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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241119BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241119BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20241119BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J29/00 Z
B41J29/38 350
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024014719
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2020110830の分割
【原出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2024032965
(43)【公開日】2024-03-12
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 貞明
(72)【発明者】
【氏名】野津 知広
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156244(JP,A)
【文献】特開2017-065155(JP,A)
【文献】特開2010-058463(JP,A)
【文献】特開2003-191492(JP,A)
【文献】特開2007-044957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容した収容体から導入されたインクを吐出する吐出ヘッドを備え、被印刷媒体に前記インクにより印刷を行う印刷部と、
前記インクの消費を伴う、前記吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記メンテナンス部を制御する制御モードとして、
手動操作に基づくメンテナンス指示信号の取得を契機に、前記メンテナンス部による前記メンテナンスを実行する手動メンテナンスモードと、
所定のメンテナンス実行条件が満たされたことを契機に、前記メンテナンス部による前記メンテナンスを自動的に実行する自動メンテナンスモードと
を備える印刷装置であって、
前記制御部は、
取得される所定の制御情報に応じて、前記手動メンテナンスモード若しくは前記自動メンテナンスモードを選択的に実行可能な第1運転態様から、前記手動メンテナンスモードを実行することなく前記自動メンテナンスモードを実行する第2運転態様へ切り替わる、第1運転切替処理を実行する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第1運転切替処理では、
前記制御情報として、外部からの切替信号が前記制御部へ入力された場合に、前記第1運転態様から前記第2運転態様へと切り替わる
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1運転切替処理では、
前記制御情報は所定の契約情報を含む、
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、
前記吐出ヘッドからの前記インクの吐出不良の有無を、所定周期ごとに検知する不良検知処理
を実行し、
前記自動メンテナンスモードでは、前記不良検知処理で前記吐出不良が検知されたことを契機に、前記メンテナンス部による前記メンテナンスを実行する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記制御モードとして、さらに、
前記第2運転態様へと切り替わった状態において所定の例外条件が満たされたことを契機に、前記手動操作に基づく前記メンテナンスを許容する、第3運転態様に切り替わる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ヘッドのメンテナンスを行う機能を備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、所定の条件をみたしたときに自動でメンテナンスが実行される自動メンテナンスの実行機能と、印刷装置のユーザからのメンテナンスの指令に基づいて手動で実行される手動メンテナンスの実行機能と、を備えた印刷装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-12339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが自ら印刷装置を購入し、購入した印刷装置に対しインクカートリッジを装着して使用する、いわゆるリテールビジネスの態様では、インクカートリッジ内のインクはユーザの所有物である。したがって、ユーザの意思により手動メンテナンスが実行され、インクカートリッジ内のインクが消費されたとしても、問題はない。ユーザにとっては、自らの意図通りのタイミングでメンテナンスを実行できることで、高い利便性を得ることができる。
【0005】
一方、近年、印刷装置を使用するユーザが、印刷装置を所有するサービス業者に対して印刷内容に応じた課金料金を支払う、サブスクリプション契約が結ばれる場合がある。このような、いわゆるサブスクリプションビジネスの態様では、印刷装置に装着されているインクカートリッジ内のインクは、実質的にはサービス業者の所有物である。このため、仮にユーザの意思により手動メンテナンスが実行され、インクカートリッジ内のインクが消費されると、サービス業者の利益を損なう恐れがある。
【0006】
特許文献1に記載の印刷装置では、上記の点に特に配慮されておらず、サブスクリプションビジネスの態様でユーザによる手動メンテナンスが実行された場合に、サービス業者の不利益が生じ、サービス業者にとっての利便性が低下する恐れがあるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、使用されるビジネス態様に応じた制御により、ユーザ及びサービス業者の利便性をともに確保できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明は、インクを収容した収容体が着脱可能に装着される装着部と、前記収容体から導入されたインクを吐出する吐出ヘッドを備え、被印刷媒体に前記インクにより印刷を行う印刷部と、前記インクの消費を伴う、前記吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記メンテナンス部を制御する制御モードとして、手動操作に基づくメンテナンス指示信号の取得を契機に、前記メンテナンス部による前記メンテナンスを実行する手動メンテナンスモードと、所定のメンテナンス実行条件が満たされたことを契機に、前記メンテナンス部による前記メンテナンスを自動的に実行する自動メンテナンスモードとを備える印刷装置であって、前記制御部は、取得される所定の制御情報に応じて、前記手動メンテナンスモード若しくは前記自動メンテナンスモードを選択的に実行可能な第1運転態様から、前記手動メンテナンスモードを実行することなく前記自動メンテナンスモードを実行する第2運転態様へ切り替わる、第1運転切替処理を実行することを特徴とする。
【0009】
本願発明の印刷装置においては、メンテナンス部により、インクの消費を伴う吐出ヘッドのメンテナンスが実行される。制御部は、メンテナンス部を制御する制御モードとして、手動メンテナンスモードと、自動メンテナンスモードと、を備える。自動メンテナンスモードでは、所定のメンテナンス実行条件が満たされた場合に限りメンテナンスが実行される一方、手動メンテナンスモードでは、ユーザの手動操作に基づきメンテナンス指示信号が取得されたら、メンテナンスが実行される。
【0010】
制御部は、リテールビジネス及びサブスクリプションビジネスの両方のビジネス態様の種類に対応するために、第1運転切替処理を実行する。すなわち、第1運転態様にて、手動メンテナンスモード若しくは自動メンテナンスモードが選択的に実行されている状態で、所定の制御情報を取得すると、第2運転態様へと切り替わる。この第2運転態様では、手動メンテナンスモードを実行することなく、自動メンテナンスモードが実行される。
【0011】
これにより、例えば、サブスクリプションビジネスにおいて当該印刷装置が使用される場合には、第2運転態様とすることで、一律、制御モードが自動メンテナンスモードに設定される。言い換えれば、手動メンテナンスモードによるメンテナンス機能が発現しないようにする。この結果、サブスクリプションビジネスの態様でユーザによる手動メンテナンスが実行された場合に生じうる、前述したサービス業者の不利益を回避し、サービス業者にとっての利便性を向上することができる。
【0012】
また、例えば、リテールビジネスにおいて当該印刷装置が使用される場合には、所定の制御情報は取得されず第1運転態様のままとすることで、特に制限なく、自動メンテナンスモード及び手動メンテナンスモードを適宜に実行することができる。この結果、ユーザが手動メンテナンスを実行したい場合にはその意図通りのメンテナンスを行う一方、所定のメンテナンス実行条件に基づき自動的に実行したい場合には自動メンテナンスモードとすることで、ユーザにとっての利便性を確保することができる。
【0013】
以上のように、本願発明によれば、使用されるビジネス態様に応じた制御により、ユーザ及びサービス業者の利便性をともに確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用されるビジネス態様に応じた制御により、ユーザ及びサービス業者の利便性をともに確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態によるプリンタの概略構成図である。
図2】プリンタの電気的構成を示す機能ブロック図である。
図3】メンテナンスを行うためにCPUが実行する制御手順を表すフローチャートである。
図4】運転態様の切替を行うためにCPUが実行する制御手順を表すフローチャートである。である。
図5】サービス業者の操作により運転態様の切替を行う変形例において、CPUが実行する制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態は、ユーザが自ら印刷装置を購入しインクカートリッジを装着し使用するリテールビジネス、及び、ユーザが印刷装置を所有するサービス業者に対し課金料金を支払うサブスクリプションビジネス、のいずれの態様でも使用可能なプリンタの実施形態である。
【0017】
<プリンタの全体構成>
上記ユーザが利用するプリンタ1を、図1及び図2により説明する。なお、このプリンタ1は、例えば、上記印刷サービスを提供する事業者によって保有される。図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、キャリッジ2と、インクジェットヘッド3と、プラテン4と、搬送ローラ5,6と、フラッシングフォーム7と、パージングユニット8と、等を備えている。パージングユニット8のある側がプリンタ1の右側であり、フラッシングフォーム7のある側がプリンタ1の左側であり、搬送ローラ6のある側がプリンタ1の前側であり、搬送ローラ5のある側がプリンタ1の後側である。また、左右方向が走査方向であり、後側から前側へ向かう方向が搬送方向である。なお、プリンタ1が印刷装置の一例であり、キャリッジ2及びインクジェットヘッド3が印刷部の一例であり、インクジェットヘッド3が吐出ヘッドの一例である。
【0018】
キャリッジ2は、図示しないベルト等を介しキャリッジモータ56(後述の図2参照)に接続されており、キャリッジモータ56が駆動することでガイドレール11,12に沿って走査方向に移動する。
【0019】
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されている。インクジェットヘッド3は、流路ユニット13と、アクチュエータ14と、を有する。
【0020】
流路ユニット13には、その下面であるノズル面13aに形成された複数のノズル10を含むインク流路が形成されている。複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面13aには、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、一例として、右側から左側に向かって順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0021】
アクチュエータ14は、例えば複数の電極を備えており、各電極に対し駆動パルス信号が与えられることにより、各ノズル10内のインクに対し個別に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
【0022】
インクジェットヘッド3は、4本のチューブ31と接続されている。4本のチューブ31は、プリンタ1の右前端部において走査方向に並んだ4つのインクカートリッジ32とそれぞれ接続されている。4つのインクカートリッジ32に貯留されたブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクがチューブ31を介してインクジェットヘッド3に供給される。4つのインクカートリッジ32は、それぞれ、カートリッジホルダ35に対し、着脱可能に装着されている。インクカートリッジ32が収容体の一例であり、カートリッジホルダ35が装着部の一例である。
【0023】
プラテン4は、インクジェットヘッド3の下方に位置し、印刷時にノズル面13aと対向する。プラテン4は、走査方向に記録用紙Pの全幅にわたって延び、記録用紙Pを下方から支持する。記録用紙Pが被印刷媒体の一例である。搬送ローラ5,6は、それぞれ、搬送方向におけるプラテン4の上流側及び下流側に位置している。搬送ローラ5,6は、図示しないギヤ等を介し搬送モータ57(後述の図2参照)に接続され、搬送モータ57の駆動により回転して記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
【0024】
上記構成により、プリンタ1は、搬送ローラ5,6により記録用紙Pを所定距離ずつ搬送する毎に、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド3の複数のノズル10からインクを吐出させることによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0025】
<フラッシングフォーム>
フラッシングフォーム7は、スポンジなどインクを吸収可能なもので構成され、プラテン4よりも左側に位置している。これに対応して、プリンタ1では、後述の制御装置50の制御により、キャリッジ2を、ノズル面13aがフラッシングフォーム7と対向するフラッシング位置まで移動可能である。これにより、プリンタ1は、後述のフラッシング動作を実行可能である。
【0026】
<パージングユニット>
パージングユニット8は、キャップ21と、切換ユニット22と、吸引ポンプ23と、廃液タンク24と、を備えている。
【0027】
キャップ21は、プラテン4よりも右側に位置している。これに対応して、プリンタ1では、キャリッジ2をノズル面13aがキャップ21と対向するメンテナンス位置まで移動できるようになっている。キャップ21は、キャップ部21aと、キャップ部21aの左側に並んだキャップ部21bと、を有している。キャリッジ2を上記メンテナンス位置に位置させた状態では、最も右側のノズル列9を形成する複数のノズル10がキャップ部21aと対向し、左側3列のノズル列9を形成する複数のノズル10がキャップ部21bと対向する。
【0028】
またキャップ21は、キャップ昇降装置58(後述の図2参照)により昇降可能、すなわち上記ノズル面13aと交差する交差方向に移動可能となっている。そして、キャリッジ2が上記メンテナンス位置に位置している状態でキャップ21を上昇させると、キャップ21がノズル面13aに密着して、複数のノズル10がキャップ21に覆われる。より詳細には、最も右側のノズル列9を形成する複数のノズル10がキャップ部21aに覆われ、左側3列のノズル列9を形成する複数のノズル10がキャップ部21bに覆われる。
なお、以下、この状態を「キャッピング状態」と称することがある。このように、キャップ昇降装置58は、キャップ21を、キャッピング状態とするためのキャッピング位置と、キャッピング位置よりも下方のアンキャッピング位置との間で昇降させることができる。
【0029】
なお、キャップ21は、ノズル面13aに密着して複数のノズル10を覆う構成には限られない。例えば、流路ユニット13が、ノズル10を保護するためにノズル面13aを取り囲むように配置されたフレームを有する場合に、キャップ21がこのフレームに密着することによってノズル10を覆うようになっていてもよい。
【0030】
切換ユニット22は、チューブ29a,29bを介して、キャップ部21a,21bと接続されている。また、切換ユニット22は、チューブ29cを介して吸引ポンプ23と接続されている。切換ユニット22は、キャップ部21a,21bと吸引ポンプ23との接続を切り換える。吸引ポンプ23は、チューブポンプなどであり、切換ユニット22と反対側においてチューブ29dを介し廃液タンク24と接続されている。
【0031】
なお、パージングユニット8及びフラッシングフォーム7がメンテナンス部の一例である。
【0032】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について、図2により説明する。プリンタ1の動作は、制御装置50によって制御されている。
【0033】
制御装置50は、CPU51と、プリンタ1の制御用プログラム等が記憶されたROM52と、一時的な処理データ等を記憶するRAM53と、電源OFFされても保持すべきデータ等を記憶するEEPROM54と、特定用途向け集積回路であるASIC(application specific integrated circuit)55と、等を備える。制御装置50が制御部の一例であり、EEPROM54が記憶部の一例である。制御装置50は、これらの構成を備えることにより、キャリッジモータ56、アクチュエータ14、搬送モータ57、キャップ昇降装置58、切換ユニット22、吸引ポンプ23などの制御を行う。
【0034】
また制御装置50は、インクジェットヘッド3のノズル10の目詰まり等によるインク吐出状態を検知する、不良ノズル検出部84と、通信部85と、を備えている。
【0035】
不良ノズル検出部84は、インクジェットヘッド3に対向可能な位置に配置される吐出検知部64に接続されている。吐出検知部64は、例えば、インク吸収材と電気的に導通する導電材を備え、導電材を流れた電気信号が、不良ノズル検出部84にて検出可能に構成される。不良ノズル検出部84は、インクジェットヘッド3の各ノズル10から帯電されたインク滴を吐出させ、帯電されたインク滴が吸収材に着弾する際に生じる電流変化の信号を検出する。そして、この信号値が所定の閾値以下の場合に、不良ノズル検出部84は、当該ノズル10のインク吐出が規定の吐出量に達していないこと若しくは吐出されていないこと、すなわち当該ノズル10が吐出不良であることを検出することができる。
【0036】
なお、ノズル10の吐出不良の検知は、不良ノズル検出部84による上記の手法に限られない。すなわち、キャリッジモータ56及び搬送ローラ5,6を制御してインクジェットヘッド3に適宜のテストパターンを印刷させ、CCDもしくはフォトセンサー等によりそのテストパターンを走査し、どのノズル10が吐出不良となっているかを検出してもよい。
【0037】
通信部85は、カートリッジホルダ35に装着されたインクカートリッジ32との間で適宜の手法により通信を行う。すなわち、前述したように、本実施形態のプリンタ1は、リテールビジネス及びサブスクリプションビジネスのいずれにも使用される。これに対応して、インクカートリッジ32にはそれぞれカートリッジメモリ65が備えられており、このカートリッジメモリ65には、当該インクカートリッジ32がリテールビジネス用であるかサブスクリプションビジネス用であるか、を表す、カートリッジ種類情報が記憶されている。通信部85は、上記通信により、各インクカートリッジ32のカートリッジメモリ65から上記カートリッジ種類情報を取得することができる。
【0038】
なお、上記リテールビジネス用のインクカートリッジ32は、言い換えればユーザ自身により購入される対象であるインクカートリッジであり、第1収容体の一例である。そのインクカートリッジ32のカートリッジメモリ65は第1記憶部の一例であり、記憶されている、上記リテールビジネス用であることを表す上記カートリッジ種類情報が第1種類情報の一例である。
また、上記サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32は、言い換えればユーザ自身により購入される対象でないインクカートリッジであり、第2収容体の一例である。そのインクカートリッジ32のカートリッジメモリ65は第2記憶部の一例であり、記憶されている、上記サブスクリプションビジネス用であることを表す上記カートリッジ種類情報が第2種類情報の一例である。
【0039】
なお、図2では、CPU51を1つだけ図示しているが、制御装置50がCPU51を複数備え、それら複数のCPU51が分担して処理を行ってもよい。また、図2では、ASIC55を1つだけ図示しているが、制御装置50がASIC55を複数備え、それら複数のASIC55が分担して処理を行ってもよい。
【0040】
<フラッシング動作>
次に、上記メンテナンスの一例として実行される、フラッシング動作について説明する。
すなわち、プリンタ1は、制御装置50の制御により、キャリッジ2をフラッシング位置に位置させた状態で、アクチュエータ14を駆動して複数のノズル10からインクを吐出させることにより、ノズル10内の増粘したインクを排出させるフラッシングを行う。
具体的には、以下のとおりである。
【0041】
すなわち、プリンタ1は、待機時に上記キャッピング状態とされることで、ノズル10内のインク中の水分の蒸発によるノズル10内のインクの蒸発率の上昇が抑えられている。そして、印刷が実行される際には、制御装置50はまず、キャップ昇降装置58を制御してキャップ21を降下させ、キャリッジモータ56を制御してキャリッジ2をフラッシング位置に移動させた状態で、アクチュエータ14を制御して、印刷前フラッシングを行う。印刷前フラッシングの後、制御装置50は、キャリッジモータ56を制御しキャリッジ2をノズル面13aが記録用紙Pと対向する位置で走査方向に移動させつつ、アクチュエータを制御して、ノズル10からインクを吐出させて印刷を行う。また、印刷の完了後、制御装置50は、キャリッジモータ56を制御してキャリッジをメンテナンス位置まで移動させ、キャップ昇降装置58を制御してキャップ21を上昇させることにより、キャッピング状態に戻す。
【0042】
<パージング動作>
次に、上記メンテナンスの他の例として実行される、パージングユニット8によるパージング動作について説明する。
すなわち、プリンタ1は、上記キャッピング状態で、制御装置50の制御により、切換ユニット22でキャップ部21aと吸引ポンプ23とを接続し、吸引ポンプ23を駆動する。これにより、最も右側のノズル列9を形成する複数のノズル10から流路ユニット13内のブラックインクを排出する、ブラックインクについての吸引パージを実行する。
【0043】
同様に、プリンタ1は、上記キャッピング状態で、制御装置50の制御により、切換ユニット22でキャップ部21bと吸引ポンプ23とを接続し、吸引ポンプ23を駆動させる。これにより、左側3列のノズル列9を形成する複数のノズル10から、流路ユニット13内のイエローインク、シアンインク、マゼンタインクを排出する、カラーインクについての吸引パージを実行する。
【0044】
なお、上記吸引パージによって排出されたインクは、廃液タンク24に貯留される。本実施形態では、以上のように、インクの消費を伴うメンテナンスの例として、パージングとフラッシングとが実行される。なお、インクの消費を伴うものであれば、他のメンテナンスを行うようにしてもよい。
【0045】
<メンテナンスの実行>
本実施形態においては、プリンタ1の制御装置50は、メンテナンスに係わる制御モードとして、手動メンテナンスモードと、自動メンテナンスモードと、の2つを備えている。
【0046】
手動メンテナンスモードでは、ユーザ又はその他の者の手動操作に基づくメンテナンス指示信号の取得を契機に、上記メンテナンスが実行される。
自動メンテナンスモードでは、所定のメンテナンス実行条件が満たされたことを契機に、上記メンテナンスが自動的に実行される。この例では、予め定められた周期毎、例えば半月毎に、ノズル10内のインクの増粘の程度が適宜の手法で判断され、メンテナンスが必要と判断された場合に、上記フラッシング動作又はパージング動作を含むメンテナンスが実行される。
【0047】
<メンテナンス実行>
上記手動メンテナンスモード又は自動メンテナンスモードによりメンテナンスを行うためにCPU51が実行する制御手順を、図3に示すフローチャートにより説明する。この制御手順は、上記ROM52に記憶された複数のプログラムに含まれるメンテナンス処理プログラムにより実行され、その実行によって本実施形態による以下のメンテナンス方法が実現される。
【0048】
まずS10で、予め定められたメンテナンスチェックタイミングが到来したか否かが判定される。メンテナンスチェックタイミングが到来した場合はYes判定され、S20に移行する。
S20では、前述した手法により、不良ノズル検出部84により、吐出検知部64を介したノズル10の吐出不良の有無の検知が行われる。
【0049】
その後、S30で、前述のメンテナンス動作が必要か、言い換えればいずれかのノズル10において吐出不良が発生していたか否かが判定される。なお、S20及びS30で実行する処理が不良検知処理の一例である。メンテナンス動作が必要であればYes判定され、S40へ移行する。
S40では、上記パージングユニット8によるパージング動作若しくは上記フラッシングフォーム7におけるフラッシング動作、等のメンテナンスが実行される。その後、後述のS50へ移行する。
【0050】
一方、S30でメンテナンス動作が必要でない、すなわちいずれのノズル10において吐出不良が発生していない場合はNo判定され、S50へ移行する。
【0051】
S50では、この時点での現在時刻に、予め定められたメンテナンスチェック間隔を加えることで新たなメンテナンスチェックタイミングとし、このフローを終了する。なお、メンテナンスチェック間隔は、前述した予め定められた周期、例えば半月である。
【0052】
以上述べた、S10がYes判定されたときにS20~S50を実行する制御が、前述の自動メンテナンスモードの一例に相当している。
【0053】
一方、S10で上記メンテナンスチェックタイミングが到来していない場合はNo判定され、S60に移行する。
S60では、前述した、ユーザ又はその他の者の手動操作があったか、具体的には、当該手動操作に基づくメンテナンス指示信号が入力されたか否かが判定される。手動操作がなければNo判定されて上記S10に戻る。手動操作がなされていればYes判定され、S70に移行する。
【0054】
S70では、インクカートリッジ32が上記サブスクリプションビジネス用であることを表すサブスクリプションフラグFが0であるか否かが判定される。この時点でカートリッジホルダ35に装着されているインクカートリッジ32が、サブスクリプション用ビジネス用でありF=1であった場合は、No判定されて上記S10に戻る。装着されているインクカートリッジ32がリテール用ビジネス用でありF=0であった場合はYes判定され、S80に移行する。
【0055】
S80では、上記S40と同様、上記パージングユニット8によるパージング動作若しくは上記フラッシングフォーム7におけるフラッシング動作、等のメンテナンスが実行される。その後、このフローを終了する。
以上述べた、S60及びS70がYes判定されたときにS80を実行する制御が、前述の手動メンテナンスモードの一例に相当している。
【0056】
<運転態様の切替>
一方、本実施形態では、最大の特徴として、上記装着されたインクカートリッジ32がリテールビジネス用であるかサブスクリプションビジネス用であるかに対応して、上記手動メンテナンスモード及び自動メンテナンスモードに係わる運転態様が切り替えられる。
詳細には、上記手動メンテナンスモード若しくは上記自動メンテナンスモードを選択的に実行可能な第1運転態様と、上記手動メンテナンスモードを実行することなく上記自動メンテナンスモードのみを実行する第2運転態様と、の間で運転態様が切り替えられる。
【0057】
以下、上記運転態様の切替を実行するために上記CPU51が実行する制御手順を、図4に示すフローチャートにより説明する。この制御手順は、図3のフローと同様、上記ROM52に記憶された複数のプログラムに含まれる切替処理プログラムにより実行され、その実行によって本実施形態による以下の切替方法が実現される。
【0058】
まずS110で、適宜の公知の手法、若しくは、前述のカートリッジメモリ65との通信結果に基づき、新たにインクカートリッジ32がカートリッジホルダ35に装着されたか否かが判定される。新たなインクカートリッジ32が装着されたらYes判定され、S120へ移行する。
【0059】
S120では、前述のサブスクリプションフラグFが、インクカートリッジ32が上記サブスクリプションビジネス用ではなくリテールビジネス用であることを表すF=0とされる。このF=0の状態では、図3に示したように、メンテナンスタイミングが到来しS10がYes判定された時はS20~S40で自動メンテナンスモードが実行される一方、それ以外のタイミングで手動操作があった時はS80で手動メンテナンスモードが実行される。すなわち、手動メンテナンスモード若しくは自動メンテナンスモードが選択的に実行される第1運転態様となる。
【0060】
その後、S130で、上記通信部85を介した通信により、インクカートリッジ32のカートリッジメモリ65から、当該インクカートリッジ32がサブスクリプションビジネス用であるかリテールビジネス用であるかを表す、種類情報が取得される。このS130で実行する処理が種類取得処理の一例である。
【0061】
そして、S140で、上記S130で取得された種類情報に基づき、当該インクカートリッジ32が所定種類、この例ではサブスクリプションビジネス用であるか否か、が判断される。このS140で実行する処理が種類判断処理の一例である。S130で取得された種類情報が、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジではなくリテールビジネス用のインクカートリッジであった場合はS140がNo判定され、S150へ移行する。
【0062】
S150では、上記サブスクリプションフラグFの値が0とされる。すなわち、この時点で既にF=0となっていた場合はそのままF=0の値が維持され、この時点でF=1であった場合はこのS150でF=1からF=0へと切り替えられる。その後、後述のS190へと移行する。
【0063】
一方、上記S140において、前述のS130で取得された種類情報が、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジであった場合はS140がYes判定され、S160へ移行する。
【0064】
S160では、インクカートリッジ32がサブスクリプションビジネス用であったことに対応し、当該サブスクリプションビジネスに対応し、当該ユーザの使用に対して事前に締結された契約情報がEEPROM54内に記憶されているか否か、が判断される。すなわち、このプリンタ1がサブスクリプションビジネスで使用される場合は、通常、プリンタ1の使用者であるユーザと、プリンタ1の所有者であるサービス業者との間で、課金方法等の内容について事前に契約が締結されるのが一般的である。この場合、本実施形態では、そのように予め締結された契約内容がEEPROM54に記憶されており、このS160ではそのようなEEPROM54内の記憶内容に基づき、上記判断が行われる。このS160で実行する処理が契約判断処理の一例である。
【0065】
EEPROM54内に上記ユーザの使用に対応した契約情報が記憶されていなければNo判定され、上記S150へと移行する。EEPROM54内に上記ユーザの使用に対応した契約情報が記憶されていればYes判定され、S170へと移行する。
【0066】
S170では、上記サブスクリプションフラグFの値が1とされる。この時点でF=0であった場合はこのS170でF=0からF=1へと切り替えられ、この時点で既にF=1となっていた場合は前述同様にそのままF=1の値が維持される。このF=1の状態は、図3に示したようにメンテナンスタイミングが到来しS10がYes判定されたらS20~S40で自動メンテナンスモードが実行されるが、それ以外のタイミングで手動操作されてもS70でNo判定され手動メンテナンスモードは実行されない。すなわち、前述の第1運転態様から、手動メンテナンスモードが実行されることなく自動メンテナンスモードが実行される第2運転態様へと、切り替えられることとなる。このS170で実行する処理が第1運転切替処理の一例である。その後、S180へと移行する。
【0067】
S180では、上述のようにしてS170にて自動メンテナンスモードのみが実行される第2運転態様に切り替えられた後、例外的に手動メンテナンスモードも実行可能とするための、例外条件が満たされた否か、が判定される。本実施形態では、この例外条件として、例えば以下の3つの場合が想定されている。
【0068】
(i)サービス業者自身による遠隔手動操作
すなわち例えば、プリンタ1に対しネットワーク経由でアクセスする場合に、ユーザ用のインタフェースと、サービス業者専用のインタフェースとが、明確に区別して設けられている場合がある。このような場合に、サービス業者が上記専用のインタフェースを介してメンテナンス実行の遠隔手動操作をした場合、プリンタ1のCPU51によりこれが例外条件として認められ、後述のようにこの遠隔手動操作に基づく手動メンテナンスモードが実行可能となる。
【0069】
(ii)サービス業者によるユーザ手動操作の許容
すなわち例えば、サービス業者の営業時間外・対応可能な時間外である夜間帯等に限定して、ユーザに対し、時間帯及び回数等を指定して手動操作を許容する場合である。この場合、サービス業者が上記同様の専用インタフェースを介し、上記許容のための適宜の設定を行う。これにより、当該時間帯においてユーザがメンテナンス実行の手動操作をした場合、上記指定された回数以内であれば、プリンタ1のCPU51により当該ユーザの手動操作は上記例外条件として認められる。これにより、後述のようにこのユーザの手動操作に基づく手動メンテナンスモードが実行可能となる。
【0070】
(iii)サービス業者による直接手動操作
すなわち例えば、サービス業者がプリンタ1に対し、上記第1運転態様の解除のためにあらかじめ定められた手動操作、例えば適宜のキー操作、隠しコードの入力、等を直接行う場合である。このような操作をした場合、プリンタ1のCPU51によりこれが例外条件として認められ、後述のようにこの手動操作に基づく手動メンテナンスモードが実行可能となる。
【0071】
上記のような例外条件が満たされた場合、S180ではYes判定され、前述のS150へと移行する。これにより、上記サブスクリプションフラグFの値がF=1からF=0へと切り替えられる。このS180→S150の流れにより、手動メンテナンスモードが実行されることなく自動メンテナンスモードが実行される第2運転態様から、手動メンテナンスモード若しくは自動メンテナンスモードが選択的に実行される第3運転態様へと、切り替えられることになる。
【0072】
一方、上記S180において、上記のような例外条件が満たされない場合には、S190へと移行する。S190では、上記S110と同様の手法により、カートリッジホルダ35に装着されていたインクカートリッジ32が取り外されたか否かが判定される。
【0073】
インクカートリッジ32が装着されたままの場合はS190がNo判定され、前述のS140に戻る。インクカートリッジ32が取り外されたらS190はYes判定され、前述のS110へ移行し、その後新たにカートリッジホルダ35にインクカートリッジ32が装着されたらS110がYes判定され、S120で上記サブスクリプションフラグFの値がF=0に設定される。この結果、上記F=1で上記第2運転態様の状態でサブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32が取り外された後、新たにリテールビジネス用のインクカートリッジ32が装着されると、上記第2運転態様から第1運転態様へと切り替えられることとなる。このときにS120で実行する処理が第2運転切替処理の一例である。
【0074】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のプリンタ1においては、リテールビジネス及びサブスクリプションビジネスの両方のビジネス態様の種類に対応するために、運転態様の切替処理が実行される。すなわち、まずサブスクリプションフラグF=0とされた状態の第1運転態様で、手動メンテナンスモード若しくは自動メンテナンスモードが選択的に実行されている状態で、所定の制御情報が取得されると第2運転態様へと切り替わる。なおこの制御情報は、上述の例では、通信部85を介した通信によりインクカートリッジ32のカートリッジメモリ65から取得される、当該インクカートリッジ32がサブスクリプションビジネス用であるかリテールビジネス用であるかを表す種類情報である。上記第2運転態様では、手動メンテナンスモードが実行されることなく、自動メンテナンスモードが実行される。
【0075】
これにより、例えば、サブスクリプションビジネスにおいて当該プリンタ1が使用される場合には、上述の第2運転態様とすることで、一律、制御モードが自動メンテナンスモードに設定される。言い換えれば、手動メンテナンスモードによるメンテナンス機能が発現しないようにする。この結果、サブスクリプションビジネスの態様でユーザによる手動メンテナンスが実行された場合に生じうる、前述したサービス業者の不利益を回避し、サービス業者にとっての利便性を向上することができる。
【0076】
また、例えば、リテールビジネスにおいて当該プリンタ1が使用される場合には、上述の第1運転態様のままとすることで、特に制限なく、自動メンテナンスモード及び手動メンテナンスモードを適宜に実行することができる。この結果、ユーザが手動メンテナンスを実行したい場合にはその意図通りのメンテナンスを行う一方、所定のメンテナンス実行条件に基づき自動的に実行したい場合には自動メンテナンスモードとすることで、ユーザにとっての利便性を確保することができる。
【0077】
以上のように、本実施形態によれば、使用されるビジネス態様に応じた制御により、ユーザ及びサービス業者の利便性をともに確保することができる。
【0078】
また、本実施形態では特に、CPU51により、リテールビジネス及びサブスクリプションビジネスの両方のビジネス態様の種類に対応するために、S130において種類情報取得処理がさらに実行される。S130では、カートリッジホルダ35に装着されたインクカートリッジ32の種類情報が、上記制御情報として取得される。取得された種類情報があらかじめ定められた所定種類、上記の例ではサブスクリプションビジネス用であった場合には、S170de上記第1運転態様から第2運転態様へと切り替えられることで、制御モードが、一律、自動メンテナンスモードに限定的に設定される。
【0079】
これにより、装着されたインクカートリッジ32が、サブスクリプションビジネスに対応する種類であった場合には、一律、制御モードが自動メンテナンスモードに設定される。言い換えれば、手動メンテナンスモードによるメンテナンス機能が発現しないようにする。この結果、サブスクリプションビジネスの態様でユーザによる手動メンテナンスが実行された場合に生じうる、前述したサービス業者の不利益を確実に回避することができる。
また、例えば、装着されたインクカートリッジ32が、リテールビジネスに対応する種類であった場合には、S150で第1運転態様のままとすることで、制御モードを、特に制限なく、自動メンテナンスモード及び手動メンテナンスモードに適宜に設定することができる。この結果、ユーザが手動メンテナンスを実行したい場合にはその意図通りのメンテナンスを行う一方、所定のメンテナンス実行条件に基づき自動的に実行したい場合には自動メンテナンスモードとすることができる。
【0080】
また、本実施形態では特に、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32が装着された場合には、S130で上記サブスクリプションビジネス用であることを表す種類情報が取得されたと判断され、第2運転態様へと切り替えられる。これにより、サブスクリプションビジネスに対応するインクカートリッジ32が装着された場合に、確実に、手動メンテナンスモードによるメンテナンス機能が発現しないようにすることができる。
【0081】
また、本実施形態では特に、通信部85が、リテールビジネス用のインクカートリッジ32又はサブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32と通信を実行可能に構成されている。リテールビジネス用のインクカートリッジ32ではカートリッジメモリ65に当該リテールビジネス用の種類情報が記憶され、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32ではカートリッジメモリ65に当該サブスクリプションビジネス用の種類情報が記憶されている。カートリッジホルダ35にリテールビジネス用のインクカートリッジ32又はサブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32が装着されると、それぞれのカートリッジメモリ65から対応する種類情報が読みだされて通信により送信される。これにより、S130において、その送信された種類情報が通信部85により取得される。このように、本実施形態においては、カートリッジホルダ35に装着されたインクカートリッジ32から自動的にその種類情報が取得されるので、インクカートリッジ32の種類の管理を容易に行うことができる。
【0082】
また、本実施形態では特に、サブスクリプションビジネスの場合にユーザとサービス業者との間で締結される契約内容がEEPROM54に記憶されている。そして、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32が装着され、S140においてサブスクリプションビジネスに対応する種類であると判断された場合には、S160において、そのサブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32に関する契約情報がEEPROM54に記憶されているか否か、が判断される。そして、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32に関する契約情報が記憶されていた場合に限り、第1運転態様から第2運転態様へと切り替えられる。
【0083】
以上の結果、インクカートリッジ32がサブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32であるかのS140での1次判断に加え、そのインクカートリッジ32について契約が結ばれているかの2次判断がS160で行われることとなる。そして、これら2つの判断が満たされた場合に限り、制御モードが自動メンテナンスモードに切り替えられる。この結果、サブスクリプションビジネスの契約がされていない場合に、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32が誤って使用されて手動メンテナンスモードによるメンテナンス動作が動作しなくなるのを防止することができる。
【0084】
また、本実施形態では特に、インクジェットヘッド3におけるインクの吐出不良の有無が所定周期ごとに検知され、自動メンテナンスモードにおいては吐出不良が検知された場合に限りS40でメンテナンスが実行される。これにより、吐出不良が特に生じていない場合には、自動メンテナンスモードとなっていてもメンテナンスが行われない。この結果、不要なメンテナンスの実行によりインクを無駄に消費するのを防止することができる。
【0085】
前述のようにしてサブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32が装着され自動メンテナンスモードによる制御が行われているとき、例えばサービス業者の営業時間外の緊急時等、何らかの理由で例外的に手動操作によるメンテナンスを実行可能としたほうが好ましい場合があり得る。そこで本実施形態においては、S180において前述の所定の例外条件(i)(ii)(iii)等が満たされると、手動操作に基づくメンテナンスが許容される上記第3運転態様に切り替えられる。これにより、ユーザ及びサービス業者の利便性をさらに向上することができる。
【0086】
また、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32が装着され自動メンテナンスモードが実行されているとき、ユーザの都合によりインクカートリッジ32が取り外され、わりにリテールビジネス用のインクカートリッジ32が装着される場合があり得る。
本実施形態ではこのような場合、新たに装着されたリテールビジネス用のインクカートリッジ32の種類情報がS130で取得され、その種類情報に基づく判断の結果、S140を経てS150で第2運転態様から第1運転態様へと変更される。これにより、リテールビジネス用のインクカートリッジ32の装着状態からサブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32の装着状態へ切り替わった場合も、適切な制御を行うことができる。この結果、ユーザ及びサービス業者の利便性をさらに向上することができる。
【0087】
<変形例>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0088】
(1)サブスクリプション用のインクカートリッジの詳細内容に応じた制御
すなわち、図4のS130で種類情報が取得され、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32であった場合に、さらにその詳細な種類等に応じて、図3のS20で実行される吐出不良の検知の態様を変える場合である。例えば、以下の3つの手法がある。
【0089】
(a)インク滴の大きさの制御
前述のように吐出不良の検知の際には、不良ノズル検出部84により、帯電させたインク滴が吐出されるが、その際のインク滴の大きさをインクカートリッジ32の種類によって変化させることができる。
【0090】
すなわち、上記アクチュエータ14においては、常態においては、上記電極を正の所定電位とすることでインクが貯留される圧力室側が凸となるように湾曲させておく。そして、適切なタイミングで電極をグランド電位とすることで圧力室の容積を拡大して圧力波を生じさせた後、圧力波が正圧となるタイミングで再び正の所定電位とすることで圧力室内のインクに圧力が付与される。本変形例では、例えばこのようないわゆる引き打ちの手法により、比較的小さな駆動電圧で大きなインク吐出速度を得ることができる。そして、このときに電極に与えられる駆動パルス信号のパターンが予め複数種類用意され、制御装置50内の適宜に設けたパルス波形データ記憶部(図示省略)に記憶されている。駆動パルス信号の各パターンは、ハイレベル及びローレベルを備えたパルスにより構成されており、ハイレベル期間及びローレベル期間が互いに異なっている。
【0091】
サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32において、例えば一定期間内における印刷枚数が比較的多い契約が結ばれている場合には、インクカートリッジ32内のインクの増粘度が低いことが予想される。逆に例えば一定期間内における印刷枚数が比較的少ない契約が結ばれている場合には、インクの増粘度が高くなることが予想される。
同一の駆動パルス信号を用いた場合でもインクの増粘の高低により実際に吐出されるインク滴が変わることから、本変形例では、上記想定される増粘度が高いか低いかに応じて、パルス波形データ記憶部から異なる駆動パルス信号が読み出されて使用される。これにより、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32のうちどのような種類のものが用いられた場合でも、なるべく同一のインク滴の吐出挙動が得られるように図られ、吐出不良の検知精度を高く維持することができる。
【0092】
(b)閾値の可変制御
前述のように吐出不良の検知の際には、不良ノズル検出部84により、帯電させたインク滴が吸収材に着弾する際に生じる電流変化が検出され、その信号値が所定の閾値以下の場合にノズル10が吐出不良であることが検出される。前述のように同一の駆動パルス信号を用いた場合でもインクの増粘の高低により実際に吐出されるインク滴が変わることに対応し、上記閾値の大きさをインクカートリッジ32の種類によって変化させてもよい。
これにより、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32のうちどのような種類のものが用いられた場合でも、吐出不良の検知精度を高く維持することができる。
【0093】
(c)テストパターンの走査感度変更
前述のように、印刷したテストパターンをCCDもしくはフォトセンサー等により走査して吐出不良を検出する手法の場合には、その走査感度を調整してもよい。すなわち、前述のように同一の駆動パルス信号を用いた場合でもインクの増粘の高低により実際に吐出されるインク滴が変わることに対応し、想定されるインクの増粘が高い場合には走査感度を高くし、インクの増粘が低い場合には走査感度を低くする。これにより、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32のうちどのような種類のものが用いられた場合でも、吐出不良の検知精度を高く維持することができる。
【0094】
なお、以上は、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32の詳細な種類等に応じて、図3のS20で実行される吐出不良の検知の態様を変える場合を説明したが、これに限られない。すなわち、S40で実行される自動メンテナンスモードでメンテナンス時において、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32のうちどの種類が用いられたかに応じて、上記(a)~(c)等の手法によりメンテナンス態様を変えてもよい。
【0095】
(2)サービス業者の操作による運転態様の切替
上記実施形態においては、カートリッジホルダ35に、リテールビジネス用のインクカートリッジ32が装着されたか、サブスクリプションビジネス用のインクカートリッジ32が装着されたかに応じて、第1運転態様と第2運転態様との切替を行った。本変形例においては、これに代えて、サービス業者が適宜のタイミングで行う所定の操作により、上記運転態様の切替が行われる。
【0096】
<制御手順>
本変形例における上記運転態様の切替を実行するためにCPU51が実行する制御手順を、上記図4に対応する図5に示すフローチャートにより説明する。この制御手順は、前述と同様、上記ROM52に記憶された複数のプログラムに含まれる切替処理プログラムにより実行され、その実行によって本実施形態による以下の切替方法が実現される。
【0097】
図5に示すように、このフローでは、図4に示すフローの各手順のうちS130,S150,S160,S180が省略されるとともに、S140に代えてS145が設けられている。
【0098】
すなわち、図4と同様のS110で新たなインクカートリッジ32の装着が判定され、装着されたらYes判定となってS120へ移行し、サブスクリプションフラグF=0とされる。これにより、図4と同様、手動メンテナンスモード若しくは自動メンテナンスモードが選択的に実行される第1運転態様となる。
【0099】
その後、新たに設けたS145で、サービス業者の手動操作に基づく、運転態様切替のための外部切替信号が入力されたか否かが判断される。なお、この外部切替信号は、サービス業者が上記専用インタフェースを介しネットワーク経由でCPU51へ入力してもよいし、プリンタ1に対し所定の手動操作、例えば適宜のキー操作、隠しコードの入力、等を直接行うことでCPU51へ入力してもよい。なお、このS145でCPU51へ入力を判断される上記外部切替信号が、本変形例における制御情報の一例である。
外部切替信号が入力されたらS145がYes判定され、上記図4と同様のS170へ移行してF=0からF=1へと切り替えられることで、第1運転態様から第2運転態様へと切り替えられる。本変形例においてもこのS170で実行する処理が第1運転切替処理の一例である。その後、図4と同様のS190へ移行する。なお、S145で外部切替信号が入力されない場合はNo判定され、直接S190へ移行する。
【0100】
S190では図4と同様にインクカートリッジ32が取り外されたか否かが判定され、No判定の場合は前述のS145へ移行し、Yes判定の場合はS110へ移行する。
【0101】
<変形例の効果>
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
すなわちサブスクリプションビジネスにおいて当該プリンタ1が使用される場合には、サービス業者が上述の手動操作により外部切替信号をCPU51に入力して第2運転態様とすることで、一律、制御モードが自動メンテナンスモードに設定される。言い換えれば、手動メンテナンスモードによるメンテナンス機能が発現しないようにする。この結果、サブスクリプションビジネスの態様でユーザによる手動メンテナンスが実行された場合に生じうる、前述したサービス業者の不利益を回避し、サービス業者にとっての利便性を向上することができる。
【0102】
また、例えば、リテールビジネスにおいて当該プリンタ1が使用される場合には、サービス業者が上述の手動操作を行わないことで外部切替信号のCPU51への入力を行わずに上述の第1運転態様のままとする。これにより、プリンタ1では、特に制限なく、自動メンテナンスモード及び手動メンテナンスモードを適宜に実行することができる。この結果、ユーザが手動メンテナンスを実行したい場合にはその意図通りのメンテナンスを行う一方、所定のメンテナンス実行条件に基づき自動的に実行したい場合には自動メンテナンスモードとすることで、ユーザにとっての利便性を確保することができる。
【0103】
以上のように、本変形例においても、使用されるビジネス態様に応じた制御により、ユーザ及びサービス業者の利便性をともに確保することができる。
【0104】
(3)その他
以上においては、図3図4図5に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0105】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0106】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0107】
1 プリンタ(印刷装置の一例)
2 キャリッジ
3 インクジェットヘッド(吐出ヘッドの一例)
7 フラッシングフォーム(メンテナンス部の一例)
8 パージングユニット(メンテナンス部の一例)
32 インクカートリッジ(収容体の一例)
35 カートリッジホルダ(装着部の一例)
51 CPU
P 記録用紙(被印刷媒体の一例)
図1
図2
図3
図4
図5