(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/16 20160101AFI20241119BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20241119BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241119BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241119BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20241119BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20241119BHJP
F02D 41/12 20060101ALI20241119BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20241119BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20241119BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241119BHJP
【FI】
B60W20/16
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F02D29/06 D
F01N3/023 A
F02D41/12
B60L50/61
B60L7/14
B60L3/00 J
(21)【出願番号】P 2023546602
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032914
(87)【国際公開番号】W WO2023037419
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三竿 善彦
(72)【発明者】
【氏名】星 聖
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 崇央
(72)【発明者】
【氏名】井上 潤
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111164(JP,A)
【文献】特開2020-104668(JP,A)
【文献】特開2021-54331(JP,A)
【文献】特開2004-225564(JP,A)
【文献】特開2017-128152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/16
B60K 6/46
B60W 10/06
B60W 10/08
F02D 29/06
F01N 3/023
F02D 41/12
B60L 50/61
B60L 7/14
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと発電機と駆動モータとを備え、前記エンジンで前記発電機を駆動して発電し、前記発電機により発電した電力で前記駆動モータを駆動するとともに、前記エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを備える車両の制御方法であって、
運転停止状態の前記エンジンを前記発電機により駆動することでモータリングを行い、これにより前記エンジンの燃料カットを行うとともに電力を消費することと、
前記フィルタの温度に基づき前記エンジンの燃料カット禁止を行うことと、
前記エンジンの燃料カット禁止条件の成立に応じて前記駆動モータによる回生量を抑制することと、
を含む車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記駆動モータによる回生中に前記燃料カット禁止条件が成立した場合は、前記回生量を徐々に減少させる、
車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の制御方法であって、
前記燃料カット禁止条件が不成立になるまで前記回生量の抑制を継続させ、且つ前記駆動モータの駆動力が所定値を超えた場合に前記回生量の抑制を無効にする、
車両の制御方法。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載の車両の制御方法であって、
前記車両は、第1回生限界量と、前記第1回生限界量より大きい第2回生限界量とを回生限界量として有し、
前記燃料カット禁止条件が成立した場合は、前記第1回生限界量を有効にすることで、前記燃料カット禁止条件が不成立の場合より前記回生量を抑制する、
車両の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の制御方法であって、
前記車両は、第1ドライブモードと、前記第1ドライブモードより前記回生限界量が大きく設定される第2ドライブモードとを有し、
前記第1回生限界量及び前記第2回生限界量は、前記第2ドライブモードで設定される、
車両の制御方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の車両の制御方法であって、
前記第2回生限界量は、前記車両で設定される前記回生限界量の最大値である、
車両の制御方法。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項に記載の車両の制御方法であって、
前記燃料カット禁止条件は、前記フィルタの温度に基づき判定される条件である、
車両の制御方法。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の車両の制御方法であって、
前記エンジンの燃料カット禁止中に放電要求があった場合は、前記エンジンで燃焼を行いつつ前記発電機で前記エンジンを駆動して前記エンジンに負のエンジントルクを発生させる電力消費運転を行う、
車両の制御方法。
【請求項9】
エンジンと発電機と駆動モータとを備え、前記エンジンで前記発電機を駆動して発電し、前記発電機により発電した電力で前記駆動モータを駆動するとともに、前記エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを備える車両であって、
前記エンジンは、運転停止状態で前記発電機により駆動されることでモータリングが行われ、これにより燃料カットが行われるとともに電力が消費される一方、前記フィルタの温度に基づき燃料カット禁止が行われ、
前記エンジンの燃料カット禁止条件の成立に応じて、前記駆動モータによる回生量を抑制する制御部を備える、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御方法及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2018-065448Aには、排気系に粒子状物質を除去するフィルタが取り付けられたエンジンを備えるハイブリッド自動車が開示されている。この技術では、フィルタの粒子状物質の堆積量が所定堆積量以上のときにフィルタの温度が所定温度以上のときには、エンジンの燃料カットを禁止する。これにより、エンジンの運転(燃料噴射)が継続されるので、酸素が供給されることにより粒子状物質が燃焼しフィルタが過熱することが抑制される。
【発明の概要】
【0003】
シリーズハイブリッド車両は、エンジンと発電機と駆動モータとを備え、エンジンで発電機を駆動して発電し、発電機により発電した電力で駆動モータを駆動する。このような車両では、減速時に駆動モータにより回生を行うことで減速度を得ることができる。回生は車両の電力収支上、回生の余地がある場合つまり最大限受け入れ可能な電力に余裕がある場合に行うことができる。
【0004】
従って、例えばバッテリが満充電になり回生の余地がなくなった場合は回生が行えなくなるので、減速度を確保できなくなる。この場合、放電要求を行い、放電要求に基づき燃料供給を停止した状態でエンジンのモータリングを行うことで、電力を消費し回生の余地を大きくすることができる。結果、回生により減速度を確保することができる。
【0005】
しかしながら、フィルタの過熱を抑制すべく燃料カットを禁止している場合はモータリングを利用して減速度を確保することができない。このため、燃料カット禁止中に回生減速する場面で回生の余地がなくなると、回生により減速度を確保できなくなる結果、意図しない減速度の変化が発生し、ドライバに違和感を与える虞がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、燃料カット禁止中に回生減速する場面で意図しない減速度の変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の車両の制御方法は、エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを備えるシリーズハイブリッド車両でエンジンの燃料カット禁止条件が成立した場合は駆動モータによる回生量を抑制することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、燃料カット禁止の実行領域を示す図である。
【
図3】
図3は、シフトポジション及びドライブモードの説明図である。
【
図4】
図4は、回生抑制制御の一例をフローチャートで示す図である。
【
図5】
図5は、タイミングチャートの第1の例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の例に対応する減速度の説明図である。
【
図7】
図7は、タイミングチャートの第2の例を示す図である。
【
図8】
図8は、タイミングチャートの第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は車両100の概略構成図を示す図である。車両100はエンジン1と発電機2と駆動モータ3とギア4と駆動輪5とバッテリ6とGPF(Gasoline Particulate Filter)システム7とマフラー8とを備える。車両100はシリーズハイブリッド車両であり、走行モードとしてシリーズハイブリッドモードを有する。走行モードがシリーズハイブリッドモードの場合、車両100はエンジン1で発電機2を駆動して発電し、発電機2により発電した電力で駆動モータ3を駆動する。
【0011】
エンジン1は内燃機関であり、ガソリンエンジンとされる。エンジン1は発電機2と動力伝達可能に接続される。発電機2は発電用モータジェネレータであり、発電のほかエンジン1のモータリングも行う。モータリングは運転停止状態のエンジン1を発電機2により駆動することで行われる。駆動モータ3は駆動用モータジェネレータであり、車両100の駆動力DPを発生させる。駆動モータ3が発生させた駆動力DPは減速ギアであるギア4を介して駆動輪5に伝達される。駆動モータ3は駆動輪5からの動力により駆動されることで、エネルギの回生も行う。駆動モータ3が電力として回生したエネルギはバッテリ6に充電することができる。
【0012】
バッテリ6は発電機2が発電した電力や駆動モータ3が回生した電力を蓄える。バッテリ6には放電要求SOC(State Of Charge)が設定される。SOCはバッテリ6の充電状態を指標するパラメータであり、放電要求SOCはバッテリ6の満充電を規定するための値として予め設定される。換言すれば、バッテリ6の満充電は放電要求SOCにより規定され、例えば充電率としてのSOCが90%の場合が満充電とされる。
【0013】
GPFシステム7は排気浄化系であり、エンジン1の排気通路に設けられる。GPFシステム7はGPFつまりガソリンパティキュレートフィルタを有し、エンジン1の排気中の粒子状物質である煤はGPFにより捕集される。GPFシステム7はGPF温度センサとGPF差圧センサとを含む。GPF温度センサはGPF温度Tを検出する。GPF温度TはGPFの床温であり、GPF温度センサは例えばGPFの出口排気温をGPF温度Tの実温として検出する。GPF差圧センサはGPFの入口排気圧及び出口排気圧の差圧を検出する。当該差圧に基づきGPFに堆積した煤の量であるGPF煤堆積量Sが推定される。GPFシステム7はGPFのほか三元触媒等の触媒を含んでよい。マフラー8はGPFシステム7より下流の部分のエンジン1の排気通路に設けられ、排気音を低減する。
【0014】
車両100はさらにモータコントローラ10とエンジンコントローラ20と車両コントローラ30とを備える。モータコントローラ10、エンジンコントローラ20及び車両コントローラ30は相互通信可能に接続される。モータコントローラ10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のマイクロコンピュータで構成される。モータコントローラ10では、ROM又はRAMに格納されたプログラムをCPUによって実行することで各種の制御が行われる。エンジンコントローラ20及び車両コントローラ30についても同様である。
【0015】
モータコントローラ10は発電機2と駆動モータ3とを制御する。モータコントローラ10は、発電機2用のインバータである第1インバータと、駆動モータ3用のインバータである第2インバータとをさらに含む。これらのインバータはモータコントローラ10とは別の構成として把握されてもよい。モータコントローラ10は第1インバータや第2インバータを制御することにより、発電機2や駆動モータ3を制御する。
【0016】
第1インバータは、発電機2とバッテリ6とに接続する。第1インバータは、発電機2から供給される交流電流を直流電流に変換してバッテリ6に供給する。これにより、発電機2が発電した電力がバッテリ6に充電される。第1インバータはさらに、バッテリ6から供給される直流電流を交流電流に変換して発電機2に供給する。これにより、バッテリ6の電力で発電機2が駆動する。第2インバータ、駆動モータ3及びバッテリ6についても同様である。モータコントローラ10には発電機2、駆動モータ3、バッテリ6から電流、電圧、SOC等の信号も入力される。
【0017】
エンジンコントローラ20はエンジン1を制御する。エンジンコントローラ20にはGPF温度センサやGPF差圧センサからの信号が入力される。これらの信号はエンジンコントローラ20を介してさらに車両コントローラ30に入力することができる。エンジンコントローラ20はGPF温度T及びGPF煤堆積量Sに基づき(換言すれば、GPF煤堆積量Sに応じたGPF温度Tに基づき)エンジン1の燃料カット禁止を行う。
【0018】
図2は燃料カット禁止領域Rを示す図である。
図2に示すように燃料カット禁止領域RはGPF煤堆積量SとGPF温度Tとに応じてマップデータで予め設定される。燃料カット禁止領域RはGPF温度Tが閾値Trefより高い領域とされる。閾値Trefは燃料カット禁止領域Rを規定するための値であり、GPF煤堆積量Sに応じて予め設定される。GPF煤堆積量Sが大きいほど煤の燃焼によりGPFが過熱し易くなる。このため、閾値TrefはGPF煤堆積量Sが大きいほど小さくなるように設定される。
【0019】
図1に戻り、車両コントローラ30はエンジン1や発電機2や駆動モータ3を統合的に制御する。車両コントローラ30には大気圧を検出するための大気圧センサ61、アクセル開度APOを検出するためのアクセル開度センサ62、ドライバ操作によりドライブモードを選択するためのモードSW63、ドライバ操作により選択されたシフトポジション(レンジ)を検出するためのシフトポジションセンサ64からの信号が入力される。車両コントローラ30はモータコントローラ10及びエンジンコントローラ20とともにコントローラ50を構成する。
【0020】
図3はシフトポジション及びドライブモードの説明図である。車両100はシフター9をさらに有する。シフター9はドライバ操作によりシフトポジションを選択するための装置であり、ドライバ操作は各シフトポジションに対応するゲートへのシフトレバー操作やスイッチ操作により行われる。シフター9はモーメンタリ式のシフターとされる。モーメンタリ式のシフター9では、ドライバ操作から解放されたシフトレバーが自律的に中立位置であるホームポジションに戻る。
【0021】
シフター9により選択可能なシフトポジションはPレンジ(駐車レンジ)、Rレンジ(後進レンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)のほか、第1前進レンジであるDレンジと第2前進レンジであるBレンジとを含む。DレンジとBレンジとはこれらに共通のD/Bゲートへのシフトレバー操作により選択される。D/Bゲートへのシフトレバー操作により、Dレンジが選択されている場合はBレンジが、Bレンジが選択されている場合はDレンジが選択される。Dレンジ及びBレンジ以外のレンジが選択されている場合、D/Bゲートへのシフトレバー操作によりDレンジが選択される。
【0022】
モードSW63により選択可能なドライブモードは、NモードとSモードとECOモードとを含む。Nモードはアクセルペダル操作で加速が行われるモード(通常モード)とされる。このため、Nモードではアクセルペダル操作で強い回生減速は行われない。SモードとECOモードとはアクセルペダル操作で加速及び回生減速が行われるモード(1ペダルモード)とされ、ECOモードはSモードよりも燃費運転に適したモードとされる。ドライブモードはモードSW63を押す度にNモード、Sモード、ECOモードの順で変更され、ECOモードの次はNモードに戻る。
【0023】
SモードやECOモードでは、駆動モータ3で回生を行うことで減速度を発生させる。減速度は換言すれば負の加速度であり負の値で示される。SモードではECOモードより回生限界量(回生限界の大きさ)が大きく設定される。換言すれば、SモードではECOモードより回生が抑制されない。従って、SモードのほうがECOモードよりも回生で得られる電力は大きく、発生する減速度の大きさも大きい。ECOモードは第1ドライブモードを構成し、Sモードは第2ドライブモードを構成する。
【0024】
車両100では、減速時に駆動モータ3により回生を行うことで減速度を得ることができる。回生は車両100の電力収支上、回生の余地がある場合つまり最大限受け入れ可能な電力に余裕がある場合に行うことができる。
【0025】
従って、例えばバッテリ6が満充電になった結果、回生の余地がなくなった場合は回生が行えなくなるので、減速度を確保できなくなる。この場合、放電要求を行い、放電要求に基づきエンジン1のモータリングを行うことで、電力を消費して回生の余地を大きくすることができる。結果、回生により減速度を確保することができる。
【0026】
しかしながら、GPFの過熱を抑制すべく燃料カットを禁止している場合はモータリングを利用して減速度を確保することができない。このため、燃料カット禁止中に減速する場面で回生の余地がなくなると、回生により減速度を確保できなくなる結果、意図しない減速度の変化が発生し、ドライバに違和感を与えることが懸念される。
【0027】
このような事情に鑑み、コントローラ50は以下で説明する制御を行うようにプログラムされる。
【0028】
図4はコントローラ50が行う回生抑制制御の一例をフローチャートで示す図である。
図4ではドライブモードがSモードの場合を示す。コントローラ50では
図4に示すフローチャートの処理を行うことで、制御部が機能的に実現される。
図4に示すフローチャートの処理は繰り返し実行することができる。
図4に示すフローチャートの処理は例えば車両コントローラ30で行うことができる。
【0029】
ステップS1で、コントローラ50はGPF温度Tが閾値Trefより高いか否かを判定する。つまり、燃料カット禁止条件が成立したか否かが判定される。ステップS1で肯定判定であれば、GPF状態フラグ(換言すればFCOI信号)がONとされ、処理はステップS2に進む。
【0030】
ステップS2で、コントローラ50は回生中か否かを判定する。回生中であるか否かは例えば目標駆動トルクTQMOT_Tが負であるか否かにより判定できる。目標駆動トルクTQMOT_Tはアクセル開度APOと車速VSPとに応じてマップデータで予め設定でき、回生時には負の目標駆動トルクTQMOT_Tつまり目標回生トルクがマップデータに基づき演算される。ステップS2で否定判定であれば、処理はステップS3に進む。
【0031】
ステップS3で、コントローラ50は回生抑制を有効にする。回生抑制は、第1回生制限トルクTQMOT_L1及び第2回生制限トルクTQMOT_L2のうち第1回生制限トルクTQMOT_L1を有効にすることにより有効とされる。第2回生制限トルクTQMOT_L2は、FCOI信号がONであるか否かに関わらず有効とされる。
【0032】
第1回生制限トルクTQMOT_L1はGPF状態フラグがONになる場合、つまり燃料カットが禁止される場合を想定した回生制限トルクTQMOT_Lである。第2回生制限トルクTQMOT_L2はGPF状態フラグがOFFの場合、つまり燃料カットが禁止されない場合を想定した回生制限トルクTQMOT_Lであり、回生制限トルクTQMOT_Lの絶対値は回生限界量に相当する。第2回生制限トルクTQMOT_L2は、回生中にはシステム回生最大電力に応じて設定される。システム回生最大電力は車両100で回生可能な絶対値で最大の電力である。第1回生制限トルクTQMOT_L1と第2回生制限トルクTQMOT_L2とはともにSモードで設定される。
【0033】
ステップS3で第1回生制限トルクTQMOT_L1が有効とされる結果、駆動モータ3の駆動トルクTQMOTは回生中には、第1回生制限トルクTQMOT_L1及び第2回生制限トルクTQMOT_L2のうち絶対値で小さいほうにより制限される。
【0034】
ステップS3では、SOCに応じた放電要求があるか否かに関わらず、従ってバッテリ6が満充電であるか否かに関わらず、回生抑制が有効にされる。このため、ステップS3ではFCOI信号がONで且つ満充電となる前、つまり燃料カット禁止状態とバッテリ6の満充電状態とが重なる前でも回生抑制が有効にされる。後述するステップS5についても同様である。ステップS3の後には処理は一旦終了する。
【0035】
ステップS1で否定判定の場合、処理はステップS6に進む。ステップS6でコントローラ50が駆動モータ3の駆動力DPが所定値DP1を超えたか否かを判定する。所定値DP1は加速要求があるか否かを判定するための判定値であり予め設定される。所定値DP1は正であり、ゼロより若干大きく設定することができる。ステップS6で否定判定の場合、処理は一旦終了する。従って、回生抑制中にGPF温度Tが閾値Tref以下になりFCOI信号がONからOFFになっても、駆動力DPが所定値DP1以下の場合には回生抑制は無効とされない。ステップS6で肯定判定の場合、処理はステップS7に進む。
【0036】
ステップS7で、コントローラ50は回生抑制を無効にする。回生抑制は第1回生制限トルクTQMOT_L1を無効にすることにより無効とされる。ステップS7の後には処理は一旦終了する。
【0037】
ステップS2で肯定判定の場合、処理はステップS4に進み、コントローラ50は回生抑制中か否かを判定する。回生抑制が有効である場合、回生抑制中と判断され、処理は一旦終了する。回生抑制が無効である場合、回生抑制中でないと判断され、処理はステップS5に進む。
【0038】
ステップS5で、コントローラ50は回生量を徐々に減少させる。つまりこの場合は、回生抑制中でないことから第2回生制限トルクTQMOT_L2で回生制限が行われている。このため、第1回生制限トルクTQMOT_L1をそのまま有効にすると、第1回生制限トルクTQMOT_L1による回生制限により減速度が急に絶対値で小さくなる結果、減速感が急に乏しくなりドライバに違和感を与え得る。
【0039】
このことから、ステップS5では回生制限トルクTQMOT_Lが次第に第1回生制限トルクTQMOT_L1になるように絶対値で徐々に減少される。これにより、回生抑制を行う前にすでに回生が行われている場合に生じ得る意図しない減速度の変化が抑制される。ステップS5の後には処理は一旦終了する。
【0040】
図5は
図4に対応するタイミングチャートの第1の例を示す図である。
図5では上り坂から下り坂に走行中の道路が変化した場合を示す。破線で示す駆動モータ3の駆動トルクTQ
MOTは回生抑制を行わない比較例の場合を示す。
【0041】
タイミングT1より前ではENG回転速度NICE一定でエンジン1が発電運転をしている。このため、GPF温度Tは次第に高くなる。駆動トルクTQMOTは一定且つ正で、車両100は上り坂を走行している。GPF温度Tは閾値Tref以下なので、FCOI信号はOFFになっている。SOCはごく緩やかに低下している。
【0042】
タイミングT1ではGPF温度Tが閾値Trefより高くなる。結果、FCOI信号がONになる。また、FCOI信号がONなので回生抑制が有効とされる。結果、駆動トルクTQMOTが第1回生制限トルクTQMOT_L1及び第2回生制限トルクTQMOT_L2のうち絶対値で小さいほうにより制限されるようになる。
【0043】
ここで、第2回生制限トルクTQMOT_L2は、駆動トルクTQMOTが正の場合つまり回生が行われていない場合は、駆動トルクTQMOTに設定される。また、回生中は破線で示す駆動モータ3の駆動トルクTQMOTが第2回生制限トルクTQMOT_L2に制限されながら変化している。従って、破線で示す駆動モータ3の駆動トルクTQMOTは、第2回生制限トルクTQMOT_L2を示す。
【0044】
第2回生制限トルクTQMOT_L2は、タイミングT2及びタイミングT3間で、従って回生中に放電要求がない場合に、回生制限トルクTQMOT_L21に設定される。回生制限トルクTQMOT_L21は、放電要求がない場合に第2回生制限トルクTQMOT_L2が回生中に設定されることになる回生制限トルクTQMOT_Lである。
【0045】
二点破線で示す第1回生制限トルクTQMOT_L1は、駆動トルクTQMOTが正の場合は回生制限トルクTQMOT_L21に設定される。第1回生制限トルクTQMOT_L1は、FCOI信号がONになると、回生制限トルクTQMOT_L21から回生制限トルクTQMOT_L11に絶対値で次第に減少される。回生制限トルクTQMOT_L11は、FCOI信号がONになった場合に第1回生制限トルクTQMOT_L1が回生中に設定されることになる回生制限トルクTQMOT_Lである。
【0046】
回生制限トルクTQMOT_L11は絶対値で回生制限トルクTQMOT_L21より小さく設定される。換言すれば、回生制限トルクTQMOT_L21は絶対値で回生制限トルクTQMOT_L11より大きく設定される。回生制限トルクTQMOT_L21は、絶対値で車両100において設定される回生制限トルクTQMOT_Lの最大値とされる。回生制限トルクTQMOT_L11の絶対値は第1回生限界量に相当し、回生制限トルクTQMOT_L21の絶対値は第2回生限界量に相当する。
【0047】
タイミングT2では車両100が下り坂に差し掛かり、アクセルOFFになる。つまり、アクセルペダルの踏み込みがなくなる。結果、これに応じて駆動トルクTQMOTが低下し始めて負になる。このため、回生が開始され、回生に応じてSOCが上昇する。ドライブモードがSモードのため、駆動トルクTQMOTは絶対値で大きく低下する。但し、回生抑制中のため、駆動トルクTQMOTは第1回生制限トルクTQMOT_L1で制限され、第2回生制限トルクTQMOT_L2に到達しない。
【0048】
この例では、第1回生制限トルクTQMOT_L1が回生制限トルクTQMOT_L21から回生制限トルクTQMOT_L11になる途中で、駆動トルクTQMOTが第1回生制限トルクTQMOT_L1により制限される。そして、駆動トルクTQMOTは第1回生制限トルクTQMOT_L1によって制限されながら変化して回生制限トルクTQMOT_L11になる。
【0049】
回生が開始されると、SOCの上昇に応じてエンジン1のトルクが減少され、これにより発電量が減少し排気エネルギが減少する。また、このような状態で車両100が下り坂を走行することにより、GPFが走行風によっても冷却される。結果、GPF温度Tが低下し始める。
【0050】
タイミングT3では、SOCが放電要求SOCを超える。従って、FCOI信号がONの状態とバッテリ6が満充電の状態とが重なり合う。結果、リタード放電が開始される。リタード放電は、エンジン1で燃焼を行いつつ発電機2でエンジン1を駆動してエンジン1に負のエンジントルクを発生させる電力消費運転の一例である。電力消費運転では、エンジン1と発電機2とでエンジントルク<フリクショントルクという状態を作り出すことで、エンジン1で燃焼を行いつつバッテリ6を放電させる。リタード放電ではこの際に点火時期をリタードさせてエンジン1で燃焼を行う。この場合、燃焼が緩慢になりエンジントルクが低下するので、エンジントルク<フリクショントルクという状態が作り出し易い。
【0051】
リタード放電は、エンジン1の燃料カット禁止中つまりFCOI信号がONのときに放電要求があった場合にコントローラ50により行われる。リタード放電を行うことで、満充電の場合でもGPFの過熱を抑制しつつバッテリ6を放電させることができる。リタード放電ではリタード燃焼を行うエンジン1が発電機2によって駆動される。このため、リタード放電が開始されると、ENG回転速度NICEが上昇する。
【0052】
第2回生制限トルクTQMOT_L2は回生中にエンジン1の消費電力(換言すれば、エンジン1及び発電機2からなる発電ユニットの消費電力)に応じて変化する。第2回生制限トルクTQMOT_L2は、リタード放電時にはリタード放電時の回生制限トルクTQMOT_Lrとされ、モータリング時にはモータリング時の回生制限トルクTQMOT_Lmとされる。回生制限トルクTQMOT_Lr及び回生制限トルクTQMOT_Lmはともに絶対値で回生制限トルクTQMOT_L21より小さい。
【0053】
駆動トルクTQMOTは、有効な第1回生制限トルクTQMOT_L1及び第2回生制限トルクTQMOT_L2のうち絶対値で小さいほうにより制限される。第2回生制限トルクTQMOT_L2である回生制限トルクTQMOT_Lr及び回生制限トルクTQMOT_Lmは、第1回生制限トルクTQMOT_L1である回生制限トルクTQMOT_L11より絶対値で小さい。
【0054】
このため、タイミングT3からは第1回生制限トルクTQMOT_L1から第2回生制限トルクTQMOT_L2(リタード放電時の回生制限トルクTQMOT_Lr)への回生制限トルクTQMOT_Lの遷移が開始される。結果、駆動トルクTQMOTはリタード放電時の回生制限トルクTQMOT_Lrに上昇する。リタード放電時の回生制限トルクTQMOT_Lrは負のため、リタード放電時にも引き続き減速度が発生する。
【0055】
タイミングT4では、GPF温度Tが閾値Tref以下になる。結果、FCOI信号がOFFになる。この場合、燃料カットが禁止されていないのでモータリングが行われる。結果、ENG回転速度NICEはリタード放電時と比べて低下し、駆動トルクTQMOTはモータリング時の回生制限トルクTQMOT_Lmに低下する。これにより、リタード放電時よりも絶対値で大きな減速度が確保される。
【0056】
比較例の場合、回生抑制が行われない。このため、回生が開始されると破線で示す駆動トルクTQMOTは回生制限トルクTQMOT_L21まで低下する。このため、タイミングT3からの駆動トルクTQMOTの変化は本実施形態の場合より大きくなる。結果、比較例の場合と本実施形態の場合とでは、次に説明するように減速度が異なってくる。
【0057】
図6は
図5に示す第1の例に対応する減速度の説明図である。
図6ではパラメータとしてFCOI信号、満充電フラグ及び加減速度Gを示す。加減速度Gは車両前後方向の加速度又は減速度であり、負の場合に減速度を示す。破線で示す加減速度Gは
図5と同様、比較例の場合を示す。減速度G1及び減速度G2は、回生制限トルクTQ
MOT_L11及び回生制限トルクTQ
MOT_L21に対応する減速度を示す。減速度Gr及び減速度Gmは、リタード放電時の回生制限トルクTQ
MOT_Lr及びモータリング時の回生制限トルクTQ
MOT_Lmに対応する減速度を示す。
【0058】
比較例の場合、回生抑制が行われない。このため、タイミングT2でのアクセルOFFに応じて回生が開始されると、破線で示す加減速度Gは減速度G2になる。結果、タイミングT3で満充電フラグがONになりリタード放電が開始されると、差分ΔD1(減速度G2の絶対値-減速度Grの絶対値)の大きな減速度変化が生じる結果となり、ドライバに違和感を与え得る。
【0059】
本実施形態の場合、回生が開始されると、加減速度Gは減速度G2より絶対値で小さい減速度G1に抑制される。このため、満充電フラグがONになりリタード放電が開始されても、減速度変化の大きさは差分ΔD1-差分ΔD2(差分ΔD2は、減速度G2の絶対値-減速度G1の絶対値)に抑えられる。結果、ドライバに違和感を与え得る意図しない減速度の変化が抑制される。また、タイミングT4でFCOI信号がOFFになったときには、モータリングにより差分ΔD3(減速度Gmの絶対値-減速度Grの絶対値)の分、絶対値で大きな減速度を得ることで、減速度を確保できる。
【0060】
図7は
図4に対応するタイミングチャートの第2の例を示す図である。
図7ではアクセルOFF中にFCOI信号がONになった場合を示す。破線で示す駆動モータ3の駆動力DPは
図6と同様、比較例の場合を示す。駆動力DPは目標駆動トルクTQ
MOT_Tと同様、アクセル開度APOと車速VSPとに応じて目標駆動力を設定した駆動力マップに基づき求めることができる。
【0061】
タイミングT11ではFCOI信号がOFFなので、回生抑制は有効になっていない。このため、タイミングT11でアクセル開度APOがゼロになると、これに応じて駆動力DPは駆動力制限値DPLMT2まで低下する。駆動力制限値DPLMT2は回生抑制が行われない場合、従って比較例の場合の駆動力制限値DPLMTを示し、回生制限トルクTQMOT_L21に対応する。
【0062】
この例ではタイミングT12でアクセルOFF中にFCOI信号がONになると、回生量が次第に減少される。回生量の減少は、回生制限トルクTQMOT_Lを第2回生制限トルクTQMOT_L2から第1回生制限トルクTQMOT_L1に絶対値で次第に減少させることにより行われる。
【0063】
結果、タイミングT12からタイミングT13にかけて、駆動力DPが駆動力制限値DPLMT2から駆動力制限値DPLMT1に絶対値で次第に減少する。駆動力制限値DPLMT1は回生抑制が行われる場合、従って本実施形態の場合の駆動力制限値DPLMTを示し、回生制限トルクTQMOT_L11に対応する。
【0064】
これにより、アクセルOFF中にFCOI信号がONになった場合でも、回生抑制による減速度の変化が緩やかになる。結果、このような状況でドライバに違和感を与え得る意図しない減速度の変化が抑制される。FCOI信号はタイミングT14でOFFになるが、回生抑制は有効のままとされる。回生抑制は次のような場合に無効とされる。
【0065】
図8は
図4に対応するタイミングチャートの第3の例を示す図である。
図8では走行中の道路の勾配変化に応じてアクセルON、OFFが繰り返された場合を示す。破線で示す駆動力DPは
図7同様、比較例の場合を示す。
【0066】
タイミングT21では上り坂を走行中にFCOI信号がONになり、回生抑制が行われる。タイミングT22では下り坂に差し掛かったことに応じてアクセル開度APOがゼロになる。結果、駆動力DPも負になり、回生が行われる。
【0067】
比較例の場合は回生抑制が行われないので、駆動力DPは破線で示すように駆動力制限値DPLMT1より小さくなる。この例では、比較例の場合に駆動力マップに基づき求められる駆動力DPは駆動力制限値DPLMT2には届かない。本実施形態の場合は駆動力DPが回生抑制により駆動力制限値DPLMT1に抑制される。
【0068】
タイミングT23では、走行路面の勾配が下り勾配から上り勾配に変化することに応じて、アクセルペダルが踏み込まれ始める。結果、アクセル開度APO及び駆動力DPが次第に増加し、アクセル開度APOが一定になると駆動力DPも一定になる。タイミングT24からは、走行路面の勾配が再び下り勾配になることに応じてアクセルペダルの踏み込みが緩められ、これに応じてアクセル開度APO及び駆動力DPが次第に低下する。アクセル開度APOは最終的にゼロになり、駆動力DPは最終的に駆動力制限値DPLMT1になる。
【0069】
タイミングT25ではFCOI信号がOFFになり、燃料カット禁止条件が不成立になる。従って、FCOI信号がONという状況に満充電という状況が重ならなくなることから、このような状況に備えて行った回生抑制を無効にし得る。ところが、タイミングT25で回生抑制を無効にすると、駆動力制限値DPLMT1が無効になる結果、駆動力DPの低下が発生する。結果、ドライバに違和感を与え得る意図しない減速度の変化が生じることになる。
【0070】
本実施形態では、FCOI信号がOFFになるタイミングT25まで回生抑制を継続させ、且つタイミングT26で駆動力DPが所定値DP1を超えたときに回生抑制を無効にする。これにより、FCOI信号がOFFになった後、ドライバの加速要求に応じた加速を確認した上で回生抑制を無効にできるので、回生抑制を無効にする際に意図しない減速度の変化が発生することを防止できる。
【0071】
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0072】
車両100はエンジン1と発電機2と駆動モータ3とを備え、エンジン1で発電機2を駆動して発電し、発電機2により発電した電力で駆動モータ3を駆動するとともに、エンジン1の排気中の粒子状物質である煤を捕集するGPFシステム7を備える。車両100の制御方法は、運転停止状態のエンジン1を発電機2により駆動することでモータリングを行い、これによりエンジン1の燃料カットを行うとともに電力を消費することと、その一方で、GPF温度Tに基づきエンジン1の燃料カット禁止を行うことと、FCOI信号がONになった場合、つまりエンジン1の燃料カット禁止条件が成立した場合は駆動モータ3による回生量を抑制することを含む。
【0073】
このような方法によれば、減速時にFCOI信号がONという状況に満充電という状況が重なる前に減速度を絶対値で予め小さくすることが可能になる。このため、その後FCOI信号がONで且つ満充電になった際に実行可能な放電に応じて回生を行う結果、モータリングで放電を行う場合よりも減速度が絶対値で小さくなる場合でも、満充電前後の減速度の差分を小さくして減速度の変化を抑制できる。結果、ドライバに違和感を与え得る意図しない減速度の変化を抑制できる。
【0074】
本実施形態では、駆動モータ3による回生中にFCOI信号がONになった場合は、回生量が徐々に減少される。このような方法によれば、回生中にFCOI信号がONになった場合でも、回生抑制に起因する減速度の変化を緩やかにしてドライバに違和感を与え得る意図しない減速度の変化を抑制できる。
【0075】
本実施形態では、
図8を用いて前述したように、FCOI信号がOFFになるタイミングT25まで回生抑制を継続させ、且つタイミングT26で駆動力DPが所定値DP1を超えたときに回生抑制を無効にする。これにより、FCOI信号がOFFになった後、ドライバの加速要求に応じた加速を確認した上で回生抑制を無効にできるので、回生抑制を無効にした際に意図しない減速度の変化が発生することを防止できる。
【0076】
車両100は、回生制限トルクTQMOT_L11と、回生制限トルクTQMOT_L11より絶対値で大きい回生制限トルクTQMOT_L21とを回生制限トルクTQMOT_Lとして有する。FCOI信号がONになった場合は、回生制限トルクTQMOT_L11を有効にすることで、FCOI信号がOFFの場合より回生量が抑制される。このような方法によれば、回生制限トルクTQMOT_L11に運転性を考慮した回生制限トルクTQMOT_Lを用いることで、FCOI信号がONで且つ満充電になった際の減速度の変化を適切に抑制できる。
【0077】
車両100はECOモードとECOモードより回生制限トルクTQMOT_Lが絶対値で大きく設定されるSモードとを有し、回生制限トルクTQMOT_L11及び回生制限トルクTQMOT_L21はSモードで設定される。Sモードでは回生開始時にECOモードより絶対値で大きな減速度が発生するので、FCOI信号がONで且つ満充電になった際の減速度の変化がドライバに違和感を与え易い。このためこのような方法によれば、SモードでFCOI信号がONで且つ満充電になっても、その際に発生する減速度の大きな変化を抑制でき、意図しない減速度の変化を抑制する意義が大きい。
【0078】
本実施形態では、回生制限トルクTQMOT_L21は車両100で設定される回生制限トルクTQMOT_Lの絶対値での最大値とされる。このような方法によれば、比較例の場合のように回生制限トルクTQMOT_L21で回生を行う結果、FCOI信号がONで且つ満充電になった際に減速度の大きな変化が発生することを回避できるので、意図しない減速度の変化を抑制する意義が大きい。
【0079】
本実施形態では、燃料カット禁止条件はGPF温度Tに基づき判定される条件である。このような方法によれば、GPF温度Tに起因して燃料カットを禁止した状況に満充電という状況が重なる結果、モータリングで放電を行えない場合に発生し得る意図しない減速度の変化を抑制可能な方法が得られる。
【0080】
本実施形態では、FCOI信号がONのときに放電要求があった場合は、点火時期をリタードさせてエンジン1で燃焼を行いつつ発電機2でエンジン1を駆動してエンジン1に負のエンジントルクを発生させるリタード放電が電力消費運転として実行される。このような方法によれば、満充電の場合でもGPFの過熱を抑制しつつバッテリ6を放電させることができる。また、電力消費運転として行われるリタード放電では回生により得られる減速度がモータリングで放電を行う場合よりも絶対値で小さくなる。つまりこの場合は、回生抑制を行わないと満充電前後の減速度の差分が大きくなり易い。このためこの場合は、意図しない減速度の変化を抑制する意義が大きい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0082】
例えば、電力消費運転はアイドル運転中のエンジン1を発電機2で駆動してエンジン1に負のトルクを発生させる負トルク運転であってもよい。