(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/185 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B62D1/185
(21)【出願番号】P 2023529433
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024245
(87)【国際公開番号】W WO2022269932
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 浩之
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸加
(72)【発明者】
【氏名】土井 敢喜
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-52208(JP,A)
【文献】特開2015-227166(JP,A)
【文献】特開2001-315649(JP,A)
【文献】特開2005-280654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールが固定されるコラムシャフトと、
前記コラムシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムと、を備えたステアリングコラム装置であって、
前記ステアリングコラムは、
車体に支持されるように構成されたハウジングと、
前記ハウジング内に軸方向に移動可能に収容されるコラムチューブと、
前記ハウジングと前記コラムチューブとの間に配置される接触パッドと、を備え、
前記接触パッドは、前記コラムチューブに固定されるとともに、前記ハウジングを内側から押圧するように構成される、ステアリングコラム装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリングコラム装置において、
前記接触パッドを前記ハウジングに向けて付勢する弾性体をさらに備える、ステアリングコラム装置。
【請求項3】
請求項2に記載のステアリングコラム装置において、
前記コラムチューブの外周面に固定され、前記接触パッド及び前記弾性体を収容するホルダをさらに備える、ステアリングコラム装置。
【請求項4】
請求項3に記載のステアリングコラム装置において、
前記コラムチューブの外周面は、平面部を含み、
前記ホルダは、前記平面部に接触する平坦な設置面を有する、ステアリングコラム装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のステアリングコラム装置において、
前記ハウジングは、
径方向に貫通した開口部を有する周壁を備えるハウジング本体と、
前記開口部を閉塞するカバーと、を有し、
前記接触パッドは、前記カバーの内面に接触する、ステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールの車両前後方向の位置(以下、テレスコピック位置という)を調整可能なステアリングコラム装置がある。一般にこの種のステアリングコラム装置は、車体に支持されるハウジングと、ハウジング内に軸方向に移動可能に収容されたコラムチューブと、コラムチューブ内に回転可能に支持されたコラムシャフトとを備えている。
【0003】
こうしたステアリングコラム装置では、コラムチューブが軸方向に移動可能であることから、ハウジングとコラムチューブとの間に僅かながら隙間が存在する。そのため、例えば運転者の操作によりステアリングホイールに外力が作用した場合に、コラムチューブががたつくおそれがある。そこで、例えば特許文献1には、ハウジングとコラムチューブとの間に配置された押圧機構を備えるステアリングコラム装置が開示されている。このステアリングコラム装置では、押圧機構によってコラムチューブを径方向内側に押圧することにより、コラムチューブのハウジング内でのがたつきを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のステアリングコラム装置において、押圧機構はハウジングに固定されている。そのため、テレスコピック位置の調整に伴ってコラムチューブが軸方向に移動すると、押圧機構とコラムチューブとの相対位置が変化し、コラムチューブに作用する押圧力の作用点が変化する。つまり、押圧力の作用点とステアリングホイールとの間の距離が、テレスコピック位置に応じて変化する。その結果、テレスコピック位置によってはコラムチューブががたつきやすくなる。こうした傾向は、テレスコピック位置の調整可能な範囲が大きくなるほど、より顕著なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るステアリングコラム装置は、ステアリングホイールが固定されるコラムシャフトと、前記コラムシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムと、を備える。前記ステアリングコラムは、車体に支持されるハウジングと、前記ハウジング内に軸方向に移動可能に収容されるコラムチューブと、前記ハウジングと前記コラムチューブとの間に配置される接触パッドと、を備える。前記接触パッドは、前記コラムチューブに固定されるとともに、前記ハウジングを内側から押圧するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態のステアリングコラム装置の斜視図。
【
図2】
図1のステアリングコラム装置の軸方向に沿った断面図。
【
図3】
図1のステアリングコラム装置の軸方向と直交する断面であって、
図2のIII-III線に沿った断面図。
【
図4】
図1のステアリングコラム装置が備えるアウタチューブ及び押圧機構の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ステアリングコラム装置の一実施形態を図面に従って説明する。
【0009】
(全体構成)
ステアリングコラム装置1は、概ね車両前後方向に沿うように車両に搭載される。以下の説明では、
図1における左奥側を車両前側とし、
図1における右手前側を車両後側とし、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」等の用語で表される向きは、車両を基準として定義される。
【0010】
図1及び
図2に示すように、ステアリングコラム装置1は、コラムシャフト2と、コラムシャフト2を回転可能に収容するステアリングコラム3と、ステアリングコラム3を車体Sに連結するためのブラケット4とを備えている。コラムシャフト2及びステアリングコラム3は、共通の軸線L上に配置されている。
【0011】
コラムシャフト2の後側端部には、ステアリングホイール5が連結される。コラムシャフト2の前側端部には、図示しないインターミディエイトシャフトが連結される。インターミディエイトシャフトは、図示しないラックアンドピニオン機構を介して転舵輪に連結される。ブラケット4は、ヒンジボルト6を用いてステアリングコラム3に連結されている。ステアリングコラム3は、ブラケット4を介して車体Sに支持された状態で、ヒンジボルト6周りに回転可能である。
【0012】
ステアリングコラム装置1は、ステアリングホイール5の上下方向の位置(以下、チルト位置という)及びステアリングホイール5の前後方向の位置(以下、テレスコピック位置という)を調整可能に構成されている。チルト位置は、ステアリングコラム3をヒンジボルト6周りに回転させることで調整される。テレスコピック位置は、ステアリングコラム3を伸縮させることで調整される。
【0013】
ステアリングコラム装置1は、ステアリングコラム3をヒンジボルト6周りで回転させるように構成されたチルトアクチュエータ11と、ステアリングコラム3を伸縮させるように構成されたテレスコピックアクチュエータ12とを備えている。チルトアクチュエータ11は、リンク機構13を介してステアリングコラム3を回転させることにより、予め設定されたチルト調整範囲内でチルト位置を変更する。テレスコピックアクチュエータ12は、ステアリングコラム3を伸縮させることにより、予め設定されたテレスコピック調整範囲内でテレスコピック位置を変更する。一例として、テレスコピック調整範囲は、例えば車両の自動運転モード時にステアリングホイール5が運転者の邪魔にならない位置まで退避できるように、大きな範囲に設定されている。
【0014】
次に、テレスコピック位置の調整を可能とするための構造について説明する。
【0015】
(コラムシャフト2)
図2に示すように、コラムシャフト2は、アッパシャフト21と、ロアシャフト22とを備えている。アッパシャフト21は、細長い円筒状である。アッパシャフト21の後側端部には、ステアリングホイール5が連結される。ロアシャフト22は、細長い円柱状である。ロアシャフト22は、アッパシャフト21の内周部にスプライン係合を通じて嵌合されている。これにより、ロアシャフト22は、アッパシャフト21と一体回転可能、かつアッパシャフト21に対して軸方向に移動可能に連結されている。なお、本明細書における「筒状」は、全体として筒状と見なせればよく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものや、C字状のように一部に切り欠きなどを有するものも含む。
【0016】
(ステアリングコラム3)
図2及び
図3に示すように、ステアリングコラム3は、ハウジング31と、コラムチューブ32と、複数の押圧機構33とを備えている。一例として、ステアリングコラム3は、2つの押圧機構33を備えているが、押圧機構33の数は1つ又は3つ以上であってもよい。なお、
図3では、説明の便宜上、コラムシャフト2及びステアリングコラム3以外の部材の図示を省略している。
【0017】
ハウジング31は、概ね四角筒状である。ハウジング31は、ブラケット4を介して車体Sに連結されている。ハウジング31は、その前側端部に設けられた軸受34を介して、ロアシャフト22を回転可能かつ軸方向へ相対移動不能に支持している。コラムチューブ32は、円筒状である。コラムチューブ32は、その後側端部に設けられた軸受35を介して、アッパシャフト21を回転可能かつ軸方向へ相対移動不能に支持している。これにより、コラムチューブ32は、アッパシャフト21と一体で軸方向に移動可能である。コラムチューブ32は、ハウジング31内に軸方向に移動可能に収容されている。上記テレスコピックアクチュエータ12は、コラムチューブ32を軸方向に移動させることができるようにコラムチューブ32に連結されている。押圧機構33は、ハウジング31とコラムチューブ32との間に配置されている。押圧機構33は、コラムチューブ32に固定されるとともに、ハウジング31を内側から押圧するように構成されている。
【0018】
コラムチューブ32がハウジング31内で軸方向に移動することで、ステアリングコラム3が伸縮する。このとき、コラムチューブ32の移動に伴ってアッパシャフト21がロアシャフト22に対して軸方向に移動することで、コラムシャフト2が伸縮し、ステアリングホイール5のテレスコピック位置が変更される。
【0019】
以下、ハウジング31、コラムチューブ32及び押圧機構33の構成について、詳細に説明する。
【0020】
(ハウジング31)
ハウジング31は、ハウジング本体41と、カバー42とを備えている。一例として、ハウジング本体41は、概ね四角筒状の外形を有している。ハウジング本体41は、周壁44と、周壁44の前側端部に設けられる端壁45とを有している。周壁44は、上側に開口した開口部46を有している。開口部46は長方形状であり、周壁44の上側部分の略全体を開口させる。周壁44は、下側部分と、左側部分と、右側部分とを有し、周壁44の軸方向と直交する断面は、略U字状である。端壁45は、軸方向に貫通した貫通孔47を有している。貫通孔47には、上記軸受34が設けられている。
【0021】
カバー42は、長方形板状である。カバー42は、開口部46の略全体を覆っている。カバー42は、複数の固定ボルト48を用いてハウジング本体41に固定されている。カバー42は、軸方向に延びる2つのリブ49を有している。リブ49は、カバー42の軸方向全域に亘って延在している。2つのリブ49は、互いに車両幅方向に間隔を空けて設けられている。リブ49は、カバー42の一部を下側に突出するように屈曲させることにより形成されている。なお、リブ49を、レールとして参照することがある。カバー42の内面におけるリブ49の間の部分、すなわちカバー42の内面における後述する接触パッド61が接触する部分は、カバー42の軸方向全域に亘って切れ目のない平坦な形状である。
【0022】
(コラムチューブ32)
コラムチューブ32は、アウタチューブ51と、インナチューブ52と、スリーブ53とを備えている。アウタチューブ51、インナチューブ52及びスリーブ53は、いずれも円筒状である。アウタチューブ51は、インナチューブ52よりも前側に配置されている。一例として、アウタチューブ51は、ステアリングホイール5が任意のテレスコピック位置に調整された状態において、ハウジング31から後側に突出しない軸方向長さを有してもよい。インナチューブ52の後側端部は、ハウジング31から突出している。インナチューブ52の後側端部には、上記軸受35が設けられている。インナチューブ52の前側端部は、アウタチューブ51の後側端部の内周に嵌合されている。スリーブ53は、アウタチューブ51とインナチューブ52との間に介在されている。
【0023】
アウタチューブ51の外周の一部がインナチューブ52に向けてかしめられている。これにより、アウタチューブ51、インナチューブ52及びスリーブ53は、ステアリングホイール5のテレスコピック位置を調整する際には、一体で軸方向に移動する。一方、例えば車両衝突等による衝撃荷重がステアリングホイール5に作用した場合には、インナチューブ52はスリーブ53を変形させつつアウタチューブ51に対して軸方向に移動することで、衝撃荷重を吸収する。
【0024】
図4に示すように、アウタチューブ51の外周面は、平面部54を有している。平面部54は、アウタチューブ51の外周面における上側部分に設けられるとともに、アウタチューブ51の軸方向全域に亘って設けられている。アウタチューブ51は、平面部54に開口した複数の取付孔55を有している。取付孔55は、軸方向に並んで設けられている。
【0025】
(押圧機構33)
図2に示すように、押圧機構33は、軸方向に間隔を空けてアウタチューブ51の外周に配置されている。具体的には、押圧機構33の1つは、アウタチューブ51の軸方向中央位置よりも後側に配置され、他の1つは、アウタチューブ51の軸方向中央位置よりも前側に配置されている。これら押圧機構33は、同様に構成されているため、後側に配置された押圧機構33について説明し、前側に配置された押圧機構33の説明を省略する。
【0026】
図3~
図5に示すように、押圧機構33は、接触パッド61と、弾性体62と、ホルダ63とを備えている。さらに、押圧機構33は、リング状のワッシャ64を備えている。ホルダ63は、アウタチューブ51の外周面に固定されており、接触パッド61及び弾性体62を収容している。つまり、接触パッド61及び弾性体62は、ホルダ63を介してアウタチューブ51、すなわちコラムチューブ32に固定されている。弾性体62は、接触パッド61をハウジング31の内面に向けて付勢している。接触パッド61は、弾性体62の付勢力を用いてハウジング31を内側から押圧している。
【0027】
詳しくは、ホルダ63は、一端が閉塞された短い円筒状の外形を有している。ホルダ63は、一例として樹脂材料製である。具体的には、ホルダ63は、円板状の底壁71と、円筒状の周壁72とを有している。周壁72の外径は、上記カバー42におけるリブ49間の間隔よりも小さい。底壁71の外側面は、平坦な設置面73を有している。底壁71の外側面の中央は凹んでおり、設置面73は円環状である。また、ホルダ63は、底壁71の外側面における中央から突出する複数の突起74と、底壁71の内側面における中央から突出する単一の支持台75とを有している。各突起74は、設置面73よりもホルダ63の外側に大きく突出している。複数の突起74は、ホルダ63の軸線周りに等角度間隔で配置されている。ホルダ63は、設置面73をアウタチューブ51の平面部54に接触させるとともに、これら突起74を取付孔55に圧入することで、アウタチューブ51の外周面に固定されている。ホルダ63は、アウタチューブ51の外周面に固定された状態で、リブ49間に配置されている。支持台75は、円柱状である。支持台75の高さは、周壁72よりも低い。
【0028】
ワッシャ64の内径は、支持台75の外径よりも僅かに大きく、かつ周壁72の内径よりも小さい。ワッシャ64は、支持台75の外周に嵌合された状態で底壁71上に配置されている。
【0029】
弾性体62は、リング状の部材である。弾性体62の内径は、支持台75の外径よりも僅かに大きく、かつ周壁72の内径よりも小さい。弾性体62には、一例として複数の皿ばねを重ね合わせたものが採用されているが、例えばコイルばね等であってもよい。弾性体62は、支持台75の外周に嵌合された状態でワッシャ64上に配置されている。
【0030】
接触パッド61は、薄い円板状の部材である。一例として、接触パッド61は、摩擦係数の低い、摺動特性に優れた樹脂材料製である。接触パッド61の外径は、周壁72の内径よりも小さい。つまり、ホルダ63内には、ワッシャ64、弾性体62及び接触パッド61がこの順で収容されている。接触パッド61は、支持台75の先端面上に接触された状態で、周壁44内に配置されている。接触パッド61の厚みは、周壁44の突出量と支持台75の突出量との差よりも大きい。これにより、接触パッド61は、支持台75の先端面に接触した状態で、周壁72の先端面から突出し、カバー42の内面におけるリブ49間の平坦な部分に接触している。なお、接触パッド61をスライドプレートとして参照することがある。
【0031】
このように構成された押圧機構33において、接触パッド61は、弾性体62の付勢力を用いてカバー42の内面を径方向内側から外側に押圧している。そして、接触パッド61がカバー42を押圧する反作用の力によって、コラムチューブ32が径方向に押圧されている。これにより、コラムチューブ32のハウジング31内でのがたつきが抑制されている。また、ステアリングホイール5のテレスコピック位置を調整する際には、接触パッド61は、カバー42の内面に接触した状態で、軸方向にスライドする。
【0032】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
(1)ステアリングコラム装置1は、ステアリングホイール5が固定されるコラムシャフト2と、コラムシャフト2を回転可能に支持するステアリングコラム3とを備えている。ステアリングコラム3は、車体Sに支持されるハウジング31と、ハウジング31内に軸方向に移動可能に収容されるコラムチューブ32と、ハウジング31とコラムチューブ32との間に配置される押圧機構33とを備えている。押圧機構33は、コラムチューブ32に固定されるとともに、ハウジング31を内側から押圧するように構成されている。押圧機構33は、ハウジング31に接触する接触パッド61を備えている。
【0034】
上記構成では、接触パッド61がコラムチューブ32に固定されるため、ステアリングホイール5のテレスコピック位置が変化しても、接触パッド61のコラムチューブ32に対する位置が変化しない。つまり、コラムチューブ32に作用する押圧力の作用点とステアリングホイール5との間の距離が、テレスコピック位置に応じて変化しない。そのため、例えば運転者の操作によりステアリングホイール5に外力が作用した場合に、テレスコピック位置に関係なく、コラムチューブ32のがたつきを安定して低減できる。
【0035】
また、押圧機構33の押圧力を、コラムチューブ32のがたつきを低減するのに最適な位置に常に作用させることができる。そのため、ハウジング31に作用する押圧力が過大になることを抑制でき、ハウジング31と接触パッド61との間に作用する摩擦力を小さくすることができる。その結果、テレスコピック位置を調整する際にテレスコピックアクチュエータ12に加わる負荷を低減できる。
【0036】
(2)押圧機構33は、接触パッド61をハウジング31に向けて付勢する弾性体62をさらに備えている。上記構成によれば、接触パッド61は、弾性体62の付勢力を用いてハウジング31を内側から押圧する。そのため、接触パッド61がハウジング31を押圧する力、すなわちコラムチューブ32に作用する押圧力の大きさが、ステアリングコラム装置1の構成部材の寸法誤差等に起因してばらつくことを抑制できる。
【0037】
(3)押圧機構33は、コラムチューブ32の外周面に固定されるとともに、接触パッド61及び弾性体62を収容するホルダ63をさらに備えている。上記構成によれば、容易に接触パッド61及び弾性体62を一体的にコラムチューブ32に固定できる。
【0038】
(4)コラムチューブ32の外周面は、平面部54を含む。ホルダ63は、平面部54に接触する平坦な設置面73を有する。上記構成によれば、ホルダ63をコラムチューブ32の外周面に安定して固定できる。これにより、接触パッド61がハウジング31を押圧する力を安定させることができる。
【0039】
(5)ハウジング31は、径方向に貫通した開口部46を有する周壁44を備えるハウジング本体41と、開口部46を閉塞するカバー42とを有している。接触パッド61は、カバー42の内面に接触している。
【0040】
ステアリングコラム3の組み立て手順について、上記構成では、例えばまずハウジング本体41の内部にコラムチューブ32を挿入し、次いで開口部46を介して押圧機構33をコラムチューブ32に固定する。その後、カバー42を取り付けることでステアリングコラム3が組み立てられる。したがって、例えば押圧機構33が固定された状態のコラムチューブ32を、ハウジング31内に後側から軸方向に挿入する場合に比べ、容易にステアリングコラム3を組み立てることができる。
【0041】
(6)ホルダ63は、底壁71と、周壁72と、底壁71から周壁72と同じ方向に突出する支持台75とを有している。接触パッド61は、支持台75の先端面に接触した状態で、周壁72の先端面から突出する。上記構成によれば、例えば外部から振動等が加わった際に、ホルダ63の周壁72等、接触パッド61以外の部材がカバー42に接触することを抑制できる。また、支持台75を設けることで、外部からの振動による弾性体62及びワッシャ64の径方向の移動を規制できるため、押圧力のばらつきを抑制できる。
【0042】
(7)カバー42は、軸方向に延びる2つのリブ49を有し、これらリブ49は、互いに車両幅方向に間隔を空けて設けられている。接触パッド61は、カバー42の内面におけるリブ49間の平坦な部分に接触している。上記構成によれば、リブ49によってカバー42の強度を向上させることができる。さらに、テレスコピック位置を調整する際に、接触パッド61が軸線Lから逸れた方向にスライドすることを抑制できる。
【0043】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・上記実施形態において、カバー42にリブ49を設けず、カバー42全体を平坦な形状としてもよい。
【0045】
・上記実施形態において、ハウジング本体41が開口部46を有さず、ハウジング31がカバー42を備えないように構成されてもよい。
【0046】
・上記実施形態において、ホルダ63の形状は、接触パッド61及び弾性体62を収容できれば、適宜変更可能である。例えば、ホルダ63が支持台75を有さないように構成されてもよい。また、ホルダ63が、複数の突起74に代えて、取付孔55に圧入される単一の突起を有するように構成されてもよい。さらに、ホルダ63が突起74を有さないように構成されてもよい。この場合、例えばネジや接着剤等の適宜の方法でホルダ63をアウタチューブ51に固定してもよい。
【0047】
・上記実施形態において、コラムチューブ32が平面部54を有さなくてもよい。また、ホルダ63が平坦な設置面73を有さなくてもよい。
【0048】
・上記実施形態において、コラムチューブ32がスリーブ53を備えず、アウタチューブ51の内周にインナチューブ52が直接的に嵌合してもよい。
【0049】
・上記実施形態において、押圧機構33は、ワッシャ64を備えなくてもよい。また、押圧機構33は、弾性体62を備えなくてもよい。さらに、押圧機構33が、弾性体62、ワッシャ64及びホルダ63を備えず、接触パッド61のみによって構成されてもよい。この場合、例えば接触パッド61の厚みをハウジング31とコラムチューブ32との間で接触パッド61が圧縮されるような寸法にすることで、接触パッド61がハウジング31を押圧するようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、ステアリングコラム装置1は電動でチルト位置及びテレスコピック位置を調整するように構成されたが、これに限らず、チルト位置及びテレスコピック位置の少なくとも一方を手動で調整するように構成されてもよい。また、ステアリングコラム装置1がテレスコピック位置のみを調整可能に構成されてもよい。