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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/141 20210101AFI20241119BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241119BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20241119BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/122 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/191 20210101ALI20241119BHJP
   H01M 50/195 20210101ALI20241119BHJP
【FI】
H01M50/141
H01M10/058
H01M10/0562
H01M50/184 C
H01M50/193
H01M50/121
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M50/126
H01M50/197
H01M10/052
H01M10/054
H01M50/117
H01M50/119
H01M50/122
H01M50/191
H01M50/195
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024534401
(86)(22)【出願日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2023037095
(87)【国際公開番号】W WO2024080339
(87)【国際公開日】2024-04-18
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022164369
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
(72)【発明者】
【氏名】中村 千紘
(72)【発明者】
【氏名】岡野 愛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直也
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/013295(WO,A1)
【文献】特開2015-225855(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186442(WO,A1)
【文献】特開2011-124084(JP,A)
【文献】国際公開第2022/024717(WO,A1)
【文献】特開2009-218010(JP,A)
【文献】特開平08-301879(JP,A)
【文献】特開2012-243395(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110688(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/256403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/50-50/598
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質を含む蓄電素子と、
前記固体電解質の少なくとも一部と接触するように配置される全固体電池用樹脂フィルムと、を備え、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、吸水剤及びガス吸収剤の少なくとも一方を含み、
前記蓄電素子は、
正極層と、
前記正極層に積層され、前記固体電解質を含む固体電解質層と、を含み、
前記正極層は、
正極集電体と、
前記正極集電体に形成され、前記固体電解質を含む正極活物質層と、を含み、
前記固体電解質層は、前記正極活物質層に積層され、
前記正極活物質層の前記固体電解質の濃度は、前記固体電解質層に向かうにつれて高くなり、
前記全固体電池用樹脂フィルムの片面又は両面は、熱融着性を有し、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、
第1層と、
前記第1層の一方の面に積層される第2層と、
前記第1層の他方の面に積層される第3層と、
前記吸水剤と、を含み、
前記吸水剤は、前記全固体電池用樹脂フィルムのうちの前記第1層のみに含まれる
全固体電池。
【請求項2】
固体電解質を含む蓄電素子と、
前記固体電解質の少なくとも一部と接触するように配置される全固体電池用樹脂フィルムと、を備え、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、吸水剤及びガス吸収剤の少なくとも一方を含み、
前記蓄電素子は、
正極層と、
前記正極層に積層され、前記固体電解質を含む固体電解質層と、を含み、
前記正極層は、
正極集電体と、
前記正極集電体に形成され、前記固体電解質を含む正極活物質層と、を含み、
前記固体電解質層は、前記正極活物質層に積層され、
前記正極活物質層の前記固体電解質の濃度は、前記固体電解質層に向かうにつれて高くなり、
前記全固体電池用樹脂フィルムの片面又は両面は、熱融着性を有し、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、
少なくとも2層以上と、
前記吸水剤と、を含み、
前記吸水剤は、前記全固体電池用樹脂フィルムを構成する層のうちの1層のみに含まれる
固体電池。
【請求項3】
固体電解質を含む蓄電素子と、
前記固体電解質の少なくとも一部と接触するように配置される全固体電池用樹脂フィルムと、を備え、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、吸水剤及びガス吸収剤の少なくとも一方を含み、
前記蓄電素子は、
負極層と、
前記負極層に積層され、前記固体電解質を含む固体電解質層と、を含み、
前記負極層は、
負極集電体と、
前記負極集電体に形成され、前記固体電解質を含む負極活物質層と、を含み、
前記固体電解質層は、前記負極活物質層に積層され、
前記負極活物質層の前記固体電解質の濃度は、前記固体電解質層に向かうにつれて高くなり、
前記全固体電池用樹脂フィルムの片面又は両面は、熱融着性を有し、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、
第1層と、
前記第1層の一方の面に積層される第2層と、
前記第1層の他方の面に積層される第3層と、
前記吸水剤と、を含み、
前記吸水剤は、前記全固体電池用樹脂フィルムのうちの前記第1層のみに含まれる
全固体電池。
【請求項4】
固体電解質を含む蓄電素子と、
前記固体電解質の少なくとも一部と接触するように配置される全固体電池用樹脂フィルムと、を備え、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、吸水剤及びガス吸収剤の少なくとも一方を含み、
前記蓄電素子は、
負極層と、
前記負極層に積層され、前記固体電解質を含む固体電解質層と、を含み、
前記負極層は、
負極集電体と、
前記負極集電体に形成され、前記固体電解質を含む負極活物質層と、を含み、
前記固体電解質層は、前記負極活物質層に積層され、
前記負極活物質層の前記固体電解質の濃度は、前記固体電解質層に向かうにつれて高くなり、
前記全固体電池用樹脂フィルムの片面又は両面は、熱融着性を有し、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、
少なくとも2層以上と、
前記吸水剤と、を含み、
前記吸水剤は、前記全固体電池用樹脂フィルムを構成する層のうちの1層のみに含まれる
全固体電池。
【請求項5】
前記全固体電池用樹脂フィルムは、少なくとも前記固体電解質層と接触するように配置される
請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記全固体電池用樹脂フィルムは、少なくとも前記正極層と接触するように配置される
請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記全固体電池用樹脂フィルムは、少なくとも前記負極層と接触するように配置される
請求項3又は4に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記全固体電池用樹脂フィルムは、前記固体電解質を囲む枠形状である
請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記蓄電素子を封止する外装体を備え、
前記外装体は、バリア層を含むフィルム状の外装部材によって構成されており、
前記全固体電池用樹脂フィルムは、前記バリア層よりも内側の少なくとも一部に配置される
請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項10】
前記全固体電池用樹脂フィルムは、硫黄系ガス吸収剤を含み、
前記硫黄系ガス吸収剤は、硫黄系ガス化学吸収剤及び硫黄系ガス物理吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項11】
前記硫黄系ガス化学吸収剤が、金属酸化物であるか、金属もしくは金属イオンが担持又は混入された無機物である、
請求項10に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、全固体電池の一例を開示している。この全固体電池は、正極層、負極層、及び、正極層と負極層との間に配置される固体電解質層を備える蓄電素子と、蓄電素子の周囲に配置される電気絶縁枠と、を備える。蓄電素子及び電気絶縁枠は、電池ケースに収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-193728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記全固体電池は、電池ケースの外部からガスの一例としての水蒸気が侵入することがある。水蒸気に含まれる水分と固体電解質層とが接触した場合、固体電解質層に用いられる固体電解質の種類によっては、硫化水素等のガスが発生するおそれがある。なお、このような課題は、水分が固体電解質層と接触する場合に限られず、例えば、正極層及び負極層が固体電解質を含む場合、水分と、正極層及び負極層に含まれる固体電解質とが接触する場合にも同様に生じる。
【0005】
本発明は、蓄電素子と水分との接触を抑制すること、及び、蓄電素子から発生したガスを吸収できることの少なくとも一方を実現できる全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る全固体電池は、固体電解質を含む蓄電素子と、前記固体電解質の少なくとも一部と接触するように配置される全固体電池用樹脂フィルムと、を備え、前記全固体電池用樹脂フィルムは、吸水剤及びガス吸収剤の少なくとも一方を含む。
【0007】
本発明の第2観点に係る全固体電池は、第1観点に係る全固体電池であって、前記固体電解質を含む固体電解質層を有し、前記全固体電池用樹脂フィルムは、少なくとも前記固体電解質層と接触するように配置される。
【0008】
本発明の第3観点に係る全固体電池は、第1観点又は第2観点に係る全固体電池であって、前記固体電解質を含む正極層を含み、前記全固体電池用樹脂フィルムは、少なくとも前記正極層と接触するように配置される。
【0009】
本発明の第4観点に係る全固体電池は、第1観点~第3観点のいずれか1つに係る全固体電池であって、前記固体電解質を含む負極層を含み、前記全固体電池用樹脂フィルムは、少なくとも前記負極層と接触するように配置される。
【0010】
本発明の第5観点に係る全固体電池は、第1観点~第4観点のいずれか1つに係る全固体電池であって、前記全固体電池用樹脂フィルムは、前記固体電解質を囲む枠形状である。
【0011】
本発明の第6観点に係る全固体電池は、第1観点~第5観点のいずれか1つに係る全固体電池であって、前記蓄電素子を封止する外装体を備え、前記外装体は、バリア層を含むフィルム状の外装部材によって構成されており、前記全固体電池用樹脂フィルムは、前記バリア層よりも内側の少なくとも一部に配置される。
【0012】
本発明の第7観点に係る全固体電池は、第1観点~第6観点のいずれか1つに係る全固体電池であって、前記ガス吸収剤は、硫黄系ガス化学吸収剤及び硫黄系ガス物理吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0013】
本発明の第8観点に係る全固体電池は、第7観点に係る全固体電池であって、前記硫黄系ガス化学吸収剤が、金属酸化物であるか、金属もしくは金属イオンが担持又は混入された無機物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に関する全固体電池は、蓄電素子と水分との接触を抑制すること、及び、蓄電素子から発生したガスを吸収できることの少なくとも一方を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の全固体電池の平面図。
図2図1の外装部材の層構成の一例を示す断面図。
図3図1のD3-D3線に沿う断面図。
図4図3の全固体電池用樹脂フィルムの平面図。
図5図3の全固体電池用樹脂フィルムの別の配置例を示す断面図。
図6図3の全固体電池用樹脂フィルムのさらに別の配置例を示す断面図。
図7図3の全固体電池用樹脂フィルムのさらに別の配置例を示す断面図。
図8図3の全固体電池用樹脂フィルムのさらに別の配置例を示す断面図。
図9図3の全固体電池用樹脂フィルムのさらに別の配置例を示す断面図。
図10図3の全固体電池用樹脂フィルムのさらに別の配置例を示す断面図。
図11図3の全固体電池用樹脂フィルムの層構成の一例を示す断面図。
図12図3の全固体電池用樹脂フィルムの層構成の別の一例を示す断面図。
図13】変形例の全固体電池の断面図。
図14】別の変形例の全固体電池の断面図。
図15】さらに別の変形例の全固体電池の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る全固体電池について説明する。なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
【0017】
<1.全固体電池の全体構成>
図1は、本実施形態の全固体電池10の平面図である。図2は、外装部材21、22の層構成の一例を示す断面図である。図3は、図1のD2-D2線に沿う断面図である。以下では、説明の便宜のため、特に断らない限り、図1の上下方向を「前後」と称し、左右方向を「左右」と称し、図3の上下方向を「上下」と称する。ただし、全固体電池10の使用時の向きは、これに限定されない。また、以下の説明で用いる図は、説明の便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は図示するものに限られない。
【0018】
全固体電池10は、例えば、全固体リチウムイオン二次電池、全固体ナトリウムイオン二次電池、又は、全固体マグネシウムイオン二次電池等である。本実施形態では、全固体電池10は、全固体リチウムイオン二次電池である。全固体電池10は、例えば、多数直列接続して高電圧で使用する電気自動車及びハイブリッド自動車等の電動車両に使用される。全固体電池10は、外装体20と、蓄電素子30と、電極端子80と、端子用接着フィルム90とを含む。
【0019】
外装体20は、内部空間S1及び周縁シール部23を備える。蓄電素子30は、外装体20の内部空間S1に収容される。電極端子80は、その一端が蓄電素子30と接合しており、その他端が外装体20の周縁シール部23から外側に突出している。電極端子80の一端と他端との間の一部は、端子用接着フィルム90を介して周縁シール部23に融着されている。
【0020】
外装体20は、容器20Aを含む。容器20Aは、外装部材21、22を含んで構成される。平面視における容器20Aの外周部分においては、外装部材21、22がヒートシールされ、互いに融着しており、これにより、周縁シール部23が形成されている。そして、この周縁シール部23によって、外部空間から遮断された容器20Aの内部空間S1が形成される。周縁シール部23は、容器20Aの内部空間S1の周縁を画定する。なお、ここでいうヒートシールの態様には、熱源からの加熱融着、超音波融着等の態様が想定される。いずれにせよ、周縁シール部23とは、外装部材21、22が融着され、一体化している部分を意味する。なお、周縁シール部23の電極端子80と端子用接着フィルム90とを挟む部分は、外装部材22、電極端子80、一対の端子用接着フィルム90、及び、外装部材21が一体化されている。周縁シール部23の一対の端子用接着フィルム90のみを挟む部分は、外装部材22、一対の端子用接着フィルム90、及び、外装部材21が一体化されている。
【0021】
外装部材21、22は、例えば、樹脂成形品又はフィルムから構成される。ここでいう樹脂成形品とは、射出成形や圧空成形、真空成形、ブロー成形等の方法により製造することができ、意匠性や機能性を付与するためにインモールド成形を行ってもよい。樹脂の種類は、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ABS等とすることができる。また、ここでいうフィルムとは、例えば、インフレーション法やTダイ法等の方法により製造することができる樹脂フィルムや、このような樹脂フィルムを金属箔に積層したものである。また、ここでいうフィルムは、延伸されたものであってもなくてもよく、単層のフィルムであっても多層フィルムであってもよい。また、ここでいう多層フィルムは、コーティング法により製造されてもよいし、複数枚のフィルムが接着剤等により接着されたものでもよいし、多層押出法により製造されてもよい。
【0022】
以上のとおり、外装部材21、22は様々に構成することができるが、本実施形態では、図2に示されるように、ラミネートフィルムから構成される。ラミネートフィルムは、基材層23A、バリア層23B、及び、熱融着性樹脂層23Cを積層した積層体とすることができる。基材層23Aは、外装部材21、22の基材として機能し、典型的には、容器20Aの外層側を形成し、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等の絶縁性を有する樹脂層が、単層又は2層以上の複層で形成されていてもよい。バリア層23Bは、外装部材21、22の強度向上の他、蓄電素子30内に少なくとも水分等が侵入することを防止する機能を有し、典型的には、アルミニウム合金箔、ステンレス鋼箔、チタン鋼箔、鋼板箔等からなる金属層である。熱融着性樹脂層23Cは、典型的には、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル等の熱融着可能な樹脂からなり、容器20Aの最内層を形成する。容器20Aの形状は、特に限定されず、例えば、袋状(パウチ状)とすることができる。ここでいう袋状には、三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピロータイプ、ガセットタイプ等が考えられる。なお、容器20Aは、外装部材21、22から構成されてもよいが、その他、例えば、金属缶であってもよい。
【0023】
電極端子80は、全固体電池10の電力の入出力に用いられる金属端子である。電極端子80は、容器20Aの周縁シール部23の左右方向の端部に分かれて配置されており、一方が正極側の端子を構成し、他方が負極側の端子を構成する。各電極端子80の左右方向の一方の端部は、容器20Aの内部空間S1において蓄電素子30の正極層40又は負極層50(ともに図3参照)に電気的に接続されており、他方の端部は、周縁シール部23から外側に突出している。なお、正極層40及び負極層50の端子を構成する2つの電極端子80の取付け位置は特に限定されず、例えば、周縁シール部23の同じ1つの辺に配置されていてもよい。
【0024】
電極端子80を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅等である。全固体電池10がリチウムイオン二次電池である場合、正極層40に接続される電極端子80は、典型的には、アルミニウム等によって構成され、負極層50に接続される電極端子80は、典型的には、銅、ニッケル等によって構成される。
【0025】
左側の電極端子80は、周縁シール部23のうち左端部において、端子用接着フィルム90を介して外装部材21、22に挟まれている。右側の電極端子80も、周縁シール部23のうち右端部において、端子用接着フィルム90を介して外装部材21、22に挟まれている。
【0026】
端子用接着フィルム90は、いわゆる接着性フィルムであり、外装部材21、22と、電極端子80(金属)との両方に接着するように構成されている。端子用接着フィルム90を介することによって、電極端子80と、外装部材21、22の最内層(熱融着性樹脂層)とが異素材であっても、両者を固定することができる。なお、端子用接着フィルム90は、電極端子80に予め融着して固定することで一体化しておき、この端子用接着フィルム90が固定された電極端子80を外装部材21、22で挟んで融着することで、これらが一体化される。
【0027】
<2.蓄電素子>
<2-1.全体構成>
図3に示されるように、蓄電素子30は、正極層40と、負極層50と、固体電解質層60と、全固体電池用樹脂フィルム70(以下では、「フィルム70」という)と、を含む。正極層40と負極層50とは、固体電解質層60を介して上下に交互に積層される。正極層40と負極層50との間で固体電解質層60を介したリチウムイオンの授受によって、全固体電池10の充放電が行われる。蓄電素子30に含まれる正極層40及び負極層50の数は、任意に選択可能である。本実施形態では、蓄電素子30は、1つの正極層40と、2つの負極層50とを含む。蓄電素子30は、2つ以上の正極層40を有していてもよく、3つ以上の負極層50を有していてもよい。
【0028】
<2-2.正極層>
正極層40は、正極集電体41と、正極集電体41の両面の一部に形成される正極活物質層42、43を含む。正極集電体41は、好ましくは、導電率が高い少なくとも材料によって構成される。導電性が高い物質は、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、クロム、及び、ニッケルの少なくともいずれか一つの金属元素を含む金属又は合金である。正極集電体41を構成する材料は、カーボン等の非金属であってもよい。正極集電体41の形状は、例えば、箔状、板状、メッシュ状、不織布状、又は、発泡状である。本実施形態では、正極集電体41の形状は、長方形の箔状である。
【0029】
正極活物質層42、43は、リチウムイオンと電子を授受可能である正極活物質を含む。正極活物質は、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されず、全固体リチウムイオン二次電池の正極層に適用可能な公知の正極活物質を用いることができる。正極活物質層42、43は、正極活物質とリチウムイオンの授受をする固体電解質40Aを含むことが好ましい。固体電解質40Aは、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に制限は無く、一般的に全固体リチウムイオン二次電池に用いられる材料を用いることができる。正極活物質層42に含まれる固体電解質40Aの濃度は、正極集電体41の上に積層される固体電解質層60に向かうにつれて徐々に高くなることが好ましい。正極活物質層43に含まれる固体電解質40Aの濃度は、正極集電体41の下に積層される固体電解質層60に向かうにつれて徐々に高くなることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、正極活物質層42、43は、正極集電体41の両面に形成されているが、これに限らず、正極活物質層42、43のいずれかが、正極集電体41の一方の面に形成されていてもよい。
【0031】
正極集電体41の両面の一部には、正極活物質層42、43が形成されていない端子接続部41Aが形成されている。端子接続部41Aの先端は、負極層50の右側の端部よりも右側に位置し、かつ、フィルム70の先端部70Xから露出する。端子接続部41Aのうちのフィルム70から露出している部分は、例えば、右側の電極端子80(図1参照)と電気的に接続される。
【0032】
<2-3.負極層>
負極層50は、負極集電体51と、負極集電体51の両面に形成される負極活物質層52、53を含む。負極集電体51を構成する材料は、正極集電体41を構成する材料として例示した材料を用いることが出きる。負極集電体51の形状は、正極集電体41の形状として例示した形状を採用するこができる。本実施形態では、負極集電体51の形状は、長方形の箔状である。負極活物質層52に含まれる固体電解質50Aの濃度は、負極活物質層52の上に積層される固体電解質層60に向かうにつれて徐々に高くなることが好ましい。負極活物質層53に含まれる固体電解質50Aの濃度は、負極活物質層52の下に積層される固体電解質層60に向かうにつれて徐々に高くなることが好ましい。
【0033】
負極活物質層52、53は、リチウムイオンと電子を授受可能である負極活物質を含む。負極活物質は、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されず、全固体リチウムイオン二次電池の負極層に適用可能な公知の負極活物質を用いることができる。
【0034】
本実施形態では、負極活物質層52、53は、負極集電体51の両面に形成されているが、これに限らず、負極活物質層52、53のいずれかが、負極集電体51の一方の面に形成されていてもよい。例えば、蓄電素子30の積層方向(上下方向)の最下層に負極層50が形成されている場合、最下層に位置する負極層50の下方には対向する正極層40が存在しない。このため、最下層に位置する負極層50においては、積層方向上側の片面のみに負極活物質層52が形成されてもよい。
【0035】
負極集電体51の両面の一部には、負極活物質層52、53が形成されていない端子接続部51Aが形成されている。端子接続部51Aの先端は、正極層40の左側の端部よりも左側に位置する。端子接続部51Aは、例えば、左側の電極端子80(図1参照)と電気的に接続される。
【0036】
<2-4.固体電解質層>
固体電解質層60は、固体電解質60Aを含む材料によって構成される。固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に制限は無く、一般的に全固体リチウムイオン二次電池に用いられる材料を用いることができる。
【0037】
<2-5.全固体電池用樹脂フィルムの全体概要>
全固体電池10の内部(蓄電素子30)に水分が浸入すると、全固体電池10の性能が劣化することから、外装部材21、21には、バリア層23B(図2参照)が設けられている。バリア層23Bを設けることにより、バリア層23Bの外側からの水分の浸入は抑制することができる。しかし、外装部材21、22の熱融着性樹脂層23Cを熱融着させて蓄電素子30を封止した場合、熱融着性樹脂層23Cの端面は、外部に露出する。このため、熱融着性樹脂層23Cの端面から水分が浸入するおそれがある。また、外装部材21、22で蓄電素子30を封止するまでに、外装部材21、22の熱融着性樹脂層23Cが吸水した場合、蓄電素子30を封止した後に熱融着性樹脂層23C中の水分が蓄電素子30に浸入するおそれもある。全固体電池10を構成する要素に含まれる固体電解質40A、50A、60Aと水分とが接触した場合、固体電解質40A、50A、60Aの種類によっては、硫化水素等のガスが発生するおそれがある。このため、外装体20の内圧が上昇するおそれがある。本実施形態の全固体電池10は、外装体20内に侵入した水分、外装体20内に存在する水分、及び、全固体電池10から発生したガスを吸収できるようにフィルム70を備える。
【0038】
本実施形態のフィルム70は、第1の態様及び第2の態様を含む。第1の態様では、フィルム70は、外装体20の内部に水蒸気が侵入した場合、又は、外装体20の内部に水分が存在する場合であっても、水蒸気(水分)と全固体電池10を構成する要素に含まれる固体電解質40A、50A、60Aとが接触しないように、少なくとも吸水剤を含む。本実施形態の第2の態様では、フィルム70は、固体電解質40A、50A、60Aと水蒸気とが接触した場合に発生した硫化水素等のガスを吸収できるように、少なくともガス吸収剤を含む。
【0039】
フィルム70は、正極層40の固体電解質40A、負極層50の固体電解質50A、及び、固体電解質層60の固体電解質60Aの少なくとも一部と接触するように配置される。フィルム70を配置する箇所は、固体電解質40A、50A、60Aの少なくとも一部と接触する箇所であれば任意に選択可能である。以下では、フィルム70を配置する箇所の具体例について説明する。
【0040】
正極層40及び負極層50の形状及び面積が実質的に同じである場合、蓄電素子30をホットプレスする工程において、正極層40の外周端部と負極層50の外周端部とが接触することによって、短絡するおそれがある。このため、正極層40及び負極層50の一方は、他方に対して面積が小さいことが好ましい。なお、正極層40の面積とは、平面視における正極活物質層42、43の面積である。負極層50の面積は、平面視における負極活物質層52、53の面積である。本実施形態では、平面視における正極活物質層42、43の面積は、負極活物質層52、53の面積よりも小さい。なお、正極層40及び負極層50の形状ならびに面積は、単に製造時の誤差によって異なる場合もある。
【0041】
図3に示されるように、正極層40及び負極層50の一方が他方に対して面積が小さい場合、正極層40の外周端部と負極層50の外周端部との間に段差200が形成される。このため、全固体電池10の製造時において、蓄電素子30がホットプレスされた場合に、段差200において、例えば、負極層50の外周端部が破損するおそれがある。本実施形態の蓄電素子30は、このような事態が発生することを抑制するために、段差200を埋めるようにフィルム70が配置されている。
【0042】
本実施形態では、蓄電素子30は、2枚のフィルム70を有する。蓄電素子30は、1枚、又は、3枚以上のフィルム70を有していてもよい。本実施形態では、フィルム70は、正極層40及び固体電解質層60と接触するように、正極層40の外郭に沿って配置される。フィルム70は、正極層40の外郭の少なくとも一部に沿って配置されていればよい。フィルム70の先端部70Xは、負極層50の外縁よりも外側に位置している。本実施形態では、フィルム70は、正極層40の外郭の全周に沿って配置される。このため、負極層50の外周端部のうちのより広い範囲と対応する位置にフィルム70が配置されているため、蓄電素子30の製造時において、負極層50がより破損しにくい。
【0043】
図4は、フィルム70の平面図である。フィルム70の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、フィルム70の形状は、枠形状である。フィルム70の外郭形状は、長方形である。フィルム70の外郭形状は、正方形、又は、五角形以上の多角形であってもよい。フィルム70は、概ね中央に、フィルム70を貫通する孔70Aが形成されている。孔70Aの内郭形状は、正極活物質層42、43の外郭形状と概ね同じ形状である。孔70Aの面積は、正極活物質層42、43の面積よりも若干大きい。
【0044】
図5は、フィルム70の配置の別の例を示す断面図である。図5に示される例では、正極層40、負極層50、及び、固体電解質層60の面積は、実質的に等しい。このため、蓄電素子30の側面は、実質的に面一である。図5に示される例では、フィルム70は、正極層40、負極層50、及び、固体電解質層60と接触するように、蓄電素子30の側面の概ね全体を覆うように配置される。図5に示される例では、フィルム70の形状は、枠状である必要はなく、孔が形成されないシート状であってもよい。なお、図5では、固体電解質40A、50A、60Aの図示を省略している。
【0045】
図6は、フィルム70の配置のさらに別の例を示す断面図である。図6に示される例では、正極層40の面積は、負極層50の面積よりも小さい。図6に示される例では、フィルム70は、正極層40の外郭に沿って配置される。フィルム70の先端部70Xは、負極層50の外縁と実質的に同じ位置である。フィルム70の先端部70Xは、負極層50の外縁よりも内側であってもよい。なお、図6では、固体電解質40A、50A、60Aの図示を省略している。
【0046】
フィルム70は、蓄電素子30を構成する要素に含まれる固体電解質40A、50A、60Aの少なくとも一部と接触する位置であれば、外装部材21、22のバリア層23Bよりも内側の任意の位置に配置されてもよい。本実施形態において、バリア層23Bよりも内側とは、外装部材21、22の各層23A~23Cが積層される方向において、バリア層23Bに対して基材層23Aと反対側である。
【0047】
フィルム70は、図2に示されるように、外装部材21、22の熱融着性樹脂層23Cとして用いることもできる。フィルム70は、バリア層23Bと熱融着性樹脂層23Cとの間の接着層として用いてもよい。フィルム70がバリア層23Bと熱融着性樹脂層23Cとの間の接着層として用いられる場合、フィルム70は、蓄電素子30と接触できるように、バリア層23Bと熱融着性樹脂層23Cとの間から一部が露出する。フィルム70は、外装部材21、22の熱融着性樹脂層23C同士が熱融着される位置において、互いに向き合う熱融着性樹脂層23C同士の間に介在する接着フィルムとして用いることもできる。フィルム70が接着フィルムとして用いられる場合、蓄電素子30からガスが発生することによって、外装体20の内圧が上昇した場合、熱融着性樹脂層23Cのうちのフィルム70が介在している部分が剥離してガスが外部に放出される。
【0048】
図7に示される例では、フィルム70は、蓄電素子30の上面及び下面の概ね全体を覆うように、外装部材21、22と蓄電素子30との間に配置される。フィルム70と外装部材21、22の内面(熱融着性樹脂層23C)とは、接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。
【0049】
図8に示される例では、フィルム70は、蓄電素子30の側面の概ね全体を覆うように、外装部材21、22と蓄電素子30との間に配置される。フィルム70と外装部材21、22の内面(熱融着性樹脂層23C)とは、接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。
【0050】
図9に示される例では、フィルム70は、蓄電素子30の概ね全体を覆うように、外装部材21、22と蓄電素子30との間に配置される。フィルム70と外装部材21、22の内面(熱融着性樹脂層23C)とは、接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。
【0051】
図10に示される例では、フィルム70は、端子用接着フィルム90として用いられる。端子用接着フィルム90の端面は外部に露出することから、端子用接着フィルム90の端面から水分が浸入する虞がある。また、端子用接着フィルム90を電極端子80と外装部材21、22との間に介在させるまでに、端子用接着フィルム90が吸水した場合、端子用接着フィルム90を電極端子80と外装部材21、22との間に介在させたあと、端子用接着フィルム90中の水分が蓄電素子30に浸入する虞もある。
【0052】
第1の態様のフィルム70を、端子用接着フィルム90として用いることによって、端子用接着フィルム90の端部からの水分の浸入、及び端子用接着フィルム90に含まれる水分が蓄電素子30に浸入することを効果的に抑制することができる。すなわち、第1の態様のフィルム70を備える全固体電池10は、フィルム70が吸水剤を含んでいるため、端子用接着フィルム90から浸入した水分をフィルム70が吸水・保持することで、蓄電素子30にまで水分が到達することを抑制することができる。また、第2の態様のフィルム70を、端子用接着フィルム90として用いることによって、例えば、蓄電素子30が全体固体電池である場合、全固体電池を構成する要素に含まれる固体電解質層と水分とが接触することによって発生した硫化水素等のガスを効果的に吸収することができる。すなわち、第2の態様のフィルム70を備える全固体電池10は、フィルム70がガス吸収剤を含んでいるため、蓄電素子30から発生した硫化水素等のガスがフィルム70によって吸収される。このため、硫化水素等のガスが外部に放出されにくい。
【0053】
<2-6.全固体電池用樹脂フィルムの具体的構成>
フィルム70の第1の態様において、吸収対象となる水分は、気体及び/又は液体の水分である。また、後述の通り、本実施形態の第1の態様に係る全固体電池用樹脂フィルムは、必要に応じて、硫黄系ガスを吸収対象に含めることもできる。硫黄系ガスとしては、硫化水素やジメチルスルフィド、メチルメルカプタン、SOxで表されるイオウ酸化物等が挙げられる。吸収対象の水分は、例えば固体電解質タイプのリチウムイオンバッテリーに吸収された際に、種々のアウトガスを発生させてしまうものであり、硫黄系ガスは、該アウトガスの成分(例えば、全固体電池10が硫化物系無機固体電解質を用いた全固体電池である場合や、正極にリチウム硫黄が使用されたリチウム二次電池の場合に発生する)である。
【0054】
本実施形態のフィルム70は、例えば図3に示されるように、単層により構成されていてもよいし、例えば図11及び図12に示されるように2層以上により構成されていてもよい。図11は、第1層71及び第2層72が積層された積層体により構成されたフィルム70を示している。図12は、第2層72、第1層71、及び、第3層73がこの順に積層された積層体により構成されたフィルム70を示している。
【0055】
第1の態様において、フィルム70が2層以上により構成されている場合、2層以上の層のうち、少なくとも1層が吸水剤を含めばよい。本実施形態において、吸水剤を含む層を「吸水層」と表記することがある。第1の態様に係るフィルム70の積層構成の具体例としては、例えば図11において、外装部材21、22側の第1層71が吸水層であり、蓄電素子30側の第2層72が吸水剤を含まない層である積層構成が挙げられる。また、例えば図12において、中間に位置する第1層71が吸水層であり、蓄電素子30側の第2層72及び外装部材21、22側の第3層73が吸水剤を含まない層である積層構成;第1層71及び第3層73の少なくとも一方が吸水層であり、第2層72が吸水剤を含まない層である積層構成などが挙げられる。
【0056】
第2の態様において、フィルム70が2層以上により構成されている場合、2層以上の層のうち、少なくとも1層がガス吸収剤を含めばよい。ガス吸収剤は、例えば、硫黄系ガス吸収剤、二酸化炭素吸収剤、及び、酸素吸収剤の少なくとも1つである。本実施形態では、フィルム70の第2の態様について、ガス吸収剤が硫黄系ガス吸収剤である場合を例に説明する。第2の態様に係るフィルム70の積層構成の具体例としては、例えば図11において、外装部材21、22側の第1層71が硫黄系ガス吸収層であり、蓄電素子30側の第2層72が硫黄系ガス吸収剤を含まない層である積層構成;外装部材21、22側の第1層71が硫黄系ガス吸収層を含まない層、蓄電素子30側の第2層72が硫黄系ガス吸収剤を含む層である積層構成が挙げられる。また、例えば図12において、中間に位置する第1層71が硫黄系ガス吸収層であり、蓄電素子30側の第2層72及び外装部材21、22側の第3層73が硫黄系ガス吸収剤を含まない層である積層構成;第1層71及び第3層73の少なくとも一方が硫黄系ガス吸収層であり、第2層72が硫黄系ガス吸収剤を含まない層である積層構成;中間に位置する第1層71が硫黄系ガス吸収層を含まない層であり、蓄電素子30側の第2層72及び外装部材21、22側の第3層73が硫黄系ガス吸収剤を含む層である積層構成;第1層71及び第3層73の少なくとも一方が硫黄系ガス吸収層を含まない層であり、第2層72が硫黄系ガス吸収剤を含む層である積層構成などが挙げられる。硫化水素ガスは蓄電素子30から発生するため、蓄電素子30側に位置する第2層72が硫黄系ガス吸収層であることが好ましい。
【0057】
第1の態様において、フィルム70の片面又は両面が熱融着性を有していることが好ましい。第1の態様に係るフィルム70と、正極層40、負極層50、及び、固体電解質層60の少なくとも1つと接合する場合、フィルム70の熱融着性を高めることが好ましいことから、例えばフィルム70が3層以上により構成されている場合、表面に位置する層(図12であれば、第2層72及び第3層73)は、熱融着性樹脂を含むことが好ましい。また、表面に位置する層の熱融着性の低下を抑制する観点からは、表面に位置する層には吸水剤(特に無機系吸水剤)が含まれないことが好ましい。全固体電池10において、フィルム70の吸水層による吸水性能をより一層好適に発揮させる観点から、吸水層は、表面に位置する層の間に設けられていることが好ましい。吸水層が表面に位置していると、全固体電池10が製造される迄に大気中の水分を吸収し、吸水層の吸水性能が低下しやすいためである。また、全固体電池10において、吸水層は、外装部材21、22側に位置している第3層73が吸水層であることも好ましい。これは、第3層73が外装部材21、22に近く、外装部材21、22側から浸入した水分が吸収されやすいからである。また、全固体電池10において、吸水層は、蓄電素子30側に位置している第2層72が吸水層であることも好ましい。これは、第2層72が蓄電素子30に近く、蓄電素子30に含まれる水分が吸収されやすいからである。
【0058】
第2の態様においても、フィルム70の片面又は両面が熱融着性を有していることが好ましい。第2の態様に係るフィルム70と、正極層40、負極層50、及び、固体電解質層60の少なくとも1つと接合する場合、フィルム70の熱融着性を高めることが好ましいことから、例えばフィルム70が3層以上により構成されている場合、表面に位置する層(図12であれば、第2層72及び第3層73)は、熱融着性樹脂を含むことが好ましい。また、表面に位置する層の熱融着性の低下を抑制する観点からは、表面に位置する層には硫黄系ガス吸収剤が含まれないことが好ましい。
【0059】
第1の態様に係るフィルム70は、吸水剤に加えて、後述する硫黄系ガス吸収剤をさらに含んでいてもよい。本実施形態において、硫黄系ガス吸収剤を含む層を「硫黄系ガス吸収層」と表記することがある。硫黄系ガス吸収剤が含まれる場合、硫黄系ガス吸収剤は吸水層に含まれていてよいし、吸水剤を含まない層に含まれていてもよい。フィルム70が2層以上により構成されている場合であれば、硫黄系ガス吸収剤は吸水剤を含まない層に含まれていて硫黄系ガス吸収層を構成していることが好ましい。なお、単一の層に複数種類の粒子が含まれることによる懸念点としては、フィルム70の製膜時に粒子が分散しづらくなり、フィルムに穴が空いたり、フィルム70の強度が場所によって異なったりすることなどが挙げられる。また、単一の層中に含まれる粒子の量が一定量以上になると、フィルムの伸びや強度が落ちるため、電池の角などで破れたりしやすくなることも懸念される。少量であれば、吸水剤と硫黄系ガス吸収剤は単一の層に含まれていてもこれらの懸念は生じにくいが、吸水効果や硫黄系ガス吸収効果を長期間に亘って持続させるためには、吸水層と硫黄系ガス吸収層とは別々の層であることが好ましい。
【0060】
第1の態様に係るフィルム70が2層以上により構成されている場合、フィルム70の積層構成の具体例としては、例えば図11において、第1層71が吸水層であり、第2層72が硫黄系ガス吸収層である積層構成が挙げられる。また、例えば図12において、第1層71が吸水層であり、第2層72及び第3層73の少なくとも一方が硫黄系ガス吸収層である積層構成;第1層71及び第3層73の少なくとも一方が吸水層であり、第2層72が硫黄系ガス吸収層である積層構成などが挙げられる。硫化水素ガスは蓄電素子30から発生するため、蓄電素子30側に位置する第2層72が硫黄系ガス吸収層であることが好ましい。また、前記の通り、吸水層は、表面に位置する層の間に設けられていることが好ましいことから、これらの中でも、第2層72と第3層73との間に位置する第1層71が吸水層であり、蓄電素子30側に位置する第2層72が硫黄系ガス吸収層である積層構成が最も好ましい。
【0061】
また、第2の態様に係るフィルム70は、硫黄系ガス吸収剤に加えて、後述する吸水剤をさらに含んでいてもよい。前記の通り、本実施形態において、吸水剤を含む層を「吸水層」と表記することがある。吸水剤が含まれる場合、吸水剤は硫黄系ガス吸収層に含まれていてよいし、吸水剤を含まない層に含まれていてもよい。第2の態様に係るフィルム70が2層以上により構成されている場合であれば、吸水剤は硫黄系ガス吸収剤を含まない層に含まれていて吸水層を構成していることが好ましい。なお、単一の層に複数種類の粒子が含まれることによる懸念点としては、フィルム70の製膜時に粒子が分散しづらくなり、フィルムに穴が空いたり、フィルム70の強度が場所によって異なったりすることなどが挙げられる。また、単一の層中に含まれる粒子の量が一定量以上になると、フィルムの伸びや強度が落ちるため、電池の角などで破れたりしやすくなることも懸念される。少量であれば、吸水剤と硫黄系ガス吸収剤は単一の層に含まれていてもこれらの懸念は生じにくいが、吸水効果や硫黄系ガス吸収効果を長期間に亘って持続させるためには、吸水層と硫黄系ガス吸収層とは別々の層であることが好ましい。
【0062】
第2の態様に係るフィルム70が2層以上により構成されている場合、フィルム70の積層構成の具体例としては、例えば図11において、第1層71が硫黄系ガス吸収層であり、第2層72が吸水層である積層構成が挙げられる。また、例えば図12において、第1層71が硫黄系ガス吸収層であり、第2層72及び第3層73の少なくとも一方が吸水層である積層構成;第1層71及び第3層73の少なくとも一方が硫黄系ガス吸収層であり、第2層72が吸水層である積層構成などが挙げられる。全固体電池10において、フィルム70の吸水層による吸水性能をより一層好適に発揮させる観点から、吸水層は、表面に位置する層の間に設けられていることが好ましい。吸水層が表面に位置していると、全固体電池10が製造される迄に大気中の水分を吸収し、吸水層の吸水性能が低下しやすいためである。第2層72と第3層73との間に位置する第1層71が後述する吸水層であり、蓄電素子30側に位置する第2層72が硫黄系ガス吸収層である積層構成が最も好ましい。また、全固体電池10において、吸水層は、外装部材21、22側に位置している第3層73が吸水層であることも好ましい。これは、第3層73が外装部材21、22に近く、外装部材21、22側から浸入した水分が吸収されやすいからである。また、全固体電池10において、吸水層は、蓄電素子30側に位置している第2層72が吸水層であることも好ましい。これは、第2層72が蓄電素子30に近く、蓄電素子30に含まれる水分が吸収されやすいからである。
【0063】
本実施形態において、フィルム70に含まれる樹脂としては、本実施形態の効果を阻害しないことを限度として、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂であることが好ましく、熱融着性樹脂であることがより好ましい。樹脂の具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、フィルム70を形成する樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。これらの中でも、ポリエステル、ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂が好ましい。
【0064】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、耐熱性及び耐圧性(例えば、外装部材21、22で全固体電池10素子4を封止する際の絶縁性の低下(ヒートシールによる潰れに起因する))を高める観点から、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0065】
また、ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱融着性に優れることから、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0066】
フィルム70に含まれる樹脂は、ポリオレフィン骨格を含む樹脂を主成分として含んでいることが好ましく、ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、フィルム70に含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、フィルム70に含まれる樹脂がポリプロピレンを主成分として含むとは、フィルム70に含まれる樹脂成分のうち、ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0067】
フィルム70に含まれる樹脂は、ポリエステルを主成分として含んでいることが好ましい。ここで、主成分とは、フィルム70に含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、フィルム70に含まれる樹脂がポリエステルを主成分として含むとは、フィルム70に含まれる樹脂成分のうち、ポリエステルの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0068】
本実施形態のフィルム70を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムをフィルム70として用いてもよい。また、フィルム70を形成する樹脂を、押出成形や塗布などによってフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された樹脂としてもよい。
【0069】
本実施形態において、フィルム70に含まれる樹脂は、エラストマーを含んでいてもよい。エラストマーは、フィルム70の高温環境における耐久性を担保しつつ、その柔軟性を高める役割を果たすものである。好ましいエラストマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエーテル系から選ばれる少なくとも1種以上の熱可塑性エラストマー、又は、これらの共重合体である熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。フィルム70において、エラストマーの含有量としては、フィルム70の高温環境における耐久性を担保しつつ、その柔軟性を高められる程度であれば、特に制限はなく、例えば約0.1質量%以上、好ましくは約0.5質量%以上、より好ましくは約1.0質量%以上、さらに好ましくは約3.0質量%以上である。また、当該含有量は、例えば約10.0質量%以下、約8.0質量%以下、約5.0質量%以下などである。当該含有量の好ましい範囲としては、0.1~10.0質量%程度、0.1~8.0質量%程度、0.1~5.0質量%程度、0.5~10.0質量%程度、0.5~8.0質量%程度、0.5~5.0質量%程度、1.0~10.0質量%程度、1.0~8.0質量%程度、1.0~5.0質量%程度、3.0~10.0質量%程度、3.0~8.0質量%程度、3.0~5.0質量%程度などが挙げられる。
【0070】
第1の態様に係るフィルム70に含まれる樹脂の含有率としては、例えば99.9質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、さらに好ましくは99.0質量%以上である。
【0071】
また、第2の態様に係るフィルム70に含まれる樹脂の含有率としては、例えば50質量%以上、好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0072】
第1の態様に係るフィルム70に含まれる吸水剤は、樹脂フィルム中に分散させて吸水性を発揮するものであれば、特に制限されない。例えば、全固体電池10中における経時安定性の観点から、無機系吸水剤を好適に使用することができる。無機系吸水剤の好ましい具体例としては、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、ゼオライト、酸化アルミニウム、シリカゲル、アルミナゲル、及び焼ミョウバンなどが挙げられる。一般的に、無機系吸水剤の中でも無機系化学吸水剤は、無機系物理吸水剤よりも吸水効果が高く、含有量を低減することが可能であり、十分な吸水性と熱融着性を単層で実現しやすい。そして、無機系化学吸水剤の中でも、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムは、水分の再放出が少なく、包装体内の低湿度状態の経時安定性が高く、絶乾効果を有することから、特に好ましい。なお、絶乾効果とは、相対湿度が0%付近になるまで吸水する効果を示し、調湿効果とは、湿度が高い時には吸水し、湿度が低い時には放湿して、湿度を一定にする効果を指す。また、例えば全固体電池用のように高温環境で使用される場合、水分を再放出する温度帯が高い無機系化学吸収剤が好ましい。
【0073】
第1の態様において、吸水層に含有される樹脂としては、フィルム70に含まれる樹脂として例示した樹脂と同じものが例示される。
【0074】
また、第1の態様において、フィルム70の吸水層に含まれる樹脂の含有率としては、例えば50質量%以上、好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0075】
第1の態様において、フィルム70に含まれる吸水剤の含有量としては、本実施形態の効果を奏することを限度として特に制限されず、フィルム70に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約0.5質量部以上、より好ましくは約2質量部以上、さらに好ましくは約3質量部以上であり、また、好ましくは約50質量部以下、より好ましくは約45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、0.5~50質量部程度、0.5~45質量部程度、0.5~40質量部程度、2~50質量部程度、2~45質量部程度、2~40質量部程度、3~50質量部程度、3~45質量部程度、3~40質量部程度が挙げられる。また、フィルム70の吸水層に含まれる吸水剤の含有量としては、本実施形態の効果を奏することを限度として特に制限されず、吸水層に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約0.5質量部以上、より好ましくは約2質量部以上、さらに好ましくは約3質量部以上であり、また、好ましくは約50質量部以下、より好ましくは約45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、0.5~50質量部程度、0.5~45質量部程度、0.5~40質量部程度、2~50質量部程度、2~45質量部程度、2~40質量部程度、3~50質量部程度、3~45質量部程度、3~40質量部程度が挙げられる。
【0076】
第1の態様に係るフィルム70において、吸水層に含有される吸水剤は、例えば、吸水剤と樹脂をメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。具体的には、吸水剤を樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調製する。得られたマスターバッチをさらに樹脂と混合し、フィルム状に成形することで吸水層を形成することができる。吸水剤のマスターバッチ中の含有量は、好ましくは20~90質量%程度、より好ましくは30~70質量%程度である。上記の範囲であれば、吸水層中に必要かつ十分な量の吸水剤を分散した状態で含有させることが容易である。
【0077】
また、前記の通り、第1の態様に係るフィルム70は、吸水剤に加えて、硫黄系ガス吸収剤をさらに含んでいてもよい。硫黄系ガス吸収剤は、硫黄系ガス物理吸収剤及び/又は硫黄系ガス化学吸収剤を含有することが好ましい。各種の硫黄系ガス吸収剤を併用、例えば硫黄系ガス物理吸収剤と硫黄系ガス化学吸収剤とを併用することによって、多種の硫黄系ガスを容易に吸収することが可能になる。硫黄系ガス吸収剤は例えば粉体で用いられる。硫黄系ガス吸収剤の最大粒子径は20μm以下が好ましく、粉体の数平均粒子径は0.1μm以上、15μm以下が好ましい。数平均粒子径が上記範囲よりも小さいと、硫黄系ガス吸収剤が凝集し易くなり、数平均粒子径が上記範囲よりも大きいと、硫黄系全固体電池用樹脂フィルムの均質性が劣るおそれがあり、硫黄系ガス吸収剤の表面積が小さくなることから硫黄系ガス吸収が劣るおそれがある。
【0078】
(硫黄系ガス物理吸収剤)
硫黄系ガス物理吸収剤は、吸収対象の硫黄系ガスを物理的に吸収する作用を有するガス吸収剤である。硫黄系ガス物理吸収剤は、SiO2/Al2O3モル比が1/1~2000/1の疎水性ゼオライト、ベントナイト、セピオライトからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。
【0079】
疎水性ゼオライトは、硫黄系ガスのような極性の低い分子の吸収性に優れたゼオライトであり、多孔質構造を有する。一般的にゼオライトは、構成成分であるSiO2/Al23のモル比が高い程、疎水性が高くなる。そして、疎水性が高くなることによって硫黄系ガスのような極性の低い分子を吸収し易くなり、逆に、水のような極性の高い分子との親和性が低くなり、これらを吸収し難くなる。疎水性ゼオライトのSiO2/Al23モル比は、30/1~10000/1が好ましく、35/1~9000/1がより好ましく、40/1~8500/1がさらに好ましい。また、疎水性ゼオライトは耐熱性が高く、230℃以上の高温に晒されても、吸収効果を維持することができる。本発明においては、硫黄系ガス吸収能と入手し易さのバランスから、上記範囲のモル比の疎水性ゼオライトが好ましく用いられる。
【0080】
ベントナイトとは、粘土鉱物であるモンモリロナイトを主成分し、層状のフィロケイ酸アルミニウムを多く含み、不純物として石英や長石などの鉱物を含む無機物である。ベントナイトには、例えば、Na+イオンを多く含むNa型ベントナイトと、Ca2+イオンを多く含むCa型ベントナイト、Ca型ベントナイトに対して数wt%の炭酸ナトリウムを加えて人工的にNa型化させた活性化ベントナイト等がある。
【0081】
セピオライトは、含水マグネシウム珪酸塩を主成分とする粘土鉱物であり、一般的な化学組成はMg8Si1230(OH24(OH)4・6~8H2Oで表され、多孔質構造を有する。pH(3%サスペンジョン)は、入手し易さの点から、8.0~9.0のものが好ましく、8.9~9.3のものがより好ましい。
【0082】
(硫黄系ガス化学吸収剤)
硫黄系ガス化学吸収剤は、吸収対象ガスの硫黄系ガスを化学的に吸収又は分解する作用を有するガス吸収剤である。そして、化学的な吸収又は分解であることにより、水等の影響を受けにくく、一旦吸収した硫黄系ガス分子は脱離し難く、効率的に吸収を行うことができる。また、分解生成物は、硫黄系ガス物理吸収剤又は硫黄系ガス化学吸収剤によって吸収される。硫黄系ガス化学吸収剤は、金属酸化物が担持された無機物、金属が混入されたガラス、金属イオンが混入されたガラスからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。金属酸化物が担持された無機物における金属酸化物は、CuO、ZnO、AgOからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。また、担持する無機物は、ゼオライトのような無機多孔体が好ましい。金属が混入されたガラスにおける金属、又は金属イオンが混入されたガラスにおける金属イオンの金属種は、Ca、Mg、Na、Cu、Zn、Ag、Pt、Au、Fe、Al、Niからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0083】
第1の態様において、フィルム70の硫黄系ガス吸収剤の含有量としては、硫黄系ガスを吸収することを限度として特に制限されず、フィルム70に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約0.1質量部以上、より好ましくは約0.2質量部以上、さらに好ましくは約0.3質量部以上であり、また、好ましくは約30質量部以下、より好ましくは約27質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、0.1~30質量部程度、0.1~27質量部程度、0.1~25質量部程度、0.2~30質量部程度、0.2~27質量部程度、0.2~25質量部程度、0.3~30質量部程度、0.3~27質量部程度、0.3~25質量部程度が挙げられる。また、フィルム70の硫黄系ガス吸収層に含まれる硫黄系ガス吸収剤の含有量としては、硫黄系ガスを吸収することを限度として特に制限されず、硫黄系ガス吸収層に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約5質量部以上、より好ましくは約6質量部以上、さらに好ましくは約7質量部以上であり、また、好ましくは約60質量部以下、より好ましくは約55質量部以下、さらに好ましくは約50質量部以下、約30質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、5~60質量部程度、5~55質量部程度、5~50質量部程度、5~30質量部程度、6~60質量部程度、6~55質量部程度、6~50質量部程度、6~30質量部程度、7~60質量部程度、7~55質量部程度、7~50質量部程度、7~30質量部程度が挙げられる。
【0084】
第1の態様において、硫黄系ガス吸収層に含まれる樹脂の含有率としては、例えば50質量%以上、好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0085】
第1の態様において、硫黄系ガス吸収層に含有される硫黄系ガス吸収剤は、硫黄系ガス吸収剤を樹脂とメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。具体的には、硫黄系ガス吸収剤を樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調整し、次いで、所望の硫黄系ガス吸収層中の濃度になるように、マスターバッチと他の成分とをドライブレンドして用いることが好ましい。メルトブレンドされる硫黄系ガス吸収剤や樹脂のそれぞれは、1種であっても2種以上であってもよい。硫黄系ガス吸収剤のマスターバッチ中の含有量は、好ましくは20~90質量%程度、より好ましくは30~70質量%程度である。上記の範囲であれば、硫黄系ガス吸収層中に必要かつ十分な量の硫黄系ガス吸収剤を分散した状態で含有させることが容易である。
【0086】
第1の態様において、硫黄系ガス吸収層に含有される樹脂としては、吸水層に含有される樹脂として例示した樹脂と同じものが例示される。
【0087】
前記の通り、第1の態様に係るフィルム70に硫黄系ガス吸収剤が含まれる場合、硫黄系ガス吸収剤は吸水層に含まれていてよいし、吸水剤を含まない層に含まれていてもよい。硫黄系ガス吸収剤が吸水層に含まれる場合には、吸水層は硫黄系ガス吸収層としても機能する。
【0088】
第1の態様に係るフィルム70は、例えば、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を含有することができる。その含有量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に含有することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等を含有することができる。
【0089】
第1の態様に係るフィルム70の厚みとしては、本発明の効果を奏することを限度として特に制限されず、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上であり、また、好ましくは約1000μm以下、より好ましくは約900μm以下、さらに好ましくは約500μm以下である。当該厚みの好ましい範囲としては、10~1000μm程度、10~900μm程度、10~500μm程度、15~1000μm程度、15~900μm程度、15~500μm程度、20~1000μm程度、20~900μm程度、20~500μm程度が挙げられる。
【0090】
また、第1の態様において、フィルム70が2層以上により構成されている場合、各層の厚みとしては、フィルム70の厚みが前記のようになればよい。例えば吸水層の厚みについては、好ましくは約5μm以上、より好ましくは約6μm以上、さらに好ましくは約7μm以上であり、また、好ましくは約500μm以下、より好ましくは約400μm以下、さらに好ましくは約300μm以下であり、当該厚みの好ましい範囲としては、5~500μm程度、5~400μm程度、5~300μm程度、6~500μm程度、6~400μm程度、6~300μm程度、7~500μm程度、7~400μm程度、7~300μm程度が挙げられる。また、硫黄系ガス吸収層の厚みについては、好ましくは約5μm以上、より好ましくは約7μm以上、さらに好ましくは約10μm以上であり、また、好ましくは約500μm以下、より好ましくは約400μm以下、さらに好ましくは約300μm以下であり、当該厚みの好ましい範囲としては、5~500μm程度、5~400μm程度、5~300μm程度、7~500μm程度、7~400μm程度、7~300μm程度、10~500μm程度、10~400μm程度、10~300μm程度が挙げられる。
【0091】
また、第2の態様において、硫黄系ガス吸収剤は、硫黄系ガス物理吸収剤及び/又は硫黄系ガス化学吸収剤を含有することが好ましい。各種の硫黄系ガス吸収剤を併用、例えば硫黄系ガス物理吸収剤と硫黄系ガス化学吸収剤とを併用することによって、多種の硫黄系ガスを容易に吸収することが可能になる。硫黄系ガス吸収剤は例えば粉体で用いられる。硫黄系ガス吸収剤の最大粒子径は20μm以下が好ましく、粉体の数平均粒子径は0.1μm以上、1.0μm以上などが好ましく、また、15μm以下、10μm以下、8μm以下などが好ましく、好ましい範囲としては、0.1~15μm程度、0.1~10μm程度、0.1~8μm程度、1~15μm程度、1~10μm程度、1~8μm程度が挙げられる。数平均粒子径が上記範囲よりも小さいと、硫黄系ガス吸収剤が凝集し易くなり、数平均粒子径が上記範囲よりも大きいと、硫黄系全固体電池用樹脂フィルムの均質性が劣るおそれがあり、硫黄系ガス吸収剤の表面積が小さくなることから硫黄系ガス吸収が劣るおそれがある。
【0092】
(硫黄系ガス物理吸収剤)
硫黄系ガス物理吸収剤は、吸収対象の硫黄系ガスを物理的に吸収する作用を有するガス吸収剤である。硫黄系ガス物理吸収剤は、SiO2/Al23モル比が1/1~2000/1の疎水性ゼオライト、ベントナイト、セピオライトからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。
【0093】
疎水性ゼオライト、ベントナイト、セピオライトの具体例は、それぞれ、第1の態様について説明した通りであり、記載を省略する。
【0094】
(硫黄系ガス化学吸収剤)
硫黄系ガス化学吸収剤は、第1の態様について説明した通りであり、記載を省略する。
【0095】
硫黄系ガス吸収層に含有される樹脂としては、フィルム70に含まれる樹脂として例示した樹脂と同じものが例示される。
【0096】
第2の態様において、フィルム70の硫黄系ガス吸収剤の含有量としては、硫黄系ガスを吸収することを限度として特に制限されず、フィルム70に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約0.1質量部以上、より好ましくは約0.2質量部以上、さらに好ましくは約0.3質量部以上であり、また、好ましくは約30質量部以下、より好ましくは約29質量部以下、さらに好ましくは28質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、0.1~30質量部程度、0.1~29質量部程度、0.1~28質量部程度、0.2~30質量部程度、0.2~29質量部程度、0.2~28質量部程度、0.3~30質量部程度、0.3~29質量部程度、0.3~28質量部程度が挙げられる。また、フィルム70の硫黄系ガス吸収層に含まれる硫黄系ガス吸収剤の含有量としては、硫黄系ガスを吸収することを限度として特に制限されず、硫黄系ガス吸収層に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約5質量部以上、より好ましくは約6質量部以上、さらに好ましくは約7質量部以上であり、また、好ましくは約60質量部以下、より好ましくは約55質量部以下、さらに好ましくは約50質量部以下、さらに好ましくは約30質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、5~60質量部程度、5~55質量部程度、5~50質量部程度、5~30質量部程度、6~60質量部程度、6~55質量部程度、6~50質量部程度、6~30質量部程度、7~60質量部程度、7~55質量部程度、7~50質量部程度、7~30質量部程度が挙げられる。
【0097】
第2の態様において、硫黄系ガス吸収層に含まれる樹脂の含有率としては、例えば40質量%以上、好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。
【0098】
第2の態様において、硫黄系ガス吸収層に含有される硫黄系ガス吸収剤は、硫黄系ガス吸収剤を樹脂とメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。具体的には、硫黄系ガス吸収剤を樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調整し、次いで、所望の硫黄系ガス吸収層中の濃度になるように、マスターバッチと他の成分とをドライブレンドして用いることが好ましい。メルトブレンドされる硫黄系ガス吸収剤や樹脂のそれぞれは、1種であっても2種以上であってもよい。硫黄系ガス吸収剤のマスターバッチ中の含有量は、好ましくは20~90質量%程度、より好ましくは30~70質量%程度である。上記の範囲であれば、硫黄系ガス吸収層中に必要かつ十分な量の硫黄系ガス吸収剤を分散した状態で含有させることが容易である。
【0099】
また、前記の通り、第2の態様において、フィルム70は、硫黄系ガス吸収剤に加えて、吸水剤をさらに含んでいてもよい。フィルム70に含まれる吸水剤は、樹脂フィルム中に分散させて吸水性を発揮するものであれば、特に制限されない。例えば、全固体電池10中における経時安定性の観点から、無機系吸水剤を好適に使用することができる。無機系吸水剤の好ましい具体例としては、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、ゼオライト、酸化アルミニウム、シリカゲル、アルミナゲル、及び焼ミョウバンなどが挙げられる。一般的に、無機系吸水剤の中でも無機系化学吸水剤は、無機系物理吸水剤よりも吸水効果が高く、含有量を低減することが可能であり、十分な吸水性と熱融着性を単層で実現しやすい。そして、無機系化学吸水剤の中でも、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムは、水分の再放出が少なく、包装体内の低湿度状態の経時安定性が高く、絶乾効果を有することから、特に好ましい。なお、絶乾効果とは、相対湿度が0%付近になるまで吸水する効果を示し、調湿効果とは、湿度が高い時には吸水し、湿度が低い時には放湿して、湿度を一定にする効果を指す。また、例えば全固体電池用のように高温環境で使用される場合、水分を再放出する温度帯が高い無機系化学吸収剤が好ましい。
【0100】
第2の態様において、フィルム70に含まれる吸水剤の含有量としては、本実施形態の効果を奏することを限度として特に制限されず、フィルム70に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約0.5質量部以上、より好ましくは約2質量部以上、さらに好ましくは約3質量部以上であり、また、好ましくは約50質量部以下、より好ましくは約45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、0.5~50質量部程度、0.5~45質量部程度、0.5~40質量部程度、2~50質量部程度、2~45質量部程度、2~40質量部程度、3~50質量部程度、3~45質量部程度、3~40質量部程度が挙げられる。また、フィルム70の吸水層に含まれる吸水剤の含有量としては、本実施形態の効果を奏することを限度として特に制限されず、吸水層に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約0.5質量部以上、より好ましくは約2質量部以上、さらに好ましくは約3質量部以上であり、また、好ましくは約50質量部以下、より好ましくは約45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、0.5~50質量部程度、0.5~45質量部程度、0.5~40質量部程度、2~50質量部程度、2~45質量部程度、2~40質量部程度、3~50質量部程度、3~45質量部程度、3~40質量部程度が挙げられる。
【0101】
第2の態様に係るフィルム70において、吸水層に含有される吸水剤は、例えば、吸水剤と樹脂をメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。具体的には、吸水剤を樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調製する。得られたマスターバッチをさらに樹脂と混合し、フィルム状に成形することで吸水層を形成することができる。吸水剤のマスターバッチ中の含有量は、好ましくは20~90質量%程度、より好ましくは30~70質量%程度である。上記の範囲であれば、吸水層中に必要かつ十分な量の吸水剤を分散した状態で含有させることが容易である。
【0102】
第2の態様において、吸水層に含有される樹脂としては、フィルム70に含まれる樹脂として例示した樹脂と同じものが例示される。
【0103】
また、第2の態様において、フィルム70の吸水層に含まれる樹脂の含有率としては、例えば50質量%以上、好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0104】
前記の通り、第2の態様に係るフィルム70に吸水剤が含まれる場合、吸水剤は硫黄系ガス吸収層に含まれていてよいし、硫黄系ガス吸収剤を含まない層に含まれていてもよい。吸水剤が硫黄系ガス吸収層に含まれる場合には、硫黄系ガス吸収層は吸水層としても機能する。
【0105】
第2の態様において、フィルム70は、例えば、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を含有することができる。その含有量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に含有することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等を含有することができる。
【0106】
第2の態様において、フィルム70の厚みとしては、本発明の効果を奏することを限度として特に制限されず、好ましくは約25μm以上、より好ましくは約30μm以上、さらに好ましくは約40μm以上であり、また、好ましくは約250μm以下、より好ましくは約240μm以下、さらに好ましくは約230μm以下である。当該厚みの好ましい範囲としては、25~250μm程度、25~240μm程度、25~230μm程度、30~250μm程度、30~240μm程度、30~230μm程度、40~250μm程度、40~240μm程度、40~230μm程度が挙げられる。
【0107】
また、第2の態様において、フィルム70が2層以上により構成されている場合、各層の厚みとしては、フィルム70の厚みが前記のようになればよい。例えば硫黄系ガス吸収層の厚みについては、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上であり、また、例えば約100μm以下、好ましくは約95μm以下、より好ましくは約90μm以下、さらに好ましくは約85μm以下であり、当該厚みの好ましい範囲としては、10~100μm程度、10~95μm程度、10~90μm程度、10~85μm程度、15~100μm程度、15~95μm程度、15~90μm程度、15~85μm程度、20~100μm程度、20~95μm程度、20~90μm程度、20~85μm程度が挙げられる。また、吸水層の厚みについては、好ましくは約5μm以上、より好ましくは約6μm以上、さらに好ましくは約7μm以上であり、また、好ましくは約60μm以下、より好ましくは約55μm以下、さらに好ましくは約50μm以下であり、当該厚みの好ましい範囲としては、5~60μm程度、5~55μm程度、5~50μm程度、6~60μm程度、6~55μm程度、6~50μm程度、7~60μm程度、7~55μm程度、7~50μm程度が挙げられる。
【0108】
(フィルム70の製造方法)
本実施形態において、フィルム70の製造方法は、フィルム70が得られれば特に限定されず、公知又は慣用の製膜方法、積層方法を適用することができる。フィルム70の製造は、例えば、押出法又は共押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の、公知の製膜化法及び/又は積層法により行うことができる。フィルム70が2層以上で構成されている場合には、例えば、予め作製された各層を構成するフィルムを、接着剤層を介して積層してもよく、予め作製された層上に溶融した樹脂組成物を押出又は共押出によって積層してもよく、複数層を同時に作製しながら溶融圧着によって積層してもよく、又は、他の層上に、1種又は2種以上の樹脂を、塗布及び乾燥してコーティングしてもよい。
【0109】
第1の態様において、吸水層(硫黄系ガス吸収層)などのフィルム70を構成する層を、押出し又は共押出しで、エクストルージョンコート法で積層したり、インフレーション法やキャスト法により製膜後に接着層を介して積層したりすることもできる。エクストルージョンコート法の場合でも、必要に応じて接着層を介して、積層してもよい。又は、予め製膜された吸水層(又は硫黄系ガス吸収層)用のフィルムを、エクストルージョンコート法、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法等により積層された接着層を介して積層、接着してもよい。そして、必要に応じてエージング処理を行ってもよい。
【0110】
第1の態様において、例えば、エクストルージョンコート法により吸水層などを積層する場合においては、まず、吸水層などの層を形成する樹脂組成物を加熱して溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し又は共押出し、該溶融樹脂を被積層面上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、吸水層などの層の形成と、被積層面への積層及び接着を同時に行うことができる。エクストルージョンコート法により積層する場合の各層に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、0.2~50g/10分が好ましく、0.5~30g/10分がより好ましい。MFRが上記範囲よりも小さい、又は大きいと加工適性が劣り易い。なお、本明細書において、MFRとはJIS K7210に準拠した手法から測定された値である。
【0111】
第1の態様において、インフレーション法を用いる場合の各層に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、0.2~10g/10分が好ましく、0.2~9.5g/10分がより好ましい。MFRが上記範囲よりも小さい又は大きいと、加工適性が劣り易い。
【0112】
第2の態様において、硫黄系ガス吸収層(吸水層)などのフィルム70を構成する層を、押出し又は共押出しで、エクストルージョンコート法で積層したり、インフレーション法やキャスト法により製膜後に接着層を介して積層したりすることもできる。エクストルージョンコート法の場合でも、必要に応じて接着層を介して、積層してもよい。又は、予め製膜された硫黄系ガス吸収層(又は吸水層)用のフィルムを、エクストルージョンコート法、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法等により積層された接着層を介して積層、接着してもよい。そして、必要に応じてエージング処理を行ってもよい。
【0113】
第2の態様において、例えば、エクストルージョンコート法により硫黄系ガス吸収層などを積層する場合においては、まず、硫黄系ガス吸収層などの層を形成する樹脂組成物を加熱して溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し又は共押出し、該溶融樹脂を被積層面上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、硫黄系ガス吸収層など層の形成と、被積層面への積層及び接着を同時に行うことができる。エクストルージョンコート法により積層する場合の各層に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、0.2~50g/10分が好ましく、0.5~30g/10分がより好ましい。MFRが上記範囲よりも小さい、又は大きいと加工適性が劣り易い。なお、本明細書において、MFRとはJIS K7210に準拠した手法から測定された値である。
【0114】
第2の態様においても、インフレーション法を用いる場合の各層に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、0.2~10g/10分が好ましく、0.2~9.5g/10分がより好ましい。MFRが上記範囲よりも小さい又は大きいと、加工適性が劣り易い。
【0115】
また、本実施形態において、フィルム70を構成する各層間には、接着性を向上させるために、各層の表面に、必要に応じて、予め、所望の表面処理を施すことができる。例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス又は窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いたる酸化処理等の前処理を任意に施して、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層等を形成して設けることができる。或いは、表面に、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、蒸着アンカーコート剤層等の各種コート剤層を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。上記の各種コート剤層には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂又はその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を用いることができる。
【0116】
本実施形態において、フィルム70を構成する各層は、さらに、必要に応じて、テンター方式やチューブラー方式等を利用して、従来公知の方法によって、1軸延伸又は2軸延伸することができる。
【0117】
<3.全固体電池の作用及び効果>
全固体電池10は、フィルム70を備える。フィルム70は、吸水剤を含む。このため、外装体20内に侵入した水蒸気、及び、外装体20内に存在する水分を吸収できる。このため、全固体電池10を構成する要素に含まれる固体電解質40A、50A、60Aと、水蒸気(水分)と、が接触することによって硫化水素等のガスが発生することを抑制できる。
【0118】
フィルム70は、硫黄系ガス吸収剤を含む。このため、例えば、全固体電池10を構成する要素に含まれる固体電解質40A、50A、60Aと、水蒸気(水分)と、が接触することによって発生する硫化水素を吸収できる。このため、外装体20の内圧が過度に上昇することを抑制できる。
【0119】
<4.変形例>
上記実施形態は本発明に関する全固体電池が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する全固体電池は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、又は、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。
【0120】
<4-1>
上記実施形態において、第2の態様のフィルム70は、ガス吸収剤として、二酸化炭素吸収剤及び酸素吸収剤の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0121】
<4-2>
上記実施形態の図3に示される例において、フィルム70は、負極層50の固体電解質50A、及び、固体電解質層60の固体電解質60Aの少なくとも一方と接触するように配置されてもよい。
【0122】
<4-3>
上記実施形態では、平面視における正極集電体41の面積は、負極集電体51の面積よりも小さく、平面視における正極活物質層42、43の面積は、負極活物質層52、53の面積よりも小さかったが、これらの大小関係は、逆であってもよい。すなわち、平面視における正極集電体41の面積は、負極集電体51の面積よりも大きく、平面視における正極活物質層42、43の面積は、負極活物質層52、53の面積よりも大きくてもよい。この変形例では、フィルム70は、負極層50と接触するように、負極層50の外郭の少なくとも一部に沿って配置されること好ましい。
【0123】
<4-4>
上記実施形態において、外装体20の構成は、任意に変更可能である。外装体20は、例えば、1枚の外装部材21を開口部が形成されるように蓄電素子30に巻き付けることによって構成されてもよい。
【0124】
図13図15は、変形例の全固体電池10Xの断面図である。全固体電池10Xは、1枚の外装部材21が開口部が形成されるように蓄電素子30に巻き付けられ、開口部を閉鎖するように蓋体100が配置される。蓋体100の側面と外装部材21とは、例えば、ヒートシールによって接合されることが好ましい。
【0125】
蓋体100は、任意の形状の金属成形品であってもよいし、任意の形状の樹脂成形品であってもよい。蓋体100が金属成形品又は樹脂成形品である場合、全固体電池10Xが重ねて配置された場合であっても、外装体20が変形することが抑制されるように、蓋体100を構成する材料は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。蓋体100を構成する材料の厚さの最小値は、例えば、1.0mmであり、3mmがより好ましく、4mmがさらに好ましい。蓋体100を構成する材料の厚さの最大値は、例えば、10mmであり、8.0mmがより好ましく、7.0mmがさらに好ましい。蓋体100を構成する材料の厚さの最大値は、10mm以上であってもよい。蓋体100を構成する材料の厚さの好ましい範囲は、1.0mm~10mm、1.0mm~8.0mm、1.0mm~7.0mm、3.0mm~10mm、3.0mm~8.0mm、3.0mm~7.0mm、4.0mm~10mm、4.0mm~8.0mm、4.0mm~7.0mmである。本開示において、蓋体100が金属成形品又は樹脂成形品と表現される場合、蓋体100を構成する材料としてフィルムは含まれない。フィルムとは、例えば、JIS(日本工業規格)の[包装用語]規格によって規定されるフィルムである。なお、JISの[包装用語]規格よって規定されるフィルムは、厚さが250μm未満のプラスチックの膜状のものである。なお、蓋体100を構成する材料の厚さは、蓋体100の部位によって異なっていてもよい。蓋体100を構成する材料の厚さが蓋体100の部位によって異なる場合、蓋体100を構成する材料の厚さは、最も厚い部分の厚さである。
【0126】
蓋体100は、例えば、板状であってもよい。蓋体100が板状である場合、全固体電池10Xが重ねて配置された場合であっても、外装体20が変形することが抑制されるように、蓋体100は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。別の観点では、蓋体100が板状である場合、蓋体100の側面と外装部材21とを好適にヒートシールできるように、蓋体100の側面は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。蓋体100の厚さの最小値は、例えば、1.0mmであり、3mmがより好ましく、4mmがさらに好ましい。蓋体100の厚さの最大値は、例えば、10mmであり、8.0mmがより好ましく、7.0mmがさらに好ましい。蓋体100の厚さの最大値は、10mm以上であってもよい。蓋体100を構成する材料の厚さの好ましい範囲は、1.0mm~10mm、1.0mm~8.0mm、1.0mm~7.0mm、3.0mm~10mm、3.0mm~8.0mm、3.0mm~7.0mm、4.0mm~10mm、4.0mm~8.0mm、4.0mm~7.0mmである。本開示において、蓋体100が板状と表現される場合、蓋体100を構成する材料としてJIS(日本工業規格)の[包装用語]規格によって規定されるフィルムは含まれない。なお、蓋体100の厚さは、蓋体100の部位によって異なっていてもよい。蓋体100の厚さが部位によって異なる場合、蓋体100の厚さは、最も厚い部分の厚さである。
【0127】
蓋体100は、蓄電素子30と面する第1面100A、及び、第1面100Aと反対側の第2面100Bを含む。蓋体100の中央には、第1面100A及び第2面100Bを貫通する孔100Cが形成される。
【0128】
図13に示される例では、フィルム70は、蓄電素子30の上面及び下面の概ね全体を覆うように、外装部材21と蓄電素子30との間に配置される。フィルム70は、蓄電素子30を構成する要素に含まれる固体電解質40A、50A、60Aの少なくとも一部と接触する。フィルム70と外装部材21の内面(熱融着性樹脂層23C)とは、接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。フィルム70の少なくとも一部は、外装部材21と蓋体100との間に配置されてもよい。
【0129】
図14に示される例では、フィルム70は、蓄電素子30の側面の概ね全体を覆うように、蓋体100と蓄電素子30との間に配置される。フィルム70は、蓄電素子30を構成する要素に含まれる固体電解質40A、50A、60Aの少なくとも一部と接触する。フィルム70と蓋体100の第1面100Aとは、接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。フィルム70と蓋体100の第1面100Aとは、接触していてもよく、離間していてもよい。フィルム70は、蓄電素子30の概ね全体を覆うように、外装部材21と蓄電素子30との間に配置されてもよい。フィルム70と外装部材21の内面(熱融着性樹脂層23C)とは、接合されていてもよく、接合されていなくてもよい。
【0130】
図15に示される例では、フィルム70が端子用接着フィルム90として用いられる。フィルム70は、蓄電素子30を構成する要素に含まれる固体電解質40A、50A、60Aの少なくとも一部と接触する。フィルム70は、少なくとも蓋体100の孔100Cに配置されることが好ましい。フィルム70は、蓋体100の孔100Cから露出していてもよい。蓋体100を備える全固体電池10Xは、蓋体100の孔100Cから水分が侵入するおそれがある。第1の態様のフィルム70を備える全固体電池10Xは、フィルム70が吸水剤を含んでいるため、蓋体100の孔100Cから浸入した水分をフィルム70が吸水・保持することで、蓄電素子30にまで水分が到達することを抑制することができる。第2の態様のフィルム70を備える全固体電池10Xは、フィルム70がガス吸収剤を含んでいるため、蓄電素子30から発生した硫化水素等のガスがフィルム70によって吸収される。このため、蓋体100の孔100Cを介して硫化水素等のガスが外部に放出されにくい。
【0131】
<5.実施例>
本願発明者は、実施例1~3、及び、比較例1、2の全固体電池を製造し、正極層と負極層との短絡、及び、収容体の膨張の有無を確認する試験を実施した。なお、以下では、説明の便宜上、実施例及び比較例の全固体電池を構成する要素のうち、実施形態と同じ要素には、実施形態と同様の符号を付して説明する場合がある。
【0132】
<5―0.全固体電池用樹脂フィルムの製造方法及び試験方法>
本願発明者は、実施例1~3の全固体電池に用いるフィルム70を次の手順で製造した。本願発明者は、二軸混錬押し出し機を用いて、水分吸収剤粉末をポリプロピレン中に分散させたマスターバッチを作製し、インフレ押し出し機を用いて押出機のシリンダ回転数、及び、引き取り速度を調整して任意の厚みになるように調整してフィルム70を製造した。
【0133】
製造したフィルム70を3cm角(幅5mm)の枠状にカットし、3cm角の負極層50上に2cm角の固体電解質層60、及び、フィルム70を設置し、2.5cm角の正極層40を積層したあと、上下を圧力100MPaで全体を面プレスした。面プレスの条件は、常温、常湿、プレス保持時間は、10分である。次に、正極層40と負極層50との間の通電をマルチメーターで確認した。本試験で使用したマルチメーターは、日置電機株式会社製の 3154 DIGITAL MΩ HiTESTERである。マルチメーターによって測定される抵抗値が2000MΩ以下の場合、正極層40と負極層50との間の通電がなかったと判定した。
【0134】
次に、蓄電素子30を6cm角の外装部材21、22で包み、外装部材21、22の4辺を7mmシールバーで熱融着性樹脂層23Cの残存率が70%になるようにヒートシールした後、シール幅が2mmになるようにカットし、蓄電素子30が収容された5cm角の外装体20を得た。蓄電素子30が収容された外装体20を、温度85℃、湿度85%の環境下に100時間放置したあと、ガスの発生に起因する外装体20の膨張の有無を目視で確認した。なお、本試験では、フィルム70は試験前(設置前)に真空オーブン(-50MPa)で24時間静置して乾燥させたものを使用した。
【0135】
<5-1.実施例1>
実施例1の全固体電池は、実施形態の全固体電池10である。実施例1の全固体電池は、図3に示されるようにフィルム70が配置される。フィルム70は、図12に示される第1層71、第2層72、及び、第3層73を有する。フィルム70の諸元は、以下のとおりである。
【0136】
・第1層71を構成する材料は、水分吸収剤が添加されたポリプロピレンである。第1層71の水分吸収濃度は、20wt%である。第1層71の厚さは、30μmである。
・第2層72を構成する材料は、ポリプロピレンである。第2層72の厚さは、10μmである。
・第3層73を構成する材料は、ポリプロピレンである。第3層73の厚さは、10μmである。
・実施例1の全固体電池10に用いられるフィルム70の全体の水分吸収濃度は、12wt%である。
【0137】
<5-2.実施例2>
実施例2の全固体電池は、実施形態の全固体電池10である。実施例2の全固体電池は、図3に示されるようにフィルム70が配置される。フィルム70は、図3に示される単層である。フィルム70の諸元は、以下のとおりである。
【0138】
・フィルム70を構成する材料は、水分吸収剤が添加されたポリプロピレンである。フィルム70の水分吸収濃度は、12wt%である。
・フィルム70の厚さは、50μmである。
【0139】
<5-3.実施例3>
実施例3の全固体電池は、実施形態の全固体電池10である。実施例3の全固体電池は、図3に示されるようにフィルム70が配置される。フィルム70は、図3に示される単層である。フィルム70の諸元は、以下のとおりである。
【0140】
・フィルム70を構成する材料は、水分吸収剤が添加されたポリプロピレンである。フィルム70の水分吸収濃度は、24wt%である。
・フィルム70の厚さは、100μmである。
【0141】
<5-4.比較例1>
比較例1の全固体電池は、フィルム70を有していない点において、実施形態の全固体電池10と異なり、その他の構成は、実施形態の全固体電池10と同じである。
【0142】
<5-5.比較例2>
比較例2の全固体電池は、フィルム70に代えて、ポリプロピレンフィルムを有している点において、実施形態の全固体電池10と異なり、その他の構成は、実施形態の全固体電池10と同じである。比較例2の全固体電池は、図3のフィルム70と同じ位置にポリプロピレンフィルムが配置される。ポリプロピレンフィルムの厚さは、50μmである。
【0143】
<5-6.試験結果>
実施例1~3の全固体電池においては、正極層40と負極層50との間の通電は確認されなかった。実施例1~3の全固体電池は、正極層40と負極層50との間にフィルム70が配置されているため、プレスされたときに負極層50の外周端部が破損せず、短絡が発生しなかったためであると考えられる。
【0144】
実施例1~3の全固体電池においては、外装体20の膨張が確認されなかった。実施例1~3の全固体電池は、フィルム70を有するため、外装体20の外部から侵入した水蒸気がフィルム70によって吸収され、水蒸気と固体電解質とが接触しなかった、又は、微量の水蒸気と固体電解質とが接触したためであると考えられる。
【0145】
比較例1の全固体電池においては、正極層40と負極層50との間の通電が確認された。比較例1の全固体電池は、正極層40と負極層50との間にフィルムが存在しないため、プレスされたときに負極層50の外周端部が破損し、短絡が発生したためであると考えられる。
【0146】
比較例1の全固体電池においては、外装体20の膨張が確認された。比較例1の全固体電池は、フィルム70を有さないため、外装体20の外部から侵入した水蒸気と固体電解質とが接触して、硫化水素等のガスが発生したためであると考えられる。
【0147】
比較例2の全固体電池においては、正極層40と負極層50との間の通電は確認されなかった。比較例2の全固体電池は、正極層40と負極層50との間にポリプロピレンフィルムが配置されているため、プレスされたときに負極層50の外周端部が破損せず、短絡が発生しなかったためであると考えられる。
【0148】
比較例2の全固体電池においては、外装体20の膨張が確認された。比較例2の全固体電池は、ポリプロピレンフィルムがガス吸収性を有さないため、外装体20の外部から侵入した水蒸気と固体電解質とが接触して、硫化水素等のガスが発生したためであると考えられる。
【0149】
[6.付記事項]
本実施形態のフィルム70の第1の態様は、以下に示す事項を含む。
【0150】
項1A. 全固体電池の蓄電素子を構成する要素に含まれる固体電解質と、前記固体電解質の少なくとも一部と接触するように配置される全固体電池用樹脂フィルムであって、
吸水剤を含む、全固体電池用樹脂フィルム。
項2A. 前記吸水剤は、無機系吸水剤である、項1Aに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項3A. 前記吸水剤は、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、ゼオライト、酸化アルミニウム、シリカゲル、アルミナゲル、及び焼ミョウバンからなる群より選択される少なくとも1種である、項1A又は2Aに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項4A. 前記全固体電池用樹脂フィルムに含まれる樹脂100質量部に対して、前記吸水剤の含有量が、0.1質量部以上である、項1A~3Aのいずれか1項に記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項5A. 2層以上により構成されている、項1A~4Aのいずれか1項に記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項6A. 前記2層以上の層のうち、少なくとも1層が前記吸水剤を含み、少なくとも1層が硫黄系ガス吸収剤を含む、項5Aに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項7A. 前記全固体電池用樹脂フィルムの前記吸水剤を含む層は、樹脂100質量部に対して、前記吸収剤を0.5質量以上含む、項1A~6Aのいずれか1項に記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項8A. 熱融着性樹脂を含む、項1A~7Aのいずれか1項に記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項9A. 前記熱融着性樹脂が、ポリエステル及びポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項8Aに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
【0151】
本実施形態のフィルム70の第2の態様は、以下に示す事項を含む。
項1B.全固体電池の蓄電素子を構成する要素に含まれる固体電解質と、前記固体電解質の少なくとも一部と接触するように配置される全固体電池用樹脂フィルムであって、
硫黄系ガス吸収剤を含む、全固体電池用樹脂フィルム。
項2B. 前記全固体電池用樹脂フィルムに含まれる樹脂100質量部に対して、前記硫黄系ガス吸収剤の含有量が、0.1質量部以上である、項1Bに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項3B. 前記硫黄系ガス吸収剤は、最大粒子径が20μm以下であり、数平均粒子径が0.1μm以上、15μm以下である、項1B又は2Bに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項4B. 前記硫黄系ガス吸収剤は、硫黄系ガス化学吸収剤及び硫黄系ガス物理吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1B~3Bのいずれか1項に記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項5B. 前記硫黄系ガス物理吸収剤が、SiO2/Al23モル比が1/1~2000/1の疎水性ゼオライト、ベントナイト及びセピオライトからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項4Bに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項6B. 前記硫黄系ガス化学吸収剤が、金属酸化物であるか、金属もしくは金属イオンが担持又は混入された無機物である、項4B又は5Bに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項7B. 前記金属酸化物が、CuO、ZnO及びAgOからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項6Bに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項8B. 前記の金属もしくは金属イオンが担持又は混入された無機物における金属種が、Ca、Mg、Na、Cu、Zn、Ag、Pt、Au、Fe、Al及びNiからなる群より選択される少なくとも1種である、項6B又は7Bに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項9B. 前記全固体電池用樹脂フィルムの前記硫黄系ガス吸収剤を含む層は、樹脂100質量部に対して、前記硫黄系ガス吸収剤を5質量以上含む、項1B~8Bのいずれか1項に記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項10B. 熱融着性樹脂を含む、項1B~9Bのいずれか1項に記載の全固体電池用樹脂フィルム。
項11B. 前記熱融着性樹脂が、ポリエステル及びポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項10Bに記載の全固体電池用樹脂フィルム。
【符号の説明】
【0152】
10 :全固体電池
23C :バリア層
40A、50A、60A:固体電解質
40 :正極層
50 :負極層
60 :固体電解質層
70 :全固体電池用樹脂フィルム
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