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  • 特許-水中油型エマルション組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】水中油型エマルション組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20241119BHJP
   A61K 8/03 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20241119BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20241119BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241119BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20241119BHJP
   C09K 23/48 20220101ALI20241119BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/03
A61K8/06
A61Q1/14
A61Q19/00
B01J13/00 A
C09K23/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020075455
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2020186227
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019087779
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228729
【氏名又は名称】日本サーファクタント工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】村社 敬子
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/219127(WO,A1)
【文献】特開2017-048142(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230228(WO,A1)
【文献】特開2017-109986(JP,A)
【文献】特開2017-222594(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056589(WO,A1)
【文献】特開2021-066702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K 23/48
B01J 13/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含む水中油型皮膚外用剤であって、
油滴の平均粒子径が50μm以上であり、
界面活性剤の含有量が、前記水中油型皮膚外用剤の全質量に対して0.01質量%以下である、水中油型皮膚外用剤。
(A)平均繊維幅が2~100nmの微細繊維状セルロース 0.05~2.0質量%
(B)液状油及び半固形油から選択される少なくとも1種 0.1~50.0質量%
(C)水 40~99.9質量%
【請求項2】
前記微細繊維状セルロースが、リンオキソ酸基、カルボキシ基及びカルボキシメチル基から選択される少なくとも1種を有する、請求項1に記載の水中油型皮膚外用剤。
【請求項3】
前記油滴の平均粒子径が5000μm以下である、請求項1又は2に記載の水中油型皮膚外用剤。
【請求項4】
前記水中油型皮膚外用剤における、前記微細繊維状セルロースの含有量をaとし、前記液状油及び半固形油から選択される少なくとも1種の含有量をbとした場合、a:bで表される質量比率が、3:1~1:170である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水中油型皮膚外用剤。
【請求項5】
(D)増粘性多糖類をさらに含み、
前記増粘性多糖類が、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ジェランガム及びグアーガムから類択される少なくとも1種を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中油型皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型エマルション組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型エマルションは、水に油を分散させたエマルションであり乳化物とも呼ばれる。水中油型エマルションとしては、油を可視サイズ(約50μm以上)で分散させた水中油型巨大エマルションも知られており、その特徴的な外観により化粧水や美容液などの化粧品に用いられる。しかし、一般的な水中油型エマルションに比べ、油滴の粒子サイズが大きい水中油型巨大エマルションでは、クリーミングや合一などの不安定化が起こりやすく、油滴の分散状態の安定化が課題である。
【0003】
水中油型巨大エマルションの調製には、平均粒子径が20μm以下の薄片化層状ケイ酸塩粉体に、疎水基をもつ第4級アンモニウムイオンを結合することにより、層状ケイ酸塩粉体の層間に疎水基を結合してなる有機変性層状ケイ酸塩粉体を用いる手法(特許文献1)が報告されている。また、シリカポーラスグラスを用いる手法(非特許文献1)、マイクロチャネルを用いる手法(非特許文献2)、固形油分と流動油分を用いて安定化する手法(非特許文献3)などを用いて水中油型巨大エマルションを調製することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-2275号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】粧技誌,31,149-157(1997)
【文献】J.Am.Oil Chem.Soc.,79,515-519(2002)
【文献】J.Soc.Cosmet.Chem.Japan Vol.39,No.4 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリカポーラスグラスやマイクロチャネル乳化を用いた手法では、少量の界面活性剤を用い、50μm程度までの比較的サイズの大きいエマルションを調製できる。しかしながら乳化粒子の安定性や量産性において課題があった。また界面活性剤を用いることから、界面活性剤由来のべたつきや皮膚刺激もまた課題であった。一方、固形油分と流動油分を用いて安定化する手法では、数mm程度の巨大エマルションを調製できるが、用いる流動油分の極性によって適切な固形油分の選択が必要であるため、安定な巨大エマルションを得るために煩雑な検討が必要であるという課題があった。また固形油分を用いるために肌へ塗布した後の使用感が重たいという課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、界面活性剤を用いずとも、乳化粒子の安定性が高く、かつ使用感に優れた水中油型巨大エマルション組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、後述する成分(A)~(C)を必須成分として含むことで、界面活性剤を用いずとも、乳化粒子の安定性が高く、かつ使用感に優れた水中油型巨大エマルション組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 下記成分(A)~(C)を含む水中油型エマルション組成物であって、
油滴の平均粒子径が50μm以上であり、
界面活性剤の含有量が、水中油型エマルション組成物の全質量に対して0.01質量%以下である、水中油型エマルション組成物。
(A)微細繊維状セルロース
(B)液状油及び半固形油から選択される少なくとも1種
(C)水
[2]微細繊維状セルロースの平均繊維幅が1000nm以下である、[1]に記載の水中油型エマルション組成物。
[3]微細繊維状セルロースが、リンオキソ酸基、カルボキシ基及びカルボキシメチル基から選択される少なくとも1種を有する、[1]又は[2]に記載の水中油型エマルション組成物。
[4]油滴の平均粒子径が5000μm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の水中油型エマルション組成物。
[5]水中油型エマルション組成物における、微細繊維状セルロースの含有量をaとし、液状油及び半固形油から選択される少なくとも1種の含有量をbとした場合、a:bで表される質量比率が、3:1~1:170である、[1]~[4]のいずれかに記載の水中油型エマルション組成物。
[6](D)増粘性多糖類をさらに含み、
前記増粘性多糖類が、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ジェランガム及びグアーガムから類択される少なくとも1種を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、界面活性剤を用いずとも、乳化粒子の安定性が高く、かつ使用感に優れた水中油型巨大エマルション組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態である水中油型エマルション組成物の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(水中油型エマルション組成物)
本発明は、下記成分(A)~(C)を含む水中油型エマルション組成物に関する。ここで、水中油型エマルション組成物中に含まれる油滴の平均粒子径は50μm以上であり、水中油型エマルション組成物における界面活性剤の含有量は、水中油型エマルション組成物の全質量に対して0.01質量%以下である。
(A)微細繊維状セルロース
(B)液状油及び半固形油から選択される少なくとも1種
(C)水
なお、本明細書において、油滴の平均粒子径が50μm以上の水中油型エマルション組成物を、水中油型巨大エマルション組成物ともいう。
【0013】
本発明において、水中油型エマルション組成物とは、乳化粒子を含む組成物であって、該乳化粒子の平均粒子径は50μm以上である。本発明の水中油型エマルション組成物は、水中に油滴が分散しているエマルションであるので、乳化粒子は、水中に分散する油滴である。すなわち、本発明の水中油型エマルション組成物における油滴の平均粒子径は50μm以上である。
【0014】
本発明の水中油型エマルション組成物における界面活性剤の含有量は、水中油型エマルション組成物の全質量に対して0.01質量%以下である。本明細書において、水中油型エマルション組成物における界面活性剤の含有量が上記範囲内であることは、水中油型エマルション組成物は、実質的に界面活性剤を含有しないことを意味する。このように、本発明の水中油型エマルション組成物は、実質的に界面活性剤を含有しない組成物である。水中油型エマルション組成物が界面活性剤を含まないことで、界面活性剤に由来するべたつきや皮膚刺激を抑制することができる。このため、本発明の水中油型エマルション組成物は皮膚外用剤としての用途に有用であり、例えば、化粧料としての用途に有用である。
【0015】
((A)成分)
本発明の水中油型エマルション組成物は、(A)微細繊維状セルロースを含む。本明細書では、微細繊維状セルロースを(A)成分と呼ぶこともある。
【0016】
(A)成分の微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、及び脱墨パルプが挙げられる。(A)成分の微細繊維状セルロースは、パルプ等を原料としており、持続可能資源である。
【0017】
微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である微細繊維状セルロースである。なお、微細繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。
【0018】
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1000nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
【0019】
微細繊維状セルロースの繊維長は、とくに限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制できる。また、微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
【0020】
微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、とくに限定されないが、たとえば20以上10000以下であることが好ましく、50以上1000以下であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有していることが好ましい。結晶領域と非結晶領域をともに有し、かつ軸比が高い微細繊維状セルロースは、好ましく用いられる。なお、本実施形態における微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。
【0022】
本実施形態における微細繊維状セルロースは、イオン性置換基を有していることが好ましく、イオン性置換基としてアニオン性基を有することがより好ましい。イオン性置換基としてのアニオン性基としては、たとえばリンオキソ酸基、カルボキシ基、カルボキシメチル基、スルホン基等を挙げることができる。中でも、微細繊維状セルロースは、リンオキソ酸基、カルボキシ基及びカルボキシメチル基から選択される少なくとも1種を有することが好ましく、リンオキソ酸基を有することが特に好ましい。なお、本明細書においては、リンオキソ酸基には、リンオキソ酸基に由来する置換基が含まれ、カルボキシ基には、カルボキシ基に由来する置換基が含まれる。リンオキソ酸基に由来する置換基としては、例えば、リンオキソ酸基の塩、リンオキソ酸エステル基などの置換基が含まれ、カルボキシ基に由来する置換基には、カルボキシ基の塩、カルボン酸エステル基などの置換基が含まれる。なお、リンオキソ酸基は、たとえば、亜リン酸基(ホスホン酸基)であってもよい。
【0023】
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料に対して解繊処理を行うことで得られるものであってもよい。また、微細繊維状セルロースとしては、市販品を用いることもできる。微細繊維状セルロースの市販品としては、アウロ・ヴィスコTM CS(王子ホールディングス社製、リン酸ナトリウム処理微細繊維状セルロース2質量%含有スラリー)、レオクリスタ(第一工業製薬社製、カルボン酸処理微細繊維状セルロース2質量%含有スラリー)、セレンピア(日本製紙社製、カルボキシメチル化処理微細繊維状セルロース88質量%以上含有スラリー)、BiNFi-s(スギノマシン社製、未処理微細繊維状セルロース2質量%含有スラリー)等を挙げることができる。
【0024】
本発明の水中油型エマルション組成物は、上述したような微細繊維状セルロースを含むため、界面活性剤を用いずとも、乳化粒子(油滴)の分散安定性を高めることができる。また、本発明の水中油型エマルション組成物は、微細繊維状セルロースを含むため、水中油型エマルション組成物を肌に塗布した後でも、べたつき感を抑制することができ、水中油型エマルション組成物の使用感を高めることができる。
【0025】
(A)成分の含有量は、水中油型エマルション組成物の全質量に対して、0.05~2.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量を上記範囲内とすることにより、水中油型エマルション組成物中の乳化粒子(油滴)の分散安定性をより効果的に高めることができる。
【0026】
((B)成分)
本発明の水中油型エマルション組成物は、(B)成分として、液状油及び半固形油から選択される少なくとも1種を含む。なお、本明細書において、半固形油とは、融点が45℃以下で、室温でペースト状の油剤である。
【0027】
液状油及び半固形油から選択される少なくとも1種は、45℃で液状の油剤であることが好ましい。液状油又は半固形油の具体例としては、スクワランや流動パラフィン等の炭化水素油、イソオクタン酸セチルやトリエチルヘキサノイン等のエステル油、ジイソノニルエーテルやジカプリリルエーテル等のエーテル油、オリーブ油やホホバ油、シア脂等の動植物油、ジフェニルジメチコンやジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等のシリコーン油、ポリパーフルオロメチルイソプロピルエーテルなどのフッ素油、アスタキサンチンやリコピン等の油溶性有効成分、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルやオクトクリレン等の紫外線吸収剤、油溶性ビタミン類、精油、香料等があげられるが、好ましくは炭化水素油、植物油、シリコーン油、油溶性有効成分、油溶性ビタミン類、香料等を挙げることができる。これらは、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0028】
本発明の水中油型エマルション組成物における、(B)成分の含有量は、水中油型エマルション組成物の全質量に対して、0.1~50.0質量%であることが好ましく、0.5~30.0質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量を上記範囲内とすることにより、水中油型エマルション組成物中の乳化粒子(油滴)の分散安定性をより効果的に高めることができ、さらに、水中油型エマルション組成物の使用感を高めることができる。
【0029】
((C)成分)
本発明の水中油型エマルション組成物は(C)成分として、水を含む。水は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属に由来するアルカリ金属イオンを含まないか、アルカリ金属イオン量ができるだけ少ないものが好ましく、イオン交換水、蒸留水、逆浸透膜によるろ過水等を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の水中油型エマルション組成物における、(C)成分の含有量は、水中油型エマルション組成物の全質量に対して、40~99.9質量%であることが好ましく、60~99.0質量%であることがより好ましい。
【0031】
((D)成分)
本発明の水中油型エマルション組成物は、(D)成分として、さらに増粘多糖類を含有することが好ましい。増粘多糖類としては、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーン、タマリンドガム、グルコマンナン、ジェランガム、スクシノグリカン、ペクチン、アラビアガム、アルギン酸、プルラン、スクレロチウムガム、カチオン化でんぷん、カチオン化グアーガム、クインスシード、寒天、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を挙げることができる。中でも、増粘多糖類は、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ジェランガム及びグアーガムから選択される少なくとも1種であることが好ましい。(D)成分を含有することで、油滴の分散安定性が、さらに向上する場合がある。
【0032】
(D)成分の含有量は、水中油型エマルション組成物の全質量に対して、0.03~0.3質量%であることが好ましい。(D)成分の含有量を上記範囲内とすることにより、油滴の分散安定性をより効果的に向上させることができる。
【0033】
(成分比率)
本発明の水中油型エマルション組成物における、微細繊維状セルロースの含有量をaとし、液状油及び半固形油から選択される少なくとも1種の含有量をbとした場合、a:bで表される質量比率は、3:1~1:170であることが好ましく、3:5~1:100であることがより好ましい。
【0034】
(油滴の平均粒子径)
本発明の水中油型エマルション組成物は、乳化粒子(油滴)を含む。ここで、油滴の平均粒子径は50~5000μmであることが好ましく、50μm~4000μmであることがより好ましく、50μm~3500μmであることがさらに好ましい。ここで、油滴の平均粒子径は、以下のようにして測定される値である。まず、水中油型エマルション組成物を50mLスクリュー管に入れ、定規と共に写真撮影する。撮影した画像を適切な倍率で拡大し、1画像に付き100個以上の粒子の粒子径を計測する。計測した値と拡大倍率により実際の粒子径を算出し、その平均値を平均粒子径とする。
【0035】
一般的なエマルション(乳化粒子)は、外観が不透明で白色(平均粒子径1~数10μm)であるか、もしくは青白色(平均粒子径0.1~1μm)であるのに対し、本発明の水中油型エマルションは、油滴の平均粒子径が50~5000μmであるため、図1に示されるように、目視で油滴を確認することができ、微細な油滴が密集した特徴的な外観を呈する。
【0036】
(任意成分)
さらに、本発明の水中油型エマルション組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で通常化粧料や皮膚外用剤に配合される公知の成分を含有することができる。公知の成分としては、ロウ類、保湿剤、増粘剤、粉体、顔料、色材、高級アルコール、高級脂肪酸、糖、高分子化合物、生理活性成分、経皮吸収促進剤、溶媒、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、抗酸化剤等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0037】
(用途)
本発明の水中油型エマルション組成物は、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料、ボディ用化粧料、その他の化粧料、皮膚外用剤、入浴剤、洗口剤、メイクアップ化粧料等に用いることができ、これに限定されるものではない。
【0038】
(水中油型エマルション組成物の製造方法)
本発明の水中油型エマルション組成物は、(A)成分と、(C)成分とを混合して、第1相を得る工程と、(B)成分を含む第2相を得る工程と、第1相と第2相を混合する工程と、を含むことが好ましい。なお、さらに(D)成分を含む場合は、第1相に添加することが好ましい。
【実施例
【0039】
以下に本発明の実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の例において、配合量の記載は特に断りのない限り質量%を意味する。
【0040】
(実施例1-1~1-2及び比較例1-1~1-3:微細繊維状セルロースと水溶性高分子との比較評価)
1.試料の調製
表1に示す第1相と第2相を構成する各成分をそれぞれ測りとり、第1相を構成する各成分を均一になるまで撹拌した。第2相を構成する各成分を撹拌し均一溶解した。次に、第1相に第2相を添加し、パドルミキサーによって撹拌し、均質化して水中油型エマルション組成物を得た。表中の各成分の数値は質量%を示す。
【0041】
2.油滴の平均粒子径の測定方法
1.で調製した水中油型エマルション組成物をそれぞれ50mLスクリュー管に入れ、定規とともに写真撮影した。撮影した画像を適切な倍率で拡大し、1画像につき100個以上の油滴の粒子径を計測した。計測した値と拡大倍率より実際の油滴の粒子径を算出し、算出した100個以上の値を平均したものを油滴の平均粒子径とした。
【0042】
3.安定性の評価方法
1.で調製した水中油型エマルション組成物を45℃の恒温槽に3ヶ月間放置した。その後、室温へ戻したサンプルについて目視による外観観察を行った。外観観察は以下に示す評価基準により油滴粒子の均一性について評価した。
<評価基準:油滴粒子の均一性>
A:油滴粒子の合一及びクリーミングは認められない
B:油滴粒子の合一又はクリーミングが認められる
C:油滴粒子の微細化により目視で油滴が認められない
-:調製翌日に分離したため評価未実施
【0043】
4.使用後のべたつき感の評価
専門パネル10名によって、実使用試験を実施した。評価基準は下記のとおりである。
<評価基準:べたつき感>
A:パネル8名以上が、使用後べたつき感がないと認める。
B:パネル6名以上8名未満が、使用後べたつき感がないと認める。
C:パネル3名以上6名未満が、使用後べたつき感がないと認める。
D:パネル3名未満が、使用後べたつき感がないと認める。
-:調製翌日に分離したため評価未実施
【0044】
【表1】
【0045】
5.結果
リン酸ナトリウム処理微細繊維状セルロースを用いた実施例1-1及び1-2では使用後のべたつきがなく、油滴の分散安定性に優れていた。一方、キサンタンガムやヒドロキシエチルセルロースを用いた比較例では、べたつき感が感じられ、さらに経時安定性の低下が認められた。なお、実施例1-1の外観写真を図1に示す。
【0046】
(実施例2-1及び比較例2-1~2-3:界面活性剤有無の評価)
1.試料の調製と評価方法
表2に示す各成分を使用して、実施例1-1と同様の方法で水中油型エマルション組成物を調製し、実施例1-1と同様方法で評価を行った。表中の各成分の数値は質量%を示す。
【0047】
【表2】
【0048】
2.結果
界面活性剤を用いていない実施例2-1では使用後のべたつきがなく、安定性に優れていた。
【0049】
実施例3:化粧水
第1相
アウロ・ヴィスコCS 15.0(質量%)
グリセリン 5.0
ヒアルロン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 1.0
ブチレングリコール 3.0
クエン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 2.0
クエン酸(1質量%水溶液) 4.0
防腐剤 適量
水 残部
第2相
NIKKOL レチノールH10 1.0
NIKKOL VF-LINO 1.0
香料 適量
(合計) 100.0
調製方法:実施例1に同じ。
結果:油滴の平均粒子径は997μmであった。使用後のべたつきはなく、45℃・3カ月保管後も油滴の分散安定性は良好であった。
※NIKKOL VF-LINO:リノール酸エチル(日光ケミカルズ社製)
NIKKOL レチノールH10:水添レチノール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(日光ケミカルズ社製)
【0050】
実施例4:美容液
第1相
セレンピア 1.0(質量%)
グリセリン 10.0
プロパンジオール 4.0
防腐剤 適量
水 残部
第2相
NIKKOL VB6-IP 1.0
NIKKOL シュガースクワラン 4.0
シア脂 0.5
香料 適量
(合計) 100.0
※セレンピア:カルボキシメチル化処理微細繊維状セルロース88質量%以上含有スラリー(日本製紙社製)
NIKKOL VB6-IP:トリスヘキシルデカン酸ピリドキシン(日光ケミカルズ社製)
調製方法:実施例1に同じ。
結果:油滴の平均粒子径は1063μmであった。使用後のべたつきはなく、45℃・3カ月保管後も油滴の分散安定性は良好であった。
【0051】
実施例5:ジェル状乳液
第1相
レオクリスタ 25.0(質量%)
プロパンジオール 5.0
防腐剤 適量
水 残部
第2相
NIKKOL CIO 5.0
NIKKOL シュガースクワラン 10.0
トコフェロール 0.2
香料 適量
(合計) 100.0
※レオクリスタ:カルボン酸処理微細繊維状セルロース2質量%含有スラリー(第一工業製薬社製)
NIKKOL CIO:オクタン酸セチル(日光ケミカルズ社製)
調製方法:実施例1に同じ。
結果:油滴の平均粒子径は835μmであった。使用後のべたつきはなく、45℃・3カ月保管後も油滴の分散安定性は良好であった。
【0052】
実施例6:ジェル状クリーム
第1相
レオクリスタ 25.0(質量%)
グリセリン 14.0
ヘキサンジオール 0.2
クエン酸(1質量%水溶液) 3.0
防腐剤 適量
水 残部
第2相
NIKKOL GS-MHL 35.0
NIKKOL オリーブスクワラン 5.0
レチノール 0.1
防腐剤 適量
香料 適量
(合計) 100.0
※NIKKOL GS-MHL:ラウリン酸メチルヘプチル(日光ケミカルズ社製)
調製方法:実施例1に同じ。
結果:油滴の平均粒子径は1742μmであった。使用後のべたつきはなく、45℃・3カ月保管後も油滴の分散安定性は良好であった。
【0053】
実施例7:マッサージジェル
第1相
アウロ・ヴィスコCS 25.0(質量%)
ブチレングリコール 5.0
クエン酸(1質量%水溶液) 3.0
防腐剤 適量
水 残部
第2相
NIKKOL シュガースクワラン 47.0
アストロカリウムムルムル種子脂 3.0
香料 適量
(合計) 100.0
調製方法:実施例1に同じ。
結果:油滴の平均粒子径は1218μmであった。使用後のべたつきはなく、45℃・3カ月保管後も油滴の分散安定性は良好であった。
【0054】
実施例8:クレンジングジェル
第1相
アウロ・ヴィスコCS 20.0(質量%)
ブチレングリコール 5.0
クエン酸(1質量%水溶液) 3.0
防腐剤 適量
水 残部
第2相
NIKKOL シュガースクワラン 2.0
ジフェニルジメチコン 3.0
シクロメチコン 5.0
香料 適量
(合計) 100.0
調製方法:実施例1に同じ。
結果:油滴の平均粒子径は1823μmであった。使用後のべたつきはなく、45℃・3カ月保管後も油滴の分散安定性は良好であった。
【0055】
実施例9:ナイトエッセンス
第1相
アウロ・ヴィスコCS 7.5(質量%)
グアーガム 0.05
1,3-ブチレングリコール 5.0
アスコルビン酸 0.1
エデト酸2ナトリウム 0.05
防腐剤 適量
水 残部
第2相
レチノール 0.1
トリエチルヘキサノイン 3.0
トコフェロール 0.2
香料 適量
(合計) 100.0
調製方法:実施例1に同じ。
結果:調整直後のpHは5.1、油滴の平均粒子径は1693μmであった。使用後のべたつきはなく、45℃・3カ月保管後も油滴の分散安定性は良好であった。
【0056】
実施例10:オールインワンジェル
第1相
アウロ・ヴィスコCS 20.0(質量%)
キサンタンガム 0.2
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
ペンチレングリコール 6.0
グリセリン 10.0
PCA-Na 0.1
パンテノール 0.5
ナイアシンアミド 2.0
クエン酸(1質量%水溶液) 3.0
防腐剤 適量
水 残部
第2相
スクワラン 5.0
トリエチルヘキサノイン 5.0
シア脂 2.0
香料 適量
(合計) 100.0
調製方法:実施例1に同じ。
結果:調整直後のpHは5.0、油滴の平均粒子径は2324μmであった。使用後のべたつきはなく、45℃・3カ月保管後も油滴の分散安定性は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明品の水中油型エマルション組成物は化粧料として利用することができる。
図1