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特許7589925ヒューズラインを備えるフィルム型ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ヒューズラインを備えるフィルム型ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/08 20060101AFI20241119BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20241119BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01H85/08
H01B7/08
H02J7/00 301A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022570490
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 KR2021011882
(87)【国際公開番号】W WO2022055179
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0114925
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、サン-ウン
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-023048(JP,A)
【文献】特開2016-060089(JP,A)
【文献】特開2017-011191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/189382(US,A1)
【文献】特開2017-204525(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0453427(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/08
H01B 7/08
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フィルム及び前記絶縁フィルムによって被覆され、相互に所定の間隔を開けて延びる複数の導体線を含み、
前記複数の導体線は、前記絶縁フィルムに印刷された銀ナノインクであり、
前記複数の導体線は各々、
正格電流を超過する電流が流れると切れるように設けられたヒューズパターン区間と、正格電流を超過する電流が流れても切れないように設けられたノーマル区間と、を含み、
前記銀ナノインクの前記ヒューズパターン区間は、前記銀ナノインクの前記ノーマル区間よりも厚さが薄く形成され、前記ノーマル区間と幅が同一であり、
前記ヒューズパターン区間における前記導体線は、
前記ノーマル区間における前記導体線と同じ幅を有し、一直線に延びて形成される薄膜部と、前記薄膜部の延長方向に沿って所定の間隔毎に反復的に上方へ突出して形成される凸部と、を含む、フィルム型ケーブル。
【請求項2】
前記絶縁フィルムは、
前記複数の導体線の下部に配置されるベースフィルムと、前記複数の導体線の前記ノーマル区間における上部に配置されるカバーフィルムと、を含み、
前記複数の導体線は、前記ベースフィルムの表面に印刷される銀ナノインクから形成された、請求項1に記載のフィルム型ケーブル。
【請求項3】
前記複数の導体線の前記ヒューズパターン区間における上部に塗布される防煙コーティング液をさらに含む、請求項2に記載のフィルム型ケーブル。
【請求項4】
前記複数の導体線の前記ノーマル区間の上部と前記カバーフィルムとの間には接着剤層が備えられ、
前記防煙コーティング液は、前記カバーフィルムと、前記接着剤層と、前記ヒューズパターン区間によって形成される凹んだ溝部と、に満たされる、請求項3に記載のフィルム型ケーブル。
【請求項5】
前記防煙コーティング液は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂のいずれか一つから形成された、請求項3または4に記載のフィルム型ケーブル。
【請求項6】
相互に隣接する前記導体線の各ヒューズパターン区間がずれて配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルム型ケーブル。
【請求項7】
絶縁フィルム及び前記絶縁フィルムによって被覆され、相互に所定の間隔を開けて延びる複数の導体線を含み、
前記複数の導体線は各々、
正格電流を超過する電流が流れると切れるように設けられたヒューズパターン区間と、正格電流を超過する電流が流れても切れないように設けられたノーマル区間と、を含み、
前記ヒューズパターン区間は、前記ノーマル区間よりも厚さが薄く形成され、
前記ヒューズパターン区間における前記導体線は、
前記ノーマル区間における前記導体線と同じ幅を有し、一直線に延びて形成される薄膜部と、前記薄膜部の延長方向に沿って所定の間隔毎に反復的に上方へ突出して形成される凸部と、を含む、フィルム型ケーブル。
【請求項8】
前記絶縁フィルムが、ポリイミド素材から形成された、請求項1からのいずれか一項に記載のフィルム型ケーブル。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載のフィルム型ケーブルを含む、バッテリーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム型ケーブルに関し、より詳しくは、自動車バッテリーモジュールにセル電圧センシング用として適用可能であり、自体に過電流遮断機能を備えたフィルム型ケーブルに関する。
【0002】
本出願は、2020年9月8日出願の韓国特許出願第10-2020-0114925号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、エネルギー貯蔵密度が高くて軽量化と小型化が可能であり、優秀な安全性、低い放電率、長い寿命のような長所を有することから、最近、電気車のバッテリーへの適用が盛んでいる。なお、リチウム二次電池は通常、製造形態によって、円筒型、角形、パウチ型に分類され、使用用途も、電気車のバッテリーの他にも、ESSバッテリー、その他の電気装置などで多様である。
【0004】
現在、一つのリチウム二次電池(セル)では電気車を駆動できるほどの十分な出力が得られない。電気車のエネルギー源に二次電池を適用するためには、複数個のリチウムイオン電池セルを直列及び/または並列で接続してバッテリーモジュールを構成し、通常、直列にバッテリーモジュールを接続し、これを機能的に維持させるBMS(Battery Management System)と冷却システム、BDU(Battery Disconnection Unit)、電気配線ケーブルなどを含めてバッテリーパックを構成する。
【0005】
一方、従来のバッテリーモジュールにおいて各バッテリーセルの電圧と温度をセンシングし、それをBMSへ伝導するための部品としてハーネスワイヤが使われたが、最近には、軽くて屈曲性に優れ、三次元配線が可能であり、多数の信号が伝送可能なフレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable;FFC)やFPC基板(Flexible Printed Circuit Board;FPCB)のようなフィルム型ケーブルがよく使用されている。
【0006】
図1は、従来のバッテリーモジュールのFPC基板1の一部を示した図である。図1に示したように、フィルム型ケーブルの一種であるFPC基板1は、予期せぬ過電流から、センシングライン2と、それに接続されているBMS回路(図示せず)を保護する目的で各センシングライン2当たりに一つずつのSMDヒューズ3を備える。ここで、SMDヒューズ3とは、センシングラインに実装可能なチップ型素子を意味し、正格電流以上の電流が流れると、内部の導線が切れるように構成されている。
【0007】
ところが、従来のフィルム型ケーブルは、SMDヒューズの資材コスト、SMDヒューズの実装による工程費用によって価格が上昇し、SMDヒューズ実装工程中に発生する不良率が少なくない。そこで、フィルム型ケーブルのセンシングラインにSMDヒューズを実装することなくヒューズ機能を具現する方案が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、別のヒューズ製品を実装しなくてもヒューズ機能が具現可能なフィルム型ケーブルを提供することを目的とする。
【0009】
但し、本発明が解決しようとする技術的課題は、前述の課題に制限されず、言及していないさらに他の課題は、下記する発明の説明から当業者にとって明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例によるフィルム型ケースは、絶縁フィルム及び前記絶縁フィルムによって被覆され、相互に所定の間隔を開けて延びる複数の導体線を含み、前記複数個の導体線は各々、正格電流を超過する電流が流れると切れるように設けられたヒューズパターン区間と、正格電流を超過する電流が流れても切れないように設けられたノーマル区間と、を含み、前記ヒューズパターン区間は、前記ノーマル区間よりも薄い厚さに形成され得る。
【0011】
前記絶縁フィルムは、前記複数個の導体線の下部に配置されるベースフィルムと、前記複数個の導体線の前記ノーマル区間における上部に配置されるカバーフィルムと、を含み、前記複数個の導体線は、前記ベースフィルムの表面に印刷される銀ナノインクから形成され得る。
【0012】
前記複数個の導体線の前記ヒューズパターン区間における上部に塗布される防煙コーティング液をさらに含み得る。
【0013】
前記複数個の導体線の前記ノーマル区間の上部と前記カバーフィルムとの間には接着剤層が備えられ、前記防煙コーティング液は、前記カバーフィルム、前記接着剤層及び前記ヒューズパターン区間によって形成される凹んだ溝部に満たされ得る。
【0014】
前記防煙コーティング液は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂のいずれか一つから形成され得る。
【0015】
相互に隣接する前記導体線の各ヒューズパターン区間は、ずれて配置され得る。
【0016】
前記複数個の導体線は各々、前記ヒューズパターン区間で前記ノーマル区間と幅が同一であり、厚さが薄く設けられ、「己」形状または「S」形状のパターンが繰り返して延び得る。
【0017】
前記ヒューズパターン区間における前記導体線は、前記ノーマル区間における前記導体線の同じ幅を有し、一直線に延びて形成される薄膜部と、前記薄膜部の延長方向に沿って所定の間隔毎に反復的に上方へ突出して形成される凸部と、を含み得る。
【0018】
前記絶縁フィルムは、ポリイミド(polyimide)素材から形成され得る。
【0019】
なお、本発明の他の様態によれば、前述したフィルム型ケーブルを含むバッテリーモジュールが提供され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるフィルム型ケーブルは、ヒューズパターン区間の導体線の厚さが、ノーマル区間の導体線の厚さよりも薄く形成されることで、過電流が流れる場合、前記ヒューズパターン区間がヒューズの機能を果たすことができる。したがって、本発明のフィルム型ケーブルはSMD(Surface-Mounted Device)ヒューズを実装しなくてもよいので、SMDヒューズの資材費、SMDヒューズの実装による工程費、不良費用などによる価格上昇の負担を無くすことができる。
【0021】
本発明によれば、印刷電子工法でベースフィルムの上にインクの量を調整して前記ノーマル区間の導体線の厚さと前記ヒューズパターン区間の導体線の厚さを精度よく差等化して具現可能であるので、ヒューズ機能の信頼性を確保することができる。
【0022】
また、本発明によれば、防煙コーティング液またはコーティング層が前記ヒューズパターン区間の上部を覆っていることで、過電流の発生時、ヒューズパターン区間の飛散または発煙を防止することができる。
【0023】
本発明の効果は上述した効果に制限されず、言及されていない本発明の他の効果は請求範囲の記載から当業者により明らかに理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術によるSMDヒューズを実装したフィルム型ケーブルの一部を示した図である。
図2】本発明の一実施例によるフィルム型ケーブルの構成を概略的に示した斜視図である。
図3】本発明の一実施例による導体線一本の構成を概略的に示した図である。
図4】本発明の一実施例によるフィルム型ケーブルの一領域の平面図である。
図5図4のA-A'によるフィルム型ケーブルの概略的な断面図である。
図6】本発明の一実施例によるフィルム型ケーブルの過電流試験時における防煙コーティング液の充填厚さ毎の結果値を示したグラフである。
図7図3に対応する図であって、本発明の他の実施例によるフィルム型ケーブルの導体線一本の構成を概略的に示した図である。
図8図5に対応する図であって、本発明の他の実施例によるフィルム型ケーブルの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0026】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0027】
以下で説明するフィルム型ケーブルは、フレキシブルフラットケーブル(Flexible Flat Cable;FFC)またはFPC基板(Flexible Printed Circuit Board;FPCB)を総称し得る。
【0028】
前記フィルム型ケーブルは、バッテリーセルの電圧や温度をセンシングし、これをBMS(Battery Management System)へ伝送するのに使用され得る。図面の便宜上、図示していないが、前記フィルム型ケーブルの一端には、ケーブルコネクターが結合し、他端にはバッテリーセルの電極リードと各導体線を接続するためのウェルディングプレートが結合し得る。
【0029】
詳しくは後述するが、本発明によるフィルム型ケーブルは、電力を供給するとか、またはシグナルを伝送するとき、負荷やBMSに過電流が流れることを防止するために自体がヒューズ機能を行って過電流を遮断するように構成されている。
【0030】
図2は、本発明の一実施例によるフィルム型ケーブルの構成を概略的に示した斜視図であり、図3は、本発明の一実施例による導体線一本の構成を概略的に示した図である。
【0031】
これら図面を参照すると、本発明の一実施例によるフィルム型ケーブルは、絶縁フィルム10と、互いに一定の間隔を開けて平行に延び、前記絶縁フィルム10で被覆される複数本の導体線20と、を含む。そして、前記複数本の導体線20は各々、ヒューズパターン区間21とノーマル区間23を含む。
【0032】
絶縁フィルム10は、導体線20の絶縁と被覆のための構成であって、ベースフィルム11及びカバーフィルム12を含む。前記ベースフィルム11は、複数本の導体線20の下部に配置され、カバーフィルム12は、複数本の導体線20の上部に配置され得る。
【0033】
このような絶縁フィルム10は、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylen Terephthalate;PET)、 ポリシクロへキサンジメチレンテレフタレート(PolyCyclohexanedimethylene Terephthalate;PCT)、ポリエチレンナフタレート(PolyEthylene Naphthalate;PEN),ポリイミド(PolyImide;PI)などから製作され得る。望ましくは、PIから絶縁フィルム10を製作し得る。上述した素材のうちでは、前記PIフィルムが最も高い耐熱性を有するので、高温環境で使用しても問題がほとんど発生しない。
【0034】
一般的にFFCは、銅箔板を一定の幅と厚さに加工した導体線をベースフィルムの上に一定の間隔で接着して配置し、その上にカバーフィルムをさらに接着する方式で製作される。そして、FPC基板は、ベースフィルムの上に銅箔積層板を配置してドライフィルムをラミネートし、露光、現像及びエッチング工程を経て一定の間隔を有する導体線を形成し、その後、カバーフィルムを接着する方式で製作される。ところが、銅箔板の場合、幅は比較的自由に具現可能であるが、厚さ(高さ)はμm単位まで薄く具現しにくく、一本の導体線が多様な厚さを有するように具現することは、さらに難しい。このような理由で、既存のフィルム型ケーブルの製作方式は、導体線そのものにヒューズパターンを具現しにくい。
【0035】
これに対し、既存のフィルム型ケーブルの製造方式の代わりに、本発明の一実施例によるフィルム型ケーブルは、複数個の導体線20の形成に際し、印刷電子工法を用いる。
【0036】
例えば、印刷電子装備で銀ナノ(Ag nano)電子インクをベースフィルム11の表面に印刷して複数個の導体線20を具現し得る。ベースフィルム11の上に印刷した銀ナノインクは、短い乾燥時間が経過してからは優秀な電気伝導度を有する導体線20として充分に機能できる。また、印刷電子工法によれば、導体線20一本に幅を自由に具現可能であるだけではなく、多様な厚さを簡単に具現することができる。
【0037】
即ち、本発明の一実施例によるフィルム型ケーブルの複数個の導体線20は、ヒューズパターン区間21とノーマル区間23が銀ナノ電子インクから形成され得る。
【0038】
前記ヒューズパターン区間21は、正格電流を超過する電流が流れるときに溶断されるように構成された区間であり、前記ノーマル区間23は、前記正格電流を超過する電流が流れるときに溶断されない区間を指す。
【0039】
具体的には、図3を参照すると、ヒューズパターン区間21において、導体線20の厚さT1は、ノーマル区間23で導体線の厚さT2よりも薄く形成され、ヒューズパターン区間21内で可能な限り長く延びるように設けられ得る。
【0040】
例えば、抵抗が大きい部分とそれより抵抗が小さい部分を備えた導体線に過電流が流れると仮定すると、抵抗が大きい部分に熱がより多く発生するようになる(P=I×R)。したがって、前記導体線に過電流が流れると、抵抗が大きい部分で溶断が起こる可能性が高い。
【0041】
R≒L/A[Ω](R:抵抗、L:導体線の長さ、A:導体線の断面積)
【0042】
導体線の抵抗は、前記式から分かるように、導体線の長さに比例し、(電荷が通過する)断面積に反比例するので、導体線で特定の部分を細くて長く製作すると、当該部分に過電流が流れる場合、発熱量が増加して当該部分がヒューズのように作用できる。
【0043】
本実施例のヒューズパターン区間21は、上記のような原理に基づいて設計されたものである。即ち、ヒューズパターン区間21とノーマル区間23で銀ナノインクの印刷量を調整して導体線20の幅を同一に維持し、導体線20の厚さはノーマル区間23よりもヒューズパターン区間21で薄くして導体線20の断面積を減少させたのである。参考までに、ヒューズパターン区間21が耐えられる正格電流の大きさに応じてヒューズパターン区間21における導体線20の厚さは多様に具現できる。
【0044】
本実施例は、ヒューズパターン区間21とノーマル区間23にかけて導体線20の幅はそのまま維持し、厚さのみをヒューズパターン区間21で薄くしたが、ヒューズパターン区間21で導体線20の幅と厚さを共に薄く形成することもいくらでも可能である。但し、本実施例は、導体線20の幅と厚さを共に減らした場合、導体線20の剛性が非常に弱くなり得ることを考慮したのである。これは、ヒューズパターン区間21の導体線20が過電流ではなく物理的衝撃や振動によって切れにくくするためである。
【0045】
また、本実施例の導体線20は、ヒューズパターン区間21内で可能な限り長い長さを有するように、「己」形または「S」形のパターンが反復されるように構成され得る。
【0046】
このような構成によって、抵抗を増加させ、過電流の発生時に前記ヒューズパターン区間21の領域で熱が集中的に発生するようにすることでヒューズパターン区間21をより効果的に切ることができる。
【0047】
さらに図2を参照すると、相互に隣接する導体線20の各ヒューズパターン区間21は、ずれて配置されるように構成され得る。
【0048】
フィルム型ケーブルの導体線20には、各々異なる大きさの電流が流れ得る。例えば、各導体線20のヒューズパターン区間21が(X軸方向へ)互いに隣接する場合、いずれか一本の導体線20に過電流が流れて当該導体線20のヒューズパターン区間21に発生するようになるスパークと熱が隣接する導体線20のヒューズパターン区間21へ移されやすい。これによって、周辺の他のヒューズパターン区間21が異常溶断されるか、発煙、発火する現象が発生し得る。
【0049】
しかし、本実施例のように、ヒューズパターン区間21をずらして配置する場合、いずれか一本の導体線20のヒューズパターン区間21でスパークや熱が発生しても、他の導体線20のヒューズパターン区間21への影響を少なくし得る。
【0050】
また、本実施例のヒューズパターン区間21は、導体線20の長さの延長のために、導体線20を「己」形または「S」形のパターンが反復されるように形成することで、フィルム型ケーブルの幅方向(±X方向)へ広い面積を占める。
【0051】
もし、このような導体線20のヒューズパターン区間21を互いに(X軸方向)隣接するように配置するには、本実施例よりも導体線20同士の間隔を広くして導体線20同士の絶縁性を確保しなければならない。これによって、フィルム型ケーブルの幅が増加して余剰空間が多くなることは望ましくないといえる。
【0052】
しかし、本実施例の場合、導体線20の各ヒューズパターン区間21がずれて位置していることで、前記導体線20の絶縁性の確保と最小ピッチの設定が容易になる。
【0053】
一方、本発明の一実施例によるフィルム型ケーブルは、複数個の導体線20のヒューズパターン区間21の上部に塗布される防煙コーティング液40をさらに含み得る。
【0054】
前記防煙コーティング液40は、ヒューズパターン区間21の作動時、即ち、過電流による導体線20の溶断時、スパークと煙または破片の飛散などを防止するために適用される構成要素である。防煙コーティング液40の材料としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂の少なくともいずれか一つが採用され得る。望ましくは、相対的に環境有害物質が少なく含有されており、かつ最も効果的な断熱材として知られたポリウレタンを防煙コーティング液40の素材として使用し得る。
【0055】
具体的には、図4及び図5を参照すると、印刷電子工法で銀ナノインクをベースフィルム11の上に印刷して導体線20を形成するため、導体線20とベースフィルム11との間には接着剤が不要となり、カバーフィルム12を導体線20の上部にラミネートする場合のみに接着剤を使用するので、導体線20のノーマル区間23の上部とカバーフィルム12の上に接着剤層30が備えられ得る。
【0056】
本実施例の場合、カバーフィルム12は、導体線20のノーマル区間23の上部のみを覆うのに使用され、導体線20のヒューズパターン区間21の上部は、防煙コーティング液40によってカバーされるように構成される。前記カバーフィルム12は、ヒューズパターン区間21に対応する領域は予め切り取られた状態で導体線20の上部に接着されるか、または導体線20の上部に接着された状態で前記ヒューズパターン区間21に対応する領域が切り取られ得る。
【0057】
したがって、ベースフィルム11に印刷された導体線20の上にカバーフィルム12を接着すると、前記ヒューズパターン区間21の上部はオープンされた状態であり、前記カバーフィルム12、前記接着剤層30、前記ヒューズパターン区間21によって囲まれた凹んだ溝部Oが形成され得る。防煙コーティング液40は、前記凹んだ溝部Oに充填され、所定の時間が経過すると、防煙コーティング液40が硬化してコーティング層が形成され得る。
【0058】
続いて、フィルム型ケーブルにおいて、ヒューズパターン区間21の設計実験例を詳述する。
【0059】
1)ヒューズパターン区間21の導体線20の長さ:30mm~50mm
2)ヒューズパターン区間21の導体線20の断面積SQ:0.001mm~0.003mm
3)ベースフィルム11及びカバーフィルム12の厚さ:25μm~50μm
4)ウレタン系防煙コーティング液40の充填厚さ:0.05mm~0.45mm
【0060】
ヒューズパターン区間21の主要データを前記1)~4)の範囲で調整しながら短絡遮断試験(50A@63V)、連続電流試験(750A@4時間)などを行った結果、以下のような結果を導出した。
【0061】
ヒューズパターン区間21の導体線20は、長さ50mm、断面積SQが0.028mmである場合、過電流の印加時に性能が最も優秀であると共に、飛散が発生しなかった。
【0062】
絶縁フィルム10としてPENフィルム及びPCTフィルムは過電流印加試験及び短絡遮断試験時、絶縁フィルム10が溶けた後、飛散がよく発生したが、PIフィルムは25μm~50μmである場合に両試験において飛散が発生しなかったことから、有意味な差が発生しなかった。したがって、PIフィルム25μmを採用することが費用面で望ましいといえる。
【0063】
防煙コーティング液40の充填厚さによるヒューズパターン区間21の領域における飛散有無、発煙持続時間などは、図6に示したように、厚さが0.3mmであるときに飛散が発生せず、発煙持続時間は、厚さが0.35mmと0.4mmであるときに類似な様相を示した。
【0064】
前記実験結果によれば、ヒューズパターン区間21の導体線20の長さは50mm、断面積は0.028mmであり、PI素材の25μm厚さのベースフィルム11とカバーフィルム12、ウレタン系の防煙コーティング液40を使用し、防煙コーティング層の厚さは0.35mmに設計することが機能性と経済性の面で望ましい。
【0065】
図7は、図3に対応する図であって、本発明の他の実施例によるフィルム型ケーブルの導体線20一本の構成を概略的に示した図であり、図8は、図5に対応する図であって、本発明の他の実施例によるフィルム型ケーブルの概略的な断面図である。
【0066】
続いて、図7及び図8を参照して本発明の他の実施例によるフィルム型ケーブルを説明する。
【0067】
前述した実施例と同じ部材符号は同じ部材を示し、同じ部材について重複する説明は省略し、前述した実施例との差異点を中心にして説明する。
【0068】
本実施例の前述した実施例と比較するとき、ヒューズパターン区間21Aが相違するだけであり、残りの構成要素は実質的に同一である。本実施例のヒューズパターン区間21Aにおける導体線20Aは、一定の厚さを有し、一方向へ一直線に延びて形成される薄膜部22aと、前記薄膜部22aの延長方向に沿って所定の間隔毎に反復的に上方へ突出して形成される凸部22bと、を含む。
【0069】
即ち、導体線20Aは、ノーマル区間23とヒューズパターン区間21Aで同じ幅を有し、一方向へ真っすぐ延びた形態で設けられる。したがって、前述した実施例よりも導体線20同士の間のピッチ設定がより容易になり得る。前述した実施例は、ヒューズパターン区間21の導体線20が「己」形または「S」形のパターンが反復して延びた形態であるため、前記ヒューズパターン区間21が占める面積が広くて、隣接する導体線20と干渉されやすく、干渉を避けるためには導体線20同士の間隔を、充分を確保しなければならない。しかし、本実施例によれば、導体線20A同士のピッチ設定が容易になり、前述した実施例のような問題から自由である。
【0070】
また、本実施例のヒューズパターン区間21Aは、薄膜部22aと凸部22bを含んでおり、ヒューズパターン区間21Aで導体線20Aの厚さが、増加、減少、増加、減少を繰り返す構造をなしている。このような厚さ変化の反復によって、過電流が薄い厚さの部分を通過する度に疲労破壊現象が誘導され、導体線20Aが切れやすい。
【0071】
また、本実施例のヒューズパターン区間21Aは、ほぼ上下方向へ凹凸構造をなしており、防煙コーティング液40とヒューズパターン区間21Aの導体線20Aが広い面積にかけて接触可能であるので、防煙コーティング液40が硬化するときにヒューズパターン区間21Aにさらに堅固に結合できる。
【0072】
以上、上述した本発明によるフィルム型ケーブルの構成と作用によれば、SMD(Surface-Mount Devices)ヒューズを導体線20に設けなくてもヒューズ機能を具現することができる。したがって、既存のフィルム型ケーブルと比較して、SMDヒューズの資材費、SMDヒューズの実装による工程費、不良費用などによる価格上昇の負担を無くすことができる。
【0073】
一方、本発明によるバッテリーモジュールは、例えば、バッテリーセルの電圧値や温度値をBMSへ伝送するための部品として前記フィルム型ケーブルを一本以上含み得る。また、本発明によるバッテリーモジュールは、前記フィルム型ケーブルの外にもバッテリーセルを収納するためのモジュールハウジング、各バッテリーセルの充放電を制御するための各種装置、例えば、マスターBMS、電流センサー、ヒューズなどをさらに含み得る。
【0074】
本発明によるバッテリーモジュールは、電気自動車やハイブリッド自動車、エネルギー貯蔵装置などに適用可能である。
【0075】
以上、本発明の望ましい実施例について図示及び説明したが、本発明は上述した特定の望ましい実施例に限定されず、請求範囲で請求する本発明の要旨から外れることなく当該発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者であれば、だれでも多様に変形できることは言うまでもなく、かかる変形は請求範囲内に含まれる。
【0076】
なお、本明細書において、上、下、左、右、前、後のような方向を示す用語が使用されたが、このような用語は相対的な位置を示し、説明の便宜のためのものであるだけで、対象となる事物の位置や観測者の位置などによって変わり得ることは、当業者にとって自明である。
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