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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】地図データ配信システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20241119BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20241119BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241119BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20241119BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20241119BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G08G1/0968 A
G16Y10/40
G16Y20/10
G16Y40/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023538479
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2022028353
(87)【国際公開番号】W WO2023008307
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2021122452
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真也
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038634(JP,A)
【文献】特開平08-263783(JP,A)
【文献】特開2007-232690(JP,A)
【文献】特開2022-124993(JP,A)
【文献】特開2022-138111(JP,A)
【文献】特開2020-056917(JP,A)
【文献】特開2020-060674(JP,A)
【文献】特開2004-198997(JP,A)
【文献】特表2020-535468(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188020(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0217612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B23/00-29/14
G01B11/00-11/30
G01C1/00-1/14
5/00-15/14
21/00-21/36
23/00-25/00
G06T1/00
7/00-7/90
11/60-13/80
17/05
19/00-19/20
G06V10/00-20/90
30/418
40/16
40/20
G08G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データ配信装置から車載機に地図データが配信される地図データ配信システム(1)であって、
前記地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する対象情報照合部(6a)と、
前記対象情報の照合結果に基づいて地図データの品質良否を判定する品質良否判定部(6b)と、
前記地図データの品質良否の判定結果を前記地図データ配信装置に送信する判定結果送信部(6c)と、
前記地図データの品質良否の判定結果に基づいて前記地図データの有効化可否を判定する有効化可否判定部(10b)と、
前記地図データの有効化可が判定されると、前記地図データの有効化を許可する有効化制御部(10c)と、を備え、
前記判定結果送信部は、所定条件の成立を判定するまでは前記地図データの品質良の判定結果を前記地図データ配信装置に送信せずに品質否の判定結果のみを前記地図データ配信装置に送信し、前記所定条件の成立を判定してから前記地図データの品質良否の判定結果を前記地図データ配信装置に送信する地図データ配信システム。
【請求項2】
前記判定結果送信部は、前記地図データの品質否の判定結果の頻度が閾値以上であると前記地図データ配信装置により特定されると、前記所定条件の成立を判定する請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項3】
前記対象情報照合部は、正式有効化前の仮有効化の地図データを照合対象とし、前記仮有効化の地図データに含まれる対象物の対象情報と、前記自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合し、
前記有効化制御部は、前記仮有効化の地図データの有効化可が判定されると、前記地図データの正式有効化の開始を許可する請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項4】
前記有効化制御部は、前記地図データの有効化否が判定されると、前記地図データの正式有効化の開始を抑制する請求項3に記載した地図データ配信システム。
【請求項5】
前記対象情報照合部は、正式有効化後の本有効化の地図データを照合対象とし、前記本有効化の地図データに含まれる対象物の対象情報と、前記自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合し、
前記有効化制御部は、前記本有効化の地図データの有効化可が判定されると、前記地図データの正式有効化の継続を許可する請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項6】
前記有効化制御部は、前記地図データの有効化否が判定されると、前記地図データの正式有効化の継続を抑制する請求項5に記載した地図データ配信システム。
【請求項7】
前記有効化可否判定部は、前記地図データの有効化可否として、前記地図データ配信装置から前記車載機への地図データの配信可否を判定し、
前記有効化制御部は、前記地図データの配信可が判定されると、前記地図データ配信装置から前記車載機への地図データの配信を許可する請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項8】
前記有効化可否判定部は、前記地図データの有効化可否として、前記地図データ配信装置から前記車載機へ既に配信済みの地図データの使用可否を判定し、
前記有効化制御部は、前記地図データの使用可が判定されると、前記地図データ配信装置から前記車載機へ既に配信済みの地図データの使用を許可する請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項9】
前記地図データ配信装置は、前記地図データの品質良否の判定結果を受信する判定結果受信部(10a)と、前記有効化可否判定部と、前記有効化制御部と、を備える請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項10】
前記判定結果送信部は、前記地図データの品質良否の判定結果に加え、判定対象に関する情報、判定過程で算出された算出結果に関する情報、車両制御に関する情報及び周辺環境に関する情報のうち少なくとも何れか一つを前記地図データ配信装置に送信する請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項11】
前記判定結果送信部は、前記地図データの品質良否の判定結果に加え、前記対象物単位の品質良否の情報を前記地図データ配信装置に送信する請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項12】
前記車載機は、前記対象物に関する属性毎の照合結果に応じて車両制御を行う車両制御部(6d)を備える請求項1に記載した地図データ配信システム。
【請求項13】
前記対象情報照合部は、前記対象物の対象情報として、地物の地物情報、レーンのレーン情報、道路の道路情報及びタイルのタイル情報のうち少なくとも何れかを対象物単位で照合し、
前記品質良否判定部は、前記地図データの品質良否を、地物単位、レーン単位、道路単位及びタイル単位のうち少なくとも何れかで判定する請求項1から12の何れか一項に記載した地図データ配信システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年7月27日に出願された日本出願番号2021-122452号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、地図データ配信システムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来より、地図データ配信装置において、車載機から送信されたプローブデータを用いて地図データを生成する構成が供されている。地図データの品質保証を行う手法として、例えば特許文献1には、仮地図データに基づいて生成した第1経路情報と、車両の走行軌跡に基づいて生成した第2経路情報とを照合し、第1経路情報と第2経路情報との差分量を算出し、その算出した差分量が所定値未満の場合に、仮地図データを本地図データに更新する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-38634号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の手法では、地図データの品質保証を経路単位でしか行うことができず、地図データの品質保証を例えば地物単位やレーン単位等で行うことができない。
【0006】
本開示は、地図データの品質保証を例えば地物単位やレーン単位等で行うことができ、地図データの品質保証を適切に行うことを目的とする。
【0007】
本開示の一態様によれば、対象情報照合部は、地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する。品質良否判定部は、対象情報の照合結果に基づいて地図データの品質良否を判定する。判定結果送信部は、地図データの品質良否の判定結果を地図データ配信装置に送信する。有効化可否判定部は、地図データの品質良否の判定結果に基づいて地図データの有効化可否を判定する。有効化制御部は、地図データの有効化可が判定されると、地図データの有効化を許可する。判定結果送信部は、所定条件の成立を判定するまでは地図データの品質良の判定結果を地図データ配信装置に送信せずに品質否の判定結果のみを地図データ配信装置に送信し、所定条件の成立を判定してから地図データの品質良否の判定結果を地図データ配信装置に送信する。
【0008】
地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合した照合結果に基づいて地図データの品質良否を判定する。地図データの品質良否の判定結果に基づいて地図データの有効化可否を判定し、地図データの有効化可を判定すると、地図データの有効化を許可する。経路情報を照合する従来とは異なり、地図データに含まれる例えば地物やレーン等を対象物をとすることで、地図データの品質保証を例えば地物単位やレーン単位等で行うことができ、地図データの品質保証を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、第1実施形態の地図データ配信システムの全体構成を示す機能ブロック図であり、
図2図2は、地図データの仮配信及び本配信の態様を示す図であり、
図3図3は、絶対座標系から自車位置座標系への変換を示す図であり、
図4図4は、絶対座標系から自車位置座標系への数値の変換を示す図であり、
図5図5は、区画線のデータ点を照合する態様を示す図であり、
図6図6は、標識のデータ点を照合する態様を示す図であり、
図7図7は、車載機が行う仮配信時の照合処理を示すフローチャートであり、
図8図8は、サーバが行う仮配信時の配信可否判定処理を示すフローチャートであり、
図9図9は、車載機が行う本配信時の照合処理を示すフローチャートであり、
図10図10は、サーバが行う本配信時の配信可否判定処理を示すフローチャートであり、
図11図11は、レーン単位の使用可否を示す図であり、
図12図12は、レーン単位の使用可否を示す図であり、
図13図13は、車載機が行う本配信時の照合処理を示すフローチャートであり、
図14図14は、第2施形態の地図データの仮配信及び本配信の態様を示す図であり、
図15図15は、車載機が行う不調地点検知フェーズの照合処理を示すフローチャートであり、
図16図16は、サーバが行うフェーズ移行判定処理を示すフローチャートであり、
図17図17は、車載機が行う不調地点検査フェーズの照合処理を示すフローチャートであり、
図18図18は、サーバが行う不調地点検査フェーズの照合処理を示すフローチャートであり、
図19図19は、第3施形態の地図データ配信システムの全体構成を示す機能ブロック図であり、
図20図20は、車載機が行う仮使用時の照合処理を示すフローチャートであり、
図21図21は、サーバが行う仮使用の使用可否判定処理を示すフローチャートであり、
図22図22は、車載機が行う本使用時の照合処理を示すフローチャートであり、
図23図23は、サーバが行う本使用時の使用可否判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。後続する実施形態において、先行する実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1から図13を参照して説明する。図1に示すように、地図データ配信システム1は、車両に搭載されている車載機2と、ネットワーク側に配置されているサーバ3とが例えばインターネット等を含む通信ネットワーク4を介してデータ通信可能に構成されている。車載機2が搭載されている車両は、自動運転機能を有する車両であっても良いし、自動運転機能を有しない車両であっても良い。自動運転機能を有する車両は、自動運転と手動運転とを逐次切り替えて走行する。車載機2とサーバ3とは複数対1の関係にあり、サーバ3は複数の車載機2との間でデータ通信可能である。サーバ3は地図データ配信装置に相当する。第1実施形態では、地図データの有効化可否としてサーバ3から車載機2への地図データの配信可否を判定する。
【0012】
車載機2は、車両に搭載されている各種センサや各種電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)から車両周辺に関する周辺情報、車両走行に関する走行情報、車両位置に関する位置情報を入力する。車載機2は、周辺情報として、車載カメラにより撮影された車両進行方向のカメラ画像、例えばミリ波センサ等のセンサにより車両周囲が検知されたセンサ情報、レーダにより車両周囲が検知されたレーダ情報、ライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)により車両周囲が検知されたライダ情報等を入力する。車載カメラ、センサ、レーダ及びライダは自律系センサであり、周辺情報は自律系センサにより取得される情報である。カメラ画像には、道路上に設置されている信号機、標識、看板、道路の路面上にペイントされている区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等が含まれる。車載機2は、周辺情報として、カメラ画像、センサ情報、レーダ情報、ライダ情報のうち少なくとも一つを入力すれば良い。
【0013】
車載機2は、走行情報として、車両センサにより検知された車速情報を入力する。車載機2は、位置情報として、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機により測位されたGNSS情報を、中継装置としてのゲートウェイ5を介して入力する。GNSSは、汎地球測位航法衛星システムの総称であり、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、BeiDou、IRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System)等の多様なシステムが実現されている。
【0014】
車載機2は、制御部6と、データ通信部7と、プローブデータ記憶部8と、地図データ記憶部9とを備える。制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びI/O(Input/Output)を有するマイクロコンピュータにより構成されている。マイクロコンピュータは、非遷移的実体的記憶媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、コンピュータプログラムに対応する処理を実行し、車載機2の動作全般を制御する。マイクロコンピュータはプロセッサと同じ意味である。車載機2において、非遷移的実体的記憶媒体は、ハードウェアを他のコンピュータ資源と共有していても良い。プローブデータ記憶部8及び地図データ記憶部9は、それぞれ対応するデータ用に独立して設けられた1つ又は複数の非遷移的実態的記憶媒体を主体として構成されていても良い。プローブデータ記憶部8及び地図データ記憶部9は、共通の非遷移的実態的記憶媒体を主体として構成されていても良い。プローブデータ記憶部8及び地図データ記憶部9は、1つの記憶媒体に相当していても良く、1つ又は複数の記憶媒体における一部の記憶領域に相当していても良い。プローブデータ記憶部8及び地図データ記憶部9のうち少なくとも1つを含むように記憶装置が構成されていても良い。記憶装置は、データの読み出し及び書き換えのための回路を、更に備えていても良い。
【0015】
サーバ3は、制御部10と、データ通信部11と、プローブデータ記憶部12と、地図データ記憶部13とを備える。制御部10は、CPU、ROM、RAM及びI/Oを有するマイクロコンピュータにより構成されている。マイクロコンピュータは、非遷移的実体的記憶媒体に格納されているコンピュータプログラムを実行することで、コンピュータプログラムに対応する処理を実行し、サーバ3の動作全般を制御する。サーバ3においても、非遷移的実体的記憶媒体は、ハードウェアを他のコンピュータ資源と共有していても良い。プローブデータ記憶部12及び地図データ記憶部13は、それぞれ対応するデータ用に独立して設けられた非遷移的実態的記憶媒体を主体として構成されていても良い。
【0016】
車載機2において、制御部6は、周辺情報、走行情報及び位置情報を入力すると、その入力した各種情報からプローブデータを生成し、その生成したプローブデータをプローブデータ記憶部8に記憶させる。プローブデータは、周辺情報、走行情報及び位置情報を含んで構成されるデータであり、道路上に設置されている信号機、標識、看板、区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等の位置、色、特徴、相対的な位置関係等を示すデータを含む。又、プローブデータは、車両が走行中の道路に関する道路形状、道路特徴、道路幅等を示すデータも含む。
【0017】
制御部6は、例えば所定時間が経過したこと、又は車両の走行距離が所定距離に到達したことを契機とし、プローブデータ記憶部8に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させる。制御部6は、上記した時間や車両の走行距離を契機とすることに代えて、サーバ3がプローブデータ送信要求を車載機2に所定周期で送信する構成であれば、サーバ3から送信されたプローブデータ送信要求がデータ通信部7により受信されたことを契機とし、プローブデータ記憶部8に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。又、制御部6は、例えばイグニッションオン時に前回のイグニッションオン時からイグニッションオフ時までのトリップで蓄積されたプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良いし、イグニッションオフ時に今回のイグニッションオン時からイグニッションオフ時までのトリップで蓄積されたプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。制御部6は、プローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させる際に、地図を管理する上で予め決められたエリアの単位であるセグメント単位でプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良いし、セグメント単位とは無関係な所定エリアの単位でプローブデータをデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。
【0018】
地図データ記憶部9は、運転支援を実現するための高精度な地図データを記憶している。地図データ記憶部9に記憶されている地図データには、三次元地図情報、地物情報、道路の属性値情報等が含まれている。三次元地図情報は、道路形状や構造物の特徴点の点群を含む情報である。地物情報は、信号機、標識、看板、区画線、交差点の停止線、横断歩道、交差点内のダイヤモンド形状マーク等の形状や位置に関する情報である。道路の属性値情報は、道路の車線に関する情報であり、車線数、右折専用車線の有無等に関する情報である。地図データ記憶部9に記憶されている地図データは、後述するサーバ3の地図データ記憶部13に記憶されている地図データが当該サーバ3から車載機2にダウンロードされることで逐次更新される。
【0019】
サーバ3において、地図データ記憶部13は、運転支援を実現するための高精度な地図データを記憶している。地図データ記憶部13に記憶されている地図データは、車載機2の地図データ記憶部9に記憶されている地図データよりも大容量のデータであり、広域なエリアの情報を反映しているデータである。制御部10は、車載機2から送信されたプローブデータをデータ通信部11により受信し、その受信したプローブデータをプローブデータ記憶部12に記憶させる。制御部10は、プローブデータ記憶部12に記憶されているプローブデータを読出し、その読出したプローブデータを、地図データ記憶部13に記憶されている地図データに逐次反映させて当該地図データを逐次更新する。即ち、地図データ記憶部13に記憶されている地図データは、複数のプローブデータが逐次反映されて生成される統合地図データである。
【0020】
上記した構成において、地図データの品質保証を行う構成として、車載機2及びサーバ3は以下の機能を有する。車載機2及びサーバ3に記憶される地図データは、複数種類(本実施形態では2種類)存在している。地図データは、例えば所定エリアの単位で、正式配信前である仮配信用の地図データと、正式配信後である本配信用の地図データとに区別される。仮配信用の地図データは仮有効化の地図データに相当し、本配信用の地図データは本有効化の地図データに相当する。この区別は、記憶媒体又は記憶領域が分離されていることで実現されていても良く、各地図データに対して種別を表すための情報が組み込まれている又は紐付けられていることで実現されていても良い。仮配信用の地図データは車載機2において車両制御に使用されない地図データである。本配信用の地図データは車載機2において車両制御に使用される地図データである。本実施形態では、車載機2及びサーバ3が連携し、仮配信用の地図データ及び本配信用の地図データの品質保証を行う。本配信用の地図データは第1の種類の地図データに相当する。仮配信用の地図データは第2の種類の地図データに相当する。
【0021】
図2に示すように、車載機2からサーバ3への地図データを配信する態様として、仮配信時フェーズと本配信時フェーズとがある。仮配信時フェーズでは、サーバ3は、地図データを生成すると、その生成した地図データを仮配信用の地図データとして処理し、仮配信用の地図データ及び検査指示を不特定多数の車載機2に送信する。不特定多数の車載機2は、サーバ3から送信された仮配信用の地図データ及び検査指示を受信すると、その受信した仮配信用の地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する。不特定多数の車載機2は、仮配信用の地図データの品質良否を判定すると、その仮配信用の地図データの品質良否の判定結果をサーバ3に送信する。この場合、対象物は、地物、レーン、道路、所定の区画を意味するタイル等である。
【0022】
サーバ3は、不特定多数の車載機2から送信された仮配信用の地図データの品質良否の判定結果を受信すると、その受信した判定結果を統計分析し、仮配信用の地図データの配信可否を判定する。サーバ3は、本配信用の地図データの配信可を判定すると、仮配信時フェーズから本配信時フェーズへ移行し、仮配信として処理していた地図データを本配信用の地図データとして処理する。本配信時フェーズでは、サーバ3は、本配信用の地図データ及び検査指示を不特定多数の車載機2に送信する。不特定多数の車載機2は、サーバ3から送信された本配信用の地図データ及び検査指示を受信すると、その受信した本配信用の地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する。不特定多数の車載機2は、本配信用の地図データの品質良否を判定すると、その本配信用の地図データの品質良否の判定結果をサーバ3に送信する。
【0023】
サーバ3は、不特定多数の車載機2から送信された本配信用の地図データの品質良否の判定結果を受信すると、その受信した判定結果を統計分析し、本配信用の地図データの配信可否を判定する。
【0024】
車載機2及びサーバ3は、上記した処理を実現する構成として以下に示す機能を有する。車載機2において、制御部6は、対象情報照合部6aと、品質良否判定部6bと、判定結果送信部6cと、車両制御部6dとを有する。対象情報照合部6aは、地図データに含まれる対象物の対象情報と、自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する。即ち、対象情報照合部6aは、対象物が地物の場合は、地物の地物情報を地物単位で照合する。対象情報照合部6aは、対象物がレーンの場合は、レーンのレーン情報をレーン単位で照合する。対象情報照合部6aは、対象物が道路の場合は、道路の道路情報を道路単位で照合する。対象情報照合部6aは、対象物がタイルの場合は、タイルのタイル情報をタイル単位で照合する。
【0025】
対象情報照合部6aは、図3及び図4に示すように、地図データを絶対座標系から自車位置座標系に変換する。絶対座標系は、データ点の座標が緯度、経度、標高で表される座標系である。自車位置座標系は、自車位置からデータ点までの座標がx(車幅方向)、y(車長方向)、高さ(車高方向)で表される座標系である。図3及び図4では、地物として区画線を例示しているが、他の地物でも同様である。
【0026】
対象情報照合部6aは、図5に示すように、例えば地物として区画線を照合する場合には、地図データにより示される区画線のデータ点の座標と、カメラ画像の画像認識結果により示される区画線のデータ点の座標とを照合する。この場合、対象情報照合部6aは、区画線のx座標を判定することに加えて、区画線の色及び線種も判定する。
【0027】
対象情報照合部6aは、図6に示すように、例えば地物として標識を照合する場合には、地図データにより示される標識のデータ点の座標と、カメラ画像の画像認識結果により示される標識のデータ点の座標とを照合する。この場合、対象情報照合部6aは、標識のx座標及びy座標を判定することに加えて、標識の色及び種別を判定する。
【0028】
品質良否判定部6bは、対象情報照合部6aによる地物情報の照合結果に基づいて地図データの品質良否を判定する。品質良否判定部6bは、地図データの品質良否を、地物単位、レーン単位、道路単位、タイル単位等で判定する。即ち、品質良否判定部6bが品質良否の判定対象とする地図データは、地物単位、レーン単位、道路単位、タイル単位等の地図データである。品質良否判定部6bは、例えば判定対象の地物が区画線であり、区画線のx座標を判定する場合には、地図データの所定の一のデータ点と、その所定のデータ点に近い画像認識結果の複数のデータ点の回帰直線との距離のx成分、又は平均や分散が閾値を超えているか否かを判定し、閾値を超えていなければ品質良と判定し、閾値を超えていれば品質否と判定する。又、品質良否判定部6bは、地図データの複数のデータ点の回帰直線の傾きと、複数のデータ点に対応する画像認識結果の複数のデータ点の回帰直線の傾きとの差が閾値を超えているか否かを判定し、閾値を超えていなければ品質良と判定し、閾値を超えていれば品質否と判定する。品質良否判定部6bは、区画線の色及び線種を判定する場合には、地図データの所定のデータ点と、その所定のデータ点に近い画像認識結果のデータ点との色及び線種が一致しているか否かを判定する。
【0029】
品質良否判定部6bは、例えば判定対象の地物が標識であれば、標識のx座標及びy座標を判定する場合と、標識のx座標、y座標及びz座標を判定する場合とがある。品質良否判定部6bは、標識のx座標及びy座標を判定する場合には、地図データの所定の一のデータ点と、その所定のデータ点に近い画像認識結果のデータ点との距離のx成分及びy成分がそれぞれ閾値を超えているか否かを判定し、閾値を超えていなければ品質良と判定し、閾値を超えていれば品質否と判定する。品質良否判定部6bは、標識のx座標、y座標及びz座標を判定する場合には、地図データの所定の一のデータ点と、その所定のデータ点に近い画像認識結果のデータ点との距離のx成分、y成分及びz成分がそれぞれ閾値を超えているか否かを判定し、閾値を超えていなければ品質良と判定し、閾値を超えていれば品質否と判定する。
【0030】
品質良否判定部6bは、標識の色及び種別を判定する場合には、地図データの所定のデータ点と、その所定のデータ点に近い画像認識結果のデータ点との色及び種別が一致しているか否かを判定する。品質良否判定部6bは、判定対象の地物が標識や看板のような面を有する構造物の場合、面の向きを示す法線ベクトルを判定しても良い。品質良否判定部6bは、法線ベクトルを判定する場合には、地図データの所定のデータ点と、その所定のデータ点に近い画像認識結果のデータ点との法線ベクトルが一致しているか否かを判定する。判定対象の地物が信号機の場合、灯火方向が法線ベクトルの方向となる。
【0031】
判定結果送信部6cは、品質良否判定部6による地図データの品質良否の判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させる。この場合、判定結果送信部6cは、品質良否判定部6による地図データの品質良否の判定結果に加え、判定対象に関する情報、判定過程で算出された算出結果に関する情報、車両制御に関する情報及び周辺環境に関する情報等もデータ通信部7からサーバ3に送信させる。又、判定結果送信部6cは、地図データに含まれる全ての地物を対象として品質良否の判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させても良いし、データ通信部7からサーバ3に送信させる品質良否の判定結果を画像認識結果に基づいて選定しても良い。判定結果送信部6cは、画像認識による認識レベルを閾値と判定することで画像認識の精度を判定し、品質良否の判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させるか否かを選択しても良い。判定結果送信部6cは、認識レベルが閾値未満の地物を対象とした品質良否の判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させず、認識レベルが閾値以上の地物を対象として品質良否の判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。更に、データ通信部7からサーバ3に送信させる品質良否の判定結果を画像認識結果の他に、各種センサの検知結果や車載機器の動作状態等に基づいて選定しても良い。判定結果送信部6cは、例えば降雨や降雪時では自律系センサの検知結果が低下する虞があるので、例えばワイパーの動作時や降雨センサの検知時に品質良否の判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させず、ワイパーの非動作時や降雨センサの非検知時に品質良否の判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。
【0032】
判定結果送信部6cは、例えば区画線のx座標を判定した場合であれば、以下に示す情報をデータ通信部7からサーバ3に送信させる。判定結果送信部6cは、判定対象に関する情報として、使用した地図のバージョン、メッシュ(区画)番号、判定対象の区画線ID、区画線端点からの距離、その他判定対象の区画線と区画線のどの部分を判定したかを特定可能な指標等をデータ通信部7からサーバ3に送信させる。
【0033】
判定結果送信部6cは、判定過程で算出された算出結果に関する情報として、自車位置座標系の検査対象の地図データの座標、判定に用いた認識点の座標、算出した距離、その距離のx成分、そのx成分の平均や分散、データ点列の傾き、地図データ点と認識点の数等をデータ通信部7からサーバ3に送信させる。判定結果送信部6cは、車両制御に関する情報として、自車位置絶対座標、ハンドル角度、アクセルの状態、ブレーキの状態、自動運転アプリの状態、各センサの状態等をデータ通信部7からサーバ3に送信させる。判定結果送信部6cは、周辺環境に関する情報として、先行車両の有無、後続車両の有無、降雨や降雪の状態等をデータ通信部7からサーバ3に送信させる。
【0034】
車両制御部6dは、照合対象の地物に関する属性毎の照合結果に応じて車両制御を行う。地物が区画線であれば、属性は色、座標、線種、線幅等である。車両制御部6dは、区画線の色が正であり、区画線が黄色の場合には、ウィンカー作動時に警告を発して車線変更やはみ出し追い越しのステアリング制御を抑制する。車両制御部6dは、区画線の座標が正の場合には、単純なLTA(Lane Tracing Assist)制御や自車位置の特定に地図データを使用する。車両制御部6dは、例えばセンサ認識外の前方にカーブや停止線がある場合に事前に減速等することで逸脱を防いだり、センサでは特定し難い遠方の信号機や複数の信号機から自車がしたがう信号機を特定して減速制御や停止制御したりする。車両制御部6は、線種が正の場合には、進路変更禁止又は追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場合に、ウィンカー作動時に警告を発して車線変更やはみ出し追い越しのステアリング制御を抑制したり、駐停車禁止の場合に、駐停車したときに警告を発したりする。
【0035】
地物が標識であれば、属性は座標、種別等である。車両制御部6dは、標識の座標が正の場合には、単純なLTA制御や自車位置の特定に地図を使用する。車両制御部6dは、種別が正の場合には、例えば一時停止させたり車速を制限速度まで減速させたりする等の標識にしたがう制御をリアルタイム又は事前に行う。即ち、車両制御部6dは、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」で指定された標識、区画線、道路ペイントの様式とその指示内容の対応関係と同様の対応した制御を行う。
【0036】
サーバ3において、制御部10は、判定結果受信部10aと、配信可否判定部10bと、配信制御部10cとを有する。配信可否判定部10bは有効化可否判定部に相当し、配信制御部10cは有効化制御部に相当する。これらの各部10a~10cは地図データの品質保証プログラムにより実行される機能の一部に相当する。即ち、制御部10は、地図データの品質保証プログラムの一部を実行することで各部10a~10cの機能を行う。
【0037】
判定結果受信部10aは、車載機2から送信された地図データの品質良否の判定結果を受信する。配信可否判定部10bは、車載機2から送信された地図データの品質良否の判定結果に基づいて地図データの配信可否を判定する。配信可否判定部10bは、地図データの配信可否を判定する手法として、スクリーニング処理と、多数決による統計処理とを行う。
【0038】
配信可否判定部10bは、スクリーニング処理として、車載機2から受信した判定結果の中から、判定過程で算出された算出結果に関する情報、車両制御に関する情報及び周辺環境に関する情報を用い、正答率が低いことが想定される判定結果を除外する。具体的には、配信可否判定部10bは、例えば自動運転制御が適切に行われていない情報が含まれている場合、各センサの状態情報で故障中の情報が含まれている場合、前方至近距離に先行車両が存在する情報が含まれている場合等には、その判定結果を除外する。配信可否判定部10bは、多数決による統計処理として、上記したスクリーニングを終了した判定結果が複数である場合に、品質良を示す判定結果と品質否を示す判定結果とのうち何れが多数であるかを計算し、多数であると判定した判定結果を採用する。
【0039】
配信制御部10cは、地図データの仮配信時には、仮配信用の地図データの配信可が配信可否判定部10bにより判定されると、サーバ3から車載機2への地図データの配信を許可し、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を開始する。即ち、配信制御部10cは、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を開始することで、車両制御に使用可能な地図データを車両に提供する。一方、配信制御部10cは、仮配信用の地図データの配信否が配信可否判定部10bにより判定されると、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を開始せずに地図データを再構築する。
【0040】
配信制御部10cは、地図データの本配信時には、本配信用の地図データの配信可が配信可否判定部10bにより判定されると、サーバ3から車載機2への地図データの配信を許可し、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を継続する。即ち、配信制御部10cは、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を継続することで、車両制御に使用可能な地図データの車両への提供を継続する。一方、配信制御部10cは、本配信用の地図データの配信否が配信可否判定部10bにより判定されると、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を継続せずに中断し、地図データの使用不可通知をデータ通信部11から車載機2に送信させ、地図データを再構築する。
【0041】
次に、上記した構成の作用について図7から図11を参照して説明する。車載機2及びサーバ3がそれぞれ地図データの仮配信時と本配信時に行う処理について順次説明する。地図データの仮配信時では、車載機2は仮配信時の照合処理を行い、サーバ3は仮配信時の配信可否判定処理を行う。地図データの本配信時では、車載機2は本配信時の照合処理を行い、サーバ3は本配信時の配信可否判定処理を行う。
【0042】
(1-1)車載機2が行う仮配信時の照合処理
車載機2において、制御部6は、仮配信時の照合処理の開始条件の成立を判定している。制御部6は、仮配信時の照合処理の開始条件として、例えば車載機2又はサーバ3において地物単位、レーン単位、道路単位、タイル単位等の何れかによる地図データの更新が実施されたか否か等を判定する。
【0043】
制御部6は、例えば車載機2又はサーバ3において地物単位、レーン単位、道路単位、タイル単位等の何れかによる地図データの更新が実施されたと判定すると、仮配信時の照合処理の開始条件が成立したと判定し、仮配信時の照合処理を開始する。制御部6は、仮配信時の照合処理を開始すると、サーバ3から送信される仮配信用の地図データ及び検査指示の受信を判定する(A1)。制御部6は、サーバ3から送信される仮配信用の地図データ及び検査指示を受信していないと判定すると(A1:NO)、仮配信時の照合処理を終了し、次の仮配信時の照合処理の開始条件の成立を待機する。
【0044】
制御部6は、サーバ3から送信された仮配信用の地図データ及び検査指示をデータ通信部7により受信したと判定すると(A1:YES)、その受信した仮配信用の地図データに含まれる対象物の対象情報と、自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する(A2)。制御部6は、照合結果に基づいて仮配信用の地図データの品質良否を判定する(A3)。
【0045】
制御部6は、仮配信用の地図データの品質良を判定すると(A3:YES)、その仮配信用の地図データの品質良を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A4)、仮配信時の照合処理を終了する。一方、制御部6は、仮配信用の地図データの品質否を判定すると(A3:NO)、その仮配信用の地図データの品質否を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A5)、仮配信時の照合処理を終了する。
【0046】
以上は、サーバ3が仮配信用の地図データと検査指示とを同時に送信することを前提とし、制御部6がサーバ3から送信された仮配信用の地図データ及び検査指示の受信を判定することを例示したが、サーバ3が仮配信用の地図データを送信してから所定時間経過後に検査指示を送信しても良い。その場合、制御部6は、サーバ3から送信された仮配信用の地図データの受信を判定した後に、サーバ3から送信された検査指示の受信を判定する。
【0047】
(1-2)サーバ3が行う仮配信時の配信可否判定処理
サーバ3において、制御部10は、仮配信時の配信可否判定処理の開始条件が成立すると、仮配信時の配信可否判定処理を開始し、車載機2から送信される仮配信用の地図データの判定結果の受信を判定する(B1、判定結果受信手順に相当する)。制御部10は、車載機2から送信される仮配信用の地図データの判定結果の受信していないと判定すると(B1:NO)、仮配信時の配信可否判定処理を終了し、次の仮配信時の配信可否判定処理の開始条件の成立を待機する。
【0048】
制御部10は、車載機2から送信された仮配信用の地図データの判定結果をデータ通信部11により受信したと判定すると(B1:YES)、その受信した仮配信用の地図データの判定結果をスクリーニング処理し(B2)、統計処理し(B3)、地図データの配信可否を判定する(B4、有効化可否判定手順に相当する)。
【0049】
制御部10は、例えば仮配信用の地図データの品質良を示す判定結果が多数であり、地図データの配信可を判定すると(B4:YES)、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を開始し(B5、有効化制御手順に相当する)、仮配信時の配信可否判定処理を終了する。一方、制御部10は、例えば仮配信用の地図データの品質否を示す判定結果が多数であり、地図データの配信否を判定すると(B4:NO)、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を開始せずに地図データを再構築し(B6)、仮配信時の配信可否判定処理を終了する。
【0050】
(1-3)車載機2が行う本配信時の照合処理
車載機2において、制御部6は、本仮配信時の照合処理の開始条件の成立を判定している。制御部6は、本仮配信時の照合処理の開始条件として、例えばサーバ3において仮配信用の地図データの品質確認が完了されたか否か、人による目視や画像認識ソフトウェアによる衛生写真との比較等により仮配信用の地図データの品質確認が完了されたか否か、測量用の高性能センサで作成された地図データ等の高精度の地図データの更新が実施されたか否か等を判定する。
【0051】
制御部6は、例えばサーバ3において仮配信用の地図データの品質確認が完了された、人による目視や画像認識ソフトウェアによる衛生写真との比較等により仮配信用の地図データの品質確認が完了された、又は測量用の高性能センサで作成された地図データ等の高精度の地図データの更新が実施されたと判定すると、本配信時の照合処理の開始条件が成立したと判定し、本配信時の照合処理を開始する。制御部6は、本配信時の照合処理を開始すると、サーバ3から送信される本配信用の地図データ及び検査指示の受信を判定する(A11)。制御部6は、サーバ3から送信される本配信用の地図データ及び検査指示を受信していないと判定すると(A11:NO)、本配信時の照合処理を終了し、次の本配信時の照合処理の開始条件の成立を待機する。
【0052】
制御部6は、サーバ3から送信された本配信用の地図データ及び検査指示をデータ通信部7により受信したと判定すると(A11:YES)、その受信した本配信用の地図データに含まれる対象物の対象情報と、自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する(A12)。制御部6は、照合結果に基づいて本配信用の地図データの品質良否を判定する(A13)。
【0053】
制御部6は、本配信用の地図データの品質良を判定すると(A13:YES)、その本配信用の地図データの品質良を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A14)、本配信時の照合処理を終了する。一方、制御部6は、本配信用の地図データの品質否を判定すると(A13:NO)、その本配信用の地図データの品質否を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A15)、本配信時の照合処理を終了する。
【0054】
以上は、サーバ3が本配信用の地図データと検査指示とを同時に送信することを前提とし、制御部6がサーバ3から送信された本配信用の地図データ及び検査指示の受信を判定することを例示したが、サーバ3が本配信用の地図データを送信してから所定時間経過後に検査指示を送信しても良い。その場合、制御部6は、サーバ3から送信された本配信用の地図データの受信を判定した後に、サーバ3から送信された検査指示の受信を判定する。又、サーバ3が本配信用の地図データを送信せずに検査指示だけを送信しても良い。その場合、制御部6は、サーバ3から送信された検査指示を受信したと判定すると、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの仮配信用の地図データを本配信用の地図データとして扱い、上記したステップA12以降を行う。
【0055】
(1-4)サーバ3が行う本配信時の配信可否判定処理
サーバ3において、制御部10は、本配信時の配信可否判定処理の開始条件が成立すると、本配信時の配信可否判定処理を開始し、車載機2から送信される本配信用の地図データの判定結果の受信を判定する(B11、判定結果受信手順に相当する)。制御部10は、車載機2から送信される本配信用の地図データの判定結果の受信していないと判定すると(B11:NO)、本配信時の配信可否判定処理を終了し、次の本配信時の配信可否判定処理の開始条件の成立を待機する。
【0056】
制御部10は、車載機2から送信された本配信用の地図データの判定結果をデータ通信部11により受信したと判定すると(B11:YES)、その受信した本配信用の地図データの判定結果をスクリーニング処理し(B12)、統計処理し(B13)、地図データの配信可否を判定する(B14、有効化可否判定手順に相当する)。
【0057】
制御部10は、例えば本配信用の地図データの品質良を示す判定結果が多数であり、地図データの配信可を判定すると(B14:YES)、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を継続し(B15、有効化制御手順に相当する)、本配信時の配信可否判定処理を終了する。一方、制御部10は、例えば本配信用の地図データの品質否を示す判定結果が多数であり、地図データの配信否を判定すると(B14:NO)、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を継続せずに中断し(B16)、地図データの使用不可通知をデータ通信部11から車載機2に送信させ(B17)、地図データを再構築し(B18)、本配信時の配信可否判定処理を終了する。
【0058】
尚、以上は、車載機2において、地図データの品質良否を判定すると、その判定結果を直ちにサーバ3に送信する構成を例示したが、プローブデータをサーバ3に送信するタイミングと判定結果をサーバ3に送信するタイミングとを同期させても良い。即ち、車載機2において、判定結果を一時的に蓄積することで、例えば所定時間が経過したこと、車両の走行距離が所定距離に到達したことを契機とし、蓄積された判定結果をサーバ3に送信しても良い。又、車載機2において、例えばイグニッションオン時に前回のイグニッションオン時からイグニッションオフ時までのトリップで蓄積された判定結果をサーバ3に送信しても良いし、イグニッションオフ時に今回のイグニッションオン時からイグニッションオフ時までのトリップで蓄積された判定結果をサーバ3に送信しても良い。
【0059】
以上に説明したように第1実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
車載機2において、地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合した照合結果に基づいて地図データの品質良否を判定するようにした。サーバ3において、地図データの品質良否の判定結果に基づいて地図データの配信可否を判定し、地図データの配信可を判定すると、サーバ3から車載機2への地図データの配信を許可するようにした。経路情報を照合する従来とは異なり、地図データに含まれる地物、レーン、道路、タイル等対象物を対象物とすることで、地図データの品質保証を地物単位、レーン単位、道路単位、タイル単位等で行うことができ、地図データの品質保証を適切に行うことができる。
【0060】
図11に示すように、例えば3車線の道路についてレーン1の地図データが品質否と判定された場合、品質否と判定された領域をタイル全体でなくレーン1に限定することができ、レーン1と同一道路に属するレーン2,3の品質保証を継続することができる。即ち、例えばレーン1の地図データを使用した自動運転制御等は不可となるが、レーン2,3の地図データを使用した自動運転制御等を継続して可能となる。その後、レーン1の地図データが品質良と判定されると、タイル全体の地図データが品質良と判定されるのを待機することなく、例えばレーン1の地図データを使用した自動運転制御等が可能となる。地物単位でも同様であり、例えば地物Aの地図データが品質否と判定された場合、品質否の領域をタイル全体でなく地物Aに限定することができ、同一タイル内に属する地物B,Cの品質保証を継続することができる。更に、レーン単位や地物単位に加え、道路単位でも同様である。このように地図データの品質否が判定された領域の影響を最小限に抑えると共に、地図データの品質良が判定されると、その品質良が判定された地図データを即時に使用することができる。
【0061】
地図データが更新された場合も同様である。図12に示すように、例えば3車線の道路についてレーン1の車線幅が拡張された場合、サーバ3が管理する地図データに当該車線幅の拡張が反映される以前では、サーバ3が管理する地図データに含まれるレーン情報と、自律系センサにより取得されたレーン情報とが異なり、レーン1の地図データが品質否と判定されることになる。その場合も、地図データの品質否が判定された領域の影響を最小限に抑えると共に、地図データの品質良が判定されると、その品質良が判定された地図データを即時に使用することができる。又、検査対象の領域をタイル全体でなくレーン1に限定することができ、レーン1と同一道路に属するレーン2,3の品質保証を継続することができる。この場合も、地物単位や道路単位でも同様である。
【0062】
車載機2において、地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを照合するようにした。対象情報を照合する不特定多数の処理がサーバ3に集中することを未然に回避することができ、対象情報を照合する不特定多数の処理を車載機2に分散することができる。
【0063】
正式配信前の仮配信用の地図データを照合対象として地図データの品質保証を行うようにした。正式配信前に地図データの品質保証を行うことで、正式配信後の不具合の発生を極力抑制することができる。
【0064】
正式配信後の本配信用の地図データを照合対象として地図データの品質保証を行うようにした。正式配信後に地図データの品質保証を行うことで、正式配信後に発生した不具合に対して迅速に対処することができる。
【0065】
車載機2において、地図データの品質良否の判定結果に加え、判定対象に関する情報、判定過程で算出された算出結果に関する情報、車両制御に関する情報及び周辺環境に関する情報をサーバ3に送信するようにした。地図データの品質否と判定された場合に、判定対象に関する情報、判定過程で算出された算出結果に関する情報、車両制御に関する情報及び周辺環境に関する情報を活用することで、地図データの品質否と判定された場合に、その品質否の要因調査を適切に行うことができる。
【0066】
車載機2において、本配信用の地図データの品質良の判定結果を送信する場合に、判定結果の送信タイミングであるか否かを判定しても良い。即ち、図13に示すように、制御部6は、本配信時の照合処理において、本配信用の地図データの品質良を判定すると(A13:YES)、予め設定されている判定結果の送信タイミングであるか否かを判定する(A17)。送信タイミングは例えば100ミリ秒周期で設定されている。制御部6は、判定結果の送信タイミングであると判定すると(A17:YES)、その本配信用の地図データの品質良を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A14)、本配信時の配信可否判定処理を終了し、次の本配信時の配信可否判定処理の開始条件の成立を待機する。この場合、制御部6は、地図データの品質良を示す判定結果をバッファ機能により送信させても良い。即ち、制御部6は、判定結果の送信タイミングで判定結果のデータ量が所定量まで達していなければ、その判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させずに蓄積し、判定結果のデータ量が所定量まで達したことを条件として、その判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させても良い。
【0067】
一方、制御部6は、地図データの品質可否を示す判定結果の送信タイミングでないと判定すると(A17:NO)、その本配信用の地図データの品質良を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させず、本配信時の配信可否判定処理を終了し、次の本配信時の配信可否判定処理の開始条件の成立を待機する。
【0068】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図14から図18を参照して説明する。第2実施形態では、車載機2からサーバ3へのデータ通信量の増大を抑えることを目的とする。
【0069】
図14に示すように、車載機2からサーバ3への地図データを配信する態様として、仮配信時フェーズから本配信時フェーズへ移行する点では第1実施形態と同様であるが、本配信時フェーズが不調地点検知フェーズと不調地点検査フェーズとに細分化されている点で第1実施形態と異なる。不調地点検知フェーズは第1実施形態では存在しなかったフェーズであり、不調地点検査フェーズは第1実施形態の本配信時フェーズと同等のフェーズである。
【0070】
不調地点検知フェーズでは、サーバ3は、本配信用の地図データ及び検査指示を不特定多数の車載機2に送信する。不特定多数の車載機2は、サーバ3から送信された本配信用の地図データ及び検査指示を受信すると、その受信した本配信用の地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する。不特定多数の車載機2は、本配信用の地図データの品質良否を判定すると、その本配信用の地図データの品質良の判定結果をサーバ3に送信せずに品質否の判定結果のみをサーバ3に送信する。
【0071】
サーバ3は、不特定多数の車載機2から送信された仮配信用の地図データの品質否の判定結果を受信すると、その受信した判定結果を統計分析し、不調地点検知フェーズから不調地点検査フェーズへの移行可否を判定する。サーバ3は、不調地点検知フェーズから不調地点検査フェーズへの移行可を判定すると、不調地点検知フェーズから不調地点検査フェーズへ移行する。
【0072】
不調地点検査フェーズでは、サーバ3は、本配信用の地図データ及び検査指示を不特定多数の車載機2に送信する。不特定多数の車載機2は、サーバ3から送信された本配信用の地図データ及び検査指示を受信すると、その受信した本配信用の地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する。不特定多数の車載機2は、本配信用の地図データの品質良否を判定すると、その本配信用の地図データの品質良否の判定結果をサーバ3に送信する。
【0073】
次に、上記した構成の作用について図15から図18を参照して説明する。車載機2及びサーバ3が地図データの本配信時において不調地点検知フェーズと不調地点検査フェーズに行う処理について順次説明する。不調地点検知フェーズでは、車載機2は不調地点検知フェーズの照合処理を行い、サーバ3はフェーズ移行判定処理を行う。不調地点検査フェーズでは、車載機2は不調地点検査フェーズの照合処理を行い、サーバ3は不調地点検査フェーズの配信可否判定処理を行う。
【0074】
(2-1)車載機2が行う不調地点検知フェーズの照合処理
車載機2において、制御部6は、サーバ3から送信された本配信用の地図データ及び検査指示をデータ通信部7により受信したと判定すると(A21:YES)、対象物の対象情報を照合し(A22)、本配信用の地図データの品質良否を判定する(A23)。制御部6は、本配信用の地図データの品質良を判定すると(A23:YES)、その本配信用の地図データの品質良を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させず、不調地点検知フェーズの照合処理を終了する。一方、制御部6は、本配信用の地図データの品質否を判定すると(A23:NO)、その本配信用の地図データの品質否を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A24)、不調地点検知フェーズの照合処理を終了する。
【0075】
(2-2)サーバ3が行うフェーズ移行判定処理
サーバ3において、制御部10は、車載機2から送信された本配信用の地図データの判定結果をデータ通信部11により受信したと判定すると(B21:YES)、品質否の判定結果の頻度が閾値以上であるか否かを判定する(B22)。制御部10は、品質否の判定結果の頻度が閾値以上でないと判定すると(B22:NO)、不調地点検知フェーズから不調地点検査フェーズへ移行せずに、フェーズ移行判定処理を終了する。一方、制御部10は、品質否の判定結果の頻度が閾値以上であると判定すると(B22:YES)、不調地点検知フェーズから不調地点検査フェーズへ移行し(B23)、フェーズ移行判定処理を終了する。
【0076】
(2-3)車載機2が行う不調地点検査フェーズの照合処理
車載機2において、制御部6は、サーバ3から送信された本配信用の地図データ及び検査指示をデータ通信部7により受信したと判定すると(A31:YES)、対象物の対象情報を照合し(A32)、本配信用の地図データの品質良否を判定する(A33)。制御部6は、本配信用の地図データの品質良を判定すると(A33:YES)、その本配信用の地図データの品質良を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A34)、不調地点検査フェーズの照合処理を終了する。一方、制御部6は、本配信用の地図データの品質否を判定すると(A33:NO)、その本配信用の地図データの品質否を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A35)、不調地点検査フェーズの照合処理を終了する。
【0077】
(2-4)サーバ3が行う不調地点検査フェーズの配信可否判定処理
サーバ3において、制御部10は、車載機2から送信された本配信用の地図データの判定結果をデータ通信部11により受信したと判定すると(B31:YES)、その受信した本配信用の地図データの判定結果をスクリーニング処理し(B32)、統計処理し(B33)、地図データの配信可否を判定する。
【0078】
制御部10は、地図データの配信可を判定すると(B34:YES)、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を継続し(B35)、不調地点検査フェーズから不調地点検知フェーズへ移行し(B36)、即ち、不調地点検知フェーズへ戻り、不調地点検査フェーズの配信可否判定処理を終了する。一方、制御部10は、地図データの配信否を判定すると(B34:NO)、サーバ3から車載機2への地図データの正式配信を継続せずに中断し(B37)、地図データの使用不可通知をデータ通信部11から車載機2に送信させ(B38)、地図データを再構築し(B39)、不調地点検査フェーズの配信可否判定処理を終了する。
【0079】
以上に説明したように第2実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
車載機2において、本配信時フェーズを不調地点検知フェーズと不調地点検査フェーズとに細分化し、不調地点検知フェーズでは地図データの品質良の判定結果をサーバ3に送信せずに品質良の判定結果のみをサーバ3に送信するようにした。地図データの品質良の判定結果と品質否の判定結果との両方をサーバ3に送信する場合と比較し、地図データの品質良の判定結果をサーバ3に送信しないことで、車載機2からサーバ3へのデータ通信量の増大を抑えることができる。
【0080】
サーバ3において、車載機2から送信された本配信用の地図データの品質否の判定結果の頻度が閾値以上であると、不調地点検知フェーズから不調地点検査フェーズへ移行するようした。不調地点検査フェーズへ移行することで、地図データの品質良の判定結果と品質否の判定結果との両方を車載機2から取得することができ、品質否と判定した地図データに対して詳細な調査を実施することができる。即ち、車載機2において、サーバ3からの本配信用の地図データの取得後は、地図データの品質否の判定結果のみをサーバ3に送信し、地図データの品質否の判定結果の頻度が閾値以上である場合に限って地図データの品質良の判定結果と品質否の判定結果との両方をサーバ3に送信することで、車載機2からサーバ3へのデータ通信量の増大を抑えつつ、品質否と判定した地図データに対して詳細な調査を実施することができる。
【0081】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図19から図23を参照して説明する。第3実施形態では、地図データの有効化可否としてサーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの使用可否を判定する。
【0082】
サーバ3において、制御部10は、判定結果受信部10aと、使用可否判定部10dと、使用制御部10eとを有する。使用可否判定部10dは有効化可否判定部に相当し、使用制御部10eは有効化制御部に相当する。これらの各部10a,10d,10eは地図データの品質保証プログラムにより実行される機能の一部に相当する。即ち、制御部10は、地図データの品質保証プログラムの一部を実行することで各部10a、10d,10eの機能を行う。
【0083】
使用可否判定部10dは、サーバ3から送信された地図データの品質良否の判定結果に基づいて地図データの使用可否を判定する。使用可否判定部10dは、地図データの使用可否を判定する手法として、第1実施形態で説明した配信可否判定部10bと同様に、スクリーニング処理と、多数決による統計処理とを行う。
【0084】
使用制御部10eは、地図データの仮使用時には、仮使用用の地図データの使用可が使用可否判定部10dにより判定されると、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの使用を許可し、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの正式使用を開始する。即ち、使用制御部10eは、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの正式使用を開始することで、その地図データを利用した車両制御等を提供する。この場合、使用制御部10eは、例えば使用可コマンドをデータ通信部11から車載機2に送信させる。車載機2は、サーバ3から送信された使用可コマンドを受信することで、サーバ3から配信済みの地図データを利用した車両制御等を実施可能となる。一方、使用制御部10eは、仮使用用の地図データの使用否が使用可否判定部10dにより判定されると、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの正式使用を開始せずに地図データを再構築する。
【0085】
使用制御部10eは、地図データの本使用時には、本使用用の地図データの使用可が使用可否判定部10dにより判定されると、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの使用を許可し、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの正式使用を継続する。即ち、使用制御部10eは、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの正式使用を継続することで、その地図データを利用した車両制御等の提供を継続する。この場合も、使用制御部10eは、例えば使用可コマンドをデータ通信部11から車載機2に送信させる。車載機2は、サーバ3から送信された使用可コマンドを受信することで、サーバ3から配信済みの地図データを利用した車両制御等の実施を継続可能となる。一方、使用制御部10eは、本使用用の地図データの使用否が使用可否判定部10dにより判定されると、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの正式使用を継続せずに中断し、地図データの使用不可通知をデータ通信部11から車載機2に送信させ、地図データを再構築する。
【0086】
次に、上記した構成の作用について図20から図23を参照して説明する。地図データの仮使用時では、車載機2は仮使用時の照合処理を行い、サーバ3は仮使用時の使用可否判定処理を行う。地図データの本使用時では、車載機2は本使用時の照合処理を行い、サーバ3は本使用時の使用可否判定処理を行う。
【0087】
(3-1)車載機2が行う仮使用時の照合処理
車載機2において、制御部6は、仮使用時の照合処理の開始条件が成立したと判定すると、仮使用時の照合処理を開始し、サーバ3から送信される仮使用用の地図データ及び検査指示の受信を判定する(A41)。仮使用時の照合処理の開始条件は、第1実施形態で説明した仮配信時の照合処理の開始条件と同じであっても良い。制御部6は、サーバ3から送信される仮使用用の地図データ及び検査指示を受信していないと判定すると(A41:NO)、仮使用時の照合処理を終了する。
【0088】
制御部6は、サーバ3から送信された仮使用用の地図データ及び検査指示をデータ通信部7により受信したと判定すると(A41:YES)、その受信した仮使用用の地図データに含まれる対象物の対象情報と、自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する(A42)。制御部6は、照合結果に基づいて仮使用用の地図データの品質良否を判定する(A43)。
【0089】
制御部6は、仮使用用の地図データの品質良を判定すると(A43:YES)、その仮使用用の地図データの品質良を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A44)、仮使用時の照合処理を終了する。一方、制御部6は、仮使用用の地図データの品質否を判定すると(A43:NO)、その仮使用用の地図データの品質否を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A45)、仮使用時の照合処理を終了する。
【0090】
この場合も、サーバ3が仮使用用の地図データと検査指示とを同時に送信することを前提とし、制御部6がサーバ3から送信された仮使用用の地図データ及び検査指示の受信を判定することを例示したが、サーバ3が仮使用用の地図データを送信してから所定時間経過後に検査指示を送信しても良い。その場合、制御部6は、サーバ3から送信された仮使用用の地図データの受信を判定した後に、サーバ3から送信された検査指示の受信を判定する。
【0091】
(3-2)サーバ3が行う仮使用時の使用可否判定処理
サーバ3において、制御部10は、仮使用時の配信可否判定処理の開始条件が成立すると、仮使用時の配信可否判定処理を開始し、車載機2から送信される仮使用用の地図データの判定結果の受信を判定する(B41、判定結果受信手順に相当する)。制御部10は、車載機2から送信された仮使用用の地図データの判定結果をデータ通信部11により受信したと判定すると(B41:YES)、その受信した仮使用用の地図データの判定結果をスクリーニング処理し(B42)、統計処理し(B43)、地図データの使用可否を判定する(B44、有効化可否判定手順に相当する)。
【0092】
制御部10は、例えば仮使用用の地図データの品質良を示す判定結果が多数であり、地図データの使用可を判定すると(B44:YES)、使用可コマンドをデータ通信部11から車載機2に送信させ、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの正式使用を開始し(B45、有効化制御手順に相当する)、仮使用時の使用可否判定処理を終了する。一方、制御部10は、例えば仮使用用の地図データの品質否を示す判定結果が多数であり、地図データの使用否を判定すると(B44:NO)、使用可コマンドをデータ通信部11から車載機2に送信させず、サーバ3から車載機2への地図データの正式使用を開始せずに地図データを再構築し(B46)、仮使用時の使用可否判定処理を終了する。
【0093】
(3-3)車載機2が行う本使用時の照合処理
車載機2において、制御部6は、本使用時の照合処理の開始条件が成立したと判定すると、本使用時の照合処理を開始し、サーバ3から送信される検査指示の受信を判定する(A41)。本使用時の照合処理の開始条件は、第1実施形態で説明した本配信時の照合処理の開始条件と同じであっても良い。制御部6は、サーバ3から送信される検査指示を受信していないと判定すると(A51:NO)、本使用時の照合処理を終了する。
【0094】
制御部6は、サーバ3から送信された検査指示をデータ通信部7により受信したと判定すると(A51:YES)、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの仮配信用の地図データを本配信用の地図データとして扱い、本使用用の地図データに含まれる対象物の対象情報と、自律系センサにより取得された対象物の対象情報とを対象物単位で照合する(A52)。制御部6は、照合結果に基づいて本使用用の地図データの品質良否を判定する(A53)。
【0095】
制御部6は、本使用用の地図データの品質良を判定すると(A53:YES)、その本使用用の地図データの品質良を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(54)、本使用時の照合処理を終了する。一方、制御部6は、本使用用の地図データの品質否を判定すると(A53:NO)、その本使用用の地図データの品質否を示す判定結果をデータ通信部7からサーバ3に送信させ(A55)、本使用時の照合処理を終了する。
【0096】
(3-4)サーバ3が行う本使用時の使用可否判定処理
サーバ3において、制御部10は、本使用時の配信可否判定処理の開始条件が成立すると、本使用時の配信可否判定処理を開始し、車載機2から送信される本使用用の地図データの判定結果の受信を判定する(B51、判定結果受信手順に相当する)。制御部10は、車載機2から送信された本使用用の地図データの判定結果をデータ通信部11により受信したと判定すると(B51:YES)、その受信した本使用用の地図データの判定結果をスクリーニング処理し(B52)、統計処理し(B53)、地図データの使用可否を判定する(B54:有効化可否判定手順に相当する)。
【0097】
制御部10は、例えば本使用用の地図データの品質良を示す判定結果が多数であり、地図データの使用可を判定すると(B54:YES)、使用可コマンドをデータ通信部11から車載機2に送信させ、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの正式使用を継続し(B55、有効化制御手順に相当する)、本使用時の使用可否判定処理を終了する。一方、制御部10は、例えば本使用用の地図データの品質否を示す判定結果が多数であり、地図データの使用否を判定すると(B54:NO)、使用否コマンドをデータ通信部11から車載機2に送信させ、サーバ3から車載機2への地図データの正式使用を継続せずに中断し(B56)、地図データの使用不可通知をデータ通信部11から車載機2に送信させ(B57)、地図データを再構築し(B58)、本使用時の使用可否判定処理を終了する。
【0098】
以上に説明したように第3実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。
車載機2において、地図データに含まれる対象物の対象情報と、車両に搭載されている自律系センサにより取得された対象物の対象情報との照合結果に基づいて地図データの品質良否を判定するようにした。サーバ3において、地図データの品質良否の判定結果に基づいて地図データの使用可否を判定し、地図データの使用可を判定すると、サーバ3から車載機2へ既に配信済みの地図データの使用を許可するようにした。この場合も、地図データに含まれる地物、レーン、道路、タイル等対象物を対象物とすることで、地図データの品質保証を地物単位、レーン単位、道路単位、タイル単位等で行うことができ、地図データの品質保証を適切に行うことができる。
【0099】
(その他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0100】
車載機2が地物情報を照合する構成を例示したが、例えばサーバ3とは別に複数のサーバを設け、地物情報を照合する不特定多数の処理を複数のサーバに分散しても良い。即ち、車載機2において、自律系センサにより取得された対象物の対象情報をサーバに送信し、サーバにおいて、地図データを車載機2に送信せずに、車載機2から受信した地物情報と、地図データに含まれる対象物の対象情報とを照合しても良い。
【0101】
第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせても良く、地図データの有効化可否の判定として、第1実施形態で説明した地図データの配信可否の判定と、第3実施形態で説明した地図データの使用可否の判定との両方を併用しても良い。第2実施形態で説明した本配信時フェーズを不調地点検知フェーズと不調地点検査フェーズとに細分化する手法を第3実施形態に適用しても良い。
【0102】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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