(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】噴射制御装置及び噴射制御方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20241119BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
F01N3/08 H
F01N3/28 J
(21)【出願番号】P 2023138231
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙治
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015199(JP,A)
【文献】特開2015-040480(JP,A)
【文献】特開2019-056350(JP,A)
【文献】特開2021-139327(JP,A)
【文献】特開2008-157189(JP,A)
【文献】特開2008-280856(JP,A)
【文献】特開2010-223041(JP,A)
【文献】特開平08-126820(JP,A)
【文献】特開平08-206459(JP,A)
【文献】特開2010-163985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
B01D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気が流れる排気流路に設けられた第1触媒と、
前記排気流路において前記第1触媒の上流に設けられた第1噴射部と、
所定時間が経過した時刻毎に、前記排気流路の排気温度、排気流量及びNOx濃度を取得する取得部と、
前記排気温度と前記排気流量とに対応する、前記第1噴射部を冷却するための尿素水の第1冷却噴射量、及び前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する、NOxを浄化するための前記尿素水の第1浄化噴射量を記憶する記憶部と、
前記所定時間が経過した時刻毎に、前記記憶部に記憶された前記第1冷却噴射量と前記第1浄化噴射量とを参照することにより、前記取得部が取得した前記排気温度と前記排気流量とに対応する前
記第1冷却噴射量及び
前記取得部が取得した前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する前
記第1浄化噴射量を特定する特定部と、
前記第1冷却噴射量が前記第1浄化噴射量よりも大きい場合、前記第1浄化噴射量の尿素水に、前記第1冷却噴射量及び前記第1浄化噴射量に基づいて特定した量の水を加えた混合水を、前記第1噴射部に噴射させる噴射制御部と、
を有する噴射制御装置。
【請求項2】
前記噴射制御部は、前記第1冷却噴射量が前記第1浄化噴射量よりも大きい場合、前記第1浄化噴射量の尿素水に、前記第1冷却噴射量から前記第1浄化噴射量を減算した量の水を加えた混合水を、前記第1噴射部に噴射させる、
請求項1に記載の噴射制御装置。
【請求項3】
前記噴射制御部は、前記第1冷却噴射量が前記第1浄化噴射量以下の場合、前記第1浄化噴射量の尿素水を前記第1噴射部に噴射させる、
請求項1に記載の噴射制御装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記排気温度に対応する前記第1噴射部の最小噴射量と最大噴射量とを記憶し、
前記特定部は、
前記所定時間が経過した時刻毎に、前記最小噴射量から前記最大噴射量までの複数の噴射量のうち、前記記憶部に記憶された前記
第1冷却噴射量を参照することにより特定した
、前記取得部が取得した前記排気温度及び前記排気流量に対応する前記
第1冷却噴射量と一致又は最も近似する前記噴射量を前記第1冷却噴射量として特定し、前記記憶部に記憶された前記
第1浄化噴射量を参照することにより特定した
、前記取得部が取得した前記排気流量、前記NOx濃度及び前記排気温度に対応する前記
第1浄化噴射量と一致又は最も近似する前記噴射量を前記第1浄化噴射量として特定する、
請求項
1に記載の噴射制御装置。
【請求項5】
前記尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、
前記水を貯蔵する水タンクと、
前記尿素水タンクが貯蔵する前記尿素水、又は当該尿素水と前記水タンクが貯蔵する前記水とを混合した前記混合水を前記第1噴射部に送出するポンプと、
をさらに有し、
前記噴射制御部は、前記尿素水又は前記混合水を前記ポンプに送出させる、
請求項1に記載の噴射制御装置。
【請求項6】
前記排気流路において前記第1触媒の下流に設けられた第2触媒と、
前記排気流路において、前記第1触媒の下流かつ前記第2触媒の上流に設けられた第2噴射部と、をさらに有し、
前記特定部は、前記排気流路における前記第1触媒の下流かつ前記第2噴射部の上流の排気温度と排気流量とNOx濃度とに基づいて、前記第2噴射部を冷却するための前記尿素水の第2冷却噴射量と前記第1触媒の下流の排気に含まれるNOxを浄化するための前記尿素水の第2浄化噴射量とを特定し、
前記噴射制御部は、前記第2冷却噴射量が前記第2浄化噴射量よりも大きい場合、前記第2浄化噴射量の尿素水に、前記第2冷却噴射量から前記第2浄化噴射量を減算した量の水を加えた混合水を、前記第2噴射部に噴射させる、
請求項1に記載の噴射制御装置。
【請求項7】
プロセッサが実行する、
所定時間が経過した時刻毎に、エンジンの排気が流れる排気流路の排気温度、排気流量及びNOx濃度を取得する取得工程と、
記憶部に記憶された、前記排気温度と前記排気流量とに対応する、前記排気流路に設けられた触媒の上流の噴射部を冷却するための尿素水の冷却噴射量、及び前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する、前記排気に含まれるNOxを浄化するための前記尿素水の浄化噴射量を、前記所定時間が経過した時刻毎に参照することにより、前記取得工程において取得した前記排気温度と前記排気流量とに対応する前記冷却噴射量及び
前記取得工程において取得した前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する前記浄化噴射量を特定する特定工程と、
前記冷却噴射量が前記浄化噴射量よりも大きい場合、前記浄化噴射量の尿素水に、前記冷却噴射量及び前記浄化噴射量に基づいて特定した量の水を加えた混合水を、前記噴射部に噴射させる噴射工程と、
を有する噴射制御方法。
【請求項8】
エンジンの排気が流れる排気流路に設けられた触媒と、
前記排気流路において前記触媒の上流に設けられ、尿素水を貯蔵するタンクから供給された前記尿素水を前記触媒に向けて噴射する噴射部と、
所定時間が経過した時刻毎に、前記排気流路の排気温度、排気流量及びNOx濃度を取得する取得部と、
前記排気温度と前記排気流量とに対応する、前記噴射部を冷却するための尿素水の冷却噴射量、及び前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する、NOxを浄化するための前記尿素水の浄化噴射量を記憶する記憶部と、
前記所定時間が経過した時刻毎に、前記記憶部に記憶された前記冷却噴射量と前記浄化噴射量とを参照することにより、前記取得部が取得した前記排気温度と前記排気流量とに対応する前
記冷却噴射量及び
前記取得部が取得した前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する前
記浄化噴射量を特定する特定部と、
前記冷却噴射量以上の液体であって、かつ前記浄化噴射量の前記尿素水に対応する尿素量の尿素が含まれる液体を前記噴射部が噴射するように、前記尿素水に混合する水の量を制御する噴射制御部と、
を有する噴射制御装置。
【請求項9】
プロセッサが実行する、
所定時間が経過した時刻毎に、エンジンの排気が流れる排気流路の排気温度、排気流量及びNOx濃度を取得する取得工程と、
記憶部に記憶された、前記排気温度と前記排気流量とに対応する、前記排気流路に設けられた触媒の上流の噴射部を冷却するための尿素水の冷却噴射量、及び前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する、前記排気に含まれるNOxを浄化するための前記尿素水の浄化噴射量を、前記所定時間が経過した時刻毎に参照することにより、前記取得工程において取得した前記排気温度と前記排気流量とに対応する前記冷却噴射量及び
前記取得工程において取得した前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する前記浄化噴射量を特定する特定工程と、
前記冷却噴射量以上の液体であって、かつ前記浄化噴射量の前記尿素水に対応する尿素量の尿素が含まれる液体を前記噴射部が噴射するように、前記尿素水に混合する水の量を制御する噴射工程と、
を有する噴射制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射制御装置及び噴射制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の排気浄化装置は、尿素水インジェクタが尿素水を排ガスに添加して排ガス中のアンモニア濃度が所定値に達した場合に、凝縮水インジェクタが吸気中の水分を凝縮させた凝縮水を排ガスに添加することにより、アンモニアスリップを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
尿素水インジェクタの噴射部(いわゆるニードルバルブ)は、排気温度が高くなると尿素が固着する可能性があるため、尿素水を噴射することにより噴射部を冷却させる。しかしながら、NOxを還元するために必要な尿素水量よりも噴射部を冷却するために必要な尿素水量が多い場合に、噴射部の冷却を優先して尿素水を噴射するとNOxを適切に浄化できず、NOxの浄化を優先して尿素水を噴射すると噴射部を適切に冷却できないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、NOx排出量に適した尿素量を噴射しつつ、尿素水の噴射部を冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る噴射制御装置は、エンジンの排気が流れる排気流路に設けられた第1触媒と、前記排気流路において前記第1触媒の上流に設けられた第1噴射部と、前記排気流路の排気温度、排気流量及びNOxの濃度に基づいて、前記第1噴射部を冷却するための尿素水の第1冷却噴射量及び前記排気に含まれるNOxを浄化するための前記尿素水の第1浄化噴射量を特定する特定部と、前記第1冷却噴射量が前記第1浄化噴射量よりも大きい場合、前記第1浄化噴射量の尿素水に、前記第1冷却噴射量及び前記第1浄化噴射量に基づいて特定した量の水を加えた混合水を、前記第1噴射部に噴射させる噴射制御部と、を有する。
【0007】
前記噴射制御部は、前記第1冷却噴射量が前記第1浄化噴射量よりも大きい場合、前記第1浄化噴射量の尿素水に、前記第1冷却噴射量から前記第1浄化噴射量を減算した量の水を加えた混合水を、前記第1噴射部に噴射させてもよい。
【0008】
前記噴射制御部は、前記第1冷却噴射量が前記第1浄化噴射量以下の場合、前記第1浄化噴射量の尿素水を前記第1噴射部に噴射させてもよい。
【0009】
前記特定部は、前記排気温度及び前記排気流量に基づいて前記第1冷却噴射量を特定し、前記排気温度、前記排気流量及び前記NOxの濃度に基づいて前記第1浄化噴射量を特定してもよい。
【0010】
前記排気温度と前記排気流量とに対応する冷却噴射量、及び前記排気流量と前記NOx濃度と前記排気温度とに対応する浄化噴射量を記憶する記憶部をさらに有し、前記特定部は、所定時間が経過した時刻毎に、前記記憶部に記憶された前記冷却噴射量と前記浄化噴射量とを参照することにより、前記第1冷却噴射量と前記第1浄化噴射量とを特定してもよい。
【0011】
前記記憶部は、前記排気温度に対応する前記第1噴射部の最小噴射量と最大噴射量とを記憶し、前記特定部は、前記最小噴射量から前記最大噴射量までの複数の噴射量のうち、前記記憶部に記憶された前記冷却噴射量を参照することにより特定した前記冷却噴射量と一致又は最も近似する前記噴射量を前記第1冷却噴射量として特定し、前記記憶部に記憶された前記浄化噴射量を参照することにより特定した前記浄化噴射量と一致又は最も近似する前記噴射量を前記第1浄化噴射量として特定してもよい。
【0012】
前記尿素水を貯蔵する尿素水タンクと、前記水を貯蔵する水タンクと、前記尿素水タンクが貯蔵する前記尿素水、又は当該尿素水と前記水タンクが貯蔵する前記水とを混合した前記混合水を前記第1噴射部に送出するポンプと、をさらに有し、前記噴射制御部は、前記尿素水又は前記混合水を前記ポンプに送出させてもよい。
【0013】
前記排気流路において前記第1触媒の下流に設けられた第2触媒と、前記排気流路において、前記第1触媒の下流かつ前記第2触媒の上流に設けられた第2噴射部と、をさらに有し、前記特定部は、前記排気流路における前記第1触媒の下流かつ前記第2噴射部の上流の排気温度と排気流量とNOx濃度とに基づいて、前記第2噴射部を冷却するための前記尿素水の第2冷却噴射量と前記第1触媒の下流の排気に含まれるNOxを浄化するための前記尿素水の第2浄化噴射量とを特定し、前記噴射制御部は、前記第2冷却噴射量が前記第2浄化噴射量よりも大きい場合、前記第2浄化噴射量の尿素水に、前記第2冷却噴射量から前記第2浄化噴射量を減算した量の水を加えた混合水を、前記第2噴射部に噴射させてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に係る噴射制御方法は、プロセッサが実行する、エンジンの排気が流れる排気流路の排気温度、排気流量及びNOxの濃度に基づいて、前記排気流路に設けられた触媒の上流の噴射部を冷却するための尿素水の冷却噴射量及び前記排気に含まれるNOxを浄化するための前記尿素水の浄化噴射量を特定する特定工程と、前記冷却噴射量が前記浄化噴射量よりも大きい場合、前記浄化噴射量の尿素水に、前記冷却噴射量及び前記浄化噴射量に基づいて特定した量の水を加えた混合水を、前記噴射部に噴射させる噴射工程と、を有する。
【0015】
本発明の第3の態様に係る噴射制御装置は、エンジンの排気が流れる排気流路に設けられた触媒と、前記排気流路において前記触媒の上流に設けられ、尿素水を貯蔵するタンクから供給された前記尿素水を前記触媒に向けて噴射する噴射部と、前記排気流路の排気温度、排気流量及びNOxの濃度に基づいて、前記噴射部を冷却するための前記尿素水の冷却噴射量及び前記排気に含まれるNOxを浄化するための前記尿素水の浄化噴射量を特定する特定部と、前記冷却噴射量以上の液体であって、かつ前記浄化噴射量の前記尿素水に対応する尿素量の尿素が含まれる液体を前記噴射部が噴射するように、前記尿素水に混合する水の量を制御する噴射制御部と、を有する。
【0016】
本発明の第4の態様に係る噴射制御方法は、プロセッサが実行する、エンジンの排気が流れる排気流路の排気温度、排気流量及びNOxの濃度に基づいて、前記排気流路に設けられた触媒の上流の噴射部を冷却するための尿素水の冷却噴射量及び前記排気に含まれるNOxを浄化するための前記尿素水の浄化噴射量を特定する特定工程と、前記冷却噴射量以上の液体であって、かつ前記浄化噴射量の前記尿素水に対応する尿素量の尿素が含まれる液体を前記噴射部が噴射するように、前記尿素水に混合する水の量を制御する噴射工程と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、NOx排出量に適した尿素量を噴射しつつ、尿素水の噴射部を冷却するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
【
図3】尿素水又は混合水を噴射する動作を説明するための図である。
【
図4】噴射制御装置40における処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図1に示す車両Sは、エンジン10と、過給機11と、吸気路12と、排気路13と、吸気圧センサ14と、第1浄化装置21と、第2浄化装置22と、第3浄化装置23と、第1触媒24と、第2触媒25と、第3触媒26と、第4触媒27と、微粒子捕集装置28と、第1温度センサ30と、第1窒素酸化物センサ31と、第1インジェクタ32と、第2温度センサ33と、第2窒素酸化物センサ34と、第2インジェクタ35と、ポンプ36と、尿素水タンク37と、水タンク38と、噴射制御装置40と、を備える。車両Sは、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35から尿素水を噴射させることにより、窒素酸化物(NOx)を浄化しつつ、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35を冷却する機能を有する。
【0020】
エンジン10は、燃料と吸気(空気)の混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。過給機11は、例えば、ターボチャージャであり、排気の流れを利用して吸気の密度を高くする。過給機11は、排気路13に設けられたタービンTと吸気路12に設けられたコンプレッサCとを有する。タービンTは、排気路13を流れる排気を受けて回転する。コンプレッサCは、タービンTに連結軸を介して連結されており、タービンTとともに回転することで吸気を圧縮する。吸気路12は、エンジン10に供給される空気(吸気)が流れる通路である。排気路13は、エンジン10の排気が流れる通路である。吸気圧センサ14は、吸気路12に設けられ、エンジン10に供給される空気の空気圧(吸気圧)を検出する。
【0021】
第1浄化装置21、第2浄化装置22及び第3浄化装置23は、エンジン10の排気を浄化するための装置である。第2浄化装置22は、第1浄化装置21の下流に設けられている。第3浄化装置23は、第2浄化装置22の下流に設けられている。第1浄化装置21は、第1触媒24及び第3触媒26を収容する。第2浄化装置22は、微粒子捕集装置28を収容する。第3浄化装置23は、第2触媒25及び第4触媒27を収容する。
【0022】
第1触媒24及び第2触媒25は、例えば、エンジン10の排気が流れる排気路13に設けられたSCR(Selective Catalytic Reduction;選択還元触媒)であり、エンジン10の排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する。具体的には、第1触媒24及び第2触媒25は、NOxを窒素に還元する。第2触媒25は、排気路13において第1触媒24の下流に設けられている。以下の説明においては、第1触媒24を「SCR24」、第2触媒25を「SCR25」という場合がある。
【0023】
第3触媒26及び第4触媒27は、例えば、ASC(Ammonia Slip Catalyst;アンモニアスリップ触媒)であり、アンモニア(NH3)を酸化することによりアンモニアスリップを低減する。第4触媒27は、排気路13において第3触媒26の下流に設けられている。微粒子捕集装置28は、例えば、DPD(Diesel Particulate Diffuser)であり、DOC(Diesel Oxidation Catalyst;酸化触媒)と微粒子物質(PM;Particulate Matter)捕集フィルタとを有し、PMを捕集する。
【0024】
第1温度センサ30及び第2温度センサ33は、排気路13を流れるエンジン10の排気の温度を検出するためのセンサである。第1温度センサ30は、排気路13における第1インジェクタ32の上流の排気の温度を検出し、第2温度センサ33は、排気路13における第2インジェクタ35の上流の排気の温度を検出する。第1窒素酸化物センサ31(以下、「NOxセンサ31」という)及び第2窒素酸化物センサ34(以下、「NOxセンサ34」という)は、排気路13を流れるエンジン10の排気に含まれるNOx濃度を検出するためのセンサである。NOxセンサ31は、排気路13における第1インジェクタ32の上流の排気のNOx濃度を検出し、NOxセンサ34は、排気路13における第2インジェクタ35の上流の排気のNOx濃度を検出する。
【0025】
第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35は、ポンプ36が送出した尿素水又は尿素水と水との混合水を排気路13に噴射するための部品である。第1インジェクタ32は、排気路13においてSCR24の上流に設けられ、エンジン10の排気に尿素水又は混合水を噴射する。第2インジェクタ35は、排気路13においてSCR24の下流かつSCR25の上流に設けられ、エンジン10の排気に尿素水又は混合水を噴射する。第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35から噴射された尿素水又は混合水は、排気路13においてアンモニアを発生する。そして、SCR24及びSCR25において、アンモニアが還元剤としてNOxと反応することにより水と窒素が生成されるため、排気が浄化される。また、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35においては、それぞれの内部を尿素水又は混合水が流れることで尿素が固着しにくくなる。第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35は、それぞれが1つのインジェクタにより構成されてもよいし、例えば、尿素水インジェクタ及び水インジェクタのように、それぞれが複数のインジェクタを含んでもよい。
【0026】
ポンプ36は、尿素水タンク37が貯蔵する尿素水、又は当該尿素水と水タンク38が貯蔵する水とを混合した混合水を第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35に送出する。ポンプ36は、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35に、尿素水と水との割合がそれぞれ異なる混合水を送出してもよい。ポンプ36は、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35のうち、一方に尿素水を送出し、他方に混合水を送出してもよい。尿素水タンク37は、尿素水を貯蔵するタンクである。水タンク38は、水を貯蔵するタンクである。
【0027】
噴射制御装置40は、電子部品を含む筐体又は電子部品が実装されたプリント基板である。噴射制御装置40は、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35それぞれが噴射する尿素水又は混合水の噴射水量を決定し、決定した噴射水量の尿素水又は混合水を第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35に噴射させる処理を実行する。噴射水量は、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35のニードルバルブに尿素が固着を抑制するための冷却噴射量と、排気路13を流れる排気に含まれるNOxを浄化するための浄化噴射量と、により決定される。
【0028】
ところで、インジェクタが一定濃度の尿素水を噴射するシステムにおいては、噴射水量を浄化噴射量に合わせると、噴射水量が冷却噴射量よりも小さい場合はインジェクタのニードルバルブに尿素が固着しやすい。一方、噴射水量を冷却噴射量に合わせると、噴射水量が浄化噴射量よりも大きい(すなわち、アンモニアが供給過多になる)場合はアンモニアスリップが発生しやすい。
【0029】
そこで、噴射制御装置40は、冷却噴射量以上の液体であって、かつ浄化噴射量の尿素水に対応する尿素量の尿素が含まれる液体を、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35に噴射させる。また、噴射制御装置40は、冷却噴射量および浄化噴射量に基づいて、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35が噴射する尿素水の濃度を制御する。具体的には、噴射制御装置40は、冷却噴射量が浄化噴射量よりも大きい場合は、浄化噴射量の尿素水に、冷却噴射量から浄化噴射量を減算した水量の水を加えた混合水を噴射させる。すなわち、噴射制御装置40は、尿素の濃度を低下させた冷却噴射量の尿素水(液体)を噴射させる。噴射制御装置40がこのように動作することで、ニードルバルブに尿素が固着しない噴射量(すなわち、各インジェクタを冷却できる噴射量)の液体を噴射させるとともに、アンモニアスリップを抑制する。
【0030】
一方、噴射制御装置40は、冷却噴射量が浄化噴射量よりも小さい場合は、浄化噴射量の尿素水を噴射させる。噴射制御装置40がこのように動作することで、噴射制御装置40は、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35のニードルバルブに尿素が固着を抑制するように冷却するための水量に対応する尿素水又は混合水を噴射させることができる。さらに、噴射制御装置40は、NOx排出量に適した尿素量を噴射できるので、アンモニアスリップを抑制するとともに、エンジン10の排気に含まれるNOxを浄化することができる。
以下、噴射制御装置40の構成及び動作を詳細に説明する。
【0031】
<噴射制御装置40の構成>
図2は、噴射制御装置40の構成を示す図である。噴射制御装置40は、記憶部41と、制御部42と、を有する。制御部42は、取得部421と、特定部422と、噴射制御部423と、を有する。
【0032】
記憶部41は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部41は、制御部42が実行するプログラムを記憶している。
【0033】
記憶部41は、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35の噴射水量と、噴射水量における尿素水と水との割合と、を決定する処理を実行するための各種の情報を記憶している。一例として、記憶部41は、排気路13を流れる排気の排気温度と排気流量とに対応する冷却噴射量、及び排気流量とNOx濃度と排気温度とに対応する浄化噴射量を記憶している。また、記憶部41は、排気路13を流れる排気の排気温度に対応する第1インジェクタ32の最小噴射量と最大噴射量、及び第2インジェクタ35の最小噴射量及び最大噴射量を記憶している。最小噴射量は、インジェクタの定格として定められた噴射量である。最大噴射量は、尿素による白色堆積物(いわゆる、デポジット)が生成されないように噴射できる噴射量の上限値である。
【0034】
制御部42は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部42は、記憶部41に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部421、特定部422及び噴射制御部423として機能する。なお、制御部42は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
【0035】
以下、制御部42により実現される各部の構成を説明する。なお、排気路13を流れる排気の温度は、第2インジェクタ35が噴射するSCR24の下流かつSCR25の上流よりも、第1インジェクタ32が噴射するSCR24の上流の方が高くなる。したがって、第2インジェクタ35よりも第1インジェクタ32の方が、尿素が固着するリスクが高い。そこで、以下の説明においては、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35のうち、第1インジェクタ32が噴射する際の動作を説明する。
【0036】
取得部421は、所定時間が経過した時刻毎に、エンジン10の排気流量と、排気路13における第1インジェクタ32の上流の排気の排気温度と、排気路13における第1インジェクタ32の上流の排気のNOx濃度と、を取得する。所定時間は、例えば、0.1秒である。取得部421は、例えば、吸気圧センサ14が検出した、エンジン10に供給される空気の空気圧を取得して、エンジン10の排ガス量を算出することにより、エンジン10の排ガス量を取得する。取得部421は、例えば、第1温度センサ30が検出した排気温度と、NOxセンサ31が検出したNOx濃度と、を取得する。
【0037】
特定部422は、第1インジェクタ32を冷却するための尿素水の第1冷却噴射量と、第1インジェクタ32の上流の排気に含まれるNOxを浄化するための尿素水の第1浄化噴射量とを特定する。特定部422は、取得部421が取得した、排気路13における第1インジェクタ32の上流の排気温度と排気流量とNOx濃度とに基づいて、第1冷却噴射量及び第1浄化噴射量を特定する。
【0038】
特定部422は、例えば、所定時間が経過した時刻毎に、記憶部41に記憶された、排気温度と排気流量とに対応する冷却噴射量を参照することにより、取得部421が取得した排気温度と排気流量に対応する第1冷却噴射量を特定する。特定部422は、例えば、所定時間が経過した時刻毎に、記憶部41に記憶された、排気流量とNOx濃度と排気温度とに対応する浄化噴射量を参照することにより、取得部421が取得した排気流量とNOx濃度と排気温度とに対応する第1浄化噴射量を特定する。
【0039】
特定部422は、記憶部41に記憶された、排気温度に対応する第1インジェクタ32の最小噴射量と最大噴射量とを参照することにより、第1冷却噴射量と第1浄化噴射量とを決定してもよい。特定部422は、例えば、記憶部41に記憶された、排気温度に対応する第1インジェクタ32の最小噴射量と最大噴射量とを参照することにより、取得部421が取得した排気温度に対応する最小噴射量と最大噴射量とを特定する。そして、特定部422は、特定した最小噴射量から最大噴射量までの複数の噴射量のうち、記憶部41に記憶された冷却噴射量を参照することにより特定した冷却噴射量と一致又は最も近似する噴射量を第1冷却噴射量として特定する。特定部422は、特定した最小噴射量から、特定した最大噴射量までの複数の噴射量のうち、記憶部41に記憶された浄化噴射量を参照することにより特定した浄化噴射量と一致又は最も近似する噴射量を第1浄化噴射量として特定する。
【0040】
特定部422が上記のように動作することで、第1インジェクタ32が噴射することが可能な噴射量の範囲内で、排気温度に適した第1冷却噴射量と第1浄化噴射量とを特定することができる。その結果、最小噴射量よりも小さい第1冷却噴射量及び第1浄化噴射量の少なくともいずれかを特定することにより第1インジェクタ32が噴射できなかったり、最大噴射量よりも大きい第1冷却噴射量及び第1浄化噴射量の少なくともいずれかを特定することにより白色堆積物が生成されたりすることを防ぐことができる。
【0041】
噴射制御部423は、尿素水又は混合水をポンプ36に送出させる。尿素水をポンプ36に送出させる場合、噴射制御部423は、尿素水タンク37が貯蔵する尿素水を、ポンプ36から第1インジェクタ32に送出させることにより、第1インジェクタ32に尿素水を噴射させる。一方、混合水をポンプ36に送出させる場合、噴射制御部423は、尿素水タンク37が貯蔵する尿素水と水タンク38が貯蔵する水とを、ポンプ36から第1インジェクタ32に送出させることにより、第1インジェクタ32に、尿素水と水との混合水を噴射させる。
【0042】
図3は、尿素水又は混合水を噴射する動作を説明するための図である。
図3(a)は、特定部422が特定した第1浄化噴射量及び第1冷却噴射量を示す。
図3(b)は、インジェクタ32が噴射した尿素水の量と水の量とを示す。
図3の横軸は、時刻を示し、
図3の縦軸は、噴射制御部423が特定した噴射量を示す。
【0043】
噴射制御部423は、特定部422が特定した第1冷却噴射量が第1浄化噴射量以下の場合、第1浄化噴射量の尿素水を第1インジェクタ32に噴射させる。例えば、
図3(a)に示す時刻T1よりも前の時刻及び時刻T4よりも後の時刻においては、特定部422が特定した第1冷却噴射量が第1浄化噴射量以下である。そこで、
図3(b)に示すように、噴射制御部423は、第1浄化噴射量の尿素水(一例として、時刻T0における第1浄化噴射量J0の尿素水)を第1インジェクタ32に噴射させる。噴射制御部423がこのように動作することで、第1インジェクタ32を冷却しつつ、エンジン10の排気に含まれるNOxを浄化することができる。
【0044】
噴射制御部423は、特定部422が特定した第1冷却噴射量が第1浄化噴射量よりも大きい場合、第1浄化噴射量の尿素水に、第1冷却噴射量から第1浄化噴射量を減算した量の水を加えた混合水を、第1インジェクタ32に噴射させる。例えば、
図3(a)に示す時刻T1から時刻T4までの時間においては、特定部422が特定した第1冷却噴射量が第1浄化噴射量よりも大きい。そこで、一例として、
図3(b)に示す時刻T2から時刻T3までの時間のように、噴射制御部423は、第1浄化噴射量J3の尿素水に、第1冷却噴射量J2から第1浄化噴射量J3を減算した水を加えた混合水を、第1インジェクタ32に噴射させる。
【0045】
噴射制御部423がこのように動作することで、第1浄化噴射量の尿素水に含まれる尿素により、エンジン10の排気に含まれるNOxを浄化しつつ、第1冷却噴射量の混合水により、第1インジェクタ32を冷却することができる。その結果、第1インジェクタ32のニードルバルブに尿素が固着を抑制しつつ、NOxを浄化するとともに、アンモニアスリップを防ぐことができる。
【0046】
ところで、ポンプ36は、噴射制御部423が混合水から尿素水に切り替えて噴射させようとしても、切り替える時刻から一定時間は、水タンク38が貯蔵する水を第1インジェクタ32から噴射させる場合がある。例えば、
図3(b)に示す時刻T4から一定時間においては、噴射制御部423が水の噴射を停止させようとしても、第1インジェクタ32は噴射量(J2-J3)未満の水を噴射する。すなわち、時刻T4において、第1インジェクタ32は、NOxを浄化するために必要な第1浄化噴射量の尿素水に、噴射量(J2-J3)未満の水を混合した混合水を噴射する。その結果、第1インジェクタ32は、ニードルバルブの尿素の固着を抑制するための噴射量としては、噴射量(J2-J3)だけ多い水を一定時間噴射するが、NOxを浄化するために必要な量の尿素水を噴射することができる。
【0047】
<噴射制御装置40における処理シーケンス>
図4は、噴射制御装置40における処理シーケンスの例を示す図である。
図4に示す処理シーケンスは、噴射制御部423がインジェクタ32に尿素水又は混合水を噴射させる動作を示すシーケンスである。噴射制御装置40は、
図4に示す処理シーケンスを一定時間毎に繰り返す。
【0048】
取得部421は、エンジン10の排気流量(S10)と、第1インジェクタ32の上流の排気の排気温度(S11)と、第1インジェクタ32の上流の排気のNOx濃度(S12)と、を取得する。特定部422は、記憶部41を参照することにより、取得部421が取得した排気温度と排気流量とに対応する第1冷却噴射量Aを特定する(S13)。特定部422は、記憶部41を参照することにより、取得部421が取得した排気流量とNOx濃度と排気温度とに対応する第1浄化噴射量Bを特定する(S14)。
【0049】
第1冷却噴射量Aから第1浄化噴射量Bを減算した減算値が0以下である場合(S15のNO)、噴射制御部423は、第1浄化噴射量Bの尿素水を第1インジェクタ32に噴射させる(S18)。第1冷却噴射量Aから第1浄化噴射量Bを減算した減算値が0よりも大きい場合(S15のYES)、噴射制御部423は、算出した減算値(第1冷却噴射量A-第1浄化噴射量B)を水量に決定する(S16)。噴射制御部423は、第1浄化噴射量Bの尿素水と、減算値(第1冷却噴射量A-第1浄化噴射量B)の水との混合水を第1インジェクタ32に噴射させる(S17)。
【0050】
<第1変形例>
以上の説明においては、噴射制御装置40が第1インジェクタ32に尿素水又は混合水を噴射させる動作を例示したが、これに限らない。噴射制御装置40は、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35に尿素水又は混合水を噴射させてもよい。以下、噴射制御装置40が、第2インジェクタ35に尿素水又は混合水を噴射させる動作を説明する。
【0051】
取得部421は、所定時間が経過した時刻毎に、排気路13における第2インジェクタ35の上流の排気温度と、排気路13における第2インジェクタ35の上流の排気のNOx濃度と、をさらに取得する。取得部421は、例えば、第2温度センサ33が検出した排気温度と、NOxセンサ34が検出したNOx濃度と、を取得する。
【0052】
特定部422は、排気路13におけるSCR24の下流かつ第2インジェクタ35の上流の排気温度と排気流量とNOx濃度とに基づいて、第2インジェクタ35を冷却するための尿素水の第2冷却噴射量とSCR24の下流の排気に含まれるNOxを浄化するための尿素水の第2浄化噴射量とを特定する。
【0053】
特定部422は、例えば、所定時間が経過した時刻毎に、記憶部41に記憶された、排気温度と排気流量に対応する冷却噴射量を参照することにより、取得部421が取得した、排気流量と第2インジェクタ35の上流の排気温度とに対応する第2冷却噴射量を特定する。特定部422は、例えば、所定時間が経過した時刻毎に、記憶部41に記憶された、排気流量とNOx濃度と排気温度とに対応する浄化噴射量を参照することにより、取得部421が取得した、排気流量と第2インジェクタ35の上流の排気温度及びNOx濃度に対応する第2浄化噴射量を特定する。
【0054】
噴射制御部423は、第2冷却噴射量が第2浄化噴射量以下の場合、第2浄化噴射量の尿素水を第2インジェクタ35に噴射させる。噴射制御部423は、第2冷却噴射量が第2浄化噴射量よりも大きい場合、第2浄化噴射量の尿素水に、第2冷却噴射量から第2浄化噴射量を減算した量の水を加えた混合水を、第2インジェクタ35に噴射させる。
【0055】
噴射制御部423が上記のように動作することで、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35に、尿素水と水との割合がそれぞれ異なる混合水を噴射させることができる。また、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35のうち、一方に尿素水を噴射させ、他方に混合水を噴射させることができる。その結果、第1インジェクタ32の上流の排気温度、NOx濃度が、第2インジェクタ35の上流の排気温度、NOx濃度と異なっていても、第1インジェクタ32及び第2インジェクタ35のそれぞれに適した量の尿素水又は混合水を噴射させることができる。
【0056】
<第2変形例>
以上の説明においては、車両Sが、SCRとASCとを収容した第1浄化装置21と第3浄化装置23とを備える場合の動作を例示したが、これに限らない。車両Sは、第1浄化装置21及び第3浄化装置23のうち、1つの浄化装置を備えていてもよい。噴射制御装置40は、車両Sが第1浄化装置21を備えている場合は第1インジェクタ32に尿素水又は混合水を噴射させ、車両Sが第3浄化装置23を備えている場合は第2インジェクタ35に尿素水又は混合水を噴射させる。
【0057】
<噴射制御装置40による効果>
以上説明したように、噴射制御装置40は、排気路13における第1インジェクタ32の上流の排気温度と排気流量とNOx濃度とに基づいて、第1インジェクタ32を冷却するための尿素水の第1冷却噴射量及び排気に含まれるNOxを浄化するための尿素水の第1浄化噴射量を特定する特定部422と、第1冷却噴射量が第1浄化噴射量よりも大きい場合、第1浄化噴射量の尿素水に、第1冷却噴射量から第1浄化噴射量を減算した量の水を加えた混合水を、第1インジェクタ32に噴射させる噴射制御部423と、を有する。
【0058】
噴射制御装置40がこのように構成されることで、第1インジェクタ32のニードルバルブに尿素が固着を抑制するように冷却しつつ、エンジン10の排気に含まれるNOxを浄化することができる。さらに、NOx排出量に適した尿素量を第1インジェクタ32が噴射することができるので、アンモニアスリップを抑制することができる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0060】
10 エンジン
11 過給機
12 吸気路
13 排気路
14 吸気圧センサ
21 第1浄化装置
22 第2浄化装置
23 第3浄化装置
24 第1触媒
25 第2触媒
26 第3触媒
27 第4触媒
28 微粒子捕集装置
30 第1温度センサ
31 第1窒素酸化物センサ
32 第1インジェクタ
33 第2温度センサ
34 第2窒素酸化物センサ
35 第2インジェクタ
36 ポンプ
37 尿素水タンク
38 水タンク
40 噴射制御装置
41 記憶部
42 制御部
421 取得部
422 特定部
423 噴射制御部
【要約】
【課題】NOx排出量に適した尿素量を噴射しつつ、尿素水の噴射部を冷却する。
【解決手段】噴射制御装置40は、エンジン10の排気が流れる排気路13に設けられた第1触媒24と、排気路13において第1触媒24の上流に設けられた第1インジェクタ32と、排気路13の排気温度、排気流量及びNOxの濃度に基づいて、第1インジェクタ32を冷却するための尿素水の第1冷却噴射量及び排気に含まれるNOxを浄化するための尿素水の第1浄化噴射量を特定する特定部422と、第1冷却噴射量が第1浄化噴射量よりも大きい場合、第1浄化噴射量の尿素水に、第1冷却噴射量及び第1浄化噴射量に基づいて特定した量の水を加えた混合水を、第1インジェクタ32に噴射させる噴射制御部423と、を有する。
【選択図】
図2