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特許7589893毛細血管撮像システム、毛細血管撮像システム用サーバ装置、及び毛細血管撮像プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】毛細血管撮像システム、毛細血管撮像システム用サーバ装置、及び毛細血管撮像プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
A61B5/107
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022023939
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120845
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】514034021
【氏名又は名称】あっと株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】武野 團
(72)【発明者】
【氏名】中野 讓
(72)【発明者】
【氏名】宮内 満
【審査官】喜々津 徳胤
(56)【参考文献】
【文献】特許第6379374(JP,B1)
【文献】特開2009-089348(JP,A)
【文献】特開2008-276115(JP,A)
【文献】特開2012-099888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の毛細血管の画像を複数撮像する撮像部から、前記複数の画像を取得する画像取得部と、
前記複数の画像について、合焦の程度を数値化して示す合焦評価値をそれぞれ算出する合焦評価値算出部と、
前記合焦評価値算出部によって算出された複数の前記合焦評価値のうち最も良好な合焦を示す合焦評価値を、前記合焦の程度が良好か否かを判定するための判定閾値として設定する判定閾値設定処理を実行する判定閾値設定部と、
前記判定閾値と前記各合焦評価値とを比較することによって、前記複数の画像のうち、合焦の程度が良好な画像を合焦画像として選択する合焦画像選択部とを備え、
前記合焦画像選択部は、前記判定閾値設定処理の後、前記画像取得部によって新たに取得された複数の画像のうちから、前記合焦の程度が良好な画像を前記合焦画像として選択する毛細血管撮像システム。
【請求項2】
前記合焦画像選択部は、前記判定閾値設定処理において前記最も良好な合焦を示す合焦評価値が得られた画像を、前記合焦画像としてさらに選択する請求項記載の毛細血管撮像システム。
【請求項3】
前記撮像部の撮像範囲のうち任意の領域範囲の指定を、評価対象領域として受け付ける評価対象領域受付部をさらに備え、
前記合焦評価値算出部は、前記複数の画像における前記評価対象領域に対して、前記各合焦評価値を算出する請求項1又は2に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項4】
前記撮像部は、ユーザがピントを調節可能であり、
前記撮像部による撮像期間中に、前記合焦評価値算出部によって算出された前記合焦評価値をリアルタイムで表示する合焦評価値表示部をさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項5】
前記撮像部は、ユーザがピントを調節可能であり、
前記ユーザに対し、前記ピントの調節を促す操作案内を報知する操作案内報知部をさらに備え、
前記撮像部は、前記操作案内が報知されている期間中に前記画像を繰り返し撮像する請求項1~4のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項6】
前記撮像部により撮像された画像をリアルタイムで表示する表示部をさらに備え、
前記合焦評価値算出部は、前記撮像部により撮像された画像の各画素の合焦の程度をリアルタイムで判定し、前記合焦の程度が予め設定された基準レベルを超える画素である合焦画素を、前記表示部にハイライトで表示させる請求項1~5のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項7】
複数の前記合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像の合焦評価値に基づき最良画像としてさらに選択する最良画像選択部をさらに備える請求項1~6のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項8】
前記各合焦画像のブレの程度を表すブレ評価値を算出するブレ評価値算出部と、
前記複数の前記合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像のブレ評価値に基づき最良画像としてさらに選択する最良画像選択部とをさらに備える請求項1~7のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項9】
前記各合焦画像における光源の映り込みの程度を表す映込評価値を算出する映込評価値算出部と、
前記複数の前記合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像の映込評価値に基づき最良画像としてさらに選択する最良画像選択部とをさらに備える請求項1~8のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項10】
複数の前記合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像の合焦評価値、前記各合焦画像のブレの程度を表すブレ評価値、及び前記各合焦画像における光源の映り込みの程度を表す映込評価値のうち少なくとも一つに基づき最良画像として選択する最良画像選択部をさらに備える請求項1~6のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項11】
前記合焦画像に基づいて、前記生物の健康状態を評価する健康状態評価部をさらに備える請求項1~10のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項12】
前記最良画像に基づいて、前記生物の健康状態を評価する健康状態評価部をさらに備える請求項7~10のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項13】
前記撮像部は、前記複数の画像を動画の各フレームとして撮像する請求項1~12のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項14】
前記合焦評価値算出部は、前記撮像部によって前記画像が撮像される都度、前記合焦評価値を算出し、
前記合焦画像選択部は、前記合焦評価値が算出される都度、前記画像の選択を実行する請求項1~13のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項15】
前記撮像部をさらに備える請求項1~14のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システム。
【請求項16】
生物の毛細血管の画像である複数の合焦画像の入力を受け付ける合焦画像受付部と、
前記複数の合焦画像について、合焦の程度を数値化して示す合焦評価値をそれぞれ算出する合焦評価値算出部と、
前記合焦評価値算出部によって算出された複数の前記合焦評価値のうち最も良好な合焦を示す合焦評価値を、前記合焦の程度が良好か否かを判定するための判定閾値として設定する判定閾値設定処理を実行する判定閾値設定部と、
前記判定閾値と前記各合焦評価値とを比較することによって、前記複数の合焦画像のうち、合焦の程度が良好な合焦画像を選択する合焦画像選択部と、
前記合焦画像選択部によって選択された複数の合焦画像のうち一つを、前記合焦評価値、前記各合焦画像のブレの程度を表すブレ評価値、及び前記各合焦画像における光源の映り込みの程度を表す映込評価値のうち少なくとも一つに基づき最良画像として選択する最良画像選択部とを備え
前記合焦画像選択部は、前記判定閾値設定処理の後、前記画像取得部によって新たに取得された複数の合焦画像のうちから、前記合焦の程度が良好な画像を選択する毛細血管撮像システム用サーバ装置。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1~14のいずれか1項に記載の毛細血管撮像システムとして機能させる毛細血管撮像プログラム。
【請求項18】
コンピュータを、請求項16に記載の毛細血管撮像システム用サーバ装置として機能させる毛細血管撮像プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛細血管を撮像する毛細血管撮像システム、毛細血管撮像システム用サーバ装置、及び毛細血管撮像プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体の毛細血管は、一般に、生活環境や外的要因により変化する。そのため、指先等の皮下毛細血管や眼底等の毛細血管の状態を観察、あるいは毛細血管画像を画像処理して数値化等による分析を行う事により、被験者の健康状態等を把握する事が出来る。毛細血管は極めて微小(太さ十数μm、長さ百数十μm、等)であり、肉眼では見る事はできないが、光学顕微鏡、又はデジタル型顕微鏡を用いて、これを観察する事ができる。
【0003】
そこで、指先の毛細血管を撮影した画像から健康状態を診断する指先血管観測装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6186663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人や動物を含む生物の毛細血管を撮影する場合、撮影対象は生きているため、撮影対象の指等を完全に静止させることが困難である。そのため、撮影対象のわずかな動きを避けることができない。一方、顕微鏡は拡大倍率が高く、ピントが合う範囲が狭いため、撮影対象がわずかに動いただけでピンボケになってしまう。ピンボケになった品質の低い画像に基づき健康状態を診断した場合、診断精度が低下する。
【0006】
本発明の目的は、合焦の程度が良好な毛細血管の画像を得ることが容易な毛細血管撮像システム、毛細血管撮像システム用サーバ装置、及び毛細血管撮像プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る毛細血管撮像システムは、生物の毛細血管の画像を複数撮像する撮像部から、前記複数の画像を取得する画像取得部と、前記複数の画像について、合焦の程度を数値化して示す合焦評価値をそれぞれ算出する合焦評価値算出部と、前記合焦の程度が良好か否かを判定するための判定閾値と前記各合焦評価値とを比較することによって、前記複数の画像のうち、合焦の程度が良好な画像を合焦画像として選択する合焦画像選択部とを備える。
【0008】
この構成によれば、生物の毛細血管を複数回撮像することにより得られた複数の画像のうち、合焦の程度が良好な画像を合焦画像として選択することができるので、生きている測定対象が動いた場合であっても、合焦の程度が良好な毛細血管の画像を得ることが容易となる。
【0009】
また、前記合焦評価値算出部によって算出された複数の前記合焦評価値のうち最も良好な合焦を示す合焦評価値を、前記判定閾値として設定する判定閾値設定処理を実行する判定閾値設定部をさらに備え、前記合焦画像選択部は、前記判定閾値設定処理の後、前記画像取得部によって新たに取得された複数の画像のうちから、前記合焦の程度が良好な画像を前記合焦画像として選択することが好ましい。
【0010】
毛細血管の画像を診断に用いる場合、毛細血管の特徴的な形状を把握可能なある程度の広さの領域内で、全体的に良好な画質の毛細血管画像が求められる。そのため、合焦の程度をある程度の広さの領域内で全体的に判定する必要があるが、毛細血管の形状や本数等は、個人個人や個々の動物毎に異なる。そのため、判定閾値を固定的に設定すると、合焦の程度が良好か否かを適切に判定できない場合がある。そこで、撮像対象の個体について撮像された複数の画像から得られた複数の合焦評価値のうち最も良好な合焦を示す合焦評価値を、判定閾値として設定し、その後に同一の個体から撮像された複数の画像から、その個体に対して設定された判定閾値に基づいて合焦画像を選択することによって、合焦の程度が良好な画像を合焦画像として選択する精度が向上する。
【0011】
また、前記合焦画像選択部は、前記判定閾値設定処理において前記最も良好な合焦を示す合焦評価値が得られた画像を、前記合焦画像としてさらに選択することが好ましい。
【0012】
判定閾値設定処理において最も良好な合焦を示す合焦評価値が得られた画像は、合焦の程度が良好な画像であると考えられる。従って、この画像を合焦画像として追加することによって、合焦画像の数を増やすことができる。
【0013】
また、前記撮像部の撮像範囲のうち任意の領域範囲の指定を、評価対象領域として受け付ける評価対象領域受付部をさらに備え、前記合焦評価値算出部は、前記複数の画像における前記評価対象領域に対して、前記各合焦評価値を算出することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ユーザが評価対象領域を設定することができるので、例えば毛細血管の先端部近傍等の、健康状態の評価のために重要な部分を評価対象領域として設定することによって、健康状態の評価のために重要な部分のピントが良好な画像を合焦画像として選択することが可能となる。
【0015】
また、前記撮像部は、ユーザがピントを調節可能であり、前記撮像部による撮像期間中に、前記合焦評価値算出部によって算出された前記合焦評価値をリアルタイムで表示する合焦評価値表示部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、ユーザがピントを合わすべく調節する際に、リアルタイムで表示された合焦評価値を確認しながらピントを合わすことができるので、より良好なピント合わせ操作をすることが容易となる。
【0017】
また、前記撮像部は、ユーザがピントを調節可能であり、前記ユーザに対し、前記ピントの調節を促す操作案内を報知する操作案内報知部をさらに備え、前記撮像部は、前記操作案内が報知されている期間中に前記画像を繰り返し撮像することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、操作案内に応じてユーザがピントを合わすべく調節している期間中に、複数の画像が撮像されるので、より合焦の程度が良好な画像が撮像される可能性が高まる。
【0019】
また、前記撮像部により撮像された画像をリアルタイムで表示する表示部をさらに備え、前記合焦評価値算出部は、前記撮像部により撮像された画像の各画素の合焦の程度をリアルタイムで判定し、前記合焦の程度が予め設定された基準レベルを超える画素である合焦画素を、前記表示部にハイライトで表示させることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、ユーザが、ピントが合っている箇所を知ることができる。
【0021】
また、複数の前記合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像の合焦評価値に基づき最良画像としてさらに選択する最良画像選択部をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、複数の合焦画像のうちから、さらに合焦評価値に基づき最良画像が選択されるので、より合焦の程度が良好な画像を得ることが可能となる。
【0023】
また、前記各合焦画像のブレの程度を表すブレ評価値を算出するブレ評価値算出部と、
【0024】
前記複数の前記合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像のブレ評価値に基づき最良画像としてさらに選択する最良画像選択部とをさらに備えることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、複数の合焦画像のうちから、さらにブレ評価値に基づき最良画像が選択されるので、よりブレの少ない良好な画像を得ることが可能となる。
【0026】
また、前記各合焦画像における光源の映り込みの程度を表す映込評価値を算出する映込評価値算出部と、前記複数の前記合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像の映込評価値に基づき最良画像としてさらに選択する最良画像選択部とをさらに備えることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、複数の合焦画像のうちから、さらに映込評価値に基づき最良画像が選択されるので、より光源の映り込みの少ない良好な画像を得ることが可能となる。
【0028】
また、複数の前記合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像の合焦評価値、前記各合焦画像のブレの程度を表すブレ評価値、及び前記各合焦画像における光源の映り込みの程度を表す映込評価値のうち少なくとも一つに基づき最良画像として選択する最良画像選択部をさらに備えることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、複数の合焦画像のうちから、さらに合焦評価値、ブレ評価値、及び映込評価値のうち少なくとも一つに基づき最良画像が選択されるので、より良好な画像を得ることが可能となる。
【0030】
また、前記合焦画像に基づいて、前記生物の健康状態を評価する健康状態評価部をさらに備えることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、合焦の程度が良好な毛細血管の画像に基づいて生物の健康状態を評価することができるので、健康状態の評価精度が向上する。
【0032】
また、前記最良画像に基づいて、前記生物の健康状態を評価する健康状態評価部をさらに備えることが好ましい。
【0033】
この構成によれば、合焦の程度がより良好な毛細血管の画像に基づいて生物の健康状態を評価することができるので、健康状態の評価精度が向上する。
【0034】
また、前記撮像部は、前記複数の画像を動画の各フレームとして撮像することが好ましい。
【0035】
この構成によれば、生物の毛細血管を動画で撮像することによって、複数の画像を撮像することができる。
【0036】
また、前記合焦評価値算出部は、前記撮像部によって前記画像が撮像される都度、前記合焦評価値を算出し、前記合焦画像選択部は、前記合焦評価値が算出される都度、前記画像の選択を実行することが好ましい。
【0037】
この構成によれば、撮像部による複数の画像の撮像期間中に、リアルタイムに合焦画像の選択が行われるので、画像が撮像されてから合焦画像が選択されるまでの時間が短縮される。
【0038】
また、前記撮像部をさらに備えることが好ましい。
【0039】
この構成によれば、撮像部が毛細血管撮像システムに含まれる。
【0040】
また、本発明に係る毛細血管撮像システム用サーバ装置は、生物の毛細血管の画像である複数の合焦画像の入力を受け付ける合焦画像受付部と、前記複数の合焦画像のうち一つを、前記各合焦画像の合焦の程度を数値化して示す合焦評価値、前記各合焦画像のブレの程度を表すブレ評価値、及び前記各合焦画像における光源の映り込みの程度を表す映込評価値のうち少なくとも一つに基づき最良画像として選択する最良画像選択部とを備える。
【0041】
この構成によれば、複数の合焦画像のうちから、さらに合焦評価値、ブレ評価値、及び映込評価値のうち少なくとも一つに基づき最良画像が選択されるので、より良好な画像を得ることが可能となる。
【0042】
また、本発明に係る毛細血管撮像プログラムは、コンピュータを、上述の毛細血管撮像システムとして機能させる。
【0043】
この毛細血管撮像プログラムによれば、コンピュータを、上述の毛細血管撮像システムとして機能させることができる。
【0044】
また、本発明に係る毛細血管撮像プログラムは、コンピュータを、上述の毛細血管撮像システム用サーバ装置として機能させる。
【0045】
この毛細血管撮像プログラムによれば、コンピュータを、上述の毛細血管撮像システム用サーバ装置として機能させることができる。
【発明の効果】
【0046】
このような構成の毛細血管撮像システム、毛細血管撮像システム用サーバ装置、及び毛細血管撮像プログラムは、合焦の程度が良好な毛細血管の画像を得ることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の一実施形態に係る毛細血管撮像システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1に示す顕微鏡カメラの一例を示す外観斜視図である。
図3図1に示す撮像処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図1に示す撮像処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図1に示すサーバ装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図1に示すディスプレイに表示される撮像画像の一例を示す説明図である。
図7図1に示すディスプレイの表示画面の一例を示す画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る毛細血管撮像システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
図1に示す毛細血管撮像システム1は、顕微鏡カメラ2(撮像部)、撮像処理装置3、及びサーバ装置4(毛細血管撮像システム用サーバ装置)を備えている。撮像処理装置3とサーバ装置4とは、ネットワーク5を介してデータ送受信可能に通信接続されている。
【0050】
顕微鏡カメラ2は、人体の毛細血管を顕微鏡で撮像するカメラである。図2は、図1に示す顕微鏡カメラ2の一例を示す外観斜視図である。図2に示す顕微鏡カメラ2は、大略的に、略円柱状の顕微鏡本体21、略板状の基台22、顕微鏡本体21と基台22とを連結する連結部23、及び顕微鏡本体21の角度を調節する調節ハンドル24を備えている。
【0051】
基台22には、人の指先をガイドするガイド部28が設けられている。ガイド部28には、指先の形状に沿うように窪んだ凹部281が形成されている。被験者が、凹部281に指先を置くことによって、指先がおおよそ位置決めされるようになっている。
【0052】
顕微鏡本体21の下端には対物レンズ25が設けられ、凹部281に置かれた被験者の指先が撮像されるようになっている。対物レンズ25の周囲には、被験者の指先を照明する照明部26が取り付けられている。
【0053】
顕微鏡本体21の内部には、顕微鏡の光学系と、顕微鏡で得られた像を撮像するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子が内蔵されている。顕微鏡本体21は、被験者の指先の画像、より詳しくは指先の毛細血管の画像を撮像する。顕微鏡本体21は、毛細血管の画像を、静止画像で複数枚連続撮像してもよく、各画像をフレームとして含む動画として撮像してもよい。顕微鏡本体21は、撮像素子によって撮像された画像を表す画像データを、ケーブル29を介して撮像処理装置3へ送信する。
【0054】
顕微鏡カメラ2としては、例えば、あっと(株)製毛細血管スコープSC-10を好適に用いることができる。なお、顕微鏡カメラ2は、毛細血管の画像を撮像可能であればよく、指先の画像を撮像するものに限らない。また、顕微鏡カメラ2は、人の毛細血管を撮像するものに限られず、動物等の生物の毛細血管を撮像するものであってもよい。
【0055】
撮像処理装置3へ送信する画像データの形式としては、種々の方式を用いることができ、例えばNTSC(National Television System Committee)方式を用いることができる。また、画像データを無線信号により撮像処理装置3へ送信してもよい。
【0056】
顕微鏡本体21には、ピント調節ハンドル27が設けられている。ユーザは、ピント調節ハンドル27を操作することによって、ピントを調節可能となっている。
【0057】
なお、ピントとは、レンズ等の光学系からの映像が鮮明に見える距離の事で、焦点あるいはフォーカスとも呼ぶ。また、ピントが合う事を「合焦」と呼ぶ。また、ピントが合っていない状態を、ピンボケまたはアウトフォーカスと呼ぶ。また、レンズでのピントが合う距離範囲を被写界深度と呼び、被写界深度は撮影距離が短い場合や、光学系の倍率が高い(焦点距離が長い等)に、特に浅く(狭く)なり、一般的にこの被写界深度の値は、100μm程度でしかない。この為、顕微鏡等では撮影対象が僅かに(撮影距離に対して)動いてしまうとピンボケになってしまう。
【0058】
また、ブレには、被写体ブレ、機器ブレ、及び手ブレ等が含まれる。被写体ブレは、レンズ光学系等で撮影を行う平面(撮像面)上での被写体の位置が、時間軸に応じて二次元的に移動(縦、横、斜め等)にズレて移動してしまう事をいう。機器ブレは、顕微鏡等の撮像機器側での振動等の発生により被写体の位置が時間軸に応じて移動してしまう事をいう。手ブレは、顕微鏡等の撮像機器を撮影者が(手持ち等で)保持する場合に、撮影者の身体的な動きによって被写体の位置が移動することをいう。撮影者が完全に撮像機器を保持していない場合でも、機器に触れたり操作をして振動を与えることによって、手ブレが生じることもある。
【0059】
撮像(撮影は)、ある一定の時間(シャッター速度)の期間中(例:数十分の1秒~数百分の1秒)において行われる為、上記のブレが発生していると、そのシャッター速度での短い時間内においても、被写体が動いている事となり、撮影画像の鮮明度が低下する。このような状態が、ブレが発生している状態となる。
【0060】
図1を参照して、撮像処理装置3は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成されている。撮像処理装置3は、演算部30、外部I/F回路31(画像取得部)、ディスプレイ32(表示部)、キーボード33、マウス34、及び通信I/F回路35を備える。
【0061】
外部I/F回路31は、顕微鏡カメラ2から、複数の画像を示す画像データを受信可能なインターフェイス回路である。通信I/F回路35は、ネットワーク5を介してサーバ装置4と通信可能な通信インターフェイス回路である。通信I/F回路35は、有線通信回路であってもよく、無線通信回路であってもよい。ディスプレイ32は、顕微鏡カメラ2により撮像された画像をリアルタイムで表示する。
【0062】
演算部30は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性の記憶装置、タイマ回路、及びこれらの周辺回路等を備えて構成されている。そして、演算部30は、例えば上述の記憶装置に記憶された第一毛細血管撮像プログラムを実行することによって、評価対象領域受付部301、合焦評価値算出部302、判定閾値設定部303、合焦評価値表示部304、操作案内報知部305、合焦画像選択部306、及びブレ評価値算出部307として機能する。
【0063】
評価対象領域受付部301は、顕微鏡カメラ2の撮像範囲のうち任意の領域範囲の指定を、評価対象領域として受け付ける。
【0064】
合焦評価値算出部302は、外部I/F回路31で取得された複数の画像について、合焦の程度を数値化して示す合焦評価値Fvをそれぞれ算出する。判定閾値設定部303は、合焦評価値算出部302によって算出された複数の合焦評価値Fvのうち最も良好な合焦を示す合焦評価値Fvを、判定閾値Jvとして設定する判定閾値設定処理を実行する。
【0065】
合焦評価値表示部304は、顕微鏡カメラ2による撮像期間中に、合焦評価値算出部302によって算出された合焦評価値Fvを、ディスプレイ32にリアルタイムで表示する。操作案内報知部305は、ユーザに対し、顕微鏡カメラ2の調節を促す操作案内を報知する。操作案内は、ディスプレイ32に表示されてもよく、音声により顕微鏡カメラ2の調節を促すものであってもよい。
【0066】
合焦画像選択部306は、合焦の程度が良好か否かを判定するための判定閾値Jvと各合焦評価値Fvとを比較することによって、複数の画像のうち、合焦の程度が良好な画像を合焦画像FPとして選択する。
【0067】
ブレ評価値算出部307は、各合焦画像FPのブレの程度を表すブレ評価値Bvを算出する。合焦画像選択部306は、各合焦画像FPと、各合焦画像FPの合焦評価値Fvと、各合焦画像FPのブレ評価値Bvとを、ネットワーク5を介してサーバ装置4へ送信する。
【0068】
サーバ装置4は、演算部40と、通信I/F回路44(合焦画像受付部)とを備える。通信I/F回路44は、ネットワーク5を介して通信I/F回路35と通信可能な通信インターフェイス回路である。通信I/F回路44は、有線通信回路であってもよく、無線通信回路であってもよい。通信I/F回路44は、撮像処理装置3から送信された複数の合焦画像FPの、サーバ装置4への入力を受け付ける。
【0069】
演算部40は、例えば所定の演算処理を実行するCPU、データを一時的に記憶するRAM、HDDやSSD等の不揮発性の記憶装置、タイマ回路、及びこれらの周辺回路等を備えて構成されている。そして、演算部40は、例えば上述の記憶装置に記憶された第二毛細血管撮像プログラムを実行することによって、映込評価値算出部41、最良画像選択部42、及び健康状態評価部43として機能する。
【0070】
映込評価値算出部41は、撮像処理装置3から送信された各合焦画像FPにおける光源の映り込みの程度を表す映込評価値Rvを算出する。
【0071】
最良画像選択部42は、撮像処理装置3から送信された複数の合焦画像FPのうち一つを、各合焦画像FPの合焦評価値Fv、各合焦画像FPのブレの程度を表すブレ評価値Bv、及び各合焦画像FPにおける光源の映り込みの程度を表す映込評価値Rvのうち少なくとも一つに基づき最良画像BPとして選択する。
【0072】
健康状態評価部43は、最良画像BPに基づいて、被験者の健康状態を評価する。健康状態評価部43による健康状態の評価方法としては、公知の種々の方法を用いることができ、例えば特許第6186663号公報や、特許第6906188号公報等に記載の方法を用いることができる。
【0073】
次に、上述のように構成された毛細血管撮像システム1の動作について説明する。図3図4は、図1に示す撮像処理装置3の動作の一例を示すフローチャートであり、第一毛細血管撮像プログラムの処理の一例に相当する。
【0074】
まず、顕微鏡カメラ2のガイド部28に被験者が指先を載せた状態で、顕微鏡カメラ2が毛細血管の動画での撮像を開始し(ステップS1)、その撮像画像がディスプレイ32に表示される。次に、評価対象領域受付部301は、顕微鏡カメラ2の撮像範囲のうち任意の領域範囲の指定を、評価対象領域として受け付ける(ステップS2)。
【0075】
図6は、図1に示すディスプレイ32に表示される撮像画像Gの一例を示す説明図である。図6に示す撮像画像Gには、六本の毛細血管Kが写っている。評価対象領域受付部301は、例えば図6に示す評価対象領域Aのように、ユーザがマウス34を操作して選択した矩形状の領域を、評価対象領域Aとして受け付ける。
【0076】
次に、操作案内報知部305は、ユーザのピント調節を促す操作案内をディスプレイ32に表示することによって報知する(ステップS3)。図7は、図1に示すディスプレイ32の表示画面DPの一例を示す画面図である。表示画面DPには、撮像画像Gの横に、ピント調節を促す操作案内Mとして、例えば「ピントを合わせてください」というメッセージが表示されている。なお、表示により報知する方法に限られず、音によってピント調節を促す操作案内を報知してもよい。
【0077】
次に、判定閾値設定部303は、経過時間t1の計時を開始する(ステップS4)。次に、合焦評価値算出部302は、顕微鏡カメラ2によって撮像された動画画像における各フレームの画像であるフレーム画像の合焦評価値Fvを、評価対象領域Aに対してリアルタイムで、すなわちフレーム画像が得られる都度算出する(ステップS5)。
【0078】
具体的には、合焦評価値算出部302は、各フレーム画像に対して、下記(1)~(4)を実行することによって、各フレーム画像の合焦評価値Fvを算出する。
【0079】
(1)フレーム画像をグレースケール化、(2)グレースケール化したフレーム画像の輪郭を抽出、(3)評価対象領域A内において、輪郭として抽出された画素と、その画素に対して輪郭の外側に隣接する画素の輝度値の差を、輝度差Lsとして算出、(4)算出された各輝度差Lsのうち、予め設定された基準値refを超える輝度差Lsの合計を、合焦評価値Fvとして算出。
【0080】
上記(2)の輪郭抽出方法としては、例えばラプラシアンフィルタ等の、公知の輪郭抽出方法を用いることができる。上記(3)の輝度差Lsが大きければ、輪郭が明瞭であることを意味し、ピントが良好であると判断できる。
【0081】
上記(4)によれば、基準値refによって設定された合焦の程度を超える、ピントが良好な評価対象領域A内の画素について輝度差Lsが合計された値が合焦評価値Fvとして算出される。その結果、合焦評価値Fvは、毛細血管画像の合焦の程度を、評価対象領域Aの全域に渡って全体的に評価する指標となる。
【0082】
上記(4)において、基準値refを超える輝度差Lsが得られた画素である合焦画素Pの座標を、後述するブレ評価値Bvのために記憶しておく。
【0083】
なお、合焦評価値Fvは、合焦の程度を数値化して示すものであればよく、上記(1)~(4)によって算出されたものに限らない。また、上記(1)~(4)によって算出された合焦評価値Fvは、値が大きいほど合焦の程度が良好であることを示しているが、合焦評価値Fvとして、値が小さいほど合焦の程度が良好な指標を用いてもよい。合焦評価値Fvの算出方法としては、ピントを評価する種々の公知技術を用いることができる。
【0084】
基準値refは、画素の合焦の程度について予め設定された基準レベルの一例に相当うし、合焦画素Pは、合焦の程度が予め設定された基準レベルを超える画素の一例に相当する。合焦評価値算出部302は、例えば図6に示すように、合焦画素Pを、ハイライトで明るく表示するなどしてリアルタイムでディスプレイ32に表示してもよい。これにより、ピント操作を行っているユーザが、ピントが合っている箇所を知ることができる。
【0085】
毛細血管の形状は曲がりくねっており、顕微鏡カメラ2のガイド部28に指先を載せたとしても、顕微鏡カメラ2の撮像範囲内で毛細血管全体を顕微鏡カメラ2の対物レンズから等距離に配置することはできない。そのため、毛細血管全体にピントを合わすことは困難である。
【0086】
そこで、評価対象領域受付部301を備えて評価対象領域Aを設定可能とすることによって、合焦評価値Fvを、例えば毛細血管の先端部近傍等の、健康状態の評価のために重要な部分の合焦の程度を表す指標とすることができる。その結果、後述する合焦画像選択部306及び最良画像選択部42は、健康状態の評価のために重要な部分のピントが良好な画像を選択することが可能となる。
【0087】
ステップS5では、処理対象のフレーム画像の直前のフレーム画像を、後述する直前画像を取得可能とするために記憶しておく。
【0088】
次に、合焦評価値表示部304は、合焦評価値算出部302によって算出された合焦評価値Fvをリアルタイムでディスプレイ32に表示する(ステップS6)。合焦評価値表示部304は、例えば図7に示すように、合焦評価値Fvを、バーの本数でグラフ化して示してもよく、合焦評価値Fvをそのまま数値で表示してもよい。顕微鏡カメラ2による撮像期間中にユーザがピント操作を行っている最中に、リアルタイムで合焦評価値Fvを表示することによって、ユーザによるピント合わせ精度を向上させることができる。
【0089】
次に、判定閾値設定部303は、合焦評価値Fvの算出された一つのフレーム画像をその合焦評価値Fvと紐付けて合焦画像候補として記憶し、より値の大きな合焦評価値Fvが算出される都度、合焦画像候補を、その合焦評価値Fvと共にその合焦評価値Fvが大きな画像に入れ替える(ステップS7)。その結果、合焦評価値Fvが最大のフレーム画像が、最大の合焦評価値Fvと紐付られて合焦画像候補として記憶される。
【0090】
次に、ブレ評価値算出部307は、合焦画像候補の直前のフレーム、すなわち合焦画像候補の直前に撮像された直前画像と、合焦画像候補とに基づいて、合焦画像候補のブレ評価値Bvを算出し、そのブレ評価値Bvを合焦画像候補と紐づけて記憶する(ステップS8)。
【0091】
具体的には、例えば、上記(4)において記憶しておいた、基準値refを超える輝度差Lsが得られた合焦画素Pの座標に基づいて、ブレ評価値Bvを算出する。すなわち、直前画像における合焦画素Pの座標と、合焦画像候補における合焦画素Pの座標との位置を比較し、両画像間における互いに対応する画素間での座標の差の合計値を、合焦画像候補のブレ評価値Bvとして算出する。これにより、ブレ評価値Bvがゼロのとき合焦画像候補はブレが無く、ブレ評価値Bvが大きいほど、合焦画像候補のブレが大きいことを示すことになる。
【0092】
なお、顕微鏡カメラ2が、NTSC等のインターレース方式で撮像する場合、奇数ラインの画像と偶数ラインの画像とが交互に取得される。この場合、前後の奇数ラインの画像と偶数ラインの画像とに基づいてブレ評価値Bvを算出すればよい。ブレ評価値Bvを算出する際、奇数ラインと偶数ラインの座標位置のずれを補正した上で上述の座標の差を算出してもよい。
【0093】
なお、ブレ評価値Bvは、画像のブレの程度を表していればよく、ブレが大きいほどブレ評価値Bvが大きくなる例に限られず、ブレが小さいほどブレ評価値Bvが大きくなってもよい。
【0094】
また、直前画像における合焦画素Pの座標と、合焦画像候補における合焦画素Pの座標との位置を比較することによってブレ評価値Bvを算出する例に限らない。ブレ評価値Bvの算出方法としては、二つの画像(直前画像と合焦画像候補)間の相関、いわゆるパターンマッチングを行うための種々の公知の手法を用いることができ、例えばピアソンの積関率相関係数、SAD(Sum of Absolute Difference)、SSD(Sum of Squared Difference)、NCC(Normalized Cross-Correlation)、及びZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)等を用いることができる。
【0095】
次に、判定閾値設定部303は、経過時間t1と、予め設定された予備時間ts1とを比較する(ステップS9)。予備時間ts1としては、例えば10秒程度の時間を固定的に設定してもよく、任意の時間を設定可能としてもよい。経過時間t1が予備時間ts1以下(ステップS9でNO)であれば再びステップS5~S9を繰り返し、経過時間t1が予備時間ts1を超えていれば(ステップS9でYES)、判定閾値設定部303は、合焦画像候補の合焦評価値Fvを判定閾値Jvとして設定する(ステップS11)。
【0096】
これにより、予備時間ts1の間に撮像されたすべての画像の中で、最も良好な合焦を示す合焦評価値Fvが、判定閾値Jvとして設定される。ステップS7,S11は、判定閾値設定処理の一例に相当する。
【0097】
次に、合焦画像選択部306は、合焦画像候補として記憶されている画像を合焦画像FPとして選択する(ステップS12)。これにより、予備時間ts1の間に撮像されたすべての画像の中で、最もピントが良好な画像が、合焦画像FPとして選択される。
【0098】
次に、合焦画像選択部306は、経過時間t2の計時を開始する(ステップS13)。
【0099】
次に、合焦評価値算出部302は、ステップS5と同様、顕微鏡カメラ2によって撮像された動画画像における各フレームの画像であるフレーム画像の合焦評価値Fvを、評価対象領域Aに対してリアルタイムで、すなわちフレーム画像が得られる都度算出する(ステップS14)。
【0100】
次に、合焦評価値表示部304は、ステップS6と同様、合焦評価値算出部302によって算出された合焦評価値Fvをリアルタイムでディスプレイ32に表示する(ステップS15)。
【0101】
次に、合焦画像選択部306は、判定閾値Jv以上の合焦評価値Fvが算出される都度、その合焦評価値Fvが算出された画像を合焦画像FPとして選択し、記憶する(ステップS16)。
【0102】
人の毛細血管は、個人個人でその本数、形状、太さ等の状態が異なる。人以外の動物等の生物の毛細血管も同様である。そのため、上述の(1)~(4)によって合焦評価値Fvを算出する際に、被験者の毛細血管の状態によって輪郭として抽出される画素数が異なる。その結果、合焦の程度が同等の画像であっても被験者によって、異なった合焦評価値Fvが算出される。そのため、判定閾値Jvを固定的に設定すると、被験者によっては適切にピントが合った画像を選択できないおそれがある。
【0103】
しかしながら、ステップS4~S11によれば、被験者毎の毛細血管の状態に応じた判定閾値Jvを設定することができる。その結果、ステップS16において、合焦の程度が良好な、ピントの合った毛細血管の画像が、合焦画像FPとして選択される確実性が向上する。
【0104】
次に、ブレ評価値算出部307は、合焦画像FPの直前のフレーム、すなわち合焦画像FPの直前に撮像された直前画像と、合焦画像FPとに基づいて、合焦画像FPのブレ評価値Bvを算出し、そのブレ評価値Bvを合焦画像FPと紐づけて記憶する(ステップS17)。ステップS17の処理は、ステップS8の合焦画像候補の代わりに合焦画像FPを用いる点を除いてステップS8と同様である。
【0105】
次に、合焦画像選択部306は、経過時間t2と、予め設定された本撮影時間ts2とを比較する(ステップS18)。本撮影時間ts2としては、例えば20~40秒程度の時間を固定的に設定してもよく、任意の時間を設定可能としてもよい。
【0106】
経過時間t2が本撮影時間ts2以下(ステップS18でNO)であれば再びステップS14~S18を繰り返し、経過時間t2が本撮影時間ts2を超えていれば(ステップS18でYES)、合焦画像選択部306は、すべての合焦画像FPと、各合焦画像FPの合焦評価値Fv及びブレ評価値Bvとを、通信I/F回路35を介してサーバ装置4へ送信する(ステップS19)。
【0107】
これにより、合焦画像FPが判定閾値Jv以上の、合焦の程度が良好と判定されたすべての画像と、その各合焦画像FPの合焦評価値Fv及びブレ評価値Bvとが、サーバ装置4へ送信される。
【0108】
以上、ステップS1~S19によれば、判定閾値Jv以上の合焦評価値Fvを有する合焦の程度が良好な合焦画像FPが得られるから、合焦の程度が良好な毛細血管の画像を得ることが容易となる。
【0109】
次に、サーバ装置4の動作について説明する。図5は、図1に示すサーバ装置4の動作の一例を示すフローチャートであり、第二毛細血管撮像プログラムの処理の一例に相当する。まず、通信I/F回路44は、撮像処理装置3から送信された、複数の合焦画像FPと、各合焦画像FPの合焦評価値Fv及びブレ評価値Bvとを受信することにより取得する(ステップS21)。
【0110】
次に、映込評価値算出部41は、通信I/F回路44で受信された各合焦画像FPの映込評価値Rvを算出する(ステップS22)。図2に示すように、顕微鏡カメラ2は、照明部26によって被験者の指先を照明して撮像する。その際、照明部26の照明光が、例えば図6に示す映り込みRのように、撮像画像Gに映り込む場合がある。映り込みRは、画像品質を低下させ、撮像画像Gに基づく健康状態の評価精度を低下させる。
【0111】
そこで、映込評価値算出部41は、各合焦画像FPの画像品質を評価するための評価指標の一つとして、映込評価値Rvを算出する。
【0112】
例えば、映込評価値算出部41は、各合焦画像FPに対して、下記(A)~(D)を実行することによって、各合焦画像FPの映込評価値Rvを算出する。
【0113】
(A)合焦画像FPをグレースケール化、(B)グレースケール化した合焦画像FPのの各画素の平均輝度値Laveを算出、(C)平均輝度値Laveよりも、予め設定した映込判定値Rref以上輝度の高い画素を、映込画素とする、(D)映込画素の輝度値の合計を、その合焦画像FPの映込評価値Rvとする。
【0114】
(A)~(D)によれば、映込評価値Rvが大きいほど、合焦画像FPへの映り込みが多いことを示すことになる。映込判定値Rrefは、例えば実験結果や標準偏差等に基づいて適宜設定すればよい。
【0115】
なお、映込評価値Rvは、合焦画像FPにおける光源の映り込みの程度を表す指標であればよく、映込評価値Rvが大きいほど合焦画像FPへの映り込みが多いことを示す例に限られず、映込評価値Rvが小さいほど合焦画像FPへの映り込みが多いことを示すものであってもよい。
【0116】
次に、最良画像選択部42は、通信I/F回路44で受信された、複数の合焦画像FP、各合焦画像FPの合焦評価値Fv、及び各合焦画像FPのブレ評価値Bvと、映込評価値算出部41で算出された各合焦画像FPの映込評価値Rvとに基づいて、複数の合焦画像FPのうち一つを最良画像BPとして選択する(ステップS23)。
【0117】
合焦評価値Fv、ブレ評価値Bv、及び映込評価値Rvに基づいて最良画像BPを選択する方法としては、例えば、各合焦画像FPについて、下記の画像評価値Gvを算出し、最も画像評価値Gvが大きな合焦画像FPを最良画像BPとして選択してもよい。
【0118】
画像評価値Gv=Fv-Bv-Rv ・・・(1)
【0119】
上記式(1)は、値が大きいほど良好であることを示す合焦評価値Fvについては加算、値が小さいほど良好であることを示すブレ評価値Bv及び映込評価値Rvについては、減算することによって、値が大きいほど画像品質が高いことを示す画像評価値Gvを算出する。
【0120】
また、画像評価値Gvの別の算出方法としては、例えば、下記の式(2)を用いることができる。
【0121】
画像評価値Gv=aFv-bBv-cRv ・・・(2)
【0122】
a,b,cは係数である。
【0123】
式(2)によれば、合焦評価値Fv、ブレ評価値Bv、及び映込評価値Rvの重要度に応じて、重みづけをすることができる。例えば、a=0.7、b=0.2、c=0.1とすることができる。
【0124】
なお、画像評価値Gvは、値が小さいほど画像品質が高いことを示すものであってもよく、その場合、最も画像評価値Gvが小さな合焦画像FPを最良画像BPとして選択すればよい。
【0125】
以上、ステップS21~S23によれば、合焦の程度が良好な合焦画像FPのうち、さらに、ピント、ブレ、及び照明光の映り込みの観点から、画質の良好な最良画像BPを得ることができるから、合焦の程度のみならず、総合的に画質の良好な毛細血管の画像を得ることが容易となる。
【0126】
次に、健康状態評価部43は、最良画像BPに基づき被験者の健康状態を評価して(ステップS24)、処理を終了する。健康状態評価部43は、その評価結果を図略のディスプレイに表示してもよく、通信I/F回路44を介して撮像処理装置3等へ送信してもよい。ステップS24によれば、画質の良好な最良画像BPに基づき被験者の健康状態を評価することができるので、健康状態の評価精度が向上する。
【0127】
なお、顕微鏡カメラ2が、ユーザがピント調節ハンドル27を操作してピントを合わせる例を示したが、顕微鏡カメラ2は、公知のオートフォーカス機構によって、ピントを合わせる構成であってもよい。そして、オートフォーカス機構によるピント調節が行われている期間中に、顕微鏡カメラ2が、動画又は複数の静止画像を撮像する構成であってもよい。また、毛細血管撮像システム1は、顕微鏡カメラ2を備えていなくてもよい。
【0128】
また、毛細血管撮像システム1は、健康状態評価部43を備えず、ステップS24を実行しなくてもよい。また、毛細血管撮像システム1は、評価対象領域受付部301を備えず、ステップS2を実行しなくてもよい。この場合、合焦評価値算出部302は、画像全域を対象に合焦評価値Fvを算出してもよく、予め設定された評価対象領域Aに対して合焦評価値Fvを算出してもよい。
【0129】
また、毛細血管撮像システム1は、合焦評価値表示部304を備えず、ステップS15を実行しなくてもよく、操作案内報知部305を備えず、ステップS3を実行しなくてもよい。
【0130】
また、毛細血管撮像システム1は、映込評価値算出部41を備えず、ステップS22を実行しなくてもよい。この場合、最良画像選択部42は、合焦評価値Fv、及びブレ評価値Bvに基づいて最良画像BPを選択すればよい。
【0131】
また、毛細血管撮像システム1は、ブレ評価値算出部307を備えず、ステップS17を実行しなくてもよい。この場合、最良画像選択部42は、合焦評価値Fv、及び映込評価値Rvに基づいて最良画像BPを選択すればよい。あるいは、最良画像選択部42は、合焦評価値Fvのみに基づいて、合焦評価値Fvが最大の合焦画像FPを最良画像BPとして選択してもよい。
【0132】
また、最良画像選択部42は、合焦評価値Fvを用いることなく、ブレ評価値Bv及び映込評価値Rvのうち少なくとも一つに基づき最良画像BPを選択してもよい。
【0133】
また、毛細血管撮像システム1は、最良画像選択部42、映込評価値算出部41、及びブレ評価値算出部307を備えず、ステップS23,S22,S17を実行しなくてもよい。最良画像BPを選択しなくても、合焦画像FP自体、合焦の程度が良好な毛細血管の画像である。この場合、健康状態評価部43は、合焦画像FPに基づいて、被験者等の健康状態を評価すればよい。
【0134】
また、合焦画像選択部306は、ステップS12を実行しなくてもよい。また、毛細血管撮像システム1は、判定閾値設定部303を備えず、ステップS5~S12を実行しなくてもよい。この場合、合焦画像選択部306は、予め設定された判定閾値Jvに基づいて合焦画像FPを選択すればよい。
【0135】
また、毛細血管撮像システム1は、サーバ装置4を備えていなくてもよく、撮像処理装置3のみで毛細血管撮像システム1を構成してもよい。また、撮像処理装置3が、映込評価値算出部41、最良画像選択部42、及び健康状態評価部43のうち少なくとも一つを備えてもよい。この場合、第一毛細血管撮像プログラムと第二毛細血管撮像プログラムとを、一つの毛細血管撮像プログラムとして構成してもよい。
【0136】
また、サーバ装置4が、評価対象領域受付部301、合焦評価値算出部302、判定閾値設定部303、合焦評価値表示部304、操作案内報知部305、合焦画像選択部306、及びブレ評価値算出部307を備え、毛細血管撮像システム1は、撮像処理装置3を備えていなくてもよい。そして、顕微鏡カメラ2を、ネットワーク5を介してサーバ装置4の通信I/F回路44に接続してもよい。この場合、通信I/F回路44は、画像取得部の一例に相当する。
【0137】
また、合焦評価値算出部302が、顕微鏡カメラ2によってフレーム画像が撮像される都度、合焦評価値Fvを算出し、合焦画像選択部306が、合焦評価値Fvが算出される都度、画像の選択を実行し、すなわちリアルタイムで処理を行う例を示したが、毛細血管撮像システム1は、リアルタイムで処理を行う例に限らない。毛細血管撮像システム1は、顕微鏡カメラ2によって、動画、又は複数の静止画像が撮像された後、事後的にその動画、又は複数の静止画像から、合焦画像FP、及び最良画像BPを選択してもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 毛細血管撮像システム
2 顕微鏡カメラ(撮像部)
3 撮像処理装置
4 サーバ装置(毛細血管撮像システム用サーバ装置)
5 ネットワーク
21 顕微鏡本体
22 基台
23 連結部
24 調節ハンドル
25 対物レンズ
26 照明部
27 ピント調節ハンドル
28 ガイド部
29 ケーブル
30 演算部
31 外部I/F回路(画像取得部)
32 ディスプレイ(表示部)
33 キーボード
34 マウス
35 通信I/F回路
40 演算部
41 映込評価値算出部
42 最良画像選択部
43 健康状態評価部
44 通信I/F回路(合焦画像受付部)
281 凹部
301 評価対象領域受付部
302 合焦評価値算出部
303 判定閾値設定部
304 合焦評価値表示部
305 操作案内報知部
306 合焦画像選択部
307 ブレ評価値算出部
A 評価対象領域
BP 最良画像
Bv ブレ評価値
DP 表示画面
FP 合焦画像
Fv 合焦評価値
G 撮像画像
Gv 画像評価値
Jv 判定閾値
K 毛細血管
Lave 平均輝度値
Ls 輝度差
M 操作案内
P 合焦画素
R 映り込み
Rref 映込判定値
Rv 映込評価値
ref 基準値
t1,t2 経過時間
ts1 予備時間
ts2 本撮影時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7