(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物パッケージ、及び2液硬化型熱伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20241119BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20241119BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20241119BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20241119BHJP
B65D 81/32 20060101ALI20241119BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/01
C08K5/5415
B65D81/32 Q
C09K5/14 E
(21)【出願番号】P 2021527660
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2020024668
(87)【国際公開番号】W WO2020262407
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019119085
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大希
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/155950(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/021826(WO,A1)
【文献】特開2000-080280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製容器と、前記樹脂製容器の内部に充填される熱伝導性シリコーン系組成物とを備える熱伝導性組成物パッケージであって、
前記樹脂製容器が、JIS Z0208に準拠した方法で測定した40℃、90%RHにおける透湿度が0.01~10g/m
2・24hrであり、
前記熱伝導性シリコーン系組成物が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、熱伝導性充填材と、アルコキシシラン化合物及びアルコキシシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種のケイ素化合物とを含有し、
前記ケイ素化合物が、分子量180以上であり、かつアルコキシ基含有量が20質量%以上であり、
前記熱伝導性シリコーン系組成物における有機ケイ素系化合物全量に対する、前記ケイ素化合物の含有量が0.1~2.5質量%であり、
前記熱伝導性組成物パッケージが、第1及び第2の容器と、前記第1及び第2の容器それぞれに充填される第1及び第2の組成物とを備え、
前記第1の組成物が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、付加反応触媒とを含み、
前記第2の容器が前記樹脂製容器であり、かつ前記第2の組成物が前記熱伝導性シリコーン系組成物であ
り、
前記第1の組成物におけるケイ素化合物の含有量が、前記第1の組成物における有機ケイ素系化合物全量に対して、0~10質量%である熱伝導性組成物パッケージ(縮合反応用触媒を含むものを除く。)。
【請求項2】
前記第1の組成物が、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンを含まない請求項1に記載の熱伝導性組成物パッケージ。
【請求項3】
前記第2の組成物が、付加反応触媒を含まない請求項1又は2に記載の熱伝導性組成物パッケージ。
【請求項4】
第1の組成物及び第2の組成物からなり、これらを混合することで硬化が促進される2液硬化型熱伝導性組成物であって、
前記第1の組成物が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、付加反応触媒と、を含み、
前記第2の組成物が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、熱伝導性充填材と、アルコキシシラン化合物及びアルコキシシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種のケイ素化合物とを含有し、
前記ケイ素化合物が、分子量180以上であり、かつアルコキシ基含有量が20質量%以上であり、
前記第2の組成物における有機ケイ素系化合物全量に対する、前記ケイ素化合物の含有量が0.1~2.5質量%であ
り、
前記第1の組成物におけるケイ素化合物の含有量が、前記第1の組成物における有機ケイ素系化合物全量に対して、0~10質量%である2液硬化型熱伝導性組成物(縮合反応用触媒を含むものを除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物パッケージ、及び2液硬化型熱伝導性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性組成物は、硬化可能で液状のものが広く知られており、発熱体と放熱体の間に充填し、その後、硬化することで硬化物を形成し、その硬化物が発熱体が発する熱を放熱体に伝える熱伝導性部材として使用される。硬化可能な液状の熱伝導性組成物は、流動性があるため、発熱体と放熱体の間の任意の隙間を埋めることができる。そのため、形成される硬化物は、発熱体と放熱体の隙間が一定でなくても確実にその隙間を埋めることができ、熱伝導性の間隙材として利用されている。熱伝導性の間隙材は、発熱体の表面、および、放熱体の表面と密着させることで、良好な熱伝導性を発揮できる。
【0003】
上記した熱伝導性組成物としては、アルケニル含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、熱伝導性充填材とを備える硬化性シリコーン系組成物が広く知られている。この熱伝導性組成物においては、例えば特許文献1に開示されるように、熱伝導性充填材の濡れ性を向上させたり、熱伝導性充填材を高充填としても熱伝導性組成物の流動性を確保したりするために、アルコキシシラン化合物、アルコキシシロキサンオリゴマーなどが使用されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱伝導性組成物として使用される硬化性シリコーン系組成物は、ドラム缶などの金属容器に充填されて、保存、販売されることが多い。しかしながら、近年、熱伝導性組成物は、バッテリーモジュールなどの自動車用部品に使用されたりすることで使用用途が拡大されつつあり、プラスチックシリンジや、プラスチックバレルなどの樹脂製容器に充填した形態で販売、流通されることが増えつつある。
しかし、硬化性シリコーン系組成物よりなる熱伝導性組成物は、プラスチック容器に充填して長期間保管すると、硬化性が低下するという不具合が生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は、硬化性を有する熱伝導性シリコーン系組成物を樹脂製容器に充填して長期間保管しても、硬化性の低下を防止できる熱伝導性組成物パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、樹脂製容器に硬化性を有する熱伝導性シリコーン系組成物を充填した場合に、硬化性が低下する要因について検討したところ、樹脂製容器は金属容器に比べて耐湿性が低く、樹脂製容器の壁面を介して、微小量の水分が樹脂製容器内部に浸入しており、その微小量の水分がシリコーン系組成物の硬化性を低下させていることを突き止めた。そして、さらに鋭意検討の結果、樹脂製容器に、硬化性を有する熱伝導性シリコーン系組成物を充填する場合であっても、透湿度が一定範囲内の樹脂製容器を使用しつつ、シリコーン系組成物に特定のケイ素化合物を一定量含有させることで、樹脂製容器内に浸入する水分による硬化性の低下を防止できることを見出し、以下の本発明を完成された。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[5]を要旨とする。
[1]樹脂製容器と、前記樹脂製容器の内部に充填される熱伝導性シリコーン系組成物とを備える熱伝導性組成物パッケージであって、
前記樹脂製容器が、JIS Z0208に準拠した方法で測定した40℃、90%RHにおける透湿度が0.01~10g/m2・24hrであり、
前記熱伝導性シリコーン系組成物が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、熱伝導性充填材と、アルコキシシラン化合物及びアルコキシシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種のケイ素化合物とを含有し、
前記ケイ素化合物が、分子量180以上であり、かつアルコキシ基含有量が20質量%以上であり、
前記熱伝導性シリコーン系組成物における有機ケイ素系化合物全量に対する、前記ケイ素化合物の含有量が0.1~10質量%である熱伝導性組成物パッケージ。
[2]前記熱伝導性組成物パッケージが、第1及び第2の容器と、前記第1及び第2の容器それぞれに充填される第1及び第2の組成物とを備え、
前記第1の組成物が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、付加反応触媒とを含み、
前記第2の容器が前記樹脂製容器であり、かつ前記第2の組成物が前記熱伝導性シリコーン系組成物である、上記[1]に記載の熱伝導性組成物パッケージ。
[3]前記第1の組成物が、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンを含まない上記[2]に記載の熱伝導性組成物パッケージ。
[4]前記第2の組成物が、付加反応触媒を含まない上記[2]又は[3]に記載の熱伝導性組成物パッケージ。
[5]第1の組成物及び第2の組成物からなり、これらを混合することで硬化が促進される2液硬化型熱伝導性組成物であって、
前記第1の組成物が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、付加反応触媒と、を含み、
前記第2の組成物が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、熱伝導性充填材と、アルコキシシラン化合物及びアルコキシシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種のケイ素化合物とを含有し、
前記ケイ素化合物が、分子量180以上であり、かつアルコキシ基含有量が20質量%以上であり、
前記第2の組成物における、有機ケイ素系化合物全量に対する、前記ケイ素化合物の含有量が0.1~10質量%である2液硬化型熱伝導性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化性を有する熱伝導性シリコーン系組成物を樹脂製容器に充填して長期間保管しても、硬化性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】樹脂製容器として使用されるバレルの一実施形態である。
【
図2】樹脂製容器として使用される2液型バレルの一実施形態である。
【
図3】押し刺し試験の概略を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<熱伝導性組成物パッケージ>
本発明の熱伝導性組成物パッケージは、樹脂製容器と、樹脂製容器の内部に充填される熱伝導性シリコーン系組成物とを備える。
【0012】
[樹脂製容器]
本発明で使用する樹脂製容器は、JIS Z0208に準拠した方法で測定した40℃、90%RHにおける透湿度が0.01~10g/m2・24hrとなるものである。樹脂製容器は、透湿度が10g/m2・24hrより大きくなると、保管時に樹脂製容器を介して容器内部に浸入する水分が多くなりすぎて、熱伝導性シリコーン系組成物を後述する配合にしても、長期保管時の硬化性の低下を十分に防止することができない。また、透湿度が0.01g/m2・24hrより小さくなると、樹脂製容器を汎用的に製造することが難しくなる。
これら観点から、樹脂製容器の透湿度は、0.01~5.0g/m2・24hrが好ましく、0.05~1.0g/m2・24hrがより好ましい。なお、樹脂製容器の透湿度は、樹脂製容器の最小厚み部分の透湿度である。具体的には、樹脂製容器の最小厚みと同じ厚みを有し、かつ樹脂製容器の容器壁面と同じ素材の樹脂よりなるサンプルを作製して、そのサンプルの透湿度をJIS Z0208に準拠して測定して求めるとよい。
【0013】
樹脂製容器の材質は、充填される熱伝導性シリコーン系組成物に対して不活性であり、シリコーン系組成物に接触しても反応したり腐食したりせず、また、透湿度が上記範囲内に調整できる樹脂材料であればよい。具体的には、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリブチルテレフタレート(PBT)樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素系樹脂などが挙げられる。
これら樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。また、樹脂製容器は、単層構造を有していてよいし、多層構造を有していてもよい。多層構造の場合には、例えば、ガスバリア性の高いガスバリア層を内層及び外層により挟みこむ構造を有していてもよいし、その他の構造を有していてもよい。
【0014】
樹脂製容器は、内部に熱伝導性シリコーン系組成物が収納される空間を有する部材であり、その空間と、外部とが樹脂材料により仕切られるものである。樹脂製容器は、熱伝導性シリコーン系組成物が収納される空間と外部とを仕切る壁面が樹脂製であればよく、樹脂製容器の一部が金属、無機材料などにより構成されていてもよい。
【0015】
樹脂製容器の厚みは、透湿度が上記範囲内となる限り特に限定されないが、例えば0.1~50mmである。0.1mm以上とすることで、樹脂製容器の強度を確保でき、50mm以下とすることで樹脂製容器の重量などが必要以上に大きくなったりすることを防止する。また、厚みを1~50mmとすることで、透湿度が上記した所定の範囲内になりやすくなる。これら観点から、樹脂製容器の厚みは、好ましくは0.2~20mm、より好ましくは0.5~8mmである。なお、樹脂製容器の厚みは、熱伝導性シリコーン系組成物が収納される空間の壁面の厚みであり、壁面の最小厚みが、上記範囲内であるとよい。なお、本明細書において壁面は、容器の開口部を封止する部材(蓋体)は含まず、それ以外の部分である。
【0016】
容器は、熱伝導性シリコーン系組成物を収納できる容器であればいかなる容器であってもよく、ボトル、ドラム、袋体、箱体、チューブ、バレルなどいかなる態様でよい。また、これら各容器は、一般的に熱伝導性シリコーン系組成物を充填、又は排出するための開口部が設けられる。開口部は、例えばキャップなどの蓋部が設けられ、容器の内部が密閉されるとよい。容器としては、上記のなかでは、バレルが好ましい。バレルは、筒状の容器であり、例えば内部にピストンが挿入されることでシリンジとして使用される。
【0017】
バレルの一実施形態を
図1に示す。
図1に示すように、バレル10は、内部にピストン(図示しない)が挿入されてシリンジとして使用されるための容器であり、内部に熱伝導性シリコーン系組成物16が充填される。バレル10は、後端部11に開口部12が設けられ、その開口部12が蓋体13で封止されている。また、先端部14にも、吐出口(開口部)15が設けられる。吐出口15は、図示しない蓋体によって封止されている。バレル10は、蓋体13が外されて、開口部12からピストンが挿入されて、バレルの軸方向に往復運動するピストンによって、熱伝導性シリコーン系組成物16が先端部側に押し出されて、吐出口15から外部に吐出されて使用される。
【0018】
また、熱伝導性組成物パッケージは、後述するように2液型が使用される場合には、第1の組成物(第1剤)が充填される第1の容器と、第2の組成物(第2剤)が充填される第2の容器を備えるとよい。熱伝導性組成物パッケージは、第1の容器と、第2の容器とを備える場合には、少なくとも第2の容器のみが、上記した特定の樹脂製容器であるとよい。本発明において、2液型である場合、後述するように、第2の組成物が本発明の熱伝導性シリコーン系組成物となるので、第2の容器のみを上記したとおりの所定の透湿度を有するようにすれば、本発明の効果を得ることができる。ただし、第1の容器も、上記した特定の樹脂製容器としてもよい。
【0019】
第1及び第2の容器は互いに分離して別体として形成されてよいが、一体的に形成されていてもよい。
図2は、第1の容器と、第2の容器が一体的に形成され、1つの部材とされた2液型バレル20を示す。2液型バレル20は、それぞれが第1及び第2の容器となる第1及び第2のバレル20A、20Bを備える。第1及び第2のバレル20A、20Bの内部それぞれには、第1の組成物26A,第2の組成物26Bが充填される。各バレル20A、20Bそれぞれは、後端部21A、21Bに開口部22A,22Bが設けられ、その開口部22A,22Bが蓋体23A、23Bで封止されている。また、各バレル20A、20Bの先端部24A、24Bにも、開口部25A,25Bが設けられる。
【0020】
バレル20A、20Bは、一体に形成され、これにより、第1及び第2の容器が一体的な1つの部材とされる。各バレル20A,20Bは、各蓋体23A,23Bが外されて、開口部22A,22Bからピストンが挿入されて、バレルの軸方向に往復運動するピストンによって、第1の組成物26A,26Bが先端部側に押し出されて、開口部25A、25Bから排出される。なお、開口部22A,22Bから各バレル20A、20Bに挿入されるピストンは、後端部が接続されるなどして一体となっていてもよい。一体にされたピストンは、押圧されると同じ距離移動することになるので、開口部25A、25Bから、設定された比率(例えば、質量比1/1)で第1の組成物26Aと、第2の組成物26Bを排出させることが可能になる。
【0021】
2液型バレル20は、開口部25A、25Bの両方に接続される混合部29を備えるとよい。混合部29には、さらに吐出口28が接続される。開口部25A、25Bから排出された第1の組成物26Aと、第2の組成物26Bは、混合部29で混合され、得られた混合液は、吐出口28から2液型バレル20の外部に吐出される。なお、吐出口28は、使用しない場合には、不図示のキャップなどの蓋部によりシールされる。
混合部29は、
図2に示すように、開口部25A、25Bの両方に接続され、第1の組成物26Aと、第2の組成物26Bが合流される空間が内部にあればよいが、例えば、スタティックミキサー(図示しない)により構成されることが好ましい。
【0022】
スタティックミキサーは、駆動部のない混合器であって、管体内部に流体を通過させることで、流体を混合するものである。スタティックミキサーは、例えば、管体の内部にミキサーエレメントが配置されたものが挙げられる。ミキサーエレメントとしては、螺旋状に形成されたもの、複数の邪魔板が形成されたものなどがある。
なお、2液型バレル20は、上記のように混合部が設けられたが、混合部が設けられなくてもよい。混合部が設けられない場合、各バレル20A,20Bの開口部25A、25Bが、2液型バレル20の外部に第1の組成物26A、及び第2の組成物26Bそれぞれを吐出する吐出口となる。この場合、各バレル20A,20Bの開口部25A、25Bから外部に吐出された第1の組成物26A及び第2の組成物26は、2液型バレル20の外部で公知の手段で適宜混合されるとよい。
【0023】
[熱伝導性シリコーン系組成物]
本発明で使用する熱伝導性シリコーン系組成物は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、熱伝導性充填材と、アルコキシシラン化合物及びアルコキシシロキサン化合物から選ばれる少なくとも一種のケイ素化合物とを含有する。
【0024】
(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンにおいて使用されるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基等の炭素数2~6のものが例示されるが、合成のし易さ、コストの面からビニル基が好ましい。アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、分子中に1つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであればよいが、分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを使用することが好ましく、分子中に2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを使用することがより好ましい。
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを単独で使用してもよいが、分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと分子中に1つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを併用してもよい。
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、好ましくはビニル基を末端に有するビニル末端オルガノポリシロキサンであり、より好ましくはビニル基を両末端に有するビニル両末端オルガノポリシロキサンである。
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
(ハイドロジェンオルガノポリシロキサン)
ハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル基(SiH)を有するオルガノポリシロキサンであり、好ましくは少なくともヒドロシリル基(SiH)を2つ含有する。ハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに対して付加反応して、熱伝導性シリコーン系組成物を硬化させる硬化剤となるものである。ハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンを含有する熱伝導性シリコーン系組成物において、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンのみが、後述するように、副反応により失活、変質等すると、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンの比率が設計値からずれることになる。一方で、これら両方を含有する熱伝導性シリコーン系組成物が充填された、熱伝導性組成物パッケージでは、これらの比率を使用現場において調整することが難しい。そのため、長期保管時に失活、変質等した熱伝導性シリコーン系組成物は、再利用することが難しく、廃棄せざるを得ないことが多い。
本発明においては、後述するように、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンの副反応が適切に防止される。したがって、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンを含有し、かつ熱伝導性組成物パッケージにおいて長期間保管された熱伝導性シリコーン系組成物であっても廃棄することなく、適切に使用することができる。
【0027】
(熱伝導性充填材)
熱伝導性充填材は、熱伝導性シリコーン系組成物から形成される硬化体に熱伝導性を付与する物質であり、熱伝導性が良好な物質を用いることができる。熱伝導性充填材の材料としては、例えば、金属、炭素、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、及び金属水酸化物が挙げられる。金属としては、例えば、銅及びアルミニウムが挙げられる。炭素としては、例えば、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、樹脂繊維を炭化処理した繊維、樹脂繊維を黒鉛化処理した繊維、及びグラファイト粉末が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、及び石英が挙げられ、金属窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウムが挙げられる。金属炭化物としては、例えば、炭化ケイ素が挙げられ、金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0028】
熱伝導性充填材の形状は、球状であってもよいし、繊維状や板状等の非球状(異方性を有する形状)であってもよい。熱伝導性充填材は、平均粒径の異なる複数の球状粒子群を含むことが好ましい。この場合、熱伝導性シリコーン系組成物の粘度を低減することができる。すなわち、所定粘度において熱伝導性充填材を高充填した熱伝導性シリコーン系組成物が得られるため、熱伝導性シリコーン系組成物を低粘度にしつつ、熱伝導性シリコーン系組成物から形成される熱伝導性部材の熱伝導性を高めることができる。
【0029】
また、熱伝導性充填材としては、電気絶縁性を有する物質を使用することが好ましい。熱伝導性充填材の好適な具体例としては、電気絶縁性、熱伝導性に優れる点から、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。熱伝導性充填材は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した中でも、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムから選択される1種以上がより好ましく、これら両方を使用することがさらに好ましい。
【0030】
熱伝導性シリコーン系組成物における、熱伝導性充填材の含有量は、有機ケイ素系化合物全量100質量部に対して、例えば100~2000質量部の範囲である。なお、有機ケイ素系化合物全量は、熱伝導性シリコーン系組成物に含まれる有機ケイ素系化合物の全量であり、オルガノポリシロキサンと、オルガノポリシロキサン以外の有機ケイ素系化合物(後述するアルコキシシロキサン化合物など)の合計量である。有機ケイ素系化合物は、ケイ素元素を含有するする有機化合物である。有機ケイ素系化合物全量は、例えば、熱伝導性シリコーン系組成物にアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、ハイドロジェンオルガノポリシロキサン、及びケイ素化合物が含有される場合には、これらの合計量である。また、熱伝導性シリコーン系組成物にアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、ハイドロジェンオルガノポリシロキサン、ケイ素化合物、及び任意成分であるその他のオルガノポリシロキサンが含有される場合には、これらの合計量である。
熱伝導性充填材の含有量を100質量部以上とすることで、熱伝導性シリコーン系組成物から形成される熱伝導性部材の熱伝導性が良好となる。また、1500質量部以下とすることで、熱伝導性シリコーン系組成物の粘度が高くなりすぎることを防止し、取扱い性が良好となる。これらの観点から、熱伝導性充填材の含有量は、上記有機ケイ素系化合物全量100質量部に対して、好ましくは400~1600質量部の範囲、より好ましくは600~1200質量部の範囲である。
【0031】
(ケイ素化合物)
本発明の熱伝導性シリコーン系組成物は、上記のとおりアルコキシシラン化合物及びアルコキシシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種のケイ素化合物を含有する。本発明のケイ素化合物は、分子量180以上であり、かつアルコキシ基含有量が20質量%以上となるものである。また、熱伝導性シリコーン系組成物におけるケイ素化合物の含有量は、上記した有機ケイ素系化合物全量に対して、0.1~10質量%である。
【0032】
本発明では、特定のケイ素化合物を特定量含有させることで耐湿性が良好となり、一定の透湿度を有する樹脂製容器に熱伝導性シリコーン系組成物を充填した場合において、長期間保管後においても硬化性を良好に維持でき、長期保管安定性が良好となる。その原理は、定かではないが、以下のように推定される。
熱伝導性シリコーン系組成物に含有されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、樹脂製容器内部に浸入された微小量の水分によって副反応を起こして組成物の硬化性を低下させるが、本発明では、特定のケイ素化合物を所定量含有することで、そのケイ素化合物が水と優先的に反応して、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンの副反応が防止される。また、熱伝導性シリコーン系組成物において、特定のケイ素化合物の含有量が所定量であるので、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンとアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの付加反応がケイ素化合物によって阻害されることがなく、高い硬化性を維持できる。
さらに、熱伝導性シリコーン系組成物は、ケイ素化合物を含有することで、オルガノポリシロキサンと熱伝導性充填材の親和性が向上して、熱伝導性充填材の分散性が高まり、熱伝導性シリコーン系組成物から形成される熱伝導性部材の熱伝導率が高められ、放熱性が向上する。
【0033】
一方で、ケイ素化合物の分子量が180未満となったり、ケイ素化合物におけるアルコキシ基含有量が20質量%未満となったりすると、熱伝導性シリコーン系組成物の耐湿性を十分に向上させることができず、長期間保管後の硬化性を良好にできない。これは、ケイ素化合物によって、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと水の副反応を十分に防止できないためと推定される。より詳しくは、分子量が180未満の場合には、所定の容器に充填されていても徐々に揮発してしまうことがあり長期間保管するとケイ素化合物の含有量が低下してしまうものと考えられる。また、ケイ素化合物におけるアルコキシ基含有量が20質量%未満の場合にも、前記副反応を抑制するためのアルコキシ基の有効量が少なくなるためであると考えられる。
耐湿性を向上させて、長期間保管後の硬化性を優れたものに維持する観点から、ケイ素化合物の分子量は195以上が好ましく、230以上がより好ましく、260以上がさらに好ましい。また、耐湿性を向上させて長期保管安定性を良好にする観点、及び硬化性を向上させる観点から、ケイ素化合物の分子量は、例えば20000以下、好ましくは12000以下、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは3500以下である。
なお、分子量とは、アルコキシシラン化合物では化学構造式から計算できる式量を意味し、アルコキシシロキサン化合物は重量平均分子量である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0034】
ケイ素化合物におけるアルコキシ基含有量は、上記したとおり20質量%以上であるが、24質量%以上が好ましい。24質量%以上とすることで、熱伝導性シリコーン系組成物の耐湿性をより一層向上させて、長期間保管後の硬化性を優れたものにできる。また、熱伝導性充填材との親和性も向上させやすくなる。
ケイ素化合物おけるアルコキシ基含有量は、オルガノポリシロキサンとの親和性を良好にする観点から、例えば75質量%以下であるが、好ましくは70質量%以下である。
アルコキシシラン化合物のアルコキシ基含有量は、化学構造式により算出でき、アルコキシシロキサン化合物のアルコキシ基含有量は、1H-NMRにより定量することができる。
【0035】
熱伝導性シリコーン系組成物におけるケイ素化合物の含有量は、上記の通り、有機ケイ素系化合物全量に対して、0.1~10質量%であるが、0.1質量%未満とすると、ケイ素化合物を配合した効果を十分に発揮できずに、耐湿性が低下して、長期保管安定性が低下するおそれがある。また、10質量%より多くなるとケイ素化合物が付加反応を阻害して硬化性が低下したり、熱伝導性シリコーン系組成物から形成される熱伝導性部材の物性を低下させたりするおそれがある。
耐湿性、硬化性、及び硬化物の物性の観点から、ケイ素化合物の含有量は、有機ケイ素系化合物全量に対して、0.3~7質量%が好ましく、0.4~5質量%がより好ましく、0.5~2.5質量%がさらに好ましい。
【0036】
<アルコキシシラン化合物>
アルコキシシラン化合物は、ケイ素原子(Si)が持つ4個の結合のうち、1~3個がアルコキシ基と結合し、残余の結合が有機置換基と結合した構造を有する化合物である。アルコキシシラン化合物は、アルコキシ基を有することで、水とハイドロジェンオルガノポリシロキサンとが反応することを阻害して耐湿性を向上させることが可能である。また、熱伝導性充填材との親和性を高めて、熱伝導性シリコーン系組成物における熱伝導性充填材の分散性を向上させる。
【0037】
アルコキシシラン化合物は、分子中に1個のケイ素原子(Si)を有する化合物でもよいし、2個以上のケイ素原子(Si)を有する化合物でもよい。アルコキシシラン化合物は、具体的には1~4個のケイ素原子(Si)を有する化合物が好ましく、より好ましくは1~3個のケイ素原子(Si)を有する化合物、さらに好ましくは1個又は2個のケイ素原子(Si)を有する化合物、最も好ましくは1個のケイ素原子(Si)を有する化合物である。なお、分子中に2個以上のケイ素原子(Si)を有する場合、ケイ素原子(Si)同士は、有機置換基を介して結合されるとよい。
【0038】
アルコキシシラン化合物が有するアルコキシ基は、例えば炭素数1~6のアルコキシ基であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、及びヘキサトキシ基が挙げられる。入手容易性、耐湿性の観点から、アルコキシ基は炭素数1~2が好ましく、したがって、アルコキシシラン化合物は、メトキシ基及びエトキシ基のいずれかを有するアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0039】
アルコキシシラン化合物は、各ケイ素原子に結合するアルコキシ基の数が、熱伝導性充填材との親和性を高める観点、及び耐湿性を高める観点から、2又は3個であることが好ましく、3個であることがより好ましい。したがって、アルコキシシラン化合物は、トリメトキシシラン化合物及びトリエトキシシラン化合物から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。
【0040】
アルコキシシラン化合物において、ケイ素原子(Si)と結合する有機置換基は、炭化水素基でもよいし、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、及びヒドロキシル基から選択される少なくとも1つの官能基を有する基であってもよい。有機置換基は、後述する式(1)において、R1によって示される有機置換基であり、詳しくは後述するとおりである。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基又はアクリロイル基を意味し、他の類似用語も同様である。
【0041】
アルコキシシラン化合物は、例えば、以下の式(1)で示される化合物である。
【化1】
上記式(1)において、R
1は上記のとおり有機置換基であるが、例えば炭素数が1~30の有機置換基である。R
2は互いに独立に炭素数1~4のアルキル基であり、R
3は互いに独立に炭素数1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数である。また、nは1~4の整数である。
【0042】
nは、分子中に含まれるケイ素原子(Si)の数を表し、上記のとおり、1~4であるが、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
R1の炭素数は、アルコキシシラン化合物の分子量を高くして耐湿性を向上させる観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、さらに好ましくは6以上である。また、硬化性及び耐湿性の観点から、R1の炭素数は、20以下が好ましく、16以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。
【0043】
R1は、炭化水素基でもよいし、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、及びヒドロキシル基から選択される少なくとも1つの官能基を有する基であってもよい。これら官能基を有するR1は、例えば、炭化水素基との組み合わせからなる基であるとよく、これら官能基は、好ましくは炭化水素基を介してケイ素原子(Si)に結合される。
官能基とケイ素原子を結合する炭化水素基は、二価の炭化水素基が好ましく、二価の飽和炭化水素基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基の具体例としては、後述するアルキレン基の具体例と同様であるが、この場合の好ましいアルキレン基は、炭素数2~6程度のアルキレン基である。
【0044】
R1は、オルガノポリシロキサンの硬化反応を阻害せずに硬化性を良好にする観点から、上記した中では、炭化水素基、又は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、及びイソシアヌレート基から選択される少なくとも1つの官能基を有する基が好ましく、炭化水素基、又は(メタ)アクリロキシ基、及びイソシアヌレート基から選択される官能基を有する基がさらに好ましく、硬化性及び耐湿性の両方を優れたものとし、かつ硬化物の物性を良好とする観点から、炭化水素基が好ましい。
R1を構成する炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香環を有してもよい。また、脂肪族炭化水素基は、不飽和又は飽和でもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アルキレン基、アルケニル基などが挙げられるが、これらのなかでは、アルキル基、アリール基、アルキレン基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。
【0045】
アルキル基は、直鎖でもよいし、環状構造を有してもよいし、分岐構造を有していてもよい。アルキル基の具体例としては、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数3~16程度のアルキル基が挙げられる。上記のなかでは、特にn-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等などの炭素数6~12のアルキル基が好ましい。
また、アリール基としては、トリル基、フェニル基、キシリル基、ベンジル基、フェニルエチル基などの炭素数6~12程度のアリール基が挙げられ、好ましくは炭素数6~9のアリール基である。
アルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基の炭素数2~12程度のアルキレン基が挙げられ、好ましくはヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基などの炭素数6~10のアルキレン基が好ましい。
【0046】
R2はメチル基、エチル基が好ましく、メチル基であることが更に好ましい。R3はメチル基、エチル基が好ましく、メチル基であることが更に好ましい。aは1~3であるが、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0047】
アルコキシシラン化合物の好ましい具体例としては、アルキル基含有アルコキシシラン化合物、アルキレン基含有アルコキシシラン化合物、(メタ)アクリロイル基含有アルコキシシラン化合物、芳香族基含有アルコキシシラン化合物、イソシアヌレート基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0048】
アルキル基含有アルコキシシラン化合物は、式(1)において、R1がアルキル基、nが1の化合物であり、aが2又は3であることが好ましく、aは3であることがより好ましい。R1の炭素数は3~16が好ましく、6~12がより好ましい。さらに、R2、R3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基が好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
アルキル基含有アルコキシシラン化合物の好ましい具体例としては、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのなかでは、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0049】
アルキレン基含有アルコキシシラン化合物は、例えば、R1がアルキレン基、nが2の化合物であり、aが2又は3であることが好ましく、aは3であることがより好ましい。また、R1の炭素数は2~12が好ましく、6~10がより好ましい。さらに、R2、R3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基が好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
アルキレン基含有アルコキシシラン化合物の好ましい具体例としては、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,10-ビス(トリメトキシシリル)デカン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,10-ビス(トリエトキシシリル)デカンなどが挙げられ、これらのなかでは、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタンがより好ましい。
【0050】
(メタ)アクリロイル基含有アルコキシシラン化合物は、(メタ)アクリロキシ基を含有することが好ましく、具体的には、R1が(メタ)アクリロキシアルキル基であり、nが1である化合物が挙げられ、aが2又は3であることが好ましく、aは3であることがより好ましい。また、R1の炭素数は4~16が好ましく、5~10がより好ましい。さらに、R2、R3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基が好ましく、メチル基であることが更に好ましい。好適な具体例としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、これらのなかでは、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0051】
芳香族基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、R1がアリール基であり、nが1である化合物が挙げられ、aが2又は3であることが好ましく、aは3であることがより好ましい。また、R1の炭素数は6~12が好ましく、6~9がより好ましい。さらに、R2、R3はそれぞれ独立にメチル基、エチル基が好ましく、メチル基であることが更に好ましい。芳香族基含有アルコキシシラン化合物の好適な具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシランなどが挙げられる。
イソシアヌレート基含有アルコキシシラン化合物としては、トリス-(トリメトキシシリルアルキル)イソシアヌレートが挙げられる。この場合、R1の炭素数は9~18が好ましく、9~15がより好ましい。具体的には、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0052】
(アルコキシシロキサン化合物)
アルコキシシロキサン化合物は、二つ以上のシロキサン結合を有し、少なくとも一つのケイ素原子にアルコキシ基が結合した構造を有する。また、アルコキシシロキサン化合物は、シロキサン結合を構成するケイ素原子のうち、少なくとも一つのケイ素原子に有機置換基が結合した構造を有する。
アルコキシシロキサン化合物は、アルコキシ基を有するため、アルコキシシラン化合物と同様に熱伝導性シリコーン系組成物の耐湿性を向上できる。また、アルコキシシロキサン化合物は、アルコキシ基を有するため、熱伝導性充填材との親和性を高めるができる。さらに、シロキサン構造を有するために、オルガノポリシロキサンとの親和性が優れたものとなる。そのため、熱伝導性充填材の分散性を高めることができ、熱伝導性シリコーン系組成物から形成される熱伝導性部材の熱伝導率を高めやすくなる。
【0053】
アルコキシシロキサン化合物が有するアルコキシ基は、例えば炭素数1~6であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、及びヘキサトキシ基が挙げられる。入手容易性、耐湿性の観点から、アルコキシ基は炭素数1~2が好ましく、炭素数1がより好ましい。したがって、アルコキシシロキサン化合物に含有されるアルコキシ基は、メトキシ基及びエトキシ基のいずれかが好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0054】
アルコキシシロキサン化合物の有する有機置換基は、炭化水素基でもよいし、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、及びヒドロキシル基から選択される少なくとも1つの官能基を有する基であってもよい。これら官能基を有する有機置換基は、例えば、炭化水素基との組み合わせからなる基であってもよい。また、これら官能基は、直接ケイ素原子(Si)に結合されてもよいし、炭化水素基を介してケイ素原子(Si)に結合されてもよい。官能基とケイ素原子を結合する炭化水素基は、二価の炭化水素基が好ましく、二価の飽和炭化水素基がより好ましく、アルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基の具体例は、アルコキシシラン化合物で説明したものと同様であるが、炭素数2~6程度のアルキレン基が好ましい。
【0055】
有機置換基は、オルガノポリシロキサンの硬化反応を阻害せずに硬化性を良好にする観点から、上記した中では、炭化水素基、又は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、及びイソシアヌレート基から選択される少なくとも1つの官能基を有する基が好ましく、より好ましくは炭化水素基である。各炭化水素基の炭素数は、例えば1~12であり、好ましくは1~9、より好ましくは1~6である。
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香環を有してもよい。また、脂肪族炭化水素基は、不飽和又は飽和でもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基などが挙げられるが、これらのなかでは、アルキル基、アリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。また、アルコキシシロキサン化合物は、典型的には複数の有機置換基を有するが、そのような場合、複数の有機置換基は、アルキル基及びアリール基からなるか、もしくはアルキル基からなることが好ましい。
【0056】
炭化水素基に使用されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数3~16程度のアルキル基が挙げられる。上記のなかでは、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、最も好ましくはメチル基である。
また、アリール基としては、トリル基、フェニル基、キシリル基、ベンジル基、フェニルエチル基などの炭素数6~12程度のアリール基が挙げられ、好ましくは炭素数6~9のアリール基であり、最も好ましくはフェニル基である。
【0057】
アルコキシシロキサン化合物としては、例えば、メチルメトキシシロキサンオリゴマー、メチルフェニルメトキシシロキサンオリゴマー、メチルエポキシメトキシシロキサンオリゴマー、及びメチル(メタ)アクリロイルメトキシシロキサンオリゴマーが挙げられる。
ケイ素化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を使用してもよい。ケイ素化合物は、アルコキシシラン化合物を1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、アルコキシシロキサン化合物を1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。さらには、1種以上のアルコキシシラン化合物と、1種以上のアルコキシシラン化合物とを併用してもよい。ケイ素化合物としては、アルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。
【0058】
(その他のオルガノポリシロキサン)
熱伝導性シリコーン系組成物は、有機ケイ素系化合物としてその他のオルガノポリシロキサンを含有してもよい。その他のオルガノポリシロキサンは、上記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、ハイドロジェンオルガノポリシロキサン、及びケイ素化合物であるアルコキシシロキサン化合物以外のオルガノポリシロキサンであり、室温(25℃)において液状のオルガノポリシロキサンである。その他のオルガノポリシロキサンは、熱伝導性シリコーン系組成物の粘度を低減したり、硬化物の硬さを調整したりするために、任意で添加される成分である。
その他のオルガノポリシロキサンの具体的としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルの他、シロキサン結合を有する主鎖、主鎖に結合する側鎖、又は主鎖の末端に非反応性の有機基を導入した、非反応性の変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。非反応性の変性オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、及びフェニル変性シリコーンオイルが挙げられる。
上記の中でも、その他のオルガノポリシロキサンとしてはストレートシリコーンオイルが好ましく、ストレートシリコーンオイルの中でも、ジメチルシリコーンオイルがより好ましい。
上記その他のオルガノポリシロキサンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
その他のオルガノポリシロキサンの粘度は、本発明の熱伝導性シリコーン系組成物に良好な流動性を付与する観点から、好ましくは25℃において10mPa・s以上、10,000mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以上、1,000mPa・s以下である。粘度は、B型粘度計によって測定可能であり、例えば、BROOKFIELD回転粘度計DV-Eを用いてスピンドルSC-14の回転子を用い、回転速度10rpmにて測定できる。
【0060】
熱伝導性シリコーン系組成物におけるその他のオルガノポリシロキサンの含有量は、上記した有機ケイ素系化合物全量に対して0~50質量%である。その他のオルガノポリシロキサンの上記含有量は、好ましくは1~30質量%である。
【0061】
(反応遅延剤)
熱伝導性シリコーン系組成物は、反応遅延剤を含有してもよい。反応遅延剤を含有することで、熱伝導性シリコーン系組成物における、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンの不所望の反応を防止できる。そのため、例えば2液型では、第1剤と第2剤とが混合する前は、上記不所望の反応が防止されて保管安定性に優れる一方で、混合後には反応が促進され、速やかに硬化できる。
また、1液型では、反応遅延剤を含有することで、例えば加熱前にアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンが反応することを防止できる。
【0062】
反応遅延剤としては、例えば、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、フェニルブチノール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、α-メチル-α-エチニルベンゼンメタノール等の炭素-炭素三重結合を有するアルコール誘導体;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、ビニル-トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン等のアルキン含有シランが例示される。
熱伝導性シリコーン系組成物における反応遅延剤の含有量は、上記した有機ケイ素系化合物全量100質量部に対して、例えば0.01~2質量部、好ましくは0.02~1質量部、さらに好ましくは0.05~0.5質量部である。
【0063】
(その他の成分)
熱伝導性シリコーン系組成物には、必要に応じて、熱伝導性部材に一般的に使用される上記以外の添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、補強材、着色剤、耐熱向上剤、界面活性剤、分散剤、難燃剤、劣化防止剤、及び可塑剤などが挙げられる。
【0064】
熱伝導性シリコーン系組成物は、一般的に液状であり、その25℃における粘度は、50~2000Pa・sの範囲より選択されることが好ましい。粘度を50Pa・s以上とすることで、熱伝導性充填材の含有量が十分となり、熱伝導性シリコーン系組成物より形成される硬化体において、十分な熱伝導率が得られる。一方、粘度を2000Pa・s以下とすると、熱伝導性充填材の含有量が必要以上に高くなることを防止でき、熱伝導性シリコーン系組成物を容器から吐出などにより排出しやすくなり、作業性が良好となる。また、熱伝導率と、吐出する際の吐出安定性とをバランス良く良好にする観点から、粘度は100~1000Pa・sの範囲とすることがより好ましく、200~600Pa・sの範囲とすることがさらに好ましい。
なお、25℃における粘度は、B型粘度計を用いて、スピンドルの回転速度を10rpmに設定して測定したものである。
【0065】
また、熱伝導性シリコーン系組成物は、熱伝導性充填材の含有量が高く高粘度(例えば、600Pa・s超)である場合には、B型粘度計の回転子が試料に対して滑るなどして粘度をB型粘計で測定することが難しいことがある。一方で、熱伝導性シリコーン系組成物の粘性は、25℃における押し刺し試験の荷重によっても表すことができる。そのため、粘度測定が難しい場合には、押し刺し試験の荷重により粘性を表してもよく、具体的には、熱伝導性シリコーン系組成物は、25℃における押し刺し試験の荷重が0.3N以下であることが好ましい。押し刺し試験の荷重を0.3N以下とすると容器から吐出などにより排出しやすくなり、作業性が良好となる。
【0066】
押し刺し試験は、
図3に示すように、まず熱伝導性シリコーン系組成物30を直径が30mmで高さが50mmの円筒容器31に充填し、遠心器を用いて2000rpm、8秒処理する。この処理により高粘度の熱伝導性シリコーン系組成物であっても脱泡され、容器31の底面に均一厚さで充填された状態となる。また、熱伝導性シリコーン系組成物の充填量は、試験状態で高さが約15mmになるように調整する。次いで、直径1mmの棒状部材32と、その先端に取り付けられ、直径3mmで平坦な底面を有し、かつ厚みが1mmである円板状の押圧部33とを備える押圧体34をロードセルに固定し、押圧部33で熱伝導性シリコーン組成物30を押下する。このとき、押下速度は10mm/minとして、熱伝導性シリコーン組成物30の表面から3mm沈み込むまで押下し、そのときの最大荷重を計測し、押し刺し試験の荷重とする。
【0067】
本発明の熱伝導性シリコーン系組成物は、1液型で使用されてもよいし、2液型で使用されてもよいが、2液型のほうが好ましい。以下、熱伝導性シリコーン系組成物が1液型及び2液型に使用される場合それぞれについてさらに詳細に説明する。
【0068】
<2液型>
本発明の熱伝導性シリコーン系組成物は、2液型で使用される場合、2液型は、第1剤(「第1の組成物」ともいう)と、第2剤(「第2の組成物」ともいう)の組み合わせよりなり、第1剤と第2剤とが混合することで硬化が促進される。
以下の説明においては、第1剤と、第2剤より得られる組成物を2液硬化型熱伝導性組成物して説明する。2液硬化型熱伝導性組成物は、第1剤が主剤(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)を含む組成物であり、第2剤が硬化剤(ハイドロジェンオルガノポリシロキサン)を含む組成物である。2液型では、上記のとおり、第1剤が第1の容器に、第2剤が、上記した特定の樹脂製容器からなる第2の容器に充填され、それにより、2液型の長期保管安定性が確保される。
【0069】
上記した熱伝導性シリコーン系組成物は、主剤であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを硬化させるためのハイドロジェンオルガノポリシロキサンを含み、2液型では第2剤(第2の組成物)として使用される。一方で、第1剤(第1の組成物)には、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに加えて、付加反応触媒を含有する組成物を使用する。
このような第1剤と第2剤を使用することで、第1剤と第2剤を混合した場合に、第1剤及び第2剤に含有されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、第2剤に含有されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンとが付加反応触媒存在下で付加反応し、第1剤と第2剤とが混合して得られる2液硬化型熱伝導性組成物が硬化される。
【0070】
2液硬化型熱伝導性組成物において、第1剤と第2剤の質量比(第2剤/第1剤)は、1又は1に近い値であることが好ましく、具体的には0.9~1.1が好ましく、0.95~1.05がより好ましい。このように、質量比を1又は1に近い値とすることで、2液硬化型熱伝導性組成物の調製が容易になる。
また、2液硬化型熱伝導性組成物において、第1剤と第2剤の粘度比(第2剤/第1剤)が、1又は1に近い値であることが好ましく、具体的には0.5~2.0が好ましく、0.8~1.2がより好ましい。このように、粘度比を1又は1に近い値とすることで、2液硬化型熱伝導性組成物を均一に混合しやすくなる。
【0071】
2液硬化型の組成物では、一般的に、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(主剤)の含有量(質量)が、ハイドロジェンオルガノポリシロキサン(硬化剤)の含有量(質量)よりも多くなる。しかし、本発明では、上記のように第2剤(熱伝導性シリコーン系組成物)にハイドロジェンオルガノポリシロキサンに加えて、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンが含有されることで、上記したように、第1剤と第2剤の質量比を1又は1に近い値に調整しやすくなる。また、後述するように、第1剤及び第2剤の両方に熱伝導性充填材を含有させることでも質量比を1又は1に近い値に調整しやすくなる。
【0072】
第1剤に配合される付加反応触媒としては、各種の金属触媒が使用できるが、白金系触媒が好ましい。白金系触媒は、塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との錯化合物などが挙げられる。付加反応触媒の配合量は、第1剤に含まれる有機ケイ素系化合物全量に対して、例えば、0.1~2000質量ppmである。
【0073】
第1剤(第1の組成物)には、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン及び付加反応触媒に加えて、さらに熱伝導性充填材が含有されることが好ましい。第2剤に加えて、第1剤にも熱伝導性充填材が含有されると、第1剤と第2剤を混合した際に、熱伝導性充填材が2液硬化型熱伝導性組成物において均一に分散しやすくなる。また、2液硬化型熱伝導性組成物を作製する際の第1剤に対する第2剤の質量比および粘度比を上記のとおり1又は1に近い値にしやすくなる。
【0074】
第1剤には、ケイ素化合物を含有してもよい。ケイ素化合物を含有することで、熱伝導性充填材とオルガノポリシロキサンの親和性をより一層高めて、上記したように熱伝導率を向上させやすくなる。なお、第1剤において使用されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、ケイ素化合物、熱伝導性充填材の詳細は上記のとおりであり、その含有量の詳細も上記したとおりである。
すなわち、第1剤における熱伝導性充填材の含有量は、第1剤に含まれる有機ケイ素系化合物全量100質量部に対して、例えば100~2000質量部の範囲であり、好ましくは400~1600質量部の範囲、より好ましくは600~1200質量部の範囲である。
【0075】
同様に、第1剤にケイ素化合物が含有される場合、第1剤におけるケイ素化合物の含有量も、第1剤における上記有機ケイ素系化合物全量に対して、例えば、0.1~10質量%である。0.1質量%以上とすることで、オルガノポリシロキサンと熱伝導性充填材の親和性が向上して、熱伝導性充填材の分散性が高まり、2液硬化型熱伝導性組成物から形成される熱伝導性部材の熱伝導率が高められる。また、10質量%以下とすることで、ケイ素化合物が付加反応を阻害して硬化性が低下することを防止できる。これら観点からケイ素化合物の上記含有量は、0.3~7質量%が好ましく、0.4~5質量%がより好ましく、0.5~2.5質量%がさらに好ましい。
【0076】
ただし、第1剤におけるケイ素化合物の上記含有量は、第2剤におけるケイ素化合物の有機ケイ素系化合物全量に対する上記含有量より少なくすることが好ましい。また、第1剤には、ケイ素化合物を含有しない態様も好ましい。第1剤は、後述するように、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンが含有されないことで、外部から浸入される水分によって硬化性が低下されにくい。そのため、ケイ素化合物の含有量を第2剤より少なくし、また、ケイ素化合物を含有していなくても、2液硬化型熱伝導性組成物の長期保管安定性を確保できる。
【0077】
さらに、第1剤には、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンが含有されないことが好ましい。第1剤にハイドロジェンオルガノポリシロキサンが含有されないことで、第1剤において、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンが、付加反応触媒存在下に反応が促進されてハイドロジェンオルガノポリシロキサンと反応することが防止できる。
一方で、第2剤には、付加反応触媒が含有されないことが好ましい。第2剤には、上記のとおり、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンに加えて、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンが含有されるが、これらは、第2剤に付加反応触媒が含有されないことで、第2剤が第1剤に混合される前の通常の保管状態では実質的に付加反応しなくなる。そのため、長期保管安定性を優れたものにしやすくなる。
【0078】
さらに、第1剤には、その他のオルガノポリシロキサンが含有されてもよい。その他のオルガノポリシロキサンの詳細は上記で述べたとおりであり、その詳細は省略する。
また、第1剤には、必要に応じて、熱伝導性部材に一般的に使用される上記以外の添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、補強材、着色剤、耐熱向上剤、界面活性剤、分散剤、難燃剤、劣化防止剤、及び可塑剤などが挙げられる。
【0079】
第2剤の25℃における粘度は、上記の熱伝導性シリコーン系組成物で述べたとおりである。第1剤も、第2剤と同様に一般的に液状であり、25℃における粘度も第2剤の25℃における粘度も同様であり、好ましくは50~2000Pa・s、より好ましくは100~1000Pa・s、さらに好ましくは200~600Pa・sである。また、25℃における押し刺し荷重も同様に0.3N以下であることが好ましい。
【0080】
2液硬化型熱伝導性組成物の硬化温度は、適宜選択すればよく、第1剤と第2剤とは混合して室温(23℃)下で放置するだけで硬化する形態とすることが好ましいが、室温では硬化が進行せずに、加熱させることで硬化が進行する形態を選択することもできる。2液硬化型熱伝導性組成物の硬化温度は、アルケニル含有オルガノポリシロキサンの種類及び配合量、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンの種類及び配合量、反応遅延剤の種類及び配合量、並びに、白金系触媒の種類及び配合量などの少なくともいずれかにより調整できる。
【0081】
なお、以上の説明では、2液硬化型熱伝導性組成物は、少なくとも第2剤が特定の樹脂製容器に充填される構成を示したが、第2剤が特定の樹脂製容器に充填されなくてもよい。第2剤は、上記のように耐湿性が高く、水分が混入したときの硬化性の低下が防止できるので、2液硬化型熱伝導性組成物は、第2剤が特定の樹脂製容器に充填されない場合でも、保管安定性が向上するという効果を発揮できる。
【0082】
<1液型>
本発明の熱伝導性シリコーン系組成物は、1液型である場合、上記した成分に加えて、さらに付加反応触媒が含有される。付加反応触媒の具体例は上記の通りであり、付加反応触媒の配合量は、上記した有機ケイ素系化合物全量に対して、例えば、0.1~2000質量ppmである。本発明の熱伝導性シリコーン系組成物は、付加反応触媒が含有されることで、アルケニル含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンの付加反応が促進される。
なお、1液型の熱伝導性シリコーン系組成物は、以下の説明においては、1液硬化型熱伝導性組成物として説明することがあり、1液硬化型熱伝導性組成物と2液硬化型熱伝導性組成物は、総称して単に硬化型熱伝導性組成物ということがある。
【0083】
1液型の熱伝導性シリコーン系組成物は、室温(23℃)では付加反応が進行せずに、加熱されることで付加反応が進行されるように、適宜配合が調整されるとよい。具体的には、アルケニル含有オルガノポリシロキサンの種類及び配合量、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンの種類及び配合量、反応遅延剤の種類及び配合量、並びに、白金系触媒の種類及び配合量などの少なくともいずれかにより適宜調整できる。
本発明では、熱伝導性シリコーン系組成物は、1液型の場合でも、上記のとおり特定の樹脂製容器に充填されることで長期保管安定性が確保される。
【0084】
<熱伝導性部材>
本発明の硬化型熱伝導性組成物は、硬化されることで、熱伝導性部材を形成することができる。熱伝導性部材は、熱を伝導させる各種用途で使用され、好ましくは放熱部材として使用される。放熱部材は、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させられ、発熱体で発した熱を熱伝導して放熱体に移動させ、放熱体から放熱させる。ここで、発熱体としては、電子機器内部で使用されるCPU、パワーアンプ、バッテリーなどの各種の電子部品が挙げられる。また、放熱体は、ヒートシンク、ヒートポンプ、筐体などが挙げられる。
また、熱伝導性部材は、バッテリーの間隙材として使用されることが好ましい。熱伝導性部材は、バッテリーの間隙材として使用される場合、複数のバッテリーセルが筐体内部に格納されたバッテリーモジュールで使用されることが好ましい。バッテリーの間隙材として使用される熱伝導性部材は、例えばバッテリーセルとバッテリーセルとの間、及びバッテリーセルと筐体の間の少なくともいずれかに使用されるとよい。
【0085】
熱伝導性部材(すなわち、熱伝導性組成物の硬化物)の硬度は、ASTM D2240に規定されるOO硬度が5~80であることが好ましい。熱伝導性部材の硬度を80以下とすれば、例えば放熱体と発熱体に追従する柔軟性が付与され、これらの間隔が変化しても熱伝導性などが低下することを防止できる。一方、5以上の硬度とすれば、熱伝導性部材はある程度の強度を備えるため破損するおそれが低くなる。これら観点から、熱伝導性部材のOO硬度は15~70であることがより好ましく、25~65であることがさらに好ましい。
【0086】
また、熱伝導性部材の熱伝導率は、1.0W/m・K以上であることが好ましく、1.8W/m・K以上であることが好ましい。これら下限値以上とすることで、熱伝導性が良好となる。そのため、発熱体と放熱材の間で使用される場合には、発熱体で発生する熱を、熱伝導性部材を経由して、放熱材に効率的に伝えることができ、発熱体の温度上昇を抑えることができる。熱伝導性部材の熱伝導率は、高ければ高いほどよいが、実用的には、例えば10W/m・K以下である。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0088】
以下の実施例、比較例では、各種物性の測定方法、及び評価方法を以下のとおりである。
[粘度]
第1剤、及び第2剤の25℃における粘度(Pa・s)を、B型粘度計(BROOKFIELD社製回転粘度計、DV-E)を用いて、スピンドル(SC4-14)の回転速度を10rpmに設定して測定した。
[熱伝導率]
各実施例、比較例における第1剤と第2剤を同量ずつ取り出して混合して、ASTM D5470に準拠した測定装置の所定箇所に厚さ約3mmに塗布した。次いで、厚さ0.5mm、1.0mm、2.0mmの時の熱抵抗値を測定し、3点の熱抵抗値から熱伝導率を算出した。
【0089】
[耐湿性試験]
第1剤と第2剤それぞれを封入した第1及び第2の容器を、65℃、95%RHの恒温槽に入れて放置して加速劣化させた。上記各容器を各表に記載の所定日数経過後に取り出し、室温(23℃)/相対湿度60%の環境下で15分放置した後、第1剤と第2剤とを各容器から同量ずつ(5gずつ)取り出し、混合して剥離フィルム上に厚さ10mmに塗布した。室温で24時間放置して、剥離フィルムから剥離したものを試験片とした。なお、以上の加速劣化試験は、8日で室温1年に相当とすると考えられる。
上記各試験片が硬化しているか否かを確認し、硬化した試験片のOO硬度をASTM D2240に準拠して測定した。また、恒温槽に入れる前に、第1剤と第2剤それぞれを充填した第1及び第2の容器から、第1剤及び第2剤を取り出して同様に試験片を作成してブランクとし、ブランクのOO硬度も測定した。
【0090】
(評価基準)
ブランクの硬度に対する、各経過日数における硬度変化率(初期(ブランク)100%に対する、各日数経過後の硬度を百分率で表記した値)を算出し、以下の5段階の基準で評価した。なお、以下に示すとおり、硬化していない試験片は「1」と評価した。
5 : 95%以上120%未満
4 : 70%以上95%未満
3 : 40%以上70%未満
2 : 40%未満
1 : 硬化せず。
9日経過した時点で、「3」以上であったものであれば実用的に使用可能であり、9日までの期間で「2」以下の評価となったものは、実用上不具合を生じるおそれがある。
【0091】
[硬化性試験]
各実施例、比較例で調製した第1剤と第2剤を混合して厚さ6mmに塗布した後、室温で24時間放置することで、第1剤と第2剤の混合物(2液硬化型熱伝導性組成物)を硬化させて、試験片を得た。得られた試験片が硬化しているか否かを確認し、硬化した試験片は、OO硬度をASTM D2240に準拠して測定した。
各実施例及び比較例の配合において、ケイ素化合物を添加しない以外は同様に調製した第1剤と第2剤から上記と同様の方法により試験片(ブランク)を作製した。ブランクのOO硬度もASTM D2240に準拠して測定した。
【0092】
(評価基準)
ブランクに対する、各実施例、比較例の試験片の硬度変化率(ブランク100%に対する、各実施例、比較例の試験片の硬度を%で表記した値)を算出して、以下の5段階の基準で評価した。なお、以下に示すとおり、硬化していない試験片は「1」と評価した。
5 : 95%以上120%未満
4 : 70%以上95%未満
3 : 40%以上70%未満
2 : 40%未満
1 : 硬化せず。
(総合評価)
上記耐湿性試験、及び硬化性試験の評価のうち低い方の値を総合評価の評点とした。
【0093】
[実施例1~19、比較例1~7]
表1~5に示す配合にしたがって、各成分を混合して第1剤及び第2剤を用意した。また、2液型バレルとして、テックツール社製の「CDA 050-01-PP」(ポリプロピレン樹脂製、厚み2mm(第2剤が充填される第2のバレルの厚み)、第2のバレルの透湿度0.15g/m
2・24hr)を用意した。2液型バレルは、
図2に示すように、第1剤及び第2剤それぞれを収納するための第1及び第2のバレル(第1及び第2の容器)が一体的に成形されたものである。第1剤及び第2剤それぞれは、空気が極力入らないように注意しながら2液型バレルの第1のバレル及び第2のバレルそれぞれに充填しキャップで密封し、熱伝導性組成物パッケージを得た。
【0094】
[参考例1,2]
表1、6に示す配合にしたがって、各成分を混合して第1剤及び第2剤を用意した。また、第1剤及び第2剤それぞれを収納するための第1の容器及び第2の容器を用意した。第1の容器及び第2の容器としては、いずれもセイコーアドバンス社製の金属容器「φ110×H70 SEMI-W-CAN」(ブリキ製、容量550mL、肉厚0.22mm)を使用した。第1剤及び第2剤それぞれは、空気が極力入らないように注意しながら第1及び第2の容器に充填して、キャップで密封し熱伝導性組成物パッケージを得た。
【0095】
【表1】
※表1における数値、(a)、及び(b)の単位は、質量部である。
※上記液剤(1)及び(2)は、以下のとおりである。
液剤(1):ビニル両末端オルガノポリシロキサンと、白金触媒とからなる液剤。白金触媒は、オルガノポリシロキサンに比べて微量であり、液剤(1)の量は、ビニル両末端オルガノポリシロキサンの量とみなす。
液剤(2):ビニル両末端オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと反応遅延剤からなる液剤。反応遅延剤は、オルガノポリシロキサンに比べて微量であり、液剤(1)の量は、ビニル両末端オルガノポリシロキサンとハイドロジェンオルガノポリシロキサンの合計量とみなす。
各実施例、比較例におけるケイ素化合物の種類、及び配合量(a)、(b)は、以下の表2~6に示すとおりである。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
以上の各実施例では、透湿度が一定の範囲内である樹脂製容器に、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、熱伝導性充填材とを含有する熱伝導性シリコーン系組成物を充填しても、この組成物に特定のケイ素化合物を所定量配合させることで、長期間保管後の硬化性が良好となることが理解できる。
一方で、比較例1~6では、熱伝導性シリコーン系組成物(第2剤)が特定のケイ素化合物を含有せず、また含有しても含有量が少ないため、長期保管後の硬化性が低下した。さらに、比較例7に示すようにケイ素化合物の含有量が多すぎても、十分に硬化が進まなかった。なお、比較例4に示すようにハイドロジェンオルガノポリシロキサンを含有しない第1の組成物(第1剤)のみに、ケイ素化合物を配合しても、長期保管後の硬化性は良好とならなかった。
また、参考例1,2に示すように、容器が金属容器である場合には、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンと、熱伝導性充填材とを含有する熱伝導性シリコーン系組成物を長期間保管しても、硬化性が低下する問題が生じなかった。
【符号の説明】
【0102】
10 バレル(樹脂製容器)
11、21A,21B 後端部
12、22A、22B 開口部
13、23A,23B 蓋体
14、24A,24B 先端部
15 開口部(吐出口)
16 熱伝導性シリコーン系組成物
20 2液型バレル
20A、20B 第1及び第2のバレル(第1及び第2の容器)
25A、25B 開口部
26A 第1の組成物
26B 第2の組成物
28 吐出口
29 混合部