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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】金属張積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20241119BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B32B15/08 J
B29C65/02
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2024115371
(22)【出願日】2024-07-19
【審査請求日】2024-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2023142932
(32)【優先日】2023-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521228204
【氏名又は名称】合同会社ニスティ
(73)【特許権者】
【識別番号】520376432
【氏名又は名称】有限会社スクラム
(74)【代理人】
【識別番号】110004484
【氏名又は名称】弁理士法人岩橋国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】田原 修二
(72)【発明者】
【氏名】李 賢一
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-106957(JP,A)
【文献】国際公開第2022/124308(WO,A1)
【文献】特開2022-085734(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050080(WO,A1)
【文献】特開2024-071004(JP,A)
【文献】特開2005-105165(JP,A)
【文献】国際公開第2021/193195(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/072361(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08
B32B 37/06
B29C 63/02
B29C 65/02
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液晶ポリマーフィルムと、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔との積層前駆体を、前記第1の液晶ポリマーフィルムの面と前記第2の液晶ポリマーフィルムの面とが直接対向するように積層する積層工程と、
前記積層前駆体を、真空度が200hPa以下の環境下、前記第1の液晶ポリマーフィルムと前記第2の液晶ポリマーフィルムの融点のうち、より高い第1の融点よりも15℃~45℃高い温度で1分~60分間加熱する加熱工程と、
前記加熱工程終了後、冷却を開始し、0.5MPa~5MPaの第1の圧力で前記積層前駆体を積層方向に加圧する加圧工程と、を含み、
前記積層工程において、前記第1の液晶ポリマーフィルムの延伸方向と前記第2の液晶ポリマーフィルムの延伸方向とが80°~100°の角度をなすように、前記第1の液晶ポリマーフィルムと前記第2の液晶ポリマーフィルムとを積層する、金属張積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の液晶ポリマーフィルムと前記第2の液晶ポリマーフィルムのガラス転移温度のうち、より低い第1のガラス転移温度~前記第1の融点の温度範囲内で、前記第1の圧力を該第1の圧力の1/2~1/20である第2の圧力まで下げ、前記温度範囲及び前記第2の圧力の状態で5分間~60分間保持するアニール工程を含む、請求項1に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の液晶ポリマーフィルムの融点及び前記第2の液晶ポリマーフィルムの融点は、それぞれ、270℃~340℃である、請求項1に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の液晶ポリマーフィルムと前記第2の液晶ポリマーフィルムとは同一の材質を有する、請求項1に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の液晶ポリマーフィルムに対向する前記第1の金属箔の面の十点平均粗さが1.5μm以下である、請求項1に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の金属箔は、3μm~40μmの厚さを有する電解銅箔又は圧延銅箔である、請求項1に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項7】
製造された金属張積層体において、前記第1の液晶ポリマーフィルムからなる第1の液晶ポリマー層と前記第1の金属箔からなる第1の金属層との剥離強度が、0.9kN/m~2.5kN/mである、請求項1に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項8】
前記積層工程において、前記積層前駆体を型内に作製し、
前記加圧工程において、前記型で前記積層前駆体を成形しながら加圧する、請求項1に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項9】
前記積層前駆体は、第2の金属箔を更に有し、
前記積層工程において、前記第1の液晶ポリマーフィルムの面と前記第1の金属箔の面とが直接対向するように配し、
前記第2の液晶ポリマーフィルムの面と前記第2の金属箔の面とが直接対向するように配する、請求項1に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項10】
前記第2の金属箔は3μm~40μmの厚さを有する電解銅箔又は圧延銅箔であり、
前記第2の液晶ポリマーフィルムに対向する前記第2の金属箔の面の十点平均粗さが1.5μm以下である、請求項9に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項11】
製造された金属張積層体において、前記第2の液晶ポリマーフィルムからなる第2の液晶ポリマー層と前記第2の金属箔からなる第2の金属層との剥離強度が、0.9kN/m~2.5kN/mである、請求項9に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項12】
前記積層前駆体は、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔とをこの順に積層した第1の積層単位を2以上有し、
隣接する前記第1の積層単位と前記第1の積層単位の間に薄型面状ヒーターを配する、請求項1から8のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項13】
前記積層前駆体は、第2の金属箔と、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔とをこの順に積層した第2の積層単位を2以上有し、
隣接する前記第2の積層単位と前記第2の積層単位の間に薄型面状ヒーターを配する、請求項9から11のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項14】
前記薄型面状ヒーターが300℃以上の温度に加熱可能である、請求項12に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項15】
前記薄型面状ヒーターが300℃以上の温度に加熱可能である、請求項13に記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項16】
製造された金属張積層体は、前記第1の液晶ポリマーフィルムからなる第1の液晶ポリマー層と前記第2の液晶ポリマーフィルムからなる第2の液晶ポリマー層とからなるラミネートフィルムの配向性(MD/TD比)が1.0~1.2であり、かつ前記ラミネートフィルムの樹脂強度が100MPa以上であり、
前記金属張積層体の反り量が3mm以下である、請求項1から8のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項17】
製造された金属張積層体は、前記第1の液晶ポリマーフィルムからなる第1の液晶ポリマー層と前記第2の液晶ポリマーフィルムからなる第2の液晶ポリマー層とからなるラミネートフィルムの配向性(MD/TD比)が1.0~1.2であり、かつ前記ラミネートフィルムの樹脂強度が100MPa以上であり、
前記金属張積層体の反り量が3mm以下である、請求項9から11のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項18】
製造された金属張積層体は、前記第1の液晶ポリマーフィルムからなる第1の液晶ポリマー層と前記第2の液晶ポリマーフィルムからなる第2の液晶ポリマー層とからなるラミネートフィルムの面積10cm 当たりの直径0.5mm以下のボイドの平均個数が5個以下である、請求項1から8のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項19】
製造された金属張積層体は、前記第1の液晶ポリマーフィルムからなる第1の液晶ポリマー層と前記第2の液晶ポリマーフィルムからなる第2の液晶ポリマー層とからなるラミネートフィルムの面積10cm 当たりの直径0.5mm以下のボイドの平均個数が5個以下である、請求項9から11のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項20】
製造された金属張積層体は、前記第1の液晶ポリマーフィルムからなる第1の液晶ポリマー層と前記第2の液晶ポリマーフィルムからなる第2の液晶ポリマー層とからなるラミネートフィルムの面方向の線膨張率の比(MD/TD)が1.2以下であり、かつ前記ラミネートフィルムの厚さ方向(z方向)の線膨張率が45ppm以下である、請求項1から8のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項21】
製造された金属張積層体は、前記第1の液晶ポリマーフィルムからなる第1の液晶ポリマー層と前記第2の液晶ポリマーフィルムからなる第2の液晶ポリマー層とからなるラミネートフィルムの面方向の線膨張率の比(MD/TD)が1.2以下であり、かつ前記ラミネートフィルムの厚さ方向(z方向)の線膨張率が45ppm以下である、請求項9から11のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項22】
製造された金属張積層体は、フレキシブルプリント基板又はリジッドプリント基板の作製に用いられる、請求項1から8のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【請求項23】
製造された金属張積層体は、フレキシブルプリント基板又はリジッドプリント基板の作製に用いられる、請求項9から11のいずれかに記載の金属張積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶ポリマーフィルムと金属箔とを積層した金属張積層体及び金属張積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代通信(5G)システム用の機器の需要が高まりつつある。そこで、高周波の伝送損失が小さい材料として、熱可塑性の液晶ポリマー(LCP;Liquid Cristal Polymer)フィルムが着目されている。以下において、液晶ポリマーのことを「LCP」と表記することがある。
【0003】
LCPは、溶融状態において分子鎖が一方向に配列して液晶性を示すポリマーである。分子鎖は、LCPフィルムを作製する際の溶融押し出しする方向(MD)に沿って配向する。その分子鎖配向性のために、MDが、その垂直方向(TD)よりも引張強度が低くなったり、線膨張係数が高くなったりして、異方性が問題となる。そこで、例えば、特許文献1には、実質的に一方向に配向したサーモトロピック液晶ポリマーの複数のシートを互いに向きを変えて一体的に熱接合する多軸配向ラミネートの製造方法が記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと金属シートとの金属張積層板をロール・ツー・ロールにより製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-31718号公報
【文献】国際公開第2017/154811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本開示の観点から与えられる。
【0007】
特許文献1に記載の多軸配向ラミネートの製造方法においては、大気圧下で2枚のLCPフィルムの接合が行われている。しかしながら、大気圧下での加熱接合では、異方性の改善が十分ではない。また、得られたLCPラミネートフィルム中に発生するボイドにより、LCPラミネートフィルムの樹脂強度が大幅に低下してしまう。また、特許文献1には多軸配向ラミネートに金属箔を接合すること、及び金属箔を接合した金属張積層体について記載も示唆もされていない。
【0008】
特許文献2に記載の金属張積層板の製造方法においては、LCPフィルムの異方性を改善することができない。特許文献2において金属張積層板の製造前にLCPフィルムの異方性を改善するとしたら、別途工程が必要となり、生産効率が低い金属張積層板の製造方法となってしまう。また、特許文献2に記載の金属張積層板の製造方法によって製造された金属張積層板は、加圧工程を行わないため、金属箔とLCPフィルムとの剥離強度を高くすることができない。更に、特許文献2のロール・ツー・ロール法では、加圧工程を行わないため、製造された金属張積層板に3mmを超える反りが発生してしまい、半田リフロー工程でのプリント基板の搬送に支障が生じてしまうという問題がある。
【0009】
そこで、LCPフィルムの異方性を改善すると共に、LCPフィルムに高強度で金属箔を接合することができる金属張積層体の製造方法の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1視点によれば、第1の液晶ポリマーフィルムと、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔との積層前駆体を、第1の液晶ポリマーフィルムの面と第2の液晶ポリマーフィルムの面とが直接対向するように積層する積層工程と、積層前駆体を、真空度が200hPa以下の環境下、第1の液晶ポリマーフィルムと第2の液晶ポリマーフィルムの融点のうち、より高い第1の融点よりも15℃~45℃高い温度で1分~60分間加熱する加熱工程と、加熱工程終了後、冷却を開始し、0.5MPa~5MPaの第1の圧力で積層前駆体を積層方向に加圧する加圧工程と、を含む金属張積層体の製造方法が提供される。
積層工程において、第1の液晶ポリマーフィルムの延伸方向と第2の液晶ポリマーフィルムの延伸方向とが80°~100°の角度をなすように、第1の液晶ポリマーフィルムと第2の液晶ポリマーフィルムとを積層する。
【0011】
本発明の第2視点によれば、第2の液晶ポリマー層と、第1の液晶ポリマー層と、第1の金属層とをこの順に有し、第1の液晶ポリマー層と第1の金属層との剥離強度が0.9kN/m~2.5kN/mであり、第1の液晶ポリマー層と第2の液晶ポリマー層からなるラミネートフィルムの配向性(MD/TD比)が1.0~1.2であり、かつラミネートフィルムの樹脂強度が100MPa以上であり、反り量が3mm以下である金属張積層体が提供される。
【0012】
本発明の第3視点によれば、第2の金属層と、第2の液晶ポリマー層と、第1の液晶ポリマー層と、第1の金属層とをこの順に有し、第1の液晶ポリマー層と第1の金属層との剥離強度が0.9kN/m~2.5kN/mであり、第2の液晶ポリマー層と第2の金属層との剥離強度が0.9kN/m~2.5kN/mであり、第1の液晶ポリマー層と第2の液晶ポリマー層からなるラミネートフィルムの配向性(MD/TD比)が1.0~1.2であり、かつラミネートフィルムの樹脂強度が100MPa以上であり、反り量が3mm以下である金属張積層体が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本開示の金属張積層体の製造方法によれば、異方性が改善されたLCPラミネートフィルムを有する金属張積層体を製造することができる。
【0014】
本開示の金属張積層体の製造方法によれば、異方性を改善する工程とLCPラミネートフィルムに金属箔を接合する工程を同時に行うことができる。
【0015】
本開示の金属張積層体の製造方法によれば、高い接合強度及び高い樹脂強度を有すると共に、高い寸法精度を有する金属張積層体を製造することができる。
【0016】
本開示の金属張積層体の製造方法によれば、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔とをこの順に積層した第1の積層単位を2以上有し、隣接する第1の積層単位と第1の積層単位の間に薄型面状ヒーターを配した積層前駆体を用いることによって、加熱温度のムラが生じることなく、生産性の大幅な向上を実現できる。
【0017】
本開示の金属張積層体の製造方法によれば、積層前駆体は、第2の金属箔と、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔とをこの順に積層した第2の積層単位を2以上有し、隣接する第2の積層単位と第2の積層単位の間に薄型面状ヒーターを配した積層前駆体を用いることによって、加熱温度のムラが生じることなく、生産性の大幅な向上を実現できる。
【0018】
本開示の金属張積層体は、高い接合強度及び樹脂強度を有すると共に、高い寸法精度を有し、ボイドの発生が少なく、反り量が少ない高品質なものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る金属張積層体の製造方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図2図2は、積層前駆体の一例を示す概略側面図である。
図3図3は、積層前駆体の他の一例を示す概略側面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る金属張積層体の製造方法を説明するための概略図である。
図5図5は、第1実施形態に係る金属張積層体の製造方法を説明するための概略図である。
図6図6は、多層構造の積層前駆体の一例を示す概略図である。
図7図7は、多層構造の積層前駆体の他の一例を示す概略図である。
図8図8は、本開示の金属張積層体の一例を示す概略図である。
図9図9は、本開示の金属張積層体の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0021】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の液晶ポリマーフィルムと第2の液晶ポリマーフィルムのガラス転移温度のうち、より低い第1のガラス転移温度~第1の融点の温度範囲内で、第1の圧力を該第1の圧力の1/2~1/20である第2の圧力まで下げ、前記温度範囲及び第2の圧力の状態で5分間~60分間保持するアニール工程を含む。
【0022】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の液晶ポリマーフィルムの融点及び第2の液晶ポリマーフィルムの融点は、それぞれ、270℃~340℃の範囲内である。
【0023】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の液晶ポリマーフィルムと第2の液晶ポリマーフィルムとは同一の材質を有する。
【0024】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の液晶ポリマーフィルムに対向する第1の金属箔の面の十点平均粗さが1.5μm以下である。
【0025】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の金属箔は、3μm~40μmの厚さを有する電解銅箔又は圧延銅箔である。
【0026】
上記第1視点の好ましい形態によれば、製造された金属張積層体において、第1の液晶ポリマーフィルムからなる第1の液晶ポリマー層と第1の金属箔からなる第1の金属層との剥離強度が、0.9kN/m~2.5kN/mである。
【0027】
上記第1視点の好ましい形態によれば、積層工程において、積層前駆体を型内に作製する。加圧工程において、型で積層前駆体を成形しながら加圧する。
【0028】
上記第1視点の好ましい形態によれば、積層前駆体は、第2の金属箔を更に有する。積層工程において、第1の液晶ポリマーフィルムの面と第1の金属箔の面とが直接対向するように配する。第2の液晶ポリマーフィルムの面と第2の金属箔の面とが直接対向するように配する。
【0029】
上記第1視点の好ましい形態によれば、第2の金属箔は3μm~40μmの厚さを有する電解銅箔又は圧延銅箔である。第2の液晶ポリマーフィルムに対向する第2の金属箔の面の十点平均粗さが1.5μm以下である。
【0030】
上記第1視点の好ましい形態によれば、製造された金属張積層体において、第2の液晶ポリマーフィルムからなる第2の液晶ポリマー層と第2の金属箔からなる第2の金属層との剥離強度が、0.9kN/m~2.5kN/mである。
【0031】
上記第1視点の好ましい形態によれば、積層前駆体は、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔とをこの順に積層した第1の積層単位を2以上有し、隣接する第1の積層単位と第1の積層単位の間に薄型面状ヒーターを配する。
【0032】
上記第1視点の好ましい形態によれば、積層前駆体は、第2の金属箔と、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔とをこの順に積層した第2の積層単位を2以上有し、隣接する第2の積層単位と第2の積層単位の間に薄型面状ヒーターを配する。
【0033】
上記第1視点の好ましい形態によれば、薄型面状ヒーターは300℃以上に加熱可能である。
【0034】
上記第2視点及び第3視点の好ましい形態によれば、ラミネートフィルムの面積10cm当たりの直径0.5mm以下のボイドの平均個数が5個以下である。
【0035】
上記第2視点及び第3視点の好ましい形態によれば、ラミネートフィルムの面方向の線膨張率の比(MD/TD)は1.2以下であり、厚さ方向(z方向)の線膨張率は45ppm以下である。
【0036】
上記第2視点及び第3視点の好ましい形態によれば、第1の金属層及び第2の金属層は、3μm~40μmの厚さを有する電解銅層又は圧延銅層である。
【0037】
上記第2視点及び第3視点の好ましい形態によれば、金属張積層体は、フレキシブルプリント基板又はリジッドプリント基板に用いられる。
【0038】
本開示の第1実施形態に係る金属張積層体の製造方法について説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る金属張積層体の製造方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、本発明の金属張積層体の製造方法における処理の流れについて説明する。
【0039】
ステップS11(積層工程)では、積層前駆体における第1の液晶ポリマーフィルムの面と第2の液晶ポリマーフィルムの面とが直接対向するように積層すると、処理をS12に移行する。
【0040】
ステップS12(加熱工程)では、真空度が200hPa以下の環境下、第1の融点よりも15℃~45℃高い温度で1分~60分間加熱すると、処理をS13に移行する。
【0041】
ステップS13(加圧工程)では、加熱工程終了後、冷却を開始し、0.5MPa~5MPaの第1の圧力で積層前駆体を積層方向に加圧すると、処理をS14に移行する。
【0042】
ステップS14(アニール工程)では、第1のガラス転移温度~第1の融点の温度範囲内で、第1の圧力を第2の圧力まで下げ、前記温度範囲及び前記第2の圧力の状態で5分間~60分間保持すると、本処理を終了する。
【0043】
以上より、本開示の第1実施形態の金属張積層体の製造方法によると、高い接合強度及び高い樹脂強度を有すると共に、高い寸法精度を有する金属張積層体を製造することができる。
【0044】
本開示にいう金属張積層体とは、LCPラミネートフィルムと金属箔の積層体のことをいう。本開示にいうLCPラミネートフィルムは、少なくとも2枚のLCPフィルムを積層し、溶融一体化したフィルムである。LCPラミネートフィルムにおいて、LCPフィルムの積層枚数は、例えば、2枚、3枚又は4枚とすることができる。本開示の金属張積層体において、LCPラミネートフィルムの少なくとも一方の面に金属箔が積層されている。LCPラミネートフィルムの両面に金属箔が積層されてもよい。本開示の金属張積層体は、LCPラミネートフィルムと金属箔とを交互に積層させた多層構造体であってもよい。
【0045】
本開示の金属張積層体において、直接重ね合わせたLCPフィルム同士は接合(融着)している。直接重ね合わせたLCPフィルムと金属箔とは高強度に接合している。
【0046】
第1の態様に係る積層前駆体の概略側面図を図2に示す。本開示にいう積層前駆体10は、少なくとも2枚のLCPフィルム1,2及び少なくとも1枚の金属箔3を積層した、金属張積層体製造完了前のものをいう。
【0047】
積層前駆体10は、第1のLCPフィルム1と、第2のLCPフィルム2と、第1の金属箔3とを、第1のLCPフィルム1の面と第2のLCPフィルム2の面とが直接対向するように積層して作製される。
【0048】
第1のLCPフィルム1の作製時の延伸方向(押出方向)と第2のLCPフィルム2の作製時の延伸方向(押出方向)とが80°~100°の角度をなすように、第1のLCPフィルム1と第2のLCPフィルム2とを重ねる。これにより、LCPラミネートフィルムの配向の異方性を低減することができる。第1のLCPフィルム1と第2のLCPフィルム2のなす角度は、85°~95°が好ましく、90°が最も好ましい。
【0049】
第2の態様に係る積層前駆体の概略側面図を図3に示す。積層前駆体20は、図3に示すように、第2の金属箔4を更に有することができる。積層工程において、第1のLCPフィルム1の面と第1の金属箔3の面とが直接対向するように配することができる。第2のLCPフィルム2の面と第2の金属箔4の面とが直接対向するように配することができる。これにより、積層前駆体20は、第1のLCPフィルム1と第2のLCPフィルム2とを、第1の金属箔3と第2の金属箔4とで挟んだ構造を有することができる。
【0050】
積層前駆体10、20は、第1のLCPフィルム1及び第2のLCPフィルム2以外のLCPフィルム(不図示)を更に有することができる。積層前駆体10、20は、第1の金属箔3及び第2の金属箔4以外の金属箔(不図示)を更に有することができる。
【0051】
積層前駆体10、20は、LCPフィルム面及び金属箔面を覆う鏡面板間に形成すると好ましい。
【0052】
本開示の金属張積層体の製造方法に適用可能なLCPは、熱可塑性を有するものであれば特に限定されない。LCPは、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものであると好ましい。第1のLCPと第2のLCPとは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。第1のLCPと第2のLCPとは同じ材質であると好ましい。
【0053】
本開示の金属張積層体の製造方法におけるLCPには公知のポリマーを適用することができる。
LCPは、p-ヒドロキシ安息香酸成分を含むと好ましい。LCPは、p-ヒドロキシ安息香酸成分に加えて、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)成分、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分及びエチレンテレフタレート成分からなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0054】
LCPは、例えば、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分及びp-ヒドロキシ安息香酸成分を含むポリエステルとすることができる。6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、15mol%~40mol%とすることができる。p-ヒドロキシ安息香酸成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、60mol%~85mol%とすることができる。
【0055】
LCPは、例えば、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分、テレフタル酸成分、及びp-ヒドロキシ安息香酸成分を含むポリエステルとすることができる。6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、15mol%~40mol%とすることができる。テレフタル酸成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、1~5mol%とすることができる。p-ヒドロキシ安息香酸成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、65mol%~84mol%とすることができる。
【0056】
LCPは、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル成分、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分、テレフタル酸成分、及びp-ヒドロキシ安息香酸成分を含むポリエステルとすることができる。4,4’-ジヒドロキシビフェニル成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、5mol%~25mol%とすることができる。6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、5mol%~15mol%とすることができる。テレフタル酸成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、5mol%~15mol%とすることができる。p-ヒドロキシ安息香酸成分は、例えば、LCPのモノマー成分の総量に対して、50mol%~80mol%とすることができる。
【0057】
LCPは公知の方法で製造することができる。LCPは市販品を使用することができる。
【0058】
各LCPの融点は、270℃~340℃の範囲内にあると好ましい。融点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)により、昇温速度10℃/分で測定し、融解時の吸熱ピーク温度とすることができる。
各LCPのガラス転移温度は、150℃~250℃の範囲内にあると好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC)により、昇温速度10℃/分で測定し、相転移時の吸熱ピーク温度とすることができる。
【0059】
本開示の金属張積層体の製造方法で製造された金属張積層体をフレキシブルプリント基板に用いる場合、LCPフィルムの厚さは、20μm以上であると好ましく、25μm以上であるとより好ましい。LCPフィルムの厚さは、200μm以下であると好ましく、100μm以下であるとより好ましい。LCPフィルムの厚さは、例えば、デジタルシックネスゲージで任意の10点の厚さを測定し、その平均値とすることができる。
【0060】
本開示の金属張積層体の製造方法で製造された金属張積層体をリジッドプリント基板に用いる場合、高周波特性を有利に発現させる目的でより厚いLCPフィルムを使用することができる。本開示の金属張積層体の製造方法は厚いLCPフィルムであっても適用することができる。例えば、LCPフィルムの厚さが500μm~1,000μmであっても、安定して本開示の金属張積層体の製造方法を適用することができる。
また、厚み精度及び引張強度の向上、更なる寸法安定性の向上を目的として2枚のLCPフィルムの間にガラスクロスを挟んだリジッドプリント基板とすることができる。ガラスクロスとしては、厚さ40μm~200μmの市販品を使用することができる。
【0061】
第1の金属箔と第2の金属箔とは同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。第1の金属箔と第2の金属箔は同じ材質であると好ましい。
【0062】
本開示の金属箔の材料としては、特に制限はなく、例えば、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム、及びステンレスなどを挙げることができる。金属箔は、導電性、取り扱い性、及びコスト等の観点から、銅箔やステンレス(登録商標)箔を使用することが好ましい。なお、銅箔としては、圧延法によって製造されるもの(圧延銅箔)や電解法によって製造されるもの(電解銅箔)を使用することができる。
【0063】
また、金属箔には、通常、銅箔に対して施される酸洗浄などの化学的処理が施されていてもよい。また、金属箔の厚みは、3μm以上40μm以下が好ましく、10μm以上20μm以下がより好ましい。金属箔の厚みが薄すぎると、金属張積層体の製造工程において、金属箔に皺等の変形が生じるおそれがある。金属箔の厚みが厚すぎると、例えば、フレキシブル配線板として使用する場合に、折り曲げ性能が低下する場合がある。
【0064】
LCPフィルムと接する面の金属箔の表面粗さが小さく(即ち、低粗度であり)、十点平均粗さRzjisは1.5μm以下が好ましく、0.1μm以上1.5μm以下がより好ましい。このような低粗度を有する場合であっても、本開示の金属張積層体は、特定の製造方法により製造されるため、密着強度を向上するとともにブリスターの発生を抑制することができる。また、十点平均粗さRzjisが例えば0.1μm未満になると、接着力の安定した確保が難しくなる。十点平均粗さRzjisが1.5μmを超えると、良好な高周波特性の発現が難しくなる。特に高周波特性と密着強度のバランスから、0.1μm以上1.2μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.3μm以上1.0μm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0065】
十点平均粗さRzjisは、JIS B0601に準拠した方法により測定することができる。
【0066】
また、金属箔の厚みと、その表面粗さとは、所定の関係にあることが良好な高周波特性を得る点から好ましい。例えば、金属箔の厚みと十点平均粗さとの比(単位:μm)は、(金属箔の厚み)/(十点平均粗さ)=400/1~30/1であることが好ましく、200/1~40/1であることがより好ましい。
【0067】
積層前駆体10、20は後述する型で作製してもよい。
【0068】
本開示の金属張積層体の製造方法は、積層工程終了後、積層前駆体を、真空度が200hPa以下の環境下、第1の液晶ポリマーフィルムと第2の液晶ポリマーフィルムの融点のうち、より高い第1の融点よりも15℃~45℃高い温度で1分間~60分間加熱する加熱工程を含む。本開示の金属張積層体の製造方法は、真空ラミネータで行うことができる。
【0069】
加熱温度は、積層する複数のLCPフィルムの融点のうち、最も高い第1の融点よりも15℃高い温度(第1の融点+15℃)以上であり、第1の融点よりも20℃高い温度(第1の融点+20℃)以上であると好ましい。また、加熱温度は、第1の融点よりも45℃高い温度(第1の融点+45℃)以下であり、第1の融点よりも40℃高い温度(第1の融点+40℃)以下であると好ましい。加熱温度が第1の融点よりも15℃高い温度未満であると、LCPラミネートフィルムの配向性の異方性(MD/TD)が大きくなってしまう。また、LCPフィルムと金属箔の接着強度が低くなってしまう。また、MDとTDの線膨張率の差が大きくなってしまう。更に、LCPラミネートフィルムにボイドが発生して樹脂強度が低下すると共に、金属張積層体に反りが発生しやすくなってしまう。一方、加熱温度が第1の融点よりも45℃高い温度を超えると、LCPラミネートフィルムの配向性の制御が困難となる。また、金属張積層体にしわが発生し、厚さ制御が困難となる。ここでいうMD及びTDは、積層するLCPフィルムのうちの1つのLCPフィルムを基準とした方向である。
【0070】
昇温速度は、1℃/分~50℃/分であると好ましく、2℃/分~20℃/分であるとより好ましく、5℃/分~15℃/分であると更に好ましい。
【0071】
上記加熱温度範囲での加熱時間は、1分間以上であり、2分間以上であると好ましく、5分間以上であるとより好ましい。上記加熱温度範囲での加熱時間は、60分間以下であり、30分間以下であると好ましく、20分間以下であるとより好ましい。加熱時間が短いと配向性の異方性が高くなってしまう。LCPフィルムと金属箔との接着強度が低下してしまう。LCPラミネートフィルムの樹脂強度も低下してしまう。一方、加熱時間が長いと、分子量が増大し、粘性変化、更に機械特性の変化が生じる。
【0072】
加熱温度は、積層前駆体を挟む鏡面板面に接するヒーターの設定温度に等しいと考えることができる。ヒーターは積層前駆体を加熱可能なものであれば特に限定されない。ヒーターとしては、例えば、オイルヒータ、電熱ヒーター、薄型面状ヒーター等を使用することができる。
【0073】
加熱工程は、真空度が200hPa以下の環境下で行われる。即ち、積層前駆体を加圧するプレス機内の真空度は200hPa以下である。
真空度は100hPa以下であると好ましく、50hPa以下であるとより好ましく、20hPa以下であると更に好ましい。真空度は、0.1hPa以上とすることができる。真空度が200hPaよりも高いと、LCPラミネートフィルムにボイドが発生し、LCPラミネートフィルムの樹脂強度が低下しやすくなってしまう。減圧は、加熱と同時に行うことができる。減圧は、第1の融点よりも20℃低い温度(第1の融点-20℃)以下で開始すると好ましい。
【0074】
本開示の金属張積層体の製造方法は、加熱工程終了後、冷却を開始し、0.5MPa~5MPaの第1の圧力で積層前駆体を積層方向に加圧する加圧工程を含む。
積層前駆体の加圧は、積層前駆体の面全体を加圧(押圧)すると好ましい。
【0075】
積層前駆体を積層方向に加圧する第1の圧力は、0.5MPa以上であり、1MPa以上であると好ましい。積層前駆体を加圧する圧力は、5MPa以下であり、3MPa以下であると好ましい。加圧タイミングが遅すぎたり、圧力が低すぎたりすると、配向性の異方性が高くなり、金属箔の接着強度が低くなると共に、LCPラミネートフィルムにボイドが発生してLCPラミネートフィルムの樹脂強度が低下してしまう。加圧開始タイミングが早すぎたり、圧力が高すぎると、配向性の異方性が高くなると共に、LCPラミネートフィルムにしわが発生し、LCPラミネートフィルムの厚みにむらが生じてしまう。
【0076】
加圧工程は、金属張積層体を成形するための型に入れて積層前駆体を成形しながら行うと好ましい。図4及び図5に、加圧工程における積層前駆体及び型の概略断面図を示す。図4及び図5に示す態様は例示にすぎず、積層前駆体及び型の形態は、図4及び図5に示す寸法比に限定されない。図4及び図5においては積層前駆体20を示すが、積層前駆体10であっても適用可能である。更に、図6及び図7に示す多層構造の積層前駆体であってもよい。
【0077】
図4に示す態様においては、積層前駆体20は、下型32の凹部32a内に形成されている。凹部32aの面方向の寸法は、目的とする金属張積層体の寸法に適合させると好ましい。凹部32aの厚さ方向(深さ)の寸法は、目的とする金属張積層体の厚さに適合させると好ましい。上型31で積層前駆体20を加圧した時に、積層前駆体20に所定の圧力が掛かった状態で、積層前駆体20の第2の金属箔4の上面と下型32の上面が面一となるような深さを凹部32aは有すると好ましい。
【0078】
図5に示す態様においては、下型34の凹部34aの深さは、目的とする金属張積層体の厚さ以上となっている。上型33は、積層前駆体20を加圧すると共に、凹部34aと嵌合する凸部33aを有する。上型33で積層前駆体20を加圧した時に、凸部33aによって積層前駆体20に所定の圧力がかかった状態で、凸部33aが凹部34aに嵌合すると好ましい。図5に示す態様は、上記以外は図4に示す態様と同様である。
【0079】
積層前駆体20は、加熱工程においてLCPフィルム1、2の融点以上に加熱されている。このため、溶融したLCPフィルムの流動性が高くなっており、加圧によって厚さが変動しやすくなっている。そこで、製造する金属張積層体の最終寸法(形状)に成形するための凹部を有する型を用いることによって、厚さ制御を容易にし、所望の厚さを有する金属張積層体を製造することができる。
【0080】
加圧工程により、LCPフィルム同士を融着させると共に、LCPフィルムと金属箔とを接合することができる。また、金属張積層体の平坦性を高める(反り量を小さくする)と共に、金属張積層体の厚さを制御することができる。
【0081】
本開示の金属張積層体の製造方法は、第1の液晶ポリマーフィルムと第2の液晶ポリマーフィルムのガラス転移温度のうち、より低い第1のガラス転移温度~第1の融点の温度範囲内で、第1の圧力を該第1の圧力の1/2~1/20である第2の圧力まで下げ、前記温度範囲及び前記第2の圧力の状態で5分間~60分間保持する、アニール工程を含む。アニール工程を行うことによって、加圧工程での第1の圧力により生じた歪を緩和することができる。即ち、加圧工程での第1の圧力により積層前駆体に厚み方向に歪が生じ、その歪をアニール工程で第1の圧力を第2の圧力に低減することにより緩和する。その結果、LCPラミネートフィルムの厚さ方向(z方向)の線膨張率の増加を抑制することができる。
アニール工程での加熱温度は、第1の融点より5℃~40℃低い温度であることが好ましく、第1の融点より10℃~30℃低い温度であることがより好ましい。
【0082】
第2の圧力は、第1の圧力の1/2~1/20の範囲内に下げた圧力である。例えば、第1の圧力を1MPaで加圧した場合、第2の圧力を0.05MPa~0.5MPaにする。アニール工程により、加圧工程によって積層体に生じた厚さ方向の歪みを低減することができる。なお、第2の圧力は第1の圧力の1/2~1/10の範囲内に下げることが好ましく、1/2~1/5の範囲内に下げることがより好ましい。
前記温度範囲及び前記第2の圧力の状態で10分間~50分間保持することがより好ましく、20分間~40分間保持することが更に好ましい。
【0083】
アニール工程終了後、5℃/分の速度で室温(25℃)まで冷却し、高温プレス機内を大気圧にまで戻して、金属張積層体を製造することができる。
【0084】
本開示の金属張積層体の製造方法においては、(1)第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔とをこの順に積層した第1の積層単位を2以上有し、隣接する第1の積層単位と第1の積層単位の間に薄型面状ヒーターを配した積層前駆体、又は(2)第2の金属箔と、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔とをこの順に積層した第2の積層単位を2以上有し、隣接する第2の積層単位と第2の積層単位の間に薄型面状ヒーターを配した積層前駆体を用いることによって、加熱温度のムラが生じることなく、生産性の大幅な向上を実現できる。
【0085】
図6に示すように、積層前駆体30は、第2の液晶ポリマーフィルム2と、第1の液晶ポリマーフィルム1と、第1の金属箔3とをこの順に積層した第1の積層単位7を2以上有し、隣接する第1の積層単位7と第1の積層単位7の間に薄型面状ヒーター5を配している。これにより、加熱温度のムラが生じることなく、生産性の大幅な向上を実現できる。第1の積層単位7の積層数は2以上100以下が好ましく、5以上50以下がより好ましく、5以上20以下が更に好ましい。なお、図6中50は高温プレス機の熱盤である。また、第1の金属箔3と薄型面状ヒーター5の間に鏡面板を設けてもよい。
【0086】
図7に示すように、積層前駆体40は、第2の金属箔4と、第2の液晶ポリマーフィルム2と、第1の液晶ポリマーフィルム1と、第1の金属箔3とをこの順に積層した第2の積層単位8を2以上有し、隣接する第2の積層単位8と第2の積層単位8の間に薄型面状ヒーター5を配している。これにより、加熱温度のムラが生じることなく、生産性の大幅な向上を実現できる。第2の積層単位8の積層数は2以上100以下が好ましく、5以上50以下がより好ましく、5以上20以下が更に好ましい。なお、図7中50は高温プレス機の熱盤である。また、第1の金属箔3と薄型面状ヒーター5の間、及び第2の金属箔4と薄型面状ヒーター5の間に鏡面板を設けてもよい。
【0087】
薄型面状ヒーター5は300℃以上(好ましくは300℃~600℃)に加熱可能であることが好ましい。
薄型面状ヒーター5の厚さは、3,000μm以下が好ましく、50μm以上3000μm以下がより好ましい。
薄型面状ヒーター5としては、例えば、マイカ被覆面状ヒーター又はシリコーン被覆面状ヒーターなどが挙げられる。薄型面状ヒーター5は繰り返して使用可能である。
【0088】
図6及び図7に示す多層構造の積層前駆体30及び積層前駆体40を用い、本開示の第1実施形態に係る金属張積層体の製造方法と同様の加熱工程、加圧工程、及びアニール工程を行うことにより、積層単位を2以上積層して製造される。その後、積層単位毎に金型から取出すことによって、金属張積層体が得られる。
【0089】
本開示の金属張積層体の製造方法によれば、異方性が改善されたLCPラミネートフィルムを有する金属張積層体を製造することができる。
【0090】
本開示の金属張積層体の製造方法によれば、異方性を改善する工程とLCPラミネートフィルムに金属箔を接合する工程を同時に行うことができる。これにより、生産効率を高めることができる。
【0091】
本開示の金属張積層体の製造方法によって製造された金属張積層体は、高い強度を有すると共に、高い寸法精度を有する金属張積層体を製造することができる。また、金属箔の粗度を低くしても、LCPラミネートフィルムと金属箔とを高強度に接合することができる。金属箔の粗度を小さくできるので、伝送損失を抑制することができる。
【0092】
本開示の第2実施形態に係る金属張積層体について説明する。
【0093】
本開示の第2実施形態に係る金属張積層体は、本開示の第1実施形態に係る金属張積層体の製造方法によって製造される。
【0094】
本開示の金属張積層体は、組成、構造、特性等によって直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではない場合がある。このような場合には、本開示の金属張積層体は、その製造方法によって特定することが許されるべきものである。
【0095】
液晶ポリマーフィルム、LCPラミネートフィルム及び金属箔については、第1実施形態に係る金属張積層体についての説明を援用する。
【0096】
図8に示すように、本開示の金属張積層体110は、第2の液晶ポリマー(LCP)層102と、第1の液晶ポリマー(LCP)層101と、第1の金属層103とをこの順に有している。
第1の液晶ポリマー層と第1の金属層との剥離強度が0.9kN/m~2.5kN/mであり、
第1の液晶ポリマー層と第2の液晶ポリマー層からなるLCPラミネートフィルムの配向性(MD/TD比)が1.0~1.2であり、かつLCPラミネートフィルムの樹脂強度が100MPa以上であり、反り量が3mm以下である。LCPラミネートフィルムの面積10cm当たりの直径0.5mm以下のボイドの平均個数が5個以下であることが好ましい。
LCPラミネートフィルムの面方向の線膨張率の比(MD/TD)は1.2以下であり、厚さ方向(z方向)の線膨張率は45ppm以下であることが好ましい。
【0097】
図9に示すように、本開示の金属張積層体120は、第2の金属層104と、第2の液晶ポリマー(LCP)層102と、第1の液晶ポリマー(LCP)層101と、第1の金属層103とをこの順に有している。
第1の液晶ポリマー層と第1の金属層との剥離強度が0.9kN/m~2.5kN/mであり、
第2の液晶ポリマー層と第2の金属層との剥離強度が0.9kN/m~2.5kN/mであり、
第1の液晶ポリマー層と第2の液晶ポリマー層からなるLCPラミネートフィルムの配向性(MD/TD比)が1.0~1.2であり、かつLCPラミネートフィルムの樹脂強度が100MPa以上であり、反り量が3mm以下である。LCPラミネートフィルムの面積10cm当たりの直径0.5mm以下のボイドの平均個数が5個以下であることが好ましい。
LCPラミネートフィルムの面方向の線膨張率の比(MD/TD)は1.2以下であり、厚さ方向(z方向)の線膨張率は45ppm以下であることが好ましい。
【0098】
第1の金属層及び第2の金属層は、3μm~40μmの厚さを有する電解銅層又は圧延銅層であることが好ましい。
【0099】
第2実施形態に係る金属張積層体において、LCPラミネートフィルムと金属箔との剥離強度は0.9kN/m~2.5kN/mとすることができる。剥離強度は1.0kN/m~2.0kN/mが好ましい。剥離強度は、長さ50mm、幅10mmの試験片に対して、JIS K6854-1に規定される方法に従い、短辺の端から金属箔をLCPラミネートフィルムから、剥離速度50mm/min、剥離角度90°で剥離させて測定することができる。
【0100】
第2実施形態に係る金属張積層体において、金属箔を除去したLCPラミネートフィルムの樹脂強度は100MPa以上とすることができる。樹脂強度は100MPa~400MPaが好ましい。金属箔(銅箔)は塩化第二鉄水溶液で除去することができる。
樹脂強度は、LCPラミネートフィルムを、JIS K7124-5に基づく試験片形状に切り出し、引張速度12.5mm/minで測定することができる。
【0101】
第2実施形態に係る金属張積層体において、金属箔を除去したLCPラミネートフィルムの面方向の線膨張率の比(MD/TD)は、1.2以下が好ましく、0.9~1.2がより好ましく、1.0~1.2が更に好ましい。金属箔(銅箔)は塩化第二鉄水溶液で除去することができる。
面方向の線膨張率の比は、熱機械分析法(TMA;Thermomechanical Analysis)の引張モードにより、昇温速度10℃/minで、50℃~150℃の範囲におけるMD及びTDの線膨張率を測定し、MDとTDの比から算出することができる。面方向の線膨張率に関するMD及びTDは、積層したLCPラミネートフィルムのうち、最上位に積層したLCPラミネートフィルムを基準とした方向を示す。
【0102】
第2実施形態に係る金属張積層体において、金属箔を除去したLCPラミネートフィルムの厚さ方向(z方向)の線膨張率は、45ppm以下が好ましく、40ppm以下がより好ましく、35ppm以下が更に好ましい。金属箔(銅箔)は塩化第二鉄水溶液で除去することができる。
LCPラミネートフィルムの厚さ方向(z方向)の線膨張率は、熱機械分析法(TMA)の圧縮モードにより、昇温速度10℃/minで、50℃~150℃の温度範囲において測定することができる。
【0103】
第2実施形態に係る金属張積層体において、金属箔を除去したLCPラミネートフィルムは、ボイド及び皺は存在を確認できないことが好ましい。ボイド及び皺は、金属箔を溶解除去したLCPラミネートフィルムを実体顕微鏡などで観察することによって確認することができる。金属箔(銅箔)は塩化第二鉄水溶液で除去することができる。
LCPラミネートフィルムの面積10cm当たりの直径0.5mm以下のボイドの平均個数が5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましく、0個であることが最も好ましい。
【0104】
第2実施形態に係る金属張積層体において、金属張積層体の反りの程度は抑制されている。40mm×40mmの金属張積層体を平らなガラス板上に置き、一つの角を押さえた時の対角のガラス板上の高さ(反り量)は、3mm以下であり、2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.1mm~1mmが更に好ましい。
【0105】
本開示の金属張積層体は、フレキシブルプリント基板又はリジッドプリント基板に好適に用いられる。
【実施例
【0106】
以下に、本開示の金属張積層体及びその製造方法について実施例を用いて説明する。本開示の金属張積層体及びその製造方法は以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
<融点及びガラス転移温度>
LCPフィルムの融点は、示差走査熱量測定法(DSC)により、昇温速度10℃/分で測定し、融解時の吸熱ピーク温度とした。
LCPフィルムのガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC)により、昇温速度10℃/分で測定し、相転移時の吸熱ピーク温度とした。
【0108】
<十点平均粗度>
電解銅箔の十点平均粗度は、接触式表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製、型式:SJ-201)を用いて測定した。
【0109】
(製造例1)
-LCPフィルム1の作製-
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸27モル%、p-ヒドロキシ安息香酸73モル%、無水酢酸102モル%を、留出管を備えた反応容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下、170℃まで1時間かけて昇温し、170℃で30分間保った後、330℃まで7時間かけて昇温した。更に330℃で10分間反応させた後、330℃で減圧を行った。
次に、1.5時間かけて10Torrまで減圧し、所定の攪拌トルクに達成した時点で重縮合を完結させ、熱可塑性液晶ポリマー1(LCP1)を得た。
得られた熱可塑性液晶ポリマー1(LCP1)を、二軸押出機を用いて280℃~300℃で加熱混練し、直径40mm、スリット間隔0.5mmのTダイより押出し、厚さ50μmのLCPフィルム1を得た。LCPフィルム1の融点Tmは282℃、ガラス転移温度は230℃であった。
【0110】
(製造例2)
-LCPフィルム2の作製-
製造例1において、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸19モル%、p-ヒドロキシ安息香酸81モル%、テレフタル酸1モル%、無水酢酸102モル%を、留出管を備えた反応容器に仕込んで行った以外は、製造例1と同様にして、熱可塑性液晶ポリマー2(LCP2)を合成し、LCPフィルム2を作製した。LCPフィルム2の融点Tmは310℃、ガラス転移温度は200℃であった。
【0111】
(製造例3)
-LCPフィルム3の作製-
製造例1において、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸10モル%、p-ヒドロキシ安息香酸65モル%、テレフタル酸10モル%、4,4’-ジヒドロキシビフェニル15モル%、無水酢酸102モル%を、留出管を備えた反応容器に仕込んで行った以外は、製造例1と同様にして、熱可塑性液晶ポリマー3(LCP3)を合成し、LCPフィルム3を作製した。LCPフィルム3の融点Tmは325℃、ガラス転移温度は230℃であった。
【0112】
(試験例1)
-金属張積層体の製造-
3mmの鏡面板の上に、第1の金属箔として縦300mm、横300mm、厚さ12μmの電解銅箔(十点平均粗度(Rzjis):0.9μm)を載せた。第1の金属箔の上記平均粗度を有する面は、鏡面板とは反対側を向くように配した。
次に、第1の金属箔の上に、第1のLCPフィルムとして、上記で作製した厚さ50μm、縦300mm、横300mmのLCPフィルム1を載せた。
次に、第1のLCPフィルムの上に、第2のLCPフィルムとして、上記で作製した厚さ50μm、縦300mm、横300mmのLCPフィルム1を載せた。第2のLCPフィルムは、第1のLCPフィルムの押出方向と、第2のLCPフィルムの押出方向とが90°をなすように配した。
次に、第2のLCPフィルムの上に、第2の金属箔として縦300mm、横300mm、厚さ12μmの電解銅箔(十点平均粗度(Rzjis):0.9μm)を載せた。第2の金属箔の上記平均粗粗度を有する面は、第2のLCPフィルムと対向するように配した。
次に、第2の金属箔の上に、3mmの鏡面板を載せた。以上により、積層前駆体を作製した。この積層前駆体を減圧可能な高温プレス機の上下の熱板の間にセットした。
【0113】
高温プレス機内を真空度が10hPaまで減圧した。また、減圧の開始とともに、10℃/分で昇温して積層前駆体の加熱温度を300℃まで上げた。この300℃(最高加熱温度)で5分間保持した(加熱工程)。加熱工程終了後、5℃/分の速度で冷却を開始し、その直後、積層前駆体を積層方向に1MPaの圧力で加圧した(加圧工程)。
引き続き、5℃/分の速度で冷却を行い、加熱温度が270℃に達したら、圧力を0.5MPaに下げ、この加熱加圧状態で30分間保持した(アニール工程)。その後、5℃/分の速度で、室温(25℃)まで冷却し、高温プレス機内を大気圧まで戻して、金属張積層体を作製した。
【0114】
(試験例2~20)
-金属張積層体の製造-
試験例1において、表1~表5に示す条件に変更した以外は、試験例1と同様にして、試験例2~20の金属張積層体を製造した。
なお、試験例20の「加圧工程での加圧開始のタイミング」における「加熱工程中」とは、加熱工程が終了する前に加圧を開始することを意味する。「加熱工程」とは最高加熱温度に到達してから、冷却を開始するまでの工程を意味する。
「加熱工程中」に加圧すると、LCPの体積が最大の状態で加わる圧力によって溶融LCPが流動しすぎることが問題となる。そのため、「加熱工程終了後」、冷却を開始し、LCPの体積収縮が開始した状態で加圧する必要がある。冷却開始前に加圧することは「加熱工程中」と同じことになる。
【0115】
次に、以下のようにして、ラミネートフィルムの配向性(MD/TD比)、金属張積層体の剥離強度、ラミネートフィルムの樹脂強度、ラミネートフィルムの線膨張率(MD/TD比)、ラミネートフィルムの線膨張率(z方向)、ラミネートフィルムのボイド、ラミネートフィルムの皺、金属張積層体の反り、及びラミネートフィルムの厚み精度を評価した。結果を表1~表5に示す。以下において、MD及びTDは、第1のLCPフィルム及び第2のLCPフィルムのうち、上側の第2のLCPフィルムを基準とした方向を示す。
【0116】
<配向性(MD/TD比)>
各金属張積層体から銅箔を塩化第二鉄水溶液で除去した後のLCDラミネートフィルムを、マイクロ波空洞共振器(マイクロ波方式分子配向計、王子計測機器株式会社製)を用い、試料のMD及びTDのマイクロ波透過強度を測定し、配向性(MD/TD比)を求めた。
【0117】
<剥離強度>
各金属張積層体を長さ50mm×幅10mmの試験片に切り出し、JIS K6854-1に規定される方法に従い、短辺の端から、銅箔をLCPラミネートフィルムより剥離し、その際の剥離強度を測定した。剥離角度を90°、剥離速度を50mm/minとした。
【0118】
<樹脂強度>
各金属張積層体から銅箔を塩化第二鉄水溶液で除去した後、厚さ100μmのLCPラミネートフィルムについて、JIS K7124-5に規定される方法に従って、試験片形状に切り出し、引張速度12.5mm/minで樹脂強度を測定した。
【0119】
<線膨張率(MD/TD比)>
各金属張積層体から銅箔を塩化第二鉄水溶液で除去した後、厚さ100μmのLCPラミネートフィルムについて、熱機械分析装置(TMA)の引張モードにより、昇温速度10℃/minで、50℃~150℃の範囲におけるMD及びTDの線膨張率を測定し、線膨張率(MD/TD比)を算出した。
【0120】
[線膨張率(z方向)]
各金属張積層体から銅箔を塩化第二鉄水溶液で除去した後、厚さ100μmのLCPラミネートフィルムについて、熱機械分析装置(TMA)の圧縮モードにより、昇温速度10℃/minで、50℃~150℃の範囲における積層方向(z方向)の線膨張率を測定した。
【0121】
<ボイド>
各金属張積層体から銅箔を塩化第二鉄水溶液で除去した後、厚さ100μmのLCPラミネートフィルムから、長さ200mm×幅200mmの試験片を切り出し、試験片の表面を、実体顕微鏡(MX50、オリンパス株式会社製)を用いて倍率50倍で観察し、面積10cm当たりのボイドの平均個数を測定し、以下の評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
A:直径0.5mm以下のボイドの平均個数が0個
B:直径0.5mm以下のボイドの平均個数が1~5個
C:直径0.5mm以下のボイドの平均個数が6個以上、又は直径0.5mmを超えるボイドの平均個数が1個以上
【0122】
<皺>
各金属張積層体から銅箔を塩化第二鉄水溶液で除去した後、厚さ100μmのLCPラミネートフィルムから、長さ200mm×幅200mmの試験片を切り出し、この試験片の表面を、スマートフォン(i-Phone12pro、Apple社製)で撮影した画像を倍率10倍で観察し、皺の平均数を測定し、以下の評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
A:皺が0本
B:長さ1~3cmの皺が1~5本
C:長さ1~3cmの皺が1~5本又は長さ3cmを超える皺が1本以上
【0123】
<反り量>
各金属張積層体から長さ40m×幅40mmに切り出した試験片を平らなガラス板上に置き、試験片の一つの角を押さえた時の対角の位置の試験片のガラス板上の高さ(反り量;mm)をノギスで測定し、以下の評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
A:0mm以上3mm以下
B:3mm超8mm以下
C:8mm超12mm以下
D:12mm超
【0124】
<厚み精度>
各金属張積層体から銅箔を塩化第二鉄水溶液で除去した後、厚さ100μmのLCPラミネートフィルムについて、デジタルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ製)で厚さを10点測定し、その平均値を算出した。測定した10個の厚さが、平均値±10%の範囲内にあるか否かを評価した。
【0125】
【表1】













【0126】
【表2】











【0127】
【表3】











【0128】
【表4】











【0129】
【表5】
【0130】
LCPフィルム1とLCPフィルム2を用いた試験例、LCPフィルム1とLCPフィルム3を用いた試験例、及びLCPフィルム2とLCPフィルム3を用いた試験例についても、表1~表3の試験例1~12と同レベルの結果が得られた。
【0131】
表1~表5の結果から、試験例1~12は、異方性改善と銅張を同時に行いながらも、異方性が改善されたLCPフィルムを有する金属張積層体が作製できた。試験例1~12の金属張積層体においては、金属箔によるアンカー効果を用いなくてもLCPフィルムと金属箔の接合強度を高めることができた。試験例1~12の金属張積層体におけるラミネートフィルムは、ボイド及び皺の発生が抑制されており、高い樹脂強度を有していた。また、試験例1~12の金属張積層体は、高い寸法精度で作製することができた。また、試験例1~12の金属張積層体は、3mm以下の少ない反り量を達成できた。
【0132】
本開示の金属張積層体及びその製造方法は、上記実施形態及び実施例に基づいて説明されているが、上記実施形態及び実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の請求の範囲の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0133】
本発明のさらなる課題、目的及び形態(変更形態含む)は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【0134】
本明細書に記載した数値範囲については、別段の記載のない場合であっても、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし範囲が本明細書に具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0135】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の記載には限定されない。各付記は、特許請求の範囲に記載の各請求項と組み合わせることもできる。
[付記1]
本開示の金属張積層体の製造方法によって製造された金属張積層体。
[付記2]
第1の金属箔と、LCPラミネートフィルムとが積層された金属張積層体。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本開示の金属張積層体の製造方法は、例えば、高周波特性及び低誘電性が要求される電子機器に用いる金属張積層体の製造に適用することができる。
本開示の金属張積層体は、高い接合強度及び樹脂強度を有すると共に、高い寸法精度を有し、ボイドの発生が少なく、反り量が少ないので、例えば、高品質なフレキシブルプリント基板又はリジッドプリント基板などの作製に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0137】
1 第1のLCPフィルム
2 第2のLCPフィルム
3 第1の金属箔
4 第2の金属箔
5 薄型面状ヒーター
7 第1の積層単位
8 第2の積層単位
10 積層前駆体
20 積層前駆体
30 積層前駆体
31,33 上型
32,34 下型
33a 凸部
32a,34a 凹部
40 積層前駆体
50 熱盤
101 第1のLCP層
102 第2のLCP層
103 第1の金属層
104 第2の金属層
110 金属張積層体
120 金属張積層体
【要約】      (修正有)
【課題】LCPフィルムの異方性を改善すると共に、LCPフィルムに高強度で金属箔を接合することができる金属張積層体及びその製造方法の提供。
【解決手段】第1の液晶ポリマーフィルムと、第2の液晶ポリマーフィルムと、第1の金属箔との積層前駆体を、各液晶ポリマーフィルム同士が直接対向するように積層する積層工程と、積層前駆体を、真空度が200hPa以下の環境下、第1の液晶ポリマーフィルムと第2の液晶ポリマーフィルムの融点のうち、より高い第1の融点よりも15℃~45℃高い温度で1分~60分間加熱する加熱工程と、加熱工程終了後、冷却を開始し、0.5MPa~5MPaの第1の圧力で積層前駆体を積層方向に加圧する加圧工程と、を含む金属張積層体の製造方法の積層工程において、第1の液晶ポリマーフィルムの延伸方向と第2の液晶ポリマーフィルムの延伸方向とが80°~100°の角度をなすように積層する。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9