(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】端点での電流混雑を低減するレイアウトを有する半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/331 20060101AFI20241119BHJP
H01L 29/732 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01L29/72 P
(21)【出願番号】P 2023530294
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2021058915
(87)【国際公開番号】W WO2022108814
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-20
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515358931
【氏名又は名称】アイディール パワー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード,リチャード エー.
(72)【発明者】
【氏名】モハブ,アリレザ
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0380086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0145930(US,A1)
【文献】特開2000-315695(JP,A)
【文献】米国特許第5352924(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/732
H01L 21/331
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な辺を有するオブラウンドの形状で内部境界を定義するエミッタ領域であり、前記オブラウンドは、それぞれが半径を有する第1半球状端部と第2半球状端部とを有する、エミッタ領域と、
第1端部と、前記第1端部の反対側の第2端部と、ベース長とを有するベース領域であり、前記ベース長を平行な前記辺と平行にし、平行な前記辺の間の中央に置いて、前記オブラウンドの中に配置されているベース領域とを備え、
前記第1端部は、第1ギャップだけ前記第1半球状端部から間を空けて配置され、前記第1ギャップは、製造公差よりも大きい量だけ前記半径よりも大きく、
前記第2端部は、第2ギャップだけ前記第2半球状端部から間を空けて配置され、前記第2ギャップは、前記製造公差よりも大きい量だけ前記半径よりも大きい、半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1ギャップは、前記半径よりも少なくとも50%長い、請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項3】
さらに、誘電体によってベース窓を介して前記ベース領域に電気的に結合されているベース接点を備え、
前記ベース接点は、前記ベース長に平行な長さと、前記第1端部に最も近い端部である第1終端とを定義し、
前記第1終端は、前記半径に少なくとも等しいセットバック距離の量で、前記第1端部から離れている、請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項4】
さらに、エミッタ領域とベース領域とを有する下サイドを備え、
半導体デバイスは、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタを定義している、請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項5】
さらに、前記ベース領域を取り囲む誘電体材料のトレンチを備えている、請求項1記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、半導体デバイスに関し、特に端点での電流混雑を低減するトランジスタのレイアウトに関する。
【背景技術】
【0002】
双方向バイポーラ接合トランジスタ(以下、B-TRAN)とは、バルク領域の第1サイドに、ベースとコレクタ・エミッタとを有し、第1サイドと反対側のバルク領域の第2サイドに、別個の分離した、ベースとコレクタ・エミッタとを有する構造の接合トランジスタである。外部ドライバによって適切に構成された場合に、電流は、B-TRANをどちらかの方向に選択的に流れる可能性があるため、B-TRANデバイスは双方向デバイスとみなされる。双方向性に基づいて、コレクタ・エミッタがコレクタとみなされるか(例えば、B-TRANへの電流の流れ)、又はエミッタとみなされるか(例えば、B-TRANからの電流の流れ)は、印加される外部電圧に依存し、従ってB-TRANを流れる電流の方向に依存する。
【発明の概要】
【0003】
NPN型デバイスの場合に、半導体基板の各サイドのコレクタ・エミッタ領域は、バルク領域とPN接合を形成していると考えることができる。製造性能試験の1つとして、半導体基板の各サイドにあるPN接合の逆バイアス降伏電圧を測定する方法がある。PN接合の逆バイアス降伏電圧が低すぎる場合に、B-TRANの全体的な性能が低下する可能性がある。
【0004】
1つの例は半導体デバイスであり、半導体デバイスは、平行な辺を有するオブラウンドの形状で内部境界を定義するエミッタ領域であり、オブラウンドは、それぞれが半径を有する第1半球状端部と第2半球状端部とを有する、エミッタ領域と;第1端部と、第1端部の反対側の第2端部と、ベース長とを有するベース領域であり、ベース長を平行な辺と平行にし、平行な辺の間の中央に置いて、オブラウンドの中に配置されているベース領域とを備え;第1端部は、第1ギャップだけ第1半球状端部から間を空けて配置され、第1ギャップは、製造公差よりも大きい量だけ半径よりも大きく;第2端部は、第2ギャップだけ第2半球状端部から間を空けて配置され、第2ギャップは、製造公差よりも大きい量だけ半径よりも大きい。
【0005】
例示的な半導体デバイスでは、第1ギャップは、半径よりも少なくとも50%長くてよい。例示的な半導体デバイスでは、第1ギャップは、半径よりも少なくとも100%長くてよい。
【0006】
例示的な半導体デバイスはさらに、誘電体によってベース窓を介してベース領域に電気的に結合されているベース接点を備えてよい。ベース接点は、ベース長に平行な長さと、第1端部に最も近い端部である第1終端とを定義し、第1終端は、半径に少なくとも等しいセットバック距離の量で、第1端部から離れている。セットバック距離は、半径よりも少なくとも50%長くてよい。セットバック距離は、半径よりも少なくとも100%長くてよい。
【0007】
例示的な半導体デバイスはさらに、エミッタ領域とベース領域とを有する下サイドを備えてよい。半導体デバイスは、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタを定義してよい。
【0008】
例示的な半導体デバイスは、ベース領域がP型であり、エミッタ領域がN型であってよい。
【0009】
例示的な半導体デバイスはさらに、ベース領域を取り囲む誘電体材料のトレンチを備えてよい。トレンチは、範囲の両端を含んで、10μm及び15μmの間の深さを有してよく、範囲の両端を含んで、3μm及び5μmの間の幅を有してよい。
【0010】
第2の例示的な半導体デバイスは、平行な辺を有するオブラウンドの形状で内部境界を定義するエミッタ領域であり、オブラウンドは、それぞれが半径を有する第1半球状端部と第2半球状端部とを有する、エミッタ領域と;第1端部と、第1端部の反対側の第2端部と、ベース長とを有するベース領域であり、ベース長を平行な辺と平行にし、平行な辺の間の中央に置いて、オブラウンドの中に配置されているベース領域とを備え;第1端部は、第1ギャップだけ第1半球状端部から間を空けて配置され;第2端部は、第2ギャップだけ第2半球状端部から間を空けて配置され;さらに、ベース領域に電気的に結合されているベース接点を備え;ベース接点は、ベース長に平行な長さと、第1端部に最も近い端部である第1終端とを定義し;第1終端は、半径に少なくとも等しいセットバック距離の量で、第1端部から離れている。
【0011】
第2の例示的な半導体デバイスでは、セットバック距離は、半径よりも少なくとも50%長くてよい。第2の例示的な半導体デバイスでは、セットバック距離は、半径よりも少なくとも100%長くてよい。
【0012】
第2の例示的な半導体デバイスでは、第1ギャップは、製造公差よりも大きい量だけ半径よりも大きくてよい。第2ギャップは、製造公差よりも大きい量だけ半径よりも大きくてよい。第1ギャップは、半径よりも少なくとも50%長くてよい。これに代えて、第1ギャップは、半径よりも少なくとも100%長くてよい。
【0013】
第2の例示的な半導体デバイスはさらに、エミッタ領域とベース領域とを有する下サイドを備えてよい。半導体デバイスは、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタを定義してよい。
【0014】
第2の例示的な半導体デバイスは、ベース領域がP型であり、エミッタ領域がN型であってよい。
【0015】
第2の例示的な半導体デバイスはさらに、ベース領域を取り囲む誘電体材料のトレンチを備えてよい。トレンチは、範囲の両端を含んで、10μm及び15μmの間の深さを有してよく、範囲の両端を含んで、3μm及び5μmの間の幅を有してよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
次に、例示的な実施形態の詳細な説明のために、下記に挙げる添付図面を参照する。
【0017】
【
図1】少なくともいくつかの実施形態によるB-TRANの部分的に断面の立面図を示す。
【
図2】関連技術のデバイスの構成の中間段階の間での、半導体基板の上サイドの俯瞰図を示す。
【
図3】少なくともいくつかの実施形態に係り、構成の中間段階の間での半導体基板の上サイドの俯瞰図を示す。
【
図4】関連技術のデバイスの構成の中間段階の間での、半導体基板の上サイドの俯瞰図を示す。
【
図5】少なくともいくつかの実施形態に係り、構成の中間段階の間での半導体基板の上サイドの俯瞰図を示す。
【
図6】少なくともいくつかの実施形態に係り、
図5の線6-6に沿って実質的に得られた断面図を示す。
【
図7】少なくともいくつかの実施形態によるB-TRANの部分的に断面の立面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[定義]
特定のシステムコンポーネントを指すために、さまざまな用語が使用される。異なる会社が、1つのコンポーネントを異なる名称で呼ぶことが可能である。本明細書では、名称は異なるが機能は異ならないコンポーネントを、区別する意図はない。以下の記載と請求項とでは、「含む」及び「備えている」という用語は開放型の形式で使用されるため、「含むが、これらに限定されない」という意味に解釈されるものとする。また、「結合する」又は「結合して」という用語は、間接的又は直接的な接続を意味することが意図される。従って、第1デバイスが第2デバイスと結合する場合に、その接続は、直接的な接続であってよく、又は他のデバイスや接続を介した間接的な接続であってよい。
【0019】
表記したパラメータに関する「約」とは、表記したパラメータのプラスマイナス10%(±10%)を意味するものとする。
【0020】
「双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタ」とは、バルク領域の第1面又は第1サイドに、ベースとコレクタ・エミッタとを有し、バルク領域の第2面又は第2サイドに、ベースとコレクタ・エミッタとを有する、接合トランジスタを意味するものとする。第1サイドでのベース及びコレクタ・エミッタは、第2サイドでのベース及びコレクタ・エミッタとは異なる。外向きである、第1サイドに対する法線ベクトルは、外向きである、第2サイドに対する法線ベクトルと反対の方向を向いている。
【0021】
「上側ベース」とは、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタのベースであり、トランジスタのバルク領域の第1サイドにあるものを意味し、重力に対するベースの位置を意味するように読まないものとする。
【0022】
「下側ベース」とは、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタのベースであり、トランジスタのバルク領域の第1サイドと反対側の第2サイドにあるものを意味し、重力に対するベースの位置を意味するように読まないものとする。
【0023】
「上側コレクタ・エミッタ」とは、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタのコレクタ・エミッタが、トランジスタのバルク領域の第1サイドにあることを意味し、重力に対するベースの位置を意味するように読まないものとする。
【0024】
「下側コレクタ・エミッタ」とは、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタのコレクタ・エミッタが、トランジスタのバルク領域の第1サイドと反対側の第2サイドにあることを意味し、重力に対するベースの位置を意味するように読まないものとする。
【0025】
[詳細な説明]
本出願は、「Layout Design to Mitigate Current Crowding at Device Endpoints」と題する2020年11月19日に出願された米国仮出願第63/116,078号の利益を主張する。この仮出願は、以下に全文を援用するものとして、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
以下の記述は、本発明のさまざまな実施形態に向けられる。これらの実施形態のうちの1つ以上が好ましい場合があるが、開示された実施形態は、請求項を含んで、開示の範囲を限定するものとして解釈されないものとし、又はその他でも使用されないものとする。これに加えて、当業者であれば、以下の説明は広範な適用を有し、任意の実施形態の記述は、その実施形態の例示であることのみを意図し、請求項を含む開示の範囲がその実施形態に限定されるという意味を意図するものではないことを理解することである。
【0027】
さまざまな例が、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタ(B-TRAN)などの半導体デバイスの中の構造の端点での電流混雑を低減するレイアウトに向けられている。特に、例示的なシステムでは、各エミッタ領域は、直線辺と半球状端部とを有するオブラウンドの形状で、内部境界を有するエミッタ領域を画定する。ベース領域はオブラウンドの中に配置されている。ベース領域はベース長を有し、対向する端部に配置されている。例示的なシステムでは、ベース領域の端部はそれぞれ、半球状端部の半径よりも大きい距離の分だけ、それぞれの半球状端部からのオフセット又はギャップを有する。このギャップは、ベース領域の端部での電流混雑を低減し、この電流混雑の低減により、ベース領域の端部での電界が低くなり、その結果、ベースとエミッタとの間に形成される接合の逆バイアス降伏電圧が大きくなる。本明細書では、まずB-TRANデバイスの例を挙げ、読解する際の導きとする。
【0028】
図1は、例示的なB-TRANの部分断面立面図を示す。特に、
図1は、上面又は上サイド102と、下面又は下サイド104とを有するB-TRAN100を示す。「上」及び「下」という呼称は任意であり、単に記述の便宜のために使用される。上サイド102は、下サイド104と反対の方向を向いている。言い換えれば、上サイド102の平均的な高さに垂直な外向きのベクトル(特に図示しないベクトル)は、下サイド104の平均的な高さに垂直な外向きのベクトル(特に図示しないベクトル)と反対の方向を向いている。
【0029】
上サイド102は、ドリフト領域又はバルク基板108との接合を形成するコレクタ・エミッタ領域106を含む。さらに上サイド102は、コレクタ・エミッタ領域106の間に配置されたベース領域110を画定する。上サイド102を覆う絶縁材料(特に図示せず)の中の窓を通して塗布された金属材料などのコレクタ・エミッタ接点112に、コレクタ・エミッタ領域106は電気的に結合されている。同様に、ベース領域110は、上サイド102を覆う絶縁材料(特に図示せず)の中の窓を通して適用される金属材料などのベース接点114に電気的に結合されている。
図1に見える態様では、ただ2つのコレクタ・エミッタ接点112が示され、ただ1つのベース接点114が示されているが、以下でさらに詳細に説明するように、例示的なシステムでは、2つ以上のコレクタ・エミッタ接点112が実施されてよく、2つ以上のベース接点114が実施されてよい。例示的なシステムでは、コレクタ・エミッタ接点112は、上側コレクタ・エミッタ116を形成するために互いに結合されている。ベース接点114は、互いに結合されて上側ベース118を形成する。
【0030】
同様に、下サイド104は、バルク基板108との接合を形成するコレクタ・エミッタ領域120と、コレクタ・エミッタ領域120に電気的に結合するコレクタ・エミッタ接点122とを含む。コレクタ・エミッタ接点122は、下側コレクタ・エミッタ124を形成するように結合されている。下サイド104は、ベース領域126と、ベース領域126に電気的に結合するベース接点128とを含む。ベース接点128は互いに結合され、下側ベース130を形成する。
【0031】
例示的なB-TRAN100はNPN構造であり、その意味としては、コレクタ・エミッタ領域106及び120はN型であり、ベース領域110及び126はP型であり、バルク基板108はP型である。さらに、PNP型B-TRANデバイスも考えられることに留意するものとする。しかし、記述が過度に長くならないように、PNP型B-TRANデバイスは特に図示されない。
【0032】
例示的な場合には、上サイド102に関連付けられたさまざまな構造及びドーピングは、下サイド104に関連付けられたさまざまな構造及びドーピングの鏡像であることが意図される。しかしながら、場合によって、上サイド102に関連付けられたさまざまな構造及びドーピングは、下サイド104に関連付けられたさまざまな構造及びドーピングとは異なる時期(times)に構築されるため、上サイド及び下サイドの2つの間でのように構造及びドーピングにわずかな差異が存在してよい。従って、この違いは、製造公差内のばらつきに起因するものである可能性があるが、双方向ダブルベース・バイポーラ接合トランジスタとしてのデバイスの動作に悪影響を及ぼさない。
【0033】
図2は、関連技術のデバイスの製造の中間段階での、半導体基板の上サイドの俯瞰図を示す。特に、
図2に見えるのはエミッタ領域200である。エミッタ領域200は、内部領域202のようなエミッタ領域としてドープされていないいくつかの内部領域を規定する。例示的な内部領域202の中に規定されるのは、ベース領域204である。関連技術のデバイスでは、ベース領域204と周囲のエミッタ領域200との間の分離Sは、図示のように均一である。言い換えれば、ベース領域204の端部の間の分離Sは、ベース領域204の長い寸法に沿った分離Sと同じである。
【0034】
しかしながら、
図2に示すレイアウトで構成されたデバイスは、予想よりも低い逆バイアス降伏電圧、また、予想よりも高い逆バイアスリーク電流を有することが判明している。一例として、ベース領域204がP型領域であり、エミッタ領域200がN型領域であることを考えてみる。従って、一層大きな全体構造の一部ではあるが、ベース領域204からエミッタ領域200へは、PN接合(例えば、ダイオード)を形成すると考えられてよい。製造の中間段階では、ベース領域204とエミッタ領域200とによって形成されるPN接合の順方向電圧降下及び逆バイアス降伏電圧など、デバイスのさまざまな特性がテストされてよい。
図2に示すレイアウトを有する関連技術の構造のテストでは、予想よりも低い逆バイアス降伏電圧、また、対応する増加の逆バイアスリーク電流を有することが示されている。
【0035】
本明細書の発明者は、予想よりも低い逆バイアス降伏電圧及び対応する増加の逆バイアスリーク電流は、エミッタ領域200とベース領域204との間のようなレイアウトに少なくとも部分的に起因するものであることを見出した。特に、本明細書の発明者は、ベース領域204の長い寸法に沿って実施されるのと同じ分離Sをベース領域204の端部(位置206など)で実施することにより、位置208などで、直線領域と比較して電界強度が増加することを見出した。言い換えれば、ベース領域204とエミッタ領域200との間の均一な間隔Sは、位置206のような端部での電流バンチングを引き起こす。レイアウトに起因するものである電界強度の増大は、予想よりも低い逆バイアス電圧での降伏をもたらす。即ち、ベース領域204での特定の印加電圧に対して、位置206での電界強度は、位置208のような直線部分に沿った電界強度よりも高くなる。その結果、逆バイアス降伏電圧は所望の値よりも低くなる(例えば、設計上の60ないし90Vではなく、30ないし40Vで降伏する)。
【0036】
図3は、少なくともいくつかの実施形態に係り、構造の中間段階での半導体基板の上サイド102の俯瞰図を示す。対称なデバイスでは上サイド102と下サイド104(
図1)とが同一に見えるため、ここでまた、上サイド102を図示するのは任意である。文脈上、
図1の断面図は、
図3での線1-1に沿って得られたと考えてよい。ただし、
図3は、コレクタ・エミッタ接点112(
図1)とベース接点114(
図1)とを形成する金属蒸着前の半導体基板の上サイド102を示すことに留意するものとする。
【0037】
特に、
図3に見えるのはコレクタ・エミッタ領域106である。コレクタ・エミッタ領域106は、内部領域300のような、コレクタ・エミッタ領域としてドープされていないいくつかの内部領域を規定する。各内部領域300は、内部境界302のような、コレクタ・エミッタ領域106の内部境界によって規定される。場合によって、内部境界302は、コレクタ・エミッタ領域106を形成するドープ領域の内部境界である。例示的な場合に、図示されているように、第2直線辺306と平行であり、第2直線辺306からオフセットされた第1直線辺304からなるレーストラック・パターン又はオブラウンドを、内部境界302は画定する。例示の直線辺304及び306はそれぞれ、図示のように、その直線部分に沿った長さL
Sを定義する。例示的な内部境界302はさらに、第1半球状端部308と、第1半球状端部308の反対側の第2半球状端部310とを画定する。半球状端部308を代表として参照すると、半球状端部308は曲率中心312と曲率半径314とを規定する。即ち、曲率半径314は、半球状端部308のオブラウンドの外部境界を掃引し、これを規定する。直線辺304及び306の間の合計距離D(直線辺に垂直に測定)は、曲率半径314の2倍である。ここでも半球状端部308は全ての半球状端部の代表である。
【0038】
図3はさらに、各内部領域内に配置されたそれぞれのベース領域を示す。内部領域300を代表として参照すると、ベース領域110が内部領域300内に配置されている。例示的なベース領域110は、半球状端部308に関連付けられた第1端部316と、第1端部316の反対側であり半球状端部310に関連付けられた第2端部318と、直線辺304及び306に平行に測定されたベース長L
B(base lengthであり、ベース長手方向を構成する)とを含む。図示されているように、例示的なベース領域110は、ベース長L
Bが直線辺304及び306の間に平行で、かつその中央にある状態で、オブラウンド内に配置されている。場合によって、ベース領域110の外部境界320は、ベース領域110を形成するドープ領域の外部境界である。図示の例では、ベース領域110の外部境界320自体が、オブラウンドを画定する。オブラウンドは、互いに平行に走る直線辺を有し、端部316及び318が丸められている(rounded,円弧である)又は半球状である。
【0039】
さまざまな例によれば、第1端部316は、曲率半径314よりも大きい第1ギャップG1だけ、半球状端部308から間を空けている。同様に、第2端部318は、曲率半径314よりも大きい第2ギャップG2だけ、半球状端部310から間を空けている。場合によって、ギャップG1及びG2はほぼ同じである。言い換えれば、例示的な場合には、端部316及び318がそれぞれ、半球状端部308及び310を規定する曲率半径よりも大きい間隙又はギャップを有し、そのギャップが、デバイスの製造公差よりも大きい量だけ(例えば、1μmよりも大きい量だけ)曲率半径よりも大きくなるように、ベース領域110のレイアウトが構成及び構築される。全ての曲率半径が同じ長さであると仮定し(厳密には必要でない)、さらに全てのギャップが同じ長さであると仮定すると(厳密には必要でない)、ギャップは、曲率半径よりも少なくとも50%長く(例えば、ギャップ=半径×1.5)、場合によって、曲率半径よりも100%長い(例えば、ギャップ=半径×2.0)ことが可能である。
【0040】
関連付けられた半球状端部の曲率半径よりも大きいギャップを使用して、電界強度は、ギャップが曲率半径にほぼ等しい場合と比較して、低くなることが可能である。さらに、ベース領域110の端部(例えば、ベース領域110の境界を1μm越えて)での一層低い電界強度は、電界強度を、ベース領域110の外部境界320の直線辺に沿った電界強度とほぼ同じにすることが可能である。電界強度が低いと、ベース領域110の両端から降伏が始まる可能性を減少させ、リーク電流を減少させる。
【0041】
一部の例では、ギャップを使用した逆バイアス降伏電圧への対処だけで十分である可能性がある。しかしながら、本明細書の発明者は、期待される逆バイアス降伏電圧よりも低い逆バイアス降伏電圧には、例示的なベース領域110に関連付けられた金属接点の配置など、さらなる要因も寄与すると考えている。
【0042】
図4は、関連技術のデバイスの構築の中間段階での、半導体基板の上サイドの俯瞰図を示す。特に、
図4に見えるのは、エミッタ領域200であり、内部領域202のようなエミッタ領域としてドープされていないいくつかの内部領域がある。例示的な内部領域202内に定義されるのはベース領域204であるが、ベース接点400がベース領域204を部分的に隠しているため、
図4ではベース領域204は部分的にしか見えない。同様に、
図4で見えるのは、いくつかのエミッタ接点402である。関連技術のデバイスでは、ベース領域204と周囲のエミッタ領域200との間の分離Sは、図示のように均一である。さらに、エミッタ領域200の半球状部分に最も近いベース接点400の端部は、エミッタ領域200の半球状部分に対してほぼ同じ分離Sを有する。言い換えれば、ベース接点400の端部とエミッタ領域200の関連付けられた半球状部分との間の分離Sは、ベース接点400とベース領域204との長い寸法に沿った分離Sとほぼ同じである。
【0043】
本明細書の発明者は、ベース接点400の端部が、ベース領域204の端部と同延でないとしても非常に近接していることが、期待される逆バイアス降伏電圧よりも低い逆バイアス降伏電圧に寄与する可能性があると考えている。特に、ベース接点400がベース領域204に電気的に結合している場合に、ベース領域204に注入された電荷キャリア(例えば、電子)は、電荷キャリアがベース領域204の端部に伝搬する際に、評価可能な電圧降下を経験しない。ベース領域204の端部での電圧が高いほど、ベース領域の端部での電流混雑に関連付けられた電界は大きくなる。さらに、金属ベース接点400内の電荷キャリアは、エミッタ領域200の半球状部分に関してまた、電界を形成する。それらの電荷キャリアはベース領域204の周囲の空乏領域を直接横断しない可能性があるが、追加の電界は、ベース領域204とエミッタ領域200との間の空乏領域の中での降伏を早める可能性がある。
【0044】
図5は、少なくともいくつかの実施形態に係り、構造の中間段階での半導体基板の上サイド102の俯瞰図を示す。対称なデバイスでは上サイド102と下サイド104(
図1)とが同一に見えるため、ここでまた、上サイド102を図示するのは任意である。文脈上、
図1の断面図は、ベースと、コレクタ・エミッタ接点とを含んで、
図5での線1-1に沿って得られたと考えてよい。
【0045】
特に、
図5に見えるのはコレクタ・エミッタ領域106である。コレクタ・エミッタ領域106は、内部領域300のような、コレクタ・エミッタ領域としてドープされていないいくつかの内部領域を規定する。各内部領域300は、コレクタ・エミッタ領域106の内部境界302によって画定される。前と同様に、内部境界302は、コレクタ・エミッタ領域106を形成するドープ領域の内部境界であってよい。そして、前と同様に、例示的な内部境界302は、直線辺304及び306と、例示的な半球状端部308とを含むオブラウンドの形状を規定する。半球状端部308を代表として参照すると、半球状端部308は曲率中心312と曲率半径314とを規定する。即ち、曲率半径314は、例示的な半球状端部308のオブラウンドの外部境界を掃引し、これを規定する。前の例と同様に、第1端部316は、半球状端部308から曲率半径314よりも大きい第1ギャップG1だけ間を空けている。言い換えれば、例示的な場合には、例示的な端部316が、例示的な半球状端部308を規定する曲率半径よりも大きなギャップG1を有するように、ベース領域110のレイアウトが構成され、構築される。
【0046】
図5にはさらに、ベース接点114のような複数のベース接点が見える。例示的なベース接点114は、下層のベース領域110の上に配置され、電気的に結合される。特に、製造中に、コレクタ・エミッタ領域106とベース領域110とが構築され、次いで、誘電体層(例えば、酸化物層)が上サイド102全体にわたって成長又は堆積されてよい。ただし、誘電体層は、下層の領域を不明瞭にしないように、
図5には特に示されない。さまざまなフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を使用して、誘電体層を通して窓を開け、下層のコレクタ・エミッタ領域106とベース領域110とを露出させてよい。その後、金属層をスパッタリング又は蒸着して上サイド102を覆うことができ、金属が下層の領域に電気的に接触する。再びさまざまなフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を使用して、金属の多くを除去し、
図5に示すコレクタ・エミッタ接点112とベース接点114(及び特に参照符号を付さない他の接点)とだけを残すことができる。例示的なベース接点114は、ベース長L
B(
図3)に平行な長さと、第1終端500とを定義する。第1終端500は、ベース領域110の例示的な第1端部316に関連付けられ、従って例示的な半球状端部308に関連付けられる。さらに具体的には、第1終端500は、特定の下層のベース領域110に結合された任意のベース接点114の第1端部316に最も近い終端である。図示の例では、ベース接点114と、共有ベース領域110に沿った関連ベース接点とは、金属層と半導体層との間のような温度に基づく差動膨張に関連付けられた応力を低減するように、周期的に分離される。しかしながら、他の場合には、ベース接点は、それぞれのベース領域110に沿って、及びその上に連続した構造であってよい。
【0047】
例示のレイアウトでは、第1終端500は、ベース領域110の長い寸法に沿って測定して、セットバック距離SDの量で第1端部316から離れ、いくつかの例では、セットバック距離SDは、少なくとも曲率半径314に等しい。全ての曲率半径が同じ長さであると仮定し(厳密には必要でない)、さらに全てのセットバック距離が同じ長さであると仮定すると(厳密には必要でない)、各ベース接点114のセットバック距離SDは、曲率半径よりも少なくとも50%長く(例えば、セットバック距離=半径×1.5)、場合によって、曲率半径よりも100%長い(例えば、セットバック距離=半径×2.0)ことが可能である。言い換えれば、ベース領域の長い寸法と平行に測定して、ギャップG1とセットバック距離SDとの合計は、曲率半径314の長さの少なくとも2.5倍であってよい。
【0048】
関連付けられた半球状端部の曲率半径よりも大きいセットバック距離SDを使用して、電界強度は、ベース接点114がベース領域110と同延である場合と比較して低くなることが可能である。1つの可能な説明では、ただし他の説明もまた可能であるが、図示されるようなセットバック距離SDを有するベース接点114を有することによって、ベース接点114を介してベース領域110に注入された電荷キャリア(例えば、電子)は、ベース領域110を通って第1端部316に向かって伝搬する場合に、非自明な電圧降下を経験する。従って、非自明な電圧降下は、第1端部316での電圧を低下させ、その結果、ベース領域110の例示的な第1端部316(例えば、ベース領域110の境界を1μm越えて)での電界強度を低下させる。さらに、セットバック距離SDは、ベース接点114自体の電荷キャリアからの任意の電界寄与を低下させる。電界強度が低くなると、ベース領域110の両端から降伏が始まる可能性が低くなり、リーク電流も減少する。
【0049】
図6は、実質的に
図5の線6-6に沿って得られた例示的な断面図を示す。特に、
図6は、下サイド104のコレクタ・エミッタ領域120の一部とともに、上サイド102のコレクタ・エミッタ領域106の一部を示す。
図6はさらに、半球状端部308に関連付けられた内部境界302を示す。記述の目的のために、曲率中心312が表示した通りであり、従って曲率半径Rが曲率中心312と内部境界302との間に延びていると仮定する。
【0050】
図6はさらに、上サイド102のベース領域110とベース接点114との一部と、下サイド104のベース領域126とベース接点128との一部とを示す。
図6は、さまざまな例では、ベース領域110のようなベース領域が、曲率半径Rよりも大きいギャップGを有してよく、図示された例では、ギャップGは、曲率半径Rの約2倍であることを示す。さらに、
図6は、さまざまな例では、ベース接点114のようなベース接点が、曲率半径Rに少なくとも等しいセットバック距離S
Dを有してよいことを示す。
【0051】
ここまでに説明したさまざまな実施形態では、デバイスの各サイドで、ベース領域とコレクタ・エミッタ領域との間のボリュームが、P型バルク基板のみを含むと仮定してきた。しかし、他の場合には、これ以外の構造が存在してよい。
【0052】
図7は、例示的なB-TRANの部分的に断面の立面図を示す。特に、
図1(7)は、上サイド102と下サイド104とを有するB-TRAN100を示す。上サイド102は、ドリフト領域又はバルク基板108との接合を形成するコレクタ・エミッタ領域106を含む。さらに上サイド102は、コレクタ・エミッタ領域106の間に配置されたベース領域110を画定する。前述と同様に、コレクタ・エミッタ領域106は、コレクタ・エミッタ接点112に電気的に結合されている。同様に、ベース領域110はベース接点114に電気的に結合されている。
図7に見える態様では、ただ2つのコレクタ・エミッタ接点112が示され、ただ1つのベース接点114が示されているが、例示的なシステムでは、2つ以上のコレクタ・エミッタ接点112が実施されてよく、2つ以上のベース接点114が実施されてよい。コレクタ・エミッタ接点112は、上側コレクタ・エミッタ116を形成するために互いに結合されている。ベース接点114は、互いに結合されて上側ベース118を形成する。
【0053】
同様に、下サイド104は、バルク基板108との接合を形成するコレクタ・エミッタ領域120と、コレクタ・エミッタ領域120に電気的に結合するコレクタ・エミッタ接点122とを含む。コレクタ・エミッタ接点122は、下側コレクタ・エミッタ124を形成するように結合されている。下サイド104は、ベース領域126と、ベース領域126に電気的に結合するベース接点128とを含む。ベース接点128は互いに結合され、下側ベース130を形成する。
図1と同様に、
図7では、例示的なB-TRAN100はNPN構造であるため、コレクタ・エミッタ領域106及び120はN型であり、ベース領域110及び126はP型であり、バルク基板108はP型である。さらに、PNP型B-TRANデバイスも考えられることに留意するものとする。しかし、記述が過度に長くならないように、PNP型B-TRANデバイスは特に図示されない。
【0054】
さらに
図7を参照すると、例示的なB-TRAN100は、ベース領域とコレクタ・エミッタ領域との間に、追加的な構造をさらに備えている。まず上サイド102を参照すると、ベース領域110と周囲のコレクタ・エミッタ領域106との間にトレンチ700が存在する。例示的な場合に、トレンチは、範囲の両端を含んで、10μm及び15μmの間の深さを有してよいが、他のトレンチ深さはそれぞれの領域の底の「下」にあるのに十分な深さを有することが企図される。例示的な場合にさらに、トレンチ700は、範囲の両端を含んで、3μm及び5μmの間の幅を有するが、これよりも大きい幅や小さい幅もさらに企図される。例示的な場合に、トレンチは、ベース領域110をコレクタ・エミッタ領域106から電気的に絶縁する誘電体材料(例えば、酸化物)を含む。例示的なB-TRAN100の逆バイアス降伏電圧を改善又は増加させ、リーク電流を低減するために、トレンチ700は、上述したギャップ及びセットバックとともに使用されてよい。
【0055】
下サイド104についても同様に、例示的なB-TRAN100は、ベース領域とコレクタ・エミッタ領域との間に、付加的な構造を備えている。この例では、トレンチ702は、ベース領域126と周囲のコレクタ・エミッタ領域120との間に存在する。上サイド102と同様に、トレンチ702は、範囲の両端を含んで、10μm及び15μmの間の深さと、範囲の両端を含んで、3μm及び5μmの間の幅とを有してよい。例示的なトレンチは、ベース領域126をコレクタ・エミッタ領域120から電気的に絶縁する誘電体材料(例えば、酸化物)で充填される。例示的なB-TRAN100の逆バイアス降伏電圧を改善又は増加させ、リーク電流を低減するために、トレンチ702は、上述したギャップ及びセットバックとともに使用されてよい。
【0056】
図7の例示的な断面図では、トレンチ700及び702は、各ベース領域と、その同じサイドの周囲のコレクタ・エミッタ領域との間のボリュームにまたがっている。しかしながら、他の場合には、トレンチ700及び702は、ボリュームの一部のみにまたがってよい。1つの例示的な場合では、トレンチはベース領域を取り囲み、ベース領域に接するか、又は密接に接する。これにより、追加の空乏領域が各トレンチの外側表面から周囲のコレクタ・エミッタ領域まで延びてよい。
【0057】
以上の記述は、本発明の原理及びさまざまな実施形態を例示することを意図する。上記の開示が十分に理解されれば、多数の変形及び改変は当業者に明らかになることである。例えば、さまざまな構造は、相互に組み合わせた構造を有する任意の半導体デバイスに対して実施されてよい。以下の請求項は、そのような全ての変形及び修正を包含するように解釈されることが意図される。