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特許7589895高分子分散型液晶装置、高分子分散型液晶パネルの駆動方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】高分子分散型液晶装置、高分子分散型液晶パネルの駆動方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/133 20060101AFI20241119BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20241119BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G02F1/133 525
G02F1/1334
G02F1/133 505
E06B9/24 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020124660
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022021200
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森 重恭
(72)【発明者】
【氏名】大西 義浩
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-186529(JP,A)
【文献】特開2014-204550(JP,A)
【文献】登録実用新案第3226599(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に設けられた一対の透明電極と、
前記一対の透明電極の間に高分子分散型液晶が充填されてなる液晶層と、
前記一対の透明電極の間に電圧を印加することにより、前記液晶層を非散乱状態又は散乱状態とする駆動回路と、を備えた高分子分散型液晶装置であって、
前記駆動回路は、前記一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を印加開始後、所定の時間が経過した後に、前記直流電圧を非印加にし、前記非印加にした後、次に前記一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、前記一対の透明電極の間への累積印加時間が短い極性の直流電圧を印加する
ことを特徴とする高分子分散型液晶装置。
【請求項2】
前記所定の時間は5分以下である
ことを特徴とする請求項に記載の高分子分散型液晶装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記非印加にした後、次に前記一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、前記所定の極性とは反対の極性の直流電圧を印加する
ことを特徴とする請求項に記載の高分子分散型液晶装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記非印加にした後、次に前記一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、前記一対の透明電極の間への累積印加時間が短い極性の直流電圧を印加することを特徴とする請求項に記載の高分子分散型液晶装置。
【請求項5】
前記駆動回路による前記直流電圧の印加を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記非印加にした後、前記駆動回路が次に前記一対の透明電極の間に印加する直流電圧の極性を決定する
ことを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載の高分子分散型液晶装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定の極性とは反対の極性、又は前記一対の透明電極の間への累積印加時間が短い極性の何れか一方を決定する
ことを特徴とする請求項に記載の高分子分散型液晶装置。
【請求項7】
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に設けられた一対の透明電極と、
前記一対の透明電極の間に高分子分散型液晶が充填されてなる液晶層と、
前記一対の透明電極の間に電圧を印加することにより、前記液晶層を非散乱状態又は散乱状態とする駆動回路と、を備えた高分子分散型液晶パネルの駆動方法であって、
駆動回路により、前記一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を印加開始後、所定の時間が経過した後に、前記直流電圧を非印加にし、前記非印加にした後、次に前記一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、前記一対の透明電極の間への累積印加時間が短い極性の直流電圧を印加する
ことを特徴とする高分子分散型液晶パネルの駆動方法。
【請求項8】
一対の透明基板と、
前記一対の透明基板の間に設けられた一対の透明電極と、
前記一対の透明電極の間に高分子分散型液晶が充填されてなる液晶層と、
前記一対の透明電極の間に電圧を印加することにより、前記液晶層を非散乱状態又は散乱状態とする駆動回路と、を備えた高分子分散型液晶装置で実行されるプログラムであって、
前記駆動回路が、前記一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を印加開始後、所定の時間が経過した後に、前記直流電圧を非印加にし、前記非印加にした後、次に前記一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、前記一対の透明電極の間への累積印加時間が短い極性の直流電圧を印加する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子分散型液晶装置、高分子分散型液晶パネルの駆動方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の透明電極の間に高分子分散型液晶が充填されてなる液晶層を有して構成された高分子分散型液晶パネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
高分子分散型液晶パネルは、一対の透明電極に対して交流電圧が印加されていない状態において、液晶分子の配列が不規則な状態となり、光を散乱させる状態(散乱状態)となる。これにより、高分子分散型液晶パネルは、全面的に白色化して、一方の側から他方の側を視認できなくなるようにすることができる。一方、高分子分散型液晶パネルは、一対の透明電極に対して交流電圧を印加することにより、高分子分散型液晶に含まれている液晶分子の配列が規則的な状態となり、光を透過させる状態(非散乱状態)となる。
【0004】
このような高分子分散型液晶パネルは、フィルム状とすることが可能であるため、調光フィルムとして利用されている。例えば、高分子分散型液晶パネルを既存の窓ガラスに貼りつけることで、ブラインドシャッタとして機能させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-116273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の高分子分散型液晶装置は、家庭やオフィス等で容易に使用が可能な商用交流電源により駆動可能とされている。しかしながら、商用交流電源による駆動は、周波数が高いため消費電力が大きく、環境負荷が大きい場合がある。また、商用交流電源の周波数は、地域により周波数が異なるので、電圧が安定しない場合がある。
【0007】
本発明は、低消費電力で、且つ安定した駆動を可能とする高分子分散型液晶装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述課題を解決するために、高分子分散型液晶装置は、一対の透明基板と、前記一対の透明基板の間に設けられた一対の透明電極と、前記一対の透明電極の間に高分子分散型液晶が充填されてなる液晶層と、前記一対の透明電極の間に電圧を印加することにより、前記液晶層を非散乱状態又は散乱状態とする駆動回路と、を備えた高分子分散型液晶装置であって、前記駆動回路は、前記一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を印加開始後、所定の時間が経過した後に、前記直流電圧を非印加にし、前記非印加にした後、次に前記一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、前記一対の透明電極の間への累積印加時間が短い極性の直流電圧を印加することを特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低消費電力で、かつ安定した駆動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る高分子分散型液晶装置の全体構成例を示す正面図である。
図2図1に示す高分子分散型液晶装置のA-A断面図である。
図3】実施形態に係る高分子分散型液晶パネルの正面図である。
図4図3に示す高分子分散型液晶パネルのA-A断面図である。
図5図3に示す高分子分散型液晶パネルのB-B断面図である。
図6】実施形態に係る駆動回路及び制御回路の構成例を示すブロック図である。
図7】第1電流制限回路の構成の一例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る制御部の機能構成例を示すブロック図である。
図9】第1実施形態に係る高分子分散型液晶装置の動作例のフロー図である。
図10】点滅モードでの高分子分散型液晶装置の動作例のフロー図である。
図11】第1実施形態に係る高分子分散型液晶装置の動作例を示すタイミング図であり、(a)は第1透明電極へ駆動電圧の印加タイミングの図、(b)は第2透明電極への駆動電圧の印加タイミングの図、(c)は高分子分散型液晶パネルへの駆動電圧の印加タイミングの図、(d)は高分子分散型液晶パネルの光透過率の図である。
図12】比較例に係る駆動電圧等の波形を示す図である。
図13】第2実施形態に係る制御部の機能構成例を示すブロック図である。
図14】第2実施形態に係る高分子分散型液晶装置の動作例のフロー図である。
図15】第2実施形態に係る高分子分散型液晶装置の動作例を示すタイミング図であり、(a)は第1透明電極へ駆動電圧の印加タイミングの図、(b)は第2透明電極への駆動電圧の印加タイミングの図、(c)は高分子分散型液晶パネルへの駆動電圧の印加タイミングの図、(d)は高分子分散型液晶パネルの光透過率の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、各図面において、同一の構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための高分子分散型液晶装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0012】
実施形態では、一対の透明電極の間に電圧を印加することにより、液晶層を非散乱状態又は散乱状態とする駆動回路を備え、該駆動回路は、一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を印加開始後、所定の時間が経過した後に、該直流電圧を非印加にする。駆動電圧を直流電圧にすることで消費電力を抑制する。また直流電圧を印加開始後、所定の時間が経過した後に、該直流電圧を非印加にすることで、液晶の焼き付き現象を防止する。さらに周期的に極性が反転する直流電圧を印加した場合におけるフリッカを防止する。
【0013】
ここで極性とは、電流が流れる向きをいう。また液晶の焼き付き現象とは、同一極性の電圧が長時間連続して印加されることで液晶中の電荷が片方の電極側に固定化する現象をいう。フリッカとは、瞬間的な液晶の透過率変化をいう。フリッカは「ちらつき」と称する場合もある。
【0014】
なお以下に示す実施形態では、便宜上、高分子分散型液晶装置10を正面側から見たときの横幅方向をX軸方向とし、奥行き方向をY軸方向とし、高さ方向をZ軸方向とする。
【0015】
[第1実施形態]
<高分子分散型液晶装置10の全体構成例>
まず、実施形態に係る高分子分散型液晶装置10の全体構成について説明する。図1は、実施形態に係る高分子分散型液晶装置10の全体構成の一例を示す正面図である。図1に示す高分子分散型液晶装置10は、平板状且つ矩形状の装置である。
【0016】
高分子分散型液晶装置10は、矩形状且つ透明な高分子分散型液晶パネル110を有しており、この高分子分散型液晶パネル110を駆動することにより、光を透過させる状態(以下、非散乱状態いう。)と、光を散乱させる状態(以下、散乱状態という。)との間で状態を切り替えることが可能である。高分子分散型液晶装置10は、窓20に取り付けられることにより、窓20に対するブラインドシャッタとして機能する。窓20は、建物の壁面や屋根、ドア等に設けられる開口部としての窓である。例えば窓20は、外部又は内部の様子を覗いて見るためにドアや扉等に設けられる小窓の覗き窓等である。
【0017】
図1に示すように、高分子分散型液晶装置10は、高分子分散型液晶パネル110と、額縁120と、バッテリ130と、スイッチ131と、駆動回路140と、制御回路150とを備える。
【0018】
高分子分散型液晶パネル110は、平板状且つ矩形状の部材であり、駆動回路140によって駆動されることにより、非散乱状態と散乱状態との間で光透過特性が切り替わる。
【0019】
例えば、高分子分散型液晶パネル110は、駆動回路140から駆動電圧が印加されている場合には、高分子分散型液晶に含まれている液晶分子の配列が規則的な状態となり、光を透過させる非散乱状態となる。一方、高分子分散型液晶パネル110は、駆動回路140から駆動電圧が印加されていない場合には、液晶分子の配列が不規則な状態となり、光を散乱させる散乱状態となる。
【0020】
高分子分散型液晶パネル110は、光を散乱させる状態において、全面的に白色化する。散乱状態では、高分子分散型液晶パネル110は、奥行き方向(図中Y軸方向)における一方の側から他方の側を視認することができない。
【0021】
額縁120は、高分子分散型液晶パネル110の外周縁部(すなわち、高分子分散型液晶パネル110の四辺)に沿って、一定の幅及び一定の厚さを有して設けられている、枠状の部材である。額縁120の外形寸法は、窓20が備える窓枠としてのサッシ22の内形寸法とほぼ同一である。これにより、高分子分散型液晶装置10は、サッシ22の内側に嵌め込むことにより、窓20が備える窓ガラス24と重なった状態で、窓20に対して容易に取り付け可能となっている。
【0022】
バッテリ130は、駆動回路140へ直流電圧を供給し、またスイッチ131を介して制御回路150へ直流電圧を供給する。バッテリ130としては、各種二次電池(例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)を用いることができる。
【0023】
本実施形態では、1個当たりの生成電圧が3Vであるコイン型リチウムイオン電池のCR2032を4個直列に接続してバッテリ130を構成し、12Vの直流電圧を得る。コイン型リチウムイオン電池を2個重ね、また2個並べることで、バッテリ130の厚みを7mm以下にすることができる。
【0024】
スイッチ131は、バッテリ130と制御回路150とに接続され、バッテリ130から制御回路150への直流電圧の供給のオン(供給状態)とオフ(非供給状態)を切り替える。スイッチ131は、高分子分散型液晶装置10のユーザにより操作されることで、バッテリ130から駆動回路140への直流電圧の供給のオンとオフを切り替えることができる。スイッチ131として、プッシュスイッチ、トグルスイッチ、スライドスイッチ等の如何なる種類のスイッチも使用可能である。なお、スイッチ131は、高分子分散型液晶装置10に一体化して設けられてもよいし、窓20や窓20が設けられた壁面等に取付可能に構成されてもよい。
【0025】
駆動回路140は、高分子分散型液晶パネル110を非散乱状態とする場合に駆動電圧を生成する。具体的には、駆動回路140は、バッテリ130が発生する電圧に基づいてこの電圧よりも高電圧である直流の駆動電圧を生成する。駆動回路140は、生成した駆動電圧を、次述する一対の透明電極112,114間に印加することにより、高分子分散型液晶パネル110を駆動する。
【0026】
制御回路150は、駆動回路140による一対の透明電極112,114間への駆動電圧の印加を制御する。具体的には、制御回路150は、バッテリ130が発生する電圧に基づいてこの電圧よりも低電圧の直流電圧を生成し、この直流電圧に基づいて生成した制御信号を駆動回路140に出力して、駆動回路140による一対の透明電極112,114間への駆動電圧の印加を制御する。
【0027】
高分子分散型液晶パネル110は、駆動回路140から駆動電圧が印加されることにより、散乱状態から非散乱状態に切り替わる。駆動回路140は、充電ケーブルが接続される接続端子148を有している。バッテリ130は、充電ケーブルから接続端子148を介して供給される電力により充電される。
【0028】
図2は、図1に示す高分子分散型液晶装置10のA-A断面図である。図2に示すように、高分子分散型液晶パネル110は、平板状の複数の構成部が積層された積層構造を有している。また、高分子分散型液晶パネル110は、外周縁部が額縁120によって挟持されている。
【0029】
具体的には、高分子分散型液晶パネル110は、正面側(図中Y軸負側)から順に、透明基板111、透明電極112、液晶層113、透明電極114、及び透明基板115を有しており、これらの構成部111~115が積層された積層構造を有している。
【0030】
一対の透明基板111,115は、正面側(図中Y軸負側)からの平面視において矩形状を有する、透明且つ平板状の部材である。透明基板111は、高分子分散型液晶パネル110の最前面に設けられている。透明基板115は、高分子分散型液晶パネル110の最背面に設けられている。透明基板111,115としては、例えば、PET(polyethylene terephthalate)樹脂板、ガラス板等を用いることができる。
【0031】
一対の透明電極112,114は、導電性を有する透明且つ薄膜状の構成部である。透明電極112は、透明基板111と透明基板115との間において、透明基板111と重ねて設けられている。透明電極114は、透明基板111と透明基板115との間において、透明基板115と重ねて設けられている。透明電極112は、配線161(図1参照)によって駆動回路140と電気的に接続されている。透明電極114は、配線162(図1参照)によって駆動回路140と電気的に接続されている。これにより、透明電極112,114は、配線161,162を介して、駆動回路140から駆動電圧が印加される。透明電極112,114としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)を用いることができる。
【0032】
液晶層113は、透明電極112と透明電極114との間に形成される構成部である。液晶層113は、透明電極112と透明電極114との隙間に、高分子分散型液晶が充填されることによって形成される。液晶層113は、透明電極112,114間に駆動電圧が印加されていない場合には散乱状態となる。一方、液晶層113は、透明電極112,114間に駆動電圧が印加されている場合には非散乱状態となる。
【0033】
<高分子分散型液晶パネル110の構成例>
次に、図3図5を参照して、高分子分散型液晶パネル110の構成を説明する。図3は、高分子分散型液晶パネル110の構成の一例を示す正面図である。図4は、図3に示す高分子分散型液晶パネル110のA-A断面図である。図5は、図3に示す高分子分散型液晶パネル110のB-B断面図である。
【0034】
図3及び図4に示すように、高分子分散型液晶パネル110の正面側(図中Y軸負側)の左縁部(図中X軸負側の縁部)には、この左縁部に沿って一定の幅を有して延在する、第1露出部110Aが形成されている。第1露出部110Aは、透明基板111、透明電極112、及び液晶層113が部分的に取り除かれることにより、透明電極114の正面側の表面の一部が露出した部分である。
【0035】
図4に示すように、第1露出部110Aにおける透明電極114の表面には、銀ペースト層116Aを介して銅箔層117Aが形成されている。銅箔層117Aには、半田118Aを用いて、リード線からなる前述の配線162の一端が接続されている。配線162の他端は、駆動回路140(図1参照)に接続されている。
【0036】
また、図3及び図5に示すように、高分子分散型液晶パネル110の背面側(図中Y軸正側)の下縁部(図中Z軸負側の縁部)には、この左縁部に沿って一定の幅を有して延在する、第2露出部110Bが形成されている。第2露出部110Bは、液晶層113、透明電極114、及び透明基板115が部分的に取り除かれることにより、透明電極112の背面側の表面の一部が露出した部分である。
【0037】
図5に示すように、第2露出部110Bにおける透明電極112の表面には、銀ペースト層116Bを介して銅箔層117Bが形成されている。銅箔層117Bには、半田118Bを用いて、リード線からなる前述の配線161の一端が接続されている。配線161の他端は、駆動回路140(図1参照)に接続されている。
【0038】
<駆動回路140及び制御回路150の構成例>
次に、図6を参照して、駆動回路140及び制御回路150の構成を説明する。図6は、駆動回路140及び制御回路150の構成の一例を示す図である。
【0039】
図6に示すように、駆動回路140は、昇圧回路141と、第1電流制限回路142と、第2電流制限回路143と、第3電流制限回路144と、第4電流制限回路145とを有する。
【0040】
昇圧回路141は、スイッチングレギュレータにより構成され、インダクタを用いたフライバック方式で電圧を上昇(昇圧)させる。昇圧回路141は、バッテリ130に接続されており、バッテリ130が発生する直流電圧を昇圧する。例えば、バッテリ130が発生する直流電圧が12Vである場合に、昇圧回路141は、この12Vの直流電圧を、70Vの直流電圧へ昇圧する。これにより、昇圧回路141からは70Vの直流電圧が出力される。
【0041】
昇圧におけるスイッチング時に発生する突発的な電流であるリップル電流によって、高分子分散型液晶パネルの透明電極が着色する場合があるが、インダクタを用いたフライバック方式を用いることで、このようなリップル電流を抑制し、透明電極の着色を抑制できるようになっている。
【0042】
昇圧回路141は、第1電流制限回路142及び配線161を介して、高分子分散型液晶パネル110の透明電極112に接続され、また第2電流制限回路143及び配線162を介して、高分子分散型液晶パネル110の透明電極114に接続される。
【0043】
第1電流制限回路142は、昇圧回路141の後段に接続されており、負荷としての透明電極112に流れる電流を、所定電流値以下に制限する回路である。例えば、第1電流制限回路142は、透明電極112に流れる電流を、100mA以下に制限する。
【0044】
第2電流制限回路143は、昇圧回路141の後段に接続されており、負荷としての透明電極114に流れる電流を、所定電流値以下に制限する回路である。例えば、第2電流制限回路143は、透明電極114に流れる電流を、100mA以下に制限する。
【0045】
第3電流制限回路144は、高分子分散型液晶パネル110の透明電極112に接続される。第3電流制限回路144は、グランドに接続されており、負荷としての透明電極112に流れる電流を、所定電流値以下に制限する回路である。例えば、第3電流制限回路144は、透明電極112に流れる電流を、100mA以下に制限する。
【0046】
第4電流制限回路145は、高分子分散型液晶パネル110の透明電極114に接続される。第4電流制限回路145は、グランドに接続されており、負荷としての透明電極114に流れる電流を、所定電流値以下に制限する回路である。例えば、第4電流制限回路145は、透明電極114に流れる電流を、100mA以下に制限する。
【0047】
一方、制御回路150は、電圧モニター回路151と、降圧回路152と、制御部153とを有する。
【0048】
電圧モニター回路151は、バッテリ130に接続され、内部でバッテリ130の電圧を分圧して制御部153に出力することで、バッテリ130が発生する電圧を監視する。
【0049】
降圧回路152は、スイッチングレギュレータにより構成され、電圧を降下(降圧)させる。降圧回路152は、スイッチ131を介してバッテリ130に接続しており、スイッチ131がオンの場合にバッテリ130が発生する直流電圧を降圧する。例えば、バッテリ130が発生する直流電圧が12Vである場合に、降圧回路152は、この12Vの直流電圧を、3.6Vの直流電圧へ降圧する。これにより、降圧回路152からは3.6Vの直流電圧が出力される。
【0050】
制御部153は、第1電流制限回路142、第2電流制限回路143、第3電流制限回路144、第4電流制限回路145及び昇圧回路141に電気的に接続され、それぞれに制御信号を出力することで、駆動回路140による一対の透明電極112,114間への駆動電圧の印加を制御する。
【0051】
より具体的には、制御部153は、一対の透明電極112,114の間に所定の極性の駆動電圧(直流電圧)を印加開始後、所定の時間が経過した後に、駆動電圧を非印加にする(印加しない)ように駆動回路140を制御する。また制御部153は、駆動電圧を非印加にした後、次に一対の透明電極112,114の間に電圧を印加する場合に、上記の所定の極性とは反対の極性の電圧を印加するように駆動回路140を制御する。
【0052】
制御信号は、例えばHighレベル(以下、Highという)とLowレベル(以下、Lowという)を有するデジタル信号である。
【0053】
制御部153は、CPU(Central Processing Unit)154と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)155とを有する。制御部153はマイコン(microcontroller)等のコンピュータにより構成でき、例えばPIC(Peripheral Interface Controller)マイコン(登録商標)を適用できる。
【0054】
CPU154は、プログラムを実行することで、制御部153の動作を制御する。EEPROM155は不揮発性メモリの一種であり、IPL(Initial Program Loader)等のCPU154の駆動に用いられるプログラムを記憶する。またEEPROM155は、後述する、駆動回路140による一対の透明電極112,114間への駆動電圧の印加の閾値時間、駆動電圧の極性、或いは一対の透明電極112,114間への駆動電圧の極性ごとの累積印加時間等を示す情報を保持する。
【0055】
図6において、制御1は、制御部153から第1電流制限回路142に出力される制御信号を示し、制御2は、制御部153から第2電流制限回路143に出力される制御信号を示している。制御3は、制御部153から第3電流制限回路144に出力される制御信号を示し、制御4は、制御部153から第4電流制限回路145に出力される制御信号を示している。
【0056】
例えば、制御1及び制御4がHighで、且つ制御2及び制御3がLowの場合に透明電極112に駆動電圧が印加され、制御1及び制御4がLowで、且つ制御2及び制御3がHighの場合に透明電極114に駆動電圧が印加される。また、制御1及び制御2がLowで、且つ制御3及び制御4がHighの場合に、高分子分散型液晶パネル110が初期化する。
【0057】
また、制御部153は外部信号としてのOFF信号を入力可能であり、外部信号によって、駆動回路140による一対の透明電極112,114間への駆動電圧を強制的に非印加に(強制終了)できるようになっている。
【0058】
(第1電流制限回路142の構成)
次に、第1電流制限回路142の構成を説明する。図7は、第1電流制限回路142の構成の一例を示す図である。
【0059】
図7に示すように、第1電流制限回路142は、pnp型トランジスタQ1、ダイオードD1、ダイオードD2,抵抗R1、及び抵抗Rsを有する。抵抗R1は、一端がトランジスタQ1のベースに接続されており、他端がグランドに接続されている。抵抗Rsは、一端がトランジスタQ1のエミッタに接続されている。
【0060】
ダイオードD1とダイオードD2とは直列接続されており、ダイオードD2のカソード側がトランジスタQ1のベースに接続されている。ダイオードD1のアノード側は抵抗Rsの他端に接続されている。第1電流制限回路142は、抵抗Rsの他端が昇圧回路141に接続され、トランジスタQ1のコレクタが透明電極112に接続される。
【0061】
本回路構成によれば、第1電流制限回路142から出力される出力電流IOUTは、次式で算出される最大電流値Imaxに制限される。
【0062】
max=VDI/Rs
ここで、VDIは、ダイオードD1の順方向降下電圧(約0.6V)である。
【0063】
したがって、抵抗Rsの抵抗値を選択することにより、最大電流値Imaxを決定することができる。例えば、最大電流値Imaxを100mAとするには、6Ωの抵抗Rsを用いればよい。
【0064】
また、第1電流制限回路142は、高分子分散型液晶パネル110の容量とオン時間とを考慮して設計することが好ましい。例えば、高分子分散型液晶パネル110の容量が220[nF]の場合、第1電流制限回路142の最大電流値Imaxを1[mA]に設定すると、充電までの時間、つまり高分子分散型液晶パネル110がオンするまでの時間は、電荷量に基づき、220[nF]×70[V]=1.5×10-6[C]となる。また充電時間は、1.5×10-6÷1×10-3=1.5[msec]となる。
【0065】
このように、高分子分散型液晶パネル110の容量に基づき、電荷量と充電時間は適宜設定設計であり、充電時間を100ミリ秒以下にすると、待ち時間によるユーザのストレスを生じさせることなく、高分子分散型液晶パネル110をオンさせることができる。
【0066】
また電流制限(最大電流値Imax)を大きくすることで、駆動回路140を流れる電流量を抑えることができ、これによりバッテリ130の負荷を抑制し、バッテリ130の寿命を長くすることができる。
【0067】
第2電流制限回路143、第3電流制限回路144及び第4電流制限回路145のそれぞれの構成は、図7に示す第1電流制限回路142と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0068】
<制御部153の機能構成例>
次に、図8を参照して、制御部153の機能構成について説明する。
【0069】
図8は、制御部153の機能構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、制御部153は、極性情報保持部171と、極性決定部172と、印加制御部173と、経過時間計測部174と、閾値時間情報保持部175と、入出力部176と、動作モード決定部177とを有する。
【0070】
これらのうち、極性決定部172、印加制御部173、経過時間計測部174、入出力部176及び動作モード決定部177の各機能は、図6のCPU154が所定のプログラムを実行すること等により実現される。また極性情報保持部171及び閾値時間情報保持部175の各機能は、図6のEEPROM155等により実現される。但し、各機能部の実現手段はこれらに限定されるものではなく、他の実現手段を用いてもよい。例えば、CPU154が実現する機能の一部又は全部を、複数の電子回路、又は電子回路とCPUの組み合わせで実現することもできる。またEEPROM155の機能の一部をRAM(Random Access Memory)等で実現することもできる。
【0071】
極性情報保持部171は、一対の透明電極112,114の間に駆動回路140が印加した駆動電圧の極性とは反対の極性の情報を保持する。実施形態では、透明電極112に駆動電圧を印加した状態を第1極性とし、透明電極114に駆動電圧を印加した状態を第2極性とする。第1極性と第2極性は相互に反対の極性である。つまり、所定の極性が第1極性である場合には、所定の極性とは反対の極性は第2極性であり、所定の極性が第2極性である場合には、所定の極性とは反対の極性は第1極性である。
【0072】
極性情報保持部171は、駆動回路140が印加した駆動電圧の極性に従って第1極性又は第2極性を示す情報を保持する。例えば極性情報保持部171は、第1極性及び第2極性を示す情報としてフラッグを用い、駆動回路140が第1極性の駆動電圧を印加した場合にはHighのフラッグを保持し、駆動回路140が第2極性の駆動電圧を印加した場合にはLowのフラッグを保持できる。
【0073】
極性決定部172は、極性情報保持部171を参照して、一対の透明電極112,114の間に印加する駆動電圧の極性を決定する。具体的には、極性情報保持部171がLowのフラッグを保持する場合には、極性決定部172は駆動電圧の極性として第1極性を決定する。一方、極性情報保持部171がHighのフラッグを保持する場合には、極性決定部172は駆動電圧の極性として第2極性を決定する。
【0074】
印加制御部173は、極性決定部172が決定した極性の駆動電圧を、一対の透明電極112,114の間に印加するように駆動回路140を制御する。また、印加制御部173は、一対の透明電極112,114の間に駆動電圧の印加を開始後、閾値時間が経過した後に、駆動電圧を非印加にするように駆動回路140を制御する。
【0075】
所定の時間の一例としての閾値時間は、予め定められて閾値時間情報保持部175に保持されている。この閾値時間は、液晶の焼き付き現象を防止可能な時間であることが好ましい。例えば5分以下であれば液晶の焼き付け現象を好適に防止できる。
【0076】
また、ドアの覗き窓としての窓20(図1参照)に高分子分散型液晶装置10が取り付けられ、ユーザが高分子分散型液晶装置10のスイッチ131(図1参照)をオンして、窓20を介してドアの向こう側(建物の内部)を視認する場合には、閾値時間が短すぎると十分な時間で視認できなくなる。そのため、閾値時間は5秒以上であることが好ましい。
【0077】
閾値時間の設定は、高分子分散型液晶装置10のユーザが行ってもよいし、高分子分散型液晶装置10を提供する事業者が行ってもよい。また高分子分散型液晶装置10の使用用途に応じて適宜変更可能にしてもよい。
【0078】
駆動電圧の印加を開始後の経過時間は、経過時間計測部174により計測される。経過時間計測部174は、駆動回路140に制御信号を出力したことを示す通知を印加制御部173から受けた後、CPU154(図6参照)のクロックをカウントすることで、上記の経過時間を計測できる。
【0079】
印加制御部173は、経過時間計測部174が計測した経過時間が閾値時間に到達(タイムアップ)した時に、駆動電圧を非印加にするように駆動回路140を制御する。また印加制御部173は、駆動電圧を非印加にした際に、非印加にした駆動電圧の極性とは反対の極性を示す情報を極性情報保持部171に出力して、極性情報保持部171が保持する極性の情報を最新のものに更新する。
【0080】
また、動作モード決定部177は、入出力部176を介して電圧モニター回路151から入力したバッテリ130の電圧の分圧を示す信号に基づき、バッテリ130の発生電圧情報を取得する。そしてバッテリ130の発生電圧に基づき、高分子分散型液晶装置10の動作モードを決定する。この動作モードには、消費電力の抑制を考慮しない通常の動作状態で動作する通常モードと、消費電力を抑制した状態で動作する点滅モードが挙げられる。
【0081】
例えば、動作モード決定部177は、バッテリ130の発生電圧が10[V]以上の場合には、動作モードとして通常モードを決定し、バッテリ130の発生電圧が10[V]以上でない場合には、動作モードとして点滅モードを決定する。
【0082】
なお、上述した閾値時間情報保持部175は、動作モードが通常モードの場合の閾値時間と、点滅モードの場合の閾値時間とを区別して保持できる。
【0083】
<高分子分散型液晶装置10の動作例>
次に、図9乃至図11を参照して、高分子分散型液晶装置10の動作を説明する。
【0084】
まず、図9は、高分子分散型液晶装置10の動作の一例を示すフローチャートである。図9では、ユーザが高分子分散型液晶装置10のスイッチ131をオンした後の動作を示している。
【0085】
ステップS91において、制御部153が初期化する。この際に、制御部153は昇圧回路141にLowの制御信号を出力し、またLowの制御1乃至4(図6参照)を出力する。制御部153の初期化に要する時間は、例えば10ミリ秒以下である。
【0086】
続いて、ステップS92において、高分子分散型液晶パネル110が初期化する。この際に、制御部153はLowの制御1,2を出力し、Highの制御3,4を出力する。高分子分散型液晶パネル110の初期化に要する時間は、例えば10ミリ秒以下である。
【0087】
続いて、ステップS93において、電圧モニター回路151がオンする。この際に、制御部153はHighの制御信号を電圧モニター回路151に出力する。
【0088】
続いて、ステップS94において、制御部153における動作モード決定部177は、バッテリ130の発生電圧が10[V]以上であるか否かを判定する。
【0089】
ステップS94において、バッテリ130の発生電圧が10[V]以上でないと判定された場合には(ステップS94、No)、動作モード決定部177は動作モードとして点滅モードを決定し、高分子分散型液晶パネル110はステップS95において点滅モードの動作を開始する。この点滅モードの動作については、図10を用いて次述する。
【0090】
一方、ステップS94において、バッテリ130の発生電圧が10[V]以上であると判定された場合には(ステップS94、Yes)、動作モード決定部177は動作モードとして通常モードを決定する。
【0091】
続いて、ステップS96において、昇圧回路141がオンする。この際に、制御部153は、昇圧回路141にHighの制御信号を出力する。また、制御部153における印加制御部173は、閾値時間情報保持部175を参照して閾値時間の情報を取得する(タイマーセット)。閾値時間は例えば10秒である。
【0092】
続いて、ステップS97において、制御部153における極性決定部172は、極性情報保持部171を参照して、フラッグがLowであるか否かを判定する。
【0093】
ステップS97において、フラッグがLowであると判定された場合には(ステップS97、Yes)、ステップS98において、極性決定部172は第1極性を決定する。印加制御部173は第1極性の駆動電圧を印加するように駆動回路140を制御する。この際に、印加制御部173は、Highの制御1及び4を出力し、Lowの制御2及び3を出力する。また、フラッグを反転させてHighに設定する。駆動回路140は、第1極性の駆動電圧の印加を開始する。
【0094】
一方、ステップS97において、フラッグがLowでないと判定された場合には(ステップS97、No)、ステップS99において、極性決定部172は第2極性を決定する。印加制御部173は第2極性の駆動電圧を印加するように駆動回路140を制御する。この際に、印加制御部173は、Lowの制御1及び4を出力し、Highの制御2及び3を出力する。また、フラッグを反転させてLowに設定する。駆動回路140は、第2極性の駆動電圧の印加を開始する。
【0095】
続いて、ステップS100において、制御部153における経過時間計測部174は経過時間の計測を開始する。
【0096】
続いて、ステップS101において、印加制御部173は、経過時間が10秒に到達(タイムアップ)したか否かを判定する。
【0097】
ステップS101において、タイムアップしていないと判定された場合には(ステップS101、No)、ステップS101の動作が繰り返される。
【0098】
一方、ステップS101において、タイムアップしたと判定された場合には(ステップS101、Yes)、ステップS102において、印加制御部173は、駆動電圧を非印加にするように駆動回路140を制御する。この際に、印加制御部173は、Lowの制御1及び2を出力し、Highの制御3及び4を出力する。駆動回路140は駆動電圧を非印加にし、高分子分散型液晶パネル110が初期化する。
【0099】
続いて、ステップS103において、昇圧回路141がオフする。この際に、制御部153は、昇圧回路141にLowの制御信号を出力する。
【0100】
続いて、ステップS104において、印加制御部173は、極性情報保持部171にフラッグを出力し、極性情報保持部171が保持する極性の情報を最新のものに更新する。
【0101】
このようにして、高分子分散型液晶装置10は動作することができる。
【0102】
(点滅モード)
図10は、点滅モードにおける高分子分散型液晶装置10の動作の一例を示すフローチャートである。図10は、図9におけるステップS95を起点にした動作を示している。
【0103】
この点滅モードは、バッテリ130の発生する電圧が10[V]に満たない場合に、高分子分散型液晶パネル110に駆動電圧を印加する期間を短縮して低消費電力で駆動させる動作モードである。
【0104】
まず、ステップS111において、制御部153における経過時間計測部174は、経過時間をリセットする。
【0105】
続いて、ステップS112において、昇圧回路141がオンする。この際に、制御部153は、昇圧回路141にHighの制御信号を出力する。また、制御部153における印加制御部173は、閾値時間情報保持部175を参照して点滅モードの閾値時間の情報を取得する(タイマーセット)。点滅モードの閾値時間は、例えば1秒である。
【0106】
続いて、ステップS113において、制御部153における極性決定部172は、極性情報保持部171を参照して、フラッグがLowであるか否かを判定する。
【0107】
ステップS113において、フラッグがLowであると判定された場合には(ステップS113、Yes)、ステップS114において、極性決定部172は第1極性を決定する。印加制御部173は第1極性の駆動電圧を印加するように駆動回路140を制御する。この際に、印加制御部173は、Highの制御1及び4を出力し、Lowの制御2及び3を出力する。また、フラッグを反転させてHighに設定する。駆動回路140は、第1極性の駆動電圧の印加を開始する。
【0108】
一方、ステップS113において、フラッグがLowでないと判定された場合には(ステップS113、No)、ステップS115において、極性決定部172は第2極性を決定する。印加制御部173は第2極性の駆動電圧を印加するように駆動回路140を制御する。この際に、印加制御部173は、Lowの制御1及び4を出力し、Highの制御2及び3を出力する。また、フラッグを反転させてLowに設定する。駆動回路140は、第2極性の駆動電圧の印加を開始する。
【0109】
続いて、ステップS116において、制御部153における経過時間計測部174は経過時間の計測を開始する。
【0110】
続いて、ステップS117において、印加制御部173は、経過時間が1秒に到達(タイムアップ)したか否かを判定する。
【0111】
ステップS117において、タイムアップしていないと判定された場合には(ステップS117、No)、ステップS117の動作が繰り返される。
【0112】
一方、ステップS117において、タイムアップしたと判定された場合には(ステップS117、Yes)、ステップS118において、印加制御部173は、駆動電圧を非印加にするように駆動回路140を制御する。この際に、印加制御部173は、Lowの制御1及び2を出力し、Highの制御3及び4を出力する。駆動回路140は駆動電圧を印加にし、高分子分散型液晶パネル110が初期化する。
【0113】
続いてステップS119において、経過時間計測部174は経過時間の計測を開始する。
【0114】
続いて、ステップS120において、印加制御部173は、タイムアップしたか否かを判定する。
【0115】
ステップS120において、タイムアップしていないと判定された場合には(ステップS120、No)、ステップS120の動作が繰り返される。
【0116】
一方、ステップS120において、タイムアップしたと判定された場合には(ステップS120、Yes)、ステップS121において、印加制御部173は、駆動回路140による駆動電圧の印加回数が5回に等しいか否かを判定する。
【0117】
ステップS121において、5回に等しくないと判定された場合には(ステップS121、No)、印加制御部173は駆動回路140による駆動電圧の印加回数に1を加算し、その後、動作はステップS113に移行する。この際に、経過時間計測部174で経過時間が計測され、点滅モードの閾値時間である1秒と同じ期間だけ駆動電圧の非印加期間が確保された後、ステップS113以降の処理が再度行われる。
【0118】
一方、ステップS121において、5回に等しいと判定された場合には(ステップS121、Yes)、ステップS122において、昇圧回路141がオフする。この際に、制御部153は、昇圧回路141にLowの制御信号を出力する。
【0119】
ステップS113乃至S121で、駆動電圧が1秒間印加されて高分子分散型液晶パネル110の光透過率が上がる動作と、駆動電圧が1秒間非印加になって高分子分散型液晶パネル110の光透過率が下がる動作がそれぞれ5回繰り返される。これにより高分子分散型液晶パネル110は10秒間点滅するようにして動作する。
【0120】
続いて、ステップS123において、印加制御部173は、極性情報保持部171にフラッグを出力し、極性情報保持部171が保持する極性の情報を最新のものに更新する。
【0121】
このようにして、高分子分散型液晶装置10は、点滅モードで動作することができる。高分子分散型液晶パネル110は点滅するように動作することで、駆動電圧の印加期間が短くなり消費電力を抑えることができる。
【0122】
(高分子分散型液晶装置10における駆動電圧の印加タイミング)
次に、図11は、高分子分散型液晶装置10の動作の一例を示すタイミングチャートである。図11は、高分子分散型液晶パネル110の動作モードが通常モードである場合の動作を例示している。また、図11では、ドアの覗き窓としての窓20(図1参照)に高分子分散型液晶装置10が取り付けられ、ユーザが高分子分散型液晶装置10のスイッチ131(図1参照)をオンして、窓20を介してドアの向こう側(建物の内部)を視認する場合の動作を一例として説明する。
【0123】
図11(a)は、第1透明電極としての透明電極112に駆動電圧が印加されるタイミングを例示している。図11(b)は、第2透明電極としての透明電極114に駆動電圧が印加されるタイミングを例示している。図11(c)は、高分子分散型液晶パネル110に駆動電圧が印加されるタイミングを例示し、図11(d)は、高分子分散型液晶パネル110の光透過率を例示している。
【0124】
図11に示すように、時刻T1で、高分子分散型液晶装置10のユーザがスイッチ131をオンにすると、第1透明電極に駆動電圧が印加される(図11(a)、(c))。高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる(図11(d))。
【0125】
その後、閾値時間Δtが経過すると、第1透明電極への駆動電圧が非印加になり、高分子分散型液晶パネル110の光透過率は低下して略0になる。閾値時間Δtは、本実施形態では10秒である。ユーザは10秒間だけ、窓20を介してドアの向こう側(建物の内部)を視認することができる。第1透明電極への駆動電圧が非印加になった後、ユーザが再びスイッチ131をオンにする時刻T2までの期間は駆動電圧の非印加期間Δt'となる。
【0126】
次に、時刻T2で、ユーザが再びスイッチ131をオンにすると、今度は第1透明電極とは反対極性である第2透明電極に駆動電圧が印加される(図11(b)、(c))。高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる(図11(d))。
【0127】
この時刻T2のタイミングは、任意のタイミングでよい。例えば、ユーザが窓20を介してドアの向こう側を視認する時間が10秒では短かった場合には、時刻T2は、時刻T1の後、駆動電圧が非印加になった直後であってもよい。また、ユーザが窓20を介してドアの向こう側を視認する時間が10秒で十分だった場合には、次にユーザが窓20を介してドアの向こう側を視認する数日後のタイミングであってもよい。
【0128】
同様に、時刻T3で、ユーザが再びスイッチ131をオンにすると、今度は第2透明電極とは反対極性である第1透明電極に駆動電圧が印加され(図11(a)、(c))、高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる(図11(d))。また時刻T4で、ユーザが再びスイッチ131をオンにすると、今度は第1透明電極とは反対極性である第2透明電極に駆動電圧が印加される(図11(b)、(c))。高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる(図11(d))。
【0129】
このようにして高分子分散型液晶装置10は動作することができる。
【0130】
<高分子分散型液晶装置10の作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、一対の透明電極の間に電圧を印加することにより、液晶層を非散乱状態又は散乱状態とする駆動回路を備え、該駆動回路は、一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を印加開始後、閾値時間が経過した後に、該直流電圧を非印加にする。
【0131】
駆動電圧を直流電圧にすることで消費電力を抑制できる。また、直流電圧を印加開始後、閾値時間(所定の時間)が経過した後に非印加にすることで、液晶の焼き付き現象を防止できる。さらに周期的に極性が反転する直流電圧を印加した場合におけるフリッカ現象を防止できる。これらにより、低消費電力で、かつ安定した高分子分散型液晶装置10の駆動が可能となる。
【0132】
例えば、ドアの覗き窓としての窓に高分子分散型液晶装置を設ける用途では、高分子分散型液晶装置が設けられた窓を介してドアの向こう側(建物の内部)を視認する時間が短くてもユーザは十分に目的を果たせるため、本実施形態を好適に適用できる。
【0133】
閾値時間は5分以下であると、液晶の焼き付き現象を確実に防止できるため、より好適である。
【0134】
また、本実施形態では、一対の透明電極の間への所定の極性の駆動電圧を上記のように非印加にした後、次に一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、上記の所定の極性とは反対の極性の直流電圧を印加する。これにより、同一極性の駆動電圧が連続して印加されないため、液晶の焼き付き現象をより好適に防止できる。
【0135】
ここで、消費電力について詳述する。以下の(1)式は駆動電圧を交流にした場合の消費電力を表し、(2)式は駆動電圧を交流にした場合の消費電力を表している。
【0136】
【数1】
【0137】
【数2】
なお、(1)式におけるPACは駆動電圧を交流電圧にした場合の消費電力、fは駆動周波数、Cは液晶層の容量、VACは交流電圧をそれぞれ意味する。また(2)式におけるPDCは駆動電圧を直流電圧にした場合の消費電力、Iは電流量、Rは抵抗値、VACは直流電圧をそれぞれ意味する。
【0138】
直流電圧で駆動することで、交流電圧による駆動に対して極性の切替回数が減少するため、これにより高分子分散型液晶装置10の消費電力を抑制できる。また図10を用いて説明したように、点滅モードで高分子分散型液晶装置10を動作させると、駆動電圧を非印加にする期間の分だけさらなる消費電力の抑制が可能になる。消費電力の抑制に伴って、高分子分散型液晶装置10の駆動可能時間を延ばすことができる。
【0139】
(フリッカ)
また図12を参照して、フリッカについて説明する。図12は比較例に係る高分子分散型液晶装置10Xの動作を示すタイミングチャートである。(a)は第1透明電極に駆動電圧が印加されるタイミングを例示し、(b)は第2透明電極に駆動電圧が印加されるタイミングを例示している。また(c)は、高分子分散型液晶パネル110に駆動電圧が印加されるタイミングを例示し、(d)は、高分子分散型液晶パネル110の光透過率を例示している。
【0140】
図12(a)、(b)に示すように、第1透明電極と第2透明電極には、周期的に極性が反転する直流電圧が印加されている。これにより、図12(c)に示すように、高分子分散型液晶パネル110には連続して駆動電圧が印加され、図12(d)に示すように、高分子分散型液晶パネル110の光透過率は連続して上がる。
【0141】
しかし、図12(d)に破線で囲った領域121に示すように、極性が反転するタイミングにおいて、分極した液晶が動くことで高分子分散型液晶パネル110の光透過率が瞬間的に低下する場合がある。この光透過率の低下がフリッカ(ちらつき)としてユーザに視認される。フリッカは、高分子分散型液晶パネル110が取り付けられた窓を介してドアの向こう側(建物の内部)を視認するような際にユーザに違和感を与える場合がある。
【0142】
本実施形態では、駆動電圧の極性を連続して反転させないため、このようなフリッカを防止でき、ユーザに違和感を与えない高分子分散型液晶装置を提供できる。
【0143】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る高分子分散型液晶装置10aについて説明する。
【0144】
ここで、2つの極性のうちの一方の極性による駆動電圧の累積印加時間が偏ると、液晶層に含まれる不純物が一方に集まり、高分子分散型液晶パネルが劣化する場合がある。本実施形態では、一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を非印加にした後、次に前記一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、一対の透明電極の間への累積印加時間が短い極性の直流電圧を印加する。これにより、極性ごとの駆動電圧の累積印加時間における偏りを低減し、高分子分散型液晶パネルの劣化を抑制する。
【0145】
高分子分散型液晶装置10aの全体構成と、駆動回路の構成には、第1実施形態に係る高分子分散型液晶装置10と同様の構成を適用できるため、ここでは重複する説明を省略する。また第1実施形態と同様の部分は適宜説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0146】
<制御部153aの機能構成>
図13を参照して、制御部153aの機能構成について説明する。図13は、制御部153aの機能構成の一例を示すブロック図である。図13に示すように、制御部153aは、累積印加時間情報取得部178と、累積印加時間情報保持部179と、極性決定部172aとを有する。
【0147】
これらのうち、累積印加時間情報取得部178及び極性決定部172aの各機能は、図6のCPU154が所定のプログラムを実行すること等で実現され、累積印加時間情報保持部179の機能は、図6のEEPROM155等により実現される。
【0148】
累積印加時間情報取得部178は、駆動回路140が一対の透明電極112,114の間に印加した駆動電圧の極性ごとの累積印加時間情報を取得し、累積印加時間情報保持部179に保持させる。
【0149】
具体的には、累積印加時間情報取得部178は、累積印加時間情報保持部179が保持する第1極性の駆動電圧による第1累積印加時間情報に、経過時間計測部174が計測した第1極性の駆動電圧による経過時間を加算する。これにより最新の第1累積印加時間情報を取得して、累積印加時間情報保持部179に保持させる。
【0150】
また、累積印加時間情報取得部178は、累積印加時間情報保持部179が保持する第2極性の駆動電圧による第2累積印加時間情報に、経過時間計測部174が計測した第2極性の駆動電圧による経過時間を加算する。これにより最新の第2累積印加時間情報を取得して、累積印加時間情報保持部179に保持させる。
【0151】
さらに、累積印加時間情報取得部178は、駆動電圧の極性ごとの累積印加時間を比較し、短い方の極性を示す情報をフラッグとして累積印加時間情報保持部179に保持させることができる。例えば、第1極性が短い場合にはLowのフラッグを保持させ、第2極性が短い場合にはHighのフラッグを保持させる。
【0152】
極性決定部172aは、累積印加時間情報保持部179を参照して、一対の透明電極112,114の間に印加する駆動電圧の極性を決定する。具体的には、極性決定部172aは、フラッグがLowの場合には第1極性を決定し、フラッグがHighの場合には第2極性を決定する。
【0153】
<高分子分散型液晶装置10aの動作例>
次に、図14を参照して、高分子分散型液晶装置10aの動作を説明する。
【0154】
図14は、高分子分散型液晶装置10aの動作の一例を示すフローチャートである。図14では、ユーザが高分子分散型液晶装置10aのスイッチ131をオンした以後の動作を示している。また上述した図9で説明した動作と同じステップについては説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0155】
ステップS146において、昇圧回路141がオンする。この際に、制御部153は、昇圧回路141にHighの制御信号を出力する。また、制御部153における印加制御部173は、閾値時間情報保持部175を参照して閾値時間の情報を取得する(タイマーセット)。閾値時間は、例えば60秒である。
【0156】
また、ステップS151において、印加制御部173は、経過時間が60秒に到達(タイムアップ)したか否かを判定する。
【0157】
ステップS151において、タイムアップしていないと判定された場合には(ステップS151、No)、ステップS151の動作が繰り返される。なお、本実施形態では閾値時間が60秒と長いため、ストップ信号を入力して駆動電圧の印加を強制終了可能になっている。
【0158】
一方、ステップS151において、タイムアップしたと判定された場合には(ステップS151、Yes)、ステップS152において、印加制御部173は、駆動電圧を非印加にするように駆動回路140を制御する。この際に、印加制御部173は、Lowの制御1及び2を出力し、Highの制御3及び4を出力する。駆動回路140は駆動電圧を非印加にし、高分子分散型液晶パネル110が初期化する。
【0159】
ステップS154において、累積印加時間情報取得部178は、駆動回路140が一対の透明電極112,114の間に印加した駆動電圧の極性ごとの累積印加時間情報を取得し、累積印加時間情報保持部179に保持させる。
【0160】
続いて、ステップS155において、累積印加時間情報取得部178は、第1極性の累積印加時間が第2極性の累積印加時間より長いか否かを判定する。
【0161】
ステップS155において、第1極性の累積印加時間が第2極性の累積印加時間より長いと判定された場合には(ステップS155、Yes)、ステップS156において、累積印加時間情報取得部178は、累積印加時間情報保持部179にHighのフラッグを保持させる。一方、第1極性の累積印加時間が第2極性の累積印加時間より長くないと判定された場合には(ステップS155、No)、ステップS157において、累積印加時間情報取得部178は、累積印加時間情報保持部179にLowのフラッグを保持させる。
【0162】
このようにして、高分子分散型液晶装置10aは動作することができる。なお、点滅モードでの動作は、累積印加時間が短い極性の直流電圧を印加する点を覗いて、図10に示す動作と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0163】
(高分子分散型液晶装置10aにおける駆動電圧の印加タイミング)
次に、図15は、高分子分散型液晶装置10aの動作の一例を示すタイミングチャートである。図15は、高分子分散型液晶パネル110の動作モードが通常モードである場合の動作を例示している。また、図15では、ドアの覗き窓としての窓20(図1参照)に高分子分散型液晶装置10aが取り付けられ、ユーザが高分子分散型液晶装置10のスイッチ131(図1参照)をオンして、窓20を介してドアの向こう側(建物の内部)を視認する場合の動作を一例としている。
【0164】
図15(a)は、第1透明電極としての透明電極112に駆動電圧が印加されるタイミングを例示している。図15(b)は、第2透明電極としての透明電極114に駆動電圧が印加されるタイミングを例示している。図15(c)は、高分子分散型液晶パネル110に駆動電圧が印加されるタイミングを例示し、図15(d)は、高分子分散型液晶パネル110の光透過率を例示している。
【0165】
時刻T1で、高分子分散型液晶装置10のユーザがスイッチ131をオンにすると、第1透明電極に駆動電圧が印加される(図15(a)、(c))。高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる(図15(d))。
【0166】
その後、閾値時間Δtが経過すると、第1透明電極への駆動電圧が非印加になり、高分子分散型液晶パネル110の光透過率は低下して略0になる。閾値時間Δtは、例えば60秒である。ユーザは60秒間だけ、窓20を介してドアの向こう側(建物の内部)を視認することができる。
【0167】
次に、時刻T2で、ユーザが再びスイッチ131をオンにすると、第1極性と第2極性のうち、累積印加時間が短い方の極性である第1透明電極に駆動電圧が印加される(図15(a)、(c))。例えば、以前に高分子分散型液晶が駆動された際に、第1極性での駆動が60秒の経過前にストップ信号で強制終了されたことで、第1極性の累積印加時間が短くなっている。これにより、累積印加時間が短い方の極性として第1極性が決定される。
【0168】
高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる(図15(d))。その後、閾値時間Δtが経過すると、第1透明電極への駆動電圧が非印加になり、高分子分散型液晶パネル110の光透過率は低下して略0になる。この駆動によって第1極性の累積印加時間が延びることで、第2極性の累積印加時間の方が短くなる。
【0169】
次に、時刻T3で、ユーザが再びスイッチ131をオンにすると、累積印加時間が短い方の極性である第2透明電極に駆動電圧が印加され(図15(b)、(c))、高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる(図15(d))。
【0170】
図15に示す例では、時刻T3から閾値時間Δtが経過する前に、時間Δt''が経過したタイミングでストップ信号が入力し、駆動電圧が非印加になっている。時間Δt''の駆動で第2極性の累積印加時間が延び、第1極性の累積印加時間の方が短くなる。
【0171】
次に時刻T4で、ユーザが再びスイッチ131をオンにすると、累積印加時間が短い方の極性である第1透明電極に駆動電圧が印加され(図15(a)、(c))、高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる(図15(d))。
【0172】
このように、ユーザが再びスイッチ131をオンにした際に、累積印加時間が短い方の極性である第1透明電極又は第2透明電極に駆動電圧が印加され、高分子分散型液晶パネル110では液晶分子が非散乱状態となって光透過率が上がる。
【0173】
このようにして高分子分散型液晶装置10aは動作することができる。
【0174】
<高分子分散型液晶装置10aの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を非印加にした後、次に前記一対の透明電極の間に直流電圧を印加する場合に、一対の透明電極の間への累積印加時間が短い極性の直流電圧を印加する。これにより、極性ごとの駆動電圧における累積印加時間の偏りを低減し、液晶層に含まれる不純物が一方に集まって高分子分散型液晶パネルが劣化することを抑制できる。
【0175】
なお、上記以外の効果は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0176】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0177】
例えば、上述した実施形態では、図6に示したように、駆動回路140と制御回路150を別々にした回路構成を例示したが、これに限定されるものではない。駆動回路140と制御回路150を1つの回路基板等に一体に設けてもよい。また電圧モニター回路151及び降圧回路152を制御回路150に設ける例を示したが、これらを駆動回路140に設けてもよい。
【0178】
また、上述した実施形態では、高分子分散型液晶装置10が制御回路150を備える例を示したが、これに限定されるものではない。制御回路150の機能を外部装置が備え、外部装置から供給される制御信号に基づき、高分子分散型液晶装置10が動作する構成にしてもよい。このような構成でも、上述した高分子分散型液晶装置10と同様の効果を得ることができる。
【0179】
また実施形態は、高分子分散型液晶パネルの駆動方法も含む。例えば、実施形態に係る高分子分散型液晶パネルの駆動方法は、一対の透明基板と、前記一対の透明基板の間に設けられた一対の透明電極と、前記一対の透明電極の間に高分子分散型液晶が充填されてなる液晶層と、を備えた高分子分散型液晶パネルの駆動方法であって、前記一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を印加して前記液晶層を非散乱状態にした後、所定の時間が経過した後に、前記直流電圧を非印加にして前記液晶層を散乱状態にする。このような高分子分散型液晶パネルの駆動方法により、上述した高分子分散型液晶装置10と同様の効果を得ることができる。
【0180】
また実施形態は、プログラムも含む。例えば、実施形態に係るプログラムは、一対の透明基板と、前記一対の透明基板の間に設けられた一対の透明電極と、前記一対の透明電極の間に高分子分散型液晶が充填されてなる液晶層と、前記一対の透明電極の間に電圧を印加することにより、前記液晶層を非散乱状態又は散乱状態とする駆動回路と、を備えた高分子分散型液晶装置で実行されるプログラムであって、前記駆動回路が、前記一対の透明電極の間に所定の極性の直流電圧を印加開始後、所定の時間が経過した後に、前記直流電圧を非印加にする処理をコンピュータに実行させる。このようなプログラムにより、上述した高分子分散型液晶装置10と同様の効果を得ることができる。
【0181】
また、上述した実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0182】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、及び/又は、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【符号の説明】
【0183】
10 高分子分散型液晶装置
20 窓
22 サッシ
24 窓ガラス
110 高分子分散型液晶パネル
110A 第1露出部
110B 第2露出部
111 透明基板
112 透明電極
113 液晶層
114 透明電極
115 透明基板
116A,116B 銀ペースト層
117A,117B 銅箔層
118A,118B 半田
120 額縁
130 バッテリ
131 スイッチ
140 駆動回路
141 昇圧回路
142 第1電流制限回路
143 第2電流制限回路
144 第3電流制限回路
145 第4電流制限回路
150 制御回路
151 電圧モニター回路
152 降圧回路
153 制御部
154 CPU
155 EEPROM
161 配線
162 配線
171 極性情報保持部
172 極性決定部
173 印加制御部
174 経過時間計測部
175 閾値時間情報保持部
176 入出力部
177 動作モード決定部
178 累積印加時間情報取得部
179 累積印加時間情報保持部
Δt 閾値時間(所定の時間の一例)
Δt' 非印加期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15