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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ショベル及びシステム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20241119BHJP
   B60R 1/00 20220101ALI20241119BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241119BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20241119BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
E02F9/24 B
B60R1/00 A
B60R11/02 S
E02F9/26 B
H04N7/18 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019562476
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048343
(87)【国際公開番号】W WO2019131955
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-08-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2017252214
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】黒川 朋紀
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩之
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】▲吉▼川 康史
【審判官】太田 恒明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240362(JP,A)
【文献】特開2005-248503(JP,A)
【文献】特開2006-195877(JP,A)
【文献】特開2008-162335(JP,A)
【文献】特開2010-59653(JP,A)
【文献】特開2008-95307(JP,A)
【文献】特開2007-197950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載されている上部旋回体と、
前記上部旋回体に設置されている運転室と、
前記上部旋回体の向きと前記下部走行体の向きとの相対的な関係を検出するように構成されている向き検出装置と、
前記運転室に設置されている表示装置と、
前記向き検出装置によって検出された前記上部旋回体の向きと前記下部走行体の向きとの相対的な関係が所定の条件を満たしていると判断されている場合で、且つ、後進操作が行われた場合に、前記上部旋回体から見て後方に物体が存在しない場合であっても、警報を出力するように構成されている、前記表示装置とは別に設けられた、警報装置と、を備え、
前記後進操作は、前記上部旋回体から見て後方に前記下部走行体を進行させる操作である、
ショベル。
【請求項2】
前記警報装置は、前進操作が行われた場合に、前記警報とは異なる別の警報を出力するように構成され、
前記前進操作は、前記上部旋回体から見て前方に前記下部走行体を進行させる操作である、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記上部旋回体から見て後方は、前記上部旋回体の前後軸に対する角度が90度未満となる方向を含み、
前記警報装置は、前記向き検出装置によって検出された前記上部旋回体の向きと前記下部走行体の向きとの相対的な関係が所定の条件を満たしていると判断されている場合で、且つ、前記後進操作が行われた場合に、ショベルの周囲で作業している作業者を含む報知対象者に対して警報を出力するように構成されている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記警報装置は、走行操作装置が不感帯領域にあるときに、前記警報を出力するように構成されている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記表示装置は、左右の走行操作装置が同じ傾倒方向に倒されたときの該傾倒方向に対応する前記下部走行体の進行方向を指し示す画像を表示する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
前記進行方向を指し示す画像は、前記上部旋回体の旋回状態に応じて連続的に変化する、
請求項5に記載のショベル。
【請求項7】
記表示装置は、走行操作装置が操作されているか否かにかかわらず、該走行操作装置が操作者側に引かれたときの前記下部走行体の進行方向を指し示す画像をショベルの周囲の俯瞰画像に対して表示する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項8】
前記上部旋回体と前記下部走行体の位置関係を前記表示装置に表示させる、
請求項に記載のショベル。
【請求項9】
前記表示装置には俯瞰画像が表示され、
前記俯瞰画像には、前記上部旋回体を表す図形と前記下部走行体を表す図形とが含まれ、
前記上部旋回体を表す図形と前記下部走行体を表す図形の位置関係は、前記上部旋回体と前記下部走行体の位置関係の変化に応じて変化する、
請求項に記載のショベル。
【請求項10】
センタージョイントに旋回角度センサが配置されている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項11】
ョベルに関する情報を出力するシステムであって、
向き検出装置によって検出された上部旋回体の向きと下部走行体の向きとの相対的な関係が所定の条件を満たしているか否か、及び、前記上部旋回体から見て後方に前記下部走行体を進行させる操作が行われているか否かを判定するコントローラを有し、
前記向き検出装置によって検出された前記上部旋回体の向きと前記下部走行体の向きとの相対的な関係が所定の条件を満たしていると判断されている場合で、且つ、前記上部旋回体から見て後方に前記下部走行体を進行させる操作が行われた場合に、前記上部旋回体から見て後方に物体が存在しない場合であっても、警報装置から警報を出力させる、
システム
【請求項12】
前記コントローラは、走行操作装置が操作されているか否かにかかわらず、該走行操作装置が操作者側に引かれたときの前記下部走行体の進行方向を指し示す画像を生成し、
当該システムは、表示装置に表示されているショベルの周囲の俯瞰画像に対して前記画像を表示させる、
請求項11に記載のシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベル及びショベルの出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後方の様子を撮像するカメラとそのカメラが出力する画像を表示する表示装置とを搭載したショベルが知られている(特許文献1参照。)。このショベルでは、操作者は、ショベルを後進させる際に、表示装置に表示された画像を見て後方の様子を確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-109741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示装置に画像が表示されるだけでは操作者の注意を十分に喚起できず、操作者は、ショベルを後進させる際の後方確認を怠ってしまう場合がある。
【0005】
そこで、後進操作が行われたときにショベルの作業に携わる人の注意を喚起できるショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載されている上部旋回体と、前記上部旋回体に設置されている運転室と、前記上部旋回体の向きと前記下部走行体の向きとの相対的な関係を検出するように構成されている向き検出装置と、前記運転室に設置されている表示装置と、前記向き検出装置によって検出された前記上部旋回体の向きと前記下部走行体の向きとの相対的な関係が所定の条件を満たしていると判断されている場合で、且つ、後進操作が行われた場合に、前記上部旋回体から見て後方に物体が存在しない場合であっても、警報を出力するように構成されている、前記表示装置とは別に設けられた、警報装置と、を備え、前記後進操作は、前記上部旋回体から見て後方に前記下部走行体を進行させる操作である。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、後進操作が行われたときにショベルの作業に携わる人の注意を喚起できるショベルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の実施形態に係るショベルの側面図である。
図1B】本発明の実施形態に係るショベルの上面図である。
図2】ショベルに搭載される基本システムの構成例を示す概略図である。
図3】警報処理のフローチャートである。
図4A】ショベルを真上から見たときの模式図である。
図4B】ショベルを真上から見たときの模式図である。
図4C】ショベルを真上から見たときの模式図である。
図4D】ショベルを真上から見たときの模式図である。
図4E】ショベルを真上から見たときの模式図である。
図4F】ショベルを真上から見たときの模式図である。
図4G】ショベルを真上から見たときの模式図である。
図4H】ショベルを真上から見たときの模式図である。
図5】パイロット圧とPCポートの開口面積との関係を示す図である。
図6A】周囲監視画像の例を示す図である。
図6B】周囲監視画像の例を示す図である。
図6C】周囲監視画像の例を示す図である。
図6D】周囲監視画像の例を示す図である。
図6E】周囲監視画像の例を示す図である。
図7】メイン画面の構成例を示す図である。
図8】メイン画面の別の構成例を示す図である。
図9】空間認識装置を備えたショベルの上面図である。
図10】メイン画面の別の構成例を示す図である。
図11】メイン画面の更に別の構成例を示す図である。
図12】ショベルの管理システムの構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、図1A及び図1Bを参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。図1Aはショベル100の側面図であり、図1Bはショベル100の上面図である。
【0010】
図1A及び図1Bの例では、ショベル100の下部走行体1はクローラ1Cを含む。クローラ1Cは、走行油圧モータ2Mによって駆動される。具体的には、クローラ1Cは左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。左クローラ1CLは左走行油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラ1CRは右走行油圧モータ2MRによって駆動される。
【0011】
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3には作業要素としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には作業要素としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端には作業要素及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4は、ブームシリンダ7により駆動され、アーム5は、アームシリンダ8により駆動され、バケット6は、バケットシリンダ9により駆動される。上部旋回体3には、運転室(キャビン10)が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、旋回油圧モータ、コントローラ30及びカメラ80等が取り付けられている。旋回油圧モータは旋回用電動発電機であってもよい。キャビン10の内部には、操作装置26及び警報装置49等が設けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、ブーム4等の作業要素が取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
【0012】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。図1A及び図1Bの例では、コントローラ30は、CPU、RAM、NVRAM及びROM等を備えたコンピュータで構成されている。この場合、コントローラ30は、各種機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。
【0013】
カメラ80はショベル100の周囲を撮像する。カメラ80は、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。図1A及び図1Bの例では、カメラ80は、上部旋回体3の上面後端に取り付けられたバックカメラ80B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左カメラ80L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右カメラ80Rを含む。カメラ80は、ショベル100の前方の空間を撮像する前カメラを含んでいてもよい。カメラ80は、ショベル100の周囲における所定領域内の所定物体を検出する物体検出装置として機能する。この場合、カメラ80は、画像処理装置を含んでいてもよい。画像処理装置は、カメラ80が撮像した画像(入力画像)に各種画像処理を施して入力画像に含まれる所定物体の画像を検出する。所定物体の画像を検出した場合、カメラ80は、物体検出信号をコントローラ30に対して出力する。所定物体は、人、動物、車両及び機械等の少なくとも1つを含む。画像処理装置は、動体を検出するように構成されていてもよい。画像処理装置は、コントローラ30に統合されていてもよい。物体検出装置は、LIDAR、超音波センサ、ミリ波センサ、レーザレーダセンサ、赤外線センサ等であってもよい。
【0014】
カメラ80は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係(以下、「向きに関する情報」とも称する。)を検出するように構成されていてもよい。この場合、画像処理装置は、カメラ80が撮像した画像(入力画像)に各種画像処理を施して入力画像に含まれる下部走行体1の画像を検出する。例えば、画像処理装置は、各種画像認識技術を用いて下部走行体1の画像を検出することで、下部走行体1の長手方向を特定する。そして、画像処理装置は、上部旋回体3の前後軸と下部走行体1の長手方向に対応する仮想線との間に形成される角度を導き出す。特に、下部走行体1に設けられるクローラ1Cは上部旋回体3から突出しているため、画像処理装置は、クローラ1Cの画像を検出することで向きに関する情報を検出できる。この場合も、画像処理装置は、コントローラ30に統合されていてもよい。また、カメラ80が向きに関する情報の検出に用いられない場合、図2に示されるように、向き検出装置85が別に設けられていてもよい。
【0015】
向き検出装置85は、向きに関する情報を検出するように構成されている。例えば、向き検出装置85は、下部走行体1に取り付けられた方位センサと上部旋回体3に取り付けられた方位センサの組み合わせで構成されていてもよい。具体的には、向き検出装置85は、下部走行体1と上部旋回体3のそれぞれに設けられたGNSS受信機のそれぞれの位置情報から向きに関する情報を導き出してもよい。また、旋回用電動発電機で上部旋回体3が旋回駆動される構成では、向き検出装置85は、レゾルバで構成されていてもよい。
【0016】
また、向き検出装置85は、上部旋回体3に設けられた上側ボールレースの円周に沿って取り付けられた1又は複数の近接センサと、下部走行体1に設けられた下側ボールレースの円周に沿って形成された1又は複数のドグ(凸部又は凹部)との組み合わせで構成されていてもよい。なお、ドグに近接したときにオンに切り換わるように構成された近接センサは、超音波センサ、磁気センサ又は光センサ等で置き換えられてもよい。
【0017】
次に、図2を参照し、ショベル100に搭載される基本システムについて説明する。図2は、ショベル100に搭載される基本システムの構成例を示す図である。図2において、機械的動力伝達ラインは二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電力ラインは細実線、電気制御ラインは一点鎖線でそれぞれ示されている。
【0018】
基本システムは、主に、エンジン11、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、操作圧センサ29、コントローラ30及び警報装置49等を含む。
【0019】
エンジン11は、エンジン負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を採用したディーゼルエンジンである。エンジン11における燃料噴射量、燃料噴射タイミング及びブースト圧等は、エンジンコントロールユニット(ECU74)により制御される。
【0020】
エンジン11は油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれに接続されている。メインポンプ14は作動油ラインを介してコントロールバルブ17に接続されている。
【0021】
コントロールバルブ17は、ショベル100の油圧系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、左走行油圧モータ2ML、右走行油圧モータ2MR、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9及び旋回油圧モータ等の油圧アクチュエータに接続されている。
【0022】
具体的には、コントロールバルブ17は、各油圧アクチュエータに対応する複数のスプール弁を含む。各スプール弁は、PCポートの開口面積及びCTポートの開口面積を増減できるように、パイロット圧に応じて変位可能に構成されている。PCポートは、メインポンプ14と油圧アクチュエータとを連通させる、すなわち、メインポンプ14と油圧アクチュエータとをつなぐ管路を作動油が流れるようにするポートである。CTポートは、油圧アクチュエータと作動油タンクとを連通させるポートである。
【0023】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給するための油圧ポンプである。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、パイロットポンプ15が担っていた機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、コントロールバルブ17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で操作装置26等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。
【0024】
本実施形態では、パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26に接続されている。操作装置26は、例えば、走行操作装置26Aを含む。走行操作装置26Aは、例えば、走行レバー及び走行ペダルを含む。本実施形態では、操作装置26のそれぞれは、油圧式操作装置であり、パイロットラインを介してコントロールバルブ17内にある対応するスプール弁のパイロットポートに接続されている。但し、操作装置26は、電気式操作装置であってもよい。
【0025】
操作圧センサ29は、操作装置26の操作内容を圧力の形で検出する。操作圧センサ29は、検出値をコントローラ30に対して出力する。但し、操作装置26の操作内容は、電気的に検出されてもよい。
【0026】
表示装置40は、コントローラ30に接続されている。表示装置40は、CAN等の通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよく、専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。表示装置40は、画像表示部41、及び、入力部としてのスイッチパネル42を有する。スイッチパネル42は、各種ハードウェアスイッチを含むパネルである。スイッチパネル42は、タッチパネルであってもよい。
【0027】
表示装置40は、蓄電池90から電力の供給を受けて動作する。蓄電池90は、例えば、エンジン11のオルタネータ11aで発電した電力で充電される。蓄電池90の電力は、コントローラ30等にも供給される。例えば、エンジン11のスタータ11bは、蓄電池90からの電力で駆動され、エンジン11を始動する。
【0028】
ECU74は、冷却水温等、エンジン11の状態を表すデータをコントローラ30に送信する。メインポンプ14のレギュレータ14aは、斜板傾転角を表すデータをコントローラ30に送信する。吐出圧センサ14bは、メインポンプ14の吐出圧を表すデータをコントローラ30に送信する。作動油タンクとメインポンプ14との間の管路に設けられた油温センサ14cは、その管路を流れる作動油の温度を表すデータをコントローラ30に送信する。操作圧センサ29は、操作装置26が操作されたときに生成されるパイロット圧を表すデータをコントローラ30に送信する。コントローラ30は一時記憶部(メモリ)にこれらのデータを蓄積しておき、必要なときに表示装置40に送信できる。
【0029】
エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン11の回転数を調整するためのダイヤルである。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態を示すデータをコントローラ30に送信する。エンジン回転数調整ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード、及びIDLEモードの4段階でエンジン回転数を切り換えできるように構成されている。SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベル100を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。IDLEモードは、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードのエンジン回転数で一定に回転数制御される。
【0030】
警報装置49は、ショベル100に関する情報を出力することで、ショベル100の作業に携わる人(以下、「報知対象者」とする。)の注意を喚起するショベル100の出力装置の一例である。警報装置49は、例えば、室内警報装置49N及び室外警報装置49Eの組み合わせで構成される。室内警報装置49Nは、キャビン10内にいるショベル100の操作者の注意を喚起するための装置であり、例えば、キャビン10内に設けられた音出力装置、振動発生装置及び発光装置等の少なくとも1つを含む。室内警報装置49Nは、表示装置40であってもよい。室外警報装置49Eは、ショベル100の周囲で作業する作業者の注意を喚起するための装置であり、例えば、キャビン10の外に設けられた音出力装置及び発光装置等の少なくとも1つを含む。室外警報装置49Eとしての音出力装置は、例えば、上部旋回体3の底面に取り付けられている走行アラーム装置であってもよい。また、室外警報装置49Eは、上部旋回体3上に設けられる発光装置であってもよい。但し、室外警報装置49Eは省略されてもよい。
【0031】
次に、コントローラ30が有する各種機能要素について説明する。本実施形態では、コントローラ30は、判定部31、警報部32及び画像生成部33を機能要素として有する。
【0032】
判定部31は、所定の条件が満たされているか否かを判定する。所定の条件は、例えば、上部旋回体3に対する下部走行体1の向きに関する所定の条件を含む。向きに関する所定の条件は、例えば、下部走行体1の前後軸と上部旋回体3の前後軸との間に形成される角度が所定範囲内となることを含む。また、所定の条件は、例えば、走行操作に関する所定の条件を含む。走行操作に関する所定の条件は、例えば、走行操作装置26Aを介して後進操作が行われたことを含む。後進操作は、例えば、上部旋回体3又はキャビン10から見て後方に下部走行体1を進行させる操作である。
【0033】
警報部32は、判定部31により所定の条件が満たされたと判定された場合に、警報を出力させる。本実施形態では、警報部32は、判定部31により向きに関する所定の条件と走行操作に関する所定の条件とが満たされたと判定された場合、警報装置49から警報を出力させる。
【0034】
画像生成部33は、表示装置40に表示させる画像を生成する。本実施形態では、画像生成部33は、例えば、表示装置40の画像表示部41に表示される画像を生成する。
【0035】
ここで、図3を参照し、後進操作が行われたときにコントローラ30が警報装置49に警報を出力させる処理(以下、「警報処理」とする。)の一例について説明する。図3は、警報処理のフローチャートである。コントローラ30は、所定の制御周期で繰り返しこの警報処理を実行する。
【0036】
最初に、コントローラ30の判定部31は、向きに関する所定の条件が満たされているか否かを判定する(ステップST1)。本実施形態では、判定部31は、下部走行体1の前後軸と上部旋回体3の前後軸との間に形成される角度が所定の範囲内にある場合に、向きに関する所定の条件が満たされていると判定する。
【0037】
ここで、図4A図4Hを参照し、向きに関する所定の条件について説明する。図4A図4Hは、ショベル100を真上から見たときの模式図である。図4A図4Hのそれぞれは、左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む下部走行体1と、左クローラ1CLの後部に搭載されている左走行油圧モータ2MLと、右クローラ1CRの後部に搭載されている右走行油圧モータ2MRとを破線で示している。また、図4A図4Hのそれぞれは、上部旋回体3及び上部旋回体3に設置されているキャビン10を実線で示している。
【0038】
より具体的には、図4Aは、下部走行体1の前後軸1Xと上部旋回体3の前後軸3Xとが一致している状態を示している。以下では、この状態を「基準状態」と称する。また、前後軸1Xと前後軸3Xとの間に形成される角度は、基準状態に関して上部旋回体3が右回りに旋回するときに正値となり、左回りに旋回するときに負値となる。
【0039】
図4Bは、前後軸1Xと前後軸3Xとの間に角度(+α)が形成されている状態を示している。すなわち、図4Bは、基準状態に対して上部旋回体3を右回りに角度αだけ旋回させたときの状態を示している。
【0040】
図4Cは、前後軸1Xと前後軸3Xとの間に角度(-α)が形成されている状態を示している。すなわち、図4Cは、基準状態に対して上部旋回体3を左回りに角度αだけ旋回させたときの状態を示している。
【0041】
図4Dは、前後軸1Xと前後軸3Xとの間に角度(-α1)が形成されている状態を示している。すなわち、図4Dは、基準状態に対して上部旋回体3を左回りに角度α1(>α)だけ旋回させたときの状態を示している。
【0042】
角度αは、下部走行体1の向きと上部旋回体3の向きとが同じであるか否かを区別するための閾値である。本実施形態では、角度αは、0度より大きく90度より小さい角度である。本書では、図4A図4Cに示すように前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が0度以上で且つ角度α以下のときに下部走行体1が矢印AR1の方向に進行することは、ショベル100の「後進」と称される。一方で、図4Dに示すように前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が90度以下で且つ角度αより大きいときに下部走行体1が矢印AR1の方向に進行することは、ショベル100の「側進」又は「斜め後進」と称される。なお、キャビン10内の運転席に着座する操作者は、通常、前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が0度以上で且つ角度α以下の場合、下部走行体1に取り付けられている走行油圧モータ及びアイドラ等を視認できない。そのため、操作者は、走行油圧モータ又はアイドラ等の配置から下部走行体1の向きを判断できない。一方、前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が90度以下で且つ角度αより大きい場合、操作者は、通常、走行油圧モータ及びアイドラ等を視認できる。そのため、操作者は、走行油圧モータ又はアイドラ等の配置から下部走行体1の向きを判断できる。角度αは、典型的には、このような条件が満たされるように設定される。
【0043】
図4Eは、前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が180度となっているときの状態を示している。すなわち、図4Eは、基準状態に対して上部旋回体3を左回り又は右回りに180度だけ旋回させたときの状態を示している。
【0044】
図4Fは、前後軸1Xと前後軸3Xとの間に角度(-β)が形成されている状態を示している。すなわち、図4Fは、基準状態に対して上部旋回体3を左回りに角度βだけ旋回させたときの状態を示している。
【0045】
図4Gは、前後軸1Xと前後軸3Xとの間に角度(+β)が形成されている状態を示している。すなわち、図4Gは、基準状態に対して上部旋回体3を右回りに角度βだけ旋回させたときの状態を示している。
【0046】
図4Hは、前後軸1Xと前後軸3Xとの間に角度(-β1)が形成されている状態を示している。すなわち、図4Hは、基準状態に対して上部旋回体3を左回りに角度β1(<β)だけ旋回させたときの状態を示している。
【0047】
角度βは、下部走行体1の向きと上部旋回体3の向きとが正反対であるか否かを区別するための閾値である。本実施形態では、角度βは、90度より大きく180度より小さい角度である。図4E図4Gに示すように前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が角度β以上で且つ180度以下のときに下部走行体1が矢印AR2の方向に進行することは、ショベル100の「後進」と称される。一方で、図4Hに示すように前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が90度以上で且つ角度βより小さいときに下部走行体1が矢印AR2の方向に進行することは、ショベル100の「側進」又は「斜め後進」と称される。なお、キャビン10内の運転席に着座する操作者は、前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が角度β以上で且つ180度以下の場合、下部走行体1に取り付けられている走行油圧モータ及びアイドラ等を視認できない。そのため、操作者は、走行油圧モータ又はアイドラ等の配置から下部走行体1の向きを判断できない。一方、前後軸1Xと前後軸3Xとの間の角度が90度以上で且つ角度βより小さい場合、操作者は、走行油圧モータ及びアイドラ等を視認できる。そのため、操作者は、走行油圧モータ又はアイドラ等の配置から下部走行体1の向きを判断できる。角度βは、典型的には、このような条件が満たされるように設定される。
【0048】
判定部31は、下部走行体1の前後軸1Xと上部旋回体3の前後軸3Xとの間に形成される角度が-180度から-βの範囲内、-αから+αの範囲内、及び、+βから+180度の範囲内にある場合に、向きに関する所定の条件が満たされていると判定する。例えば、判定部31は、図4A図4C及び図4E図4Fの何れかに示す状態であることを検出している場合に、向きに関する所定の条件が満たされていると判定し、図4D及び図4Hの何れかに示す状態であることを検出している場合に向きに関する所定の条件が満たされていないと判定する。
【0049】
向きに関する所定の条件が満たされていないと判定した場合(ステップST1のNO)、判定部31は、警報を出力することなく、今回の警報処理を終了させる。
【0050】
向きに関する所定の条件が満たされていると判定した場合(ステップST1のYES)、判定部31は、走行操作に関する所定の条件が満たされたか否かを判定する(ステップST2)。本実施形態では、判定部31は、後進操作が行われたときに、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定する。
【0051】
例えば、判定部31は、図4A図4Cに示す状態において走行レバーを手前に引く操作及び走行ペダルの踵側を踏み込む操作の少なくとも一方が行われた場合に、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定する。図4A図4Cに示す状態において、走行レバーが手前に引かれると、すなわち後方に傾けられると、下部走行体1は、矢印AR1で示す方向に進行するためである。走行ペダルの踵側が踏み込まれた場合も同様である。この場合、走行レバーを手前に引く操作、及び、走行ペダルの踵側を踏み込む操作は後進操作に含まれる。
【0052】
また、判定部31は、図4E図4Gに示す状態において走行レバーを遠方に押し込む操作及び走行ペダルのつま先側を踏み込む操作の少なくとも一方が行われた場合に、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定する。図4E図4Gに示す状態において、走行レバーが遠方に押し込まれると、すなわち前方に傾けられると、下部走行体1は矢印AR2で示す方向に進行するためである。走行ペダルのつま先側が踏み込まれた場合も同様である。この場合、走行レバーを遠方に押し込む操作、及び、走行ペダルのつま先側を踏み込む操作は後進操作に含まれる。
【0053】
具体的には、判定部31は、操作圧センサ29の出力に基づいて、左右の走行操作装置26Aの少なくとも一方による後進操作が行われたか否かを判定する。例えば、判定部31は、図4Aに示す状態において、左走行油圧モータ2MLに関連するスプール弁(以下、「左走行スプール弁」とする。)の逆回転側パイロット圧が閾値Pt以上となった場合、すなわち、左走行レバーが手前に引かれたと判定した場合に、後進操作が行われたと判定する。左走行スプール弁は、逆回転側パイロット圧の増大に応じて変位し、メインポンプ14と左走行油圧モータ2MLの第1ポートとを連通させ、且つ、左走行油圧モータ2MLの第2ポートと作動油タンクとを連通させる。その結果、左走行油圧モータ2MLは逆回転し、左クローラ1CLは矢印AR1で示す方向に進行する。なお、左走行スプール弁は、左走行レバーが遠方に押し込まれると、順回転側パイロット圧の増大に応じてメインポンプ14と左走行油圧モータ2MLの第2ポートとを連通させ、且つ、左走行油圧モータ2MLの第1ポートと作動油タンクとを連通させる。その結果、左走行油圧モータ2MLは順回転し、左クローラ1CLは矢印AR1で示す方向とは正反対の方向に進行する。すなわち、左クローラ1CLは前進する。
【0054】
本実施形態では、閾値Ptは、不感帯領域内の値として設定されている。不感帯領域は、左走行油圧モータ2MLが作動しないパイロット圧の範囲を意味する。図5は、左走行レバーを手前に引いたときに左走行スプール弁に作用する逆回転側パイロット圧とPCポートの開口面積との関係を示している。図5の横軸は逆回転側パイロット圧に対応し、縦軸はPCポートの開口面積に対応する。
【0055】
また、図5は、左走行レバーを手前に引いた場合の例を示しているが、図5に示す関係は、左操作レバーを遠方に押し込んだ場合、右走行レバーを手前に引いた場合、及び、右走行レバーを遠方に押し込んだ場合にも同様に適用される。
【0056】
図5に示すように、左走行レバーが手前に引かれたとしても、その操作量が小さくて逆回転側パイロット圧が閾値Ps未満の場合、すなわち、不感帯領域にある場合には、メインポンプ14と左走行油圧モータ2MLの第1ポートとを連通させるPCポートの開口面積はゼロのままである。そのため、メインポンプ14が吐出する作動油は、左走行油圧モータ2MLの第1ポートに流入せず、左走行油圧モータ2MLは回転しない。一方、逆回転側パイロット圧が閾値Ps以上の場合、すなわち、不感帯領域を超えて増大した場合、PCポートの開口面積は、ゼロより大きくなり、逆回転側パイロット圧の増大に応じて増大する。そのため、メインポンプ14が吐出する作動油は、左走行油圧モータ2MLの第1ポートに流入し、左走行油圧モータ2MLは逆回転する。
【0057】
したがって、閾値Ptが閾値Psより小さい場合、すなわち、閾値Ptが不感帯領域内の値として設定されている場合、判定部31は、下部走行体1が動き出す前に、走行操作に関する所定の条件が満たされたか否かを判定できる。そのため、コントローラ30は、例えば、下部走行体1が動き出す前に、後進操作が行われたか否かを判定することができ、そして、後進操作が行われたと判定した場合には、下部走行体1が動き出す前に警報を出力できる。
【0058】
また、上述の実施形態では、判定部31は、走行操作装置26Aに関するパイロット圧に基づいて走行操作に関する所定の条件が満たされたか否かを判定しているが、走行油圧モータ2Mに流入する作動油の圧力である駆動圧に基づいて走行操作に関する所定の条件が満たされたか否かを判定してもよい。この場合、走行油圧モータ2Mの駆動圧は、走行油圧モータ2Mと走行スプール弁とを繋ぐ管路に取り付けられた駆動圧センサによって検出されてもよい。なお、駆動圧センサは、望ましくは、上部旋回体3内にある走行スプール弁の近くに取り付けられる。或いは、判定部31は、角度センサ等によって検出される走行レバーの傾倒角度に基づいて走行操作に関する所定の条件が満たされたか否かを判定してもよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、判定部31は、左右の走行操作装置26Aの少なくとも一方による後進操作が行われた場合に、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定している。但し、判定部31は、左右の走行操作装置26Aの一方で後進操作が行われた場合であっても、他方で前進操作が行われた場合には、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定しないようにしてもよい。前進操作は、例えば、上部旋回体3又はキャビン10から見て前方に下部走行体1を進行させる操作である。この構成では、判定部31は、超信地旋回(スピンターン)が行われる場合には、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定することはない。また、判定部31は、左右の走行操作装置26Aの双方による後進操作が行われた場合に、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定してもよい。この構成では、判定部31は、信地旋回(ピボットターン)又は超信地旋回(スピンターン)が行われる場合には、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定することはない。また、判定部31は、左右の走行操作装置26Aの双方による後進操作が行われた場合であっても、左右の操作量の差が所定値以上であれば、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定しないようにしてもよい。この構成では、判定部31は、緩旋回(パワーターン)が行われる場合には、走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定することはない。
【0060】
走行操作に関する所定の条件が満たされていないと判定した場合(ステップST2のNO)、判定部31は、警報を出力することなく、今回の警報処理を終了させる。
【0061】
走行操作に関する所定の条件が満たされたと判定した場合(ステップST2のYES)、コントローラ30の警報部32は、警報を出力させる(ステップST3)。この警報(以下、「後進警報」とする。)は、例えば、視覚的警報、聴覚的警報及び触覚的警報の少なくとも1つを含む。また、報知対象者は、ショベル100の操作者、及び、ショベル100の周囲で作業している作業者の少なくとも一方を含む。本実施形態では、警報部32は、キャビン10内にいる操作者、及び、キャビン10外にいる作業者の双方に対して警報装置49から聴覚的警報を出力させる。
【0062】
また、警報部32は、報知対象者が後進警報と他の警報とを区別できるように、後進警報の態様を他の警報と異ならせるようにしてもよい。例えば、警報部32は、聴覚的警報として後進警報を出力させる場合、音の振幅、周波数及び波形等の少なくとも1つを異ならせるようにしてもよい。
【0063】
また、警報部32は、走行レバーが遠方に押し込まれてショベル100が後進する場合と、走行レバーが手前に引かれてショベル100が後進する場合とで後進警報の態様を異ならせるようにしてもよい。特に、走行レバーが遠方に押し込まれたときにショベル100が後進する場合、操作者は、ショベル100を前進させるつもりであった場合もある。そのため、警報部32は、例えば、走行レバーが遠方に押し込まれてショベル100が後進する場合に出力する後進警報の音量を、走行レバーが手前に引かれてショベル100が後進する場合に出力する後進警報の音量よりも大きくしてもよい。操作者が意図している移動方向とは異なる方向にショベル100が移動しようとしていることを早期に且つ確実に操作者に知らせるためである。また、警報部32は、音の振幅、周波数及び波形等の少なくとも1つを異ならせるようにしてもよい。また、後進警報は、キャビン10内に設けられた振動発生装置又は発光装置を用いて出力されてもよい。例えば、警報部32は、走行レバーが遠方に押し込まれてショベル100が後進する場合に振動発生装置又は発光装置が出力する後進警報の態様と、走行レバーが手前に引かれてショベル100が後進する場合に振動発生装置又は発光装置が出力する後進警報の態様とを異ならせるようにしてもよい。また、警報部32が出力する後進警報は、上部旋回体3上に配置される、すなわち、キャビン10の外に配置される音出力装置又は発光装置によるものであってもよい。
【0064】
上述のように、本発明の実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載されている上部旋回体3と、上部旋回体3に設置されている運転室としてのキャビン10と、キャビン10内に設けられている走行操作装置26Aと、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係を検出するように構成されているカメラ80と、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとが所定の関係にあることがカメラ80によって検出されている場合で、且つ、走行操作装置26Aを介して後進操作が行われた場合に、警報を出力するように構成されている警報装置49と、を備える。カメラ80は、例えば、下部走行体1に配置される走行油圧モータ又はアイドラ等の位置を検出し、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係を検出するように構成されている。後進操作は、例えば、キャビン10から見て後方に下部走行体1を進行させる操作である。後進操作は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係によっては、走行レバーを手前に引く操作及び走行ペダルの踵側を踏み込む操作を含む場合があり、走行レバーを遠方に押し込む操作及び走行ペダルのつま先側を踏み込む操作を含む場合もある。
【0065】
「キャビン10から見て後方」は、上部旋回体3の前後軸3Xに対する角度が所定範囲内となる方向を含んでいてもよい。「キャビン10から見て後方」は、例えば図4A及び図4Eに示すように、上部旋回体3の前後軸3Xに対する下部走行体1の前後軸1Xの角度(絶対値)が角度α以下となる方向を含んでいてもよい。また、「キャビン10から見て後方」は、図4B図4C図4F及び図4Gに示すように、下部走行体1の前後軸1Xと上部旋回体3の前後軸3Xとの間に形成される角度が-180度から-βの範囲内、-αから+αの範囲内、又は、+βから+180度の範囲内となる方向を含んでいてもよい。
【0066】
この構成により、ショベル100は、後進操作が行われたときにショベル100の作業に携わる人の注意を喚起できる。具体的には、ショベル100は、後進操作が行われたことをショベル100の操作者に報知できる。そのため、ショベル100の操作者は、後方確認を怠っていた場合には、注意喚起を受けた後で後方を確認できる。また、操作者は、ショベル100を前進させるつもりが誤って後進操作を行ってしまった場合には、その後進操作を早期に中止できる。これは、例えば、旋回操作を繰り返すことで下部走行体1の向きと上部旋回体3の向きの関係を操作者が誤認識してしまっている場合に前進操作又は後進操作が行われたときであっても、ショベル100は、パイロット圧が不感帯領域にあるうちに、誤認識している旨を操作者へ報知することで、操作者にすばやくその旨を認識させることができる。
【0067】
また、ショベル100は、後進操作が行われたことをショベル100の周囲で作業している作業者に報知できる。そのため、ショベル100の周囲で作業している作業者は、ショベル100の後進操作が行われたことを早期に認識できる。
【0068】
警報装置49は、走行操作装置26Aを介して前進操作が行われた場合には、上記警報(後進警報)とは異なる別の警報を出力するように構成されていてもよい。なお、別の警報を出力する構成は、警報を出力しない構成を含む。すなわち、警報装置49は、例えば、走行操作装置26Aを介して前進操作が行われた場合には走行アラームを出力しないように構成されてもよい。この構成は、例えば、判定部31によって所定の条件が満たされていると判定された場合に限り出力する特別な警報と、単に走行操作装置26Aが操作された場合に出力する警報とを報知対象者が区別できるようにするためのものである。
【0069】
具体的には、走行操作装置26Aが操作された場合にその操作方向とは無関係に走行アラームが出力される場合、後進警報と走行アラームとが同じ態様の音声警報であれば、その音声警報を聞いた者は、その音声警報が意味する内容を判別できない。すなわち、その音声警報を聞いた者は、ショベル100が前進しようとしているのか後進しようとしているのかを判別できない。上述の構成は、このような状況が発生するのを防止できる。
【0070】
また、警報装置49は、走行操作装置26Aの操作量が不感帯領域にあるときに、警報を出力するように構成されていてもよい。この構成により、警報装置49は、後進操作に応じてショベル100が実際に動き出す前に、後進操作が行われた旨をショベル100の操作者に知らせることができる。
【0071】
また、ショベル100は、走行操作装置26Aの傾倒方向に対応する下部走行体1の進行方向に関する画像を表示する表示装置40を備えていてもよい。この場合、進行方向に関する画像は、上部旋回体3の旋回状態に応じて連続的に変化するように構成されていてもよい。進行方向に関する画像は、例えば、画像生成部33によって生成される。
【0072】
図6A図6Eは、表示装置40の画像表示部41に表示される周囲監視画像の5つの例を示している。5つの周囲監視画像のそれぞれは、画像生成部33によって生成され、ショベル100を表すショベル図形GAと、ショベル図形GAの周囲に配置される部分円形状(図6A図6D参照。)又は円形状(図6E参照。)のカメラ画像GBと、走行操作装置26Aの傾倒方向に対応する下部走行体1の進行方向に関する画像GDとを含んでいる。ショベル図形GAは、下部走行体1を表す図形と上部旋回体3を表す図形とを含む。下部走行体1を表す図形と上部旋回体3を表す図形の位置関係は、下部走行体1と上部旋回体3の位置関係の変化に応じて変化してもよい。カメラ画像GBは、例えば、バックカメラ80B、左カメラ80L及び右カメラ80Rのそれぞれが撮像した画像を合成して生成される仮想視点画像としての俯瞰画像(図6A図6D参照。)であってもよく、前カメラ、バックカメラ80B、左カメラ80L及び右カメラ80Rのそれぞれが撮像した画像を合成して生成される仮想視点画像としての俯瞰画像(図6E参照。)であってもよい。画像GDは、例えば、左右の走行操作装置26A(走行レバー)が手前に引かれたときの下部走行体1の進行方向を表す矢印である。
【0073】
具体的には、図6Aは、ショベル100が図4Aに示す状態にあるときに表示される周囲監視画像を示している。画像GD1は、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときに、上部旋回体3に関して下部走行体1が後方に移動することを表している。
【0074】
図6Bは、ショベル100が図4Eに示す状態にあるときに表示される周囲監視画像を示している。画像GD2は、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときに、上部旋回体3に関して下部走行体1が前方に移動することを表している。
【0075】
図6Cは、ショベル100が図4Fに示す状態にあるときに表示される周囲監視画像を示している。画像GD3は、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときに、上部旋回体3に関して下部走行体1が左斜め前方に移動することを表している。
【0076】
図6Dは、ショベル100が図4Hに示す状態にあるときに表示される周囲監視画像を示している。画像GD4は、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときに、上部旋回体3に関して下部走行体1が左方に移動することを表している。
【0077】
図6Eは、ショベル100が図4Aに示す状態にあるときに表示される周囲監視画像を示している。画像GD1は、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときに、上部旋回体3に関して下部走行体1が後方に移動することを表している。図6Eの例では、カメラ画像GBは、ショベル100の周囲360度の俯瞰画像である。
【0078】
このような構成により、ショベル100は、下部走行体1と上部旋回体3の位置関係を表示装置40に表示させることができる。具体的には、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときの上部旋回体3に関する下部走行体1の進行方向を継続的に表示できる。そのため、ショベルの操作者は、表示装置40の画像表示部41に表示された周囲監視画像を見ることで、左右の走行操作装置26Aを手前に引いたときの上部旋回体3に関する下部走行体1の進行方向を直感的に把握することができる。その結果、操作者は、ショベル100を予期せぬ方向に移動させてしまうのを防止できる。
【0079】
表示装置40の画像表示部41において画像GDとして表示される矢印の向きは、10°よりも細かい精度で決定されてもよく、進行方向の大体の目安となるように10°よりも粗い精度で決定されてもよい。
【0080】
なお、ショベル100は、画像GDとしての矢印を点滅させてもよく、画像GDとして矢印以外の図形を表示させてもよく、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときの上部旋回体3に関する下部走行体1の進行方向に対応する画像部分を所定色で塗り潰したり、点滅させたりしてもよい。
【0081】
例えば、ショベル100は、カメラ画像GBの円弧上に、所定角度毎に所定画像を表示させてもよい。所定角度は、例えば10°である。但し、所定角度は、10°より大きい角度であってもよく、10°より小さい角度であってもよい。所定画像は、例えば目盛り画像である。そして、ショベル100は、左右の走行操作装置26A(走行レバー)が遠方に押し込まれたとき、又は、左右の走行操作装置26A(走行レバー)が手前に引かれたときの上部旋回体3に関する下部走行体1の進行方向に対応する所定画像の1つを所定色で塗り潰したり、点滅させたりしてもよい。
【0082】
また、ショベル100は、左右の走行操作装置26A(走行レバー)が遠方に押し込まれたときの上部旋回体3に関する下部走行体1の進行方向を継続的に表示するように構成されていてもよい。すなわち、ショベル100は、左右の走行操作装置26A(走行レバー)が操作されているか否かにかかわらず、上部旋回体3に関する下部走行体1の進行方向を常に表示するように構成されていてもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、ショベル100は、左右の走行操作装置26A(走行レバー)が遠方に押し込まれたとき、又は、左右の走行操作装置26A(走行レバー)が手前に引かれたときの上部旋回体3に関する下部走行体1の進行方向を常に表示させるように構成されている。しかしながら、ショベル100は、走行操作装置26Aが操作されている間だけ表示させるように構成されていてもよい。
【0084】
また、上述の実施形態では、向き検出装置85は、下部走行体1に取り付けられた方位センサと上部旋回体3に取り付けられた方位センサの組み合わせで構成されているが、旋回角度センサであってもよい。旋回角度センサは、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する機構に関連して設けられるセンタージョイントに配置されていてもよい。
【0085】
次に、図7及び図8を参照し、周囲監視画像を含むメイン画面について説明する。図7及び図8は、表示装置40の画像表示部41に表示されるメイン画面41Vの構成例を示す。本実施形態では、メイン画面41Vは、ショベル100の稼働中に画像表示部41に表示される。
【0086】
メイン画面41Vは、図7及び図8に示すように、日時表示領域41a、走行モード表示領域41b、アタッチメント表示領域41c、燃費表示領域41d、エンジン制御状態表示領域41e、エンジン稼働時間表示領域41f、冷却水温表示領域41g、燃料残量表示領域41h、回転数モード表示領域41i、尿素水残量表示領域41j、作動油温表示領域41k及び周囲監視画像表示領域41mを含む。
【0087】
日時表示領域41aは、現在の日時を表示する領域である。走行モード表示領域41bは、現在の走行モードを表示する領域である。アタッチメント表示領域41cは、現在装着されているアタッチメントを表す画像を表示する領域である。燃費表示領域41dは、コントローラ30によって算出された燃費情報を表示する領域である。燃費表示領域41dは、生涯平均燃費又は区間平均燃費を表示する平均燃費表示領域41d1、瞬間燃費を表示する瞬間燃費表示領域41d2を含む。
【0088】
エンジン制御状態表示領域41eは、エンジン11の制御状態を表示する領域である。エンジン稼働時間表示領域41fは、エンジン11の累積稼働時間を表示する領域である。冷却水温表示領域41gは、現在のエンジン冷却水の温度状態を表示する領域である。燃料残量表示領域41hは、燃料タンクに貯蔵されている燃料の残量状態を表示する領域である。回転数モード表示領域41iは、エンジン回転数調整ダイヤル75によって設定された現在の回転数モードを画像表示する領域である。尿素水残量表示領域41jは、尿素水タンクに貯蔵されている尿素水の残量状態を画像表示する領域である。作動油温表示領域41kは、作動油タンク内の作動油の温度状態を表示する領域である。
【0089】
周囲監視画像表示領域41mは、周囲監視画像を表示する領域である。図7の例では、周囲監視画像表示領域41mには、図6Aで示す周囲監視画像、すなわち、ショベル100が図4Aに示す状態にあるときに表示される周囲監視画像が表示されている。図8の例では、周囲監視画像表示領域41mには、バックカメラ80Bが撮像した後方画像(視点変換処理が施されていない画像)が周囲監視画像として表示されている。図8の例は、ショベル100が図4Bに示す状態にあるときに表示されるメイン画面の一例である。画像GD5は、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときに下部走行体1が移動する方向を表している。
【0090】
このように、ショベル100は、周囲監視画像を含むメイン画面41Vを画像表示部41に表示させることができる。そのため、ショベル100の操作者は、メイン画面41Vに表示された様々な情報を確認しながらも、周囲監視画像を見ることで、左右の走行操作装置26Aを手前に引いたときの上部旋回体3に関する下部走行体1の進行方向を直感的に把握することができる。その結果、操作者は、ショベル100を予期せぬ方向に移動させてしまうのを防止できる。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施形態が説明された。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【0092】
例えば、ショベル100は、図9に示すように、カメラ80とは別に、物体検出装置(空間認識装置70)を備えていてもよい。図9は、空間認識装置70を備えたショベルの上面図である。
【0093】
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を検知できるように構成されている。また、空間認識装置70は、空間認識装置70又はショベル100と検知した物体との間の距離を算出できるように構成されていてもよい。物体は、例えば、人、動物若しくは機械等の進入物、又は、建屋等の静止物である。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、LIDAR、距離画像センサ又は赤外線センサ等である。図9に示す例では、空間認識装置70としてのLIDARは、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方センサ70Rで構成されている。上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を検知する上方センサがショベル100に取り付けられていてもよい。
【0094】
後方センサ70Bは、バックカメラ80Bに隣接して配置され、左方センサ70Lは、左カメラ80Lに隣接して配置され、且つ、右方センサ70Rは右カメラ80Rに隣接して配置されている。なお、前方センサ70Fの近傍には、前方カメラが隣接して配置されていてもよい。
【0095】
ショベル100は、空間認識装置70の検知結果を、カメラ80が撮像した画像とともに、キャビン10内に設置されている表示装置40に表示させてもよい。具体的には、ショベル100は、図10に示すように、バックカメラ80B、左カメラ80L及び右カメラ80Rのそれぞれが出力する画像を合成して生成される俯瞰画像を、空間認識装置70の検知結果とともに、表示装置40に表示できるように構成されていてもよい。図10は、表示装置40の画像表示部41に表示されるメイン画面41Vの別の構成例を示す。図10のメイン画面41Vは、空間認識装置70が検知した物体の画像GD10を際立たせるための画像GD11を含む点、空間認識装置70が検知した物体の種類を表す画像GD12を含む点、ショベル100と物体との間の距離を表す画像GD13を含む点、及び、下部走行体1の進行方向を表す画像GD6を含む点で、図7のメイン画面41Vと異なるが、その他の点で共通している。なお、メイン画面41Vは、物体のサイズ(例えば、物体としての人の身長)を表す画像を含んでいてもよい。
【0096】
図10の例では、画像GD6は、下部走行体1の進行方向を表すアニメーション画像である。具体的には、画像GD6は、画像GD6a~画像GD6cを含み、下部走行体1の後進方向へ矢印の画像があたかも移動しているかのように見えるように表示される。すなわち、画像GD6は、下部走行体1の後進方向を操作者が直感的に認識できるように、矢印の画像が後進方向に向かってあたかも移動しているかのように見えるように表示される。より具体的には、ショベル100は、画像GD6a、画像GD6b、画像GD6c、画像GD6a、画像GD6b、画像GD6c、・・・の順で繰り返すように、下向きの矢印を断続的に表示し、矢印の画像があたかも移動しているかのように見せることで、下部走行体1の進行方向を操作者に認識させる。ショベル100は、画像GD6a~画像GD6cの2つ以上を同時に表示することはない。図10は、現時点では、実線で示される画像GD6cが表示され、破線で示される画像GD6a及び画像GD6bが表示されていないことを表している。
【0097】
この構成により、図10のメイン画面41Vを見た操作者は、周囲監視画像表示領域41mを注視せずとも、例えば周辺視野で画像GD6を捉えることで、下部走行体1の進行方向を認識できる。
【0098】
ショベル100は、空間認識装置70の出力に基づき、俯瞰画像における、空間認識装置70が検知した物体(人)の画像GD10が位置する部分を特定し、且つ、操作者がその特定した部分を他の部分から区別できるようにその特定した部分を画像GD11によって強調表示する。
【0099】
画像GD11は、図10の例では、空間認識装置70が検知した物体の画像GD10を囲む枠の画像である。但し、画像GD11は、物体の画像GD10を指し示す矢印の画像であってもよく、枠及び矢印以外の他の画像であってもよい。また、ショベル100は、画像GD11を点滅させてもよい。或いは、ショベル100は、画像GD11に対応する部分の輝度及び色等の少なくとも1つを変更し、画像GD11に対応する部分が周囲の部分から際立つようにしてもよい。
【0100】
画像GD12は、図10の例では、空間認識装置70が検知した物体の種類を表す文字である「人」を含む吹き出しの画像である。吹き出しの始点は、例えば、画像GD11の中心点に一致するように構成されている。
【0101】
画像GD13は、図10の例では、空間認識装置70が検知した物体とショベル100との間の距離を表す両矢印と、両矢印の近くに表示される距離の値とを含む。
【0102】
このように、ショベル100は、空間認識装置70が検知した物体の存在をショベル100の操作者が容易に認識できるように、その物体の画像が含まれる部分を際立たせて表示できる。そのため、ショベル100の操作者は、後進操作等を行う際に表示装置40に表示されている画像を見ることで、その物体の存在に気付くことができる。
【0103】
また、ショベル100は、空間認識装置70が複数の物体を検知している場合、各物体に関する危険度に応じて各物体に関する強調表示の内容を異ならせてもよい。危険度は、例えば、ショベル100と物体との間の距離が小さいほど高くなるように設定される。具体的には、ショベル100は、ショベル100に近いところに存在する人の画像が位置する部分が、ショベル100から遠いところに存在する人の画像が位置する部分よりも際立つように各物体に関する強調表示の内容を異ならせてもよい。
【0104】
また、ショベル100は、画像GD6で示す下部走行体1の進行方向において、画像GD11で示す物体が検知されている場合には、画像GD6で示す方向以外の方向に存在する物体が検知されている場合とは異なる態様、すなわち、画像GD11に対応する部分がより際立つ態様で、画像GD11を表示させてもよい。ショベル100の操作者の注意を更に喚起することで、ショベル100の後進方向に物体が存在していることを確実に操作者に認識させるためである。
【0105】
この構成により、図10のメイン画面41Vを見た操作者は、周囲監視画像表示領域41mを注視せずとも、例えば周辺視野で画像GD11を捉えることで、下部走行体1の後進方向に物体が存在していることを認識できる。
【0106】
図11は、表示装置40の画像表示部41に表示されるメイン画面41Vの更に別の構成例を示す。図11のメイン画面41Vは、主に、立ち入り禁止領域を表す画像GD20、危険領域を表す画像GD21、目標作業領域を表す画像GD22、立ち入り禁止領域とショベル100との間の距離を表す画像GD14、危険領域とショベル100との間の距離を表す画像GD15、及び、目標作業領域とショベル100との間の距離を表す画像GD16を含む点で、図10のメイン画面41Vと異なるが、その他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
【0107】
立ち入り禁止領域は、ショベル100の進入が禁止される領域である。立ち入り禁止領域は、例えば、ロードコーンで囲まれた領域である。立ち入り禁止領域では、典型的には、作業者等による様々な作業が行われている。
【0108】
危険領域は、ショベル100が進入するとショベル100が危険な状態になってしまう領域である。危険な状態は、例えば、転倒のおそれがある状態である。危険領域は、具体的には、崖、法肩又は穴等が存在する領域である。崖、法肩又は穴等の境界は、強調表示されてもよい。
【0109】
目標作業領域は、ショベル100による作業が行われる領域である。ショベル100による作業は、例えば、ダンプトラックの荷台に土砂等を積み込む積み込み作業、又は、土砂等によって所定形状の盛り土を形成する盛り土作業等である。
【0110】
画像GD7は、左右の走行操作装置26Aが手前に引かれたときに下部走行体1が移動する方向を表している。
【0111】
ショベル100は、例えば、空間認識装置70及びカメラ80の少なくとも1つの出力に基づいて立ち入り禁止領域、危険領域及び目標作業領域等の少なくとも1つの位置及び範囲を特定してもよい。或いは、ショベル100は、不揮発性記憶装置に予め記憶されている地形データ又は設計データ等の既登録の情報に基づいて立ち入り禁止領域、危険領域及び目標作業領域等の少なくとも1つの位置及び範囲を特定してもよい。
【0112】
ショベル100は、目標作業領域に関する情報として、作業内容、予定作業継続時間、予定作業開始時刻、予定作業終了時刻及び予定作業量等の少なくとも1つを画像表示部41に表示するように構成されていてもよい。
【0113】
この構成により、図11のメイン画面41Vを見た操作者は、立ち入り禁止領域、危険領域及び目標作業領域等の位置及び範囲と、検知された物体の位置と、下部走行体1の進行方向とを容易に把握でき、より安全に走行動作を実行できるようになる。
【0114】
空間認識装置70の検知結果は、図12に示すようなショベルの管理システムSYSを通じ、管理者及び他のショベルの操作者等と共有されてもよい。図12は、ショベルの管理システムSYSの構成例を示す概略図である。管理システムSYSは、ショベル100を管理するシステムである。本実施形態では、管理システムSYSは、主に、ショベル100、支援装置200及び管理装置300で構成される。管理システムSYSを構成するショベル100、支援装置200及び管理装置300はそれぞれ1台であってもよく、複数台であってもよい。本実施形態では、管理システムSYSは、1台のショベル100と、1台の支援装置200と、1台の管理装置300とを含む。
【0115】
支援装置200は、携帯端末装置であり、例えば、作業現場にいる作業者等が携帯するノートPC、タブレットPC又はスマートフォン等のコンピュータである。支援装置200は、ショベル100の操作者が携帯するコンピュータであってもよい。
【0116】
管理装置300は、固定端末装置であり、例えば、作業現場外の管理センタ等に設置されるサーバコンピュータである。管理装置300は、可搬性のコンピュータ(例えば、ノートPC、タブレットPC又はスマートフォン等の携帯端末装置)であってもよい。
【0117】
図12の管理システムSYSでは、ショベル100は、空間認識装置70が物体を検知した場合、その物体に関する情報(以下、「物体情報」とする。)を支援装置200及び管理装置300の少なくとも1つに送信する。物体情報は、例えば、物体の画像、物体のサイズ、物体の種類、物体の位置、及び、物体とショベルとの間の距離等の少なくとも1つを含む。そして、物体情報を受信した支援装置200及び管理装置300の少なくとも1つは、付属の表示装置において、物体情報に関する画像を表示する。
【0118】
物体情報に関する画像は、典型的には、図10及び図11のそれぞれにおける周囲監視画像表示領域41mに表示されるような画像である。そのため、支援装置200を利用する作業者、又は、管理装置300を利用する管理者等は、ショベル100の操作者が表示装置40の画像表示部41で視認するメイン画面41Vと同様の画面を視認できる。
【0119】
また、物体情報は、空間認識装置70等が取得する情報ばかりでなく、支援装置200等を通じて作業者が入力する情報であってもよい。この場合、支援装置200を通じて入力された情報は、無線通信を介してショベル100及び管理装置300の少なくとも1つに送信されてもよい。
【0120】
上述のような構成により、管理システムSYSは、ショベル100の外部に存在する操作者、作業者又は管理者等の管理システムSYSを利用する利用者がショベル100の周囲の状況を確認できるようにする。
【0121】
そのため、管理システムSYSを利用する利用者は、ショベル100が遠隔操作可能なショベルとして提供される場合、ショベル100を遠隔操作する際に、下部走行体1が何れの方向を向いているかを容易に確認できる。操作者は、キャビン10内でショベル100を操作する場合、下部走行体1を実際に視認することで下部走行体1の向きを確認できるが、ショベル100を遠隔操作する場合には、下部走行体1を実際に視認することができないため、下部走行体1の向きを確認できない場合がある。このような場合、遠隔操作を行う操作者は、例えば、支援装置200又は管理装置300に付属している表示装置に表示された情報を見ることで、下部走行体1の向きを確認できる。
【0122】
ショベル100は、空間認識装置70が検知した物体に近づくような走行操作が行われてしまった場合、物体情報に加え、ショベル100の操作に関する情報、及び、ショベル100の状態に関する情報等を支援装置200及び管理装置300の少なくとも1つに送信するように構成されていてもよい。物体にショベル100を近づける操作が行われた理由を管理者等が事後的に分析できるようにするためである。
【0123】
本願は、2017年12月27日に出願した日本国特許出願2017-252214号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0124】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 11a・・・オルタネータ 11b・・・スタータ 14・・・メインポンプ 14a・・・レギュレータ 14b・・・吐出圧センサ 14c・・・油温センサ 15・・・パイロットポンプ 17・・・コントロールバルブ 26・・・操作装置 26A・・・走行操作装置 29・・・操作圧センサ 30・・・コントローラ 31・・・判定部 32・・・警報部 33・・・画像生成部 40・・・表示装置 41・・・画像表示部 42・・・スイッチパネル 49・・・警報装置 49E・・・室外警報装置 49N・・・室内警報装置 70・・・空間認識装置 74・・・ECU 75・・・エンジン回転数調整ダイヤル 80・・・カメラ 80B・・・バックカメラ 80L・・・左カメラ 80R・・・右カメラ 85・・・向き検出装置 90・・・蓄電池 100・・・ショベル GA・・・ショベル図形 GB・・・カメラ画像 GD、GD1~GD4・・・画像
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
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図5
図6A
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