(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】細胞及び薬剤を収容するための被包性デバイスのための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/02 20060101AFI20241119BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20241119BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20241119BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20241119BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20241119BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20241119BHJP
A61K 35/39 20150101ALN20241119BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
A61F2/02
A61L27/16
A61L27/20
A61L27/38
A61L27/52
A61L27/54
A61K35/39
A61P3/10
(21)【出願番号】P 2023527322
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 US2021057526
(87)【国際公開番号】W WO2022094380
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-27
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521158392
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ
(73)【特許権者】
【識別番号】521122407
【氏名又は名称】プロキオン・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】PROCYON TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】パパス,クレアルコス
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0281709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0328289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00-2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み型被包性デバイスであって、
細胞を受容し封入するための第1の空洞であって、第1の側面を有する第1の空洞と、
前記第1の空洞の前記第1の側面に隣接し、かつガス透過性膜によって前記第1の空洞から分離されたチャネルと、
前記チャネルに隣接する第1の側面を有する第2の空洞であって、ガス透過性膜によって前記第2の空洞から分離され、前記第1の空洞の反対側にある第2の空洞と、
を備え、
前記チャネルは、前記第1の空洞の前記第1の側面の全てよりも小さい前記第1の空洞の前記第1の側面の一部を占有し、
前記チャネルによって占有されていない前記第1の空洞の前記第1の側面の一部は、血管新生膜を含
み、
前記チャネルは、前記第2の空洞の前記第1の側面の全てよりも小さい前記第2の空洞の前記第1の側面の一部を占有し、
前記チャネルによって占有されていない前記第2の空洞の前記第1の側面の一部は、血管新生膜を含み、
前記チャネルの一部は、チャネル血管新生膜によって囲まれており、
前記チャネル血管新生膜は、前記チャネルと、前記第1の空洞の前記血管新生膜又は前記第2の空洞の前記血管新生膜の少なくともいずれか一方と、の間に配置され、
前記チャネル血管新生膜は、前記第1の空洞の前記血管新生膜又は前記第2の空洞の前記血管新生膜の少なくともいずれか一方の間の間隔によって分離され、前記間隔内での血管新生が可能になる、
植込み型被包性デバイス。
【請求項2】
前記第1の空洞が第2の側面を有し、前記第2の側面が免疫隔離膜及び血管新生膜を含む、
請求項
1に記載の植込み型被包性デバイス。
【請求項3】
前記チャネルは、前記第1の空洞の前記第1の側面に蛇行経路を形成する、
請求項
1に記載の植込み型被包性デバイス。
【請求項4】
前記チャネルは、前記第1の空洞の前記第1の側面に直線経路を形成する、
請求項
1に記載の植込み型被包性デバイス。
【請求項5】
前記チャネルは、前記第1の空洞の前記第1の側面の面積の10%~90%を占める、
請求項
1に記載の植込み型被包性デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本国際出願は、2020年10月30日に出願された米国仮特許出願第63/108,017号の優先権の利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、植込み型医療デバイスに関する。いくつかの実施形態では、細胞、組織、及び/又は治療薬を収容し、治療効果をデバイスの宿主又は受容者に送るように動作可能な植込み型被包性デバイスが提供される。
【背景技術】
【0003】
I型及びII型糖尿病の患者数は、世界人口の約4.6%に及ぶと推定される。糖尿病の治療法としては、膵臓移植や膵島移植が公知である。しかしながら、糖尿病患者への膵臓及び膵島の移植は、利用可能なヒトの膵臓や膵島が不足しているため、どちらの手術でも恩恵を受ける可能性のある患者の数パーセントに限られる。近年、ヒトの幹細胞からインスリンを分泌する細胞が開発され、インスリン依存性糖尿病患者への移植治療の可能性が出てきた。しかしながら、このような細胞は、免疫抑制剤を生涯に亘って投与しなければ、患者の免疫システムによって拒絶されるおそれがある。代替的に、インスリン分泌細胞に免疫隔離用の植込み型デバイスを設けて、糖尿病患者の体内に配置し、インスリンの送達源として機能させることもできる。
【0004】
膵島移植のプロトコルが確立されて以来、臨床的な膵島移植は、1型糖尿病患者の治療法として評価されてきた。しかしながら、移植された膵島細胞の生着率が低いことが、長期的に血糖値を調整できない主要な原因となっている。移植すると、移植後数日以内の血行再建と血流調節を通じて、膵島細胞を正常に生着させることが必要である。しかしながら、移植された膵島細胞は、血管密度が低く、酸素が十分でない状態にさらされるため、膵島細胞を正常に生着させること、及び患者のインスリン分泌を調節できるようにすることは困難である。
【0005】
現在、生体内で免疫隔離デバイスを含む生細胞を効果的に移植するための手段や材料は限られている。封入された細胞への十分な酸素の供給、封入された細胞への十分な栄養の供給、移植されたデバイスの不十分な血管新生(vascularization)、及び移植物に対する免疫反応に関連する制約は、細胞を含む植込み可能なデバイスの使用に対する障害として残っている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、細胞を支持するためのマトリックス又は足場(scaffold)を有する被包性デバイスを提供する。いくつかの実施形態では、マトリックスを有する被包性デバイスを調製及び形成する方法が提供される。(例えば、死体からの)ドナー膵島細胞は、被包性デバイスに移植された場合、一緒に「凝集(clump)」し、正常に機能することが観察されているが、(例えば)幹細胞の分化に由来する細胞は、死体細胞と同様に機能しない。したがって、本開示の実施形態は、デバイスの空洞内又は細胞受容領域内の1つ又は複数のマトリックス構造を企図し、提供する。本開示のマトリックスは、細胞を安定化及び凝集させる構造的手段を提供する。
【0007】
Papasの国際出願番号PCT/US2017/060036号、Papasの国際出願番号PCT/US2017/060034号、Papasの国際出願番号PCT/US2017/060041号、及びPapasの国際出願番号PCT/US2017/060043号は、被包性デバイスに関連し、あらゆる目的のために、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
本開示のデバイスには、植込み型医療デバイスのために当業者によって適切であると見なされるものを含めて様々な材料が含まれる。例えば、本開示の膜は、高分子材料から調製されるものとして考えられている。このような実施形態では、単層勾配膜は、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロースエステル(酢酸セルロース、三酢酸セルロース、硝酸セルロース)、ナノセルロース、再生セルロース(RC)、シリコーン(silicone)、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド尿素、ポリカーボネート、セラミック、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリコン(silicon)、ゼオライト(アルモシリケート:alumosilicate)、ポリアリールニトリル(polyarylonitrile:PAN)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリピペラジンアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、及びそれらの任意の複合体又は混合物などの高分子材料から調製される。特定の実施形態では、単層勾配膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む高分子材料からなる。特定の好ましい実施形態では、PTFEは、本開示のデバイスの少なくとも血管形成層に提供される。PTFEに加えて、又はPTFEの代わりに、追加の材料を本開示の膜及び移植に提供することが考えられる。
【0009】
本開示の免疫隔離性の植込み型デバイスの利点には、宿主による血管新生に利用可能なデバイスによって提示される表面積の最大化がある。特に、免疫隔離性のデバイスを含む植込み型デバイス又はその一部は、移植されたときに、宿主による血管新生の可能性のある表面積を提示する。この構造により、動物の中でデバイス全体の血管新生が最大化される。
【0010】
一実施形態では、細胞を封入するための内部空洞と、空洞の第1の側面に隣接し流体透過性膜によって空洞から分離されたチャネルと、空洞の第2の側面の血管新生膜(vascularization membrane)とを含む、植込み型被包性デバイスを充填する方法が提供される。本方法は、細胞及びマトリックス形成材料を含む組成物を空洞に導入することと、架橋剤をチャネルに導入することであって、架橋剤が流体透過性膜を通過して流体透過性膜の近くでマトリックス形成材料を架橋する、架橋剤をチャネルに導入することと、クエンチ剤(quenching agents)をチャネルに導入することであって、クエンチ剤が流体透過性膜を通過してマトリックス形成材料の架橋を減少させ、空洞が、流体透過性膜の近くでより高い架橋を有し、血管新生膜の近くでより低い架橋密度を有するマトリックス勾配を含む、クエンチ剤をチャネルに導入することと、を含む。
【0011】
一実施形態では、細胞を受容し封入するための第1の空洞であって、第1の側面を有する第1の空洞と、第1の空洞の第1の側面に隣接し、かつガス透過性膜によって第1の空洞から分離されたチャネルとを含み、チャネルは、第1の空洞の第1の側面の全てよりも小さい第1の空洞の第1の側面の一部を占有し、チャネルによって占有されていない第1の空洞の第1の側面の一部は、血管新生膜を含む、植込み型被包性デバイスが提供される。
【0012】
様々な実施形態において、被包性デバイスを調製、保存、凍結及び/又は解凍する方法が提供される。いくつかの実施形態では、マトリックス又は被包性デバイス内の細胞を凍結するために凍結保存溶液を導入することを含む方法が提供される。熱エネルギーの伝達に影響を与えてデバイス及び関連する細胞の温度を下げるために、凍結保存溶液を被包性デバイスに供給することが考えられている。好ましい実施形態では、凍結保存溶液は、被包性デバイスのある容積(volume)内で又はその容積を通って延在する1つ又は複数のチャネルを通じて送達される。凍結保存溶液(複数可)をフロースルー方式(glow-through manner)でデバイスに適用し、デバイスを通して溶液を連続的に使用すること、及び/又は開口部を通して溶液を送達し冷却が起こる間は静止させることが考えられている。更に、本開示の方法及びシステムでは、溶液(複数可)をガスチャンバで使用する代わりに、又はそれに加えて、被包性デバイスの外部に凍結保存溶液(複数可)を適用する対策が更に企図されている。
【0013】
いくつかの態様において、凍結保存溶液はジメチルスルホキシドを含む。溶液(複数可)は、様々な異なる濃度のジメチルスルホキシドを含むものとして考えられており、様々な実施形態では、追加の流体と共に供給された、即ち、希釈されたジメチルスルホキシドを含む。
【0014】
本開示の実施形態は、デバイス及び/又は細胞内の熱エネルギーを増やすために流体(気体又は液体)を送達することが更に企図されている。例えば、ガス(例えば、周囲空気)又は液体を被包性デバイスのガスチャンバ内に又はガスチャンバを通って供給し、デバイス及び収容された細胞の解凍又はその他の方法で温度を上昇させることが企図されている。したがって、本開示は、デバイス及び細胞を凍結又は冷却する方法に限定されない。
【0015】
本開示の様々な実施形態において、被包性デバイスは、細胞の適切な機能を収容し、支持し、促進するための細胞マトリックスを備える。様々な実施形態において、アルギン酸塩などのマトリックス形成材料は、フローチャネル(flow channel)又は内部導管(internal conduit)を通って供給され、ガスチャンバの近位では密度が高くチャネルまたはチャネルとマトリックスとの間の膜から離れた距離では(少なくとも架橋に関して)密度が減少するマトリックスを形成する。マトリックスを形成して被包性デバイスを調製する方法であって、デバイスの内部又はその近傍で、かつチャネルの近位でマトリックスの生成を開始し、チャネルから遠位の地点でマトリックスの密度が低くなる方法が提供される。このような実施形態では、溶液(複数可)が膜を塞いだり詰まらせたりしてマトリックスへの(例えば)ガスの送達を妨げるリスクを低減しながら、溶液(複数可)をフローチャネル又はチャンバを通ってデバイスに供給することが可能になる。本開示の様々な実施形態は、フローチャネルの提供と、そのフローチャネルを複数の目的で使用することを企図している。例えば、本開示のシステム及び方法は、デバイス及び収容された細胞を凍結させるために、凍結保存溶液を適用し、チャネルに搬送、又はチャネルを通って搬送することを企図している。このようなデバイスのチャネル(複数可)は、様々な実施形態で本明細書に示され説明されるように、後に、必要な材料を細胞に送達するための流体(例えば、酸素担持ガス)を受け入れるために、利用可能でなければならない。したがって、凍結保存に関する工程や凍結保存溶液(複数可)の適用により、好ましくは、チャネル、膜、及びマトリックスの詰まりや閉塞が回避される。様々な実施形態において、本開示の方法は、凍結保存又は解凍のステップに続いて封入物を処理又は洗浄するステップを含む。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムをデバイスの外面及び/又は内部チャネルに塗布して、デバイスを洗浄又は処理し、デバイス上に存在する可能性があり、かつ除去又は修復されない場合には細胞に望ましくない影響を与える可能性があるジメチルスルホキシド(又は他の材料)を除去する。
【0016】
いくつかの実施形態では、マトリックスの形成が提供されており、塩化カルシウムが被包性デバイスのフローチャネル内に供給され、塩化ナトリウムがデバイスの細胞チャンバ内に供給又は注入されて、所望の勾配又は密度分布を有するマトリックスが形成される。勾配は、塩化カルシウムと塩化ナトリウムとの相互作用によって形成され、マトリックスの密度は、チャネルの近位で大きくなる。
【0017】
一実施形態では、細胞を封入するための内部空洞と、空洞の第1の側面に隣接し、かつ流体透過性膜によって空洞から分離されたチャネルと、空洞の第2の側面の血管新生膜とを含む、植込み型被包性デバイスを充填する方法が提供される。この方法は、細胞及びマトリックス形成材料を含む組成物を空洞に導入することと、架橋剤をチャネルに導入することとを含み、それにより、架橋剤は流体透過性膜を通過して流体透過性膜の近くのマトリックス形成材料を架橋する。クエンチ剤は、チャネル内に導入されるか、又はチャンバを取り囲むように導入されるかの少なくともいずれか一方であり、それにより、クエンチ剤が流体透過性膜を通過してマトリックス形成材料の架橋を減少させ、それにより、空洞は、流体透過性膜の近くで架橋が高く、血管新生膜の近くで架橋密度が低いマトリックス勾配を備えることになる。
【0018】
一実施形態では、細胞を受容し封入するための第1の空洞を含む植込み型被包性デバイスが提供される。第1の空洞は、第1の側面と、第1の空洞の第1の側面に隣接し、かつガス透過性膜によって第1の空洞から分離されたチャネルとを有する。チャネルは、第1の空洞の第1の側面の全てよりも小さい第1の空洞の第1の側面の一部を占有する。チャネルによって占有されていない第1の空洞の第1の側面の一部は、血管新生膜を含む。
【0019】
一実施形態では、植込み型被包性デバイスを調製するための方法が提供され、デバイスは、細胞を封入するための第1及び第2のチャンバと、第1及び第2のチャンバの第1の外面に隣接し、かつ少なくとも1つの流体透過性膜によってチャンバの内部から分離されたチャネルとを含み、第1及び第2のチャンバは、第2の外面を有する。本方法は、細胞を含む組成物をチャンバの内部に導入することと、流体をチャネルに送達して細胞の温度を上昇又は低下させることと、流体を第1及び第2のチャンバの第2の外面を横切って送達して細胞の温度を上昇又は低下させることとを含む。
【0020】
本明細書に開示される様々な概念は、このような組合せが具体的に描写及び説明されていなくても、互いに組み合わせて提供され得る。例えば、限定はしないが、凍結保存及び流体送達の概念は、特に、図示及び説明されていなくても、
図5のデバイスと共に提供することは可能である。
【0021】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されている全ての技術的及び/又は科学的な用語は、本発明が関連する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に説明されているものと同様又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。更に、材料、方法、及び例は例示に過ぎず、必ずしも限定的であることを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施形態による少なくとも1つのポートを有する被包性デバイスの断面図である。
【
図2】本開示の実施形態による被包性デバイスの断面図である。
【
図3】本開示の実施形態による被包性デバイスの立面図である。
【
図4】本開示の実施形態による被包性デバイスの一部の断面立面図である。
【
図5】本開示の実施形態による被包性デバイスの一部の断面立面図である。
【
図6】本開示の実施形態による被包性デバイスの一部の断面立面図である。
【
図7】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイスの立面図である。
【
図8】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイスの断面立面図である。
【
図9】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイスの断面立面図である。
【
図10】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイスの断面立面図である。
【
図11】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイスの断面立面図である。
【
図12】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイスの断面立面図である。
【
図13】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図14】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図15】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図16】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図17】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面上面図である。
【
図18】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の一部の斜視図である。
【
図19】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図20】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図21】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の上面図である。
【
図22】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図23】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図24】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の透過上面図である。
【
図25】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の正面図である。
【
図26】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の分解上面図である。
【
図27】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面上面図である。
【
図28】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面上面図である。
【
図29】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図30】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面立面図である。
【
図31】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の断面上面図である。
【
図32】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の一部の断面上面図である。
【
図33】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の一部の断面立面図である。
【
図34】本開示の実施形態による植込み型被包性デバイス及び関連する方法の一部の透過上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」による要素への言及は、文脈上明らかに1つだけの要素であることが要求されない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ」であることを意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「約(about)」は、記載された濃度、長さ、分子量、pH、配列の同一性、時間枠、温度又は体積などの1つ又は複数の値が、統計的に意味のある範囲内にあることを意味する。このような値や範囲は、所与の値又は範囲の1桁以内、一般的には20%以内、より一般的には10%以内、更に一般的には5%以内とすることができる。「約(about)」に包含される許容可能な変動は、研究対象の特定のシステムに依存し、当業者であれば容易に理解することができる。
【0025】
図1は、本開示の実施形態による被包性デバイス2の断面立面図である。図示のように、デバイス2は、細胞6や組織を受容し収容するように動作可能な内部容積又は空洞4を含む。デバイス2は、少なくとも1つの膜8を更に含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの膜8は、細胞に対して不透過性である血管新生膜を含む。特定の実施形態では、免疫隔離膜10も設けられている。非細胞因子又は分子12は、細胞6が収容されている間、膜(複数可)8、10を脱出又は通過することができる。少なくとも1つのポート14が設けられており、ポートによりデバイスの内部容積4へのアクセスが可能になる。ポート14は、例えば、細胞や組織をデバイス内に装填するために利用することができる。デバイス2全体は、患者(例えば、ヒト患者)に移植されるように動作可能である。デバイス2は、好ましくは、患者の皮下に挿入されるようなサイズ及び動作可能であり、非細胞因子12の排出又は浸出を含むが、これらに限定されないデバイス機能が患者に治療効果をもたらす。本開示の様々な実施形態は、血管新生膜及び免疫隔離膜を有する被包性デバイスを提供する。特定の実施形態は、血管が組織の中へ成長することを可能にする血管新生膜のみを有する被包性デバイスを提供する。
【0026】
図2は、本開示の実施形態による被包性デバイス16の断面立面図である。この実施形態では、細胞6を収容する2つの内部空洞又はチャンバ18a、18bが示されている。ポート(図示せず)を通って細胞を導入するために空洞にアクセスすることができる。空洞18a、18bの間には、以下で更に説明するように、気体又は液体のいずれかの流体を導入するための流体チャネル20がある。一実施形態では、移植時に、細胞を生存可能かつ機能的な状態に維持するために、酸素をチャネル20に導入することができる。例えば、酸素は、インスリン分泌を含むがそれに限定されない細胞の機能性も促進させながら、細胞の生存率を向上させることができる。チャネル20の他の用途及び構成が本明細書で提供される。ポート(図示せず)を通って流体を導入するためにチャネル20にアクセスすることができる。チャネル20と空洞18a、18bとの間には、チャネル20内の流体が空洞18a、18bに入ることができる膜22a、22bがある。例えば、膜22a、22bは、流体透過性膜であってもよい。いくつかの実施形態では、膜22a、22bは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は他の同様の(例えば、本開示を通して説明されるような)材料などから構成される。被包性デバイス16は、層24a、24bを更に含むことができ、その各々は免疫隔離膜及び血管新生膜を含むことができ、その機能は本明細書の他の箇所で説明される。
図2に示すものを含む本開示のデバイスは、被包性デバイス16の全部又は一部を取り囲むメッシュ又は他の構造支持要素(複数可)を含むものとして考えられている。
【0027】
図1~
図2に示すものを含めて様々な実施形態では、細胞は被包性デバイス内に提供され、その細胞の直径は約5~15マイクロメートル(μm)である。いくつかの実施形態では、デバイスは、約50~500ミクロンの寸法を含むスフェロイド(spheroids)又は細胞の凝集体を含む。いくつかの実施形態では、血管新生膜には約5~10μmの孔径を備え、免疫隔離膜は約0.2~0.6μmの孔径を含む。免疫隔離膜は、約20~40μmの厚さを含むものとして考えられており、血管新生膜は、約10~100μm、好ましくは約30μmの厚さを有することができ、孔径は約0.1μm~1.0μm(及び好ましくは約0.4μm)である。いくつかの実施形態では、膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は他の同様の(例えば、本開示を通して説明されるような)材料などから構成される。本開示及び本明細書に説明の実施形態は、前述の膜の孔径及び厚さに限定されない。例えば、Papasの国際出願番号PCT/US2017/060036号は、既にその全体が参照により本明細書に組み込まれており、本明細書での使用が考えられている移植や膜の様々な構造及び寸法が開示されている。
【0028】
本開示のデバイスは、様々な形状及びサイズを含むものとして、また、様々な異なる内部容積を有する内部空洞を有するものとして考えられている。例えば、いくつかの実施形態では、空洞は、約4.5μL~約400μLの体積、又はこれら終点の間の任意の中間範囲にある体積を有する。いくつかの実施形態では、本開示の被包性デバイスは、約2~約10cm、又は任意の中間範囲、例えば、約4~約5cmの長さを含む。更に、本開示の被包性デバイスは、約1~約5cm、又は約2~約3cmなどの任意の中間範囲の幅を含む。したがって、被包性デバイスは、膜及び空洞の層を収容するのに十分な厚さを有する略矩形(又は他の幾何学的形状、例えば多角形)であってもよい。
【0029】
様々な実施形態では、被包性デバイス内に提供される細胞6は、例えば、血糖値を調整するための膵島細胞又は幹細胞由来のβ細胞(beta cells)など、又は体内で有用な治療薬を生成及び放出し得る他の細胞又はスフェロイドを含むものとして企図されている。異なる被包性デバイス内の細胞は、同じであってもよく、類似していてもよく、又は様々な異なる組合せの細胞が、被包性デバイス内又はデバイス(複数可)全体に含まれていてもよい。例えば、複数の被包性デバイスを含む実施形態では、第1の被包性デバイス内の細胞は、第2の被包性デバイス内の細胞と同じであってもよい。又は、いくつかの実施形態では、第1の被包性デバイス内の細胞は、第2の被包性デバイス内の細胞と異なっていてもよい。
【0030】
図3は、本開示の実施形態による被包性デバイス30の断面立面図である。図示のように、デバイス30は、複数の層及び離間した空洞32を含む。層及び空洞32は、縫合、動接着剤(kinetic glue)によって固定されてもよく、又は血管新生を可能にするために設けられた空間34と一緒に溶接(例えば、スポット溶接など)されてもよい。
図3に示すものを含むいくつかの実施形態では、デバイスの機能を接合又は取り付けるために、複数のスポット溶接部33が設けられる。例えば、
図2に示すデバイスを2つ以上設け、スポット溶接部33や他の様々な固定手段によって一緒に固定することができる。スポット溶接部33は、接続を可能にする一方で、血管系が成長して延在することができる空洞空間34を、接続箇所の間やその周囲に設けることができる。血管系36は、少なくとも移植後に、デバイス内の細胞への酸素透過の手段を形成し提供することができる。複数のポート35a、35b(例えば、貫通ポート)は、細胞を装填するために、及び/又はポートを通ってデバイス30の内部構成要素に流体(例えば、酸素ガス)の流れを供給するために設けられる。
【0031】
図4~
図6は、流体チャネルと細胞を収容するための空洞とを使用することによって、段階的マトリックス(graduated matrix)内に細胞を埋め込む又は凝集させるための空洞内でのマトリックスの形成に関連する本開示による実施形態を示す。特に、
図4は、被包性デバイス50及びその使用方法の断面立面図である。図示のように、被包性デバイス50は、細胞52を備える。細胞52は、デバイスの内部空洞54内に提供され、収容される。細胞は、各スフェロイド内に複数の細胞を含むスフェロイドの形態で提供されてもよい。代替的に、個々の細胞又は細胞の「塊(clumps)」をデバイスの空洞54に装填してもよい。
【0032】
実施形態は、細胞52を空洞54に装填することに加えて、細胞を直ちに取り囲む領域を含む空洞に、ヒドロゲル又は他の同様のマトリックスを形成し得るマトリックス形成材料を提供するように、マトリックス形成材料を含む溶液を導入することを更に含む。例えば、マトリックス形成材料は、結合剤又は架橋剤の導入時にヒドロゲル又は他のマトリックスを形成する単量体材料又は高分子材料であってもよい。いくつかの実施形態では、マトリックス形成材料は、アルギン酸、又はアルギン酸塩もしくはフィブリンゲルを形成し得る他の多糖もしくはフィブリノーゲンであってもよい。Ramachandranらの米国特許第9,642,814号明細書により、マトリックス形成のための様々なプロセス及び材料が開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
空洞は、少なくとも1つの膜56によって境界が定められている。膜56は、好ましくは空洞54を取り囲んで封入するが、
図4の断面では上層及び下層として示されている。チャネル58が膜に隣接して設けられており、チャネル58は、ガスを含む流体を受け入れて搬送するように動作可能である。この状態では、マトリックス形成材料はまだ膜を形成しておらず、様々な実施形態では、酸素ガスがチャネル58に搬送され、そしてチャネル58を通って搬送されるシステム及び方法が提供される。酸素は、細胞の生存率を維持するために供給され、膜56を横切って拡散することができる。いくつかの実施形態では、チャネルは、狭い管状チャネルとして設けられる。好ましい実施形態では、チャネル58は、隣接する膜と膜との間のギャップ又は空間として設けられ、そのうちの一方のみが
図4に示されており、第2の空洞54はチャネル58に隣接し、第1の空洞54の反対側にある。
【0034】
チャネル58は、空洞54に隣接して設けられ、膜56によって分離されている。酸素が供給され、チャネルを通って流れることができる。酸素は、膜を通って拡散し、空洞54の少なくとも一部に浸透することができる。
【0035】
本開示による様々な実施形態では、
図5に示すように、方法及びシステムは、酸素の流れを中断又は停止させることを企図する。次いで、空洞54内に設けられたマトリックス形成材料60にマトリックスを形成させるために特有の架橋剤(例えば塩化カルシウム、即ち、CaCl
2)がチャネル58内に注入される。架橋剤は、膜56を通って拡散すると、マトリックス形成材料60と反応して活性化し、架橋し、マトリックス62を形成して細胞を支持し、適切な機能を促進する。
図5に示すように、細胞52の一部の周囲で膜に最も近いマトリックス形成材料の領域又は部分は、チャネル58から離間したマトリックス形成材料の部分よりも先に、また、より大きく架橋される。
【0036】
本開示は、マトリックス又は足場を形成するための様々な材料を企図している。例えば、いくつかの実施形態では、グルタルアルデヒド(GA)は、生体適合性及び耐久性を改善するための架橋剤として使用される。様々な実施形態では、他の架橋剤が企図される。理想的な生体材料架橋剤は、細胞毒性がなく、安価な材料である。好ましくは、薬剤は、材料の機械的性能を向上させる。様々な化学架橋剤及び天然架橋剤が想定される。例えば、想定される化学架橋剤としては、グルタルアルデヒド(GA)、カルボジイミド(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC))、エポキシ化合物、6-メチレンジイソシアネート(six methylene diisocyanate)、グリセリン、及びアルギン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。更に、想定される天然架橋剤としては、ゲニピン(GP)、ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)、タンニン酸、及びプロシアニジン(PC)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で様々な濃度の架橋剤が企図されているが、任意の特定の架橋剤の量、割合、又は濃度に関する限定は設けられない。更に、本明細書で薬剤に関して限定は設けられない。本明細書に示され説明されるようなマトリックス又は足場を形成するために、様々な薬剤や材料を備えることが企図されている。例えば、様々なプラズマゲルを使用することが想定されている。SURGIFLO(登録商標) Hemostatic Matrix、及びGrifols VISTASEAL(登録商標)などの市販製品は、本開示のシステム及び方法と共に使用するための凝固剤又は架橋剤と考えられている。本開示のマトリックス及びデバイスは、様々な実施形態において生分解性であると企図されている。他の実施形態では、マトリックス及びデバイスは、実質的に非生分解性の恒久的な特徴であると企図されている。
【0037】
十分な架橋及びマトリックス形成が起こり、細胞がマトリックスに埋め込まれるか又は結合し、細胞52の遠位部分がマトリックスに提供されない場合、又はマトリックスがグルコース及びインスリンの移動及び適切な動態を可能にする適切な密度である場合、架橋剤の提供は停止される。更に、本発明の実践によって形成されたマトリックスは、約10μm~約600μm、又はその任意の中間範囲の厚さを有することができる。
図6に示すように、次いで、架橋剤とマトリックス形成材料との間のマトリックス形成反応をクエンチするために、チャネル58に流体又はクエンチ剤が提供される。いくつかの実施形態では、クエンチ剤は生理食塩水を含むものとして企図されており、マトリックスはアルギン酸マトリックス(alginate matrix)を含む。クエンチ剤の導入は、マトリックスが所望の状態に達すると、マトリックス62の成長及び形成を制限又は意図的に停止するのに役立つ。本明細書では、流体又はクエンチ剤(例えば、生理食塩水など)を、チャネル58に加えて、又はチャネル58内ではなく、膜56の外部を取り囲むように導入して、膜56内の架橋及びマトリックス形成を抑制する一方で、形成されたマトリックス62の勾配強度(gradient strength)も更に高めることができることに留意されたい。例えば、アルギン酸ナトリウムを含むがこれに限定されない架橋しない培地または生理食塩水に、デバイスを浸漬してもよい。
【0038】
例示的な一実施形態では、細胞52は、ローダ66を介して空洞54の開口部64から装填することができる。更に、流体又はクエンチ剤は、チューブ70(例えば、取り外し可能な管)によってチャネル58の開口部68を介してチャネル58に導入することができる。更に、流体又はクエンチ剤は、槽又は格納デバイス74内のチャンバ56及び/又はチャネル58を取り囲むことができる。
【0039】
(例えば、)
図4~
図6に示されるような方法、システム及びデバイスにより、グルコースが結合されたときにインスリンを放出するという基本機能を物理的に損なうことなく、人工的にマトリックスを形成することによって幹細胞由来の膵島細胞の機能が改善される。いくつかの実施形態では、マトリックスはヒドロゲルマトリックスを含み、架橋剤はカルシウムなどの二価イオンを含む。更なる実施形態では、マトリックスはフィブリンマトリックスを含み、架橋剤はトロンビンを含み、クエンチ剤は血栓溶解剤を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスはアルギン酸塩を含み、塩化カルシウム、塩化バリウム、及び塩化ストロンチウムのうち少なくとも1つが架橋剤として使用され、生理食塩水又は塩化ナトリウムがクエンチ剤として使用される。本開示の様々な実施形態では、段階的密度を有するマトリックス(graduated density matrix)内に埋め込まれた細胞を有する被包性デバイスを調製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、血管が新生しており、かつ/又は身体に露出している細胞含有チャンバの表面の近くでは、マトリックスの密度が低い。特定の実施形態では、方法は、
図4~
図6に関連して示され説明された特定の順序又はシーケンスで、特定の薬剤をチャネルに供給することを含む。特定の実施形態では、供給される特定の材料及び所望のマトリックス形成量に基づいて、所定の時間の間、ガスチャネルに薬剤が供給されることが考えられる。具体的には、本開示の様々な方法ステップは、マトリックス形成の程度を観察又は積極的に監視する物理的能力なしに実行されると考えられるため、材料は特定の時間期間、チャネル58を通って送達される。
【0040】
本開示による更なる実施形態は、細胞を封入するための内部チャンバと、チャンバの第1の側面に隣接し、かつ流体透過性膜によってチャンバから分離されたチャネルと、チャンバの第2の側面の血管新生膜とを含む植込み型被包性デバイスを含み、チャンバは、流体透過性膜の近くで高い架橋を、血管新生膜の近くで低い架橋密度を有するマトリックス勾配(matrix gradient)を含む。本開示による更なる追加の実施形態は、患者に治療上の恩恵を与えるために、このような被包性デバイスを必要とする患者への移植である。
【0041】
図7~
図12は、流体(例えば、酸素、架橋剤、クエンチ剤、凍結保存液など)の送達のためのチャネルを依然として維持しながら、デバイス内の細胞含有チャンバ間の血管新生を可能にするように構成された被包性デバイスに関する本開示による実施形態を示す。被包性デバイス内の2つの細胞含有チャンバ間での血管新生を可能にすることにより、細胞含有チャンバのより多くの表面積が血管新生にさらされるため、デバイスの生物学的機能が向上することができる。
【0042】
図7は、上面81及び下面83を有する被包性デバイス80の側面図である。
図7に示すように、被包性デバイス80は、膜84によって分離された複数の内部チャンバ82a、82bを有する多層デバイスを含む。流体(例えば、酸素ガス)を被包性デバイス80に送るためのチャネル86が設けられている。デバイス80は、チャンバ82a、82b内に細胞を導入するためのポート88を含む。本開示の被包性デバイスのいくつかの実施形態では、チャネル86の「フットプリント(footprint)」は、チャンバ82a、82bのフットプリントと同じ又はほぼ同じであるが、本開示はまた、チャンバ82a、82bが、チャネル86の外側でチャンバ82a、82bの間に開放空間が存在するようにチャネル86を越えて延在するように、より小さいフットプリント、例えば、より狭いフットプリントを有するチャネル86も企図されている。このような開放空間により、チャンバ82a、82bの表面が露出し、その上での血管新生が可能になる。このような実施形態では、チャネル86のフットプリントを小さくするために、一方のチャネルは非線形の配置や経路となる。このような実施形態では、曲線をなすチャネルは、山や谷を含むことができる。使用時には、デバイス80の移植、上面81及び下面83の血管新生、並びにチャンバ82a、82b間の血管新生の後では、もはやチャネル86を通って酸素を送る必要はない。
【0043】
図8は、
図7の線A-Aに沿った被包性デバイス80の一部の断面立面図である。図示のように、チャネル86はデバイスを通って延在しており、空洞空間又はチャンバ82a、82bが設けられている。チャネル86のフットプリントは、下側チャンバ82bのフットプリントよりも小さい。例えば、チャネルのフットプリント又は面積は、下側又は上側チャンバのフットプリントの約10%~約90%、又はその任意の中間範囲とすることができる。空洞空間82a、82b又は蛇行チャネル86を有さない下側チャンバ82bの露出面は、その表面の血管新生を促進するために設けられた血管新生膜84を有することができる。デバイス80で血管新生が発生すると、チャネル86に酸素を供給する必要がなくなる。したがって、酸素の供給は、特定の時点で終了してもよく、その結果、細胞には血管新生膜を通る血液以外から酸素が供給されなくなる。デバイス80内に提供された細胞は、空洞82a、82bの外側を通って達成される酸素供給量よりも多くの酸素供給量を得ることで恩恵を受けるであろうことが認識される。したがって、様々な実施形態では、チャネル86は曲線形状に又は蛇行形状に設けられ、空洞の内表面の一部が露出して血管が新生され得るように、フットプリントが縮小されている。酸素チャネルが占有していない空洞の内面部分には、免疫隔離層と血管新生層との両方が含まれていることが好ましい。
【0044】
図9~
図11は、本開示による代替的な実施形態の被包性デバイスの、
図7の線A-Aに沿った断面図である。特に、
図9は、血管新生され得るチャネル86の両側に空洞82a、82bを有するチャネル86のコンパクトな蛇行状の配置を示す。更に、
図10は、第1及び第2の空洞82a、82bによって囲まれたチャネル86を示す。更に、
図11は、両側に空洞82a、82bを有するジグザグ型チャネル86を示す。
【0045】
図12は、本開示による被包性デバイスの実施形態の、
図7の線B-Bに沿った断面図である。図示のように、チャネル86は想像線(phantom)で示されており、複数の細胞88が提供されている。細胞は、各スフェロイド内に複数の細胞を含むスフェロイドの形態で提供されてもよい。代替的に、個々の細胞又は細胞の「塊」をデバイスの空洞82に装填してもよい。図示されるように、チャネル86は、酸素又は他の流体を細胞88に送達するためのチャネルの十分な表面積を提供するために、弓形チャネル又は蛇行チャネルとして設けられる。
図12に示すように、細胞の層は、複数の細胞88を含む。様々な実施形態では、複数の細胞88の一部は、チャネル86と直接に接触していない。しかし、デバイスの組立て、装填、及び移植の間、十分な数の細胞を生存させるために、酸素の適切な送達及び分配が行われる。デバイス80の上面及び下面(
図7の81と83)で血管が新生された後では、チャネル86を通じた酸素送達を終了してもよく、酸素は血管新生された膜(複数可)を介して細胞に供給される。
図8~
図12のデバイス及びチャネルは、従来技術の特定のデバイスと比較して面積が縮小された酸素送達システムを提供する。このようなデバイスは、デバイスの全体的なフットプリントとほぼ同じ面積を持つ酸素送達「層」を含むことができる。
図2、
図3、及び
図7~
図12に示すものを含む多層被包性デバイスでは、このような酸素送達部材は、酸素ガスがデバイスに流れている間、良好に機能することができる。しかし、一旦、酸素の送達が終了すると、これらのデバイスは血管新生の量を制限するため、細胞への後期(例えば、移植後)の酸素送達を制限する可能性がある。これに対処するために、本開示の実施形態は、空洞空間82a、82bを通って延在し、酸素を送達するための表面積を増やし、そしてデバイスの構成要素の血管新生を過度に制限しない酸素送達チャネルを考え、提供する。
【0046】
図8~
図12の実施形態は、一般に、被包性デバイスの1つのガスチャネル86を示しているが、本開示は、単一のガスチャネルを有するデバイスに限定されない。例えば、複数のガスチャネルが、本開示の空洞空間82を通ってそれらの間に延在することが考えられる。複数のガスチャネルを含む実施形態では、血管新生膜から細胞層を遮断、妨害、又は分離しないように、ガスチャネルを三次元に配置したり、ずらして配置したりすることが好ましい。
【0047】
本発明の別の実施形態は、患者に治療上の恩恵を提供するために、本明細書に説明されるような小さくなった流体チャネルのフットプリントを有する被包性デバイスを、それを必要とする患者に移植することを含む。この実施形態では、細胞チャンバ層間のデバイス上での血管新生が実現されている。
【0048】
図13及び
図14は、流体の送達のためのチャネルがデバイス内の細胞を凍結及び/又は解凍(即ち、温度調節)するために使用される被包性デバイスの使用に関連する本開示による実施形態を示す。本明細書で説明されるデバイスを使用すると、例えば、デバイスに細胞を装填した後、移植する前に、細胞をより迅速かつ効果的に凍結(即ち、凍結保存)させることができる。同様に、細胞は、移植前に、より迅速かつ効果的に加温することができる。このようにして、細胞への損傷が発生する機会が少なくなる。
【0049】
図13は、本開示の実施形態による被包性デバイス100の断面立面図である。被包性デバイス100は、デバイス100の内部容積を通って、又は少なくとも部分的に通って延在するフローチャネル102を含む。チャネル102は、2つの細胞チャンバ104a、104bの間に延在し、デバイスは、任意選択的に、外側免疫隔離膜及び/又は血管新生膜106を含んでもよい。
図13に示すように、流体の流れ108は、チャネル102を通って供給されるものとして企図される。凍結ステップ又は凍結保存ステップの間、流れ108は、デバイス及び細胞チャンバ104a、104b内に提供された細胞105を冷却又は凍結するための0°C未満の温度の流体(例えば、ジメチルスルホキシド等を含む液体等の凍結保存用流体)の流れであると企図される。代替的に、流れ108は、冷却空気又は様々な他の流体を含むと企図される。流体の第2の流れ110がデバイスの外部に供給される。第2の流れは、凍結保存培地及び/又は洗浄培地を含むと考えられる。このように、冷却のために流体チャネル102を利用すると、流体の流れ108及び110からの冷却媒体が細胞チャンバ104a、104bの両側に接触するため、細胞チャンバ104a、104b内の細胞をより迅速かつ効率的に冷却及び凍結することができる。
【0050】
更に、流体の流れ108、110の少なくとも一方は、移植前にデバイス100及び収容された細胞を加温又は解凍するために、0°Cを超える温度を有する流体を含む加温又は解凍プロセスとして提供されることが企図される。チャネル102は更に、移植の前又は後に細胞にガス(例えば、酸素)又は栄養素を送達するための導管として提供され、そのような導管として機能するように動作可能である。
【0051】
図14は、本開示の実施形態による被包性デバイス100の断面立面図である。図示のように、積層構成が提供され、被包性デバイス100は、複数のチャネル102と、複数の細胞チャンバ104とを含む。本明細書で説明される流体の流れ108は、チャネル102を通って供給されることが企図される。
図14のチャネル102は、別個のチャネルを含んでもよい。代替的に、チャネル102は、被包性デバイス100の内部を通って延在する単一の遠回りをする(curcuitous)チャネルを含んでもよい。血管系106、112は、細胞チャンバ104に関連して示されている。チャネル102は、凍結保存、解凍(又は加熱)、並びに細胞への酸素及び栄養素の送達のための流体の流れ108を供給するものとして考えられている。
【0052】
マトリックス及び足場形成の
図4~
図6のシステム及び方法は、
図7~14の実施形態と共に使用され得る。しかしながら、
図7~
図14の実施形態は、(例えば)
図4~
図6のマトリックス形成の概念及び方法に限定されない。実際、特許可能な特徴及び様々な新規の有用な特徴は、マトリックスの形成、架橋などの方法に関係なく、
図7~
図14の実施形態において提供されていると考えられる。同様に、特許可能な特徴及び様々な新規の有用な特徴は、ガスチャネル(複数可)の向き、形状、及び配置に関係なく、
図1~
図6の実施形態において提供されていると考えられる。
【0053】
図15~
図19は、血管新生及び/又は温度調節のための能力が強化された、積層又は多重積層の酸素対応被包性デバイス120に関する本開示による実施形態を示す。本明細書に説明のデバイスの使用により、移植された細胞による酸素消費率及び毒性代謝産物産生率が低下することによって生存率の上昇が可能になり得る。
【0054】
被包性デバイス120が、形成されたマトリックス内に細胞124を受容し収容するように動作可能な空洞123を有する複数の細胞チャンバ122を含む積層構成が提供される。細胞124は、各スフェロイド内に複数の細胞を含むスフェロイドの形態で提供されてもよい。代替的に、個々の細胞又は細胞の「塊」をデバイス120の細胞チャンバ122に装填してもよい。いくつかの実施形態では、被包性デバイス120のチャンバ122又は他の膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は他の同様の(例えば、本開示全体を通して説明されるような)材料などから構成されてもよい。
図4~
図6に関して説明したように、流体チャネル及び細胞を収容するための空洞の使用による、段階的マトリックス内に細胞を埋め込む、又は凝集させるための空洞内でのマトリックス形成に関する実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、
図15~
図19に示す実施形態に適用され得ることに留意されたい。
【0055】
被包性デバイス120は、1つ又は複数のチャネル126を含む。チャネル126は、被包性デバイス120の内部容積を通って、又は少なくとも部分的に通って延在する。例示的な一実施形態では、チャネル126は、2つの細胞チャンバ122a、122bに隣接して設けられてその間に延在してもよい。チャネル126は、ゴム又はプラスチックから製造される。例えば、チャネル126は、流体透過性シリコーンゴムチューブから製造されてもよく、又は本開示全体を通して説明されるように別の材料から製造されてもよい。チャネル126は、流体の入口/出口として動作する1つ又は複数のポート128を含む。例えば、被包性デバイス120は、酸素用の入口128a及び出口128bを含んでもよい。
【0056】
被包性デバイス120は、1つ又は複数の免疫隔離膜130及び/又は1つ又は複数の血管新生膜132を含んでもよい。
【0057】
図15に示す例示的な一実施形態では、免疫隔離膜130aは、細胞チャンバ122aを少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよく、血管新生膜132aは、免疫隔離膜130aを少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよい。免疫隔離膜130bは、細胞チャンバ122bを少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよく、血管新生膜132bは、免疫隔離膜130bを少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよい。例えば、血管新生膜132aは、細胞チャンバ122aの少なくとも側面に配置されてもよく、血管新生膜132bは、チャネル126に隣接する細胞チャンバ122bの少なくとも側面に配置されてもよい。
【0058】
図19に示すような別の例示的な実施形態では、血管新生膜132cは、細胞チャンバ122a、122bにそれぞれ対応する1つ又は複数の外側免疫隔離膜130及び/又は1つもしくは複数の血管新生膜132a、132bの、
図15に関して説明した例示的な実施形態で提供されるような配置に加えて、チャネル126を少なくとも部分的に取り囲んで封入することができる。チャネル126の周りに血管新生膜132cを含むことにより、細胞チャンバ122a、122bの周りの血管新生形成に加えて、チャネル126の周りの血管新生の形成が可能になり得る。チャネル126は、直径(d)が0.20ミリメートル(mm)(1/128インチ)~0.80mm(1/32インチ)の範囲であってもよい。
【0059】
被包性デバイス120は、血管新生を可能にするために設けられた空間で固定される。例えば、被包性デバイス120は、縫合、動接着剤によって固定されてもよく、又は一緒に溶接(例えば、スポット溶接など)されてもよい。
図15及び
図17に示すものを含むいくつかの実施形態では、被包性デバイス120の特徴部を接合又は取り付けるために、複数のスポット溶接部134が設けられている。
【0060】
被包性デバイス120の
図17における断面上面図に示されるように、細胞チャンバ122a、122bは、細胞チャンバ122aが細胞チャンバ122bの上方(又は、見方によっては下方)にあり、同様の向きになるように積層される。1つ又は複数のチャネル126は、被包性デバイス120を一回通過してもよく、又は少なくとも一回巻かれてもよい。例えば、1つ又は複数のチャネル126は、血管新生膜132の間に埋め込まれながら、1回又は複数回巻かれてもよい。例えば、1つ又は複数のチャネル126は、
図15~
図19全体を通して示されるように、血管新生膜132a、132bの間及び/又は血管新生膜132c内に埋め込まれてもよい。
【0061】
この点に関して、少なくとも
図15~
図19に具体化された被包性デバイス120は、中央のフローチャネル126又は酸素送達用のチャンバによって分離された2つの細胞チャンバ122a、122bを含み、これらにより、2つの積層細胞チャンバ122a、122bの間に血管系が形成されて、ガス透過性フローチャネル126を通っての酸素送達が促進される。この構成では、流体は、チャネル126から、それぞれの血管新生膜132a、132bを通って細胞チャンバ122a、122bに浸透することができる。例えば、酸素は、血管新生膜132a、132bを通って拡散し、それぞれの細胞チャンバ122a、122bの少なくとも一部に浸透することができる。
【0062】
図20~
図34は、血管新生及び/又は温度調節のための能力が強化された、積層又は多重積層の酸素対応被包性デバイス140に関する本開示による実施形態を示す。血管新生及び/又は温度調節の強化は、体外又は体内で起きる可能性がある。
【0063】
被包性デバイス140が、形成されたマトリックス内に細胞144を受容し収容するように動作可能な空洞143を有する複数の細胞チャンバ142を含む、積層構成が設けられる。細胞144は、各スフェロイド内に複数の細胞を含むスフェロイドの形態で提供されてもよい。代替的に、個々の細胞又は細胞の「塊」をデバイス140の細胞チャンバ142に装填してもよい。いくつかの実施形態では、チャンバ142又は膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は他の同様の(例えば、本開示を通して説明されるような)材料などから構成される。
図4~
図6に関して説明したように、流体チャネル及び細胞を収容するための空洞の使用による、段階的マトリックスに細胞を埋め込む又は凝集させるための空洞内でのマトリックス形成に関する実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、
図20~
図34に示す実施形態に適用できることに留意されたい。
【0064】
被包性デバイス140は、1つ又は複数のチャネル146を含む。チャネル146は、被包性デバイス140の内部容積を通って、又は少なくとも部分的に通って延在する。例示的な一実施形態では、チャネル146aは、2つの細胞チャンバ142a、142bに隣接して設けられてその間に延在し、チャネル146bは、2つの細胞チャンバ142b、142cに隣接して設けられてその間に延在する。チャネル146は、ゴム又はプラスチックから製造される。例えば、チャネル146は、流体透過性シリコーンゴムチューブから製造されてもよく、又は本開示全体を通して説明されるように別の材料から製造されてもよい。
【0065】
なお、
図20に示すように、被包性デバイス140は、3つのチャンバ142及び2つのチャネル146に限定されないことに留意されたい。代わりに、被包性デバイス140は、本開示の範囲から逸脱することなく、
図20の3つのドットのセットによって表されるように、積層構成で任意の数のチャンバ142及びチャネル146を含むことができる。
【0066】
チャネル146は、流体の入口/出口として動作する1つ又は複数のポート148を含む。例えば、被包性デバイス140は、酸素のための入口148a及び出口148bを含んでもよい。例えば、入口148aと出口148bとは別個であってもよい。
【0067】
図24~
図26の例示的な実施形態に示すように、入口148a及び出口148bは、それぞれ、チャネル146e、146f、146g、146hを有するチャンバ142e、142f、142g、142hの積層体内に埋め込まれた多層ポート又は層状ポート(例えば、皮膚一体型カテーテル)として組み合わせることができるが、ここで、入口148aは内側部分にあり、出口148bは外側部分にある(又は逆もまた同様)。
図26は、
図24の積層体の分解図を提供し、積層体内の隣接するチャンバ142内のチャネル146が外部チャネル又はライン156によって接続されて、入口148aと出口148bとの間の回路が完成する。更に、
図26に示すように、直接の外部チャネル又はライン158は、入口148aを出口148bに直接結合するために、チャネル146及び外部チャネル又はライン156によって生成された経路の少なくとも一部を補完又はバイパスすることができる。外部チャネル156、158は、血管系又は血管新生膜でコーティングされてもよいことに留意されたい。
【0068】
本開示の実施形態は、ガス送達に使用されるチャネル146を対象にするが、本明細書では、チャネル146は、追加的又は代替的に熱交換器として使用されてもよいことに留意されたい。
【0069】
被包性デバイス140は、1つ又は複数の血管新生膜150を含んでもよい。
図20に示す例示的な一実施形態では、血管新生膜150aは、細胞チャンバ142aを少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよく、血管新生膜150bは、細胞チャンバ142bを少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよく、血管新生膜150cは、細胞チャンバ142cを少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよい。例えば、血管新生膜150aは、細胞チャンバ142aの少なくとも側面に配置されてもよく、血管新生膜150bは、チャネル146aに隣接する細胞チャンバ142bの少なくとも側面に配置されてもよい。血管新生膜150bは、細胞チャンバ142bの少なくとも側面に配置されてもよく、血管新生膜150cは、チャネル146bに隣接する細胞チャンバ124cの少なくとも側面に配置されてもよい。
【0070】
被包性デバイス140は、血管新生を可能にするために設けられた空間で固定される。例えば、被包性デバイス140は、縫合、動接着剤によって固定されてもよく、又は一緒に溶接(例えば、スポット溶接など)されてもよい。
図21、
図22、及び
図29に示すものを含むいくつかの実施形態では、被包性デバイス140の特徴部を接合又は取り付けるために、複数のスポット溶接部152が設けられている。
【0071】
被包性デバイス140の
図27、
図28、
図31、
図32、
図34の図に示すように、細胞チャンバ142は積層されている。1つ又は複数のチャネル146は、被包性デバイス140を1回通過してもよく、又は少なくとも1回巻かれてもよい。例えば、1つ又は複数のチャネル146は、血管新生膜150の間に埋め込まれながら、1回又は複数回巻かれてもよい。例えば、チャンバ142a、142b、142cがある場合、
図20~
図34全体を通して示されるように、血管新生膜150a、150bの間及び/又は血管新生膜150b、150cの間に1つ又は複数のチャネル146を埋め込んでもよい。しかしながら、本明細書では、被包性デバイス140は、チャネル146が埋め込まれた別個の血管新生膜を含んでもよく、ここで、別個の血管新生膜は、細胞チャンバ142とチャネル146との間の空間で血管新生を可能にするある選択された量だけ、血管新生膜150a、150b、150cから離隔されていることに留意されたい。これに関して、血管系は、チャネル146(又はガスチャンバ146)と細胞チャンバ142との間に形成され得る。チャネル146が巻かれている場合、又は複数のチャネル146がある場合、チャネルパス(channel passes)間又はチャネル間の間隔は50~500マイクロメートルの範囲であり得ることに留意されたい。
【0072】
図23及び
図30に示すように、被包性デバイス140は、免疫隔離膜154を更に含んでもよい。例示的な一実施形態では、免疫隔離膜154は、細胞チャンバ142を少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよく、血管新生膜150は、免疫隔離膜154を少なくとも部分的に取り囲んでもよく、又は封入してもよい。
図20~
図34に示す実施形態のいずれもが、図示しないが、血管新生膜150と免疫隔離膜154の両方を含んでもよいことが企図されている。
【0073】
図30は、内部にチャネル146が延在するデバイスの断面立面図である。チャネルは、チャネルを支持し位置決めするための支持部材143を備えることが企図される。チャネル146は、蛇行チャネル又は巻回チャネル(例えば、
図28を参照)を備えるものとして考えられている。支持部材143は、細胞及び他の特徴部がチャネル146を通ってチャネル146の上下に延在することを可能にするために、メッシュ又は多孔質構造を含むものとして考えられている。支持部材143は、1~750マイクロメートルの範囲の孔径の孔を備えるものとして企図されている。例えば、孔径は150~300マイクロメートルの範囲であり得る。別の例として、孔径は少なくとも400マイクロメートルであり得る。当業者は、支持部材143の孔径が特定の用途に基づいて変化してもよく、孔径に関して限定は設けられないことを認識するであろう。
【0074】
被包性デバイス140全体は、スポット溶接、接着などによって固定されてもよいことに留意されたい。更に、管(tubing)146は、(例えば、積層体の)底部又は上部チャンバ142、(例えば、分離していない)血管新生膜150又は免疫隔離膜154に固定され得ることに留意されたい。
【0075】
図31~
図32は、支持部材143を示す。支持部材143は、例えば、チャネル146用のオプション支持構造として考えられる。様々な実施形態では、支持部材は、被包性デバイス140内に、又は少なくとも部分的に被包性デバイス内に設けられたメッシュ又は透過性部材を含む。血管新生膜は、支持部材の1つ又は複数の側面に設けられることが企図されている。
【0076】
この点に関して、少なくとも
図20~
図34に具体化された被包性デバイス140は、酸素送達用の1つ又は複数のフローチャネル146によって分離された、又は部分的に分離された2つ以上の細胞チャンバ142を含み、これにより、積層された細胞チャンバ142の間に血管系が形成されることが可能になり、チャネル146を通じた酸素送達を促進しつつ、酸素送達が中断した場合に血管系を通じたサポートも提供する。この構成では、流体は、1つ又は複数のチャネル146から、それぞれの血管新生膜150を通って細胞チャンバ146に浸透することができる。例えば、酸素は、血管新生膜150を通って拡散し、それぞれの細胞チャンバ142の少なくとも一部に浸透することができる。チャンバ146及び/又はチャネル146を通って「低温(cold)」ガス又は他の液体を圧送(pumping)することは、移植された細胞の酸素消費を減少させることによって生存率の上昇を可能にすることができ、毒性代謝産物の産生率を低下させることもできる。例えば、「低温」ガスは、摂氏0度(摂氏°又は°C)~摂氏37°であり得る。例えば、「低温」ガスは、摂氏17°~摂氏27°であってもよく、好ましくは摂氏17°であってもよい。更に、「低温」ガスは、摂氏8°の室温(RT)であってもよい。
【0077】
本開示の目的上、「酸素」は、純粋な又は実質的に純粋なO
2ガス、純粋なO
2ガスと空気との混合物、又は空気を指し得ることに留意されたい。更に、
図1~
図34に示すような特定の被包性デバイスを対象とする任意の実施形態は、特に断らない限り、本開示の範囲から逸脱することなく示される他の任意の被包性デバイスを対象とすることができることに留意されたい。
【0078】
本開示の様々な方法及びシステムは、被包性デバイス内に設けられたるマトリックス内に細胞を提供することを考えているが、本明細書に示され説明されるようなマトリックスを含まない方法及びシステムも考えられている。例えば、いくつかの実施形態では、スフェロイド細胞は細胞チャンバ内に提供され、マトリックスは被包性デバイス内に形成されない。凍結保存に関連する方法を含むがこれに限定されない本開示の方法は、スフェロイドを含むこのようなデバイスについて考えられている。スフェロイド細胞の例は、Van Beurdenの国際出願番号PCT/NL2017/050098号に提供されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
上記した例は、当業者に、関心対象の生体分子に行われ得る選択された改変を予測するための方法の実施形態をどのように作成し、使用するかの完全な開示及び説明を行うために提供され、本発明者らが本開示の範囲と見なすものの範囲を限定することを意図するものではない。本開示を実施するための上述の態様の変更は、が使用することができ、以下の請求項の範囲内であることが意図されている。
【0080】
本開示は、特定の方法やシステムに限定されるものではなく、当然のことながら、それらは変わり得ることは理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0081】
本開示の多数の実施形態を説明してきた。それにも拘わらず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の請求項の範囲内にある。