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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】生体データ測定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20241119BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61B5/022 500M
A61B5/02 E
A61B5/02 G
A61B5/02 H
A61B5/02 310A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023517218
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016617
(87)【国際公開番号】W WO2022230603
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021077322
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】志牟田 亨
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-503087(JP,A)
【文献】特開2017-221350(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194330(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/155750(WO,A1)
【文献】特開2010-277611(JP,A)
【文献】特表2020-500052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に通信可能に構成された、環状生体センサと、携帯型制御ユニットと、を備える生体データ測定システムであって、
前記環状生体センサは、
手の指又は手首に装着可能に環状に形成された本体部と、
前記本体部に設けられ、血圧を含む生体データを測定するセンサ部と、を有し、
前記携帯型制御ユニットは、
画像を撮像する撮像部と、
前記携帯型制御ユニットを一方の手で把持しているユーザに対して、ユーザの顔、及び、前記環状生体センサを装着した他方の手を撮像するように提示するとともに、前記撮像部により撮像された画像を表示する表示部と、
前記画像から、前記環状生体センサが装着された他方の手が胸の高さにあるか否かを判定し、該判定の結果に基づいて、前記生体データ測定システムを制御し、血圧を含む生体データを取得する制御部と、を有し、
前記環状生体センサの前記本体部の表面には、光を反射、又は、散乱する光状態可変部材が設けられており、
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記画像から前記光状態可変部材を認識することにより、前記画像中の前記環状生体センサの位置を認識し、
前記携帯型制御ユニットは、所定のパターンで発光するユニット側発光部を有し、
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記画像から、前記所定のパターンで発光する光を反射、又は、散乱する前記環状生体センサを認識することにより、前記画像中の前記環状生体センサの位置を認識する
ことを特徴とする生体データ測定システム。
【請求項2】
相互に通信可能に構成された、環状生体センサと、携帯型制御ユニットと、を備える生体データ測定システムであって、
前記環状生体センサは、
手の指又は手首に装着可能に環状に形成された本体部と、
前記本体部に設けられ、血圧を含む生体データを測定するセンサ部と、を有し、
前記携帯型制御ユニットは、
画像を撮像する撮像部と、
前記携帯型制御ユニットを一方の手で把持しているユーザに対して、ユーザの顔、及び、前記環状生体センサを装着した他方の手を撮像するように提示するとともに、前記撮像部により撮像された画像を表示する表示部と、
前記画像から、前記環状生体センサが装着された他方の手が胸の高さにあるか否かを判定し、該判定の結果に基づいて、前記生体データ測定システムを制御し、血圧を含む生体データを取得する制御部と、を有し、
前記環状生体センサは、所定のパターンで発光するセンサ側発光部を有し、
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記画像から前記所定のパターンで発光する前記センサ側発光部を認識することにより、前記画像中の前記環状生体センサの位置を認識する
ことを特徴とする生体データ測定システム。
【請求項3】
前記環状生体センサの前記センサ部は、発光素子及び受光素子を含む光電脈波センサであり、
前記所定のパターンで発光する前記センサ側発光部は、前記光電脈波センサを構成する前記発光素子であり、
前記光電脈波センサの前記発光素子の指向角は、前記光電脈波センサの前記受光素子の指向角よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の生体データ測定システム。
【請求項4】
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記画像中の前記ユーザの顔を認識し、該顔の表示位置、表示サイズに基づいて、前記画像中の前記ユーザの胸の位置を推定することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の生体データ測定システム。
【請求項5】
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、予め記憶されている前記ユーザの身体情報を取得し、該身体情報を考慮して、前記ユーザの胸の位置を推定することを特徴とする請求項に記載の生体データ測定システム。
【請求項6】
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記画像から、前記ユーザの顔、及び、前記環状生体センサが装着された手を認識し、前記ユーザの顔の表示サイズと手の表示サイズとの比率から、前記携帯型制御ユニットと前記ユーザの体幹部との相対位置を推定し、該相対位置が所定の範囲内であるか否かを判定することを特徴とする請求項又はに記載の生体データ測定システム。
【請求項7】
前記携帯型制御ユニットは、前記携帯型制御ユニットの鉛直方向に対する傾きを検出する傾斜センサを有し、
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、傾斜センサにより検出された前記携帯型制御ユニットの鉛直方向に対する傾きに基づいて、前記ユーザの体幹部の鉛直方向かつ左右方向に対する傾きが所定の範囲内であるか否かを判定することを特徴とする請求項に記載の生体データ測定システム。
【請求項8】
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記画像から、前記ユーザの顔、及び、前記環状生体センサが装着された手を認識し、前記ユーザの顔の表示サイズと手の表示サイズとから、前記携帯型制御ユニットと前記ユーザの体幹部との相対位置を推定し、前記傾斜センサにより検出された前記携帯型制御ユニットの傾きと、前記携帯型制御ユニットと前記ユーザの体幹部との相対位置とに基づいて、前記ユーザの体幹部の鉛直方向かつ前後方向に対する傾きが所定の範囲内であるか否かを判定することを特徴とする請求項に記載の生体データ測定システム。
【請求項9】
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記画像から、前記ユーザの顔、及び、前記環状生体センサが装着された手を認識し、前記ユーザの顔の表示サイズと手の表示サイズとから、前記携帯型制御ユニットと前記ユーザの体幹部との相対位置を推定し、該推定結果と、前記傾斜センサにより検出された前記携帯型制御ユニットの傾きとに基づいて、前記ユーザの体幹部の鉛直方向に対する傾きが所定の範囲内であるか否かを判定し、該判定の結果を用いて、前記環状生体センサを制御することを特徴とする請求項又はに記載の生体データ測定システム。
【請求項10】
前記携帯型制御ユニットの前記表示部は、顔の表示位置、及び、顔の表示サイズの推奨される範囲をグラフィカルに表示することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の生体データ測定システム。
【請求項11】
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記画像中の前記ユーザの顔を認識し、
前記携帯型制御ユニットの前記表示部は、顔の表示位置、及び、顔の表示サイズが推奨される範囲に収まっているか否かを通知することを特徴とする請求項10に記載の生体データ測定システム。
【請求項12】
前記携帯型制御ユニットの前記表示部は、前記携帯型制御ユニットと前記ユーザの体幹部との相対位置、及び、前記ユーザの体幹部の傾きが、所定の範囲内であるか否かを提示することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の生体データ測定システム。
【請求項13】
前記環状生体センサは、手の指又は手首に装着されているか否かを判定する判定部と、
前記携帯型制御ユニットとの間でデータを送受信するセンサ側通信部と、を有し、
前記環状生体センサの前記センサ側通信部は、前記環状生体センサが手の指又は手首に装着されているか否かの判定結果を前記携帯型制御ユニットに送信し、
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記環状生体センサが手の指又は手首に装着されていない場合には、前記ユーザの体幹部の傾きの判定を禁止することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の生体データ測定システム。
【請求項14】
前記生体データは、血圧に加えて、血糖値、脈拍、呼吸、脈波、酸素飽和度、体表温、活動量のうち少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の生体データ測定システム。
【請求項15】
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記ユーザの体幹部の鉛直方向に対する傾きの判定結果に基づいて、取得した血圧を含む生体データの信頼度を演算することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の生体データ測定システム。
【請求項16】
前記携帯型制御ユニットの前記制御部は、前記ユーザの体幹部の鉛直方向に対する傾きの判定結果に基づいて、血圧を含む生体データを補正することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の生体データ測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体データ測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血圧の測定部位が心臓より高い位置にある場合、血圧の測定値は、重力による血管内の静水圧の圧差だけ低くなる。逆に、血圧の測定部位が心臓よりも低い位置にある場合には、血圧の測定値は、血管内の静水圧の圧差だけ高くなる。より具体的には、血圧の測定部位が心臓の高さから1cm上下すると、血圧(測定値)は約0.7mmHg変化する。
【0003】
ここで、特許文献1には、所定の撮像範囲を有し、血圧測定時に撮像動作をして画像データを出力するカメラと、画像データに基づき、当該画像データが指す撮像画像に顔の画像とカフの画像が含まれるか否かを検出する顔及びカフ検出部と、顔の画像とカフの画像の、撮像画像における位置情報を算出する位置情報算出部と、算出された顔の画像とカフの画像との位置情報が指す相対的な位置関係に基づき、電子血圧計の使用状態が適正か否かの判定処理を行う不正判定部と、不正判定部による判定の結果を出力する出力部を備える電子血圧計が開示されている。この電子血圧計によれば、血圧測定時に、撮像画像における顔の画像とカフの画像との相対的な位置関係に基づき、電子血圧計の使用状態が適正か否かを判定するので、電子血圧計の使用態様が(測定精度の点で)適正であるかを検出することができる。
【0004】
また、特許文献2には、デバイスを手に持っているユーザから血圧測定値を取得する血圧センサと、重力の方向に対するデバイスの角度を決定し、ユーザの表示画像内で、表示された所定の位置範囲に対するデバイスを手に持っているユーザの1つ又は複数の位置を特定し、重力の方向に対するデバイスの角度と、所定の位置範囲に対する画像内のユーザの1つ又は複数の位置とに基づいて、ユーザの心臓の高さに対する血圧センサの高さを決定し、ユーザの心臓の高さに対する血圧センサの高さに基づいて制御する制御ユニットとを備えるデバイスが提案されている。このデバイスによれば、ユーザの心臓の高さに対する血圧センサの高さに基づいて、デバイスを制御して血圧を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-247733号公報
【文献】特表2020-500052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された電子血圧計では、血圧を測定する際にカフで上腕を締め付けるため、侵襲性がある。また、カフを用いているため、装置(電子血圧計)のサイズが大きくなり、携帯に不向きである。そのため、例えば、外出先などで用いること(血圧を測定すること)ができない。
【0007】
一方、特許文献2に開示されたデバイスでは、デバイスを手に持ち、その手の指を血圧センサに接触させて血圧を測定するため、接触圧を一定に保つことが難しい。そして、接触圧が変化すると、接触している測定部の血圧が変動する(測定毎の変動もあるが、特に測定中の接触圧変動が起こりやすい)ため、血圧を安定して測定することが困難となるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、携帯性に優れ、かつ、測定値が測定部位の高さと心臓の高さとの差により影響を受ける(すなわち静水圧の影響を受ける)血圧を含む生体データを、より精度よく非侵襲で測定することが可能な生体データ測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る生体データ測定システムは、相互に通信可能に構成された、環状生体センサと、携帯型制御ユニットとを備える生体データ測定システムであって、環状生体センサが、手の指又は手首に装着可能に環状に形成された本体部と、本体部に設けられ、少なくとも血圧を測定するセンサ部とを有し、携帯型制御ユニットが、画像を撮像する撮像部と、携帯型制御ユニットを一方の手で把持しているユーザに対して、ユーザの顔、及び、環状生体センサを装着した他方の手を撮像するように提示するとともに、撮像部により撮像された画像を表示する表示部と、画像から、環状生体センサが装着された他方の手が胸の高さにあるか否かを判定し、該判定の結果に基づいて、生体データ測定システムを制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る生体データ測定システムによれば、環状に形成されセンサ部が設けられた環状生体センサが手の指又は手首に装着されるため、測定部位との接触圧(押圧)が安定し、精度よく血圧を含む生体データを測定することができる。また、ユーザの顔および環状生体センサが装着された他方の手を撮像した画像から、環状生体センサが装着された手が胸(心臓)の高さにあるか否かが判定され、その判定結果に基づいて、生体データ測定システムが制御される(血圧を含む生体データが測定される)ため、より精度よく血圧を含む生体データを測定することができる。さらに、カフを用いないため、携帯性に優れ、かつ、非侵襲で血圧を含む生体データを測定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、携帯性に優れ、かつ、測定値が測定部位の高さと心臓の高さとの差により影響を受ける(すなわち静水圧の影響を受ける)血圧を含む生体データを、より精度よく非侵襲で測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る生体データ測定システムの全体構成を示す図である。
図2】実施形態に係る生体データ測定システムの機能構成を示すブロック図である。
図3】環状生体センサの光状態可変部材(光散乱部)の一例を示す図である。
図4】光電脈波センサの発光部(発光素子)及び受光部(受光素子)それぞれの指向角を示す図である。
図5】ユーザの撮影画像例を示す図である。(a)は上方から撮影した場合、(b)は正面から撮影した場合、(c)は下方から撮影した場合の画像例である。
図6】胸(心臓)の高さの推定方法を説明するための図である。
図7】(a)体幹部のみが右に傾いている画像例、及び、(b)体幹部と携帯型制御ユニットとが右に同じように傾いている画像例を示す図である。
図8】手幅と全頭高との画像内比率が撮像部(カメラ)の向きによってどのように変化するかを説明するための図である。
図9】実施形態に係る生体データ測定システムを構成する環状生体センサによる血圧等測定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図10】実施形態に係る生体データ測定システムを構成する携帯型制御ユニットによる血圧等測定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
まず、図1図4を併せて用いて、実施形態に係る生体データ測定システム1の構成について説明する。図1は、生体データ測定システム1の全体構成を示す図である。図2は、生体データ測定システム1の機能構成を示すブロック図である。図3は、環状生体センサ2の光状態可変部材(光散乱部)211の一例を示す図である。図4は、光電脈波センサ2の発光部(発光素子)221及び受光部(受光素子)222それぞれの指向角を示す図である。
【0015】
生体データ測定システム1は、主として、無線通信を介して相互に通信可能に接続された環状生体センサ2と、携帯型制御ユニット3とを備えて構成されている。特に、生体データ測定システム1は、携帯性に優れ、かつ、測定値が測定部位の高さと心臓の高さとの差により影響を受ける(すなわち静水圧の影響を受ける)血圧を含む生体データを、より精度よく非侵襲で測定する機能を有している。
【0016】
環状生体センサ2は、主として、手の指又は手首に装着可能に環状(指輪型又はリストバンド型)に形成された本体部21と、本体部21の内面に設けられ、少なくとも血圧を測定(検出)するセンサ部22と、携帯型制御ユニット3との間でデータ(測定データ及び制御データ等)を送受信するセンサ側通信部23と、環状生体センサ2が装着されているか否かを判定する判定部24と、体動を検出する加速度センサ25とを有している。また、環状生体センサ2は、体表温を検出する温度センサを有していることが好ましい。
【0017】
携帯型制御ユニット3は、主として、画像(静止画像又は動画像)を撮像する撮像部31と、携帯型制御ユニット3を一方の手で把持しているユーザに対して、ユーザの顔、及び、環状生体センサ2を装着した他方の手を撮像するように提示(表示)するとともに、撮像部31により撮像された画像を表示する表示部32と、環状生体センサ2との間でデータ(制御データ及び測定データ等)を送受信するユニット側通信部33と、画像から、環状生体センサ2が装着された他方の手が胸の高さにあるか否かを判定し、該判定の結果に基づいて、撮像部31、表示部32、ユニット側通信部33、及び、環状生体センサ2を制御し、血圧を含む生体データ(生体情報)を取得する制御部34と、携帯型制御ユニット3の鉛直方向に対する傾きを検出する傾斜センサ(又は加速度センサ)35とを有している。制御端末である携帯型制御ユニット3としては、例えば、スマートフォン等の携帯端末などを好適に用いることができる。なお、本実施形態では、携帯型制御ユニット3としてスマートフォンを用いた。以下、各構成要素について説明する。
【0018】
環状生体センサ2の本体部21は、手の指に装着可能に環状(指輪型)に形成されている。又は、本体部21は、手首に装着可能に環状(リストバンド型)に形成されている。なお、本実施形態では、環状生体センサ2として、手の指に装着する指輪型の生体センサを例にして説明する。環状生体センサ2は、例えば、一方の手(図5、6の例では左手)の人差し指に装着される。ただし、環状生体センサ2が装着される指は、中指、薬指、小指、又は、親指でもよい。なお、携帯型制御ユニット3は、環状生体センサ2を装着した手と反対の手(他方の手、図5、6の例では右手)で把持される。
【0019】
本体部21は、携帯型制御ユニット3の撮像部31により撮像された画像(静止画像又は動画像)において認識可能な形状(輪郭)に形成されていることが好ましい。このようにすれば、携帯制御ユニット3の制御部34は、画像から本体部21の形状(輪郭)を認識することにより、画像中の環状生体センサ2の位置を自動的に認識(判定)することができる。また、筐体形状を認識可能な形状に形成する手法であれば、例えば、二次元コードなどを表記する手法と比較して、デザイン性への影響を小さく抑えることができる(すなわち、デザイン性を大きく損なうことがない)。
【0020】
本体部21の形状を認識可能に形成することに代えて、又は、加えて、本体部21の表面に、画像において認識可能なように、光を反射、散乱、又は、吸収する光状態可変部材211を設ける構成としてもよい。この場合、携帯制御ユニット3の制御部34は、携帯型制御ユニット3の撮像部31により撮像された画像から、光状態可変部材211を認識することにより、画像中の環状生体センサ2の位置を自動的に認識(判定)することができる。また、この場合、例えば、鏡面加工された筐体表面の一部のみを光散乱部とすることで実現できるため、例えば、二次元コードなどを表記する手法と比較して、デザイン性への影響を小さく抑えることができる(すなわち、デザイン性を大きく損なうことがない)。
【0021】
特に、光散乱を利用する場合、反射のように特定の向きでなければ反射光が映らないということがなく、向きの自由度が高くなる。環状生体センサ2の向きや光が当たる角度は様々なため、画像内での見え方が大きく変化しないようにすることで画像認識の精度を向上することができる。
【0022】
ここで、光状態可変部材(光散乱部)211を本体部21の表面に形成した例を図3(a)~(c)に示す。図3(a)~(c)に示されるように、光状態可変部材(光散乱部)211が上方を向いているときも、側方を向いているときも、光の当たる角度が変わっているにも関わらず、画像内の光状態可変部材(光散乱部)211の見え方に大きな変化が生じない。よって、画像認識の精度が向上する。
【0023】
なお、鏡面での反射では、反射光は決まった方向にしか進まないため、光の当たり方によってまぶしく見えたり、暗く見えたりする。ただし、半球形状のような曲面で構成した場合は、様々な角度から光が当たっても、曲面のいずれかの場所で反射した反射光が撮像部31の方向に進むため、画像認識しやすい。例えば、半球形状の突起を複数個並べておけば、光の当たり方が変わっても、複数の突起の配列が画像で確認できる。光吸収を用いる方法では、本体部21の全面もしくは一部を艶消しブラックのように光吸収率を高く(光反射率を低く)する。光吸収率が高いため、どのような角度から光が当たっても撮像部31に反射光が映りこまないため、画像認識しやすい。さらに、誤認識を低減するために次の方法を組み合わせてもよい。
【0024】
例えば、携帯型制御ユニット3が、画像(動画像)において認識可能な、所定のパターンで発光するユニット側発光部(本実施形態では表示部32が兼ねる)を有し、携帯制御ユニット3の制御部34が、画像から、所定のパターンで発光する光を反射、又は、散乱する環状生体センサ2を認識することにより、画像中の環状生体センサ2の位置を認識(判定)する構成としてもよい。このようにすれば、暗い場所でも環状生体センサ2の位置を自動で認識(判定)することができる。また、周囲に照明光を反射させるものや発光するものがあったとしても、携帯型制御ユニット3からの発光パターンと同期して光を散乱・反射しなければ環状生体センサ2と区別することができる。
【0025】
より詳細には、携帯型制御ユニット3がユニット側発光部(表示部32)を有し、該ユニット側発光部(表示部32)が撮像部31で撮影した動画像で認識できる発光パターン(光量変化パターン、色相変化パターン)で発光し、制御部34が、その発光パターンを光反射/光散乱させる環状生体センサ2の形状又は光状態可変部材(光散乱部)211を撮影動画像から認識し、動画像中の環状生体センサ2の位置を判定する。ここで、色相変化は、例えば青色から赤色に変化するような色の変化をいう。色相変化には、白色(複数の波長帯の重ね合わせ)も含むため、光の波長変化、光の波長帯の増減を包含する。
【0026】
携帯型制御ユニット3の表示部32(ディスプレイ)は、撮影動画像を表示しているが、例えば0.1sec程度、撮影動画像から全面青色表示→全面赤色表示に切り替え、制御部34が、撮影動画像内で青色成分増加→赤色成分増加した位置を抽出し、環状生体センサ2(本体部21)の形状、光散乱部211に合致する部分を特定し、環状生体センサ2の位置を認定(判定)する。暗い場所では環状生体センサ2の判定も難しくなるが、この方法であれば暗い場所でも環状生体センサ2の位置を判定しやすくなる。また、周囲に照明光を反射させるものや発光するものがあっても、携帯型制御ユニット3からの発光パターンと同期して光を散乱・反射しなければ環状生体センサ2ではないと判定することができる。なお、表示部32とは別に、独立したユニット側発光部を設ける構成としてもよい。
【0027】
なお、環状生体センサ2の本体部21の表面に、携帯型制御ユニット3の撮像部31により撮像された画像において認識可能な、文字、記号、一次元コード(例えばバーコード)、及び/又は、二次元コード(例えばQRコード(登録商標))が表示されている構成としてもよい。このようにしても、携帯制御ユニット3の制御部34は、画像から文字、記号、一次元コード、及び/又は、二次元コードを認識することにより、画像中の環状生体センサ2の位置を自動的に認識(判定)することができる。
【0028】
また、上述した手法に代えて、環状生体センサ2が、画像(動画像)において認識可能な、所定のパターンで発光するセンサ側発光部(本実施形態ではセンサ部22の発光素子221が兼ねる)を有し、携帯制御ユニット3の制御部34が、画像から、所定のパターンで発光する発光素子221(センサ側発光部)を認識することにより、画像中の環状生体センサ2の位置を自動的に認識(判定)する構成としてもよい。このようにすれば、暗い場所でも環状生体センサ2の位置を自動で判定できる。また、周囲に照明光を反射させるものや発光するものがあったとしても、所定の発光パターンで発光しなければ環状生体センサ2と区別することができる。
【0029】
その際に、環状生体センサ2のセンサ部22が、発光素子(発光部)221及び受光素子(受光部)222を含む光電脈波センサ(詳細は後述する)であり、所定のパターンで発光するセンサ側発光部が、光電脈波センサ22を構成する発光素子(発光部)221であることが好ましい。その場合、図4に示されるように、光電脈波センサ22の発光素子221の指向角を、光電脈波センサ22の受光素子222の指向角よりも大きくすることが好ましい。発光素子(発光部)221の指向角を大きくすることで、発光素子(発光部)221から出た光が環状生体センサ2の外に漏れやすくなり、撮像部31(画像)で認識しやすくなる。一方、受光素子(受光部)222は、指向角を小さくすることにより、外乱光が入射することを抑制できる。なお、光電脈波センサ22の発光素子(発光部)221とは別に、独立したセンサ側発光部を設ける構成としてもよい。その場合、センサ側発光部を環状生体センサ2の天面側(外面側)に配置すると撮像部31での認識(判定)が容易になるが、環状生体センサ2のデザイン性への影響が大きくなる。
【0030】
より詳細には、例えば、測定準備コマンド(詳細は後述する)が携帯型制御ユニット3から送られてきたときに、環状生体センサ2(光電脈波センサ22の発光素子(発光部)221)が、携帯型制御ユニット3の撮像部31の撮影動画像で認識できるように所定のパターンで発光を開始する。光電脈波センサ22の発光部の光源はLEDやレーザが使用され、波長としては、生体吸光度の大きい緑色、近赤外、パルスオキシメータで使用される赤色がよく使用される。ただし、撮像部31(カメラ)は、通常、人間の視感度に合わせた光学フィルタが使われているため、近赤外光を受光できない。また、光電脈波センサ22の発光素子(発光部)221は、装着時には指の皮膚側にあるため、生体吸光度の大きい緑色では指を透過しない。そのため、光電脈波センサ22の発光素子(発光部)221を使用(兼用)する場合は赤色光が適している。
【0031】
また、発光素子(発光部)221からの光が撮像部31(画像)で認識しやすくなるように、発光素子(発光部)221からの光が指の外に漏れやすくすることが好ましい。発光素子(発光部)221から出射される光の強度が最大(通常は中心)に対して半分になる角度を一般的に指向角と呼ぶ。また、受光素子(受光部)222に入射される光の感度が最大(通常は中心)に対して半分になる角度も指向角である。発光素子(発光部)221の指向角を大きくすれば指の外に光が漏れやすくなる。ただし、受光素子(受光部)222の指向角を大きくすると外乱光(照明光、太陽光など)が受光部に入射しやすくなり、光電脈波波形のノイズが増加してしまう。そのため、光電脈波センサ22の発光素子(発光部)221の指向角を、光電脈波センサ22の受光素子(受光部)222の指向角より大きくすることが望ましい(図4参照)。
【0032】
一方、別途、センサ側発光部を設ける場合は、波長は可視光であればよい。発光パターンには光量変化パターン、色相変化パターン、及び、それらの混合パターンがある。色相変化は、例えば青色から赤色に変化するような色の変化であるが、光の波長変化だけではなく、例えば白色(複数の波長帯の重ね合わせ)から赤色への変化(光の波長帯の増減)も含む。実際には波長の異なる複数のLEDを順次切り替えて発光させることで実現する。なお、上述したように、光電脈波センサ22の発光部(発光素子)221を使用する場合は、赤色のみが適しているため、色相変化パターンは適さない。
【0033】
光量変化パターンは発光の光量を時間的に変化させる。sin波のように光量を変化させてもよいが、パルス波が適している。撮像部31のフレームレートで捉えられる必要があるため、早くても数Hz程度の周波数とする。また一定周期では他の機器の発光周期が偶然同じであった場合に誤認識してしまうため、特殊な発光点滅パターンにすることが望ましい。例えば、パルス間隔を0.25秒→0.50秒→0.75秒→0.25秒→0.50秒→0.75秒というように変化させることで誤認識を避けることができる。なお、環状生体センサ2(光電脈波センサ22の発光素子(発光部)221)は、携帯型制御ユニット3で環状生体センサ2が認識されて測定(開始)コマンドが送られてくるまで、発光を継続する。
【0034】
上述したように、センサ部22は、例えば、発光素子(発光部)221及び受光素子(受光部)222を含み、光電脈波信号を検出する光電脈波センサである。光電脈波センサは、血中ヘモグロビンの吸光特性を利用して、脈拍などを光学的に計測する。以下、センサ部22を光電脈波センサ22と呼ぶこともある。なお、上述したように、本実施形態では、発光素子(発光部)221がセンサ側発光部を兼ねる。センサ部(光電脈波センサ)22は、本体部21の内面に設けられる。光電脈波センサ22を含む脈波センサでは、指の腹側の方が指の背側よりも生体信号を取得しやすいためである。
【0035】
センサ部22は、少なくとも血圧を測定(検出)する。本実施形態では、光電脈波波形から血圧を推定する血圧センサを例として説明する。光電脈波波形から血圧を推定する方法としては、公知の方法(例えば、特開2016-16295号公報等を参照)を用いることができる。すなわち、環状生体センサ2は、カフを用いないいわゆるカフレス血圧計である。なお、その他、脈波伝播時間を用いた血圧推定技術(方法)などを利用してもよい。
【0036】
ただし、いずれの手法であっても、得られる血圧測定値は、静水圧の影響により不正確になることがある。静水圧の影響を回避するために、血圧測定がユーザの心臓の高さ又はその近くで行われる必要がある。血圧測定が心臓の高さより上で行われた場合、測定結果は低くなり過ぎることになり、血圧測定が心臓の高さより下で行われた場合、測定結果は高くなり過ぎることになる。血圧測定位置と心臓の高さとの差が10cmあると7~8mmHgが誤って血圧測定値にもたらされる。つまり、腕をだらんと下げた状態で、指で血圧測定が行われた場合、50cm程度の高低差が発生し、35~40mmHgの誤差をもたらす。医療従事者のように訓練を受けていない一般ユーザが血圧測定を行う場合、ユーザの心臓の高さとかなり異なる高さで血圧測定が行われることがしばしばあり、血圧測定値の誤差を生じさせる。指で測定する光電脈波波形から血圧を推定する方法でも、正確な血圧測定を行うために、静圧の影響を最小限に抑える、又は取り除くことが必要とされる。
【0037】
また、光電脈波形から血糖値を推定する方法も、公知の方法(例えば、特願2017-506158等を参照)を用いることができる。ただし、光電脈波形はそのときの血圧値の影響も受けてしまうため、推定血糖値にも影響する。従って、血糖値センサでも血圧の影響を限定するために適切な測定姿勢をとる必要がある。また、前かがみのような腹部を圧迫した姿勢では血圧が高くなることがあるが、姿勢によって、脈拍や呼吸も変化することがあり、適切な測定姿勢をとることが必要となる場合がある。光電脈波波形には血管抵抗の情報も含まれる。血管抵抗を求める場合、光電脈波波形は血圧の影響も受けてしまうため、心臓の高さで測定することでばらつきを低減できる。血管抵抗を例に挙げたが、血流量、血糖値、動脈硬化度を波形から推定する場合も同様である。また、測定姿勢は、脈拍数、血流量、体表温、呼吸自体に影響を与えるため、決まった姿勢で測定を行うことで測定ばらつきを低減できる。ここで、測定する生体データ(生体情報)としては、血圧に加えて、例えば、脈波、脈拍、酸素飽和度、血糖値、体表温、活動量、血管抵抗、血流量、動脈硬化度、及び、呼吸等を含んでもよい。このように、複数の生体データ(情報)を同時に測定することで、体調の良否や疾患の兆候などを推定することが可能になる。
【0038】
センサ側通信部23は、携帯型制御ユニット3との間でデータ(測定データ及び制御データ等)を送受信する。ここで、本実施形態では、無線通信規格として、Bluetooth(登録商標)を採用した。すなわち、センサ側通信部23は、Bluetooth(登録商標)に基づいた送信機能及び受信機能を有している。なお、使用する無線通信規格はBluetooth(登録商標)に限られることなく、他の規格を用いてもよい。より具体的には、センサ側通信部23は、携帯型制御ユニット3と接続されているか否かを判定する。また、センサ側通信部23は、環状生体センサ2の装着状態情報(詳細は後述する)を携帯型制御ユニット3に送信する。一方、センサ側通信部23は、携帯型制御ユニット3から送信される測定準備コマンド、及び、測定(開始)コマンドを受信する。そして、センサ側通信部23は、取得された血圧等の生体データを(所定のタイミング(又は周期))で携帯型制御ユニット3に送信する。
【0039】
判定部24は、環状生体センサ2が手の指(又は手首)に装着されているか否かを判定する。環状生体センサ2が装着されていない場合に姿勢判定(詳細は後述する)を行ってしまうと、適切な姿勢ではないにも関わらず適切と誤判定するおそれがあるが、環状生体センサ2が装着されているときのみ姿勢判定を行うことで、そのような問題を回避できる。
【0040】
ここで、環状生体センサ2を装着しているかの判定を行う方法としては、光電脈波センサ22で脈波が検出されるかどうかで判定することが望ましい。指に装着されていないにもかかわらず装着していると誤判定する可能性が低いためである。ただし、脈波であると判定するためには2拍以上測定する必要があるため、時間が3秒以上かかる可能性がある。そのため、光電脈波センサ22での受光光量が閾値を超えたかどうかで判定してもよい。光電脈波センサ22が反射型の場合、装着していないと受光光量が低くなるため閾値を下回った場合に装着していないとみなす。光電脈波センサ22が透過型の場合、装着していないと受光光量が高くなるため閾値を上回った場合に装着していないとみなす。この方法によれば短時間での判定が可能である。ただし、光を遮るものであればどのようなものが環状生体センサ2に挿入されたとしても、装着されていると判定(すなわち誤判定)されてしまうおそれがある。そのため、加速度センサ25、ジャイロセンサ等で動きが検出されない場合には環状生体センサ2が装着されていないと判定する方法や、体表温を検出する温度センサを設け、その検出温度が所定値以下であるときには環状生体センサ2が装着されていないと判定する方法等と組み合わせて、環状生体センサ2が指に装着されているか否かを判定する構成としてもよい。
【0041】
判定部24による判定結果は、センサ側通信部23から、携帯型制御ユニット3に送られる。また、環状生体センサ2のセンサ側通信部23は、環状生体センサ2が手の指又は手首に装着されているか否かの判定結果を携帯型制御ユニット3に送信する。携帯型制御ユニット3の制御部34は、環状生体センサ2が手の指又は手首に装着されていない場合には、ユーザの体幹部の傾きの判定(姿勢判定、詳細は後述する)を禁止する。
【0042】
加速度センサ25は、環状生体センサ2の加速度、すなわち、環状生体センサ2を装着しているユーザの体動を検出する。なお、加速度センサ25による検出結果も、センサ側通信部23から、携帯型制御ユニット3に送られる。
【0043】
一方、携帯型制御ユニット3の撮像部(カメラ)31は、画像(静止画像又は動画像)を撮像する。撮像部31は、携帯型制御ユニット3の表示部32側の面に設けられている。撮像部31は、図5、6に示されるように、例えば、環状生体センサ2が装着された一方の手(例えば左手)を胸に当て(乳首を覆うように)、他方(反対)の手(例えば右手)で携帯型制御ユニット3を把持したユーザの顔および胸に当てた手を撮像する。
【0044】
表示部32は、例えば、LCDディスプレイなどからなる。表示部32は、例えば、次の(1)~(7)の画像や情報等を表示(通知)する。
(1)表示部32は、携帯型制御ユニット3を一方の手で把持しているユーザに対して、環状生体センサ2を装着した手を胸に当ててもらうよう表示(通知)する。
(2)表示部32は、ユーザに対して、ユーザの顔、及び、環状生体センサ2を装着した他方の手がフレームに納まるように撮像するように表示(提示)する。
(3)表示部32は、撮像部31により撮像された画像(静止画像又は動画像)をリアルタイムで表示する。また、表示部32は、顔の表示位置、及び、顔の表示サイズの推奨される範囲をグラフィカルに表示(提示)する。より具体的には、表示部32は、適切な顔の位置と大きさを表す略楕円や長方形等の図形をスーパーインポーズする。このように、顔の表示位置、顔の表示サイズ(大きさ)の適切な範囲を表示部32(ディスプレイ)上にグラフィカルに表示することで、ユーザが適切な範囲を認識しやすくなる。そのため、ユーザは、表示される顔の位置、大きさをユーザ自身で容易に修正できる。
(4)携帯型制御ユニット3の制御部34により、画像中のユーザの顔が認識されたときに、表示部32は、顔の表示位置、及び、顔の表示サイズが推奨される範囲に収まっているか否かを通知(表示)する。このように、画像中の実際の顔の位置とサイズ(大きさ)と、適切な範囲の顔の位置とサイズ(大きさ)が両方表示されるため、ユーザの修正が容易になる。なお、顔の高さの基準を目の高さにすることが望ましいが、顔の自動判別で目の位置も自動判別すれば顔と心臓の相対位置の推定精度が向上できる。
(5)表示部32は、ユーザの体幹部が鉛直方向になるように表示(通知)して、ユーザに調整を促す。より詳細には、表示部32は、携帯型制御ユニット3とユーザの体幹部との相対位置、及び、ユーザの体幹部の鉛直方向に対する傾きが、所定の範囲内であるか否かを提示(表示)する。このようにすれば、携帯型制御ユニット3と体幹部の相対位置、体幹部の傾きが適切な範囲になっているかが、ユーザに通知されるため、ユーザは、範囲外になっているか否かが分かり、容易に修正することができる。
(6)表示部32は、環状生体センサ2を装着した手がユーザの胸の高さになるように表示(通知)して、ユーザに調整を促す。
(7)上述したように、表示部32はユニット側発光部を兼ねてもよい。なお、表示部32がユニット側発光部を兼ねる場合については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を詳細する。
【0045】
ユニット側通信部33は、環状生体センサ2(センサ側通信部23)との間でデータ(制御データ(コマンド)及び測定データ等)を送受信する。より具体的には、ユニット側通信部33は、Bluetooth(登録商標)でセンサ側通信部23と接続されているか否かを判定する。また、ユニット側通信部33は、測定準備コマンド、及び、測定(開始)コマンドをセンサ側通信部23に送信する。一方、ユニット側通信部33は、環状生体センサ2から送信される装着状態情報を受信する。また、ユニット側通信部33は、環状生体センサ2から送信される血圧等の生体データを受信する。
【0046】
制御部34は、次の(1)~(4)の手順で手と心臓の高さの差を推定する。なお、各手順の詳細は後述する。
(1)画像内の顔と手の大きさの比率から携帯型制御ユニット3と体幹部の相対位置を求める。
(2)携帯型制御ユニット3の傾きと、(1)で求めた携帯型制御ユニット3と体幹部の相対位置から体幹部の傾きを求める。
(3)統計的に顔と心臓の高さの差を求め、(1)で求めた携帯型制御ユニット3と体幹部の相対位置、及び、(2)で求めた体幹部の傾きと併せて画像内での心臓の高さを求める。
(4)手と心臓の高さの差を求める
(5)さらに、環状生体センサ2の位置を判定して、(4)で求めた手と心臓の高さの差の精度を高める。
【0047】
制御部34は、画像(静止画像又は動画像)から、環状生体センサ2が装着された他方の手が胸の高さにあるか否かを判定し、該判定の結果に基づいて、撮像部31、表示部32、ユニット側通信部33、及び、環状生体センサ2を制御し、血圧を含む生体データ(生体情報)を取得する。そのため、制御部34は、主として、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、データを一時的に記憶するRAM、及び、外部インターフェース(I/F)等を有して構成されている。制御部34の各機能は、EEPROM等に記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより実現される。
【0048】
制御部34は、画像中の顔の大きさ(サイズ)から顔と胸(心臓)の相対位置の推定を行う。より具体的には、制御部34は、画像中のユーザの顔を自動認識し、その顔の表示位置、表示サイズに基づいて、画像中のユーザの胸(心臓)の位置を推定する。このように、顔のサイズ(大きさ)から顔と心臓との距離が推定できるため、環状生体センサ2が胸の高さにあるか否かの判定精度を向上することができる。
【0049】
その際に、制御部34は、顔と心臓の相対位置を身長等の身体情報から統計的に推定する。すなわち、制御部34は、予め記憶されているユーザの身体情報を取得し、該身体情報を考慮(参照)して、ユーザの胸(心臓)の位置を推定する。例えば、身長(及び体重)から顔の大きさと顔と心臓の距離が推定できるため、環状生体センサ2が胸の高さにあるか否かの判定精度を向上することができる。
【0050】
ただし、前かがみなど体幹部を大きく曲げた姿勢では相対位置がずれるため、ここでは、座位で体幹部が傾いていないことを前提とする。例えば「AIST 人体寸法データベース1991-1992」には、心臓の高さのデータはないため、本実施形態では、乳頭高のデータで代用した。顔と心臓の高さの差はB2 内眼角高-B6 乳頭高を代用とすることで統計的に求めることができる。制御部34は、画像内の顔の大きさ(全頭高)から、例えば、目(内眼角高)と乳首(乳頭高)の差を統計データから推定する。全頭高の代わりに、A2 頭幅、A3 耳珠間幅、A4 耳介間幅を用いてもよい。頭頂部がフレーム外にはみ出してしまう場合や、髪型によって頭頂部を画像認識しにくい場合があるためである。このときユーザの身長情報を用いると推定精度を向上できる。ユーザの身長情報がない場合は各統計量の平均値の比率で推定する。ユーザの身体情報(身長等)は事前にユーザに携帯型制御ユニット3に入力させてメモリやサーバーに保存しておいたものを読み出してもよいし、サーバーに保管されている健康診断などのデータを読み出してもよい。
【0051】
手の大きさとして用いる長さとしては、手長、指背側長、手幅などが挙げられる(「AIST 日本人の手の寸法データ」参照)。指の幅などを用いることも可能であるが、体脂肪率の影響を受けやすいため、身長だけから手の大きさを推定する場合には推定精度がよくないことが予想される。上述した中でも、手長は袖で手首が隠れる場合には推定精度の低下が懸念される。また、指背側長は指が曲がると推定精度の低下が予想される。指背側長の中では指が曲げにくい親指(第1指)が最も適している。手幅は、手の大きさとして用いる長さとして適している。
【0052】
上述したように、血圧は測定部位の心臓の高さとの差で変化する。心臓からの高さが10cm高くなれば血圧値は7~8mmHg低くなる。従って、測定部位を心臓の高さと同じにして測定することが重要である。環状生体センサ2と心臓の高さとの差が大きくなると血圧値が真の値からずれていくため、この判定を行うことで測定血圧値が真の値からずれているか否かが分かる。体幹部の鉛直方向からの傾きは、顔と心臓の高さの推定値がずれてしまう要因となる。傾きが所定範囲外かの判定を行うことで測定血圧値が真の値からずれているか否かが分かる。
【0053】
ユーザの体幹部の傾きのうち、左右方向の傾きについては画像内の顔の左右方向の傾きと携帯型制御ユニット3の左右方向の傾きとから推定できる。左右の傾きが所定の範囲を超えている場合は、表示部32などを介して、ユーザに通知する。ここで、図7(a)に、体幹部のみが右に傾いている画像例を示す。また、図7(b)に、体幹部と携帯型制御ユニット3とが右に同じように傾いている画像例を示す。
【0054】
携帯型制御ユニット3は、自機(携帯型制御ユニット3)の鉛直方向に対する傾きを検出する傾斜センサ(又は加速度センサ)35を有している。制御部34は、傾斜センサ35により検出された携帯型制御ユニット3の鉛直方向に対する傾きに基づいて、ユーザの体幹部の鉛直方向かつ左右方向に対する傾きが所定の範囲内であるか否かを判定する。
【0055】
また、制御部34は、ユーザの体幹部の前後方向の傾きについて、画像内の顔の表示サイズ(大きさ)と手の表示サイズ(大きさ)とから推定する。制御部34は、ユーザの身長情報等から統計的に顔の大きさと手の大きさとの比を推定する。より具体的には、制御部34は、身長情報等に基づいて顔の大きさと手の大きさとを推定し、その比率(実比率という)を算出する。また、制御部34は、画像内の顔の大きさと手の大きさとを求め、その比率(画像内比率という)を算出する。そして、制御部34は、実比率に対し、画像内比率が所定範囲内かどうかで、携帯型制御ユニット3と体幹部の相対位置を推定し、携帯型制御ユニット3と体幹部との相対位置が所定範囲内であるか否かを判定する。この場合、統計的に身長(及び体重)から顔の大きさと手の大きさは推定できるため、画像内の顔と手を自動判別して画像内でのそれぞれの大きさの比率を算出することで携帯型制御ユニット3と体幹部との相対位置を推定できる。
【0056】
ここで、図5の例では携帯型制御ユニット3(撮像部31)を上下に動かして撮影した画像例を示しており、図面左側から、(a)上方、(b)正面、(c)下方から撮影した画像である。図5に示されるように、顔の大きさが一定になるようにすると手幅が異なる。手幅/全頭高を画像から推定すると、上方:0.22、正面:0.30、下方:0.54となった。統計データのYoung adultsの男性の平均で手幅/全頭高を計算すると0.35となり、正面から撮影した場合の値に近い。データベースの全データが正規分布するとみなし、ユーザの身長の正規分布における位置が他の項目でも同じ位置と仮定して計算すると、手幅/全頭高は0.34となりより近い値となる。
【0057】
統計量の平均値をμ、標準偏差をσとし、ユーザの身長を身長の統計量μとσで次式(1)のように表し、求めた係数aと、全頭高、手幅の統計量からユーザの全頭高、手幅を推定する。
ユーザ測定値=μi+a×σi ・・・(1)
従って、画像認識で手幅と全頭高を判定すると体幹部と携帯型制御ユニット3の相対位置を推定できる。そして、携帯型制御ユニット3が体幹部とほぼ平行になる(正面から撮影する)ようにユーザに携帯型制御ユニット3高さを調整するよう通知する。また、ユーザの身長情報を用いることで推定精度を向上できる。
【0058】
次に、制御部34は、体幹部が前後に傾いているか否かを携帯型制御ユニット3の傾きから推定する。上述したように、携帯型制御ユニット3と体幹部との相対位置がすでに決定できている(携帯型制御ユニット3と体幹部とが平行)ため、携帯型制御ユニット3に内蔵された傾斜センサ35で携帯型制御ユニット3の傾きを測定すれば、体幹部の前後方向の傾きが推定できる。よって、制御部34は、画像から、ユーザの顔、及び、環状生体センサ2が装着された手を認識し、ユーザの顔の表示サイズと手の表示サイズとから、携帯型制御ユニット3とユーザの体幹部との相対位置を推定し、傾斜センサ(又は加速度センサ)35により検出された携帯型制御ユニット3の傾きと、携帯型制御ユニット3とユーザの体幹部との相対位置とに基づいて、ユーザの体幹部の鉛直方向かつ前後方向に対する傾きが所定の範囲内であるか否かを判定する。ところで、携帯型制御ユニット3と体幹部の相対位置が所定範囲内であっても、鉛直方向からの体幹部の傾きが大きければ胸の高さの判定精度が低下する。この場合、携帯型制御ユニット3の傾きから鉛直方向からの体幹部の傾きが所定範囲内であるかが分かるため、胸の高さの判定精度が分かる。
【0059】
測定時に前かがみになっていたり、そり返っていたり(後傾)すると、顔と心臓の高さの位置関係がずれ、実際の心臓の高さより心臓の高さを低く見積もってしまい、血圧値の精度が低下する。また、前かがみのような腹部を圧迫した姿勢では血圧が高くなることがある。しかしながら、このような前かがみやそり返りはユーザ自身では気づきにくい。体幹部の鉛直方向からの傾きを判定することにより、前かがみになっていることや、そり返っていることをユーザに通知してユーザ自身に修正させることができる。
【0060】
なお、画像認識で手幅と全頭高を判定して体幹部と携帯型制御ユニット3の相対位置を推定した後、携帯型制御ユニット3が体幹部とほぼ平行になる(正面から撮影する)ようにユーザに対して携帯型制御ユニット3の高さを調整するように通知する代わりに(又は、加えて)、手幅と全頭高の画像内比率から携帯型制御ユニット3と体幹部の相対傾きを推定し、携帯型制御ユニット3の鉛直方向からの傾きと合わせて、体幹部の鉛直方向からの傾きを求めてもよい。体幹部の鉛直方向からの傾きが所定範囲外か否かの判定を行うことで測定血圧値が真の値からずれているか否かが分かる。
【0061】
このように、制御部34は、画像(静止画像又は動画像)から、ユーザの顔、及び、環状生体センサ2が装着された手を認識し、ユーザの顔の表示サイズと手の表示サイズとから、携帯型制御ユニット3とユーザの体幹部との相対位置を推定し、該推定結果(ユーザの体幹部との相対位置)と、傾斜センサ35により検出された携帯型制御ユニット3の傾きとに基づいて、ユーザの体幹部の鉛直方向に対する傾きが所定の範囲内であるか否かを判定し、該判定の結果を用いて、環状生体センサ2を制御する。統計的に身長(及び体重)から顔の大きさと手の大きさは推定できるため、画像内の顔と手を自動判別して携帯型制御ユニット3と体幹部の相対位置(傾き)が推定できる。携帯型制御ユニット3の傾きをと合わせることで、体幹部の鉛直方向からの傾きが推定でき、体幹部の傾きが所定範囲外か否かの判定を行うことで測定血圧値が真の値からずれているか否かが分かる。
【0062】
ここで、図8を参照しつつ、手幅と全頭高の画像内比率が撮像部31の向きによってどのように変化するかをモデルを用いて説明する。なお、図8(a)は、α(顔)とβ(手)がのっている直線に対して撮像部31の向きが垂直な場合を示し、(b)は、撮像部31の向きが(a)の状態から角度φだけ傾いた場合示す。図8では、全頭高と手幅を、同一直線状にのっている長さLαの直線α、長さLβの直線βとそれぞれ見立てた。説明を簡単にするために奥行は省略した。αとβがのっている直線に撮像部31を垂直に向け、画像内の上下同じ位置にαとβが映るようにしたとき、撮像部31とα、撮像部31とβの距離をそれぞれdα1、dβ1、撮像部31の向いている方向からの角度をそれぞれθ、-θとする。αとβが撮像部31に映る角度範囲の半分をそれぞれθα1、θβ1とする。このとき、
α1=dβ1=d ・・・(2)
とする。図8(a)より次式(3)、(4)が成り立つ。
α1tan(θα1)=Lαcos(θ) ・・・(3)
β1tan(θβ1)=Lβcos(θ) ・・・(4)
よって、次式(5)が成り立つ。
β/Lα=dβ1/dα1×(tan(θβ1)/tan(θα1))
=tan(θβ1)/tan(θα1) ・・・(5)
ここで、Lβ/Lαは実比率、tan(θβ1)/tan(θα1)は画像内比率であり、この場合、両者は一致する。
【0063】
次に、撮像部31を角度φだけ上向きに傾けた場合を図8(b)に示す。ここで、画像内でのαとβの位置(θ、-θ)は変わらないとする。角度は、次式(6)の関係を満たす範囲である。
0°<θ<90°、0°<θ+φ<90°、0°<θ-φ<90° ・・・(6)
図8(b)より次式(7)-(9)が成り立つ。
α2tan(θα2)=Lαcos(θ+φ) ・・・(7)
β2tan(θβ2)=Lβcos(θ-φ) ・・・(8)
α2cos(θ+φ)=dβ2cos(θ-φ) ・・・(9)
よって、次式(10)が成り立つ。
β2/dα2=cos(θ+φ)/cos(θ-φ) ・・・(10)
【0064】
先ほどと同様にLβ/Lαを求める。
β/Lα=dβ2tan(θβ2)/cos(θ-φ)/(dα2tan(θα2)/cos(θ+φ))=tan(θβ2)/tan(θα2)×(dβ2/dα2)×(cos(θ+φ)/cos(θ-φ))=tan(θβ2)/tan(θα2)×(cos(θ+φ)/cos(θ-φ))^2 ・・・(11)
よって、
tan(θβ2)/tan(θα2)=Lβ/Lα×(cos(θ-φ)/cos(θ+φ))^2 ・・・(12)
ここで、tan(θβ2)/tan(θα2)は画像内比率であり、実比率Lβ/Lαから(cos(θ-φ)/cos(θ+φ))^2だけ変化する。ここでφ>0°とすると、
0°<θ-φ<θ+φ<90° ・・・(13)
すなわち、
cos(θ-φ)>cos(θ+φ) ・・・(14)
となる。よって、画像内比率は実比率より大きくなる。
【0065】
φ<0°の場合(撮像部31を下向きに傾けた場合)、
0°<θ+φ<θ-φ<90° ・・・(15)
すなわち、
cos(θ-φ)<cos(θ+φ) ・・・(16)
となる。よって、画像内比率は実比率より小さくなる。
【0066】
実比率Lβ/Lαを統計量から推定しておき、画像内比率との比から(cos(θ-φ)/cos(θ+φ))^2を算出し、角度φを推定する。この角度φから撮像部31(携帯型制御ユニット3)と体幹部の相対傾きが分かる。撮像部31(携帯型制御ユニット3)の鉛直方向からの傾きを内蔵の傾斜センサ35で求めることで、体幹部の鉛直方向からの傾きを求めることができる。体幹部の鉛直方向からの傾きが所定範囲外かの判定を行うことで測定血圧値が真の値からずれているか否かが分かる。
【0067】
制御部34は、携帯型制御ユニット3と体幹部の相対位置、及び、携帯型制御ユニット3の傾きが決まった後、心臓高さの推定を行う。心臓高さは、例えば、乳頭高さで代用することもできる。データベースの「内眼角高」-「乳頭高」の値から画像内の目から心臓の高さを推定する。図6の画像では、ほぼ中指の位置と推定できている。手のひらで乳首を覆うと中指が乳首の高さに近くなりやすいことから精度よく推定できている。なお、公開されている人体寸法データから推定を行ったが、別途取得した人体寸法データに基づいて推定を行ってもよいし、ユーザ自身のデータを取得し、測定値を入力して推定を行ってもよい。
【0068】
以上のようにして、ユーザが適切な測定姿勢になっていること(前かがみやそり返っていないこと)、環状生体センサ2を装着した手が乳首の高さにあることが判定できる。よって、環状生体センサ2の画像内での位置を判定できれば、環状生体センサ2と心臓の高さの差が推定できる。なお、環状生体センサ2の画像内での位置判定の方法については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0069】
上述したように、血圧は安静時に心臓の高さで測定することが重要になるため、適切な姿勢で測定を行わないと正確な血圧値が測定できない。一方、心臓の高さで測定することはユーザの測定姿勢を限定(制限)してしまうため、連続データや定期的なデータが必要な場合には難しい場合がる。そのため、測定値の信頼度を算出することや、適切な測定姿勢の場合の血圧値と略同等になるように補正することが重要になる。適切な姿勢からずれる程血圧の値が不正確になってしまうため、適切な姿勢からのずれに応じて測定値の信頼度を算出することで、ユーザが血圧測定値が真値からずれているリスクを考慮して測定値を扱うことができる。
【0070】
そのため、制御部34は、ユーザの体幹部の傾きの判定結果(姿勢判定結果)に基づいて、(測定された)血圧を含む生体データの信頼度を演算(算出)する。血圧は安静時に心臓の高さで測定することが重要になるため、適切な姿勢で測定を行わないと正確な血圧値が測定できない。適切な姿勢からずれる程血圧の値が不正確になってしまうが、その信頼度を算出することで、血圧測定値が真値からずれているリスクを考慮して測定値を扱うことができる。
【0071】
また、測定した血圧値を適切な測定姿勢の場合の血圧値と略同等になるように補正することで、ユーザにとってさらに便利になる。顔と携帯型制御ユニット3の絶対位置が推定できれば環状生体センサ2と心臓との高さのずれが推定できるため、その高さのずれに相当する血圧値補正を行えばよい。また、制御部34は、ユーザの体幹部の傾きの判定結果(姿勢判定結果)に基づいて、血圧等の生体データを補正してもよい。例えば、前かがみでは血圧が高くなることがあるため、前かがみの場合、予め取得しておいた体幹部の傾きと血圧値のデータとから、推定値を低く補正してもよい。
【0072】
環状生体センサ2と胸の高さの差が推定できれば血圧値補正は可能であるが、環状生体センサ2を胸の(鉛直)高さにして測定する方が血圧推定精度は向上する。すなわち、毎回心臓の高さで測定する方が、心臓より低い位置で測定したり高い位置で測定したりするより血圧精度は安定する。ただし心臓の高さで測定することはユーザの測定姿勢を限定してしまうことになるため、連続データや定期的なデータが必要な場合には難しい場合がある(ユーザに苦痛を与えるおそれがある)。そのため測定した血圧値を適切な測定姿勢の場合の血圧値と略同等になるように補正することで、連続データや定期的なデータの取得が可能になる。
【0073】
次に、図9図10を参照しつつ、生体データ測定システム1の動作について説明する。図9は、生体データ測定システム1を構成する環状生体センサ2による血圧等測定処理の処理手順を示すフローチャートである。図10は、生体データ測定システム1を構成する携帯型制御ユニット3による血圧等測定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示される処理は、主として環状生体センサ2により、所定のタイミングで繰り返して実行される。図10に示される処理は、主として携帯型制御ユニット3により、所定のタイミングで繰り返して実行される。
【0074】
まず、図9を参照しつつ、環状生体センサ2の動作(血圧等測定処理)について説明する。ステップS100では、Bluetooth(登録商標)で携帯型制御ユニット3と接続されているか否かについての判断が行われる。ここで、携帯型制御ユニット3と接続されていない場合には、本処理から一旦抜ける。一方、携帯型制御ユニット3と接続されているときには、ステップS102に処理が移行する。
【0075】
ステップS102では、光電脈波信号が取得される。そして、ステップS104では、ステップS102で取得された光電脈波信号に基づいて、環状生体センサ2が指に装着されているか否かについての判断が行われる。ここで、環状生体センサ2が指に装着されていない場合には、ステップS102に処理が移行し、環状生体センサ2が指に装着されるまで、上述したステップS102~S104の処理が繰り返して実行される。一方、環状生体センサ2が指に装着されているときには、ステップS106に処理が移行する。
【0076】
ステップS106では、環状生体センサ2が指に装着されていることを示す情報(装着状態情報)が、携帯型制御ユニット3に送信される。
【0077】
続くステップS108では、携帯型制御ユニット3から測定準備コマンドが受信されたか否かについての判断が行われる。ここで、測定準備コマンドが受信されていない場合には、ステップS106に処理が移行し、測定準備コマンドが受信されるまで、上述したステップS106~S108の処理が繰り返して実行される。一方、測定準備コマンドが受信されたときには、ステップS110に処理が移行する。
【0078】
ステップS110では、光電脈波センサ22の発光素子(発光部)221が、所定のパターンで発光を開始する。
【0079】
次に、ステップS112では、加速度データ(体動データ)が取得される。そして、取得された加速度データ(体動データ)が、ステップ114において、携帯型制御ユニット3に送信される。
【0080】
続いて、ステップS116では、携帯型制御ユニット3から測定(開始)コマンドが受信されたか否かについての判断が行われる。ここで、測定(開始)コマンドが受信されていない場合には、ステップS110に処理が移行し、測定(開始)コマンドが受信されるまで、上述したステップS110~S116の処理が繰り返して実行される。一方、測定(開始)コマンドが受信されたときには、ステップS118に処理が移行する
【0081】
ステップS118では、光電脈波データ(血圧データ)、及び、加速度データ(体動データ)が取得される。そして、ステップS120では、ステップS118において取得された光電脈波データ(血圧データ)、及び、加速度データ(体動データ)が、携帯型制御ユニット3に送信される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0082】
次に、図10を参照しつつ、携帯型制御ユニット3の動作(血圧等測定処理)について説明する。ステップS200では、Bluetooth(登録商標)で環状生体センサ2と接続されているか否かについての判断が行われる。ここで、環状生体センサ2と接続されていない場合には、ステップS202において、Bluetooth(登録商標)で環状生体センサ2との接続が確立(ペアリング)された後、ステップS204に処理が移行する。一方、環状生体センサ2と接続されているときには、ステップS204に処理が移行する。
【0083】
ステップS204では、環状生体センサ2から、環状生体センサ2が指に装着されていることを示す情報(装着状態情報)が受信されたか否かについての判断が行われる。ここで、装着状態情報が受信されていない場合には、ステップS206において、ユーザに対して、環状生体センサ2の装着を促す情報が表示(通知)された後、ステップS204に処理が移行し、再度、装着状態情報が受信されたか否かについての判断が行われる。一方、装着状態情報が受信されたときには、ステップS208に処理が移行する。
【0084】
ステップS208では、装着準備スイッチが押下されたか否かについての判断が行われる。ここで、装着準備スイッチが押下されていない場合には、装着準備スイッチが押下さるまで本処理が繰り返して実行される。一方、装着準備スイッチが押下されているときには、ステップS210に処理が移行する。
【0085】
ステップS210では、撮像部(カメラ)31で撮像された画像が表示されるとともに、ユーザに対して、自身を撮影するように促す情報が表示(通知)される。
【0086】
次に、ステップS212では、画像が解析され、携帯型制御ユニット3の鉛直方向に対する傾きが取得される。続いて、ステップ214では、画像中の顔の位置/顔のサイズ(大きさ)、環状生体センサ2が装着された手の位置/手のサイズ(大きさ)、携帯型制御ユニット3の鉛直方向に対する傾き、及び、ユーザの体幹部の鉛直方向に対する傾きそれぞれが、所定の範囲内に入っているか否かについての判断が行われる。ここで、各値それぞれが所定の範囲内に入っていない場合には、ステップS216において、ユーザに対して、各値それぞれを所定の範囲内に入れるように促す情報が表示(通知)された後、ステップS228に処理が移行する。一方、各値それぞれが所定の範囲内に入っているときには、ステップS218に処理が移行する。なお、画像中の顔の位置/顔のサイズ(大きさ)、環状生体センサ2が装着された手の位置/手のサイズ(大きさ)、携帯型制御ユニット3の鉛直方向に対する傾き、及び、ユーザの体幹部の鉛直方向に対する傾きそれぞれの認識(判定)方法については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0087】
ステップS218では、撮像された画像から、所定の発光パターンで発光する環状生体センサ2が認識されたか否かについての判断が行われる。ここで、環状生体センサ2が認識されていない場合には、ステップS216において、ユーザに対して、環状生体センサ2(光電脈波センサ22の発光素子(発光部)221)を画像内に入れるように促す情報が表示(通知)された後、ステップS228に処理が移行する。一方、環状生体センサ2が認識されたときには、ステップS220に処理が移行する。
【0088】
ステップS220では、環状生体センサ2から送信された加速度データ(体動データ)が受信(取得)される。そして、ステップS222では、測定姿勢が適切な範囲にあるか否か(環状生体センサ2が胸の高さにあるか否か)、及び、体動が適切な範囲にあるか否かについての判断が行われる。ここで、測定姿勢及び体動それぞれが適切な範囲に入っていない場合には、ステップS216において、ユーザに対して、測定姿勢及び体動を適切な範囲に入れるように促す情報が表示(通知)された後、ステップS228に処理が移行する。一方、測定姿勢及び体動それぞれが適切な範囲に入っているときには、ステップS224に処理が移行する。なお、測定姿勢が適切な範囲にあるか否か(環状生体センサ2が胸の高さにあるか否か)の認識(判定)方法については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を詳細する。
【0089】
ステップS224では、環状生体センサ2に対して、測定の開始を指示する測定(開始)コマンドが送信される。そして、ステップS226において、環状生体センサ2から送信された光電脈波データ(血圧データ)、及び、加速度データ(体動データ)が受信(取得)される。ここで、光電脈波データから、血圧、血糖値、脈拍、酸素飽和度、呼吸が取得される。加速度データから、活動量、環状生体センサ2の傾きが取得される。また、温度センサを備えている場合には、その温度データから体表温が取得される。その後、ステップS228に処理が移行する。
【0090】
ステップS228では、Bluetooth(登録商標)による環状生体センサ2との接続を解除するか否かについての判断が行われる。ここで、接続を解除する場合には、Bluetooth(登録商標)による環状生体センサ2との接続が解除された後、本処理から一旦抜ける。一方、接続を解除しないときには、ステップS210に処理が移行し、上述したステップS210~S228の処理が繰り返して実行される。
【0091】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、環状に形成されセンサ部22が設けられた環状生体センサ2が手の指又は手首に装着されるため、測定部位との接触圧(押圧)が安定し、精度よく血圧を含む生体データを測定することができる。また、ユーザの顔および環状生体センサ2が装着された他方の手を撮像した画像から、環状生体センサ2が装着された手が胸(心臓)の高さにあるか否かが判定され、その判定結果に基づいて、環状生体センサ2が制御される(血圧を含む生体データが測定される)ため、より精度よく血圧を含む生体データを測定することができる。さらに、カフを用いないため、携帯性に優れ、かつ、非侵襲で血圧を含む生体データを測定することができる。その結果、本実施形態によれば、携帯性に優れ、かつ、測定値が測定部位の高さと心臓の高さとの差により影響を受ける(すなわち静水圧の影響を受ける)血圧を含む生体データを、より精度よく非侵襲で測定することが可能となる。
【0092】
その際に、本実施形態によれば、画像中のユーザの顔が自動認識され、その顔の表示位置、表示サイズに基づいて、画像中のユーザの胸(心臓)の位置が推定される。このように、顔のサイズ(大きさ)から顔と心臓との距離が推定できるため、環状生体センサ2が胸の高さにあるか否かの判定精度を向上することが可能となる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、測定した血圧等のデータ(測定データ)を携帯型制御ユニット3に逐次送信する構成としたが、測定データを
環状生体センサ2のEEPROM又はRAMに記憶しておき、後で(測定後に)読み出す構成としてもよい。
【0094】
上記実施形態では、環状生体センサ2(センサ部22)として光電脈波センサを用いたが、環状生体センサ2(センサ部22)は、光電脈波センサには限られない。
【0095】
上記実施形態では、環状生体センサ2と、携帯型制御ユニット3とをつなぐ無線通信規格としてBluetooth(登録商標)を採用したが、Bluetooth(登録商標)に代えて、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)などを採用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 生体データ測定システム
2 環状生体センサ
21 本体部
211 光状態可変部材
22 センサ部(光電脈波センサ)
221 発光素子(センサ側発光部)
222 受光素子
23 センサ側通信部
24 判定部
25 加速度センサ
3 携帯型制御ユニット
31 撮像部
32 表示部(ユニット側発光部)
33 ユニット側通信部
34 制御部
35 傾斜センサ(加速度センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10