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  • 特許-血液循環回路 図1
  • 特許-血液循環回路 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】血液循環回路
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20241119BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20241119BHJP
   A61M 1/18 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61M1/00 135
A61M1/16 107
A61M1/18 525
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023509289
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022013865
(87)【国際公開番号】W WO2022202974
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021053096
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】工藤 雅彰
(72)【発明者】
【氏名】森 駿太
(72)【発明者】
【氏名】藤綱 伊織
(72)【発明者】
【氏名】土井 美穂
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇人
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-320024(JP,A)
【文献】特表2008-534240(JP,A)
【文献】米国特許第06302860(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61M 1/16
A61M 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈血を脱血する脱血ラインと、
前記脱血ラインが接続され、前記脱血ラインを流れる血液を貯留する貯血槽と、
前記貯血槽の内部の陰圧を調整する陰圧調整装置と、
前記貯血槽の血液を送血する血液ポンプと、
前記血液ポンプから送血された血液に対してガス交換を行う人工肺と、
前記貯血槽に接続され、手術部位における血液を、前記貯血槽の前記陰圧により吸引する血液回収ラインと、
前記血液回収ラインもしくは前記脱血ラインに設けられた、前記血液回収ラインもしくは前記脱血ラインを流れる血液の流量を変更可能な、血液吸引手段を除く流量調整装置と、
を備える血液循環回路。
【請求項2】
前記流量調整装置は、前記血液回収ラインを流れる血液の流量を調整する第1の流量調整装置を備える、
請求項1に記載の血液循環回路。
【請求項3】
前記流量調整装置は、前記脱血ラインを流れる血液の流量を調整する第2の流量調整装置を備える、
請求項1または2に記載の血液循環回路。
【請求項4】
記流量調整装置は、
前記血液回収ラインもしくは前記脱血ラインに用いられるチューブを導入可能なチューブ導入部と、
前記チューブ導入部内を進退可能な圧閉部材と、を備え、
前記圧閉部材の前記チューブ導入部内への進入量を変化させることにより、前記チューブ導入部に導入された前記チューブを外側から挟んで押し潰す量を変化させ、血液と非接触状態で外部より圧閉することによりチューブ開口面積を変更して前記チューブの内部を流れる血液の流量を調整する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液循環回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液循環回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓手術において、人工肺を備える血液循環回路が手術中の患者の血液循環機能を代行するために使用されている。血液循環回路は、大静脈から血液を吸引する脱血ラインと、この脱血ラインが接続され、脱血ラインから流入した血液を貯留する貯血槽と、貯血槽の血液を送血する血液ポンプと、血液ポンプにより送血された血液に対してガス交換を行う人工肺と、貯血槽の内部の陰圧を調整する陰圧調整装置と、手術野等からの血液を吸引するためのサクションラインやベントラインである血液回収ラインと、を備える。
【0003】
ここで、血液回収ラインを流れる血液の流量は、脱血ラインを流れる血液の流量と異なる調整が必要であるため、従来は血液回収ラインにローラポンプが設けられていた。しかし、ローラポンプは高価であり、また数年ごとに交換が必要である。近年、医療費削減の観点から設備投資を控える動きが顕在化してきている。このため、ローラポンプを、耐用年数を超えて使用する事例も確認され、このような耐用年数を超えたローラポンプが用いられている血液循環回路を臨床に使用することは安全性の観点から好ましくない。
【0004】
このため、血液回収ラインを、貯血槽に設けられた陰圧調整装置とは別の陰圧調整装置により陰圧調整可能な、貯血槽とは別の血液回収槽に一旦吸引した後、貯血槽へ血液を送る血液循環回路が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第2123315号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案された血液循環回路は、2つの槽と2つの陰圧調整装置を必要としており、血液循環回路の製造コストを低減することはできない。
【0007】
従って、本発明は、製造コストを低減できる血液循環回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、静脈血を脱血する脱血ラインと、前記脱血ラインが接続され、前記脱血ラインを流れる血液を貯留する貯血槽と、前記貯血槽の内部の陰圧を調整する陰圧調整装置と、前記貯血槽の血液を送血する血液ポンプと、前記血液ポンプから送血された血液に対してガス交換を行う人工肺と、前記貯血槽に接続され、手術部位の血液を、前記貯血槽の前記陰圧により吸引する血液回収ラインと、を備える血液循環回路に関する。
【0009】
また、血液循環回路は、前記血液回収ラインを流れる血液の流量を調整する第1の流量調整装置を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記第1の流量調整装置は、前記血液回収ラインに用いられるチューブを、血液と非接触状態で外部より圧閉することによりチューブ開口面積を変更して流量を調整することが好ましい。
【0011】
また、前記血液循環回路は、前記脱血ラインを流れる血液の流量を調整する第2の流量調整装置を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記第2の流量調整装置は、前記脱血ラインに用いられるチューブを、血液と非接触状態で外部より圧閉することによりチューブ開口面積を変更して流量を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造コストを低減できる血液循環回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る血液循環回路1の構成を示す図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る血液循環回路1Aの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る血液循環回路1の構成を示す図である。第1実施形態の血液循環回路1は、例えば心臓Hの手術を行う場合に用いられる人工心肺システムに適用される。
【0016】
血液循環回路1は、脱血ライン2と、血液回収ライン3と、貯血槽4と、貯血槽4から送血する血液ポンプ5と、貯血槽4の内部の陰圧を調整する陰圧調整装置6と、人工肺7と、血液フィルタ装置8と、送血ライン9とを備える。
【0017】
脱血ライン2、血液回収ライン3及び送血ライン9は、柔軟性を有するポリ塩化ビニル等のチューブで構成されている。
脱血ライン2及び血液回収ライン3には、チューブの内部を流れる血液の流量を調整する第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11がそれぞれ設けられている。
【0018】
(脱血ライン2)
脱血ライン2は、心臓H近傍に位置する大静脈に接続され、大静脈を流れる血液(静脈血)を貯血槽4に送る。
【0019】
(血液回収ライン3)
血液回収ライン3は、手術野に存在する血液や心臓H(心腔)に存在する血液を吸収するラインである。血液回収ライン3は、1本に限らず、2本以上であってもよい。
【0020】
(貯血槽4)
貯血槽4は、脱血ライン2及び血液回収ライン3を流れる血液を貯留する。貯血槽4には、脱血ライン2及び血液回収ライン3が接続される。
【0021】
(血液ポンプ5)
血液ポンプ5は、貯血槽4の下流側に配置され、貯血槽4から人工肺7に血液を送り、血液循環回路1内で血液を循環させる。血液ポンプ5としては、周知の遠心ポンプやローラポンプが用いられる。実施形態では、血液ポンプ5として遠心ポンプが用いられ、内部に設けられた回転体を駆動させて血液を圧送する。
【0022】
(人工肺7)
人工肺7は、血液ポンプ5の下流側に配置され、気体透過性に優れた中空糸膜又は平膜等を備える。人工肺7は、血液への酸素付加、及び血液からの二酸化炭素除去等のガス交換を行う。人工肺7には、酸素ボンベ等の酸素供給手段(図示せず)が接続され、この酸素供給手段から人工肺7に血液に付加する酸素が供給される。また、人工肺7には、例えば、血液の温度を調整するための熱交換器が設けられる。
【0023】
(血液フィルタ装置8)
血液フィルタ装置8は、血液のろ過や、血液中の気泡の除去を行う。
【0024】
(陰圧調整装置6)
陰圧調整装置6は、貯血槽4の内部を所定の陰圧にする。陰圧調整装置6としては、例えばVAVDコントローラーが用いられる。
【0025】
(第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11)
第1の流量調整装置10は、血液回収ライン3に取り付けられる。本実施形態では、第1の流量調整装置10は、血液回収ライン3を構成するチューブの外側に取り付けられる血液非接触型の装置である。
第2の流量調整装置11は、脱血ライン2に取り付けられる。本実施形態では、第2の流量調整装置11は、脱血ライン2を構成するチューブの外側に取り付けられる血液非接触型の装置である。
【0026】
第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11は、チューブを外側から挟んで押し潰して圧閉することにより、チューブの内部を流れる血液の流量を変更させる。本実施形態では、第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11による流量制御は手動で行うが、これに限らず、電動であってもよい。第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11は、手動・電動にかかわらず、チューブを外部から狭窄し、その制御を多段階もしくは無段階で簡便にコントロール可能である。
【0027】
本実施形態では、第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11は、円柱状の本体部と、本体部の側面の一部が切り欠かれて形成されチューブを導入可能なチューブ導入部と、本体部の内部に本体部の軸方向に進退可能に配置されチューブ導入部に導入されたチューブを外側から圧閉する圧閉部材と、本体部の軸方向の端部に配置され回転させることにより圧閉部材を進退させる操作部と、を備える。
【0028】
以上の第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11によれば、チューブ導入部に血液回収ライン3を構成するチューブ及び脱血ライン2を構成するチューブを導入した状態で操作部を回転操作させることで圧閉部材を進退させる。これにより、チューブを外側から挟んで押し潰して圧閉することにより、チューブの内部を流れる血液の流量を変更できる。また、第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11をチューブに対して容易に着脱できる。また、チューブの外側からチューブの流れを制御することができるため、ローラポンプ等の流量調整手段よりも血液損傷を低減することができる。
本実施形態では、第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11は、金属部材等の滅菌可能な材料により構成される。
【0029】
次に、本実施形態の血液循環回路1の動作につき説明する。
血液循環回路1を使用する場合、脱血ライン2を心臓H近傍の大静脈に接続し、送血ライン9を心臓H近傍の大動脈に接続する。また、手術野等の所定の位置に血液回収ライン3を配置する。
次いで、陰圧調整装置6及び血液ポンプ5を作動させると、貯血槽4の内部は陰圧となる。この貯血槽4の内部の陰圧によって、大静脈から脱血ライン2に静脈血が吸引され、吸引された血液が貯血槽4に貯血される。貯血槽4に貯血された血液は、血液ポンプ5により人工肺7に送血される。人工肺7に送血された血液には、人工肺7において酸素が付加され、二酸化炭素が除去されるガス交換が施される。また、人工肺7を通過する血液の温度調整が行われる。そして、血液フィルタ装置8において、血液がろ過され、ろ過された血液は送血ライン9より心臓H近傍の大動脈に戻される。
【0030】
また、貯血槽4の内部の陰圧によって、血液回収ライン3の内部も陰圧となり、血液回収ライン3においても血液の吸引力が得られる。これにより、血液回収ライン3を通じて手術野等の血液が吸引され、手術野で出血した血液が病変部を覆って目視できなくなり、手術続行不可能になることが防止され、また出血による血液の損失が最小限に留められる。
【0031】
以上、実施形態によると、貯血槽4に接続されている陰圧調整装置6により調整された陰圧によって脱血ライン2のみならず血液回収ライン3からも血液を吸引することができる。即ち、血液回収ライン3にローラポンプ等の血液吸引手段を配置しなくても、血液回収ライン3から血液を回収することができる。
【0032】
また、例えば、脱血ライン2を介して吸引される静脈血や、血液回収ライン3を介して吸引される手術野で出血した血液量は状況により変動する。このため、脱血ライン2と血液回収ライン3による血液吸引を同じ陰圧で行うと好ましくない場合があり、状況に応じて吸引量を変更する必要がある。
【0033】
実施形態では、血液回収ライン3に第1の流量調整装置10を配置し、脱血ライン2に第2の流量調整装置11を配置している。これにより、第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11を適宜調節することにより、脱血ライン2及び血液回収ライン3を介して吸引される血液の流量を変更することができる。
このとき、例えば、血液回収ライン3だけに流量調整装置10が配置されている場合、血液回収ライン3の陰圧は脱血ライン2よりも大きくすることができない。しかし、実施形態では脱血ライン2にも流量調整装置11が配置されているので、陰圧調整装置6による貯血槽4の陰圧を大きくして、血液回収ライン3の陰圧を脱血ライン2よりも大きくすることもできる。
【0034】
従って、血液回収ライン3のためにローラポンプ等の血液吸引手段を用いる必要がないので、全体として小型化且つ安価な血液循環回路1を提供することができる。また、ローラポンプ等の血液吸引手段を交換する必要がないので、血液循環回路1の維持費が抑制できる。
【0035】
また、実施形態では、陰圧調整装置6により調整された陰圧により血液回収ライン3から血液を吸引し、血液回収ライン3に用いられるチューブを血液と非接触状態で外部より圧閉することによりチューブ開口面積を変更する第1の流量調整装置10により流量を調整する構成を有する。これにより、例えば、複数の手術部位において血液を吸引したい場合において、血液回収ライン3及び第1の流量調整装置10を複数組取り付けることで容易に対応できる。よって、複数の血液回収ラインそれぞれに血液を吸引するための血液ポンプを配置する場合に比してコストを抑制できる。また、血液循環回路の制御を複雑化することなく血液回収ラインの本数を変更できる。尚、1つの血液回収ラインに複数の流量調整装置を設けてもよい。
【0036】
また、例えば、血液回収ライン3の流量調整に鉗子を用いる場合は、流れを遮断するかしないかの制御しかできない。しかし、実施形態では、第1の流量調整装置10によれば、チューブの押圧量を多段階で変更可能であるので、流量の多段階変更が可能である。
【0037】
また、第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11として、チューブを血液と非接触状態で外部より圧閉することによりチューブ開口面積を変更して流量を調整する装置を用いた。これにより、血液回収ライン3の所望の位置に第1の流量調整装置10を配置でき、また、脱血ライン2の所望の位置に第2の流量調整装置11を配置できる。よって、第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11を、滅菌可能な素材で製造することで、手術を行う医師の手が届く範囲に第1の流量調整装置10及び/又は第2の流量調整装置11を配置し、医師が自ら第1の流量調整装置10及び/又は第2の流量調整装置11を操作して流量を調整できる。
【0038】
次に、第2実施形態の血液循環回路1Aにつき、図2を参照しながら説明する。第2実施形態の血液循環回路1Aは、血液濃縮回路91を備える点、及び送血ラインとしての心筋保護回路92及び脳分離回路93を備える点で第1実施形態と異なる。尚、第2実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0039】
血液濃縮回路91は、血液返送ライン911と、この血液返送ライン911に配置される血液浄化器912及び第3の流量調整装置913と、を備える。
血液返送ライン911は、一端部が血液ポンプ5と人工肺7との間に接続され、他端部が貯血槽4の上部に接続される。血液返送ライン911には、血液ポンプ5から送出された血液の一部が流入し、貯血槽4に返送される。
【0040】
血液浄化器912は、血液返送ライン911の途中に配置される。血液浄化器912には、血液返送ライン911を流通する血液が導入される。血液浄化器912は、血液中に含まれる余剰な水分や老廃物を除去する。
【0041】
第3の流量調整装置913は、第1の流量調整装置10及び第2の流量調整装置11と同様の構成を備える。第3の流量調整装置913は、血液返送ライン911を構成するチューブの外側に取り付けられる。第3の流量調整装置913は、チューブを外側から挟んで押し潰して圧閉することにより、チューブの内部を流れる血液の流量を変更させる。
【0042】
以上の血液濃縮回路91によれば、血液ポンプ5から送出された血液の一部が血液返送ライン911に導入される。そして、血液返送ライン911に導入された血液は、血液浄化装置912により除水及び浄化され貯血槽4に返送される。また、血液返送ライン911を流通する血液の流量は、第3の流量調整装置913により調整される。
【0043】
心筋保護回路92及び脳分離回路93は、第1実施形態における送血ライン9の送血先を目的に応じて複数の箇所とするために設けられる。即ち、第2実施形態の血液循環回路1Aは、複数の送血ラインを有するともいえる。
【0044】
心筋保護回路92は、心筋保護ライン921と、この心筋保護ライン921に配置される第4の流量調整装置922と、を備える。
心筋保護ライン921は、一端部が送血ライン9における血液フィルタ装置8よりも下流側に接続され、他端部が冠動脈等に接続される。
第4の流量調整装置922は、第1の流量調整装置10、第2の流量調整装置11及び第3の流量調整装置913と同様の構成を備える。第4の流量調整装置922は、心筋保護ライン921を構成するチューブの外側に取り付けられる。第4の流量調整装置922は、チューブを外側から挟んで押し潰して圧閉することにより、チューブの内部を流れる血液の流量を変更させる。
【0045】
心筋保護ライン921を流通する血液の流量は、第4の流量調整装置922により調整される。
【0046】
脳分離回路93は、脳分離ライン931と、この脳分離ライン931に配置される第5の流量調整装置932と、を備える。
脳分離ライン931は、一端部が送血ライン9における血液フィルタ装置8よりも下流側に接続され、他端部が頸動脈等に接続される。
第5の流量調整装置932は、第1の流量調整装置10、第2の流量調整装置11、第3の流量調整装置913及び第4の流量調整装置922と同様の構成を備える。第5の流量調整装置932は、脳分離ライン931を構成するチューブの外側に取り付けられる。第5の流量調整装置932は、チューブを外側から挟んで押し潰して圧閉することにより、チューブの内部を流れる血液の流量を変更させる。
【0047】
以上の脳分離回路93によれば、送血ライン9を流通する血液の一部が脳分離ライン931に導入され、頸動脈等に送血され脳の機能を保護する。脳分離ライン931を流通する血液の流量は、第5の流量調整装置932により調整される。
【0048】
以上説明した第2実施形態の血液循環回路1Aによれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。特に、第3の流量調整装置913、第4の流量調整装置922及び第5の流量調整装置932として、チューブを血液と非接触状態で外部より圧閉することによりチューブ開口面積を変更して流量を調整する装置を用いた。これにより、患者の体内の複数個所に血液を返送する場合において、返送箇所に応じて返送する血液量を容易に調整できる。
【0049】
以上、本発明の血液循環回路1の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されるものではない。例えば、血液フィルタ装置から患者体内へ返す送血ラインは1本ではなく2本あってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1、1A 血液循環回路
2 脱血ライン
3 血液回収ライン
4 貯血槽
5 血液ポンプ
6 陰圧調整装置
7 人工肺
8 血液フィルタ装置
9 送血ライン
10 第1の流量調整装置
11 第2の流量調整装置
図1
図2