(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】機能性材料が付着された材料及びその製造方法、浄水器及びその製造方法、浄水器カートリッジ及びその製造方法、空気清浄機及びその製造方法、フィルター部材及びその製造方法、支持部材及びその製造方法、発泡ポリウレタンフォーム及びその製造方法、ボトル及びその製造方法、容器及びその製造方法、キャップ又は蓋から成る部材及びその製造方法、固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品と結着剤とから成る材料及びその製造方法、並びに、多孔質炭素材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20241119BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20241119BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241119BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20241119BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20241119BHJP
C01B 32/318 20170101ALN20241119BHJP
C01B 32/336 20170101ALN20241119BHJP
C01B 32/354 20170101ALN20241119BHJP
【FI】
C01B32/05
B01J20/20 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
C02F1/28 G
C01B32/318
C01B32/336
C01B32/354
(21)【出願番号】P 2023046494
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2021140805の分割
【原出願日】2017-02-21
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2016031637
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017027603
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】山ノ井 俊
(72)【発明者】
【氏名】田畑 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 広範
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-224468(JP,A)
【文献】特開2011-093774(JP,A)
【文献】特開平03-223105(JP,A)
【文献】特開昭51-090995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/05
B01J 20/20
B01J 20/28
B01J 20/30
C02F 1/28
C01B 32/318
C01B 32/336
C01B 32/354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、材料又は粉砕品の製造方法。
【請求項2】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品を備えた浄水器の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、浄水器の製造方法。
【請求項3】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品を備えた浄水器カートリッジの製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、浄水器カートリッジの製造方法。
【請求項4】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品を備えた空気清浄機の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、空気清浄機の製造方法。
【請求項5】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品を備えたフィルター部材の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、フィルター部材の製造方法。
【請求項6】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品を備えた支持部材の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、支持部材の製造方法。
【請求項7】
支持部材は多孔質炭素材料を挟んでいる請求項
6に記載の支持部材の製造方法。
【請求項8】
支持部材には多孔質炭素材料が練り込まれている請求項
6に記載の支持部材の製造方法。
【請求項9】
支持部材は織布又は不織布から成る請求項
6乃至
8のいずれか1項に記載の支持部材の製造方法。
【請求項10】
支持部材を構成する材料は、セルロース、ポリプロピレン又はポリエステルである請求項
6乃至
9のいずれか1項に記載の支持部材の製造方法。
【請求項11】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品が付着された発泡ポリウレタンフォームの製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、発泡ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項12】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品が組み込まれたボトルの製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、キャップ若しくは蓋付き、又は、ストロー部材付き、又は、スプレー部材付きのボトルの製造方法。
【請求項13】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品が組み込まれた容器の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、容器の製造方法。
【請求項14】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品が内部に配されたキャップ又は蓋から成る部材の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、キャップ又は蓋から成る部材の製造方法。
【請求項15】
原料である植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理することで得られた固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品と結着剤とから成る材料の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品と結着剤とから成る材料の製造方法。
【請求項16】
植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理して得られた固形化された多孔質炭素材料を粉砕する工程を含む多孔質炭素材料の製造方法であって、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項17】
植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理して得られた固形化された多孔質炭素材料を粉砕する工程を含む多孔質炭素材料の製造方法であって、
400℃乃至1400℃にて炭素化した後、酸又はアルカリで処理する前の材料の強熱残分の値は20質量%以上であり、
固形化された多孔質炭素材料の嵩密度は、0.15グラム/cm
3乃至0.44グラム/cm
3であり、
固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度が20N以上である、多孔質炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能性材料が付着された材料及びその製造方法、浄水器及びその製造方法、浄水器カートリッジ及びその製造方法、空気清浄機及びその製造方法、フィルター部材及びその製造方法、支持部材及びその製造方法、発泡ポリウレタンフォーム及びその製造方法、ボトル及びその製造方法、容器及びその製造方法、キャップ又は蓋から成る部材及びその製造方法、固形化された多孔質炭素材料又は該多孔質炭素材料の粉砕品と結着剤とから成る材料及びその製造方法、並びに、多孔質炭素材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料及びその製造方法が、例えば、特許第4618308号公報から周知である。この特許公報に開示された方法は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料の製造方法であり、植物由来の材料を800℃乃至1400℃にて炭素化した後、酸又はアルカリで処理し、以て、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許公報に開示された多孔質炭素材料の製造方法は優れた製造方法であるが、植物由来の材料(原料)として、例えば、一種、粉状の籾殻を使用するので、原料や多孔質炭素材料の輸送やハンドリングが煩雑となる場合があるし、原料の嵩密度の値が低く、炭素化の処理、酸又はアルカリでの処理を効果的に行えない場合がある。また、製造装置の関係上、製造時の1回の処理量が限定される場合がある。
【0005】
従って、本開示の目的は、原料や多孔質炭素材料の輸送やハンドリング、炭素化の処理、酸又はアルカリでの処理をより容易にする多孔質炭素材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の固形化された多孔質炭素材料は、植物由来の材料を原料としており、固形化された多孔質炭素材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.4グラム/cm3、好ましくは、0.3グラム/cm3乃至0.4グラム/cm3であり、破壊硬度は20N以上である。
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法は、植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の多孔質炭素材料は固形化されているので、多孔質炭素材料の輸送やハンドリングをより容易に行うことができる。また、本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理するので、原料や多孔質炭素材料の輸送やハンドリング、炭素化の処理、酸又はアルカリでの処理をより容易に行うことができる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、実施例1の固形化された多孔質炭素材料の水銀圧入法の測定結果を示すグラフである。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、比較例1の各種材料の水銀圧入法の測定結果を示すグラフである。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、実施例1の固形化された多孔質炭素材料及び比較例1の各種材料の水銀圧入法によって得られた0.05μm乃至5μmの範囲における累積細孔容積の値を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例2の浄水器の模式的な断面図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、実施例2におけるボトルの模式的な一部断面図及び模式的な断面図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、実施例2におけるボトルの変形例の模式的な一部断面図及び一部を切り欠いた模式面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の固形化された多孔質炭素材料及びその製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の固形化された多孔質炭素材料及びその製造方法)
3.実施例2(浄水器及びその変形例)
4.その他
【0011】
〈本開示の固形化された多孔質炭素材料及びその製造方法、全般に関する説明〉
本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法において、固形化された多孔質炭素材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.4グラム/cm3、好ましくは、0.3グラム/cm3乃至0.4グラム/cm3であり、水銀圧入法に基づく細孔サイズ0.05μm乃至5μmの範囲における累積細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.4cm3乃至1.2cm3、好ましくは、0.5cm3乃至1.0cm3である形態とすることができる。
【0012】
更には、上記の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料あるいはその製造方法によって得られた固形化された多孔質炭素材料において、水銀圧入法に基づく細孔サイズ10μm以下の範囲における累積細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.7cm3乃至2.0cm3、好ましくは、0.7cm3乃至1.7cm3である形態とすることができる。
【0013】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料あるいはその製造方法によって得られた固形化された多孔質炭素材料において、BJH法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たり0.1cm3以上である形態とすることができる。
【0014】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料あるいはその製造方法によって得られた固形化された多孔質炭素材料において、MP法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たり0.04cm3乃至0.1cm3である形態とすることができる。
【0015】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料あるいはその製造方法によって得られた固形化された多孔質炭素材料において、BJH法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.3cm3以上であり、MP法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.1cm3以上である形態とすることができる。
【0016】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法において、固形化された植物由来の材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至1.4グラム/cm3である形態とすることができる。
【0017】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法において、固形化した状態で炭素化された材料(以下、『多孔質炭素材料前駆体』と呼ぶ場合がある)の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.8グラム/cm3である形態とすることができる。
【0018】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法において、植物由来の材料を固形化するとき、澱粉又は片栗粉をバインダーとして用いる形態とすることができる。あるいは又、バインダーとして、植物由来の材料を固形化する際に室温乃至180℃の温度が加わっても分解等せず、植物由来の材料を400℃乃至1400℃にて炭素化したとき、焼成されてしまう材料から、適宜、選択すればよい。植物由来の材料とバインダーとを、適切なミキサーを用いて混合すればよい。
【0019】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料において、固形化された多孔質炭素材料の強熱残分の値は、0.1質量%以上、20質量%以下である形態とすることができるし、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法において、酸又はアルカリで処理することで、固形化された多孔質炭素材料の強熱残分の値を、0.1質量%以上、20質量%以下、好ましくは、0.1質量%以上、15質量%以下、一層好ましくは、0.1質量%以上、2質量%以下とする形態とすることができる。強熱残分は、JIS K1474:2014「活性炭試験方法」に基づいて測定すればよい。
【0020】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料において、固形化された多孔質炭素材料の強熱残分嵩密度は、1×10-4グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3、好ましくは、1×10-2グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3である形態とすることができる。また、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法において、固形化した状態で炭素化された材料(多孔質炭素材料前駆体)の強熱残分嵩密度は0.1グラム/cm3以上であり、固形化された多孔質炭素材料の強熱残分嵩密度は、1×10-4グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3、好ましくは、1×10-2グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3である形態とすることができる。
【0021】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度は、20N以上であることが好ましい。固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度は、木屋式硬度計(株式会社藤原製作所製:商品番号:043019-C。以下においても同様)にて求めることができる。具体的には、10サンプルの破壊硬度を測定し、上位3サンプル、下位3サンプルを除き、中間の4サンプルの平均値(小数点以下四捨五入)より破壊硬度を導出すればよい。
【0022】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の固形化された多孔質炭素材料あるいはその製造方法(以下、これらを総称して、単に『本開示』と呼ぶ場合がある)において、多孔質炭素材料は植物由来の材料を原料としている。ここで、植物由来の材料として、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦、稗(ヒエ)、粟(アワ)等の籾殻や藁、珈琲豆、茶葉(例えば、緑茶や紅茶等の葉)、サトウキビ類(より具体的には、サトウキビ類の絞り滓)、トウモロコシ類(より具体的には、トウモロコシ類の芯)、果実の皮(例えば、オレンジの皮、グレープフルーツの皮、ミカンの皮といった柑橘類の皮やバナナの皮等)、あるいは又、葦、茎ワカメを挙げることができるが、これらに限定するものではなく、その他、例えば、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類、海藻を挙げることができる。尚、これらの材料を、原料として、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。更には、植物由来の材料(便宜上、『材料-A』と呼ぶ)と、例えば、ヤシ殻、胡桃殻等の種子の殻;杉や松、竹等の木質の大鋸屑といった材料(便宜上、『材料-B』と呼ぶ)を混合して、固形化してもよい。この場合、材料-Aと材料-Bの混合割合を、質量基準で、例えば、
0.1≦(材料-B)/(材料-A)≦10
とすることが好ましいが、このような質量割合に限定するものではない。また、植物由来の材料の形状や形態も特に限定はなく、例えば、籾殻や藁そのものでもよいし、あるいは乾燥処理品でもよい。更には、ビールや洋酒等の飲食品加工において、発酵処理、焙煎処理、抽出処理等の種々の処理を施されたものを使用することもできる。特に、産業廃棄物の資源化を図るという観点から、脱穀等の加工後の藁や籾殻を使用することが好ましい。これらの加工後の藁や籾殻は、例えば、農業協同組合や酒類製造会社、食品会社、食品加工会社から、大量、且つ、容易に入手することができる。
【0023】
また、固形化する前に、植物由来の材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。植物由来の材料を予め洗浄してもよい。多孔質炭素材料前駆体を粗粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。本開示の固形化された多孔質炭素材料を粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよく、このような粉砕品あるいは分級品を各種製品に適用することもできる。
【0024】
本開示の固形化された多孔質炭素材料の製造方法(以下、単に『本開示の多孔質炭素材料の製造方法』と呼ぶ場合がある)において、植物由来の材料を固形化する方法として、リングダイ方式、フラットダイス方式、スクリュー方式の成形機でペレットに成形する方法を挙げることができる。また、薪状やロール状に固形化する方法もある。これらの方法で一度固形化した後、適度な大きさに粉砕してもよい。また、本開示において、固形化された多孔質炭素材料の形状として、ペレット状(より具体的には、直径2mm乃至15mm、長さ10mm乃至60mm程度の円筒形)、薪状(より具体的には、商品名モミガライト(登録商標)で表される形状、直径50mm程度、中心穴部15mm程度、長さは例えば30cm程度といった形状)、コイル状(直径50mm程度、中心穴部25mm程度、幅20mm程度、長さ30cm程度のもの)を例示することができるし、これらを粉砕した粒状(径:0.5mm乃至50mm)とすることもできる。
【0025】
本開示の多孔質炭素材料の製造方法において、酸処理又はアルカリ処理の後、賦活処理を施す工程を含めることができるし、賦活処理を施した後、酸処理又はアルカリ処理を行ってもよい。また、このような好ましい形態を含む本開示の多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、固形化された植物由来の材料を炭素化する前に、炭素化のための温度よりも低い温度(例えば、400℃~700℃)にて、酸素を遮断した状態で植物由来の材料に加熱処理(予備炭素化処理)を施してもよい。これによって、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を抽出することが出来る結果、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。尚、酸素を遮断した状態は、例えば、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気とすることで、あるいは又、真空雰囲気とすることで、あるいは又、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とすることで達成することができる。また、本開示の多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、場合によっては、植物由来の材料中に含まれるミネラル成分や水分を減少させるために、また、炭素化の過程での異臭の発生を防止するために、固形化された植物由来の材料を酸又はアルカリに浸漬してもよいし、アルコール(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコール)に浸漬してもよい。また、酸によって処理する場合、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸で処理することで、多孔質炭素材料前駆体中に含まれるミネラル成分を除去することが可能である。尚、本開示の多孔質炭素材料の製造方法にあっては、その後、予備炭素化処理を実行してもよい。不活性ガス中で加熱処理を施すことが好ましい材料として、例えば、木酢液(タールや軽質油分)を多く発生する植物を挙げることができる。また、アルコール等による前処理を施すことが好ましい材料として、例えば、ヨウ素や各種ミネラルを多く含む海藻類を挙げることができる。
【0026】
本開示の多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料を400℃乃至1400℃にて炭素化するが、ここで、炭素化とは、一般に、有機物質(本開示の固形化された多孔質炭素材料にあっては、固形化された植物由来の材料)を熱処理して炭素質物質に変換することを意味する(例えば、JIS M0104-1984参照)。尚、炭素化のための雰囲気として、酸素を遮断した雰囲気を挙げることができ、具体的には、真空雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とする雰囲気を挙げることができる。炭素化温度に至るまでの昇温速度として、限定するものではないが、係る雰囲気下、1℃/分以上、好ましくは3℃/分以上、より好ましくは5℃/分以上を挙げることができる。また、炭素化時間の上限として、10時間、好ましくは7時間、より好ましくは5時間を挙げることができるが、これに限定するものではない。炭素化時間の下限は、植物由来の材料が確実に炭素化される時間とすればよい。最終的に得られた多孔質炭素材料に殺菌処理を施してもよい。炭素化のために使用する炉の形式、構成、構造に制限はなく、連続炉とすることもできるし、回分炉(バッチ炉)とすることもできる。
【0027】
本開示の多孔質炭素材料の製造方法において、上述したとおり、賦活処理を施せば、孔径が2nmよりも小さいマイクロ細孔を増加させることができる。賦活処理の方法として、ガス賦活法、薬品賦活法を挙げることができる。ここで、ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、係るガス雰囲気下、700℃乃至1400℃にて、好ましくは700℃乃至1000℃にて、より好ましくは800℃乃至1000℃にて、数十分から数時間、多孔質炭素材料を加熱することにより、多孔質炭素材料中の揮発成分や炭素分子により微細構造を発達させる方法である。尚、より具体的には、加熱温度は、植物由来の材料の種類、ガスの種類や濃度等に基づき、適宜、選択すればよいが、一層好ましくは800℃以上950℃以下である。薬品賦活法とは、ガス賦活法で用いられる酸素や水蒸気の替わりに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸等を用いて賦活させ、塩酸で洗浄、アルカリ性水溶液でpHを調整し、乾燥させる方法である。
【0028】
本開示の固形化された多孔質炭素材料(以下、単に『本開示の多孔質炭素材料』と呼ぶ場合がある)の表面に対して、化学処理又は分子修飾を行ってもよい。化学処理として、例えば、硝酸処理により表面にカルボキシ基を生成させる処理を挙げることができる。また、水蒸気、酸素、アルカリ等による賦活処理と同様の処理を行うことにより、本開示の多孔質炭素材料の表面に水酸基、カルボキシ基、ケトン基、エステル基等、種々の官能基を生成させることもできる。更には、本開示の多孔質炭素材料と反応可能な水酸基、カルボキシ基、アミノ基等を有する化学種又は蛋白質とを化学反応させることでも、分子修飾が可能である。
【0029】
本開示の多孔質炭素材料の製造方法にあっては、酸処理又はアルカリ処理によって、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去する。ここで、ケイ素成分として、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素酸化物を挙げることができる。このように、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去することで、高い比表面積を有する本開示の多孔質炭素材料を得ることができる。場合によっては、ドライエッチング法に基づき、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去してもよい。ケイ素成分を除去することで、強熱残分の値の低下を図ることができる。本開示の固形化された多孔質炭素材料の強熱残分の値は、上述したとおりである。
【0030】
本開示の多孔質炭素材料は、細孔(ポア)を多く有している。細孔として、孔径が2nm乃至50nmの『メソ細孔』、孔径が50nmを超える『マクロ細孔』、及び、孔径が2nmよりも小さい『マイクロ細孔』が含まれる。具体的には、メソ細孔として、例えば、20nm以下の孔径の細孔を多く含み、特に、10nm以下の孔径の細孔を多く含んでいる。また、マイクロ細孔として、例えば、孔径が1.9nm程度の細孔と、1.5nm程度の細孔と、0.8nm~1nm程度の細孔とを多く含んでいる。本開示の多孔質炭素材料にあっては、BJH法による細孔の容積は、本開示の多孔質炭素材料1グラム当たり、0.3cm3以上、好ましくは0.5cm3以上であることが望ましい。MP法による細孔の容積は、本開示の多孔質炭素材料1グラム当たり、0.1cm3以上、好ましくは0 .2cm3以上、より好ましくは0.3cm3以上であることが望ましい。
【0031】
本開示の多孔質炭素材料において、窒素BET法による比表面積の値(以下、単に、『比表面積の値』と呼ぶ場合がある)は、より一層優れた機能性を得るために、本開示の多孔質炭素材料1グラム当たり、10m2以上、好ましくは50m2以上、より好ましくは100m2以上、更に一層好ましくは500m2以上であることが望ましい。あるいは又、本開示の多孔質炭素材料1cm3当たり、2×102m2乃至3×102m2であることが望ましい。
【0032】
窒素BET法とは、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、多孔質炭素材料に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、式(1)あるいは式(1)を変形した式(1’)に基づき[p/{Va(p0-p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C-1)/(C・Vm)])及び切片i(=[1/(C・Vm)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2-1)、式(2-2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、式(3)に基づき比表面積asBETを算出する(日本ベル株式会社製BELSORP-mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁~第66頁参照)。尚、この窒素BET法は、JIS R 1626-1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
【0033】
Va=(Vm・C・p)/[(p0-p){1+(C-1)(p/p0)}] (1)
[p/{Va(p0-p)}]
=[(C-1)/(C・Vm)](p/p0)+[1/(C・Vm)] (1’)
Vm=1/(s+i) (2-1)
C =(s/i)+1 (2-2)
asBET=(Vm・L・σ)/22414 (3)
【0034】
但し、
Va:吸着量
Vm:単分子層の吸着量
p :窒素の平衡時の圧力
p0:窒素の飽和蒸気圧
L :アボガドロ数
σ :窒素の吸着断面積
である。
【0035】
窒素BET法により細孔容積Vpを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから式(4)に基づき細孔容積Vpを算出することができる(日本ベル株式会社製BELSORP-mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁~第65頁参照)。尚、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に『細孔容積』と呼ぶ場合がある。
【0036】
Vp=(V/22414)×(Mg/ρg) (4)
【0037】
但し、
V :相対圧での吸着量
Mg:窒素の分子量
ρg:窒素の密度
である。
【0038】
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、多孔質炭素材料に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、式(5)に基づき細孔半径rpを算出し、式(6)に基づき細孔容積を算出する。そして、細孔半径及び細孔容積から細孔径(2rp)に対する細孔容積変化率(dVp/drp)をプロットすることにより細孔分布曲線が得られる(日本ベル株式会社製BELSORP-mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第85頁~第88頁参照)。
【0039】
rp=t+rk (5)
Vpn=Rn・dVn-Rn・dtn・c・ΣApj (6)
但し、
Rn=rpn
2/(rkn-1+dtn)2 (7)
【0040】
ここで、
rp:細孔半径
rk:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
Vpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dVn:そのときの変化量
dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量
rkn:その時のコア半径
c:固定値
rpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
である。また、ΣApjは、j=1からj=n-1までの細孔の壁面の面積の積算値を表す。
【0041】
マイクロ細孔の孔径は、例えば、MP法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。MP法により細孔分布解析を行う場合、先ず、多孔質炭素材料に窒素を吸着させることにより、吸着等温線を求める。そして、この吸着等温線を吸着層の厚さtに対する細孔容積に変換する(tプロットする)。そして、このプロットの曲率(吸着層の厚さtの変化量に対する細孔容積の変化量)に基づき細孔分布曲線を得ることができる(日本ベル株式会社製BELSORP-mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第72頁~第73頁、第82頁参照)。
【0042】
水銀圧入法による細孔の測定は、JIS R1655:2003「ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布試験方法」に準拠する。具体的には、POREMASTER60GT(Quantachrome社製)を用いて、水銀圧入法測定を行った。細孔測定領域を3nm~200μmとした。測定された区間細孔容積を所望の範囲で累積することで、累積細孔容積を算出することができる。嵩密度は、JIS K1474:2014「活性炭試験方法」に記載されている充填密度の測定方法に基づき求めることができる。強熱残分嵩密度は、嵩密度の値と強熱残分の値の積で求めることができる。強熱残分(残留灰分)は、JIS K1474:2014「活性炭試験方法」に記載されている強熱残分の測定方法に基づき測定することができる。本開示の固形化された多孔質炭素材料における強熱残分(残留灰分)の値は、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下であることが望ましい。また、多孔質炭素材料前駆体における強熱残分(残留灰分)の値は、20質量%以上、好ましくは25質量%以上であることが望ましい。
【0043】
多孔質炭素材料前駆体を酸処理又はアルカリ処理するが、具体的な処理方法として、例えば、酸あるいはアルカリの水溶液に多孔質炭素材料前駆体を浸漬する方法や、多孔質炭素材料前駆体と酸又はアルカリとを気相で反応させる方法を挙げることができる。より具体的には、酸処理の場合、酸として、例えば、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等の酸性を示すフッ素化合物を挙げることができる。フッ素化合物を用いる場合、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分におけるケイ素元素に対してフッ素元素が4倍量となればよく、フッ素化合物水溶液の濃度は10質量%以上であることが好ましい。フッ化水素酸によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、二酸化ケイ素は、化学式(A)又は化学式(B)に示すようにフッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)あるいは四フッ化ケイ素(SiF4)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0044】
SiO2+6HF → H2SiF6+2H2O (A)
SiO2+4HF → SiF4+2H2O (B)
【0045】
また、アルカリ(塩基)によって処理するアルカリ処理の場合、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウムを挙げることができる。アルカリの水溶液を用いる場合、水溶液のpHは11以上であればよい。水酸化ナトリウム水溶液によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、水酸化ナトリウム水溶液を熱することにより、二酸化ケイ素は、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。また、水酸化ナトリウムを気相で反応させて処理する場合、水酸化ナトリウムの固体を熱することにより、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0046】
SiO2+2NaOH → Na2SiO3+H2O (C)
【0047】
本開示の多孔質炭素材料に機能性材料を付着させてもよい。具体的には、酸処理又はアルカリ処理を行った後(その後、賦活処理を施す場合には、賦活処理を施した後)、本開示の固形化された多孔質炭素材料に機能性材料を付着させればよい。機能性材料として、例えば、上記の空気中に存在する物質をより一層効果的に吸着するための薬剤(具体的には、例えば、エチレン尿素、リン酸、硝酸銅)を挙げることができるし、あるいは又、機能性材料は光触媒特性を示す形態とすることができる。後者の場合、機能性材料を、例えば、酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)から構成することができる。尚、エチ
レン尿素を用いることで、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを効果的に除去することができるし、リン酸を用いることで、アンモニアを効果的に除去することができるし、硝酸銅を用いることで、アンモニア、硫化水素等を効果的に脱臭することができる。そして、これによって、多孔質炭素材料には触媒特性が付与され、光触媒効果により、半永久的に使用可能な有害物質分解剤、有害物質除去剤としての応用が可能である。有害物質の分解、除去にあっては、多孔質炭素材料にエネルギー線や電磁波(例えば、紫外線や太陽光、可視光等)を照射すればよい。有害物質として空気中に存在する有害物質を挙げることができ、具体的には、各種のウィルス、アレルギー発生原因物質、タバコの煙に含まれる発癌性物質(例えば、ベンゾピレン)を例示することができる。
【0048】
機能性材料の種類や構成、構造、形態にも依存するが、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に、微粒子として付着している状態、薄膜状に付着している状態、海・島状(多孔質炭素材料の表面を「海」とみなした場合、機能性材料が「島」に相当する)に付着している状態を挙げることができる。尚、付着とは、異種の材料間の接着現象を指す。本開示の固形化された多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる方法として、機能性材料を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、多孔質炭素材料の表面に無電解メッキ法(化学メッキ法)又は化学還元反応にて機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、熱処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、超音波処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、ゾル・ゲル反応を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法を挙げることができる。
【0049】
本開示の固形化された多孔質炭素材料は、例えば、浄水器や浄水器カートリッジ等での使用、空気清浄機での使用、フィルター部材(空気清浄器のフィルターや浄水器のフィルター)への適用を例示することができるが、適用分野はこれらに限定されるものではない。あるいは又、化粧品、食品、煙草のフィルター、薬剤を染みこませた複合体(添着剤付きの多孔質炭素材料)等へも適用することができる。
【0050】
例えば、浄水器での使用にあっては、本開示の固形化された多孔質炭素材料を濾材として用いればよい。また、固形化された多孔質炭素材料を酸又はアルカリで洗浄してpHを調整して使用してもよい。本開示の固形化された多孔質炭素材料によって、例えば、分子量1×102乃至1×105の物質を含む水、ドデシルベンゼンスルホン酸塩を含む水、クロロタロニルを含む水、ジクロロボスを含む水、テトラサイクリンを含む水、溶解性鉛を含む水、遊離塩素を含む水、全有機ハロゲンを含む水におけるこれらの各種物質の除去を行うことができる。
【0051】
水の浄化、空気の浄化、広くは流体の浄化に用いる場合、本開示の固形化された多孔質炭素材料(あるいは又、場合によっては粉砕品)の使用形態として、シート状での使用、発泡ポリウレタンフォームに付着させての使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、透水性を有する袋に納められた状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。溶液中に分散させた物質を除去する場合、表面を親水処理又は疎水処理して使用することができる。シート状での使用にあっては、支持部材として織布や不織布を挙げることができ、支持部材を構成する材料として、セルロースやポリプロピレン、ポリエステルを挙げることができる。そして、多孔質炭素材料が支持部材と支持部材との間に挟まれた形態、多孔質炭素材料が支持部材に練り込まれた形態を挙げることができる。
【0052】
浄水器にあっては、濾過膜(例えば、0.4μm~0.01μmの穴の開いた中空糸膜や平膜)を更に有する構成(本開示の固形化された多孔質炭素材料と濾過膜の併用)とすることができるし、逆浸透膜(RO)を更に有する構成(本開示の固形化された多孔質炭素材料と逆浸透膜の併用)とすることができるし、セラミックス製の濾材(微細な穴を有するセラミックス製の濾材)を更に有する構成(本開示の固形化された多孔質炭素材料とセラミックス製の濾材の併用)とすることができるし、イオン交換樹脂を更に有する構成(本開示の固形化された多孔質炭素材料とイオン交換樹脂の併用)とすることもできる。尚、一般に、逆浸透膜(RO)を通過した濾過水にはミネラル成分が殆ど含まれないが、逆浸透膜(RO)を通過させた後、本開示の固形化された多孔質炭素材料を通過させることで、濾過水にミネラル成分を含ませることができる。
【0053】
浄水器の種類として、連続式浄水器、回分式浄水器、逆浸透膜浄水器を挙げることができるし、あるいは又、水道の蛇口の先端部に浄水器本体を直接取り付ける蛇口直結型、据え置き型(トップシンク型あるいは卓上型とも呼ばれる)、水栓に浄水器が組み込まれた水栓一体化型、キッチンのシンク内に設置するアンダーシンク型(ビルトイン型)、ポットや水差し等の容器内に浄水器を組み込んだポット型(ピッチャー型)、水道メーター以降の水道配管に直接取り付けるセントラル型、携帯型、ストロー型を挙げることができる。浄水器の構成、構造は、従来の浄水器と同じ構成、構造とすることができる。浄水器において、本開示の固形化された多孔質炭素材料は、例えば、カートリッジに納めて使用することができ、カートリッジには水流入部及び水排出部を設ければよい。浄水器において浄化の対象とすべき「水」は、JIS S3201:2010「家庭用浄水器試験方法」の「3.用語及び定義」に規定された「水」に限定するものではない。
【0054】
あるいは又、本開示の固形化された多孔質炭素材料を組み込むのに適した部材として、キャップあるいは蓋付き、ストロー部材付き、スプレー部材付きのボトル(所謂ペットボトル)やラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶等におけるキャップあるいは蓋を挙げることができる。ここで、キャップや蓋の内部に本開示の固形化された多孔質炭素材料を配し、ボトルやラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶等の内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)を、キャップや蓋の内部に配された本開示の固形化された多孔質炭素材料を通過させて飲むことで、あるいは、使用することで、濾過水にミネラル成分を含ませることができる。あるいは又、透水性を有する袋の中に本開示の固形化された多孔質炭素材料から構成された濾材を格納し、ボトル(所謂ペットボトル)やラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶、ポット水差し等の各種の容器内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)の中に、この袋を投入する形態を採用することもできる。
【実施例1】
【0055】
実施例1は、本開示の固形化された多孔質炭素材料及びその製造方法に関する。
【0056】
実施例1の固形化された(具体的には、ペレット化された)多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料として、籾殻を使用した。そして、植物由来の材料である籾殻を、ペレットマシーンを使用して固形化し、具体的には、平均的な直径が6mm、平均的な長さが30mmの略円筒形のペレット状の固形化された植物由来の材料を得た。尚、固形化する際にはバインダーを使用していない。固形化された植物由来の材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至1.4グラム/cm3、具体的には、0.70グラム/cm3であった。次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化した。具体的には、マントルヒーターを用いて、窒素雰囲気下、500℃、3時間で炭素化した。得られた、固形化した状態で炭素化された材料(多孔質炭素材料前駆体)の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.8グラム/cm3、具体的には、0.50グラム/cm3であった。また、固形化した状態で炭素化された材料の強熱残分は42%であり、強熱残分嵩密度は、0.1グラム/cm3以上、具体的には、0.50グラム/cm3×0.42=0.21グラム/cm3であった。また、木屋式硬度計にて破壊硬度を測定したところ、73Nであった。その後、固形化した状態で炭素化された材料を、1モル/リットル、80℃の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、24時間、攪拌した。次いで、中性になるまで洗浄を行い、得られた固形化された多孔質炭素材料を濾過し、120℃、24時間乾燥させた。
【0057】
そして、20メッシュ及び200メッシュの篩を用いて分級し、以下の表1に示す試料を得た。更には、実施例1Aの固形化された多孔質炭素材料に対して、ガス賦活法に基づく賦活処理、具体的には、900℃、2時間の水蒸気を用いた賦活処理を行い実施例1Cを得た。また、実施例1Bの固形化された多孔質炭素材料に対して、ガス賦活法に基づく賦活処理、具体的には、900℃、2時間及び3時間の水蒸気を用いた賦活処理を行い、実施例1D及び実施例1Eを得た。酸又はアルカリで処理することで得られた、固形化された多孔質炭素材料(実施例1A)の強熱残分の値は、0.1質量%以上、20質量%以下、具体的には、9.3質量%であった。また、実施例1Aの破壊硬度は35Nであった。
【0058】
〈表1〉
実施例1A:20メッシュオン品(水蒸気賦活前)
実施例1B:20メッシュパス、200メッシュオン品(水蒸気賦活前)
実施例1C:実施例1Aの水蒸気賦活品
実施例1D:実施例1Bの水蒸気賦活品
実施例1E:実施例1Bの水蒸気賦活品
【0059】
実施例1F、実施例1G、実施例1H、実施例1J、実施例1K、実施例1L、実施例1Mの製造にあっても、植物由来の材料として、籾殻を使用した。そして、植物由来の材料である籾殻を、ペレットマシーンを使用して固形化し、具体的には、平均的な直径が6mm、平均的な長さが30mmの略円筒形のペレット状の固形化された植物由来の材料を得た。尚、固形化する際にはバインダーを使用していない。固形化された植物由来の材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至1.4グラム/cm3、具体的には、0.70グラム/cm3であった。次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化した。但し、前述した試料とは異なり、具体的には、マッフル炉を用いて、窒素ガス雰囲気下、800℃、1時間の条件で炭素化した。得られた、固形化した状態で炭素化された材料(多孔質炭素材料前駆体)の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.8グラム/cm3、具体的には、0.46グラム/cm3であった。また、固形化した状態で炭素化された材料の強熱残分は44%であり、強熱残分嵩密度は、0.1グラム/cm3以上、具体的には、0.46グラム/cm3×0.44=0.20グラム/cm3であった。また、木屋式硬度計にて破壊硬度を測定したところ、120Nであった。その後、固形化した状態で炭素化された材料を、1モル/リットル、80℃の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、24時間、攪拌した。次いで、中性になるまで洗浄を行い、得られた固形化された多孔質炭素材料を濾過し、120℃、24時間乾燥させた。
【0060】
次いで、篩を用いて分級し、3mmオン品、及び、1mmオン、3mmパス品(1~3mm品と呼ぶ)を得た。そして、3mmオン品に対して、ガス賦活法に基づく賦活処理、具体的には、860℃、2時間の水蒸気を用いた賦活処理を行うことで、実施例1Fの固形化された多孔質炭素材料を得た。更には、実施例1Fの固形化された多孔質炭素材料を水で洗浄し、120℃で乾燥することで、実施例1Gの固形化された多孔質炭素材料を得た。また、3mmオン品に対して、860℃、2.5時間の水蒸気を用いた賦活処理を行うことで、実施例1Hの固形化された多孔質炭素材料を得た。更には、実施例1Hの固形化された多孔質炭素材料を水で洗浄し、120℃で乾燥することで、実施例1Jの固形化された多孔質炭素材料を得た。更には、3mmオン品に対して、850℃、3時間の水蒸気を用いた賦活処理を行った後、水で洗浄し、120℃で乾燥することで、実施例1Kの固形化された多孔質炭素材料を得た。一方、1~3mm品に対して、ガス賦活法に基づく賦活処理、具体的には、860℃、2時間の水蒸気を用いた賦活処理を行うことで、実施例1Lの固形化された多孔質炭素材料を得た。そして、実施例1Lの固形化された多孔質炭素材料を水で洗浄し、120℃で乾燥することで、実施例1Mの固形化された多孔質炭素材料を得た。得られた実施例1F、実施例1G、実施例1H、実施例1J、実施例1Kの木屋式硬度計にて破壊硬度を測定した結果を、以下に示す。
【0061】
破壊硬度
実施例1F 81N
実施例1G 77N
実施例1H 66N
実施例1J 75N
実施例1K 73N
【0062】
実施例1N、実施例1P、実施例1Q、実施例1R、実施例1Sの製造にあっても、植物由来の材料として、籾殻を使用した。そして、植物由来の材料である籾殻を、ペレットマシーンを使用して固形化し、具体的には、平均的な直径が6mm、平均的な長さが30mmの略円筒形のペレット状の固形化された植物由来の材料を得た。尚、固形化する際にはバインダーを使用していない。固形化された植物由来の材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至1.4グラム/cm3、具体的には、0.67グラム/cm3であった。次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化した。具体的には、ロータリーキルンを用いて、窒素ガス雰囲気下、600℃、0.5時間の条件で炭素化した。得られた、固形化した状態で炭素化された材料(多孔質炭素材料前駆体)の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.8グラム/cm3、具体的には、0.55グラム/cm3であった。また、固形化した状態で炭素化された材料の強熱残分は40%であり、強熱残分嵩密度は、0.1グラム/cm3以上、具体的には、0.55グラム/cm3×0.40=0.22グラム/cm3であった。
【0063】
次いで、ガス賦活法に基づく賦活処理、具体的には、850℃、3.5時間(実施例1N)、4.0時間(実施例1P)、4.75時間(実施例1Q)、5.5時間(実施例1R)、5.75時間(実施例1S)の水蒸気を用いた賦活処理を行った後、4.0モル/リットル、50℃の水酸化カリウム水溶液に浸漬し、12時間、攪拌した。次いで、中性になるまで塩酸を用いて洗浄を行い、得られた固形化された多孔質炭素材料を濾過し、120℃、24時間乾燥させた。こうして得られた5種類の固形化された多孔質炭素材料を、実施例1N、実施例1P、実施例1Q、実施例1R、実施例1Sとした。
【0064】
比較のために、固形化していない籾殻(即ち、籾殻、そのままの状態のもの)を、マントルヒーターを用いて、窒素雰囲気下、500℃、3時間で炭素化した。得られた、固形化されていない状態の材料の嵩密度は0.1グラム/cm3であった。また、強熱残分は42%であり、強熱残分嵩密度は、0.04グラム/cm3であった。その後、固形化されていない状態で炭素化された材料を、1モル/リットル、80℃の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、24時間、攪拌した。次いで、中性になるまで洗浄を行い、得られた固形化されていない多孔質炭素材料を濾過し、120℃、24時間乾燥させた。そして、20メッシュ及び200メッシュの篩を用いて分級し、20メッシュパス200メッシュオン品として以下の表2に示す比較例1Bの試料を得た。尚、20メッシュオン品は殆ど得られなかった。また、固形化していない籾殻(即ち、籾殻、そのままの状態のもの)を自燃式の炭化炉で炭素化した。得られた、固形化されていない状態の材料の嵩密度は0.11グラム/cm3であった。また、強熱残分は36%であり、強熱残分嵩密度は、0.04グラム/cm3であった。その後、1モル/リットル、80℃の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、24時間、攪拌した。次いで、中性になるまで洗浄を行い、得られた固形化されていない多孔質炭素材料を濾過し、120℃、24時間乾燥させた。そして、20メッシュ及び200メッシュの篩を用いて分級し、20メッシュパス200メッシュオン品として以下の表2に示す比較例1Cを得た。更には、得られた比較例1Cに対して900℃、2時間及び3時間の水蒸気を用いた賦活処理を行い、比較例1D及び比較例1Eを得た。比較例1F~比較例1Jにおいては市販の材料を使用した。また、参考例1A~参考例1Dは、そもそも、原料が植物由来の原料ではないので、参考例として掲げた。比較例1Bの破壊硬度を測定したところ、試験開始直後に破壊され、測定不能であった。
【0065】
〈表2〉
比較例1B:20メッシュパス、200メッシュオン品
比較例1C:固形化していない籾殻を原料として使用
比較例1D:比較例1Cの水蒸気賦活品
比較例1E:比較例1Cの水蒸気賦活品
比較例1F:クラレケミカル株式会社製クラレコールGW(60メッシュ以上、30メッシュ以下)
比較例1G:クラレケミカル株式会社製クラレコールGG(60メッシュ以上、30メッシュ以下)
比較例1H:ツルミコール 4GS-S(ヤシ殻成形炭)
比較例1J:株式会社サンワ製SWKW(木質活性炭)
参考例1A:株式会社ユニオンサービス社製 UN 8~32メッシュ(石炭破砕)
参考例1B:株式会社ユニオンサービス社製 UP 4~6メッシュ(石炭ペレット)
参考例1C:和光純薬工業株式会社製 活性炭素、破砕、2mm~5mm 販売元コード031-18061(ピート破砕)
参考例1D:和光純薬工業株式会社製 活性炭素、粉末、中性 販売元コード035-18101(ピート粉末)
【0066】
実施例1A~実施例1E、比較例1B~比較例1J、参考例1A~参考例1Dの各種物性測定値を、以下の表3に示す。尚、表3中、「水銀圧入法-A」は、水銀圧入法に基づく細孔サイズ10μm以下の範囲における、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たりの累積細孔容積の値を示し、「水銀圧入法-B」は、水銀圧入法に基づく細孔サイズ0.05μm乃至5μmの範囲における、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たりの累積細孔容積の値を示す。また、「細孔容積-A」は、水銀圧入法に基づく細孔サイズ10μm以下の範囲における、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たりの累積細孔容積の値
を示し、「細孔容積-B」は、水銀圧入法に基づく細孔サイズ0.05μm乃至5μmの範囲における、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たりの累積細孔容積の値を示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表3から、実施例1A~実施例1Eにあっては、固形化された多孔質炭素材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.4グラム/cm3、好ましくは、0.3グラム/cm3乃至0.4グラム/cm3であり、水銀圧入法に基づく細孔サイズ0.05μm乃至5μmの範囲における累積細孔容積の値(「水銀圧入法-B」の値)は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.4cm3乃至1.2cm3、好ましくは、0.5cm3乃至1.0cm3であった。また、水銀圧入法に基づく細孔サイズ10μm以下の範囲における累積細孔容積の値(「水銀圧入法-A」の値)は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.7cm3乃至2.0cm3、好ましくは、0.7cm3乃至1.7cm3であった。更には、BJH法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たり0.1cm3以上であり、MP法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たり0.04cm3乃至0.1cm3であった。しかも、BJH法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.3cm3以上であり、MP法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.1cm3以上であった。また、固形化された多孔質炭素材料の強熱残分嵩密度は、1×10-4グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3、好ましくは、1×10-2グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3であった。
【0072】
水銀圧入法による測定結果を
図1A、
図1B、
図2A及び
図2Bのグラフに示す。尚、
図1Bのグラフは、
図1Aのグラフにおける左側のピークの部分を拡大したものであり、
図2Bのグラフは、
図2Aのグラフにおける左側のピークの部分を拡大したものである。
図1A、
図1B、
図2A及び
図2Bの横軸は細孔径(単位:オングストローム)であり、縦軸は、区間細孔容積(単位:cm
3/グラム)である。
図1A及び
図2Aのグラフにおける右側のピークは、固形化された多孔質炭素材料の間に存在する隙間に起因している。また、水銀圧入法によって得られた0.05μm乃至5μmの範囲における累積細孔容積の値を示すグラフを
図3A及び
図3Bに示す。
図1A、
図1B、
図3Aにおいて、「A」は実施例1Aの値を示し、「B」は実施例1Bの値を示し、「C」は実施例1Cの値を示し、「D」は実施例1Dの値を示し、「E」は実施例1Eの値を示し、
図2A、
図2B、
図3Bにおいて、「b」は比較例1Bの値を示し、「c」は比較例1Cの値を示し、「d」は比較例1Dの値を示し、「e」は比較例1Eの値を示し、「f」は比較例1Fの値を示し、「g」は比較例1Gの値を示す。
図3Bにおいては、比較例1Fの値(f)と比較例1Gの値(g)とは重なっている。
【0073】
実施例1A~実施例1Eの多孔質炭素材料は、固形化されていない多孔質炭素材料(比較例1B~比較例1E)、ヤシガラを原料とした活性炭(比較例1F~比較例1J)と比べて、固形化されているので、多孔質炭素材料の輸送やハンドリングをより容易に行うことができる。また、実施例1の多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理するので、原料や多孔質炭素材料の輸送やハンドリング、炭素化の処理、酸又はアルカリでの処理をより容易に行うことができる。更には、実施例1A~実施例1Eの固形化された多孔質炭素材料は、上述した物性値を有するが故に、固形化されていない多孔質炭素材料(比較例1B~比較例1E)と比較して、単位体積当たりの表面積の値、マイクロ細孔の値(MP法に基づく細孔容積の値)、メソ細孔の値(BJH法に基づく細孔容積の値)が大きいため、単位体積当たりの反応面や吸着細孔が多くなり、空気清浄器のフィルターや浄水器等、限られた空間内でより多くの物質を反応・吸着させるといった点で優れた利点を発揮し、また、ヤシガラを原料とした活性炭(比較例1F~比較例1H)と比較して、メソ細孔やマクロ細孔の比率が大きいため、水や空気、溶媒の多孔質炭素材料内部での拡散が起き易く、反応速度が早くなり、空気清浄器のフィルターや浄水器のフィルター、あるいは、浄水器カートリッジ等、短時間でより多くの反応を必要とする用途で優れた利点を発揮する。尚、木質活性炭(比較例1J)は既に粉砕されている大鋸屑から製造するため、製品が粉末であり、浄水器や空気清浄器のフィルターにした場合、圧力損失が高くなり、浄水器や空気清浄器のフィルターには適さない材料である。
【実施例2】
【0074】
実施例2においては、実施例1A~実施例1Eにおいて説明した固形化された多孔質炭素材料を浄水器における濾材として用いた例を説明する。
【0075】
実施例2の浄水器の断面図を
図4に示す。実施例2の浄水器は、連続式浄水器であり、水道の蛇口の先端部に浄水器本体を直接取り付ける蛇口直結型の浄水器である。実施例2の浄水器は、浄水器本体10、浄水器本体10の内部に配置され、実施例1A~実施例1Eの固形化された多孔質炭素材料11が充填された第1充填部12、綿13が充填された第2充填部14を備えている。水道の蛇口から排出された水道水は、浄水器本体10に設けられた流入口15から、多孔質炭素材料11、綿13を通過して、浄水器本体10に設けられた流出口16から排出される。
【0076】
あるいは又、模式的な一部断面図を
図5Aに示すように、実施例1A~実施例1Eにおいて説明した固形化された多孔質炭素材料から成る濾材40(以下、単に、『濾材40』と呼ぶ)を、キャップ部材30の付いたボトル(所謂ペットボトル)20に組み込むこともできる。具体的には、キャップ部材30の内部に濾材40を配し、濾材40が流出しないように、フィルター31,32をキャップ部材30の液体流入側及び液体排出側に配置した。そして、ボトル20の内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)21を、キャップ部材30の内部に配された濾材40を通過させて飲むことで、あるいは、使用することで、例えば、液体(水)の中のミネラル成分を増加させることができる。尚、キャップ部材30は、通常、図示しない蓋を用いて閉じておく。
【0077】
あるいは又、模式的な断面図を
図5Bに示すように、透水性を有する袋50の中に濾材40を格納し、ボトル20内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)21の中に、この袋50を投入する形態を採用することもできる。尚、参照番号22は、ボトル20の口部を閉鎖するためのキャップである。あるいは又、模式的な断面図を
図6Aに示すように、ストロー部材60の内部に濾材40を配し、濾材40が流出しないように、図示しないフィルターをストロー部材の液体流入側及び液体排出側に配置する。そして、ボトル20の内の液体あるいは水(飲料水)21を、ストロー部材60の内部に配された濾材40を通過させて飲むことで、液体(水)の中のミネラル成分を増加させることができる。あるいは又、一部を切り欠いた模式面を
図6Bに示すように、スプレー部材70の内部に濾材40を配し、濾材40が流出しないように、図示しないフィルターをスプレー部材70の液体流入側及び液体排出側に配置する。そして、スプレー部材70に設けられた押しボタン71を押すことで、ボトル20の内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)21を、スプレー部材70の内部に配された濾材40を通過させて、スプレー穴72から噴霧することで、液体(水)の中のミネラル成分を増加させることができる。
【0078】
以上、好ましい実施例に基づき本開示を説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。実施例において説明した固形化された多孔質炭素材料、原料(植物由来の材料)、製造方法、製造条件等は例示であり、適宜、変更することができる。実施例2において説明した濾材として、実施例1にて説明した固形化された多孔質炭素材料から成る濾材とセラミックス製の濾材(微細な穴を有するセラミックス製の濾材)とを組み合わせた浄水器、濾材とイオン交換樹脂とを組み合わせた浄水器とすることもできる。
【0079】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《固形化された多孔質炭素材料》
植物由来の材料を原料とし、固形化された多孔質炭素材料であって、
固形化された多孔質炭素材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.4グラム/cm3であり、
水銀圧入法に基づく細孔サイズ0.05μm乃至5μmの範囲における累積細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.4cm3乃至1.2cm3である固形化された多孔質炭素材料。
[A02]水銀圧入法に基づく細孔サイズ0.05μm乃至5μmの範囲における累積細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.5cm3乃至1.0cm3である[A01]に記載の固形化された多孔質炭素材料。
[A03]水銀圧入法に基づく細孔サイズ10μm以下の範囲における累積細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.7cm3乃至2.0cm3である[A01]又は[A02]に記載の固形化された多孔質炭素材料。
[A04]BJH法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たり0.1cm3以上である[A01]乃至[A03]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料。
[A05]MP法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たり0.04cm3乃至0.1cm3である[A01]乃至[A04]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料。
[A06]BJH法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.3cm3以上であり、MP法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.1cm3以上である[A01]乃至[A05]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料。
[A07]固形化された多孔質炭素材料の強熱残分の値は、0.1質量%以上、20質量%以下である[A01]乃至[A06]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料。
[A08]固形化された多孔質炭素材料の強熱残分嵩密度は、1×10-4グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3である[A01]乃至[A07]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料。
[A09]破壊硬度は20N以上である[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料。
[B01]《多孔質炭素材料の製造方法》
植物由来の材料を固形化し、次いで、固形化した状態で、400℃乃至1400℃にて炭素化し、次いで、酸又はアルカリで処理する、固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B02]固形化された多孔質炭素材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.4グラム/cm3であり、
水銀圧入法に基づく細孔サイズ0.05μm乃至5μmの範囲における累積細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.4cm3乃至1.2cm3である[B01]に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B03]固形化された植物由来の材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至1.4グラム/cm3である[B01]又は[B02]に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B04]固形化した状態で炭素化された材料の嵩密度は、0.2グラム/cm3乃至0.8グラム/cm3である[B01]乃至[B03]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B05]植物由来の材料を固形化するとき、澱粉又は片栗粉をバインダーとして用いる[B01]乃至[B04]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B06]酸又はアルカリで処理することで、固形化された多孔質炭素材料の強熱残分の値を、0.1質量%以上、20質量%以下とする[B01]乃至[B05]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B07]固形化した状態で炭素化された材料の強熱残分嵩密度は0.1グラム/cm3以上であり、
固形化された多孔質炭素材料の強熱残分嵩密度は、1×10-4グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3である[B01]乃至[B06]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B08]水銀圧入法に基づく細孔サイズ0.05μm乃至5μmの範囲における累積細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.5cm3乃至1.0cm3である[B01]乃至[B07]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B09]水銀圧入法に基づく細孔サイズ10μm以下の範囲における累積細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.7cm3乃至2.0cm3である[B01]乃至[B08]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。[B10]BJH法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たり0.1cm3以上である[B01]乃至[B09]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B11]MP法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1cm3当たり0.04cm3乃至0.1cm3である[B01]乃至[B10]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B12]BJH法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.3cm3以上であり、MP法に基づく細孔容積の値は、固形化された多孔質炭素材料1グラム当たり0.1cm3以上である[B01]乃至[B11]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B13]固形化された多孔質炭素材料の強熱残分の値は、0.1質量%以上、20質量%以下である[B01]乃至[B12]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B14]固形化された多孔質炭素材料の強熱残分嵩密度は、1×10-4グラム/cm3乃至1×10-1グラム/cm3である[B01]乃至[B13]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[B15]固形化された多孔質炭素材料の破壊硬度は20N以上である[B01]乃至[B14]のいずれか1項に記載の固形化された多孔質炭素材料の製造方法。
[C01]《浄水器》
浄水器本体、及び、浄水器本体の内部に配置され、[A01]乃至[A09]のいずれか1項に記載の多孔質炭素材料11が充填された充填部を備えている浄水器。
【符号の説明】
【0080】
10・・・浄水器本体、11・・・多孔質炭素材料、12・・・第1充填部、13・・・綿、14・・・第2充填部、15・・・流入口、16・・・流出口、20・・・ボトル、21・・・液体あるいは水、22・・・キャップ、30・・・キャップ部材、31,32・・・フィルター、40・・・濾材、50・・・袋、60・・・ストロー部材、70・・・スプレー部材、71・・・押しボタン、72・・・スプレー穴