(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】分子診断アッセイシステム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241119BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20241119BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
G01N35/10 A
(21)【出願番号】P 2022069108
(22)【出願日】2022-04-19
(62)【分割の表示】P 2018523389の分割
【原出願日】2016-07-22
【審査請求日】2022-05-09
(32)【優先日】2015-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514273055
【氏名又は名称】セフェィド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ドリティ、 ダグ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、 ティエン
(72)【発明者】
【氏名】フロム、 デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】カスラー、 リック
(72)【発明者】
【氏名】ディケンズ、 ダスティン
(72)【発明者】
【氏名】モリタ、 スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ピッチーニ、 マシュー
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/132219(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/086445(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/039703(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0281965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断アッセイシステムのためのシリンジ駆動部を操作するシステムであって、
診断アッセイシステムのシャーシと、
診断アッセイシステムの前記シャーシに結合し
、いかなる位置センサ又は圧力センサも用いず、いかなるエンコーダハードウェアも含まない、ブラシレスDC(BLDC)モータと、
前記BLDCモータで動作可能な、逆駆動可能なリードスクリューと、
リムーバブルアッセイカートリッジに係合するために前記リードスクリューによって動作可能なプランジャロッドと、
を備え、
前記BLDCモータは、前記BLDCモータによる電流の引き出しをモニタすることで前記リードスクリューを動作させるように構成され、前記電流は前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力変化に
応じて変化する、システム。
【請求項2】
前記プランジャロッドは横アームによって前記リードスクリューに結合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プランジャロッドはリムーバブルアッセイカートリッジのプランジャチップに係合するように動作可能である、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記BLDCモータは、前記電流の変化の検出に基づいて前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力を変化させる動作を変更するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記BLDCモータの動作を変更することは、前記プランジャロッドを引き上げて前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力を低減することを含む、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記BLDCモータの動作を変更することは、前記プランジャロッドを下げて前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力を増加させることを含む、請求項
4に記載のシステム。
【請求項7】
前記BLDCモータの動作を変更することは、前記プランジャロッドを減速して前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力速度を低減することを含む、請求項
4に記載のシステム。
【請求項8】
前記BLDCモータの動作を変更することは、前記プランジャロッドを加速して前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力速度を増加させることを含む、請求項
4に記載のシステム。
【請求項9】
診断アッセイシステムのためのシリンジ駆動部を操作する方法であって、
いかなる位置センサ又は圧力センサも用いず、いかなるエンコーダハードウェアも含まないブラシレスDC(BLDC)モータは逆駆動可能なリードスクリューを回転する操作が可能であり、プランジャロッドは前記リードスクリューに結合されてそれにより移動可能であって、前記BLDCモータに電力供給するためのコマンドを受信することと、
前記BLDCモータに電力を供給して前記プランジャロッドを移動させて、リムーバブルアッセイカートリッジのシリンジ通路内にプランジャチップを係合させることと、
圧力変化に応じて変化する、前記BLDCモータの動作に関わる少なくとも一つの電流をモニタすることにより、前記シリンジ通路内の前記プランジャロッドの移動をモニタすることと、
前記BLDCモータの電流変化を検出することと、
検出された前記BLDCモータの電流変
化に基づいて前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の前記プランジャロッドの移動を変化させるように前記BLDCモータの動作を変更することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記プランジャロッドの移動中に、前記BLDCモータの少なくとも一つの電流をモニタすることが発生する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記BLDCモータの動作を変更することは、前記プランジャロッドを引き上げて前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力を低減することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記BLDCモータの動作を変更することは、前記プランジャロッドを下げて前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力を増加させることを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記BLDCモータの動作を変更することは、前記プランジャロッドを減速して前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力変化速度を低減することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記BLDCモータの動作を変更することは、前記プランジャロッドを加速して前記リムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力変化速度を増加させることを含む、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2015年7月24日出願の「分子診断アッセイシステム(Molecular Diagnostic Assay System)」と題する米国特許仮出願第62/196,845号の優先権の利益を主張し、参照によりその内容全体を本明細書に援用する。
【0003】
本出願は一般に、本出願と同時出願の「熱制御装置と使用方法(Thermal Control Device and Methods of Use)」と題する米国特許出願第-号[代理人整理番号85430-1017353-011410US]、本出願と同時出願の「改善された粒度のエンコーダなしモータと使用方法(Encoderless Motor with Improved Granularity and Methods of Use)」と題する米国特許出願第-号[代理人整理番号85430-0971600-010610US]、2013年3月15日出願の「ハニカムチューブ(Honeycomb tube)」と題する米国特許出願第13/843,739号、2013年3月14日出願の「医療機器のリモートモニタ(Remote Monitoring of Medical Devices)」と題する米国特許出願第13/828,741号、2002年2月25日出願の「流体処理及び制御(Fluid Processing and Control)」と題する米国特許第8,048,386号及び2000年8月25日出願の「流体制御処理システム(Fluid Control and Processing System)」と題する米国特許第6,374,684号に関連し、参照によりその全体をすべての目的のために本明細書に援用する。
【背景技術】
【0004】
技術の進歩によって今日の世界はますます繋がる環境になってきている。飛行機による移動で、普通の人が地球上を一つの大陸から別の大陸へその日のうちに旅行可能である一方で、伝染性の病原体が急速に拡散して、全地球人口に壊滅的な結果をもたらしうる致死性の病気にさらすこともあり得る。最近における重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、及びエボラ出血熱の発生は、一大陸の一地域を起源とする公衆衛生上の出来事がいかに急速に世界的な重大関心事に発展するかという例である。今日の世界は移動性が非常に高いので、リアルタイムに結果を提供し、すべての潜在的な流行への早期発見と緊急対応に資する、信頼性のある診断ツールが要求される。
【0005】
他方、この世界には地域住民への健康管理が容易にはできない、多くの遠隔の未開発地域がある。病院や医院などの健康管理施設、又は健康製品/サービス販売業者(例えば薬局)にすら、適切にアクセス出来ないことで、患者、特に感染症に罹患している患者に対して適切なタイミングでの診断と処置をする努力が大きく妨げられて、流行のリスクを適切に評価し、流行の急拡散を効果的に閉じ込めることが困難となっている。こうして、健康管理施設、近隣の診療所、小売サービス提供者であっても、又は電力、通信(例えばインターネット)、在来の健康管理サービス、及び/又は健康管理専門家が日常的に得られないリソースの限られた条件であっても、場所を問わずに、高度な移動性を有し、迅速、高信頼かつ正確な診断結果を下せる複合分子検査を遂行可能な、新規で改良された診断ツールに対する逼迫した必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、高度に洗練され、しかも完全な携帯性があって驚くほど容易に使用できる、上記の必要性を満たす分子診断アッセイシステムを開発した。既存の分子診断アッセイシステム(例えばセフェイド社のGeneXpert(登録商標)システム)に改良を行うことで、本明細書に記載の新しい分子診断アッセイシステムには、所望によりバッテリで電力が供給され、一般的には小型、軽量であって、患者が病院や研究所又は薬局からすらも離れているような任意の場所における完全な携帯使用を可能とする医療診断装置が含まれる。診断装置は、完全自動化された(オプションで同時に複数の病原体検出のための)診断アッセイを実行して、正確な結果を迅速に(通常1~2時間内に、そして最速で15~20分で)得ることが可能である。操作は容易であり、一つ又は複数の既製のアッセイカートリッジを使用して、患者が特定の病原体を保有しているかどうか、又は特定の病状にあるかどうかを示す検査結果を迅速に得ることが可能である。
【0007】
この新規に設計された分子診断アッセイシステムには、携帯型の検査装置から、集中データ収集又は処理センタであるリモート報告システムへ、又は医師又は患者が診断報告を受信するために使用する携帯デバイスなどのモバイルデバイスへ、検査結果を送るための安全なクラウドベース接続を提供するコンポーネントも含まれる。そのようなクラウドベース接続によって実質的に即時にデータ共有が可能となり、医師が遅滞なく患者の治療を開始できるばかりでなく、いかなる潜在的な流行も大規模に監視及び報告することが可能となる。
【0008】
これらの重要な特徴により、健康管理施設が少なく診断検査能力が不足する貧困な僻地における患者の早期診断と実効的治療を妨げ、妨害しがちな現在の制約が回避される。この新しく設計された分子診断アッセイシステムは、迅速な展開と、実質的にあらゆる環境において完全に動作する強みを有する、最初の本物のポイントオブケア診断ツールである。これはどこに居るかにかかわらず、真に人々への診断検査を可能とする。その展開性、その迅速かつ正確な診断機能、その技術的洗練さと操作の容易性、及びそのクラウドベースの接続性の組合せによって、この新しい分子診断アッセイシステムは新興市場に対する究極の解でありかつ医療診断検査の将来を規定する革新的なトレンドセッターとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は改良された診断アッセイシステムを提供する。このシステムは、扉駆動アセンブリ、シリンジ駆動部とバルブ駆動部、超音波処理ホーン、熱的及び光学的検出アセンブリ、及び装置管理/通信システムを含む、様々なサブアセンブリに係わる改良を含むことができる。本明細書に記載の改良された性能を提供するために、これらのサブアセンブリのいずれも個別又は他の任意のサブアセンブリとの組合せで、このような診断アッセイシステムに含まれ得ることが理解されるであろう。
【0010】
いくつかの実施形態において本発明は、アッセイカートリッジ(「サンプルカートリッジ」又は「テストカートリッジ」と呼ばれることもある)を収容するように適合された診断アッセイシステムを含む。そのようなシステムは、本明細書で記述する様々な特徴及びサブアセンブリの任意の一つ又は任意の組み合わせを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態において診断アッセイシステムは、例えば扉開閉機構とカートリッジ装填システム、シリンジ駆動部、及び/又はバルブ駆動部のいずれかと動作的に結合したブラシレスDC(BLDC)モータを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では診断アッセイシステムは、カートリッジ装填機構と連動しかつ逆駆動可能な変速機構によって駆動される、扉開閉機構を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では診断アッセイシステムは、n相のBLDCモータに動作的に結合され、かつBLDCモータのモニタされた電流ドローに少なくとも部分的に基づいて制御される、シリンジ駆動部を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では診断アッセイシステムは、エンコーダハードウェア又は位置センサを使用せずにBLDCモータのn個の電圧センサにより提供される電圧信号に少なくとも部分的に基づく、n相のBLDCモータに動作的に結合するバルブ駆動機構を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では診断アッセイシステムは、アッセイカートリッジ内の生体物質を溶解するためにアッセイカートリッジに係合可能であり、かつ共鳴周波数として最高出力振幅を与える周波数に少なくとも部分的に基づいて超音波処理を制御するように構成されたコントローラと動作的に結合した、超音波処理ホーンを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では診断アッセイシステムは、アッセイカートリッジの反応容器(時には「反応チューブ」と称されることもある)と熱的に係合可能な第1の熱電式クーラと、第1の熱電式クーラに熱的に結合し、かつ第1の熱電式クーラの効率を増加させて第1の熱電式クーラで反応容器の第1と第2の温度の間の急速熱サイクルを容易とするための、少なくとも一つの別の熱操作デバイスとを有する熱制御装置を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では診断アッセイシステムは、反応容器内の流体サンプル中へ、反応容器の一つ又は複数の端部(副面)及び/又は主面から励起が検出される角度に対して実質的に直交する角度で励起エネルギを放射するために、反応容器に対して取り付け可能な光学的励起/検出ブロックを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では診断アッセイシステムは、ユーザのモバイルデバイスと無線通信して、システム内に収容されたアッセイカートリッジに係わるシステム機能に関するユーザ入力を受信し、かつアッセイカートリッジに関する診断結果をモバイルデバイスに中継するように構成された通信ユニットを含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態は、診断アッセイシステム用の扉操作システムに関する。このシステムは診断アッセイシステムのシャーシを含むことができる。ブラシレスDC(BLDC)モータが、診断アッセイシステムのシャーシに結合可能である。逆駆動可能変速機が、BLDCモータで動作可能である。扉は、診断アッセイシステムのシャーシに対して、閉位置から開位置まで(かつ開位置から閉位置まで)移動可能である。BLDCモータは、BLDCモータの電流測定に基づいて逆駆動可能変速機を動作させるように構成可能であり、電流測定は逆駆動可能変速機に対する逆駆動事象に関連する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態は、診断アッセイシステム用の扉開放/閉鎖システムの操作方法に関する。この方法においては、診断アッセイシステムのカートリッジ収容扉を開放するコマンドを受信することができる。扉とカートリッジ装填機構に動作的に結合している逆駆動可能変速機に結合されたブラシレスDC(BLDC)モータを動作させて扉を閉位置から開くこと(及びその逆)が可能である。逆駆動可能変速機に対する第1の逆駆動事象は電流をモニタすることで検出可能である。第1の逆駆動事象の検出に基づいて扉を開位置に配置するBLDCモータの動作を停止することができ、カートリッジ装填機構の向きをアッセイカートリッジの受け入れ位置に配置することが可能である。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態は、診断アッセイシステムのためのシリンジ動作システムに関する。このシステムは診断アッセイシステムのシャーシを含むことができる。ブラシレスDC(BLDC)モータが、診断アッセイシステムのシャーシに結合可能である。逆駆動可能リードスクリューが、BLDCモータで動作可能であってよい。プランジャロッドが、アッセイカートリッジのシリンジ通路にプランジャチップを係合させるように、リードスクリューによって動作可能であってよい。BLDCモータは、BLDCモータの電流ドローをモニタすることでリードスクリューを動作させるように構成することが可能であり、電流はリムーバブルアッセイカートリッジ内の圧力変化に関連する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態は、診断アッセイシステムのためのシリンジの操作方法に関する。ブラシレスBLDCモータに電力供給するためのコマンドを受信することができる。ブラシレスBLDCモータは、逆駆動可能リードスクリューを回転するように動作可能であってよい。プランジャロッドはリードスクリューに結合されてそれにより移動可能である。BLDCモータに電力を供給してプランジャロッドを移動させて、アッセイカートリッジのシリンジ通路内でプランジャチップを係合させることができる。BLDCモータの動作に関する少なくとも一つの電流をモニタして、リムーバブルアッセイカートリッジの性質を決定することができる。BLDCモータの電流変化は検出可能である。電流変化の検出に基づいて、BLDCモータの動作をリムーバブルアッセイカートリッジ内で変更可能である。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態は、超音波ホーンとホーンハウジングを有するホーンアセンブリに関する。ホーンアセンブリは可動機構を介して使い捨てアッセイカートリッジと係合する。可動機構は、診断装置モジュールへのアッセイカートリッジの装填と排出のための非係合又は後退位置と、診断アッセイの一部としてのチャンバ内の生体細胞の溶解(これにはポリメラーゼ連鎖反応分析が含まれる。ただしそれに限らない)のために、ホーンをアッセイカートリッジの超音波処理チャンバに押し付け係合させるための係合又は前進位置との間で超音波ホーンを移動させる。いくつかの実施形態において可動機構は、ばね又は付勢機構と、ホーンハウジングのくさび面に係合するカムとを含み、下降位置と上昇位置との間のホーンの移動を実行する。いくつかの実施形態では、ホーンアセンブリの移動は、装填/排出アーム及びカートリッジモジュール扉などのその他の可動コンポーネントに共通のアクチュエータによって行われて、診断装置モジュール内での複数のコンポーネントの効率的な連係動作を提供する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態は、超音波ホーンと、閉ループフィードバックのもとで制御される少なくとも一つの圧電アクチュエータとを有するホーンに関する。いくつかの実施形態においてホーンは、共振周波数制御のために正弦波制御と位相整合を利用する制御回路を備える。これらの機能は圧電アクチュエータ間の同位相の振動を保証して、他の場合にありうるものよりも寸法と電力仕様の小さい超音波ホーンを用いて、安定して堅牢な超音波エネルギの送達を提供できるようにする。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態は、バルブ駆動機構の操作方法に関する。シャーシに結合されたブラシレスDC(BLDC)モータに電力を供給して、バルブ駆動部を特定の位置に動かすためのコマンドを受信可能である。バルグ駆動部は、リムーバブルアッセイカートリッジのバルブ本体の位置を回転させるように構成可能である。変速機はBLDCモータとバルブ駆動部の間に結合可能である。BLDCモータには位置センサやエンコーダハードウェアは含まれず、複数のホール効果センサが含まれ得る。BLDCモータは電力を供給されて、特定のターン数だけBLDCモータのシャフトを回転させ、ホール効果センサによって生成された正弦波信号に基づいてバルブ駆動部を特定の位置に移動させる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態は、バルブ駆動機構の動作システムに関する。このシステムは、バルブ駆動機構シャーシを含むことができる。ブラシレスDC(BLDC)モータはシャーシに結合可能である。BLDCモータには位置センサやエンコーダハードウェアは含まれず、複数のホール効果センサが含まれ得る。変速機がBLDCモータに結合可能である。変速機にはバルブ駆動部が結合可能である。バルグ駆動部は、リムーバブルアッセイカートリッジのバルブ本体の位置を回転させるように構成可能である。バルブ駆動器出力の位置は、ホール効果センサによって生成される正弦波信号の解析に基づいて決定可能である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、熱制御装置コンポーネントと光学励起/検出コンポーネントを備える熱光学サブアセンブリ(「TOS」)を含むことができる診断装置に関する。いくつかの実施形態で熱制御装置には、反応容器の熱サイクルを実行する熱電式クーラ(「TEC」)コンポーネントが含まれる。光学励起/検出コンポーネントは、改善された制御性、迅速性及び効率で標的分析物の励起と光学検出を実行する。いくつかの実施形態でTOSは、熱制御装置と光学コンポーネントとのインタフェースとなる取り付けコンポーネントを含み、標的分析物のアッセイを行うために調製された流体サンプルを有する反応容器を受ける空洞を画定する。いくつかの実施形態において取り付けコンポーネントは、標的分析物の増幅のための熱サイクル、励起、及び検出を同時又は相次いで行えるようにするために、熱制御装置と光学コンポーネントを反応容器に近接して提供する。いくつかの実施形態において反応容器は、マイクロアレイ又は複数の個別の反応ウェル、及び/又は前置増幅チャンバを反応容器内に備える。いくつかの実施形態においてTOSには、反応容器が診断装置内に配置された時に反応容器の少なくとも一つの面に押し付け係合させて熱サイクル効率を上げるための、熱制御装置を移動させる一つ又は複数の機構が含まれる。いくつかの実施形態においてTOSは、特定のアッセイに従って熱サイクルと光学励起/検出を連係させるために、一つ又は複数のプリント回路基板(PCB)、プロセッサ、及びコントローラと一体化されている。いくつかの実施形態においてTOSは、反応容器又は関連するサンプルアッセイカートリッジの近接性を検出するセンサを含み、反応容器に対する熱制御装置及び/又は光学コンポーネントの位置決めとその操作が容易となるようにする。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態は、活性面と基準面を有する第1のTECと、活性面と基準面を有する第2のTECと、第1と第2のTECの間に配置された熱キャパシタ又は熱インターポーザを備え、第1のTECの基準面が熱キャパシタを介して第2のTECの活性面に熱的に結合するようになった、熱制御装置に関する。いくつかの実施形態において熱インターポーザは、第1と第2のTEC装置の間に配置される。いくつかの実施形態において熱インターポーザは、熱キャパシタとして作用する。いくつかの実施形態において熱制御装置は、第1と第2のTECにそれぞれ動作的に結合したコントローラを含む。このコントローラは第2のTECを第1のTECと同時に動作させて、第1のTECの活性面の温度が初期温度から所望のターゲット温度に変化するときの第1のTECの動作の速度と効率を向上させるようになっている。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態は、反応容器を受けるように構成された光学マウント上に配置された、光学励起ブロックと光学検出ブロックを含むことができる光学コンポーネントに関する。いくつかの実施形態において、この反応容器は副平坦壁で相互に離間された2つの対向する主平坦壁を備え、少なくとも2つの副平坦壁は相互に約90度オフセットされている。いくつかの実施形態において、光学励起ブロックは一つの副壁を通して反応容器内に励起エネルギを送るように配置され、光学検出ブロックは反応容器の主平坦面に沿って検出するように配置されている。いくつかの実施形態において、励起と検出は反応容器の対向する副壁を通して行われる。いくつかの実施形態において、光学励起コンポーネントと光学検出コンポーネントは相互に直交している。光学コンポーネントは、従来システムに比べて、比較的小さい開口数(例えば、低い角発散)となるようにされている。そのような構成とすることで、開口数が小さいほどより大きな検出体積が得られ、それによって光学感度が改善され、かつ光学アライメントが容易となる。
【0030】
別の態様ではTOSは、TOSに関連するアッセイカートリッジ又は反応容器の近接性及び/又は位置、並びに個体特性を検出するセンサを含む。いくつかの実施形態において、センサは近距離無線通信センサであって、アッセイカートリッジが診断アッセイシステムの診断装置(しばしば「診断モジュール」とも称される)内に装填されているときに検出し、アッセイを識別し、かつカートリッジをサンプル識別子にリンクさせるようになっている。いくつかの実施形態では、TOSには、センサに応答して熱制御装置と光学モジュールの動作を連係させるためのコントローラが含まれる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態は、診断アッセイシステムをモバイルデバイスで管理する方法に関する。モバイルデバイスにおいて、診断装置の機能を制御するために、ユーザ入力の受信が可能である。ユーザ入力の受信に応答して、モバイルデバイスを用いて制御情報を診断アッセイ装置へ送信可能である。モバイルデバイスでは、診断アッセイ装置からのデータ(例えば医療データ)を受信可能である。そのデータは、データの保存又は記述なしにサーバへ中継可能である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態は、通信サブシステムを有する診断アッセイ装置に関する。このシステムは診断コンポーネントを含むことが可能である。プロセッサは、通信サブシステム及び診断コンポーネントと通信可能に結合することができる。プロセッサは、通信サブシステムを利用してモバイルデバイスからのデバイスコマンドを診断アッセイ装置に無線で受信させるように構成できる。プロセッサは、通信サブシステムを使用してデバイスコマンド応答をモバイルデバイスへ無線で送信するようにも構成できる。プロセッサは、診断コンポーネントを用いて検査を実行するようも構成可能である。プロセッサは、通信サブシステムを利用して、検査結果を示す暗号化された診断情報(例えば、医療情報)をリモートサーバへ無線送信するようにも構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による診断アッセイシステムの斜視図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による診断アッセイシステムの分解組立図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態によるブラシレスDC(BLDC)モータの透視図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態によるブラシレスDC(BLDC)モータの透視図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態によるブラシレスDC(BLDC)モータの透視図である。
【
図2D】本発明のいくつかの実施形態による、モータのロータの機械的角度位置を符号化するためのプロセスを示す追加の記号がついた、BLDCモータの正弦波可変電圧出力波形グラフである。
【
図2E】本発明のいくつかの実施形態によるBLDCモータを制御する回路図である。
【
図3A】本発明のいくつかの実施形態によるBLDCモータのトルク出力を決定するためのモデルの図である。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態によるBLDCモータのトルク出力を決定するためのモデルの図である。
【
図3C】本発明のいくつかの実施形態によるBLDCモータのトルク出力を決定するためのモデルの図である。
【
図4A】本発明のいくつかの実施形態による扉開放機構の斜視図である。
【
図4B】本発明のいくつかの実施形態による使用時の診断アッセイシステムの断面図である。
【
図4C】本発明のいくつかの実施形態による使用時の診断アッセイシステムの断面図である。
【
図4D】本発明のいくつかの実施形態による使用時の診断アッセイシステムの断面図である。
【
図4E】本発明のいくつかの実施形態による使用時の診断アッセイシステムの断面図である。
【
図5A】本発明のいくつかの実施形態による使用時の診断アッセイシステムの断面図である。
【
図5B】本発明のいくつかの実施形態による診断アッセイシステムの操作態様に関する方法のフロー図である。
【
図5C】本発明のいくつかの実施形態による診断アッセイシステムの操作態様に関する方法のフロー図である。
【
図6A】本発明のいくつかの実施形態によるバルブ駆動機構の斜視図である。
【
図6B】本発明のいくつかの実施形態によるバルブ駆動機構の斜視図である。
【
図6C】本発明のいくつかの実施形態によるバルブ駆動位置に対する出力信号に関するグラフである。
【
図7A】本発明のいくつかの実施形態による診断アッセイシステムで使用される超音波ホーンアセンブリを示す図である。
【
図7B】本発明のいくつかの実施形態による診断アッセイシステムで使用される超音波ホーンアセンブリを示す図である。
【
図8A】本発明のいくつかの実施形態による超音波ホーンアセンブリのコンポーネント図である。
【
図8B】本発明のいくつかの実施形態による超音波ホーンアセンブリのコンポーネント図である。
【
図8C】本発明のいくつかの実施形態による超音波ホーンアセンブリのコンポーネント図である。
【
図8D】本発明のいくつかの実施形態による超音波ホーンアセンブリのコンポーネント図である。
【
図9A】本発明のいくつかの実施形態によるアッセイカートリッジの装填時及び装填後の診断アッセイシステムの断面図である。
【
図9B】本発明のいくつかの実施形態によるアッセイカートリッジの装填時及び装填後の診断アッセイシステムの断面図である。
【
図10A】本発明のいくつかの実施形態によるアッセイカートリッジの断面図である。
【
図10B】本発明のいくつかの実施形態による、超音波ホーンアセンブリ付きの診断アッセイシステムに装填されたアッセイカートリッジの破断断面図である。
【
図11A-1】本発明のいくつかの実施形態による係合位置におけるホーンアセンブリの側面図である。
【
図11A-2】本発明のいくつかの実施形態による非係合位置におけるホーンアセンブリの断面図である。
【
図11B-1】本発明のいくつかの実施形態による係合位置におけるホーンアセンブリの側面図である。
【
図11B-2】本発明のいくつかの実施形態による係合位置におけるホーンアセンブリの断面図である。
【
図12A】本発明のいくつかの実施形態による、例示的超音波ホーンアセンブリの図である。
【
図12B】本発明のいくつかの実施形態による、例示的超音波ホーン操作の制御図である。
【
図13】本発明のいくつかの実施形態による、ホーンアセンブリ制御のための伝達関数の図である。
【
図14】本発明のいくつかの実施形態による、ホーンアセンブリの制御方式図である。
【
図15】本発明のいくつかの実施形態による、ホーンアセンブリの制御図である。
【
図16】本発明のいくつかの実施形態による、ホーンアセンブリの制御図である。
【
図17】本発明のいくつかの実施形態による、ホーンアセンブリの制御図である。
【
図18】本発明のいくつかの実施形態による、アッセイモジュール内へ挿入する前の例示的TOSサブアセンブリの図である。
【
図19A】本発明のいくつかの実施形態による例示的TOSサブアセンブリの正面図である。
【
図19B】本発明のいくつかの実施形態による例示的TOSサブアセンブリの背面図である。
【
図20A】本発明のいくつかの実施形態による例示的TOSの分解組立図である。
【
図20B】本発明のいくつかの実施形態による例示的TOSの分解組立図である。
【
図21A】本発明のいくつかの実施形態による例示的TOSの光学コンポーネント及び関連するPCBの図である。
【
図21B】本発明のいくつかの実施形態による例示的TOSの光学コンポーネント及び関連するPCBの図である。
【
図22A】本発明のいくつかの実施形態によるTOS例における、例示的熱制御装置コンポーネントとリジッドフレックス接続部を持つ関連PCBの図である。
【
図22B】本発明のいくつかの実施形態によるTOS例における、例示的熱制御装置コンポーネントとリジッドフレックス接続部を持つ関連PCBの図である。
【
図23A】本発明のいくつかの実施形態によるTOS例の光学マウントにインタフェースするように構成された、例示的熱制御装置コンポーネントの図である。
【
図23B】本発明のいくつかの実施形態によるTOS例の光学マウントにインタフェースするように構成された、例示的熱制御装置コンポーネントの図である。
【
図24A】本発明のいくつかの実施形態による、光学マウントに移動可能に結合された例示的熱制御装置コンポーネントのオープン状態の図である。
【
図24B】本発明のいくつかの実施形態による、光学マウントに移動可能に結合された例示的熱制御装置コンポーネントのクランプ状態の図である。
【
図25】本発明のいくつかの実施形態による、光学マウントに移動可能に結合された例示的熱制御装置コンポーネントとスライドベースの図である。
【
図26A】本発明のいくつかの実施形態による、モジュールの扉ラックにより作動されるスライドベースに移動可能に結合された例示的熱制御装置コンポーネントの図である。
【
図26B】本発明のいくつかの実施形態による、モジュールの扉ラックにより作動されるスライドベースに移動可能に結合された例示的熱制御装置コンポーネントの図である。
【
図27】本発明のいくつかの実施形態によるTOSコンポーネントの例示的ブロック制御図である。
【
図28】本発明のいくつかの実施形態による、TOSの光学及び熱制御コンポーネントの例示的模式図である。
【
図29】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムで使用される例示的TOSの図である。
【
図30A】本発明のいくつかの実施形態による、診断装置の反応容器とともに使用する2つの例示的光学コンポーネント構成を示す図である。
【
図30B】本発明のいくつかの実施形態による、診断装置の反応容器とともに使用する2つの例示的光学コンポーネント構成を示す図である。
【
図30C】本発明のいくつかの実施形態による例示的光学コンポーネント構成の詳細模式図である。
【
図31】本発明のいくつかの実施形態による励起ブロック310と検出ブロック320の例示的詳細図である。
【
図32】本発明のいくつかの実施形態による、例示的光学コンポーネントの励起コンポーネント及び検出コンポーネントでの蛍光検出を示す図である。
【
図33A】本発明のいくつかの実施形態による熱制御装置の模式図である。
【
図33B】本発明のいくつかの実施形態による例示的熱制御装置のモデル図である。
【
図33C】本発明のいくつかの実施形態による例示的熱制御装置のモデル図である。
【
図34】本発明のいくつかの実施形態による、閉ループ制御での熱サイクルを示す図である。
【
図35】本発明のいくつかの実施形態による、PCR熱サイクルの全範囲に対する10回の連続熱サイクルを示す図である。
【
図36A】熱サイクルの最初と2日間の連続熱サイクル後の各5サイクルの熱サイクル性能を示す図である。
【
図36B】本発明のいくつかの実施形態による、制御ループで使用される設定点の制御図である。
【
図37】本発明のいくつかの実施形態による制御ループで使用される設定点の図である。
【
図38】本発明のいくつかの実施形態による診断アッセイシステムのソフトウェアアーキテクチャ例を示す図である。
【
図39】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムによって実行されるソフトウェアの論理図である。
【
図40】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステム(Epsilon機器コアアーキテクチャ)のブロック図である。
【
図41-1】本発明のいくつかの実施形態による、階層型システムマシン(HSM)コンポーネントの様々な状態を示す図である。
【
図41-2】本発明のいくつかの実施形態による、階層型システムマシン(HSM)コンポーネントの様々な状態を示す図である。
【
図41-3】本発明のいくつかの実施形態による、階層型システムマシン(HSM)コンポーネントの様々な状態を示す図である。
【
図41-4】本発明のいくつかの実施形態による、階層型システムマシン(HSM)コンポーネントの様々な状態を示す図である。
【
図42】本発明のいくつかの実施形態による機器コア内部コンポーネントとインタフェースを示す図である。
【
図43】本発明のいくつかの実施形態による、モバイルデバイス上で実行されるソフトウェアコンポーネントを示すブロック図である。
【
図44】本発明のいくつかの実施形態による、リモート診断レポートサービスで実行されるソフトウェアコンポーネントを示すブロック図である。
【
図45】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムにおけるトップレベルデータフローを示すデータフロー図である。
【
図46】モバイルデバイスのコンポーネントを個別に示した、
図45よりも詳細なデータフローの実施形態を示すデータフロー図である。
【
図47】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムのロケーション構成プロセスを示すデータフロー図である。
【
図48】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムにおけるモバイルデバイスへ動作更新を行うプロセスを示すデータフロー図である。
【
図49】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムにおける診断装置へ動作更新を行うプロセスを示すデータフロー図である。
【
図50】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムにおけるそのようなプロセスのデータフロー図である。
【
図51】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムにおいて診断デバイスコマンドを行うプロセスを示すデータフロー図である。
【
図52】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムのネットワーク上へ医療診断装置の登録を行うプロセスを示すデータフロー図である。
【
図53】本明細書に記載の診断アッセイシステムの装置及びコンポーネントへ少なくとも部分的に導入可能な、本発明のいくつかの実施形態によるコンピュータシステム図である。
【
図54】本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムをモバイルデバイスで管理する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
I.システム概要
【0035】
図1Aは、本発明の実施形態による、生物学的サンプルを検査するためのシステム10の斜視図を示す。システム10のコンパクトなフォームファクタにより、ローカルコンピュータ又はクラウドベースネットワークと無線又は直接(有線で)通信可能な、携帯型サンプル検査デバイスが提供される。このように、システム10は、移動診断センタ、新興国及び医師の診療所を含む、ポイントオブケアの用途に有利に使用することができる。
【0036】
システム10は、生物学サンプルを収容して、特定のアッセイ実行に適合するように構成された使い捨てアッセイカートリッジとともに使用可能である。システム及びカートリッジは高い柔軟性を有し、核酸及びたんぱく質を含む様々な検体の検出に使用可能である。このシステムとアッセイカートリッジを使用して検出可能な非限定的な検体例としては、バクテリア、ウィルス、並びに健康関連感染症(MRSA、クロストリジウム・デフィシル、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ノロウィルス)、重大感染性疾患(MTB/RIF、Flu、RSV、EV)、性の健康(CT/NG、GBS)、腫瘍学(例えば、乳がん、膀胱がん)、及び遺伝学(FII/FV)を含む様々な病原性疾病状態に関する疾病固有マーカが含まれる。いくつかの実施形態においてシステム10は、集積化された近距離無線通信機能(例えば、RFID、レーザスキャニング)を介してカートリッジの種類を特定し、そうしてそのカートリッジに適切なアッセイルーチンを適用することが可能である。いくつかの実施形態において、カートリッジの識別には、ブルートゥース(登録商標)技術、RFIDタグ、バーコード、QRラベル、などが使用される。
【0037】
アッセイカートリッジがシステム10内に物理的に挿入されて初期化されるといくつかの実施形態では、システムがサンプル調製、核酸増幅、及び検体検出プロセスを含み得る、試料処理機能を実行する。検出プロセスの結果は、ローカルコンピュータ又はクラウドベースネットワークへ無線で、又は有線により直接にアップロード可能である。有利には、ローカルコンピュータは、システムを制御しかつネットワークと通信するように特別に設計されたソフトウェアアプリケーションを有する、タブレット又は携帯電話などの無線通信デバイスであってよい。
【0038】
システム10は外部電源によって電力供給可能であるが、停電又はサイト使用の場合には、無停電電源(例えばバッテリ)を有することができる。無停電電源(UPS)はシステムのサイト使用を可能とし、いくつかの実施形態では少なくとも1日、好ましくは最大2日までシステムに電力供給可能である。いくつかの実施形態では、UPSが最大4時間の連続動作を可能とする。この外観図に示すように、システム10には外殻12と、アッセイカートリッジ(非表示)を受けるための扉14が含まれ得る。特定のユーザが必要とすれば、異なるスタイルで外殻12を構成可能である。典型的には、外殻12は、内部のコンポーネントを保護して支持するために、例えば硬化ポリマ又は金属構造物などの実質的な剛性材料で形成される。ここには示されていないがいくつかの実施形態では、外殻12はサイト使用のために、充分に強化(装甲)されてもよいし、あるいはここに示すように医師のオフィスでの使用のために装飾的であってもよい。
【0039】
図1Bは、システム10(外殻なし)の主要サブシステムを外側に示した分解組立図である。サブシステムの概要は以下で述べる。各サブシステムのさらなる詳細は次節で説明する。
【0040】
ブラシレスDC(BLDC)モータを利用する様々なサブシステムが開示される。一般的に各モータは、プリント回路基板(PCB)に取り付けられたステータアセンブリを有し、かつリードスクリューのような逆駆動可能変速機構を含むことができる。いくつかの実施形態では、そのようなBLDCモータは、角度位置の決定にアナログセンサ(例えばホールセンサ)を利用し、トリガツールとして力ベースの電流モニタを利用する。そのようなBLDCモータは、複数の磁石がその上に配置されたロータを含むことができ、かつ少なくともモータの相と同数のセンサが基板上のステータにとりつけられる。ロータの変位がセンサからの測定値の直線部分に基づいて制御可能となるように、3つのセンサが配置される。これにより位置センサやエンコーダハードウェアの使用を必要とせずに、改良された分解能と粒度が提供される。このように、本明細書に記載のBLDCモータはエンコーダハードウェアの使用を必要とせず、かつそれらに関連する駆動列は位置センサを必要としない。例えばこのシステムは、逆駆動可能リードスクリューに嵌合する出力シャフトを有するブラシレスBLDCモータを含むシリンジ駆動機構16を含むことができる。リードスクリューは、リムーバブルアッセイカートリッジのプランジャチップへのインタフェースとなるプランジャロッドを駆動する。そのようなシリンジ駆動機構16は、PCB30を扉駆動機構18と共有することができる。扉駆動機構には、逆駆動可能リードスクリューに嵌合する出力シャフトを有するBLDCモータもまた含まれる。シリンジ駆動機構16及び扉駆動機構18のモータは、PCB基板の対向する両側に直接取り付けられていることが示されているが、これは重要ではなく、両方のモータを同一側に取り付けることも可能である。いくつかの実施形態では、各モータをそれ自身のPCBに取り付けることも可能である。分解能と粒度が向上すれば精度と効率が改善され、さらにそのようなモータで駆動される機構の更なる小型化が可能となるので、このBLDCモータの利用は有利である。ただし、そのようなBLDCモータの使用が要求されるわけではなく、本明細書に記載のいかなる機構も、所望により従来型のモータで駆動することも可能であることを理解されたい。ただし、その場合には、実施形態によってはセンサ及び/又は回路の追加が必要となることもある。
【0041】
上記のように、BLDCモータは、複数のホール効果センサを含むが、従来のエンコーダハードウェアは全く含まないという点において独特である。いくつかの実施形態では、シリンジ駆動機構、扉駆動機構、及び関連するサブシステムは位置センサを含まない。いくつかの実施形態ではBLDCのロータと出力シャフトの角度位置は、アナログセンサの正弦波出力とPCB上の回路とだけで導き出すことが可能である。こうして、従来の位置センサ(例えば、エンコーダ、光学センサなど)は、本発明に使用されるようなBLDCモータと共に使用する必要がない。BLDCモータが滑らかなトルクを生成するために、正弦波転流のようなモータ制御技術を実装することができる。さらに、高速動作を達成するために、パルス幅変調実装を使用して駆動電圧を集中させることが可能である。
【0042】
さらに、本機構のリードスクリューは逆駆動可能であるため、力ベースの行程端検出を用いて、機構駆動の始点及び停止点を判定可能である。力ベースの行程端検出は、BLDCモータの電流、例えば力ベースの事象が生じると正常値からそれる(増加又は減少する)ブリッジ回路の電流、をモニタすることで求めることができる。したがって、この偏差を利用してBLDCモータの始動、停止、反転、減速、及び/又は加速にトリガを掛けることができる。例えばシリンジ駆動機構16の場合には、電流検知を圧力に相関させて、関連するBLDCモータのRPMを調整することでプランジャロッドへの一定又は意図的に変化させた圧力の送達に使用可能である。これにより、カートリッジ圧力をモニタするインライン圧力センサの必要性が低減される。
【0043】
バルブ駆動機構20は同一タイプのBLDCモータの同じような使用の仕方を可能とする。いくつかの実施形態において、バルブ駆動機構20はウォーム駆動ギヤ列を含むことができ、これが、リムーバブルアッセイカートリッジのバルブを回転させるバルブ駆動部と同じように、回転台への最終的な出力を与える。いくつかの実施形態では、ウォーム駆動機構は、前述のシリンジ駆動部および扉駆動機構のような逆駆動可能ではない。ただし、このバルブ駆動機構に対して同じタイプのホール効果位置決定および力ベースのトリガ(電流モニタ)を使用することができる。例えば、バルブ駆動部を回転させるのに、実質的により小さいかより大きい電流が予期せずに必要とされる場合、そのような事象はアッセイカートリッジの閉塞又は故障の可能性を示し得る。ここで、カートリッジの完全性の不具合の感知に力ベースのトリガを使用することが可能である。
【0044】
超音波処理ホーン機構22は、バルブ駆動機構20に部分的に一体化されている。超音波処理ホーン22は、たとえばカートリッジ内の標的サンプルを溶解するために、カートリッジに対してプログラム可能な超音波パワーをプログラム可能な継続時間で印加することが可能である。いくつかの実施形態では、超音波処理ホーン機構22は、共振圧電アクチュエータを使用して、約30kHz以上、又は約40kHz以上、例えば約50kHz(例えば50.5kHz)のような周波数で振動を与えることができる。超音波処理ホーン機構22には、電圧励起に関係する測定電流の位相を利用して共振周波数を決定する制御回路が含まれる。周波数は、事前設定された位相関係を維持するように制御回路によって調節可能である。いくつかの実施形態では、電圧励起の振幅は、命令されたパワーレベルを維持するために連続して調整可能である。これらの機能により制御回路はホーンのパワー出力を最大化することができる。
【0045】
システム10には、扉駆動機構18によって駆動される、扉駆動部及びカートリッジ装填システム24も含まれる。扉駆動機構18のリードスクリューが扉駆動部及びカートリッジ装填システム24に動力を出力して、扉14の開閉並びにアッセイカートリッジ32の係合と取込みを行う。
【0046】
後方シャーシ部26及び前方シャーシ部28は、システム10の構造的支持及び他のサブシステムのための取付け部を提供する。シャーシ部は、システム10の全体のフットプリントを小さくし、かつシステム10に可搬性を持たせるために、一般的に細長くなっている。いくつかの実施形態では、システムのフットプリントは9.1”x3.0”x4.2”であり、およその重量は2.2ポンドである。細長の回路基板すなわちPCB30は、シャーシ部のフットプリントに概ね一致する。PCB30はシステム10の制御に必要な、プロセッサ、サブプロセッサ、メモリ、及び制御回路のほとんど又はすべてを含む。ただし、前述のBLDCモータは、PCB30に分離接続される制御回路を有する、自分自身のそれぞれのプリント回路基板に集積することができる。PCB30には、通信回路部分(例えば近距離無線通信回路、USB、無線)並びに電源回路も含まれる。
【0047】
システム10は、体液(例えば血液、尿、サルビア)又は液体に可溶な個体(例えば土、胞子、化学残渣)などの物質のサンプルを一般的に受容して保持するように構成された、様々なタイプのアッセイカートリッジ32と互換性がある。アッセイカートリッジ32は、一つ又は複数の流体チャネルと接続ポートを有する、壁構造であってよい。アッセイカートリッジ32は、容易に手で持つことができ、可搬性があり、及び/又は使い捨て可能なように、相対的に小さいものであってよい。そのような(システム10で使用可能な)カートリッジの例は、米国特許第6,660,228号明細書、国際公開第2014052671(A1)号パンフレット、米国特許第6,374,684号明細書に開示されており、これらをすべての目的のために参照により本明細書に援用する。
【0048】
アッセイカートリッジ32は後部から外へ延在する反応容器33を備えることができ、それが熱サイクル及び検出モジュール34とのインタフェースとなる。モジュール34には、アッセイカートリッジ32の1つの面へエネルギを送達し、かつそこからエネルギを除去するようになった一つ又は複数の装置が含まれる。そのような装置には、デュアル熱電式クーラが含まれ得る。モジュール34には、以下でさらに詳細を議論するように、一つ又は複数の検出態様も含まれる。
【0049】
II.ブラシレスDC(BLDC)モータ構成
【0050】
図2Aは、本発明のいくつかの実施形態で使用される、ブラシレスDC(BLDC)モータ100の要素を示す平面図である。BLDCモータの更なる詳細は、2015年7月22日出願の、「DCモータ用転流及び符号化の単純重心実装(Simple Centroid Implementation of Commutation and Encoding for DC Motor)」と題する、同一譲受人の米国特許仮出願第62/195449号明細書に見ることが可能であり、これをあらゆる目的のために参照により本明細書に援用する。
【0051】
一態様において、BLDCモータは、フィルタリングやノイズ除去なしで滑らかに変化するホール効果電圧を生成するように構成された、ロータとステータを含む。いくつかの実施形態において、この特徴は、ステータの磁気コアを越えてある距離だけ延在する、ロータ内の永久磁石を使用することによって提供される。いくつかの実施形態において、BLDCモータはモータの位相と同数のホール効果センサを含み、それらは、センサから受信する測定電圧波形の実質的に直線部のみに基づいてモータが制御可能であるように配置される。いくつかの実施形態において、このことは測定電圧波形の直線部が交叉するようにして、ステータの周りにセンサを放射状に間隔をあけて配置することを含む。例えば、3相BLDCは、相互に放射状に40度間隔をあけた3つのホール効果センサを含むことができ、これによりシステムはセンサ位置を40度の増分内に制御可能とする。
【0052】
いくつかの実施形態において、モータは中心から放射状に延在する9個の極歯を有する内部ステータアセンブリ101を含み、各極歯は極片103で終端し、かつ各極歯は電磁コイル102を成す巻き線を有する。モータはさらに、外部円筒形スカート105と、そのスカート105の内周の周りに極性が交互に替わるように配置された12の永久磁石106とを有する外部ロータ104を含んでいる。永久磁石は、極片の外側曲面に近接した、円筒形内側面をロータに付与するような形状となっている。本実施例におけるBLDCモータは、3相、12極のモータである。当業者には周知のように、
図2Aに非表示の具備された制御回路がコイル102内の電流を切り替えて永久磁石106との電磁相互作用を与え、それによってロータを駆動する。
【0053】
極歯と極の数、それにまた内部ステータと外部ロータの開示は例示であって、種々の異なる設計のモータで動作可能な本発明を限定するものではないことに注意されたい。
【0054】
図2Bは、
図2Aのモータの、部分的に断面となった側立面図である。9つある極歯とコイルの内の一つが切り出されて示されており、これは外部ロータ104の円筒形スカート105の内周の周りに配置された12個の永久磁石106の一つに近接する極片103を末端としている。ステータアセンブリ101の極歯及び極片はコアの一部であり、線204の高さにおいてコアの遠位端を画定する。ステータアセンブリ101は本実装においては基板201上に支持されている。これはいくつかの実施形態においてはプリント回路基板であり、永久磁石106の磁場と相互作用する電磁場を付与してロータを駆動するためにコイル102への電流の切り替え操作をするように構成された、制御ユニットとトレースを含むことができる。基板としてのPCBは符号化と転流のための制御回路もまたは含むことができる。ロータ104は駆動シャフト107によってステータ101に物理的に係合する。駆動シャフトはステータのベアリングアセンブリに係合してロータを正確に回転させる。本実装における駆動シャフト107は意図的にPCB107の開口を貫通して、駆動用機械装置に係合可能である。
【0055】
3つの線形ホール効果センサ202a、202b、202cが
図2Bに示されており、これらは基板201によって支持されて、本発明のいくつかの実施形態によればモータ100に対する符号化及び転流を行うためのプロセスに使用可能な可変電圧信号を生成するように戦略的に配置されている。
図2Bでは、ロータ104のスカート105の全体高さが寸法Dで表されている。寸法d1は、線204にあるコアの遠位端から下へのロータ磁石の遠位端の延長を表す。従来のモータでは、この端部をコア端部より下へ延長する理由も動機もない。それは特にこのためにモータの高さが増し、ロータと基板の間に大きな隙間を必要とするからである。実際に、付加された寸法は従来モータに不要なコストと容積を追加するので、熟練技術者であれば寸法Dを制限してそのような延長部がないようにするであろう。さらに、通常のモータのロータの遠位端においては、コアの高さ又はそれより上においてコイル102の電流切替えによって大きな磁場の効果が生成され、その位置で永久磁石を感知するように配置されたホール効果センサで検出された信号では、滑らかに変化するホール効果電圧は生成されない。従来モータでの効果はむしろ実質的にノイズで劣化する。このジレンマに対する従来の解決法はノイズフィルタリングの導入であり、より一般的にはエンコーダを利用することである。
【0056】
ロータ磁石を鉄芯の遠位端より下に延長することは、ステータコイルからのスイッチング磁界がホール効果センサで検出された信号に及ぼす劣化効果を回避する。具体的な延長d1は特定のモータ構成に特有のいくつかの因子に依存し、いくつかの実施形態では、1mm以上(例えば、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、又はそれ以上)であり、またいくつかの実施形態では延長は1mm未満である。いくつかの実施形態では、この距離は永久磁石の大きさ及び/又は磁界強度の関数である。本明細書で詳細を述べたいくつかの実施形態では、ノイズや飽和のない電圧変化の正弦波信号を生成するには1mmの延長で十分である。ホール効果電圧を生成するためにホール効果センサを距離d2に配置することで、ノイズなしの滑らかな可変電圧が生成される。いくつかの実施形態では、ホール効果センサは、約2ボルトから約5ボルトの範囲の滑らかな可変DC電圧を、ノイズや飽和なしで生成する。寸法d2は、センサの選択、ロータの設計、ロータ内の永久磁石の強度、及び当業者には周知のその他の因子によって変化し得る。センサの飽和を回避して、実質的にノイズなしの滑らかに変化するDC電圧を生成するための実行可能な距離は任意の特定の状況に対して容易に見いだされる。
【0057】
図2Cは、
図2Bの矢印3の方向から見た基板201の一部の平面図である。これは、
図2Bでコアの遠位端部の下に寸法d1だけ延在していることがわかるロータ104の遠位端部に対する、ホール効果センサ202a、202b、202cの配置を示す。
図2Cでは、12個の永久磁石106を含むロータ104の回転軌道が点線の輪郭302で示されている。ロータは転流の詳細に依存していずれの方向303にも回転する。
【0058】
この非限定的な例示的実施形態に示すように、各ホール効果センサ202a、202b、202cはロータ磁石の遠位端部の直下で、回転磁石の中心軌道の放射方向に僅かに内側方向に向かって配置される。ホール効果センサ202bは、ロータ磁石の回転軌道に沿ってホール効果センサ202aから40度の円弧となる位置にある。同様に、ホール効果センサ202cは、ホール効果センサ202bからロータ軌道の周りにさらに40度の位置にある。
【0059】
図2Dは、3相BLDCモータにおいてロータ104の永久磁石106がホール効果センサ202a、202b、202c上を通過することで生成される、3つの電圧波形401、501、601を示す。正弦可変電圧波形401はロータ104の永久磁石106がホール効果センサ202a上を通過することで生成される。0度の始点は、最大電圧点に任意に設定される。ロータの360度の完全な1回転で3つの完全な正弦波形が生成される。電圧波形501はロータ104の永久磁石106がホール効果センサ202b上を通過することで生成される。さらに、実質的にノイズなしの正弦可変電圧波形501はロータ104の永久磁石106がホール効果センサ202b上を通過することで生成される。ホール効果センサ202bはホール効果センサ202aの位置から、弧長で40度の位置にあり、正弦波形501は正弦波形401の位相から120度だけ位相がシフトしている。さらに、実質的にノイズなしの正弦可変電圧波形601はロータ104の永久磁石106がホール効果センサ202c上を通過することで生成される。ホール効果センサ202cはホール効果センサ202bの位置から弧長で40度の位置にあり、正弦波形601の位相は正弦波形501から120度だけ位相シフトしている。波形はロータが360度回転するごとに反復される。
【0060】
3つの電圧波形401、501、601は、ホール効果センサが同一であり、かつ同一距離において同一の漏洩磁界を感知するために、実質的に同一の最大と最小のピークをそれぞれ有する。さらに、波形401、501、601は複数の点で交叉し、点402、502、602がその例である。特に、交点間の波形部分は実質的に直線であり、接続された直線部分の無限の連続するシーケンスが与えられることがわかる。さらに、各直線部分のゼロクロス点、及び各波形の最大と最小のピークが検出されて記録され得る。
【0061】
図2Dはさらに、交点402、502、602の間の2つの直線部分を示す。非限定的な例として、交点402と502の間の部分が長さの等しい20の部分に分割されて示されている。これは交点402と502における電圧を検出し、それを単純に分割することで便宜的に行うことができる。波形の一つの交点から次の交点までのロータの物理的な回転は、20度のモータ回転であるので、計算による各電圧変化は20/20、すなわち1.00度のロータ回転となる。これは単にこの方法を説明するための、比較的大まかな例である。本発明のいくつかの実施形では、PCB201上の回路が交点を検出し、交点の間を11ビットのアナログ-デジタル変換器(ADC)によって分割する。これは2048のカウントを与える。本実装においては各カウントに対するロータ205の機械回転変位は約0.0098度である。ビット分解能の高い(又は低い)ADCを使用することで、本システムの分解能を高くする(又は低くする)ことができる。たとえば、8ビットのADCを使用すれば、1カウントを約0.078度に分解し、16ビットのADCでは1カウントを0.00031度に分解し、20ビットのADCでは1カウントを約0.00002度に分解する。代替的には極の数を増減することにより、システムの分解能が対応して増減する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明によってモータ100で駆動される機構に高度の正確度と精度が与えられる。11ビットADCを用いた上記の非限定的な例では、モータ位置は機械的に0.0098度まで制御可能である。ギヤ減速と結び付ければ、機構の並進及び回転を極めて微細に制御可能となる。いくつかの実施形態では、モータ100は、診断プロセスで流体を吸引及び吐出するシリンジのポンプユニットの並進駆動器に連結される。
【0063】
図2Eは、本発明の一実施形態におけるモータ100制御のための電気回路を示す図である。これは、ホール効果センサの出力と、そのセンサで生成された位相分離曲線の直線部のみを解析する独特の方法とを利用するもので、直線部は上記のように等分のセグメントに分割される。ホール効果センサ202a、202b、202cの出力が、転流の目的で比例積分偏差(PID)運動制御回路に提供され、ロータ磁石とホール効果センサの相互作用により生成された波形が、
図2Eに示すように多重化回路に提供される。非限定の例示的実施形態で上述したように、ADCは位相分離波形の直線部分の区分生成に使用され、モータ100は、例えばテキサス・インスツルメンツ社のモータ駆動回路のDRV8313によって駆動可能である。当業者であれば、回路は必ずしも独特のものである必要はなく、さらに本発明の範囲内にあってなお、他の回路構成を使用しうることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ホール効果センサを検知し、モータの符号化を与える回路及びコード化された命令は、PCB上のプログラマブルシステムオンチップ(PSoC)に実装され得る。回路には、PSoCに取り込まれる電流と電圧の測定値に基いてモータが生成するトルク値を評価するために提供可能な、トルク評価回路を含むことも可能である。そうしてより大きなシステム全体にまでわたり追加的な力センサの必要性を回避する。
【0064】
III.モータトルク評価
【0065】
いくつかの実施形態では、BLDCモータ100及び制御回路の態様は、外部センサを必要とせずにトルク検出に使用可能である。これは様々な方法で達成可能であるが、例えば
図3Aに示すモデルで表しているように、BLDCモータに入力された電力はモータで消費される電力(すなわち銅損)にモータから抽出される機械力を加えたものに等しい、という原理に基づいてトルクを評価することによって可能である。この原理は次式によって定量化される。
【数1】
【0066】
ここで消費電力P
CLは次式で計算される。
【数2】
【数3】
【0067】
上記の電力平衡式を参照すると、論理的に次のようになる。
【数4】
【0068】
電力変数を代入すると、次の平衡式が得られる。
【数5】
【0069】
これより、モータトルクτ
mを解くと、次式が得られる。
【数6】
【0070】
これより、ここではモータトルクに、前式から得られる、最もポジティブなトルク解と最もネガティブなトルク解の2つの可能な計算解があり、ブリッジ電流i
Bを用いて次のように表される。
【数7】
【0071】
トルクはモータ定数及びその他の変数から計算可能であるとすれば、
図3B、3Cに示すモータモデルにおいて示すようなモータ定数K
tを用いてモータトルクを計算することも可能である。
【数8】
【0072】
この結果、(K
tを用いた)τ
mの計算値に最も近い計算解τ
m1^又はτ
m2^が正しい解であるとみなされる。次表は上記の変数を定義する。
【表1】
【表2】
【0073】
上記の原理を基に、容易に得られる電流と電圧の測定値に基づいてトルク値が推定できる。これは、Cyprus Semiconductor Corp.社が販売する一連のPSoC回路などの、低コストのプログラマブルシステムオンチップ集積回路を用いて達成可能である。摩擦などの追加の変数は、高調波擾乱トルクから生じるコギング効果と同様に、例えばカルマンフィルタを使用して説明することができる。当業者であれば理解できるように、トルク評価に低コストで単純な集積回路を使用できることは、デバイスへフィードバックを与えるためにセンサ(圧力センサ、エンコーダなど)を頼りにする従来デバイスに対して大きな利点となり、結果として必要な部品点数と全体としてのシステムコストを低減する。この利点は、以下での扉開放及びカートリッジ装填、シリンジ駆動、及びバルブ駆動のサブシステムで示されるように、トルク検出をコマンドのトリガとする際に大いに実現される。
【0074】
IV.扉開放及びカートリッジ装填サブシステム
【0075】
別の態様において本発明は、アッセイカートリッジの診断アッセイシステムへの手動の装填及び取出しを容易とするために、逆駆動可能機構によって駆動される扉開閉及びカートリッジ装填サブシステムを提供する。いくつかの実施形態において、扉開閉機構及びカートリッジ装填システムは一体化されており、カートリッジをシステムの開放ベイ内に手動装填すると、典型的にはユーザが手動でカートリッジをシステム内に押す際の機構の逆駆動の検出によりベイ扉の閉鎖を始動するような連係動作を提供する。そのような機構は、本明細書で説明したBLDCモータで駆動可能であり、かつモータトルク推定を利用可能であり、あるいは当業者に既知の様々な従来型のモータと手法を利用可能であることは理解されるであろう。そのような構成の例を以下に詳述する。
【0076】
図4Aは扉開放及びカートリッジ装填サブシステム100の斜視図を示す。このシステムには、PCB30′に取り付けられた上記のブラシレスDC(BLDC)モータ100が含まれる。BLDCモータ100は、リードスクリュー109が取り付けられた出力シャフト(図示せず)を含む。リードスクリュー109は、扉14の開閉動作をし、またカートリッジ装填機構に動力を伝える変速機の逆駆動可能部である。
【0077】
リードスクリュー109はブリッジ108のナットに螺合し、それによりリードスクリュー109が回転するとき、リードスクリュー109の回転方向に依存してブリッジ108が(装置が
図4Aの方向を向いている場合)上方向又は下方向に移動する。第1のラック部110と第2のラック部112はブリッジ108に取り付けられている。ラック部はいずれも細長であって、ラック114と、”L”形の通路となったカム通路116を含んでいる。
【0078】
一対のピニオンギヤ118がラック114と噛合する。ブリッジ108とリードスクリュー109の動きによって、ラック114が上下に動き、それによってピニオン118が回転する。ピニオンギヤ118はサブフレーム122で支持された共通のシャフト120によって相互に接続され、サブフレームは、後方シャーシ部26などのシステム10のより大きな部分に取り付けられている。各ピニオンギヤ118は、特定のインタフェースでピニオンギヤ118の回転を停止するためのフィンガ124を含む。
【0079】
各ピニオンギヤ118は、より大きな扉ギヤ126に一体化されている。したがって、ピニオンギヤ118と扉ギヤ126は同一RPMで回転する。扉ギヤ126は扉14の扉ラック128と協調する。したがって、扉ギヤ126が回転すると扉ラック128と扉14が、扉ギヤ126の回転方向に従って上又は下へ移動する。
【0080】
図4B~
図4Eは、アッセイカートリッジの装填方法を図示したものである。
図4Bにおいて、扉14を開いてシステムをカートリッジ32の挿入を受ける配置とするためのコマンドがBLDCモータ102に送信される。コマンドが受信されると、システム100はBLDCモータ102を動作させてリードスクリュー109を回転させる。この動作で、ブリッジ108とそれに取り付けられたラック部110/112が上に移動し、それによりピニオンギヤ118と扉ギヤ126の回転を始動する。この動きにより、扉ギヤ126の扉ラック128に対する回転とともに扉14が上に向かって移動する。
【0081】
扉14が完全に開いた後、ピニオンギヤ118は、上に移動し続ける第1と第2のラック部110/112のラック114から外れる。第1と第2のラック部110/112の上方への移動により、第1と第2のラック部110/112のカム通路116に沿って移動するように拘束されているピン132により、カートリッジ装填アーム130も作動する。カートリッジ装填アーム130はこの動きによりピボット134を中心に回転し、これにより第1のアーム部136が上方位置に配置される。
【0082】
第1と第2のラック部110/112は、リードスクリュー109を逆駆動させる力ベースの事象が生じるまで、上方へ移動する。そのような事象は、例えば、ブリッジ108が停止部にぶつかるか、第1と第2のラック部110/112がカートリッジ装填アーム130を引っ張るかであってよい。逆駆動現象はBLDCモータのブリッジ回路で、電流の変化として検出可能である。逆駆動現象に基づいて、BLDCモータは回転を止めて図示した位置に停止するように命令される。有利なことに、このステップは位置センサの助けなしに行われる。
【0083】
図4Cにおいて、アッセイカートリッジ32の一部が第1のアーム部136に接触するまで、アッセイカートリッジ32がシステム10内に挿入される。第1のアーム部136に対する僅かな動きが、BLDCモータのブリッジ回路において電流変化として検出可能な、リードスクリュー109におけるもう一つの逆駆動事象となる。この事象がBLDCモータへのコマンドとして作用し、カートリッジを捕捉して扉を閉じるために、その前の扉開放ステップから方向を逆転させる。
【0084】
図4Dに示すように、第1と第2のラック部110/112の上方への動きによりピン132がカム通路の長さの周りを案内され、これが次にカートリッジ装填アーム130の時計方向回転を起こさせる。これによりカートリッジ装填アーム130の第2のアーム部138がカートリッジを内方向に押してホーム位置とする。さらに、第1と第2のラック部110/112は持ち上げられてピニオンギヤ118のフィンガ124が第1と第2のラック部110/112のノッチ140により回転する。これによりラック114に対するピニオンギヤ118の移動、並びに扉ラック128に対する扉ギヤ120の移動が開始される。このようにして、扉14の閉位置に向かう下方向への移動が生じる。
【0085】
図4Eに示すように、完全に扉が閉まるまでは、リードスクリュー109の継続する動きによって扉14は下方向に移動する。リードスクリュー109に対する逆駆動の力ベースの事象が生じるまでは、BLDCモータにそのように電力が供給される。逆駆動の事象は、例えば、ブリッジ108が停止部にぶつかるか、第1と第2のラック部110/112がカートリッジ装填アーム130を押すかであってよい。逆駆動事象はBLDCモータのブリッジ回路で、電流の変化として検出可能である。逆駆動事象の検出に基づいて、BLDCモータは回転を止めて図示した位置に停止するように命令される。有利なことに、このステップは位置センサの助けなしに行われる。
【0086】
V.シリンジ駆動サブシステム
【0087】
前述したように、本発明の実施形態にはシリンジ駆動機構16の態様が含まれ得る。
図5Aに示すように、シリンジ駆動機構16は前述のBLDCモータ200を含む。BLDCモータ200は、逆駆動可能なリードスクリュー209に接続された出力シャフトを含む。
【0088】
横方向に延在するアーム206は、リードスクリュー209に螺合するナットを含む。横方向に延在するアーム206は、プランジャロッド208にも取り付けられている。BLDCモータ200にリードスクリュー209を然るべく方向に回転させるように命令することで、横方向に延在するアーム206とプランジャロッド208は上下に駆動可能である。
【0089】
アッセイカートリッジ32が固定されて扉14が閉じられた後、シリンジ駆動機構16はアッセイカートリッジ32のインタフェースとなるように利用可能である。アッセイカートリッジにはプランジャチップ212を保持するシリンジ通路210が含まれる。プランジャロッド208をシリンジ通路210の中に下向きに移動させることにより、プランジャロッド208の先端がプランジャチップ212に係合する。こうして、結合したプランジャチップ212とプランジャロッド208は、シリンジ通路とともに、アッセイカートリッジ32を加圧/減圧するシリンジとして機能する。プログラムされたポンピングをアッセイカートリッジ32対して行うことで、流体がアッセイカートリッジ32の様々なチャンバ内へ流入及びチャンバから流出し、アッセイが実行される。
【0090】
プランジャチップ212と係合した後、プランジャロッド208はBLDCモータ200によって作動し、様々なシリンジのポンピングアルゴリズムの実施を含む、シリンジ通路210内の任意の所望の位置への移動が可能となる。BLDCモータ200の電流は継続的にモニタされて、一定の圧力をプランジャロッドに送達することができる。そうして、カートリッジ圧力をモニタするインライン圧力センサの必要性を低減する。
【0091】
したがって、リードスクリュー209は逆駆動可能であるので、アッセイカートリッジ32内の圧力を減少させて固定プランジャロッド208を引き下げさせることができる。圧力減少は、BLDCモータ200の測定電流をモニタし、相対変化を検出し、それに応じてBLDCモータ200の出力を変化させることで検出可能である。同様に、アッセイカートリッジ32内の圧力減少は、固定プランジャロッド210を押し上げさせることができる。圧力増加は、BLDCモータ200の測定電流をモニタし、相対変化を検出し、それに応じてBLDCモータ200の出力を変化させることで検出可能である。有利なことに、これは圧力センサの助けなしに遂行可能である。
【0092】
別の例では、移動するプランジャロッド208に関する電流をモニタすることにより、圧力速度の増加又は減少を示す変化を知ることができる。したがって、相対的な変化を検出した後、BLDCモータ200の出力を変化させて、移動するプランジャロッド208が与える圧力速度を増加又は減少させることができる。有利なことに、これは圧力センサの助けなしに遂行可能である。
【0093】
前述のBLDC電流をモニタする原理を利用して、アッセイカートリッジの適正な装填と、そのカートリッジの検査の完全性を決定するための方法220の一例を
図5Bに示す。アッセイカートリッジ32は
図5Aに示すように、既に物理的に装填されているものとする。
【0094】
操作222において、装填手順を開始するためのコマンドが送信される。結果として、操作224で力の上限が設定される。力の上限は、この操作のためにBLDCモータ200がプランジャロッド208に印加し得る最大力であり、これはプランジャロッド208がシリンジ通路210の底にプランジャチップ212を加圧することに関係する。操作226では、BLDCモータ200が作動してプランジャロッド208をシリンジ通路210内へ移動させて、プランジャロッド208の先端をプランジャチップ212に係合させる。操作228では、BLDCモータ200のトルクは、
図2Eのトルク評価回路と
図3A-
図3Cの方法とを利用して継続的にモニタされ、プランジャロッド208がシリンジ通路210の底まで移動したかどうかを判定する。力の上限が超えられていなければ、操作230で装填手順は失敗したと判定される。時には、製造ミス又は物理的な欠損でプランジャチップ212がないことがある。そのいずれの場合であっても、プランジャロッド208は、適切にプランジャチップ212に突き当たることなくシリンジ通路210内の移動可能な端部に至る。したがって、力の上限を超えることはない。
【0095】
力の上限が超えられると、プランジャロッド208はプランジャチップ212をシリンジ通路210の底に押し付けたと判定され、この方法220は操作232に移って、力の下限が設定される。力の下限は、この操作のためにBLDCモータ200がプランジャロッド210に掛ける最大力であって、それはプランジャチップ212の減圧することに関係する。操作234では、BLDCモータ200が作動されてプランジャロッド210をシリンジ通路210内で上方に移動させる。操作236においてBLDCモータ200のトルクは継続的にモニタされて下限が超えられたかどうかを判定する。操作228の結果として、プランジャチップ212は強く加圧される。下限はプランジャチップを減圧するのに必要な力の大きさであり、したがってプランジャチップ212の位置以外では、後の操作のためにゼロである。下限が超えられると、BLDCモータ200は動作を停止し、この方法が操作238に移る。そこでシリンジが真空に引いたかどうかが判定される。この操作において、アッセイカートリッジ32のバルブが作動されてシリンジ通路210を大気から遮断する。これは先行する操作では行われていない。これが完了した後、BLDCモータ200が作動されてプランジャロッド208をシリンジ通路210内の真空に逆らって上方に引っ張る。プランジャロッド208が自由に動かないで力が検出される場合には、操作240で、真空が確立されており、したがってアッセイカートリッジ32の完全性は備わっていないと判定される。プランジャロッド208が力の検出なしに自由に動く場合には、真空は確立されておらず、したがってアッセイカートリッジ32の完全性が損なわれていることが、操作242で判定される。
【0096】
アッセイカートリッジのシリンジ(すなわち、プランジャロッド208、シリンジ通路210、及びプランジャチップ212)の初期化を判定するための、BLDC電流をモニタする前述の原理を利用する方法248の別の例が
図5Cに示されている。アッセイカートリッジ32は
図5Aに示すように既に物理的に装填されており、かつカートリッジは
図5Bに示すように適切に装填されているものとする。
【0097】
操作250において、装填手順を開始するためのコマンドが送信される。結果として、操作252で力の上限が設定される。力の上限は、この操作のためにBLDCモータ200がプランジャロッド208に掛け得る最大力であり、これはシリンジ通路210の最上部でプランジャチップ212を(
図5Aに示すような装置の配向に関して)適切な上方位置に配置することに関係する。
【0098】
操作254において、BLDCモータ200が作動されて、プランジャロッド208をシリンジ通路210内で上方に移動させ、これによりプランジャチップ212をシリンジ通路210内の位置で最上部とさせる。操作256において、
図2Eのトルク評価回路及び
図3A~
図3Cの方法を用いて、BLDCモータ200のトルクは継続的にモニタされる。
【0099】
力の上限が超過されると、プランジャチップ212は最上部となっていると判定され、方法248は操作258に移り、そこで力の下限が設定される。力の下限は、この操作のためにBLDCモータ200がプランジャロッド210に掛け得る最大力であり、シリンジ通路210の底にプランジャチップ212を押し付けることに関係する。ただしプランジャチップ212の過度の加圧はしない。操作260では、BLDCモータ200が作動されてプランジャロッド210をシリンジ通路210内で下方に移動させる。操作262においてBLDCモータ200のトルクは継続的にモニタされて操作258で設定された力の下限が超えられたかどうかを判定する。下限が超えられると、BLDCモータ200は運転を停止し、プランジャチップ212はシリンジ通路210の底に既に配置されているとみなされる。この後、方法248は操作238に移り、そこでシリンジが所定の距離(例えば60mm)を動いたかどうかが判定される。これは、BLDCモータ200のホール効果センサを利用して、リードスクリュー209の回転を計数し、そのカウントをシリンジロッド208の直線移動量に関連付けることによって遂行される。いくつかの場合に力の上限及び下限は、シリンジ通路210内の障害物又は過度の摩擦によってトリガが掛けられる。したがって、移動量のチェックステップは、シリンジロッド208が障害なしで自由に移動したことを確認するために行われる。シリンジロッド208が少なくとも所定の移動量だけ移動していれば、操作266で初期化は成功であると判定される。ただし、シリンジロッド208が少なくとも所定の移動量だけ移動していなければ、操作268で初期化は成功していないと判定される。
【0100】
VI.バルブ駆動サブシステム
【0101】
前述したように、本発明の実施形態には、バルブ駆動機構20の態様が含まれ得る。
図6A、6Bに示すように、バルブ駆動機構20は前述のBLDCモータ300を含む。
【0102】
BLDCモータ300は、シャーシ304の剛性に寄与する、複数の強化リブ306を有するシャーシ304に取り付けられている。シャーシ304は、BLDCモータ300のステータ308のマウントとなる、細長い第1の部分307を含む。細長いシャフト310がBLDCモータ300から延在して、第1のウォーム312を保持する。第1のウォーム312は、第1のウォームギヤ314に連動してこれを回転させ、それが第2のウォーム318と共通のシャフト316上で回転する。
【0103】
第2のウォーム318は第2のウォームギヤ320に連動してこれを回転させる。第2のウォームギヤ320は回転台状のバルブ駆動部322と一体化されており、それがアッセイカートリッジ32の回転バルブ機構と連動するように構成されている。バルブ駆動部322は、シャーシ304の細長い第2の部分324に取り付けられている。細長い第2の部分324には、超音波処理ホーン機構22と連動するための通路325が含まれる。
【0104】
使用時には、BLDCモータ300に電力が投入されて回転し、それによって上で説明したウォーム駆動部を介してバルブ駆動部322を回転させる。バルブ駆動部322は実質的にギヤ減速され、それによってバルブ駆動部322の位置決めに高い精度を得ることが可能となる。シリンジ駆動機構16には位置センサは含まれない。それは、ステータ308の角度位置はホール効果センサの正弦波出力からのみ求められ、最終ギヤ比がわかればそれからバルブ駆動部の位置を求めることが可能だからである。
【0105】
ウォーム駆動部は、前述のシリンジ駆動部および扉駆動機構のように逆駆動可能ではない。ただし、このバルブ駆動機構に対して同じタイプのホール効果位置決定および力ベースのトリガを使用することができる。ここで、力ベースのトリガでカートリッジの完全性の不具合を示すことが可能である。例えば、バルブ駆動部を回転させるのに、実質的により小さいかより大きい電流が予期せずに必要とされる場合、そのような事象はアッセイカートリッジの閉塞又は故障の可能性を示し得る。シリンジ駆動部、扉駆動機構及びバルブ駆動機構のそれぞれが、本明細書に記載の改良されたBLDCモータを利用するものとして説明したが、当業者には理解されるように、駆動部及び機構のいずれか又はすべては従来型のBLDCモータ、サーボモータあるいは他の適当なモータを利用することも可能であることは理解されるであろう。ただし、いくつかの場合には追加のセンサ又は回路を必要とするかもしれない。
【0106】
さらに、BLDCモータは、ホール効果センサによって生成される正弦波信号に基づいてセンタリングプロトコルを実行することにより、バルブ駆動出力部をホーム位置及びセンタ位置にするように構成されている。これでギヤのバックラッシュ及び経時的なギヤ摩耗を補償することができる。このことは
図6Cに示す、バルブ駆動部の位置に対するホール電圧信号のグラフで説明される。図に示すように、バルブ駆動部322の所与の位置は、ギヤのバックラッシュ及び摩耗によって変化し得る。
【0107】
VII.ホーンサブアセンブリ
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の診断アッセイシステムで使用される、超音波ホーンアセンブリが提供される。いくつかの実施形態では、超音波ホーンアセンブリには、超音波ホーン、ホーンハウジング、ばね、シャーシ、及びホーンを操作するための制御回路が含まれる。ホーンハウジングは、超音波ホーンを支持、固定するようになっており、ホーンの非係合位置と係合位置との間の移動を容易にするためのばねコイルの保持セクションと、ホーンの非係合(下降)位置と係合(上昇)位置との間のホーンの移動を作動させるためのシステムのカム機構のインタフェースとなるくさびを含む。本明細書ではコイルばねが記述されるが、様々な他のタイプのばね又は付勢機構が使用可能であることは理解されるであろう。非係合位置では、システムにアッセイカートリッジを装填し、またそこから取出すことを容易にするためにアッセイカートリッジが着座するベ-ス面に対して、超音波ホーンの先端が同一高さであるかそれより下にある。係合位置においては、超音波ホーンの先端はベース面より上にあって、アッセイカートリッジの超音波処理チャンバのドーム部に係合し、サンプル分析の準備及び/又は処理の間に超音波処理チャンバ内に含まれる流体サンプル中の生体物質の超音波処理に資するようになっている。いくつかの実施形態でホーンの移動は、システムの扉などの、システムの一つ又は複数の他の可動コンポーネントと共通のアクチュエータ機構によって行われる。ホーンアセンブリはまた、システムによる超音波ホーンの操作を容易にするために、システム内の対応する電気回路に電気接続されるようになったインタフェースを有する印刷回路基板のような電気回路も含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、診断アッセイシステムはアッセイの実行中に(
図9A~
図9Bに示すように)直立して配置される。そうして、ホーンが(カートリッジより下がった)非係合位置と(カートリッジに向かって上昇し た)係合位置との間を移動してカートリッジの超音波処理チャンバに係合して接触するようになっている。いくつかの実施形態では設計が異なっていて、非係合位置と係合位置においてホーンは、カートリッジと診断アッセイシステムの設計に依存してカートリッジに対する様々な他の配向及び/又は位置を取り得ることが理解されるであろう。
【0110】
VII.A.ホーンサブアセンブリの設計と組立
【0111】
図7Aは、本発明のいくつかの実施形態による診断アッセイシステムで使用されるように構成された超音波ホーンサブアセンブリ700を示す。
図7Bは、
図7Aのホーンアセンブリの分解組立図を示す。この実施形態ではホーンサブアセンブリには、超音波ホーン710、ホーンハウジング720、ばねコイル730、制御回路740、及びシャーシ750が含まれる。ホーンサブアセンブリはシステムに挿入する前に、スタンドアローンのサブアセンブリとして検査することができ、また必要に応じて取り去ることや置き換えることも可能である。
【0112】
図8A~
図8Eは、組立の様々な段階における、ホーンアセンブリのコンポーネントを示す。
図8Aに示すように、超音波ホーン710は、ホーンハウジング720(内部にあるホーンを示すために切り取って示されている)にスナップ嵌合される。ハウジングは、ホーンをハウジング内にスナップ嵌合することで、ハウジングに関して所定の配向及び位置内にホーンを配置または固定するように設計可能である。例えば、超音波ホーンは、ホーンの長手軸の周りに完全に軸対称でない部分を含み、ハウジングの内部の対応する部分または表面が係合してホーンをハウジング内に固定し、その中でのホーンの回転を禁止するようになった設計であってもよい。軸に非対称な部分として、これに限らないが、ホーンの片側又は両側の平坦部、ホーンから外方向に延在する突起又はタブ、若しくはホーンが電気接触する接触部、などが含まれ得る。
【0113】
いくつかの実施形態においてホーン720はサブアセンブリに組み込まれ、特定のアッセイで必要とされる生体物質の溶解に適した出力を与えるように制御回路によって制御される。
【0114】
図8Aでわかるようにホーンハウジング720の外表面には、ばねコイル730を保持してハウジング720を非係合位置と係合位置の間で移動させる、ばね保持部722が含まれている。保持部には、非圧縮状態にあるときにばねに係合する上部保持面722aと下部保持面722bとが含まれる。ハウジング720には又、非係合位置と係合位置の間をホーンが移動するときにリードをホーン710に電気的に接続するように固定及び/又は案内するための、一つ又は複数のリード保持細部723が含まれ得る。ホーンハウジング720には、システムのカムに対するインタフェースとなるくさび部721が含まれる。
【0115】
図8Cに示すように、部分的に組み立てられたホーンアセンブリはホーンシャーシ750にスナップ嵌合可能である。シャーシには局在化部751があり、これはハウジング720の対応する部分に係合してハウジングが所定位置にスナップ嵌合されたときにその位置と方向を固定するようになっている。シャーシには、ホーンアセンブリ700全体を診断アッセイシステム内に固定するための一つ又は複数の特徴部分も含まれており、例えば、シャーシをモジュールに取り付け可能な、一つ又は複数の穴を有するベース部が含まれてもよい。いくつかの実施形態においてシャーシは、射出成型によるポリマ材料で形成される。ただし、他の様々な製造プロセス(例えば、プレス、機械加工など)によって他の様々な材料(例えばポリマ、セラミック、金属)で形成され得ることは理解されるであろう。ホーンアセンブリをシャーシ内に配置した後、回路コンポーネント740がシャーシに取り付けられる。シャーシには、一つ又は複数の取り付け部752aが含まれてもよく、それによって回路コンポーネント(例えばPCB)が一つ又は複数のファスナ又はねじ752bによって固定可能である。回路コンポーネントは、シャーシに取り付ける前または後で、ホーンに電気接続することができる。完成したホーンアセンブリ700は、次に検査して、ユーザへ個別に、または診断アッセイシステムの内部に入れて供給可能である。
【0116】
VII.B.超音波処理ホーン位置決めインタフェース
【0117】
いくつかの態様において、超音波ホーンは可動機構に取り付けられ、それによって超音波ホーンは、診断アッセイシステム内に配置されたアッセイカートリッジの超音波処理チャンバに対して位置決めされる。いくつかの実施形態において、アッセイカートリッジにはカートリッジの底(
図10Aのように配向された場合)に配置された超音波処理チャンバが含まれ、これには
図10Aの例に示すように下向きのドーム(ドームの外側表面がアッセイカートリッジに関して凸形状である)があり、これが超音波ホーンのドーム形出力部711の丸い先端711Aに対応する。この実施形態では先端は丸くなっているが、ドーム部の先端は所望により、これに限るものではないが、平坦、尖鋭、凹型、凸型、丸、半球形を含む様々な形状になっていてもよい。超音波処理チャンバのドーム形状部及び丸いホーン先端は、ホーンから送達される超音波エネルギを集束させ、細胞物質(例えば強化細胞、胞子など)を溶解するのに必要な、所望の超音波レベルに効率的に到達して、最小の超音波ホーンパワーとサイズ要件でDNAを流体サンプル中へ放出する。超音波ホーンのドーム形出力部711の丸い先端711aが、超音波処理チャンバ1210のドーム1211を十分な力で押し付け、超音波エネルギが送達されている間中、ホーンの先端と超音波処理チャンバのドーム形状表面との間の接触が確実に維持されるようにすることが好ましい。いくつかの実施形態では、可動機構は超音波ホーンを上方(係合方向)に移動させ、超音波処理チャンバのドームと超音波ホーンのドームを、少なくとも0.5重量ポンドの力で一緒に押付け係合させるように構成されている。いくつかの実施形態では、ホーンの丸い先端と超音波処理チャンバのドーム部を確保するために印加する力は、約1重量ポンドから約2重量ポンドの間である。いくつかの実施形態では、印加される力は約1.4重量ポンドである。本明細書ではインタフェースとなるカム及びくさびを記述したが、付勢部材の有無に拘わらず、非係合位置と係合位置との間のホーンの移動を容易にする様々な他の機構が使用され得ることは理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態においてそのような機構として、リードスクリュー、ケーブル、などが含まれ得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、超音波ホーンを超音波処理チャンバに押し付けるように配置する可動機構は、診断アッセイシステムの様々な他のコンポーネントの移動、例えばシステムの扉の開閉、アッセイカートリッジのシステムへの装填と排出、システム内のバルブアセンブリ及びシリンジアセンブリの移動などを行う、アクチュエータのコネクタ間ネットワーク内に一体化されている。可動機構が一つ又は複数の他のコンポーネントのアクチュエータと一体化され得ること、又は可動機構が他の機構及びアクチュエータから完全に独立であり得ることは理解されるであろう。
【0119】
図9A~
図9Bは、システム内にアッセイカートリッジを装填中及び装填後の診断アッセイシステムの断面図であり、システム扉の閉鎖及びアッセイカートリッジの装填と連係して超音波ホーンを位置決めする機構を示している。
図9Aはアッセイカートリッジ32が部分的に挿入された図であり、アッセイカートリッジのベースの遠位対向部が排出/装填カム1120の排出歯に係合し始めている。カム1120のこの位置では、カムの外側表面がホーンハウジングのくさび部721の上部表面721に係合する。これは
図11A-1及び
図11A-2の側面図及び断面図でより詳細がわかる。
【0120】
アッセイカートリッジ32がより完全に挿入されるに連れて、アッセイカートリッジは排出歯を押し付け、排出/装填カム1120が時計方向に回転して、カムの装填歯がアッセイカートリッジの下側面に係合してカートリッジを完全装填位置に向けて内方向に引っ張る。排出/装填カム120が回転すると、カムの外側表面1121がホーンハウジングスライドのくさび部721のくさび先端721aに沿ってスライドする。これがホーンハウジングを押し付けてカートリッジから離して非係合位置に向かわせ、ばねコイル730を部分的に圧縮する。アッセイカートリッジが完全に挿入されると、くさび先端721aがカム1120の丸い部分の内側湾曲部1121a内に収まる。それによって、ホーンハウジング720が短い距離だけ上方へ移動させられ、コイルが少なくとも部分的に復元させられて、超音波ホーンの丸い先端711aが、それに沿ってアッセイカートリッジが装填された面より上に突出し、かつ、超音波処理チャンバのドーム形状部に押し付け係合する。この位置は、
図11B-1と
図11B-2のそれぞれ側面図と断面図により詳細が示されている。
図9A及び
図9Bからわかるように、カム120の回転は扉ラック機構の第1のラック部110の閉鎖移動によって作動される。これはこの実施形態では下向きの移動(矢印方向)である。相互に関連したギヤのネットワークを通じて、扉のこの閉鎖移動は、システム1000の扉100を、アッセイカートリッジ32の挿入と装填を容易にする
図9Aの開位置から、装填後の
図9Bに示すような閉位置へ、閉鎖するようにも同時に作動する。扉ラック機構の移動は、本明細書に記載したいずれかのような一つ又は複数のモータによって行うことができる。
【0121】
図10Aは、本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムで使用されるアッセイカートリッジの断面図を示す。上記の、超音波処理チャンバ1210のドーム形状部1211が、アッセイカートリッジの底面上に配置される。超音波処理チャンバ1210はアッセイカートリッジのチャネルネットワークと流体連通しており、アッセイ手順時に圧力変化を実現するためにバルブ及びシリンジを動かすことによって、そこを通って流体が輸送される。サンプルの調整及び/又は処理の後に、調整された流体サンプルが反応容器33のチャンバ内へ輸送される。そのとき励起手段及び光学検出手段を使用して、対象(例えばバクテリア、ウィルス、病原体、毒素、又は他の標的分析物)の標的分析物(例えば核酸)の有無を光学的に検出する。そのような反応容器には、標的分析物の検出に使用するための、様々な異なるチャンバ、導管、マイクロウェルアレイが含まれ得ることは理解されるであろう。そのような反応容器を流体サンプルの分析に使用する例は、2000年5月30日出願の、「化学反応を行うためのカートリッジ(Cartridge for Conducting a Chemical Reaction)」と題する、共通の譲受人の米国特許第6,818,185号明細書に記載されている。その全体の内容を、すべての目的のために参照により本明細書に援用する。
【0122】
VII.C.超音波処理ホーン制御
【0123】
いくつかの実施形態において、超音波ホーンの操作は、電流振幅と位相推定を制御して、特定のアッセイに必要とされる励起を最適化し、かつ固定電圧では電流に比例する超音波パワーの安定した堅牢な送達を提供するように構成されたホーン制御回路を使用して行われる。いくつかの実施形態において、システムは超音波処理パワーの送達をすべてデジタル制御する。いくつかの実施形態においてシステムは、従来型の変圧器と全波整流アナログ回路なしでの超音波ホーンの操作を行う。それによって電力使用量の低減、ホーンアセンブリサイズの減少、システム全体のサイズの低減が可能となる。いくつかの実施形態においてパワー送達と制御は、超音波ホーンへの(無効電力とは対照の)有効電力(これは総電力である)を制御するために行われる。制御回路は、特定のアッセイに要求される標的細胞を溶解するために、プログラム可能な超音波処理パワーをプログラム可能な継続時間だけアッセイカートリッジに印加するように構成されている。
【0124】
いくつかの実施形態では(例えば、
図12Aを参照)、超音波ホーンには、電気接点715を介して電源716に接続されたときに振動する、一つ又は複数の圧電アクチュエータ714に隣接する質量体713(典型的には金属製の固体コア)が含まれる。固体質量体には、超音波を集束させ、かつドーム形出力部711で終端する細長の部分712へ至るテーパ部712’が含まれる。このドーム形出力部はドーム形出力部711の先端711aで出力するために超音波をさらに収束させる。一般的には、複数の圧電アクチュエータは(高い超音波エネルギの送達に適する一つのアクチュエータに比べて)、より低い相対仕様でより大きな超音波出力を提供するために使用することができる。
【0125】
いくつかの実施形態においてホーンアセンブリは、既製のホーンを、閉ループすなわちフィードバック制御してホーンを動作させるホーン制御回路と共に利用可能である。この制御は、他の方法でホーンに使用可能なものよりもより相対的に低い電力仕様で、安定した堅牢な超音波エネルギを所望レベルで提供する。例えば、複数の圧電アクチュエータを有するそのような既製のホーンは、診断アッセイにおいて細胞の溶解に適した超音波エネルギレベルを送達するために作動させたときに、アクチュエータが位相を外れて動作するために、設定電流レベルを印加するだけでは安定的には動作しない可能性がある。圧電アクチュエータは電流が印加されると外方向に膨張し、この外方向の膨張が僅かでも異なるタイミングで(位相がずれて)生じると、振動への低周波カップリングが生じ、ホーンの適正レベルでの超音波エネルギ送達が阻止される。このため、そのようなホーンはより低い超音波レベルでしか適正に動作しないか、又は特定の診断アッセイに必要とされる、ある継続時間に亘り安定したエネルギ送達を提供することには当てにできない場合がある。
【0126】
いくつかの実施形態において、本システムは改良された制御方式を適用し、上で述べたようなホーンを使用して特定の継続時間にわたり、診断アッセイにおいて細胞を溶解するのに適した超音波エネルギレベルを安定して送達可能とする。いくつかの実施形態において、ホーンアセンブリは、共振圧電アクチュエータを使用して、約50.5kHzの振動を印加するように構成されている。いくつかの実施形態において、ホーンアセンブリは、約20kHzから約50kHzの範囲の振動周波数を印加するように構成されている。例えば、振動周波数は、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50kHzであってよい。いくつかの実施形態において、振動周波数は50kHzより大きい。いくつかの実施形態において、システムは閉ループ制御システムを利用してピエゾ電気の励起を提供し、生体物質の超音波処理に必要な継続時間の間相互に同位相を維持する。
【0127】
いくつかの実施形態において、システムは、印加電力を所望レベルまで傾斜上昇させることにより圧電アクチュエータに電流及び/又は電圧を印加して、位相ずれ励起の発生を最小化する。この方式の例を
図10Bに示す。いくつかの実施形態において、パワー送達と制御は、超音波ホーンへの(無効電力とは対照の)有効電力(これは総電力である)を制御するために行われる。電圧と電流の間の特定の位相関係を実質的に維持することによって、無効電力を実質的に排除することができる。圧電アクチュエータが位相をロックされてなくて、ホーンが単に振動する場合には無効電力が存在する。単に電力を投入しただけに対比して、電力を傾斜上昇させることにより、システムは電流と電圧の間の位相関係を維持しかつ振動を防止して、ホーンに必要とされる所望の超音波エネルギレベルの送達を可能にさせる。
【0128】
図12Bは、電力共振時の励起電流と電圧の間の位相関係を示す、シミュレーションされたホーン電力伝達関数を示す。
【0129】
いくつかの実施形態において、ホーン制御回路は、ホーンの動作に閉制御ループを使用する。内部制御ループにおいて周波数は現在の位相関係を維持するように調節される。外部ループにおいては、電圧励起の振幅は、命令されたパワーレベルを維持するために連続的に調整される。これらの内部及び外部の制御ループの例を
図14に示す。
【0130】
図13は、本発明のいくつかの実施形態による、超音波処理ホーンアセンブリの制御方式の図である。超音波処理インタフェースは、特定のアッセイに必要とされる電力(ワット)と継続時間(秒)で構成される。
図10Bに示すようなサンプルチャンバ1210内の溶液内に典型的な胞子細胞を十分に溶解し、~50%の胞子結合DNAを放出させるために、典型的な電力レベルである5~10ワットを15~30の間の時間印加する。ただし、電力、継続時間、及び所望の超音波処理効率はアッセイによって変化し、かつアッセイの要求、設計、及び超音波処理される細胞又は物質のタイプに依存して、記述したレベルよりも大きいことも、あるいは小さいこともあり得ることは理解されたい。いくつかの実施形態において、PSoC DACが0-4Vの正弦波を生成する。DAC出力はTIのオーディオ増幅器を通って出て行く。TIの増幅器は信号を20dBだけ増幅する。TIで増幅した信号は、ホーンに送達される前にステップアップ変圧器を通る。電力は、電圧(TIと変圧器を通って増幅されたDAC電圧)とセンサで読み取られた電流で推定される(P=v*Icos(Φ))(有効電力)。こうして、ホーンに送達される電力はDAC電圧を制御することで制御される。制御ループにより、入力電圧が電力を所望レベルに維持するように駆動される。例えば
図15参照。
【0131】
いくつかの実施形態において、ホーン制御回路は、周波数掃引から最高の有効電力振幅を与える周波数が共振周波数として確立されるように構成されている。入力電圧と出力電圧の間の位相が、共振周波数において測定される。超音波処理の間、制御ループは入力電圧と出力電圧の間の測定された位相を入力周波数を調整することによって固定する。電流振幅はセンサ係数と、読取り前の信号を増幅するPSoC増幅器の積である。電力と入力電圧の間の例示的関係を、
図16に示す。周波数に対するホーン電流振幅と位相の間の例示的関係を、
図17に示す。
【0132】
いくつかの実施形態において、ホーン制御回路は、ホーン駆動器への振幅入力を制御する正弦波制御を利用する。この回路は、共振周波数制御のための位相制御を利用して、電圧と電流を、例えば無効電力を除去するために使用可能な特定の位相関係に確実に維持することが可能である。いくつかの実施形態において、この回路では1Hzの分解能の周波数掃引を利用するが、本構成は実効的に無制限の周波数分解能を提供可能であることが理解される。そのような構成により、そのような装置に関して他の場合にあり得るよりも低減された電力とサイズ仕様を有する超音波ホーンを用いて、安定かつ堅牢な超音波エネルギレベルの送達が可能である。
【0133】
VIII.熱光学サブアセンブリ
【0134】
いくつかの実施形態において、本発明は、診断アッセイシステムで使用する熱光学サブアセンブリ(TOS)を提供する。いくつかの実施形態において、TOSは熱制御装置コンポーネント及び光学励起/検出コンポーネントを含む。TOSは、超音波ホーン、扉、シリンジ及びバルブを含む、診断アッセイシステムの他のコンポーネントとのインタフェースとなり得る。いくつかの実施形態においてTOSは、熱制御装置機器及び励起手段と光学検出手段を有する光学コンポーネント機器を含む。TOSユニットは、熱制御コンポーネントを使用する核酸増幅及び/又は標的分析物の検出と、光学コンポーネント機器を使用した標的分析物の光学的インタロゲーションとを遂行するために、反応容器を挿入可能な空洞を画定するように構成されている。TOSは、アッセイシステムの様々なコンポーネント間の操作及び連係を制御する、一つ又は複数の配線基板(例えばマザーボード)を有するシステムに使用される。いくつかの実施形態において、Cellcoreがマザーボード上に載っている。いくつかの実施形態において、各ハードウェアのサブアセンブリは、それら自身の専用のPSoCプロセッサと関連する電子機器とを有する。いくつかの実施形態において、診断アッセイシステムにはシステムが利用する制御ソフトウェア又は制御パラメータを修正及び/又は更新可能とする通信手段(例えば、無線、NFC、USB)が含まれている。TOSにはまた、システムの複数のコンポーネントの動作を連係させるために、アッセイカートリッジの位置又は存在、若しくはバルブコンポーネントの位置を判定するための一つ又は複数のセンサ(例えばNFCリーダ)が含まれている。いくつかの実施形態においてTOSは、TOSが診断アッセイシステム内に挿入されたときにアッセイカートリッジに物理的に近接可能とするために、TOS上に物理的に配置されたカートリッジ位置センサ(例えばNFCリーダ)を備える。いくつかの実施形態において、TOSは、USB及び/又はNFCやブルートゥース(登録商標)のような無線インタフェースを介して他の電子サブシステムに直列接続可能である。
【0135】
VIII.A.TOS設計
【0136】
熱制御装置機器と光学検出装置は所望により様々な構成とすることが可能なことが理解される。本明細書に記載の実施形態では、熱制御及び光学検出装置は、2つの対向する主面と2つの端部(副面)とを有する反応容器で使用されるように構成されている。熱制御装置は、反応容器の一つの主面を加熱する片側加熱用、あるいは両主面を加熱する両側加熱用に構成可能である。本明細書に記載の実施形態では、熱制御装置は反応容器の一つの主面の片側又は両側に隣接して配置するように構成されている。同様に、光学検出装置は、反応容器の一つの主面、又は反応容器の一つ又は複数の端部(副面)から光学検出するような、様々な構成に従って構成可能である。一般に、光学検出構成は熱制御装置構成に対応し、例えば、光学検出装置は、反応容器の熱制御装置で覆われていない部分を通して光学系を検出するように配置される。片側加熱が用いられているいくつかの実施形態において、反対側の加熱されない主面を熱伝達制御のための透明絶縁材料で覆い、なおかつその絶縁材料を通して光学検出を可能とするようにできる。いくつかの実施形態においてシステムは、片側加熱用に構成された熱制御装置と、反応容器の一つの主面及び/又は一つ又は複数の端部(副面)から励起/検出するように構成された光学検出装置とを利用する。他の実施形態においてシステムは、反応容器の一つ又は複数の端部から励起/検出するように構成された光学検出装置を有する、両側加熱構成の熱制御装置を利用する。例示的構成を以下に示す。
【0137】
図18は、システム内に挿入された使い捨てアッセイカートリッジ(図示せず)内の調整された流体サンプル中の標的分析物の検出を行うための例示的診断アッセイシステム1000である。診断アッセイシステム1000には、本明細書に記載したように複数のコンポーネントとサブアセンブリが含まれ、その一つはTOSサブアセンブリ1100である。
図18に示すように、TOSサブアセンブリ1100はシステムの前面から取り付けることができる。TOSは、扉14の開いたシステム1000のフレーム又はハウジング中へ挿入して、その前面プレート1110がアッセイカートリッジを収容するシステムの受器の中に向かって対面するように一つ又は複数のねじ(図示せず)で固定することができる。前面プレート1110は空洞開口すなわちスロット1111を画定し、そこを通してアッセイカートリッジの平面型反応容器を挿入可能である。いくつかの実施形態においてTOSは、診断アッセイシステムに挿入する前にスタンドアローンのサブアセンブリとして検査可能である。いくつかの実施形態においてTOSは、必要に応じて取り外し又は交換可能である。
【0138】
いくつかの実施形態において、診断アッセイシステムは使い捨てアッセイカートリッジを使用する。本明細書に記載のシステムとの使用に適したアッセイカートリッジの例は、2000年5月30日出願の、「化学反応を行うためのカートリッジ(Cartridge for Conducting a Chemical Reaction)」と題する、米国特許第6,818,185号明細書に記載されている。その全体の内容をすべての目的のために参照により本明細書に援用する。
【0139】
いくつかの実施形態においてTOSスロット1111及び空洞は、反応容器(典型的には±0.020”以内)を収納できる寸法であり、光学マウントと関連するコンポーネントは光学コンポーネントを反応容器に対して配置して、標的分析物の励起及び光学検出を容易とするようになっている。いくつかの実施形態においてTOSは、デュアルTEC装置などの熱制御装置を反応容器に対して配置して、アッセイカートリッジの反応容器内の流体サンプルの熱サイクルを制御及び促進する。いくつかの実施形態において、TOSは熱制御装置を移動させる。例えば反応容器への挿入の前にデュアルTECを引き込み、次いで反応容器が所定位置になれば、デュアルTECを反応容器に係合させてクランプする。
【0140】
図19A、
図19Bは本発明のいくつかの実施形態による例示的TOSサブアセンブリ1100の正面図と背面図である。
図19Aには、前面プレート1110の空洞開口1111内へ挿入された例示的反応容器33が示されている。また、熱制御マウント/ヒートシンク820、並びに冷却ファン822(
図20B参照)も示されている。
図19Bには、熱制御装置を反応容器33にクランプ係合する前に横移動させることが可能な、リジッドフレックスPCBと熱接触機構840が示されている。熱制御装置800と光学コンポーネント900に電力を供給して制御するPCB830と831は、横移動を可能とするリジッドフレックス接続部832を介して結合可能である。熱接触機構840にはスライド可能コンポーネントが含まれ、これが、並進移動してオープン状態(
図24B参照)とクランプ状態(
図24A参照)を取る。クランプ状態では熱制御装置のTEC面810が反応容器33の側面に係合される。いくつかの実施形態において、熱接触機構840には可動及び/又は調節可能なブラケット842が含まれ、これが垂直に延在するマウント844に沿って上下して、光学コンポーネント900及び反応容器との適切な整列を確保する。またこれは熱制御装置に向かって横移動可能であって、反応容器33と好適な熱接触を確保して効率的な熱サイクルを促進する。いくつかの実施形態において、熱接触機構840には底部の支持体又はガイド846が含まれ、反応容器の熱接触機構840内への挿入を容易とする。又いくつかの実施形態において、この移動は
図26A~
図26Bに示すように、扉駆動ラック110の軸方向移動によって実行される。
【0141】
図20A、
図20Bは本発明のいくつかの実施形態によるTOSの例の分解組立図である。図からわかるように、TOSアセンブリには窓を有する光学マウント930が含まれ、組立てられたときにこれを介して励起コンポーネント910及び光学検出コンポーネント920が動作可能なる。光学マウントはブラケット1113を介して前面プレート1110に取り付けられ、反応容器開口1111の周りのフランジ1112を少なくとも部分的に囲む。熱制御装置800は、熱接触機構840を貫通して延在する2つのピン834と、光学マウント930を貫通する2つの穴によって光学マウント930に結合される。アセンブリにはまた、システム内のカートリッジの位置の近接性、又は個体特性を検出するためのセンサも含まれ得る。いくつかの実施形態において、センサは近距離無線通信(NFC)センサ1190である。ただし、他の様々なセンサを使用し得ることも理解される。いくつかの実施形態において、NFCは様々な異なるものを検出するように適合し得ることも理解される。それらには、カートリッジの位置/有無、カートリッジのタイプ、特定のアッセイ、特定のアッセイに固有の微小流体手順、モバイルデバイス(例えばPDA)の存在、及び他の様々なロット固有のパラメータが含まれるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、NFCは特定のシステム/カートリッジに関するワークフローを可能とし、それによって、そうでない場合に診断アッセイシステムがアクセスする必要があるクラウドにおける個別のデータベースの必要性を排除する。この機能は、インターネットがすぐに使用できないような、リソースが限定された設定においては特に有用である。
【0142】
図21A、
図21Bは、本発明のいくつかの実施形態による例示的TOSの光学コンポーネント及び関連するPCBを示す。光学コンポーネントには、励起コンポーネント910、光学検出コンポーネント920及び関連するPCBコンポーネント830、831、並びに電気回路833が含まれる。いくつかの実施形態において、PCB同士はリジッドフレックス接続部832によって接続され、これにより熱制御装置が反応容器に対して横移動可能となる。
図22A、
図22Bは、例示的TOSにおける、熱制御装置コンポーネントと、リジッドフレックス接続部を有する関連PCBを示す。
図23A、
図23Bは、例示的TOSの光学マウント930に取り付ける前の熱制御装置800を示す。いくつかの実施形態において光学マウント930には、光学コンポーネント900と反応容器33の反応チャンバ部との間の適切なアライメントを確保するためのアライメント部931が含まれる。アライメント部には、反応容器の対応する特徴と係合する一つ又は複数の特徴が含まれ得る。例えば反応チューブの遠位方向へ延在するピンを受ける穴、反応容器の対応する凹部に係合する突起又は隆起、一対の磁石、反応容器と光学コンポーネント900の間のアライメントを促進する任意の好適な特徴、などである。
【0143】
図24A、
図24B、
図25は、本発明のいくつかの実施形態による、光学マウントとスライドベースに移動可能に結合された熱制御装置コンポーネントを示す。いくつかの実施形態において、熱制御機構840はアッセイカートリッジの反応容器に押付け係合する。いくつかの実施形態において、熱制御装置を反応容器に係合させるために印加される力は、少なくとも1重量ポンドである。いくつかの実施形態において、TEC面を反応容器33の主面に平行かつ十分に接触した状態に確実に保持するために、使用される力の大きさは、1重量ポンドと3重量ポンドの間であり、典型的には約1.3重量ポンドの締付け力である。
図26A、
図26Bは、熱制御装置をクランプ位置と開位置(それぞれ
図24A、
図24Bを参照)の間で横移動させる、扉ラック110の動作を示す。
【0144】
図28は、本発明のいくつかの実施形態によるTOSの光学モジュールと熱モジュールアセンブリ810の概略図を示す。光学モジュールには、PCBキャリア上に配置された、検出ブロックチップすなわち検出コンポーネント920と、励起ブロックチップすなわち励起コンポーネント910が含まれる。
図28は、本明細書で開示した診断アッセイシステムで使用される例示的TOSを示す。
【0145】
VIII.B.光学コンポーネント
【0146】
図30Aは、本明細書に開示された診断アッセイシステムと共に使用するための例示的光学コンポーネント構成を示す。
図30Bは、本発明のいくつかの実施形態による、例示的光学コンポーネント構成の詳細概略図を示す。いくつかの実施形態では、光学的な励起と検出の手段はアッセイカートリッジの反応容器の副面(端部)を通して作動し、その一方で熱制御装置は反応容器の一つ又は複数の対向する主面に係合する。いくつかの実施形態において熱制御装置コンポーネントは、反応容器の主面の片側で熱的に係合する。いくつかの実施形態において熱制御装置コンポーネントは、反応容器の主面の両側で熱的に係合する。この後者の構成は、流体サンプルのより大きな体積を加熱及び冷却するのに特に有効であり得る。そのような構成では、反応容器内の流体の熱サイクルを実施するために、加熱のためのセラミックプレートヒータと受動冷却(例えばセラミックヒータ越しに周囲の空気を吹き付けさせる)手段を用いることが可能であり、あるいは、本明細書に記載の、任意のTEC構成を含むことが可能である。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態によれば、
図30Bに示す構成のように、小型LED励起チップが反応容器の副端部を介して流体サンプルを励起可能であり、その一方で小型検出チップが反応容器33の主面を通して蛍光を収集する。さらに、デュアルTECの設計により、反対面を通して制御された加熱及び冷却が提供され、いくつかの熱サイクル装置に使用されるような受動冷却に比べて改良された温度制御が提供される。
図30Aの構成のようないくつかの反応容器では、端部を見込む窓は狭く(約1.0mmx4.5mm)、この小さい寸法が従来のレンズ方式を困難とする。
図30Bのように、反応容器の主面から蛍光を集光することで検出窓を大きくでき、励起と検出を互いに直交するようにしたままで収集される信号をより大きくできる。いくつかの実施形態において、光学検出チップは反応容器の寸法に合う大きさとなっている。
図30Cは、本発明のいくつかの実施形態による例示的な励起ブロックと検出ブロックのそれぞれの詳細図を示す。図に示すように、励起ブロック910には、フィルタとレンズ912、そしてロッドレンズ913を通して光を指向させ所望の波長の光を反応容器33の所望の位置へ放射させるLED光源911が含まれる。光学検出ブロック920には、反応容器33から放射された光を検出するホトダイオード検出器921が含まれる。放射された光はロッドレンズ923及びフィルタとレンズ922を通過してホトダイオード921で受光され、反応容器33内の標的分析物の存在に対応する反応を示し得る特定の波長が確実に検出されるようにする。
【0148】
いくつかの実施形態において光学コンポーネント900には、平面型反応容器33を収納するように適合された光学マウント上に配置された、光学励起コンポーネント910と光学検出コンポーネント920が含まれる。光学励起コンポーネント910は、反応容器33の平坦面の端部(副面)を通して励起エネルギを放射するように配置され、光学検出コンポーネント920は反応容器の主平坦面に沿って配置される。一態様においては、光学励起コンポーネントと光学検出コンポーネントは相互に直交している。いくつかの実施形態において、光学コンポーネントは開口数の高いレンズを利用するように構成されている。いくつかの実施形態において、光学コンポーネントはレンズの使用を必要としない、低い開口数で作用するように構成されている。そのような実施形態においては、光路が、励起により生成された光を集光するレンズの使用を必要とせずに、光源からフィルタを通って検出コンポーネントへ至ってもよい。いくつかの実施形態は、励起によって生成された光の、レンズ使用を不要とする低開口数での検出を改善するために、励起と検出の光路が相互に離れて配置されるように構成可能である。励起光検出にそのような空間分離を利用することでレンズなしでの光検出が可能となり、それによって小サイズのシステムが可能となる。
【0149】
蛍光検出システムにおいて、励起光は一般に発光する蛍光信号の量より大きい。放射信号を効率的に検出するために、発光された光を可能な限り集光することが重要である。したがって、ほとんどの従来システムでは光学検出システムに高開口数を使用する。高開口数はより多くの光の集光を可能とし、それによってより高い解像度が得られる。他方、低開口数は一般に集光量が少なく、低解像度となる。ほとんどの従来の蛍光光学検出システムでは、光源と検出器の間の光路にレンズとバンドパスフィルタを含む構成が使用される。フィルタは一般にレンズと検出器の間に配置されて、レンズによりコリメート光がフィルタを通るようにする。レンズ(及びコリメート光)のない場合には、高入射角でバンドパスフィルタに当たる光がフィルタされずに単純に通過するために、フィルタの効率が下がる。レンズは、コリメートして(高入射角ビームを減らして)この問題を排除し、励起波長のより効率的なフィルタリングを行う。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態では、光学システムにはレンズが含まれない。レンズのない場合には、光路に光源、バンドパスフィルタ及び検出器だけが含まれる低開口数構成が使用される。この構成の低開口数の使用により高入射角光が(レンズの使用なしで)減少してフィルタリング効率が改善される。その結果、励起波長のほとんどがフィルタリングされて強い発光信号が得られる。
【0151】
いくつかの実施形態において光学モジュールには、UV、青、緑、黄及び赤のLED、関連する光学フィルタ、カップリング光学素子、並びに保護ガラスが含まれる。いくつかの実施形態において、光学デバイスはエポキシ内に完全に封止され、衝撃からの保護及び塵や湿気の侵入に対する保護が行われる。いくつかの実施形態において、光学的励起及び検出チップは、各次元が10mm未満のような小サイズであって、典型的には約5mm(長さ)x4mm(幅)x3mm(高さ)である。
【0152】
図31は、励起ブロック910と検出ブロック920の詳細図であり、そこを通して励起ブロックから光が放射されかつ検出ブロックによって集光される、隣接する反応容器の相対的面積が示されている。
【0153】
図32は、本発明のいくつかの実施形態による、光学コンポーネントの励起及び検出コンポーネントでの蛍光検出を示す。図からわかるように、
図32の構成は、いくつかの実施形態による低開口数使用に係わる励起及び検出ブロックの配置パターンと一致する。
【0154】
VIII.C.熱制御装置
【0155】
VIII.C.1.概説
【0156】
図27は、本発明のいくつかの実施形態による、TOSボード内の熱制御装置800のブロック制御図である。いくつかの実施形態において熱制御装置には、熱キャパシタを間に配置した、デュアル熱電式クーラ(TEC)が含まれる。いくつかの実施形態において、熱制御装置は、反応容器又は容器に係合する活性面の加熱と冷却を最適化するために、各TECの操作を制御する2つのサーミスタを利用した閉ループ制御を使用している。この構成により、従来の温度制御装置の制御に比べて、低ノイズ、改良された温度安定性、高利得及び高バンド幅が提供される。いくつかの実施形態において、一つの熱制御装置を使用して、反応容器の主面を介して流体サンプルの加熱/冷却が行われる。いくつかの実施形態において、流体サンプルは、反応容器の各主面への熱制御装置を用いて、反応容器の両主面を介して加熱冷却される。
【0157】
第1と第2の熱電式クーラを含む、上記の任意の実施形態において、第2の熱電式クーラは熱操作デバイスで置き換えることができる。そのような熱操作デバイスには、任意のヒータ(例えば熱抵抗ヒータ)、クーラ、又は温度調節に好適な任意の手段が含まれる。いくつかの実施形態において、熱操作デバイスは第1の熱電式クーラに共通の微小環境に含まれ、熱操作デバイスの作用によって微小環境の温度が周囲温度に対して変化するようになっている。この態様では、デバイスが周囲環境を変化させて第1の熱電式クーラに第1の温度(例えば60~70℃の間の増幅温度)と第2の高温(例えば約95℃の変性温度)との間を、可能な限り迅速にサイクルするようにさせる。第1と第2の温度がどちらも真の周囲温度よりも高い場合には、微小環境内の第2のヒートソース(例えば熱電式クーラ又はヒータ)が微小環境内の温度を周囲温度より上に上げることがより効率的である。これに代わって、周囲温度が第2の高温を超える場合には、熱操作デバイスは微小環境を理想温度まで冷却して、第1と第2の温度の間でより効果的に急速サイクルさせ得る。
【0158】
いくつかの実施形態において、熱制御装置には、活性面と基準面を有する第1の熱電式クーラ、熱操作デバイス、及び第1の熱電式クーラと熱操作デバイスのそれぞれに操作可能に結合したコントローラ、が含まれる。コントローラは第1の熱電式クーラを熱操作デバイスと連係して動作させ、第1の熱電式クーラの活性面温度が初期温度から所望のターゲット温度に変化する際に、第1の熱電式クーラの効率を向上させるようにする。熱操作デバイスは、熱抵抗加熱素子、又は第2の熱電式クーラ、又は温度調節に好適な任意の手段を含むことができる。
【0159】
いくつかの実施形態において、熱制御装置はさらに、コントローラに結合し、かつ、第1の熱電式クーラ、熱操作デバイス、及び/又は第1の熱電式クーラと熱操作デバイスに共通な微小環境に沿って又はその近くに配置された一つ又は複数の温度センサを含む。熱操作デバイスは、診断アッセイシステム内に画定される微小環境を介して第1の熱電式クーラと熱的に結合可能である。そこでは熱操作デバイスは、微小環境の温度をシステム外部の環境温度から制御及び調節可能とするように配置されている。
【0160】
いくつかの実施形態において、熱制御装置は、熱電子クーラと熱操作デバイスのそれぞれに結合されたコントローラを含み、これは、熱制御装置と熱的に連通した反応容器のチャンバ内の温度を制御するために温度制御するように構成されている。いくつかの実施形態において、コントローラは、反応容器内のその場反応チャンバ温度の熱モデル化に基づいて第1の熱電式クーラを動作させるように構成されている。熱モデル化はリアルタイムで遂行可能であり、かつモデルの精度に依ってはカルマンフィルタリングを活用することができる。
【0161】
いくつかの実施形態において、熱制御装置は診断アッセイシステムのデバイス内に配置され、システム内に配置されたアッセイカートリッジの反応容器と熱的に連通する。コントローラは、反応容器のチャンバ内でポリメラーゼ連鎖反応プロセスの熱サイクルを実行するように構成可能である。
【0162】
いくつかの実施形態において、熱制御装置は、活性面と基準面を有する熱電式クーラと、熱操作デバイスと、第1の熱電式クーラの基準面が熱インターポーザ(これは本明細書に開示したように熱キャパシタであってよい)を介して熱操作デバイスと熱的に結合するようになった、第1の熱電式クーラと熱操作デバイスの間に配置された熱インターポーザと、第1の熱電式クーラの活性面の温度を検出するようになった第1の温度センサと、を含む。このデバイスはさらに、熱電式クーラと熱操作デバイスのそれぞれに操作可能に結合されたコントローラを含むことができる。コントローラは熱操作デバイスを第1の熱電式クーラと連係して動作させ、第1の熱電式クーラの活性面温度が初期温度から所望のターゲット温度に変化する際に、第1の熱電式クーラの速度と効率を向上させるようにする。いくつかの実施形態においてコントローラは、第1の温度センサからの入力を含む熱モデルに基づいて予想温度のフィードバック入力を有する、閉制御ループで構成されている。
【0163】
そのような熱制御装置の様々な態様は、同時出願の「熱制御装置及び使用方法(Thermal Control Device(熱制御装置) and Methods of Use)」と題する米国特許仮出願第___号[代理人整理番号85430-1017353-011410US]明細書に詳細に記載されており、参照によりその全内容をすべての目的に対して本明細書に援用する。本発明のいくつかの実施形態に従うTOSシステムに使用される熱制御装置は、その中に記載の要素の任意の組み合わせを含み得ることは理解されるであろう。
【0164】
VIII.C.2.TEC設計
【0165】
いくつかの実施形態において、熱制御装置は、活性面と基準面を有する第1のTECと、活性面と基準面を有する第2のTECと、第1のTECの基準面が熱インターポーザを介して第2のTECの活性面に熱的に結合するようになった第1と第2のTECの間に配置された熱インターポーザと、を備える。いくつかの実施形態において熱インターポーザは、熱キャパシタとして作用する。いくつかの実施形態において、熱制御装置は、第1と第2のTECにそれぞれ動作的に結合したコントローラを含む。このコントローラは第2のTECを第1のTECと同時に動作させて、第1のTECの活性面の温度が初期温度から所望のターゲット温度に変化するときの第1のTECの動作の速度と効率を向上させるようになっている。いくつかの実施形態において、第1と第2の熱電式クーラは、熱エネルギの伝達および貯蔵に十分な熱伝導度と質量を有する熱キャパシタを介して熱的に結合し、加熱と冷却を切り替えるときに時間を低減して、より速く、より効率的な熱サイクルを提供するようになっている。いくつかの実施形態において、この装置は第1の熱電式クーラ装置内の熱電対と熱キャパシタ層内の別の熱電対とを利用し、かつ第1と第2の熱電対のそれぞれの温度に基づいて、第1と第2の閉制御ループを利用して作動する。熱キャパシタ層内に貯蔵された熱エネルギを利用するために、第2の制御ループが第1の制御ループを先導又は遅滞させるように構成され得る。本明細書に記載のこれらの一つ又は複数の態様を利用して、本発明の実施形態が、前述した問題となる高温環境においても、好ましくは約2時間以下での急速熱サイクルを実行するためのより高速でより堅牢な熱制御装置を提供する。
【0166】
いくつかの実施形態において熱制御装置は、熱サイクル間の切り替え速度とTECの加熱、冷却における効率向上を十分に促進するための熱エネルギ貯蔵に十分な質量を有する、熱伝導性材料で構成された熱キャパシタを含む。いくつかの実施形態において、熱キャパシタは、セラミック材料で形成可能な第1と第2のTECの活性面と基準面よりも高い熱質量を有する材料を含む。いくつかの実施形態において、熱キャパシタは、約10mm以下(例えば、約10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1mmあるいはそれ未満)の厚さを有する銅層で形成されている。この構成は、比較的薄い平面構造の熱制御装置を可能とし、サイズの小さい核酸分析装置の反応容器での使用に好適となる。
【0167】
いくつかの実施形態において、熱制御装置は、第1のTECの活性面の温度を検出するように適合された第1の温度センサと、熱キャパシタの温度を検出するように適合された第2の温度センサとを含む。いくつかの実施形態において、第1と第2の温度センサはコントローラに結合されて、第1と第2のTECの動作が、少なくとも部分的に第1と第2の温度センサからコントローラへのそれぞれの入力に基づくようになっている。いくつかの実施形態において、第2の温度センサは、熱キャパシタの熱伝導性材料に埋め込まれているか、又は少なくとも熱接触している。本明細書に記載の実施形態のいずれにおいても、温度センサは、センサが個々の層に対してその層の温度を十分に検出するために熱接触している限りは、他の様々な場所に配置され得ることは理解されるであろう。
【0168】
いくつかの実施形態において、熱制御装置は、第1の温度センサの入力が提供される主制御ループと、第2の温度センサの入力が提供される副制御ループとで構成されるコントローラを含む。コントローラは、主制御ループのバンド幅応答が副制御ループのバンド幅応答よりも早い(又は遅い)タイミングとなるように構成可能である。典型的には、第1と第2の制御ループはいずれも閉ループである。いくつかの実施形態において、コントローラは、第1TECの活性面が高温のターゲット温度に加熱される加熱サイクルと、第1TECの活性面が低温のターゲット温度に冷却される冷却サイクルとの間を循環するように構成されている。コントローラは、熱キャパシタを熱的に充填するために、第1の制御ループが加熱と冷却の間の切り替えをする前に、第2の制御ループが第2のTECを加熱モードと冷却モードの間で切り替えるように構成され得る。いくつかの実施形態において、第2の制御ループは、熱キャパシタの温度を、第1TECの活性面の温度の約40℃以内に維持する。いくつかの実施形態において、第2の制御ループは、熱キャパシタの温度を、第1TECの活性面の温度の約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50℃以内に維持する。コントローラは、第1TECの効率が第2TECの動作によって維持されて、第1TECの活性面での加熱及び冷却が、約10℃/秒の温度傾斜速度で起きるように構成可能である。本発明で達成可能な、非限定的な例示的傾斜速度としては、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1℃/秒が含まれる。いくつかの実施形態において、高温ターゲット温度は約90℃以上であり、低温ターゲット温度は約40℃以下である。いくつかの実施形態において、高温は約95℃であり、低温ターゲット温度は約60℃から約75℃の範囲であり、その範囲の両端及びその間のすべての温度を含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、熱制御装置はさらに、サイクル中の熱暴走を防止するために、第2TECの基準面に結合したヒートシンクを含む。熱制御装置は、ほぼ平面的な構成で構築され、アッセイカートリッジの反応容器の平面反応チャンバ部に対応する寸法であってよい。いくつかの実施形態において、平面サイズは、約45mm以下の長さで、約20mm以下の幅、又は、約40mmx約12.5mm、例えば約11mmx13mmの寸法を有し、小型PCR分析装置の反応容器での使用に好適となっている。ほぼ平面的な構成は、第1TECの活性面からヒートシンク対向面側までの厚さが約20mm以下の寸法であるように構成可能である。いくつかの実施形態において有利なことには、熱制御装置は反応容器の熱サイクルのために反応容器にその片面で係合するようにでき、熱サイクル中に反応容器の反対側から標的分析物の光学的検出を可能にできる。
【0170】
いくつかの実施形態において、温度制御方法が本明細書で提供される。そのような方法は、活性面と基準面を有する第1TECを動作させて、その活性面を初期温度からターゲット温度へ加熱及び/又は冷却するステップと、第1TECの活性面温度が初期温度から所望のターゲット温度へ変化するときに第1TECの効率を上げるように、活性面と基準面を有する第2TECを動作させるステップとを含む。ここで、第2TECの活性面は熱キャパシタを介して第1TECの基準面に熱的に結合されている。そのような方法はさらに、第1TECの活性面にある温度センサからの温度入力を有する主制御ループを操作することを含む、第1TECを動作させるステップと、熱キャパシタ内の温度センサからの温度入力を有する副制御ループを操作することを含む、第2TECを動作させるステップと、を含む。いくつかの実施形態において、この方法はさらに、第1熱電デバイスの活性面が高温ターゲット温度へ加熱される加熱モードと、その活性面が低温ターゲット温度へ冷却される冷却モードとの間を循環するステップと、熱キャパシタ内の加熱モードと冷却モードの間の熱揺動からの熱エネルギを貯蔵するステップとをさらに含む。ここで熱キャパシタは第1と第2の熱電式冷却装置の活性面および基準面のそれぞれに比べて高い熱伝導度を有する層からなっている。
【0171】
いくつかの実施形態において、熱サイクルにおける温度制御方法は、第2の熱電デバイスの加熱モードと冷却モードの間のサイクルを、第1の熱電デバイスの加熱モードと冷却モードの間のサイクルと同時に行い、それによってサイクル中の第1の熱電デバイスの効率を維持することを含む。いくつかの実施形態において、コントローラは、主制御ループのバンド幅応答が副制御ループのバンド幅応答よりも早いように構成されている。コントローラはさらに、第1の熱電デバイスをモード間で切り替える前に第2の熱電デバイスのモード間切り替えをするようにコントローラによってサイクルのタイミングを取って、熱キャパシタを熱的に充填するように構成することができる。いくつかの実施形態において、高温ターゲット温度は約95℃以上であり、低温ターゲット温度は約50℃以下である。いくつかの実施形態において、温度制御方法はさらに、サイクル中の第1TECの効率を維持するために、第1TECのサイクル中に第2TECの操作を制御することによって、熱キャパシタの温度を第1TECの活性面の温度の約40℃以内に維持することを含む。いくつかの実施形態において、第1TECの効率が第2TECの操作によって維持されて、第1TECの活性面での加熱及び/又は冷却が、約10℃/秒以下の温度傾斜速度で起きるようにされる。そのような方法には、熱暴走を防止するために、第1と第2のTECでのサイクル中に、第2TECの基準面に結合しているヒートシンクを動作させることがさらに含まれる。
【0172】
いくつかの実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応プロセスでの熱サイクル方法が提供される。そのような方法は、熱制御装置を、ポリメラーゼ連鎖反応を行って標的ポリヌクレオチドを増殖するための流体サンプルの入った反応容器に係合させて、第1TECの活性面を反応容器に熱的に係合させるステップと、流体サンプル中の標的ポリヌクレオチドを増殖するための特定のプロトコルに従って熱制御装置を熱サイクルさせるステップと、を含んでよい。いくつかの実施形態において、熱制御装置を反応容器と係合させることは、第1TECの活性面を反応容器の一側面に係合させて反対側面が熱デバイスで覆われないままにし、その反対側面から光学検出を可能とさせることが含まれる。いくつかの実施形態において、加熱モードと冷却モードのそれぞれは、一つ又は複数の操作パラメータを使用し、その一つ又は複数の操作パラメータは加熱モードと冷却モードの間で非対称である。例えば、加熱モードと冷却モードのそれぞれはバンド幅とループ利得を有し、加熱モードと冷却モードのバンド幅とループ利得は異なる。
【0173】
いくつかの実施形態において、熱制御装置での温度制御方法が提供される。そのような方法は、それぞれが活性面と基準面を有する第1と第2のTECであって、その間に熱キャパシタを備える第1と第2のTECを熱制御装置に提供するステップと、活性面を加熱するステップと、活性面を冷却するステップと、基準面を加熱するステップと、基準面を冷却するステップと、を含む。いくつかの実施形態において、活性面の加熱と活性面の冷却のそれぞれは、一つ又は複数の操作パラメータによって制御される。いくつかの実施形態において、一つ又は複数の操作パラメータの大きさは、活性面の冷却時に比べて活性面の加熱時には異なる。
【0174】
いくつかの実施形態において、方法には交代取付具の使用による、複数の熱制御装置間の信頼性検査が含まれる。そのような方法は、その熱制御装置と第2又はその他の熱制御装置との間で熱サイクルを交替することを含み、それぞれの反応容器の熱サイクルが行われる活性位置にその熱制御装置と第2又はその他の熱制御装置とを交代して配置する取付具を操作することにより、第2又はその他の反応容器の熱サイクルを実行する。いくつかの実施形態において、この取付具はその熱制御装置と2つ以上の熱制御装置がハブの外側の周りに周方向に分布された回転可能ハブであり、取付具を操作することは、ハブを回転させることを含む。
【0175】
VIII.C.2.a.TEC設計構成の例
【0176】
図33Aは例示的制御装置を示す。これは第1のTEC811(主TEC)と、熱インターポーザとも称される熱キャパシタ813を介して熱的に結合された、第2TEC812又は熱抵抗素子などの第2の熱操作デバイスと、を含む。TECは、第1TEC811の活性面811aが反応容器33と熱的に結合して、その中の熱サイクルの制御を促進する。この装置はチューブ上に装置を取り付けるための結合取付具819を所望により含むことができる。いくつかの実施形態において、装置をチューブに隣接して配置する取付具に装置を固定することができる。第1TECの対向する基準面811bは、熱キャパシタ層を介して第2TEC812の活性面812aに熱的に係合する。この構成は、熱キャパシタ層813の片側に直接熱接触している基準面811bと、熱キャパシタ層813の反対側に直接熱接触している活性面812aとして説明することもできる。いくつかの実施形態において、第2TECの基準面812bは、
図33Bの実施形態に示すように、ヒートシンク817及び/又は冷却ファン818と熱的に結合する。この実施形態では、熱制御装置800は、反応容器33の平坦部の片側に沿って熱的に係合されて、レーザなどの光学励起手段910で別の方向(例えばチューブの側面)から光学励起を可能とし、かつ別の方向(例えばチューブの反対側)から光学検出手段920での光学検出を可能とするように構成される。
【0177】
第1TEC811には活性面811a上、又はその近くに熱電対816が含まれて、反応容器温度の正確な制御を可能とする。この熱電対の温度出力は、活性面11aを用いた加熱と冷却を制御する主制御ループ814で使用される。第2の熱電対816′は熱キャパシタ層内又はその近くに含まれ、関連する温度出力は、第2TECの活性面812aでの加熱と冷却を制御する、第2の制御ループ814′で使用される。一態様において、第1の制御ループは第2の制御ループより速く(例えば、第2制御ループは第1より遅れる)、これが熱キャパシタ層内に伝達されて貯蔵される熱エネルギを説明する。これらの2つの制御ループを使用することで、第1TEC811の活性面811aと基準面811bとの間の温度差が制御されて、第1TECの効率が最適化及び改善される。これにより第1TECでの高速かつより安定した加熱と冷却が可能となる。他方、熱キャパシタは、本明細書で記述し以下の実験結果で示すように、加熱と冷却のより迅速な切り替えを可能とする。
【0178】
反応容器に対向するセラミック板に標準的なヒートシンクを接着する代わりに、別の(副次的な)TECを用いて、主TECの活性面の約40℃内の温度に維持する。いくつかの実施形態において、2つのPID(比例積分偏差利得)制御ループを用いてこの操作を維持する。いくつかの実施形態において、非PID制御ループを用いて、主TECの活性面の温度を維持する。一般的には、高速PID制御ループで主TECを所定温度設定点に向けて駆動して、反応容器に接触したセラミック板の下側に取り付けられたサーミスタでモニタする。このループは最大速度で作動して、制御温度への迅速かつ正確な到達を確保する。いくつかの実施形態において、第2の、より遅いPID制御が主TECの底面に対する温度を維持して熱効率を最大化する(実験的に活性面温度から~40℃内に決定される)。上に述べたように、非PID制御ループは、TEC温度を維持して熱効率を最大化するために使用することも可能である。いくつかの実施形態において、2つの制御ループの間の相互作用を弱めて一つのループが他のループを制御することを排除することも有利である。さらには、熱キャパシタ層を使用して第1及び/又は第2のTECからの熱エネルギを吸収及び貯蔵して、加熱と冷却の迅速な切り替えを促進することも有利である。
【0179】
本発明のいくつかの実施形態において使用される、加熱と冷却の迅速かつ効率的な切り替えを達成する、2つの非限定の例示的方法を本明細書で詳述する。第1に、副制御ループに対するバンド幅応答は、高速の主ループよりもはるかに遅くなるように意図的に制限される。これがいわゆる「遅延ループ」である。第2に、熱キャパシタが2つのTECの間に挟まれる。熱制御装置の全体としては、反応容器の反応チャンバ部でデバイスを使用可能とするために、比較的薄いことが望ましいが、両側のTECに対する熱キャパシタとして機能するために十分な質量と導電性を提供する限りは熱キャパシタ層が少し厚くてもよいことが理解される。いくつかの実施形態において、熱キャパシタ層は約1mm以下の厚さの薄い銅板である。銅は熱伝導度が極めて高いために有利であって、熱キャパシタとし作用するために、薄い層が熱エネルギを貯蔵するのに十分な質量を提供しつつ、2つのTECを十分に抑圧するために、1mmの厚さが実験的に決定される。銅はその熱伝導度と高い質量のために特に有用であるが、同様の熱伝導特性と高い質量を有する様々な他の金属又は材料、好ましくは熱伝導性を有し(たとえいずれのTECよりも低くても)、かついずれのTECとも同等若しくはそれより高い質量を有して、その層を熱エネルギの貯蔵における熱キャパシタとして作用させることのできる材料も使用可能であることは理解されるであろう。別の態様では、熱キャパシタ層は、副PID制御ループで使用する「裏側」(例えば基準面)温度をモニタするために使用される、第2のサーミスタを含んでもよい。制御ループは両方とも、制御信号を2つのバイポーラペルチエ電流源に送る、一つのPSoCチップ(プログラマブルシステムオンチップ)内にデジタル実装することができる。いくつかの実施形態において、非PSOCチップも制御に使用可能であって、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)なども本発明での使用に適していることは当業者であれば理解されるであろう。いくつかの実施形態において、デュアルTECモジュールが熱暴走を防止するためにヒートシンクを含む。これは例えば熱伝導性銀エポキシを用いて副TECの裏側に接着可能である。本発明での使用に好適な、これに代わる接着方法と材料は当業者にはよく知られている。
【0180】
図33BはデュアルTEC設計の概略図である。PCR反応容器の温度(サーミスタにより測定(16)(楕円))は主TECで管理され、PSoCファームウェアのループで制御される。主TECの最適熱効率は、銅層に熱接触している第2サーミスタ(816’)(楕円)により維持される。これは第2TECを制御している副PSoCループ内へ信号を送る。
【0181】
VIII.C.2.b.初期のデュアルTEC作製
【0182】
図33Cは、反応容器の一つの主面に熱的に係合した熱制御装置800と、反応容器の副面に隣接する光学励起ブロックと、反応容器33の対向主面に対する光学検出ブロック920を有するデュアルTEC加熱/冷却モジュールの例を示す。いくつかの実施形態において、主TEC及び副TEC(Laird社製OptoTEC HOT20,65,F2A,1312、データシート下記)の大きさは13(幅)x13(長さ)x2.2(厚さ)mmであり、最大熱効率は60%である。いくつかの実施形態において、TECモジュールによる影響を受ける平坦部はGX反応容器に合わせてある。いくつかの実施形態において、25μl~100μlの範囲の反応容器を収納するように構成されている。
【0183】
図33Bは、化学分析システムの反応容器を片側から加熱、冷却するための例示的なデュアルTECモジュールを示す。この設計はいくつかの実施形態において、両側加熱のために両側にデュアルTECを提供するように修正され得ることは理解されよう。図からわかるように、ヒートシンクは、熱を追い出しTEC効率を維持するためのミニファンを含む。主TEC(最上部)は反応容器内の温度をサイクルさせ、チューブに接触するセラミックの下側に取り付けられたサーミスタによってモニタされる。「裏面」TECは間に挟まれた銅層の温度を(サーミスタを利用して)維持し、主TECの最適熱効率を確保する。ミニファンと一体化されたヒートシンクは、モジュール全体を熱平衡に保つ。
【0184】
いくつかの実施形態において、温度誤差が±0.1℃の小型のサーミスタが主TECの上面の下側に銀エポキシで接着される。このサーミスタは反応容器に印加される温度を探り、主TECへの駆動電流を制御するPSoCの主制御ループへの入力となる。主TECの底面は、1mm厚の銅板に銀エポキシで接着されている。銅板にはスロットがあって、そこに第2のTR136-170サーミスタが銀エポキシで埋め込まれて「裏面温度」をモニタする。これはPSoCの副制御ループへの信号入力となる。副制御ループで制御される副TECは、次に銅板とアルミニウムヒートシンクの間に挟まれる。ヒートシンクは全体厚さ6.5mmに機械加工され、全体パッケージを13mm未満の厚さに保持する。平面寸法は、小型機器内の空間制約から要求される、40.0(長さ)x12.5(幅)mmである。12x12mmのSunon社製Mighty Mini Fan(データシートは下記)が、TECがヒートシンクと相互作用する、ヒートシンク内に加工された挿入部に接着される。ミニファンはヒートシンクを直接冷却する必要がないことに注意されたい。静音で、耐久性があり、安価で低電圧(最大3.3V)のブラシレスモータが、(従来のいくつかの分析装置のような)直接空冷とは違い、剪断流を用いてアルミニウム/空気の界面から高温表面空気を除去することによって十分にヒートシンク性能を維持する。
【0185】
プロトタイプユニットの検査により、加熱/冷却速度、熱安定性、高温周囲温度に対する堅牢性、及びシステム全体の信頼性がエンジニアリング要求仕様を満たすに十分かどうかを判定することができる。より小型で、堅牢で、安価(両側加熱/冷却よりも部品点数が少ない)という、例示的な小型システムに関する設計目標を達成するように、熱性能が許容可能であることが示された。さらに、片側の加熱/冷却は、反応容器の側面を通してのより効率的な光学検出を可能とする。
【0186】
図33Cは、例示的システム内のデュアルTECの加熱/冷却モジュール、並びにLED励起及び検出ブロックと反応容器のCAD図を示す。反応容器は片側(反応容器の第1の主面)で熱サイクルが行われ、反対側(反応容器の第2の主面)を通して蛍光検出が行われる。反応容器の端部(副面)を介するLED照明は元のままである。
【0187】
VIII.C.2.c.初期加熱/冷却性能
【0188】
例示のTECアセンブリの加熱及び冷却の性能が、TECアセンブリを反応容器の一つの面に固定クランプする特製の取付具を用いて測定された。取付具を熱絶縁性のデルリン製とすることによって、TECアセンブリを取付具から熱的に絶縁するように配慮した。PCRの熱負荷を模擬するために、TECアセンブリの反対のチューブ面上の蛍光検出ブロックにしっかりと接触した流体サンプルで反応容器を満たした。この配置においてチューブに接触するTEC上面の温度を独立して測定して、主TECサーミスタ上の測定温度以上となるようにしたことに留意されたい。したがって、主TECサーミスタの読取温度で、最初にデュアルTEC加熱/冷却システムの熱性能を特徴づけることは合理的である。サーミスタと反応容器温度との食い違いがあれば、それを明確にして、主TECサーミスタと反応容器内の流体サンプル温度との間のフィードバックループを利用して調整することが可能である。
【0189】
いくつかの実施形態において、熱特性評価のために熱制御装置をクランプ取付具で反応容器に固定する。一実施例では、反応容器を流体サンプルで満たし、かつ加熱/冷却モジュールと反応容器の一つの面とを熱接触を取るために固定することができる。チューブのもう一方の面は蛍光検出ブロックへクランプ可能である。LED励起ブロックがチューブの端部を通して溶液を照明する。いくつかの実施形態においては、励起と検出は両方ともチューブの副面を通して行われる。
【0190】
いくつかの実施形態において、PSoC制御ボードはPID制御を利用して、主TECサーミスタの温度設定を維持し、TEC装置に双極性駆動電流(加熱時は正電圧、冷却時は負電圧)を提供し、かつミニファンに電力供給する。このPIDループは主TEC性能を最大化するように調整された。PCR熱サイクルに特徴的な高温限と低温限の間のチューブの設定点をサイクルするようにスクリプトが書かれた。具体的には、低温設定点=50℃で、滞在時間が12秒、測定温度が1秒の間±0.1℃となれば開始する。同様に、高温設定点=95℃、12秒間で、設定点の±0.1℃に1秒間維持されると開始する。スクリプトは50℃と95℃の間を無限にサイクルする。
【0191】
副制御ループもまた同じPSoC内に保持されて、銅の抑圧/熱キャパシタ層(
図33A参照)に熱接触した副サーミスタの温度を読み取り、かつ副TECに作用する。PID調整パラメータの異なるセットが、この銅層の温度、いわゆる「裏面」温度を制御することで、システムの熱性能を適切に維持することが判明した。この制御ループは、期待されるように、主制御ループよりもかなり低いバンド幅を有する。PSoCと関連するプログラムはまた、裏面温度の複数の設定点も可能とし、それは、主TECを最も効率的な熱状態下で作動させ続けることで、傾斜速度性能の最大化に有用である。
【0192】
図34は、反応容器温度からの例示的熱サイクルを示し、トレースは閉ループ制御下での50℃→95℃→50℃の熱サイクル(主トレース)に対して測定された。閉ループの加熱及び冷却速度は~7℃/秒である。制御プライマリは熱サイクルの所望の温度設定点(経過時間の0秒と20秒の間の矩形関数)であり、プライマリトレースは測定されたチューブの温度である。図からわかるように、実際の熱サイクルは、制御プライマリ関数で示される所望の熱サイクルより遅れる。主TECの熱効率は、チューブと裏面との間の温度差分が30℃以下の場合に最高であることが判明した。したがって、最高温度(チューブが95℃)に加熱するときは裏面温度を65℃となるように制御し、チューブを50℃に冷却するときは45℃に制御した(裏面トレース)。主TECが高温に傾斜上昇すると、経過時間で約37秒に始まるように示されている次の熱サイクルを予期して、裏面温度をゆっくりと、かつ制御可能に低温に駆動することが可能である。この方式は、裏面TECを使って、主TECに作用する「熱ばね」を適切に印加することに類似しており、PCRでの使用に適用可能である。それは、特定のPCRアッセイに適用する熱プロファイルは、アッセイ設計者には先験的に知られているからである。加熱と冷却の双方に対する真の閉ループ温度傾斜速度が~7℃/秒であることに対応して、安定かつ反復可能な加熱及び冷却の閉ループ温度傾斜速度は、
図35の連続10回の熱サイクルに示すように、45℃の幅に対し~6.5秒であることに留意されたい。性能は、PCR熱サイクルの全範囲にわたり、複数サイクルを通して維持される。
【0193】
VIII.C.2.d.早期および直近の信頼性実験
【0194】
典型的なPCRアッセイは、アニール温度(~65℃)からDNA変性温度(~95℃)、そしてアニール温度へ戻る、約40回の熱サイクルを有する。信頼性評価のために、例示的な熱制御モジュールを50℃(PCR実験で使用される最低温度水準にある)と95℃の間で、各温度においてシステムの熱平衡を可能とするために10秒の待ち時間を取って、サイクルさせた。
【0195】
図36Aは、5,000サイクル検査の最初の5サイクルと最後の5サイクルの比較を示す。右のトレースの時間軸は小さいデータサンプリング範囲からであることに留意されたい。5,000サイクルは約2日かかる。このモジュールはそれ以来10,000回以上サイクルされて、性能は保持された。図からわかるように、サイクル1-5(左)の熱サイクル性能は、5,000サイクル後(右のサイクル4,995-5,000)も一定のままであり、最初のサイクルと最後のサイクルとの間に熱性能の違いはない。これは2つの理由で有望である。第1に、急速加熱/冷却に対する閉ループパラメータは、反復された熱サイクルで非常に安定している。小さな熱的不安定性であっても、主TECと裏面TECの両方に対する測定温度曲線にドリフトをもたらし、急速に熱暴走にエスカレートする(それによりファームウェアに過電流停止不良をもたらす)。適切に調整されたシステムではこの挙動は現れず、システムの堅牢性が示された。第2に、モジュールの熱効率は5,000サイクル以上にわたり安定である。実際、このユニットに引き続いて10,000回超のサイクルを行い、性能の破壊的な劣化も段階的な劣化もなかった。
図36Bは、熱サイクルの最初と2日間の連続熱サイクル後の各5サイクルの熱サイクル性能を示す図である。
【0196】
VIII.D.熱サイクル制御のための熱モデル化手法
【0197】
別の態様において、熱制御装置は熱モデル化に基づいて温度制御するように構成可能である。この態様は、片側加熱又は両側加熱用に構成された熱制御装置に使用可能である。いくつかの実施形態において、そのような装置には、第1の熱電式クーラともう一つの熱操作デバイスとが含まれ、第1の熱電式クーラでの加熱及び/又は冷却の制御、速度及び効率を改善するために熱操作デバイスと連係して第1の熱電式クーラを制御するコントローラにそれぞれが結合されている。ただし、この熱モデル化態様は、本明細書に記載の任意の構成の制御に組み込むことが可能であることがわかる。
【0198】
そのような手法の一例が、
図37に示す状態モデル図に示されている。この図は、片側式の熱制御装置で使用する7つの状態モデルを示す。このモデルは、熱電式クーラ面、反応容器又は容器、及び反応容器内の流体サンプルの各温度を含む、現実世界の熱システムの温度を、電気理論を適用してモデル化する。この図は、水であると仮定した反応容器コンテンツの最適評価に到達するための、モデルの7つの状態と、カルマンアルゴリズムで使用される3つの測定状態とを示す。
【0199】
図37の回路モデルにおいて、キャパシタは物質の熱容量を表し、抵抗は物質の熱伝導性を表し、各キャパシタと電源の電圧は温度を表し、電流源は、チューブ面に隣接する前面側熱電式クーラ(TEC)からの熱入力を表す。この実施形態において、モデルへの入力は、モデルT1-T7で予測可能な裏面TEC温度と、前面側の熱電式クーラの熱入力(ワット)と、対向する容器又はチューブ面に隣接する「ブロック」温度である。これがアルゴリズムのモデル部分のすべてである。前述したように、カルマンアルゴリズムは一般に、これもモデル出力の一部である、測定されたセンサ信号と共にモデルを使用する。ここでは、温度に変換された、サーミスタ測定信号を前面熱電式クーラに対して使用し、かつ裏面熱電式クーラに対しても使用する。裏面の測定温度の場合にはそれはモデルの出力ではないが、同じものとして仮定する。このように仮定する理由の一つは、全体の熱コンダクタンスで見ればR1は無視し得るからである。
【0200】
VIII.C.2.e.代替TEC設計
【0201】
モジュール構造の可変性により、デバイス性能に僅かな差異を生じ得る。例えば現行モジュールは、機械加工されたヒートシンクと間に挟まれた銅層とで手動組立される。そしてすべてのコンポーネントは導電性エポキシを使って手動で貼り合わされる。モジュールのサンドイッチ構造内でのエポキシの厚さの変化、又はコンポーネント間に小さい角度が生じることで、熱性能に差異が生じる。最も重要なことは、サーミスタもまた熱エポキシを用いてセラミックに貼り付けられることである。サーミスタとセラミックの間に小さい空隙があれば、制御温度と測定温度の間に誤差を生じる。最後に、2つのTEC、2つのサーミスタ、及びファンの電力リードの電気接続をするために小さいワイヤをはんだ付けすることは非常に時間のかかることである。
【0202】
いくつかの実施形態において、熱デバイス(例えば本明細書に記載のTEC装置)には、反応容器の各主面(対向する両側)上に加熱及び冷却面がある。そのような実施形態では、光学検出は副面(例えば端部)に沿って遂行され得る。いくつかの実施形態において、光学検出は第1副面沿いに行われ、光学励起は第1副面に直交する第2副面沿いに行われる。そのような実施形態は、より大容量(100-500μlの流体サンプル)の加熱及び冷却が必要とされる場合には特に有用であり得る。
【0203】
いくつかの実施形態において、熱制御装置モジュールは、反応容器に接触したセラミック板の下側に取り付けられた一体化表面実装サーミスタを含む、特製のペルチエ装置を使用する。微小の0201パッケージサーミスタ(0.60(長さ)x0.30(幅)x0.23(厚さ)mm)を使用してコンポーネント厚さを制限することで、温度変化を招くペルチエ装置内部の対流を最小化することができる。また、表面実装サーミスタの熱接触と位置を正確に制御することで、これらのコンポーネントは測定されたセラミック温度と実際のセラミック温度の間に、極めて安定した、特徴付け可能な差異を有するようになる。
【0204】
いくつかの実施形態において、熱制御装置には、半導体量産技術(「ピックアンドプレース」機械及びリフローはんだ付け)を利用して、加熱/冷却モジュールに完全一体化されるように設計された、特製ペルチエを含むことができる。間に挟まれた銅基板は、正確に制御された銅厚さとパッド寸法を有する、Bergquist社の熱インタフェースPCボード(1mm厚銅基板)で置き換えることが可能である。Bergquist社の基板は、裏面サーミスタ用のパッドリード及びモジュール内外へのすべての電気接続も提供できる。裏面ペルチエは現在使用しているものと類似のデバイスのままでよい。最後に、TECアセンブリの全体は、シリコーンでカプセル封止して、耐水性とすることができる。いくつかの実施形態において、アルミニウムの取り付けブラケットもヒートシンクとしての機能を兼ねることができる。
【0205】
IX.診断プラットフォーム
【0206】
図38は、本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムの概略構成を示す簡単なブロック図である。本明細書におけるすべての図と同様に、様々な実施形態は図示例とは異なり得る。例えば、いくつかの実施形態では、
図38に示すコンポーネントを、組合せ、分離、追加、及び/又は省略することができる。さらに、コンポーネントのそれぞれの機能は、一つ又は複数の場所に配置された一つ又は複数のデバイス(例えばコンピューティングデバイス)で提供することも可能である。
【0207】
図面には「Epsilon機器」、「Epsilonハンドヘルドプラットフォーム」、及び特定のリモートサービスを参照している場合があるが、本発明の範囲内にある様々な実施形態は、それに限定されるものではない。本明細書に記載の手法はより一般的に記述されており、任意の医療機器、モバイル又はその他のコンピューティングデバイス、及びリモートサーバにより利用可能である。さらに、本明細書に記載の特定のソフトウェアコンポーネント及び機能は、様々なタイプの同様の機能のソフトウェアで置き換えてもよい。当業者であれば、本明細書に示され、以下に記載される実施形態に対するいくつかの変形を認識するであろう。
【0208】
図38に示すように、診断アッセイシステムは3つのタイプのコンポーネント、すなわち診断装置(「Epsilon機器ハードウェア」、本明細書及び図面では「機器」又は「診断装置モジュール」又は「診断装置」とも称される)と、モバイルデバイス(「Epsilonハンドヘルドプラットフォーム」)と、リモートサービス(例示された「リモートXpertシステム」と「リモートXpert+システム」の総称)とを一般的に含むことができる。これらのコンポーネントのより詳細な説明を以下で述べる。診断装置及びモバイルデバイスは、診療所、病院、その他の施設などのポイントオブケアに一緒に配置することができ、リモートサービスは一つ又は複数のリモートロケーションに配置することができる。所望する機能により、又、上で示すように、実施形態は複数の診断装置、モバイルデバイス、及び/又はリモートサービスを使用可能である。
【0209】
図38に示す診断装置は、図示されたEpsilon機器ハードウェアと、そこに示されている、Epsilon機器コアソフトウェア、Epsilon Xpertソフトウェア、Epsilon機器インタフェースソフトウェアを含む様々なソフトウェアコンポーネント、及び分散可能なアッセイを備える。これらのコンポーネントは、図示したような様々なインタフェース及びアプリケーションプログラミングインタフェース(API)を利用して相互に通信可能である。前述したように、診断装置は、診断アッセイを行い、かつ得られるデータをモバイルデバイスを介してリモートサービスへ提供するように構成された、検査コンポーネントとコンピューティングコンポーネントとを有する診断アッセイシステムを備えることができる。いくつかの実施形態において、診断装置はさらに、一つ又は複数のアッセイ結果からのアッセイデータを処理及び/又は保存し得る。コンポーネントは、少なくとも部分的に、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせを利用して実装可能であり、これは(
図53に関連して説明されるような)コンピュータシステムに組み込むことが可能である。
【0210】
いくつかの実施形態では、診断装置は、患者のサンプル(試料)のハンドオフ処理を可能とし、テスト結果データの要約及び詳細の両方をリモートサービスに提供可能である。インタフェースソフトウェア(「Epsilon機器インタフェースソフトウェア」として示す)は、診断装置がモバイスデバイス上で実行されるモバイルデバイスソフトウェア(「Epsilonハンドヘルドソフトウェア」として示す)と通信することを可能とする。通信は、様々な無線技術の内の任意のもの、例えば近距離無線通信(NFC)、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fiなどを利用して無線で行われてもよい。
【0211】
モバイルデバイスとこの通信を確立することで、インタフェースソフトウェアはモバイルデバイスのユーザが診断装置の様々な機能を制御可能となる。例えば、モバイルデバイスのディスプレイ上にあるグラフィカルユーザインタフェースを使用して、診断装置のデバイス設定の管理;診断装置により行われる検査の開始、中断、キャンセル;診断装置からデータを送信するリモートサービスの特定;データのタイプ、内容及び/又はフォーマットの特定;等をユーザは行うことができる。いくつかの実施形態によれば、モバイルデバイスではさらにユーザが診断装置に保存された医療データ及び/又は他のデータにアクセスできてもよい。ただしいくつかの実施形態によれば、アクセスされたデータはモバイルデバイスには保存されなくて、モバイルデバイスの紛失または盗難の場合にデータのセキュリティが損なわれないようにしてもよい。この機能は、システムの様々なプライバシー法、規制及び他の基準への適合及び遵守を助けるという利点がある。
【0212】
モバイルデバイスを介してインタフェースソフトウェアによってユーザに提供される制御レベルは、ユーザ及び/又はモバイルデバイスによって承認されるレベルに依存し得る。高位の承認レベルを有するユーザは、例えば、低位の承認レベルを有するユーザがアクセス権を有さない診断装置の機能にアクセスできる。インタフェースソフトウェアは、例えばログイン情報又はシステムセキュリティの確保を支援する類似の固有データを要求することで、通信前及び/又は通信中に、ユーザ及び/又はモバイルデバイスの承認及び/又は認証を与えることができる。
【0213】
診断装置は複数のモバイルデバイスと通信可能であり、又同時に(あるいは実質的に同時に)それを行うことも可能である。そうして、これにより複数のユーザが診断装置を制御することを可能とする。そのために、インタフェースソフトウェアは複数のモバイルデバイスのそれぞれに承認及び/又は認証を与え得る。いくつかの実施形態では、診断装置が複数のモバイルデバイスとアクティブに通信している場合、モバイルデバイスの一つを、すべてのデータがそこを通ってリモートサービスへ送信される、プライマリモバイルデバイスとして指定することができる。つまり、いくつかの実施形態において、診断装置は複数のモバイルデバイスによって制御可能であるが、診断装置は、一つのプライマリモバイルデバイスでテザリングされて、それを経由して診断装置がリモートサービスへのデータを送信する。
【0214】
モバイルデバイスには、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップなどの、モバイル電子デバイスを含むことができる。モバイルデバイスのソフトウェアはモバイルデバイス上のアプリケーションとして実行可能であり、さらにモバイルデバイスのオペレーティングシステム(OS)にはとらわれなくてもよい。そのようにして、モバイルデバイスにモバイルデバイスソフトウェアがインストールされて適切な認証が行われれば、広範なモバイルデバイスの任意のものを、本明細書の実施形態で記述するモバイルデバイスとして機能させることができる。
図38に示すように、モバイルデバイスは、既製のサーマルプリンタなどのプリンタ装置に接続することも可能である。
【0215】
いくつかの実施形態において、モバイルデバイスのソフトウェアは、複数の診断装置とモバイルデバイスの承認及び/又は認証を可能とし得る。そうして一人のユーザが複数の診断装置を一つのモバイルデバイスで一度に制御可能である。モバイルデバイスソフトウェアを介した診断装置の制御に加え、モバイル装置はさらにテザリング機能を介して診断装置がリモートサービスと通信(例えばデータをリモートサービスへ提供)することを可能とし、診断装置からモバイルデバイスへ(例えばNFC、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fiなどを介して)通信されたデータを、移動体通信(例えば第3世代(3G)、ロングタームエボリューション(LTE)など)、衛星通信、及び/又は他の無線技術を活用し得る、広域ネットワーク(WAN)へのモバイルデバイスの接続を利用して、リモートサービスへ中継を可能とする。
【0216】
より一般的には本明細書に記載の技術は、ローカルエリアネットワーク(LAN)ベースの機能を使用して、一つ又は複数の診断アッセイをモバイルデバイスによってピアベースで制御可能な、診断アッセイシステムを提供することが可能である。その同じプロトコルは、モバイルデバイス上でリモートサービスへの個別WAN通信に利用可能である。このように、この後者の機能に対してモバイルデバイスは独立したルータとなり得る。本明細書に記載の実施形態では、モバイル又は「ハンドヘルド」デバイスの使用を記述したが、他の実施形態では、パソコンなどの、モバイルあるいはハンドヘルドと見なされないかも知れないコンピューティングシステムを利用可能である。本明細書に記載のモバイルデバイス及び他のコンピューティングデバイスの特徴は、
図53を参照して後でより詳細を述べる。
【0217】
いくつかの実施形態において、テザリング機能は診断装置とリモートサービスとを、モバイルデバイスへの永続データの保存なしで接続することを提供できる。言い換えれば、モバイルデバイスは転送中のデータについて何も知らないでもよい。いくつかの実施形態において、例えばモバイルデバイスは診断装置から例えば患者データなどの、取り扱いに注意を要する符号化されたデータ受信することがあり、これはモバイルデバイスでの保存又は復号なしで、単純にリモートレポートシステムに伝送される。そのような実施形態においてはしたがって、たとえモバイルデバイスが紛失又は盗難されたとしてもデータのセキュリティは損なわれない。これにより、システムにはもう一つのプライバシー保護層が付加され、システムのプライバシー法、規制及び他の基準の遵守を支援可能である。さらに、診断アッセイシステムの機能性は、紛失または盗難されたモバイルデバイスを置き換えるだけで、比較的単純に回復可能である。そのような機能性があることで、本明細書に記載の技術は検査室のみならず、モバイルデバイスが紛失または盗難をより受けやすい、外のサイト(例えば、アフリカの僻地のエボラ診療所)においても活用可能である。
【0218】
再び
図38を参照すると、リモートサービスは一つ又は複数のサーバによって「クラウド」で実行可能であり、それはモバイルデバイス及び/又は診断装置から遠隔の一つ又は複数の場所にあってもよい。リモートサービスは、一つ又は複数の診断装置からデータを収集し、そのデータを合成し、かつデータベースにデータを保存することができる。リモートサービスは(例えば、特定のモバイルデバイスを介して通信して)一つの場所の一つ又は複数の診断装置からデータを収集できるばかりでなく、地理的に異なる様々な場所の様々な施設にある診断装置から広く情報を集めることも可能であり、それによって大規模の疫学的データを提供し、一つ又は複数の集団におけるその他の貴重な健康と疾患の情報を決定可能である。
【0219】
それに追加又は代替して、リモートサービスはデータを集積して処理し、閲覧者(政府機関など)に(例えばインターネットを介してアクセス可能な)安全なポータルを提供する。そしてそれを介して、処理されたデータを様々な形式(例えば、リスト、グラフ、地図など)でアクセスできるようにする。処理データの閲覧形式は、閲覧者の承認レベルに従う。ここで、リモートサービスへ送信され、処理されるデータは、暗号化され(又は他の方法で安全に転送され)、及び/又は、法律、規則、標準、及び/又は他の適用される管理要求に準拠する方法で扱われる。
【0220】
図38に示すコンポーネントは、前述の無線技術を利用して直接、又は上記の実施形態で説明したLAN及び/又はWANなどの一つ又は複数のより大きなデータ通信ネットワークの一部として、相互に通信可能であることは理解されるであろう。データ通信ネットワークは、無線周波数(RF)、光学、衛星、同軸ケーブル、イーサネット(登録商標)、セルラー、ツイストペア、他の有線及び無線技術などの様々な技術及び/又はプロトコルを利用する、例えば、ケーブル、衛星、無線/セルラー、又はインタ-ネットシステムなどの様々なデータ通信システムの任意の組み合わせを含むことができる。データ通信ネットワークは、パケット型及び/又は回路型のスイッチングを含むことができ、かつ、所望の機能、コスト、安全性及び他の因子に依存して、インターネットを含む、開放型、閉鎖型、公衆型、及び/又は私設型の通信網を含むことができる。
【0221】
これ以降の説明と図は、
図38に示した診断アッセイシステムの様々な態様の実施形態を例示する。開示した実施形態に関して特定のハードウェア及びソフトウェアコンポーネントを記述するが、当業者であれば、いくつかの実施形態においてはそのような構成要素のあるものは、他の実施形態と比較して代替、交換、省略、及び/又は他の方法で変更することができることを理解するであろう。例えば、プログラマブルシステムオンチップ(PSoC)は、実質的に同一機能を提供する複数の部品に置き換えることが可能である。当業者であれば、本発明での使用に好適な、様々な混合信号及び/又はアナログのマイクロコントローラに精通しているであろう。リプレゼンテーション・ステート・トランスファ(RST)インタフェースは、適切であれば、生成・読み取り・更新・削除(CRUD)、ドメイン・アプリケーション・プロトコル(DAP)、アプリケーション状態エンジンとしてのハイパーメディア(HATEOAS)、オープン・データ・プロトコル(OData)、RESTful APIモデリング言語(RAML)、RESTfulサービス記述言語(RSDL)、などの他のソフトウェア構造及び/又はプロトコルに置換、及び/又は、それと共に使用され得る。
【0222】
IX.B.Epsilon機器コアソフトウェア
【0223】
図38に示されるように、いくつかの実施形態においてEpsilon機器コアソフトウェア(診断アッセイシステムソフトウェアとも称する)は、様々なソフトウェアモジュールを含むことができる。機器コアソフトウェアに含むことができる好適なモジュールには、Cellcoreオペレーティングシステムモジュール、ハードウェア状態機械モジュール(HSM)、iCOREソフトウェアモジュール、バルブソフトウェアモジュール、シリンジ/扉ソフトウェアモジュール、及び/又は超音波ホーンソフトウェアモジュールが含まれ得る。いくつかの実施形態において、Cellcoreオペレーティングシステムモジュールはlinux(登録商標)の1バージョンであって、Cellcoreプロセッサ上で動作するサポートサービスである。いくつかの実施形態において、HSMモジュールは、Cellcoreプロセッサ上で、かつJava(登録商標) Virtual Machine(JVM)の外で動作する、すべての診断装置に特有のソフトウェアを含むことができる。いくつかの実施形態において、iCoreソフトウェアモジュールは、iCore PSoC上で動作するすべてのソフトウェアを含む。いくつかの実施形態において、バルブソフトウェアモジュールは、バルブPSoC上で動作するすべてのソフトウェアを含む。いくつかの実施形態において、シリンジ/扉ソフトウェアモジュールは、シリンジ/扉PSoC上で動作するすべてのソフトウェアを含む。いくつかの実施形態において、ホーンソフトウェアモジュールは、ホーンPSoC上で動作するすべてのソフトウェアを含む。
【0224】
いくつかの実施形態において、Epsilon機器インタフェースソフトウェアは、EpsilonインストルメントRESTインタフェースモジュール及びEpsilonアッセイランナソフトウェアモジュールを含むことができる。
【0225】
いくつかの実施形態において、Epsilon Xpertリポータソフトウェアは、リモートXpertソフトウェアのクライアントとして作動し、Epsilon機器インタフェースソフトウェアと同じJVM内のEpsilon機器ハードウェアのCellcoreプロセッサ上で動作する。
【0226】
Epsilon機器ハードウェアは、アッセイを実行する物理的なサブシステムであり得る。いくつかの実施形態において、このサブシステムは、機器のハードウェアのみを含み、機器上で動作するソフトウェアは別のサブシステムとして動作する。
【0227】
IX.C.モバイルデバイス
【0228】
図38に示すように、いくつかの実施形態においてモバイルデバイスは様々なソフトウェアモジュールを含むことができる。例えば、例示したEpsilonハンドヘルドソフトウェアは、フィールドコンテキストに展開されたときに
図38に示すシステムをサポートするように特別に設計されたモバイルデバイスにより実行される、アンドロイドアプリケーションを備えることができる。いくつかの実施形態において、別のオペレーティングシステム用のアプリケーションを利用することが可能である。いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、診断装置利用分野での患者の検査をサポートする必要機能のすべて、及び/又はセフェイドサービス部門(又は別のプロバイダのサービス部門)がこれらの機器をリモートサポートすることを促進する機能、を含むことができる。
【0229】
いくつかの実施形態において、モバイルデバイスは、フィールドコンテキストをサポートするように選択された、既製のアンドロイドのハンドヘルド標的プラットフォームを備えることができる。
【0230】
IX.D.リモートXpert+システム
【0231】
いくつかの実施形態において、
図38に示すリモートXpert+システムは、リモートXpertシステム及びEpsilonハンドヘルドソフトウェアで使用されるサービスとして公開されている一連のウェブアプリケーションを含むことができる。REST及び/又は(既述したような)類似のサービスはリモートXpert+内の内部通信に使用可能である。いくつかの実施形態において、リモートXpert+システムの限られた数のサービスが、リモートXpert及びEpsilonハンドヘルドソフトウェアなどの外部システムに公開可能である。いくつかの実施形態によれば、リモートXpert+の主たる役目は、ユーザ、施設、コマンド及びキットの中央管理を可能とすることであってよい。
【0232】
IX.E.リモートXpertシステム
【0233】
いくつかの実施形態によれば、
図38に示すリモートXpertシステムは、施設がその機器及び臨床データを管理するために使用する一連のウェブアプリケーションを含むことができる。そのような施設には、例えば国内又は国際機関(例えば世界保健機構)、緊急対応機構、大学、病院などを含むことができる。いくつか実施形態では、リモートXpertソフトウェアはさらに、受信及び/又は送信データを解析する、解析ソフトウェアを含むことができる。
【0234】
IX.F.分散可能アッセイ
【0235】
いくつかの実施形態において、
図38に示す診断装置の分散可能アッセイの実施形態の構成要素として、アッセイヘッダ(アッセイ管理のための要約情報)、アッセイ定義(例えば、受信ファイルであってよい)、及び/又は(特別のサンプル調整提示命令などのアッセイ特有のUIを定義する)アッセイUIテーラリングを含むことができる。そのようなテーラリングは、サンプル調整ステップ及び/又はアッセイ特有のヘルプ画面などの、UI設計で特定される領域に限定可能である。いくつかの実施形態において、分散可能アッセイは所望によりアッセイ固有のソフトウェアを含み、将来のアッセイのために必要な新アルゴリズムの組み込みを可能としてもよい。これは、アッセイを実行するソフトウェアがこのタイプの拡張をサポートすることを必要とする場合がある。さらにはいくつかの実施形態において、分散可能アッセイは、必要に応じてローカライズされたハンドヘルドアッセイリソースを含んでもよい。これには、特定のアッセイに対するUIを実装するために使用される様々なリソースが含まれ得る。例としては、サポート言語に対するローカライズされた記号列、もしあればアイコンなどの新しいグラフィックリソース、及び/又は要求されるヘルプファイル(例えば添付文書のポータブルドキュメントフォーマット(PDF)又は訓練ビデオ)が含まれる。いくつかの実施形態において、ローカライズされたリソースは、サイズの制約(例えばローカライズされた訓練ビデオ)及び地域差のために、「アッセイ言語パック」又はキットに分割する必要があり得ることはさらに留意されるべきである。
【0236】
IX.G.外部インタフェース-診断装置
【0237】
いくつかの実施形態において、
図38に示す診断装置は一つ又は複数の外部インタフェースを含むことができる。例えば、EpsilonハンドヘルドアプリケーションGUIが、診断装置のユーザインタフェースとしても作用するモバイルデバイス上のユーザインタフェースとなり得る。リモートXpert GUIが、リモートXpertによって提供されるウェブベースのユーザインタフェースとなり得る。リモートXpert+ GUIが、リモートXpert+によって提供されるウェブベースのユーザインタフェースとなり得る。いくつかの実施形態において、このGUIはリモートXpert+を提供及び/又は保持するエンティティによってのみアクセス可能であってよい。追加又は代替として、外部インタフェースは、結果を公共の情報センタへ報告するのに利用可能なSMSメッセ-ジングを含むことができ、またモバイルデバイスのオペレーティングシステムを介するキャリアによって提供することもできる。診断装置は、パーソナルコンピュータ又は他のコンピューティングデバイスが、開発及びデバッグを支援可能なデータの可視化の提供を可能とする、データストリーミングインタフェース(
図38に示すGXストリーミングデータインタフェース)を含むことができる。したがって、このインタフェースはいくつかの実施形態においてはサイトに展開されるときには使用されない場合もある。
【0238】
IX.H.内部インタフェース-診断装置
【0239】
いくつかの実施形態において、
図38に示す診断装置は一つ又は複数の内部インタフェースを含むことができる。例えば、Epsilon機器ハードウェア/ソフトウェアインタフェースは、機器ハードウェアとEpsilon機器コアソフトウェアとの間にインタフェースを備えることができる。GXIP+インタフェースは、Epsilon機器コアソフトウェアによって提供され、かつ臨床設定コンテキストとサイト使用コンテキストの両方において特定のソフトウェアで使用される、インタフェースを備えることができる。アッセイランナインタフェースは、Epsilon機器インタフェースソフトウェアで提供され、かつEpsilonアッセイランナソフトウェア又は類似のアッセイソフトウェアで使用することができる。機器持続APIは、Epsilon機器インタフェースソフトウェアにより提供され、かつEpsilon Xpertリポータソフトウェアによって使用されるインタフェースを備えることができる。
【0240】
IX.I.モバイルデバイスインタフェース
【0241】
いくつかの実施形態において、モバイルデバイスは様々なインタフェースを含むことができる。例えば、Epsilon機器サービスインタフェースは、Epsilon機器インタフェースソフトウェアによって提供される、主インタフェースを備えることができる。サイト使用コンテキストに関しては、検査を実行し、機器ステータスを更新し、かつ他の通常動作を行うためにEpsilonハンドヘルドソフトウェアによって使用されるインタフェースであってよい。
【0242】
サーマルプリンタインタフェースは、Wi-Fi接続を有する既製品のモデルであってよい任意選択のサーマルプリンタによって提供されるインタフェースを備えることができる。これは、Epsilonハンドヘルドソフトウェアに、自動的に、又は検査結果が入手可能となった後にユーザのリクエストによって、プリンタで検査結果を印刷させることが可能である。いくつかの実施形態において、他の技術(例えば、インク、インクジェットなど)を利用するプリンタを使用可能である。
【0243】
アンドロイドプラットフォームAPIは、モバイルデバイスハードウェアとネットワークのサービスへのアクセスに使用されるアンドロイドオペレーティングシステムによって提供されるインタフェースを備えることができる。前に述べたように、代替実施形態では、代替オペレーティングシステムに対する同等又は類似のコンポーネントを含んでもよい。
【0244】
図38の実施形態に示されている連係インタフェースは、多忙なサイトで二人以上のユーザが作業しているとき又はスペアのモバイルがアクティブになっているときに発生する可能性のある、特定ロケーションにおいて複数のモバイルデバイスが同時にアクティブである場合に、モバイルデバイス間での連係を提供する。連係インタフェースは、モバイルデバイス上のユーザインタフェース機能制御層へすべてのモジュールをクロスコネクトするために実装できる。この目的と機能は、複数の機器を自律ユニットとしてのモバイルデバイスを介して制御及びモニタ可能とし、オペレータが所与の診断を行うための適正な機器使用のためにデバイス間のワークフロー連係をさせることである。ピアツーピアのWi-Fi管理された機器は、デバイスごとに保証された特定の制御を有して、保管の継続性及び重要な患者識別パラメータを保持することができる。その機能により、モバイルデバイスと診断装置の比をX:Yとすることができる。ここでXはモバイルデバイスの任意の数であり、Yは診断装置の任意の数である。いくつかの実施形態では、XとYが同数であってよい。
【0245】
IX.J.リモートサービスインタフェース
【0246】
図38に示すように、リモートサービスはいくつかの実施形態に様々なインタフェースを含むことができる。例えば、Epsilon Xpertリポータインタフェースは、臨床データのアップロード及び/又は機器の同期化という機能を示す、一連のRESTサービスを含むことができる。リモートXpert+サービスインタフェースは、キット管理、ユーザ管理、機関及びサイト管理、リモートサービスコマンド、及び/又は機器同期化の機能を示す一連のRESTサービスを含むことができる。
【0247】
IX.K.臨床検査室改善修正(CLIA)―放棄されたアプリケーション
【0248】
いくつかの実施形態において、
図38の診断装置のコアソフトウェアインタフェースは、臨床検査室改善修正(CLIA)―放棄されたアプリケーションで利用可能である。ここで、診断装置は、パーソナルコンピュータ上で実行される独占的ソフトウェアへイーサネット(登録商標)接続を介して情報を提供可能である。代替実施形態では、他のコンピューティングハードウェア、ソフトウェア及び/又は物理接続又は無線接続を利用可能である。GXIP+インタフェースに関するこのほかの詳細を以下に記す。
【0249】
IX.L.診断装置-ソフトウェアコンポーネント
【0250】
図39は、実施形態による診断装置によって実行されるソフトウェアの論理図を示す。図に示すように、ソフトウェアには、ユニバーサルシリアルバス(USB)ドライバースタック、SMバスI/F、Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標)及びUSBドングルドライバを含む、低位のドライバを含むことができる。アプリケーション層には、オペレーティングシステム並びに他のアプリケーションが含まれる。これらのアプリケーションには、XpertリポータとEpsilon Restインタフェースコンポーネントを有するJVM、Epsilonアッセイランナコンポーネントを有するJVM、DXゲートウェイコンポーネントを有するゲートウェイアプリケーション、及び/又はGxIp+、Gxストリーミング、PSoC USB、HSM層、及び電池I/Fと電力管理コンポーネントを有するEpsilon機器コアアプリケーションとを含むことができる。
【0251】
図40は、いくつかの実施形態による、Epsilon機器コアアーキテクチャのブロック図である。このブロック図は、本明細書に記載の、NFCインタフェース、GxIp+インタフェース、HSM.PSoC I/F、Gxストリーミングインタフェース、Xpertリポータ/Epsilon RESTインタフェース、Epsilonアッセイランナ、Dxゲートウェイ、及びNB USBを含むEpsilon機器コアアーキテクチャの様々なサブコンポーネントの相互作用を示す。
【0252】
いくつかの実施形態において、GxIp+インタフェースはGxIpプロトコルをサポートする主コンポーネントであってよく、かつ必要なDxビジネスロジックを実装可能である。ビジネスロジックは、アッセイ及びコマンドの実行の仕方との適合性を確保するための、「Northbound」機器インタフェースに対する基礎として683xxレガシーコードから移植可能である。いくつかの実施形態において、GxIp+インタフェースは、「Northbound」レガシーGxIpコマンドと「Southbound」Epsilon PSoCコマンドインタフェースとを接続するアダプティブ層をさらに含むことが可能である。HBDCコンテキストに関し、これはアッセイの実行およびモニタのためのEpsilon機器インタフェースソフトウェアによって使用されるDx等価インタフェースであってよい。
【0253】
いくつかの実施形態において、ゲートウェイインタフェースは、GxIp「ディスカバリ」プロトコルをサポートするコンポーネントであってよい。ディスカバリが完了すると、このコンポーネントは、リモートGxIpベースコンポーネント及びGxIp+インタフェースに対するルータとして作用する。いくつかの実施形態において、ゲートウェイインタフェースは、Epsilon機器上の発見インタフェースであってよい。
【0254】
いくつかの実施形態において、Gxストリーミングインタフェースは、リモートクライアントへのEpsilonコア状態ベクトルのストリーミングをサポートする主コンポーネントであってよい。開発中にこのインタフェースは、PSoC性能、超音波処理及び蛍光光度計に等価なモニタリングをレガシーシステムに関してモニタ及び調整するための、エンジニアリング可視化ツール(VT)のサポートに使用することができる。いくつかの実施形態において、Gxストリーミングインタフェースは、モバイルデバイスへの状態スワップデータのストリーミングを可能とする。
【0255】
図41は、いくつかの実施形態による、HSMコンポーネントの様々な状態を示す図である。本開示で使用されるように、HSMは、コア機器の状態並びにレガシーDX互換のサブ状態を管理する主コンポーネントを含むことができる。さらに、HSMはGxIpコンポーネントと対話して、その時の機器コアの状態に依存してGxIpコマンドを有効又は無効とすることができる。
図104に示すようにいくつかの実施形態において、高位状態には、POST-Power On Self Test、RECOVERY、IDLE、WAITING_FOR_CART、LOADING_CART、CARTRIDGE_LOADED、RUNNING_ASSAY、ABORTING、及びCARTRIDGE_PRELOADを含むことができる。これらの状態名は非限定的な例として提供されており、そのような状態の名称と機能は所望する機能によって変わり得ることは当業者には理解されるであろう。
【0256】
図42は本発明のいくつかの実施形態による機器コアの内部コンポーネントとインタフェースを示す図である。例えばPSoC USBは、PSoCコンポーネント(ホーン、扉、シリンジ、バルブ及びICORE)への「Southbound」インタフェースをサポートする主コンポーネントであり得る。このコンポーネントはUSB2.0を使用してCellcoreと各PSOCの間の「データバックプレーン」を生成することができる。いくつかの実施形態において、ブートアップ時にPSoCは、ブート稼働可能なエンドポイントを列挙して、各PSoC上に新しいファームウェアがプログラムされるようにできる。いくつかの実施形態において、正常動作時には、PSoCを、コマンドのエンドポイント及び状態スワップのエンドポイントとして列挙することができる。ここで、状態スワップは、Cellcore上で高速のPSoCデータ仮想化を行い、Cellcore上の高速PSoCデータのモニタ及び/又は解析を可能とし、及び/又はCellcore上のGxストリーミングコンポーネントをサポートすることを可能とする。
【0257】
いくつかの実施形態において、機器PSoC外部インタフェースには、PSoCとCellcoreの間の「Southbound」インタフェースをサポートする主PSoCであり得る、Comms_Taskを含むことできる。そしてそれはさらに、Cellcoreと各PSoCの間に「データバックプレーン」を形成するためのPsoC上の主コンポーネントであり得る。追加又は代替として、Comms_TaskがすべてのPSoCに共通であって、コマンド及び状態スワップUSBエンドポイントインタフェースを生成及び管理できる。
【0258】
いくつかの実施形態において、分析業務には別のPSoC外部インタフェースも含むことができ、それはPSoCコマンド処理をサポートする主PSoCコンポーネントであってよい。いくつかの実施形態において、分析業務はすべてのPSoCで共有される共通コマンドに対する共通処理を含むことができる。
【0259】
機器PSoC外部インタフェースは、本発明のいくつかの実施形態によれば、ISRをさらに含むことができる。ISRはPSoC上で時間の共通処理が可能であり、及び/又はバックグラウンド軌道をサポートする特定の優先処理を可能とする。
【0260】
IX.M.モバイルデバイス-ソフトウェアコンポーネント
【0261】
図43は本発明のいくつかの実施形態による、モバイルデバイス上で実行されるソフトウェアコンポーネントを示すブロック図である。ここで、ユーザインタフェースは、一般的なアンドロイド(あるいはその他のOS)の設計パターンに従うことができる。アクティビティはユーザインタフェースを通るフローを制御するコンポーネントであってよく、そのビューはいつでも見ることができる。ビューは、ユーザへ情報を提示するコンポーネントのセットであってよい。いくつかの実施形態では、ほとんどのビジネスロジックは、
図43に示すサービスコンポーネントに含むことが可能である。
【0262】
いくつかの実施形態では、ユーザインタフェースは、スタンドアローンモジュール上で、カートリッジベースの診断を行うために必要な特定のワークフローを提示し、特定の診断結果に関係する患者データの精度及び粒度を保証することができる。これには、カートリッジを介したサンプルロギングから機器データベースまでの一連の自動的な保管の継続性が含まれる。
【0263】
いくつかの実施形態によれば、データ層には、アプリケーション内のすべてのデータベースの持続性を提供する、データマネージャを含むことができる。いくつかの実施形態では、モバイルデータベースはSQLiteであって、SQLCipherを用いて暗号化可能である。モバイルデータベースは、許可されたユーザ、資格証明、及び/又はログ情報を含むことができる。モバイルデバイスは診断データの送信に関して、自己充足型のモバイルルータとして動作可能であるので、データベース内のデータが送信接続の開始及び終了のための資格証明と認証とを提供可能である。これらの接続を確立するための更なる情報は、以下の通りである。いくつかの実施形態において、データ層は、システムの他の部分に対して、正常データベースオブジェクトのためのデータAPIと、ログキー事象のためのロギングAPIの2つのAPIをさらに提供可能である。これらのAPIは、モバイル診断装置をリモートデータベースに接続させ、診断データ及び他の記述データをモバイルデバイスを介して、診断装置からリモートXpertの文脈上正しいインターネットインスタンスへ透明に移動させる。
【0264】
図43に示すように、実施形態にはサイトマネージャが含まれ得る。これはサイトの状態を管理し、かつ既知のユーザ、既知の診断装置、既知のモバイルデバイス、既知のアッセイ、及び/又は既知のプリンタのリストを保持できる。モバイルデバイスがインターネットに接続されているとき、サイトマネージャはリモートXpert+と連係して、サイトへのリモートサービスコマンドを管理することができる。サイトマネージャはさらに必要に応じてピアモバイルデバイスと対話して、サイトの状態を管理し、及び/又はユーザ認証を処理することができる。
【0265】
いくつかの実施形態はさらに、クラウド通信を含むことができる。これはリモートXpert+サービス及び/又は、モバイルデバイスの現在の構成を管理する構成マネージャへのアクセス提供を可能とする。すなわち、クラウド通信コンポーネントは、一つ又は複数のリモートサービス(例えば、
図38に示すようなリモートXpert+)との、双方向の通信リンクを確立し管理することができる。データを解析、解釈、及び送信(例えば独自のフォーマットで)して標準の可読フォーマットにすることのできる一つ又は複数のAPIを介して、通信を確立することができる。
【0266】
図43にさらに示すように、実施形態には、現在の機器(医療診断装置)のリストを管理し、サイトにあるすべての機器の状態をモニタする機器マネージャが含まれてもよい。機器マネージャはさらに、診断装置上の操作遂行能力を提供することができる。そのような操作としては、例えば、アッセイを使用した検査の実行、アッセイの取り付け、ソフトウェアアップグレードのインストール、診断の実行、及び/又は時間参照の同期化が含まれ得る。機器マネージャはさらに、検査を要求するときに機器を選択し、及び/又は機器により報告されたエラーを処理することが可能である。いくつかの実施形態によれば、機器通信は、医療診断装置のREST APIを用いて通信のカプセル化が可能である。
【0267】
いくつかの実施形態ではさらに、動作状態の検査のリストを管理し、検査実行のワークフローを管理し、完了後に検査結果を報告し、及び/又は動作状態でなくなった時に検査を「アーカイブ」することが可能な、検査マネージャを含むことができる。いくつかの実施形態では、SMS通信が、SMSを介した公共の情報センタへの結果の報告をカプセル化することができる。いくつかの実施形態では、プリンタ通信が、報告をローカルのサーマルプリンタで印刷する機能をカプセル化することができる。
【0268】
一般的にモバイルデバイスの機能は、様々なプラットフォームに対する、利用可能なソフトウェア開発キット(SDK)とAPIに依存し得る。たとえば、アンドロイドSDK及びAPIに関しては、アプリケーション機能はアンドロイドSDKの公開APIによって制限される。たとえそうであっても、NFC、カメラ、GPS、SMSメッセージング、及び/又はネットワークへのアクセスにはアンドロイドSDK及びAPIが使用できる。
【0269】
いくつかの実施形態では、アンドロイド上の標準データベースである、SQLite及びSQLCipherを使用してもよい。例えば、SQLCipherは電話上のデータ保護の好適な方法としてOpen Web Application Security Project (OWASP)によって参照されている。それにも拘らず、代替実施形態では、iOS、Windows(登録商標)モバイル等の他のプラットフォームを利用し得る。追加又は代替として、SQL、HTSQL、jOOQ等のような他のデータ構造及び/又はクエリ言語が利用されてもよい。
【0270】
いくつかの実施形態は、リモートディスプレイと、入手可能であれば、サードパーティのアプリケーションによって提供されるモバイルデバイスのリモートコントロールとを可能とする、サードパーティのリモートサポートアプリケーションを提供可能である。いくつかの実施形態では、複数のバージョンのモバイルデバイスソフトウェアが関連するSDKを使用して、アプリケーションのリモートコントロールを提供可能である。
【0271】
中でも、本発明は、診断装置の制御と、装置の管理と、LANとWANの接続機能(前述したようにLANからWANへのルーティング)とのモバイルデバイス上での統合を提供する。これは伝統的な医療診断業界の制御及び通信では使用されていない。デバイスのローカル制御(LAN層)のセグメント化と、各診断機器との通信は、ピアツーピアレベルで(例えばWi-Fiを介して)行うことが可能であり、かつ、UI制御機能インタフェースと次いでクラウドのリモートXpertへのデータ経路インタフェースとの両方に対して、各機器へのデータフローを管理する。
【0272】
モバイルデバイスでのNFCの使用については、
図43に示すNFCアダプタを使用して、患者サンプルに対する保管の継続性の管理に使用することができる。クレームに提供される中央データは、これらの機能のトレーサビリティを可能とし、中央クラウドリポジトリに保存可能である。NFCは、患者のサンプルを含むカートリッジを、診断装置からの別のNFC信号に同時に結び付けて、保管と報告の正確性要件との合致を確保することができる。
【0273】
図43はさらに、モバイルデバイスと診断装置の間のピアツーピアWi-Fi接続を確立することができる、機器の通信コンポーネントを示す。機器の通信コンポーネントは、複数のモバイルデバイスの相互通信を可能とする。いくつかの実施形態では、ハンドヘルドコーディネータがWi-Fiを介して複数のモバイルデバイス間の連係を図ることができる。
【0274】
IX.N.リモート診断レポートサービス-ソフトウェアコンポーネント
【0275】
図44は、本発明のいくつかの実施形態による、医療診断および疫学に関するリモート診断レポートサービスで実行されるソフトウェアコンポーネントを示すブロック図である。リモート診断レポートサービスには、特に、ウェブサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、及びファイル記憶装置が含まれる。
【0276】
いくつかの実施形態によれば、
図44に示すリモート診断レポートサービスの論理コンポーネントは次のように記述可能である。リモートXpert+サービスは、モバイルデバイスとリモートXpertによって使用されるRESTウェブサービスを含むことができる。GUIアプリケーションは、診断アッセイシステムにサービスとサポートを提供するエンティティにより使用されるウェブアプリケーションを含むことができる。プライベートサービスは、GUIアプリケーションにより使用されるRESTウェブサービスを含むことができる。コアビジネスロジックサービスは、すべてのビジネスロジックを含むRESTウェブサービスを含むことができる。オーディット及びロギングサービスは、すべてのロギングとオーディット機能を含むRESTウェブサービスを含むことができる。最後に、ファイル転送サービスは、ファイルストレージソリューションを抽出するRESTウェブサービスを含むことができる。
【0277】
他の利点の中で、
図44に示す診断報告サービスは、クラス2又はクラス3の医療診断装置からリモートデータベースおよびプレゼンテーション層への自動リモート診断レポートを可能とする。さらには、階層認証は、WAN接続を通して、クラス2又はクラス3のリモート医療診断装置上のデバッグ及び診断のためのリアルタイムのリモート制御を可能とする。これは、PCRベースの診断環境に特に適用するための、リアルタイム診断と時系列データを含む、個別機能のサービス統合となり得る。
【0278】
IX.O.診断アッセイシステムの設定-ワークフロー
【0279】
図38に示すシステムのような、分子診断アッセイシステムの設定のワークフロー例には以下の段階が含まれ得る。以下の実施形態例では特定の無線技術(例えばGSM(登録商標)、CDMA、Wi-Fiなど)が述べられているが、所望の機能に応じて、これに追加又は代替する技術が利用され得ることは理解されるであろう。
【0280】
第1に、モバイルデバイスに診断アッセイシステム内で動作する権限を持たせることができる。ここで、モバイルデバイスはインターネット接続(例えば、セルラー接続、Wi-Fiなど)を利用する。セラー接続(例えばGSM(登録商標)、CDMAなど)に関しては、モバイルデバイスはキャリアによって利用可能とされる必要があり得る。さらに、モバイルデバイスはリモートXpert+を介して設定することができ、ユーザの初期セットのダウンロード、承認された一連のアッセイの決定、及びサイトへの割り当てが必然的に含まれ得る。
【0281】
第2に、Wi-Fiネットワークの設定が可能である。ここで、一つのモバイルデバイスが、Wi-Fiホットスポット(例えば、LANとWANのネットワークのブリッジ)となるように選択可能であり、かつ他のモバイルデバイスがWi-Fiホットスポットに接続可能である。いくつかの実施形態において、すべての診断装置は、リモートXpertへ直接アクセスするために、Wi-Fiホットスポットとして動作する一つのモバイルデバイスを使用可能である。追加又は代替として、一つ又は複数の追加のモバイルデバイスがWi-Fiを介して、ホットスポットとして動作するモバイルデバイスへ接続することができる。ホットスポットとして動作するモバイルデバイスが故障するか、電力切れになるか、又は紛失した場合に、第2のモバイルデバイスをその代わりに使用可能である。
【0282】
第3に、診断装置の設定が可能である。いくつかの実施形態において、このプロセスにはWi-Fi情報(例えばSSID及びパスフレーズ)、及び/又は他の情報をモバイルデバイスと共有することが含まれ得る。モバイルデバイスは、診断装置から、MACアドレス、シリアルナンバーなどの識別情報を取得することも可能である。そのような情報の共有は、ピアツーピアNFCを用いて行うことができる。追加の診断装置を上記のようにして追加することができる。物理的な順序が重要な場合には、モバイルデバイスのUIで、新しい機器をどこに配置するかをユーザに指定させることができる。
【0283】
IX.P.診断アッセイシステムのデータフロー
【0284】
図45~
図46は、本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムの別の態様を示すデータフロー図である。本明細書に記載の他の図と同じように、
図45~
図46は非限定的な例として提供される。代替実施形態が、図に示したものに対して追加的な機能を含むことができ、及び/又は、図に示す機能を省略、組合せ、分離、及び/又は同時遂行してもよい。ブロックの機能を遂行する手段には、
図36及び
図53に示すもののような、一つ又は複数のハードウェアコンポーネント及び/又はソフトウェアコンポーネントが含まれてよい。当業者であればいくつかの変形例があることを認識するであろう。
【0285】
IX.Q.診断アッセイシステムのトップレベルデータフロー
【0286】
図45は、
図38に示すような診断アッセイシステムにおけるトップレベルデータフローを示すデータフロー図である。ここで、診断アッセイシステムのコンポーネント-リモートサービス、モバイルデバイス及び診断装置-は、円で表わされ、データフローは矢印で表されている。
【0287】
データフローは、モバイルデバイスがリモートサービスへロケーション設定リクエスト(1)を送信することによって開始できる。このリクエストは、モバイルデバイスが診断装置のある新規のサイトにあるときにすることができる。
図45に示すように、このリクエストはロケーションごとに1回だけ遂行されればよい。
【0288】
次にリモートサービスはロケーション設定に応答し(2)、リモートサービスとモバイルデバイスが設定記述を交換する(3)。前述したようにこれには、リモートサービスからモバイルデバイスへのユーザの初期セットのダウンロード、アッセイの承認されたセットの決定、等が含まれる。リモートサービスは、モバイルデバイスへ動作更新(4)を提供することもできる。
【0289】
モバイルデバイスは次に診断装置との設定プロセスに入ることができる。このプロセスでは、モバイルデバイスは診断装置登録(5)及び診断装置への動作更新(6)を提供する。
【0290】
設定が終わると、診断装置はモバイルデバイスから操作命令を受信できる。次に、モバイルデバイスは、診断装置へデバイスコマンド(7)を提供可能となる。これはユーザ入力に基づいてもよい。前述したように、そのようなコマンドには、例えば、アッセイを使用する検査の実行、アッセイの取り付け、ソフトウェアのアップグレードのインストール、診断の実行、及び/又は時間参照の同期化を含むことができる。診断装置は、承認、状態更新等の、コマンド応答(8)を提供することができる。
【0291】
デバイスコマンド(7)により医療診断を実行した場合、診断装置は次に暗号化された医療診断結果(9)をリモートサービスへ提供することができる。前に示したように、モバイルデバイスがホットスポットを提供可能であり、そこを介して診断装置が暗号化された診断結果(9)を送信してもよい。ただし、モバイルデバイスは、そのデータの復号も保存もできない。こうして、いくつかの実施形態によれば、モバイルデバイスは、そこを経由して暗号化された医療診断結果(9)がリモートサービスへ報告できる、単なるパイプとして作用する。いくつかの実施形態では、暗号化された医療診断結果(10)はモバイルデバイスへ送信されて保存することができる。(前に述べたように、いくつかの実施形態では、データはモバイルデバイスには保存できない。そのような実施形態においては、モバイルデバイスは、保存するために別のデバイス、例えばLAN上の記憶装置、コンピュータなどへデータを送信することができる。)所望の機能に応じて、モバイルデバイスに送信された、暗号化医療診断結果(10)は、リモートサービスへ送信されたものと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0292】
IX.R.モバイルデバイスの詳細データフロー
【0293】
図46はより詳細なデータフローを示すデータフロー図であって、モバイルデバイスのコンポーネント-WANインタフェースコンポーネント、医療診断ロジック、LANインタフェースコンポーネント-が別々に表されている。
【0294】
図45のフローと同様に、
図46に示すフローは、モバイルデバイスとリモートサービスの間の設定プロセスから始まることができる。ここで、医療診断ロジックが、ロケーション設定リクエスト(1.1)をWANインタフェースコンポーネントに送信し、次いでWANインタフェースコンポーネントがロケーション設定リクエスト(1.2)をリモートサービスへ送信する。リモートサービスはロケーション設定(2.1)をWANインタフェースコンポーネントに提供することで応答し、WANインタフェースコンポーネントはロケーション設定(2.2)を医療診断ロジックへ提供する。次いで設定記述は、リモートサービスとWANインタフェースコンポーネントの間(3.1)、WANインタフェースコンポーネントと医療診断ロジックの間(3.2)、医療診断ロジックとLANインタフェースコンポーネントの間(3.3)、及びLANインタフェースコンポーネントと医療診断装置の間(3.4)で交換される。次いで動作更新が、リモートサービスからWANインタフェースコンポーネントへ(4.1)、WANインタフェースコンポーネントから医療診断ロジックへ(4.2)へ渡される。
【0295】
診断装置設定は、医療診断ロジック、LANインタフェースコンポーネント、及びデバイスを使用した、医療診断装置登録(5.1)、(5.2)を含むことができる。これらのコンポーネントはさらに、医療診断ロジックから診断装置へ動作更新(6.1)、(6.2)を渡す。
【0296】
次に装置コマンド(7.1)、(7.2)が医療診断ロジックから診断装置へ送信可能であり、コマンド応答(8.1)、(8.2)は診断装置から医療診断ロジックへ逆に送信可能である。
【0297】
暗号化されたデバイス結果(9.1)、(9.2)が診断装置からLANインタフェースコンポーネントへ送信され、次いで医療診断ロジックを通らないでWANインタフェースコンポーネントへ直送されてよい。暗号化された診断結果(9.3)は次にリモートサービスへ送信可能である。前に議論したように、暗号化された診断結果(10.1)、(10.2)は、医療診断ロジックへ別々に送信されてもよい。次に医療診断ロジックはそれらを暗号化診断結果記憶装置(10.3)へ送信することができる。所望の機能に依存して、この記憶装置はモバイルデバイスからは分離されていてもよい。暗号化診断結果(11.1)、(11.2)はまた、医療診断ロジックからWANインタフェースコンポーネントを経由してリモートサービスへ送信されてもよい。
【0298】
いくつかの実施形態において、リモートサービスは診断をリクエストしてもよい。図に示すように、リモートサービスが診断(12.1)、(12.2)、(12.3)、(12.4)をリクエストし、それが診断装置へ中継される。これが診断応答(13.1)、(13.2)、(13.3)、(13.4)を促し、リモートサービスへ中継して戻される。
【0299】
IX.S.診断アッセイシステムのワークフロー
【0300】
図47~
図52は、本発明のいくつかの実施形態による、
図38に示すような診断アッセイシステムの異なる態様の機能を示すフローチャートである。本明細書に記載の他の図と同じように、
図47~
図52は非限定的な例として提供される。代替実施形態が、図に示したものに対して追加的な機能を含んでもよく、及び/又は図に示す機能を省略、組合せ、分離、及び/又は同時遂行してもよい。ブロックの機能を遂行する手段には、
図38及び
図53に示すもののような、一つ又は複数のハードウェアコンポーネント及び/又はソフトウェアコンポーネントが含まれてよい。当業者であればいくつかの変形例があることを認識するであろう。
【0301】
IX.T.ロケーション設定ネットワークフロー
【0302】
図47は、一実施形態による、診断アッセイシステムのロケーション設定のためのプロセスを示すデータフロー図である。
図47に示す一つ又は複数のブロックを遂行するための手段には、本明細書に記載のリモートサービスを含むことができる。
【0303】
プロセスは、モバイルデバイスがロケーション設定をリクエストするところから始まることができる。前に説明したように、そのようなリクエストに対するデータフローの例は
図45と
図46に示されている。ロケーション設定が入手できる場合には、リモートサービスによって提供される。そうでない場合には、リモートサービスはエラーを戻す。
【0304】
IX.U.動作更新ネットワークワークフロー-モバイルデバイス
【0305】
図48は、本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムにおけるモバイルデバイスへ動作更新を行うプロセスを示すデータフロー図である。
図48に示す一つ又は複数のブロックを遂行するための手段には、本明細書に記載のリモートサービス及び/又はモバイルデバイスを含むことができる。
【0306】
ローカル設定のモバイルデバイスがリモートサービスへ接続するとプロセスを開始できる。次にリモートサービスがモバイルデバイスの動作記述の説明を取得する。記述が所要のモバイルデバイス設定に合致する場合には、そこでプロセスは終了できる。そうでない場合には、リモートサービスがモバイルデバイスへ動作設定更新を送信する。
【0307】
IX.V.動作更新ネットワークワークフロー-診断装置
【0308】
図49は、いくつかの実施形態による、診断アッセイシステムにおける診断装置へ動作更新を行うプロセスを示すデータフロー図である。
図49に示す一つ又は複数のブロックを遂行するための手段には、本明細書に記載のモバイルデバイス及び/又は診断装置を含むことができる。
【0309】
モバイルデバイスが診断装置から診断装置設定記述を取得するとプロセスが開始できる。
診断装置設定が正しい場合には、プロセスは終了できる。そうでない場合には、モバイルデバイスが動作設定更新を診断装置に送信できる。
【0310】
IX.W.リモート診断ネットワークのワークフロー
【0311】
図46に関して上で議論したように、リモートサービスは診断情報を遠隔リクエストすることができる。
図50は、一実施形態による、診断アッセイシステムにおけるそのようなプロセスのデータフロー図である。
図50に示す一つ又は複数のブロックを遂行するための手段には、本明細書に記載のリモートサービス、モバイルデバイス及び/又は診断装置を含むことができる。
【0312】
このプロセスはリモートサービスが診断情報をリクエストするときに開始可能である。モバイルデバイスが診断情報リクエストを受信する。診断リクエストがモバイルデバイスに関するものであれば、モバイルデバイスはリクエストされたモバイルデバイス診断を遂行して、モバイルデバイス診断情報をリモートサービスへ送信する。そうでない場合には診断リクエストは、モバイルデバイスによって特定された診断装置(これはそのサイトにあるか、及び/又はモバイルデバイスと通信可能にリンクされた、いくつかの内の一つであってもよい)へ送信される。次に診断装置がリクエストされた診断を遂行し、診断情報をモバイルデバイスへ送信する。最後に、モバイルデバイスは診断装置診断情報をリモートサービスへ送信する。
【0313】
IX.X.医療診断装置コマンドネットワークフロー
【0314】
図51は、本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムにおいて診断装置コマンドを提供するプロセスを示すデータフロー図である。
図51に示す一つ又は複数のブロックを遂行するための手段には、本明細書に記載のモバイルデバイス及び/又は診断装置を含むことができる。
【0315】
プロセスは、モバイルデバイスが診断装置へコマンドを送信することで開始できる。診断装置は次に受信したコマンドを処理する。最後に、診断装置がモバイルデバイスへ応答を送信する。
【0316】
IX.Y.診断装置登録ネットワークのワークフロー
【0317】
図52は、本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムのネットワーク上へ診断装置登録を行うプロセスを示すデータフロー図である。
図52に示す一つ又は複数のブロックを遂行するための手段には、本明細書に記載のモバイルデバイス及び/又は診断装置を含むことができる。
【0318】
プロセスは、モバイルデバイスが診断装置にMACアドレスのようなデバイスの物理ネットワーク識別子を照会するときに開始できる。モバイルデバイスが次に、本明細書で既に説明したように、ネットワークアクセス情報を診断装置に提供する。そのような情報には、SSID、ユーザ名などが含まれ得る。いくつかの実施形態では、既に説明したように、モバイルデバイスと診断装置の間のここまでの通信はNFC及び/又は他の無線技術を介するものであってよい。診断装置は次にネットワークに接続し、モバイルデバイスが識別子を診断装置へ割り当てる。
【0319】
IX.Z.コンピュータシステム
【0320】
図53はコンピュータシステム5300の例示的説明であって、これは、診断装置(Epsilon機器)、モバイルデバイス(Epsilonハンドヘルドプラットフォーム)、及び/又はリモートサービス(リモートXpertシステム及びリモートXpert+システム)を含む、
図38に示す診断アッセイシステムの装置及びコンポーネント中に、少なくとも部分的に組み込むことが可能である。
図53は、本発明の様々な実施形態により提供される方法を遂行可能なコンピュータシステム5300の模式図である。
図53は、様々なコンポーネントの一般化された表示を与えることのみを意図するものであり、その一部またはすべてを適宜利用可能であることに留意されたい。
【0321】
コンピュータ5300は、バス5306を介して電気的に結合可能な(あるいはその他で適切に通信し得る)ハードウェア要素を備えることが示されている。ハードウェア要素には、これに限定するものではないが、一つ又は複数の汎用プロセッサ、一つ又は複数の専用プロセッサ(デジタル信号処理チップ、グラフィック加速プロセッサなど)、及び/又は他の処理手段を含み得る、プロセッサ5310のような処理ユニットと、これに限定するものではないが、マウス、キーボード、カメラ、マイクロフォン、タッチスクリーン、医療検査ハードウェア、及び/又は診断コンポーネント、等を含み得る、一つ又は複数の入力デバイス5315と、これに限定するものではないが、ディスプレイ装置、プリンタなどを含み得る、一つ又は複数の出力デバイス5320と、が含まれてよい。
【0322】
コンピュータシステム5300はさらに、一つ又は複数の非一時的記憶装置5325を含むことが可能(及び/又はそれと通信可能)である。この非一時的記憶装置は、これに限定するものではないが、ローカル及び/又はネットワークアクセス可能な記憶装置を備えるか、ディスクドライブ、ドライブアレイ、光学記憶装置、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、及び/又はプログラム可能又はフラッシュ更新可能な読み出し専用メモリ(「ROM」)、等を含むことができるか、のいずれか又は両方であってよい。そのような記憶装置は、これに限らないが、様々なファイルシステム、データベース構造などを含む、任意の適切なデータ記憶装置を実装するように構成可能である。
【0323】
いくつかの実施形態では、コンピュータシステム5300は通信サブシステム5330を含むことができ、そのサブシステムには、これに限らないが、モデム、ネットワークカード(無線又は有線)、赤外通信デバイス、無線通信デバイス、及び/又はチップセット(NFCトランシーバ、ブルートゥース(登録商標)デバイス、802.11デバイス、Wi-Fiデバイス、WiMaxデバイス、セルラー通信トランシーバなど)、等を含むことができる。通信サブシステム5330は、一つ又は複数の入力及び/又は出力通信インタフェースを含み、ネットワーク、他のコンピュータシステム(例えば本明細書で説明したような、ピアツーピア通信を利用して)、及び/又は本明細書に記載の他の任意の電気デバイスとの間でデータの交換を可能とする。いくつかの実施形態においてコンピュータシステム5300は、上で述べたようなRAM又はROMデバイスを含み得る作業メモリ5335を備える。
【0324】
コンピュータシステム5300は、オペレーティングシステム5340、デバイスドライバ、実行可能ライブラリ、及び/又は一つ又は複数のアプリケーションプログラム5345などの他のコードを含む、現時点では作業メモリ5335内にあるように示されている、ソフトウェア要素を備えることができる。アプリケーションプログラムは、様々な実施形態により提供されるコンピュータプログラム(例えばモバイルデバイスソフトウェア、インタフェースソフトウェアなど)を備え、及び/又は、本明細書で述べたように、方法及び/又はソフトウェアアーキテクチャを実装するように設計可能である。単なる一例として、本明細書に添付された他の図に示される方法及び/又はアーキテクチャは、コンピュータ(及び/又はコンピュータ内の処理ユニット)によって実行可能なコード及び/又は命令として実装され得る。そうして一態様において、そのようなコード及び/又は命令を使用して、汎用コンピュータ(あるいは他のデバイス)を、ここで記述した方法に従う一つ又は複数の操作を実行するように設定及び/又は適応させることが可能である。
【0325】
これらの命令及び/又はコードのセットは、上記の記憶装置5325のような、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上に保存可能である。いくつかの実施形態では、記憶媒体は、コンピュータシステム5300のようなコンピュータシステム内に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、記憶媒体はコンピュータシステムから分離する(例えば、光ディスクのようなリムーバブル媒体)か、及び/又は、インストールパッケージ内に備えて、記憶媒体を、そこに保存された命令/コードを用いて汎用コンピュータをプログラム、設定、及び/又は適応させるように使用することが可能である。命令は、コンピュータシステム5300で実行可能な、実行可能コードの形をとるか、及び/又は、ソースコード及び/又はインストール可能コードの形をとって、コンピュータシステム5300上で(例えば様々な一般的に入手可能なコンパイラ、インストールプログラム、圧縮/解凍ユーティリティなどの任意のものを利用して)コンパイル及び/又はインストールすることで、実行可能コードの形とすることができる。
【0326】
特定の要件に従って実質的な変形を行い得ることは当業者には明らかであろう。例えば、カスタム化されたハードウェアを使用するか、及び/又は特定の要素をハードウェア、又はソフトウェア(アプレットなどのような高移植性ソフトウェアを含む)、又はその両方に実装することができる。ネットワーク入/出力デバイスなどの他のコンピュータデバイスへの接続を使用可能である。
【0327】
いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態に従う方法の実行に、コンピュータシステム(コンピュータシステム5300など)を使用可能である。いくつかの実施形態では、そのような方法の手順の一部またはすべてが、作業メモリ5335に含まれる(オペレーティングシステム5340及び/又はアプリケーションプログラム5345などの他のコードに組み込み可能である)一つ又は複数の命令の一つ又は複数のシーケンスを実行するプロセッサ5310に応答して、コンピュータシステム5300で実行される。そのような命令は、一つ又は複数の記憶装置5325などの、別のコンピュータ可読媒体から作業メモリ5335へ読み込むことが可能である。単なる一例として、作業メモリ5335に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ5310に、本明細書に記載の方法の一つ又は複数の手順を実行させることができる。追加又は代替として、本明細書に記載の方法の一部は、専用ハードウェアを介して実行可能である。
【0328】
本明細書で使用の、「機械可読記憶媒体」と「コンピュータ可読記憶媒体」いう用語は、機械を特定の方法で作動させるデータの提供に関与する、任意の記憶媒体を指す。コンピュータシステム5300を使用して実施されるいくつかの実施形態において、様々なコンピュータ可読媒体が、実行のためにプロセッサ5310に命令/コードを提供することに係わることができ、及び/又はそのような命令/コードの保存及び/又は搬送に使用することができる。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、物理的及び/又は有形の記憶媒体である。そのような媒体は、不揮発性媒体または揮発性媒体の形態を取り得る。不揮発性媒体の非限定的な例としては、記憶装置5325のような、光ディスク及び/又は磁気ディスクが含まれ得る。揮発性媒体の非限定的な例としては、作業メモリ5335のような動的メモリが含まれるが、それに限定されるものではない。
【0329】
物理的及び/又は有形のコンピュータ可読記憶媒体の非限定的な一般形としては、例えば、フロッピディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、又は他の任意の磁気媒体、CD-ROM、他の任意の光学媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEPROM、他の任意のメモリチップ又はカートリッジ、又はコンピュータが命令及び/又はコードを読み出すことが可能な他の任意の媒体、を含むことができる。
【0330】
コンピュータ可読媒体の様々な形態は、一つ又は複数の命令の一つ又は複数のシーケンスを実行するためにプロセッサ5310へ搬送することに関与できる。単なる一例として、命令が最初はリモートコンピュータの磁気ディスク及び/又は光ディスク上に保持されていてもよい。リモートコンピュータは命令を動的メモリ内へロードし、その命令がコンピュータシステム5300によって受信され及び/又は実行されるために、伝送媒体上の信号として送信することができる。
【0331】
通信サブシステム5330(及び/又はそのコンポーネント)は、一般的に信号を受信し、次にバス5306が信号(及び/又は信号によって搬送されるデータ、命令など)を作業メモリ5335に搬送することができる。そこからプロセッサ110は命令を取り出して実行する。作業メモリ5335によって受信された命令は、プロセッサ5310による実行の前または後のいずれかで、所望により非一時的記憶装置5325に保存可能である。
【0332】
IX.AA.診断アッセイシステム管理のプロセスフロー
【0333】
図54は、本発明のいくつかの実施形態による、診断アッセイシステムをモバイルデバイスで管理する方法のフロー
図5400である。本明細書に記載の他の図と同じように、
図54は非限定的な例として提供される。いくつかの実施形態が、図に示したものに対して追加的な機能を含むことができ、及び/又は、図の一つ又は複数のブロックに示す機能を省略、組合せ、分離、及び/又は同時(又は時間的に近接して)遂行してもよい。ブロックの機能の遂行のための手段には、本明細書に記載のモバイルデバイスを含むことができ、それが
図53に示すような、一つ又は複数のハードウェアコンポーネント及び/又はソフトウェアコンポーネントを実装可能である。当業者であれば、本明細書に開示の発明での使用に好適ないくつかの変形例を認識するであろう。
【0334】
ブロック5410で、モバイルデバイスが診断装置の機能を制御するためのユーザ入力を受信する。前に述べたように、モバイルデバイスはGUIを提供するソフトウェアアプリケーションを実行可能である。それを用いてユーザは診断装置の様々な機能を制御可能である。例えば、診断装置のデバイス設定の管理;診断装置で実行される医療検査の開始、中断、キャンセル;診断装置がデータを送信するリモートサービスの特定;データのタイプ、内容、及び/又はフォーマットの特定、などである。ブロック5420で、ユーザ入力の受信に応答して、モバイルデバイスは制御情報を診断装置へ送信する。モバイルデバイスが複数の診断装置と通信可能にリンクしている場合には、モバイルデバイスは最初に、複数の診断装置から診断装置を選択または識別する必要があり得る。
【0335】
ブロック5430で、モバイルデバイスは診断装置からデータを受信する。受信したデータは、ブロック5410で特定した(もしそのような特徴が特定されていれば)データのタイプ、内容、及び/又はフォーマットに対応し得る。ただし、既に示したようにモバイルデバイスは、診断装置がリモートサーバ(例えば
図101に示すような一つ又は複数のリモートサービス)と通信できるための、単なる通過デバイスとして作用可能である。言い換えると、モバイルデバイスは、(本明細書で説明したようにピアツーピア接続され得る)LANをWANに接続する、透明な橋として作用可能である。ただし、ブロック5440で特定されるように、受信されたデータはデータの保存も復号化もしないでサーバへ中継可能であり、それによって取り扱いに注意を要する患者のデータがモバイルデバイスによって損なわれることのないようにする。
【0336】
上述の方法、システム、及びデバイスは例である。様々な構成が、様々な手順又はコンポーネントを必要に応じて、省略、置換、又は追加することができる。例えば、代替構成において、この方法は説明したものとは異なる順序で遂行可能であり、及び/又は様々な段階を追加、省略、及び/又は組み合わせることができる。また、特定の構成に関して記述した特徴は、他の様々な構成に組み合わせることができる。構成の異なる態様と要素を、同じように組み合わせることができる。また、技術は進化し、記述された要素のいくつかは非限定的な例として提供され、したがって開示又は請求の範囲を限定するものではない。
【0337】
例示的構成(実装を含む)の完全な理解を与えるために、説明には特定の詳細を示した。ただし、構成はこれらの特定の詳細なしで実行可能である。例えば、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、及び技術は、構成が不明瞭になることを回避するために、不要な詳細なしで示された。この記述は例示的構成を提供し、それは請求の範囲、適用性、又は構成を限定しない。むしろ、先に述べた構成の説明は、記述された技術の実施可能な説明を当業者に提供するであろう。本開示の精神と範囲から逸脱することなしに、要素の機能および配置に様々な変更を加えることが可能である。
【0338】
また、構成は、フロー図又はブロック図として示されるプロセスとして記述可能である。それぞれの操作は逐次プロセスとして説明可能であるが、操作のあるものは並行又は同時に遂行可能である。さらに、方法の例は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、あるいはそれらの任意の組み合わせによって実施可能である。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、又はマイクロコードで実施される場合、必要なタスクを遂行するためのプログラムコードまたはコードセグメントは、記憶媒体などの、非一時的コンピュータ可読媒体内に保存可能である。プロセッサは記述されたタスクを遂行可能である。
【0339】
本明細書で使用した用語「及び」と「又は」は、その用語が使用される文脈に少なくとも部分的に依存することが期待される様々な意味を含み得る。一般的に「又は」は、A、B、又はCというような列挙に関して使用される場合には、包括的な意味で使用される、A、B、及びC、並びに排他的意味で使用される、A、B、又はCを意味することが意図される。さらに、本明細書で使用の「一つ又は複数の」という用語は、任意の特徴、構造、又は特性を1つだけ記述するのに使用されてもよいし、あるいは、特徴、構造、又は特性のいくつかの組み合わせを記述するのに使用されてもよい。ただし、これは単に説明のための例であって、請求項に記載の主題はこの例に限定されないことに留意されたい。さらに、「少なくとも1つの」という用語は、たとえばA、B、又はCなどの列挙に関して使用される場合には、例えばA、AB、AA、AAB、AABBCCC、などのA、B、及び/又はCの任意の組み合わせを意味するように解釈できる。
【0340】
いくつかの例示的構成を記述したが、様々な変更、代替構造、及び等価物を開示の精神から乖離することなく使用可能である。例えば、上記の要素はより大きなシステムの構成要素であってもよく、そこでは他のルールが本発明の適用より優先するか、又は本発明の適用を変更することが可能である。また、上記の要素を考慮する前、又はその間、又はその後にいくつかのステップが行われることもあり得る。したがって、上記の説明は請求の範囲を拘束しない。本出願に引用したすべての特許、特許出願、及び他の刊行物は、あらゆる目的のために参照によりその全体が援用される。