてもよく、この場合、発振用ICの能動面全体が、圧電振動子または発熱体と熱的に結合されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、3枚重ね構造の圧電振動子の少なくとも一主面全体が発熱体と熱的に結合されているので、圧電振動子を効率的に加熱することができる。これにより、より速くコア部を目的の温度に昇温させることができ、圧電振動デバイスの周波数の変動を抑制することができる。また、コア部を、絶縁材料からなるパッケージの内部に実装して蓋で気密封止することにより、コア部が外部環境に晒されることがなくなるので、コア部の温度を恒温化することができる。また、コア部に、パッケージよりも熱伝導率が低い絶縁材料からなる基板(コア基板)が含まれることにより、発熱体によって温められた圧電振動子の熱を、例えばアルミナのようなセラミックを母材とするパッケージ側に伝導することを抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記圧電振動子の熱容量が、前記発熱体の熱容量よりも小さいことが好ましい。この構成によれば、3枚重ね構造の圧電振動子の熱容量が、発熱体の熱容量よりも小さいので、圧電振動子を速やかに昇温させることができる。これにより、圧電振動デバイスの周波数の変動を抑制することができる。
【0013】
上記構成において、前記絶縁材料は、水晶、ガラス、または樹脂であることが好ましい。この構成によれば、コア部に、水晶、ガラス、または樹脂からなる基板(コア基板)が含まれることにより、発熱体によって温められた圧電振動子の熱を、例えばアルミナのようなセラミックを母材とするパッケージ側に伝導することを抑制することができる。
【0014】
上記構成において、前記基板が、第1の接着剤を介して前記パッケージに接合されていることが好ましい。この構成によれば、水晶、ガラス、または樹脂からなる基板(コア基板)が第1の接着剤を介してパッケージに接合されることにより、コア部の熱をパッケージ側に伝導させにくくすることができる。
【0015】
上記構成において、前記圧電振動子と前記発熱体とが第2の接着剤を介して接合され、前記第2の接着剤の熱伝導率が、前記第1の接着剤の熱伝導率よりも高いことが好ましい。この構成によれば、第2の接着剤の熱伝導率が、第1の接着剤の熱伝導率よりも高いことにより、パッケージ側よりも先に発熱体からの熱を圧電振動子に効率よく伝導させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の圧電振動デバイスによれば、3枚重ね構造の圧電振動子の少なくとも一主面全体が発熱体と熱的に結合されているので、圧電振動子を効率的に加熱することができる。これにより、より速くコア部を目的の温度に昇温させることができ、圧電振動デバイスの周波数の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明を適用した実施形態にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図2図2は、図1のOCXOのコア部およびコア基板の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、図2のコア部およびコア基板を示す平面図である。
図4図4は、図2のコア部の水晶発振器(水晶振動子および発振用IC)の各構成を模式的に示した概略構成図である。
図5図5は、図4の水晶発振器の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図6図6は、図4の水晶発振器の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図7図7は、図4の水晶発振器の水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
図8図8は、図4の水晶発振器の水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
図9図9は、図4の水晶発振器の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図10図10は、図4の水晶発振器の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図11図11は、変形例1にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図12図12は、図11のOCXOの平面図である。
図13図13は、変形例2にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図14図14は、変形例3にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下では、本発明をOCXO(Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator)に適用した実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態にかかるOCXO1は、図1に示すように、セラミック製等で略直方体のパッケージ(筐体)2の内部にコア部5が配置され、リッド(蓋)3によって気密封止された構造とされている。パッケージ2には、上方が開口された凹部2aが形成されており、凹部2aの内部にコア部5が気密状態で封入されている。凹部2aを囲う周壁部2bの上面には、リッド3が封止材8を介してシーム溶接によって固定されており、パッケージ2の内部が密封状態(気密状態)になっている。封止材8としては、例えばAu-Su合金や、はんだ等の金属系封止材が好適に用いられるが、低融点ガラス等の封止材を用いてもよい。パッケージ2の内部空間は、真空、または低圧の窒素やアルゴン等の熱伝導率が低い雰囲気であることが好ましい。
【0020】
パッケージ2の周壁部2bの内壁面には、接続端子(図示省略)の並びに沿った段差部2cが形成されており、段差部2cに形成された接続端子に、板状のコア基板4を介してコア部5が接続されている。コア基板4は、パッケージ2の対向する一対の段差部2c,2c間に架け渡されるように配置されており、一対の段差部2c,2cの間であってコア基板4の下側の部分には、空間2dが形成されている。そして、段差部2cの段差面上に形成された接続端子が、導電性接着剤7を介してコア基板4の下面4bに形成された接続端子(図示省略)に接続されている。また、コア部5の各構成部材に形成された外部端子(図示省略)が、ワイヤ6a,6bを介してコア基板4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。導電性接着剤7としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。
【0021】
次に、コア部5について、図2図3を参照して説明する。図2図3では、コア部5がコア基板4上に搭載された状態を図示している。コア部5は、OCXO1で使用される各種電子部品をパッケージングしたものであり、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された3層構造(積層構造)の構成になっている。水晶振動子50として、振動部11が気密封止された3枚重ね構造のものが用いられている。発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52は、平面視におけるそれぞれの面積が、上方に向かって漸次小さくなっている。コア部5は、水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ用IC52の温度調整を行うことで、OCXO1の発振周波数を安定させるように構成されている。なお、コア部5の各種電子部品は封止樹脂によって封止されていないが、封止雰囲気によっては封止樹脂による封止を行うようにしてもよい。
【0022】
水晶振動子50および発振用IC51によって、水晶発振器100が構成される。発振用IC51は、複数の金属バンプ51a(図4参照)を介して水晶振動子50上に搭載されている。発振用IC51によって水晶振動子50の圧電振動を制御することにより、OCXO1の発振周波数が制御される。水晶発振器100の詳細については後述する。
【0023】
水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間には、非導電性接着剤(アンダーフィル)53が介在されており、非導電性接着剤53によって水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面201)と、発振用IC51の下面とが、非導電性接着剤53を介して接合される。非導電性接着剤53としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。また、水晶振動子50の上面に形成された外部端子(図5に示す電極パターン22)が、ワイヤ6aを介してコア基板4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。
【0024】
発振用IC51は、平面視における面積が水晶振動子50よりも小さくなっており、発振用IC51の全体が、平面視で水晶振動子50の範囲内に位置している。発振用IC51の下面の全体が、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面201)に接合されている。
【0025】
ヒータ用IC52は、例えば発熱体(熱源)と、発熱体の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされている。ヒータ用IC52によってコア部5の温度制御を行うことにより、コア部5の温度が略一定の温度に維持され、OCXO1の発振周波数の安定化が図られている。
【0026】
水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間には、非導電性接着剤54が介在されており、非導電性接着剤54によって水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面302)と、ヒータ用IC52の上面とが、非導電性接着剤54を介して接合される。非導電性接着剤54としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。ヒータ用IC52の上面に形成された外部端子(図示省略)が、ワイヤ6bを介してコア基板4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。
【0027】
水晶振動子50は、平面視における面積がヒータ用IC52よりも小さくなっており、水晶振動子50の全体が、平面視でヒータ用IC52の範囲内に位置している。水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面302)の全体が、ヒータ用IC52の上面に接合されている。
【0028】
ヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面の間には、導電性接着剤55が介在されており、導電性接着剤55によってヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面が固定されている。この場合、ヒータ用IC52の下面と、コア基板4の上面4aとが、導電性接着剤55を介して接合される。これにより、ヒータ用IC52が導電性接着剤55およびコア基板4を介してグランド接続されるようになっている。導電性接着剤55としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。なお、例えばワイヤ等を介してヒータ用IC52がグランド接続される場合には、導電性接着剤の代わりに、上述した非導電性接着剤53,54と同様の非導電性接着剤を用いてもよい。
【0029】
コア基板4の上面4aには、上述したように、多数の接続端子4cが形成されている。また、コア基板4の上面4aには、複数(図3では2つ)のチップコンデンサ(バイパスコンデンサ)4dが配置されている。なお、チップコンデンサ4dのサイズや数については特に限定されない。
【0030】
コア部5に用いられる水晶振動子50の種類は特に限定されるものではないが、デバイスを薄型化しやすい、サンドイッチ構造のデバイスを好適に使用できる。サンドイッチ構造のデバイスは、ガラスや水晶からなる第1、第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが、圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された圧電振動板の振動部が気密封止される3枚重ね構造のデバイスである。
【0031】
このようなサンドイッチ構造の水晶振動子50と、発振用IC51とが一体的に設けられた水晶発振器100について、図4図10を参照して説明する。
【0032】
水晶発振器100は、図4に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、第2封止部材30、および発振用IC51を備えて構成されている。この水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。すなわち、水晶発振器100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に振動部11(図7図8参照)が気密封止される。
【0033】
水晶発振器100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージでは、キャスタレーションを形成せずに、スルーホールを用いて電極の導通を図っている。第1封止部材20上に搭載される発振用IC51は、水晶振動板10とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子である。また、水晶発振器100は、上述したヒータ用IC52上に、非導電性接着剤54を介して搭載される。
【0034】
水晶振動板10は、図7図8に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101,第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。図7図8に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。
【0035】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111,第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部(連結部)13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。振動部11と外枠部12との間には、貫通部(スリット)11aが形成されており、振動部11と外枠部12とが、1つの保持部13のみによって接続されている。
【0036】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111,第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するための引出配線(第1引出配線113,第2引出配線114)が接続されている。第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0037】
水晶振動板10の両主面(第1主面101,第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動側封止部としては振動側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動側封止部としては振動側第2接合パターン122が形成されている。振動側第1接合パターン121および振動側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。
【0038】
また、水晶振動板10には、図7図8に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第1スルーホール161は、外枠部12の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2スルーホール162は、外枠部12であって、振動部11のZ´軸方向の一方側(図7図8では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール161の周囲には、それぞれ接続用接合パターン123が形成されている。また、第2スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0039】
第1スルーホール161および第2スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール161および第2スルーホール162それぞれの中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0040】
次に、第1封止部材20は、図5図6に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶発振器100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0041】
第1封止部材20の第1主面201には、図5に示すように、発振回路素子である発振用IC51を搭載する搭載パッドを含む6つの電極パターン22が形成されている。発振用IC51は、金属バンプ(例えばAuバンプなど)51a(図4参照)を用いて電極パターン22に、FCB(Flip Chip Bonding)法により接合される。また、本実施形態では、6つの電極パターン22のうち、第1封止部材20の第1主面201の4隅(角部)に位置する電極パターン22は、上述したコア基板4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤ6aを介して接続されている。これにより、発振用IC51が、ワイヤ6a、コア基板4、パッケージ2等を介して、外部に電気的に接続されるようになっている。
【0042】
第1封止部材20には、図5図6に示すように、6つの電極パターン22のそれぞれと接続され、第1主面201と第2主面202との間を貫通する6つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第3スルーホール211が、第1封止部材20の4隅(角部)の領域に設けられている。第4,第5スルーホール212,213は、図5図6の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0043】
第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0044】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止側第1封止部としての封止側第1接合パターン24が形成されている。封止側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。
【0045】
また、第1封止部材20の第2主面202では、第3スルーホール211の周囲に接続用接合パターン25がそれぞれ形成されている。第4スルーホール212の周囲には接続用接合パターン261が、第5スルーホール213の周囲には接続用接合パターン262が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。
【0046】
次に、第2封止部材30は、図9図10に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0047】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止側第2封止部としての封止側第2接合パターン31が形成されている。封止側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。
【0048】
第2封止部材30の第2主面302には、4つの電極端子32が設けられている。電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅(角部)にそれぞれ位置する。なお、本実施形態では、上述したように、電極パターン22、ワイヤ6aを介して外部との電気的に接続が行われるが、電極端子32を用いて外部との電気的な接続を行うことも可能になっている。
【0049】
第2封止部材30には、図9図10に示すように、第1主面301と第2主面302との間を貫通する4つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第6スルーホール33は、第2封止部材30の4隅(角部)の領域に設けられている。第6スルーホール33には、第1主面301と第2主面302とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第6スルーホール33それぞれの内壁面に沿って形成されている。このように第6スルーホール33の内壁面に形成された貫通電極によって、第1主面301に形成された電極と、第2主面302に形成された電極端子32とが導通されている。また、第6スルーホール33それぞれの中央部分は、第1主面301と第2主面302との間を貫通した中空状態の貫通部分となっている。また、第2封止部材30の第1主面301では、第6スルーホール33の周囲には、それぞれ接続用接合パターン34が形成されている。なお、電極端子32を用いて外部との電気的な接続を行わない場合には、電極端子32、第6スルーホール33等を設けない構成としてもよい。
【0050】
上記の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図4に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これにより、パッケージの内部空間、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0051】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶発振器100では、第1励振電極111、第2励振電極112、発振用IC51および電極端子32の電気的導通が得られるようになっている。
【0052】
具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第4スルーホール212および電極パターン22を順に経由して、発振用IC51に接続される。第2励振電極112は、第2引出配線114、第2スルーホール162、第5スルーホール213および電極パターン22を順に経由して、発振用IC51に接続される。
【0053】
水晶発振器100において、各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着形成されているものとすることが好ましい。また、水晶発振器100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0054】
上述のように構成された水晶発振器100では、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止部(シールパス)115,116は、平面視で、環状に形成されている。シールパス115は、上述した振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24の拡散接合によって形成され、シールパス115の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。同様に、シールパス116は、上述した振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31の拡散接合によって形成され、シールパス116の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。
【0055】
本実施形態では、少なくともコア部5を備えたOCXO1において、コア部5には、振動部11が気密封止された3枚重ね構造の水晶振動子50と、発熱体としてのヒータ用IC52が含まれており、水晶振動子50の少なくとも一主面全体が、ヒータ用IC52と熱的に結合されている。この場合、水晶振動子50の第2封止部材30の第2主面302の全体が、ヒータ用IC52の上面に非導電性接着剤54(第2の接着剤)を介して面接触している。このように、3枚重ね構造の水晶振動子50の少なくとも第2封止部材30の第2主面302の全体が、ヒータ用IC52と熱的に結合されているので、水晶振動子50を効率的に加熱することができる。これにより、より速くコア部5を目的の温度に昇温させることができ、OCXO1の周波数の変動を抑制することができる。
【0056】
また、水晶振動子50上には、発振用IC51が搭載されており、発振用IC51の能動面(図1図4では下面)の全体が、水晶振動子50と熱的に結合されている。この場合、発振用IC51の能動面全体が、水晶振動子50の第1封止部材20の第1主面301に非導電性接着剤53を介して面接触している。これにより、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を含むコア部5をより速く目的の温度に昇温させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、水晶振動子50の熱容量が、ヒータ用IC52の熱容量よりも小さくなっている。これにより、3枚重ね構造の水晶振動子50を速やかに昇温させることができ、OCXO1の周波数の変動を抑制することができる。また、発振用IC51の熱容量も、ヒータ用IC52の熱容量よりも小さくなっており、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を含むコア部5をより速く目的の温度に昇温させることができる。なお、熱容量は、発振用IC51、水晶振動子50、ヒータ用IC52の順で大きくなっている。また、厚みについても、発振用IC51、水晶振動子50、ヒータ用IC52の順で大きくなっている。例えば、発振用IC51の厚みは0.08~0.10mm、水晶振動子50の厚みは0.12mm、ヒータ用IC52の厚みは0.28~0.30mmである。
【0058】
また、本実施形態では、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された3層構造(積層構造)の構成になっているが、発熱体であるヒータ用IC52が最も熱容量が大きくなっている。これにより、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を含むコア部5をより速く目的の温度に昇温させることができる。
【0059】
さらに、平面視において、水晶振動子50とヒータ用IC52との接合領域が、ヒータ用IC52の上面の領域内に収まっているので、ヒータ用IC52から水晶振動子50への熱伝導を効率的に行うことができ、水晶振動子50を速やかに昇温させることができる。
【0060】
本実施形態では、コア部5が、絶縁材料からなるパッケージ2の内部に実装されるとともに、パッケージ2にリッド3が接合されることによって気密に封止されている。この場合、パッケージ2は、例えばアルミナのようなセラミックによって形成される。このように、コア部5を、絶縁材料からなるパッケージ2の内部に実装してリッド3で気密封止することにより、コア部5が外部環境に晒されることがなくなるので、コア部5の温度を恒温化することができる。さらに、コア基板4を介してコア部5がパッケージ2に固定されているので、OCXO1が搭載される実装基板からの応力がコア部5に伝わりにくくなり、コア部5の保護を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、コア部5には、ヒータ用IC52に接合材を介して接合されたコア基板4が含まれており、コア基板4は、パッケージ2よりも熱伝導率が低い絶縁材料によって形成されている。この場合、コア基板4は、水晶、ガラス、または樹脂によって形成される。このように、コア部5に、パッケージ2よりも熱伝導率が低い絶縁材料からなるコア基板4が含まれることにより、ヒータ用IC52によって温められた水晶振動子50の熱を、例えばアルミナのようなセラミックを母材とするパッケージ2側に伝導することを抑制することができる。ここで、コア基板4としては、200℃以上の耐熱性を有する樹脂製基板を用いることが好ましい。そのような樹脂製基板の材料としては、例えば、ポリイミド、ガラスエポキシ、エポキシ、スーパーエンジニアリングプラスチック等がある。また、コア基板4の表面には、配線が形成されていないことが好ましい。
【0062】
さらに、本実施形態では、コア基板4が、導電性接着剤7(第1の接着剤)を介してパッケージ2に接合されている。このように、水晶、ガラス、または樹脂からなるコア基板4が導電性接着剤7を介してパッケージ2に接合されることにより、コア部5の熱をパッケージ2側に伝導させにくくすることができる。この場合、水晶振動子50およびヒータIC52の互いの対向面の間に介在された非導電性接着剤54(第2の接着剤)の熱伝導率が、コア基板4およびパッケージ2の互いの対向面の間に介在された導電性接着剤7(第1の接着剤)の熱伝導率よりも高くなっている。このように、非導電性接着剤54の熱伝導率が、導電性接着剤7の熱伝導率よりも高いことにより、パッケージ2側よりも先にヒータ用IC52からの熱を水晶振動子50、および水晶振動子50上の発振用IC51に効率よく伝導させることができる。なお、水晶振動子50およびヒータIC52の互いの対向面の間に介在された非導電性接着剤54の熱伝導率は、ヒータIC52およびコア基板4の互いの対向面の間に介在された導電性接着剤55の熱伝導率よりも高くなっているか、あるいは、非導電性接着剤54の熱伝導率と導電性接着剤55の熱伝導率とが略同じになっていることが好ましい。
【0063】
本実施形態では、コア部5の圧電振動子として、上述のような振動部11が内部に気密封止された低背化が可能な3枚重ね構造の水晶振動子50が用いられているので、コア部5の低背化および小型化を図ることができ、コア部5の熱容量を小さくすることができる。水晶振動子50の厚みは、例えば0.12mmであり、従来の水晶振動子に比べて非常に薄くなっている。これにより、従来のOCXOに比べて、コア部5の熱容量を非常に小さくすることができ、そのようなコア部5を備えたOCXO1のヒータ発熱量を抑えることができ、低消費電力化に寄与することができる。しかも、コア部5の温度追従性を向上させることができ、OCXO1の安定性を向上させることができる。また、3枚重ね構造の水晶振動子50では、上述したように、接着剤を用いずに振動部11が気密封止されるので、接着剤から発生したアウトガスによる熱対流の悪影響を抑制することができる。つまり、振動部11を気密封止する空間内で、接着剤から発生したアウトガスが循環することによって熱対流が発生し、振動部11の精度良い温度制御が妨げられる可能性がある。しかし、3枚重ね構造の水晶振動子50では、そのようなアウトガスが発生しないため、振動部11の精度良い温度制御が可能になる。
【0064】
また、3枚重ね構造の水晶振動子50において、上述したシールパス115,116、および接続用接合パターン同士の接合によって形成された接合材は、薄膜金属層によって構成されるので、水晶振動子50における上下方向(積層方向)の熱伝導が良好になり、水晶振動子50の温度を迅速に均一化させることができる。シールパス115,116等の場合、薄膜金属層の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施形態のAu-Au接合では、0.15μm~1.00μm)になっており、Snを用いた従来の金属ペースト封止材(例えば、5μm~20μm)よりも非常に薄くなっている。これにより、水晶振動子50における上下方向(積層方向)の熱伝導性を向上させることができる。また、水晶振動板10と第1封止部材20とが複数の接合領域で接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが複数の接合領域で接合されるため、水晶振動子50における上下方向(積層方向)の熱伝導がより良好になる。
【0065】
本実施形態では、水晶振動板10の振動部11と外枠部12との間には、貫通部11aが形成されており、振動部11と外枠部12とが、1つの保持部13のみによって接続されている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている。このように、振動部11の外周端部のうち、圧電振動の変位が比較的小さい角部に保持部13が設けられているので、保持部13を角部以外の部分(辺の中央部)に設けた場合に比べて、保持部13を介して圧電振動が外枠部12に漏れることを抑制することができ、より効率的に振動部11を圧電振動させることができる。また、保持部13を2つ以上設けた場合に比べて、振動部11に作用する応力を低減することができ、そのような応力に起因する圧電振動の周波数シフトを低減して圧電振動の安定性を向上させることができる。
【0066】
さらに、水晶振動子50の底面(第2封止部材30の第2主面302)に形成された電極端子32が、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面201)に形成された電極パターン22に電気的に接続されている。これにより、ヒータ用IC52からの熱を、水晶振動子50の底面側の電極端子32を介して、水晶振動子50の上面側に伝導させることができ、水晶振動子50を速やかに昇温させることができる。
【0067】
本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0068】
上述した3枚重ね構造の水晶振動子50の構造は一例であって、さまざまに変更することが可能である。例えば、水晶振動板10の振動部11が外枠部12よりも薄肉に形成された逆メサ構造であってもよい。また、第1封止部材20および第2封止部材30は平板状に限らず、外周部が厚肉化された側壁を有する形状であってもよい。
【0069】
上述したパッケージ2の構造は一例であって、さまざまに変更することが可能である。例えば断面形状がH型構造のパッケージを用いてもよい。この場合、パッケージの一方の凹部にコア部を収容し、パッケージの他方の凹部にチップコンデンサ(バイパスコンデンサ)等を収容することが可能である。
【0070】
上記実施形態では、金属バンプを用いたFCB法により発振用IC51の水晶振動子50への搭載を行ったが、これに限らず、ワイヤボンディングや、導電性接着剤等により発振用IC51の水晶振動子50への搭載を行ってもよい。また、ワイヤボンディングによりヒータ用IC52のコア基板4への搭載を行ったが、これに限らず、金属バンプを用いたFCB法や、導電性接着剤等によりヒータ用IC52のコア基板4への搭載を行ってもよい。また、ワイヤボンディングにより水晶振動子50からコア基板4への電気的接続を行ったが、これに限らず、金属バンプを用いたFCB法や、導電性接着剤等により水晶振動子50をヒータ用IC52に搭載することで、水晶振動子50をヒータ用IC52を介してコア基板4に電気的に接続するようにしてもよい。
【0071】
上記実施形態では、コア部5が、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された構成であったが、これとは逆に、コア部5が、ヒータ用IC52、水晶振動子50、および発振用IC51が上側から順に積層された構成であってもよい。
【0072】
上述したコア部5の発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52の積層構造に、例えばヒータ基板等を付加する構成としてもよい。例えばヒータ基板、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が、上側から順に積層された4層構造としてもよいし、あるいはヒータ用IC52、水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ基板が、上側から順に積層された4層構造としてもよい。これらの場合、発振用IC51に発熱体であるヒータ基板を積層することによって、コア部5の温度をより均一化させることができる。
【0073】
上記実施形態では、コア部5が、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が積層された3層構造の構成であったが、これに限らず、コア部5が、ヒータ用IC52の上に、水晶振動子50および発振用IC51が横置き状態で搭載された構成であってもよい(例えば図14参照)。この場合、水晶振動子50の第2封止部材30の第2主面302の全体が、ヒータ用IC52の上面に非導電性接着剤を介して面接触されている。また、発振用IC51の能動面全体が、ヒータ用IC52の上面に非導電性接着剤を介して面接触される構成としてもよい。なお、このような横置き状態において、例えば図14に示すように、水晶振動子50と発振用IC51との電気的な接続をワイヤによって行ってもよい。
【0074】
上記実施形態では、水晶振動子50の第2封止部材30の第2主面302の全体が、ヒータ用IC52と熱的に結合されたが、水晶振動子50の他主面(第1封止部材20の第1主面201)の全体についても、他の発熱体(例えばヒータ基板)に熱的に結合されていてもよい。この場合、他の発熱体として、例えば水晶基板の表面に、金属膜が蛇行形成されたようなヒータ基板を用いることが可能である。この構成では、水晶振動子50の両主面側から水晶振動子50を効率的に加熱することができるため、より迅速にコア部5の温度を均一化させることができる。
【0075】
上記実施形態では、水晶振動子50の水晶振動板10、第1、第2封止部材20,30がATカット水晶板であったが、ATカット水晶板の代わりに、SCカット水晶板を用いてもよい。
【0076】
上記実施形態では、水晶振動子50における電極の導通を、スルーホールを介して行ったが、水晶振動子50のパッケージの内側壁や外側壁の壁面や、側壁に設けられたキャスタレーションを介して電極の導通を行ってもよい。この場合、水晶振動子50のパッケージを超小型化した場合に有効である。
【0077】
上記実施形態では、コア基板4を経由してコア部5とパッケージ2との電気的な接続を行ったが、コア基板4を経由せずにコア部5とパッケージ2とを電気的に接続してもよい。つまり、コア部5を構成する発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52のうちの少なくとも1つから、ワイヤを介してパッケージ2との電気的な接続を行ってもよい。この変形例にかかるOCXO1について、図11図14を参照して説明する。図11は、変形例1にかかるOCXO1の概略構成を示す断面図である。図12は、図11のOCXO1の平面図である。図13は、変形例2にかかるOCXO1の概略構成を示す断面図である。図14は、変形例3にかかるOCXO1の概略構成を示す断面図である。
【0078】
変形例1にかかるOCXO1は、図11図12に示すように、セラミック製等で略直方体のパッケージ(筐体)2の内部にコア部5が配置され、リッド(蓋)3によって気密封止された構造とされている。パッケージ2は、例えば、5.0×3.2mmのサイズとされている。パッケージ2には、上方が開口された凹部2aが形成されており、凹部2aの内部にコア部5が気密状態で封入されている。凹部2aを囲う周壁部2bの上面には、リッド3が封止材8を介してシーム溶接によって固定されており、パッケージ2の内部が密封状態(気密状態)になっている。封止材8としては、例えばAu-Su合金や、はんだ等の金属系封止材が好適に用いられるが、低融点ガラス等の封止材を用いてもよい。また、これらに限らず、金属リングを用いたシーム封止や金属リングを用いないダイレクトシーム封止、ビーム封止などの手法による封止部材の構成を採用することも可能である(真空度を低下させない上では、シーム封止が好ましい)。パッケージ2の内部空間は、真空(例えば真空度が10Pa以下)、または低圧の窒素やアルゴンなどの熱伝導率が低い雰囲気であることが好ましい。なお、図12では、リッド3を取り外した状態のOCXO1を示しており、OCXO1の内部の構造を示している。
【0079】
パッケージ2の周壁部2bの内壁面には、接続端子(図示省略)の並びに沿った段差部2cが形成されている。コア部5は、対向する一対の段差部2c,2c間における凹部2aの底面(パッケージ2の内底面)に、板状のコア基板4を介して配置されている。あるいは、段差部2cは、凹部2aの底面の四方を囲むように形成されていてもよい。コア基板4は、例えばポリイミド等の耐熱性および可撓性を有する樹脂材料からなる。なお、コア基板4を水晶によって形成してもよい。
【0080】
コア基板4は、非導電性接着剤7aにより凹部2aの底面(パッケージ2の内底面)に接合されており、コア基板4の下側の部分には空間2dが形成されている。また、コア部5の各構成部材に形成された外部端子は、ワイヤ6a,6bを介して段差部2cの段差面上に形成された接続端子にワイヤボンディングにより接続されている。ワイヤ6aの一端が、水晶振動子50の第1封止部材20の第1主面201に形成された電極パターン22(図5参照)に接続されている。ワイヤ6bの一端が、ヒータ用IC52の上面に形成された外部端子(図示省略)に接続されている。非導電性接着剤7a,7aの内方側には、スペーサ部材2f,2fが設けられている。
【0081】
非導電性接着剤7a,7aが、コア基板4の長手方向の両端部に配置されており、コア基板4の短手方向(図11の紙面に直交する方向)に沿って直線状に配置されている。各スペーサ部材2fは、非導電性接着剤7aの側方に隣接するように配置されており、コア基板4の短手方向に沿って直線状に配置されている。このように、非導電性接着剤7a,7aの内方側において、コア基板4とパッケージ2の内底面の間に、スペーサ部材2f,2fが介在されている。スペーサ部材2f,2fによって、コア基板4の長手方向の両端部が支持されている。
【0082】
コア基板4は、例えばポリイミド等の耐熱性および可撓性を有する樹脂材料からなる。スペーサ部材2fは、例えばモリブデン、タングステン等のペースト材からなる。このように、コア基板4とパッケージ2の内底面との間には、非導電性接着剤7aおよびスペーサ部材2fの介在物が設けられており、介在物によってコア基板4とパッケージ2の内底面との間の空間2dを容易に確保することができる。また、スペーサ部材2fによって、パッケージ2の内底面に塗布された非導電性接着剤7aの厚みが規定されるので、コア基板4とパッケージ2の内底面の間の空間2dの幅(高さ寸法)を容易に規定することができる。スペーサ部材2fの厚みは、5~50μmであることが好ましい。水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間には、アンダーフィルが介在されない構成となっており、水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面は、複数の金属バンプ51aによって固定されており、アンダーフィルによる応力の影響を回避できるようになっている。なお、水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間に、アンダーフィルが介在する構成であってもよい。また、水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間に、導電性接着剤56が介在しているが、水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間に、非導電性接着剤が介在する構成であってもよい。
【0083】
変形例1にかかるOCXO1では、水晶振動子50の第2封止部材30の第2主面302の全体が、ヒータ用IC52と熱的に結合されている。この場合、水晶振動子50の第2封止部材30の第2主面302の全体が、ヒータ用IC52の上面に導電性接着剤56(第2の接着剤)を介して面接触している。このように、3枚重ね構造の水晶振動子50の少なくとも第2封止部材30の第2主面302の全体が、ヒータ用IC52と熱的に結合されているので、水晶振動子50を効率的に加熱することができる。これにより、より速くコア部5を目的の温度に昇温させることができ、OCXO1の周波数の変動を抑制することができる。
【0084】
図13に示す変形例2にかかるOCXO1は、図11に示す変形例1にかかるOCXO1と略同様の構成になっているが、ワイヤボンディングにより水晶振動子50と発振用IC51とが電気的に接続されている点が、変形例1にかかるOCXO1とは異なっている。
【0085】
具体的には、図13に示すように、コア部5の各構成部材に形成された外部端子は、ワイヤ6b,6dを介して段差部2cの段差面上に形成された接続端子にワイヤボンディングにより接続されている。ワイヤ6bの一端が、ヒータ用IC52の上面に形成された外部端子(図示省略)に接続されている。ワイヤ6dの一端が、発振用IC51の能動面51bに形成された外部端子(図示省略)に接続されている。この変形例2では、上記実施形態とは異なり、発振用IC51の能動面51bが上向きの状態で、水晶振動子50上に配置されている。
【0086】
また、この変形例2では、ワイヤ6cを介して水晶振動子50と発振用IC51とが電気的に接続されている。ワイヤ6cの一端が、水晶振動子50の第1封止部材20の第1主面201に形成された電極パターン22(図5参照)に接続されている。ワイヤ6cの他端が、発振用IC51の能動面51bに形成された電極パターン(図示省略)に接続されている。さらに、ワイヤ6eを介して発振用IC51とヒータ用IC52が電気的に接続されている。ワイヤ6eの一端が、発振用IC51の能動面51bに形成された外部端子(図示省略)に接続されている。ワイヤ6eの他端が、ヒータ用IC52の上面に形成された外部端子(図示省略)に接続されている。
【0087】
水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間には、非導電性接着剤58が介在しており、発振用IC51の能動面51bとは反対側の面全体が、水晶振動子50の第1封止部材20の第1主面201に非導電性接着剤58を介して面接触されている。なお、水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間に、導電性接着剤が介在する構成であってもよい。
【0088】
図14に示す変形例3にかかるOCXO1は、図11図13に示す変形例1,2にかかるOCXO1と略同様の構成になっているが、ヒータ用IC52の上に、水晶振動子50および発振用IC51が積層状態ではなく、横置き状態で搭載されている点が、変形例1,2にかかるOCXO1とは異なっている。
【0089】
具体的には、図14に示すように、コア部5の各構成部材に形成された外部端子は、ワイヤ6bを介して段差部2cの段差面上に形成された接続端子にワイヤボンディングにより接続されている。ワイヤ6bの一端が、ヒータ用IC52の上面に形成された外部端子(図示省略)に接続されている。
【0090】
また、この変形例3では、ワイヤ6cを介して水晶振動子50と発振用IC51とが電気的に接続されている。ワイヤ6cの一端が、水晶振動子50の第1封止部材20の第1主面201に形成された電極パターン22(図5参照)に接続されている。ワイヤ6cの他端が、発振用IC51の能動面51bに形成された電極パターン(図示省略)に接続されている。さらに、ワイヤ6fを介して水晶振動子50とヒータ用IC52が電気的に接続されている。ワイヤ6fの一端が、水晶振動子50の第1封止部材20の第1主面201に形成された電極パターン22(図5参照)に接続されている。ワイヤ6eの他端が、ヒータ用IC52の上面に形成された外部端子(図示省略)に接続されている。
【0091】
この変形例3では、発振用IC51の能動面51bが上向きの状態で、ヒータIC52上に配置されている。ヒータIC52および発振用IC51の互いの対向面の間には、非導電性接着剤58が介在しており、発振用IC51の能動面51bとは反対側の面全体が、ヒータIC52の上面に非導電性接着剤58を介して面接触されている。なお、ヒータIC52および発振用IC51の互いの対向面の間に、導電性接着剤が介在する構成であってもよい。
【0092】
以上では、コア部5がパッケージ2の内部に実装された圧電振動デバイスについて説明したが、振動部が気密封止された3枚重ね構造の圧電振動子と、発熱体とを備えたコア部を少なくとも有していればよく、コア部がパッケージの内部に収容されていない圧電振動デバイスに対しても本発明を適用可能である。また、以上では、水晶振動子50上に発振用IC51が搭載された圧電振動デバイスについて説明したが、水晶振動子50上に発振用ICが搭載されていない圧電振動デバイスに対しても本発明を適用可能である。
【0093】
この出願は、2021年1月8日に日本で出願された特願2021-002000号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、振動部が気密封止された3枚重ね構造の圧電振動子と、発熱体とを含むコア部を備えた圧電振動デバイスに利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 OCXO(圧電振動デバイス)
2 パッケージ
4 コア基板
5 コア部
11 振動部
50 水晶振動子(圧電振動子)
52 ヒータ用IC(発熱体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14