(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】重合性組成物、共重合体、共重合体の製造方法及び化合物
(51)【国際特許分類】
C08F 238/00 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
C08F238/00
(21)【出願番号】P 2020175310
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000157603
【氏名又は名称】丸善石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】本柳 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤浦 健斗
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】JUNG Cheol-Kyu et al.,Phosphine-Mediated Reductive Condensation of γ-Acyloxy Butynoates: A Diversity Oriented Strategy for the Construction of Substituted Furans,Journal of the American Chemical Society,2004年,vol. 126, no. 13,p. 4118-4119,https://doi.org/10.1021/ja049377l
【文献】LI Xingguang et al.,Bifunctional Phosphine Ligand Enabled Gold-Catalyzed Alkynamide Cycloisomerization: Access to Electron-Rich 2-Aminofurans and Their Diels-Alder Adducts,Angewandte Chemie International Edition,2019年,vol. 58, no. 48,p. 17180-17184,https://doi.org/10.1002/anie.201908598
【文献】YAMAZAKI Shoko et al.,Lewis acid-promoted cyclization of heteroatom-substituted enynes,Organic & Biomolecular Chemistry,2004年,vol. 2,p. 257-264,https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2004/ob/b307194d
【文献】MINODA Masahiko et al.,The First Synthesis of Periodic and Alternating Glycopolymers by RAFT Polymerization: A Novel Synthetic Pathway for Glycosaminoglycan Mimics,Polymers,2019年,vol. 11, no.70,p. 1-14,https://www.mdpi.com/2073-4360/11/1/70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のモノマー(A-1)及び(B-1)を含有する重合性組成物。
(A-1)
下記式(2-1)で表されるモノマー
(B-1)下記式(1-1)で表されるモノマー
【化1】
〔式(2-1)中、
R
5
は、炭素数1~5の直鎖状のアルカンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
R
6
は、単結合、炭素数1~5の直鎖状のアルカンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
pは、1~12の整数である。〕
【化2】
〔式(1-1)中、
R
1は、炭素数1~6の直鎖
状のアルキル基
、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基を示し、
R
2は、単結合
、炭素数1~6の直鎖
状のアルカンジイル基
、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
R
3は、*-C≡C-R
4(R
4はエチニル基の保護基を示し、*は結合手を示す)を示す。〕
【請求項2】
以下の構造単位(A-2)及び(B-2)を有する共重合体。
(A-2)
下記式(2-2)で表される構造単位
(B-2)下記式(1-2)で表される構造単位
【化3】
〔式(2-2)中、
R
5
は、炭素数1~5の直鎖状のアルカンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
R
6
は、単結合、炭素数1~5の直鎖状のアルカンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
pは、1~12の整数である。〕
【化4】
〔式(1-2)中、
R
1は、炭素数1~6の直鎖
状のアルキル基
、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基を示し、
R
2は、単結合
、炭素数1~6の直鎖
状のアルカンジイル基
、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
R
7は、*-C≡C-R
8(R
8は水素原子又はエチニル基の保護基を示し、*は結合手を示す)を示す。〕
【請求項3】
交互共重合体である、請求項
2に記載の共重合体。
【請求項4】
以下のモノマー(A-1)と以下のモノマー(B-1)とを重合させる重合工程を含む、共重合体の製造方法。
(A-1)
下記式(2-1)で表されるモノマー
(B-1)下記式(1-1)で表されるモノマー
【化5】
〔式(2-1)中、
R
5
は、炭素数1~5の直鎖状のアルカンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
R
6
は、単結合、炭素数1~5の直鎖状のアルカンジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
pは、1~12の整数である。〕
【化6】
〔式(1-1)中、
R
1は、炭素数1~6の直鎖
状のアルキル基
、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基を示し、
R
2は、単結合
、炭素数1~6の直鎖
状のアルカンジイル基
、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
R
3は、*-C≡C-R
4(R
4はエチニル基の保護基を示し、*は結合手を示す)を示す。〕
【請求項5】
前記重合が、可逆的付加開裂連鎖移動重合である、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項6】
下記式(1-1)で表される化合物。
【化7】
〔式(1-1)中、
R
1は、炭素数1~6の直鎖
状のアルキル基
、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基を示し、
R
2は、単結合
、炭素数1~6の直鎖
状のアルカンジイル基
、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、又はブタン-1,3-ジイル基を示し、
R
3は、*-C≡C-R
4(R
4は
、総炭素数3~12のトリアルキルシリル基を示し、*は結合手を示す)を示す。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物、共重合体、共重合体の製造方法及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルエーテル重合体は、熱刺激応答性や生体適合性を示すことが知られ、医療用途等への応用が期待される重合体である。
一方、ラジカル重合は、共重合体を合成する代表的な方法であるが、構造単位の配列を制御することが難しく、交互性の高い共重合体の合成は特に困難であった。例えば、2-クロロエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルとともに無水マレイン酸又はマレイミドをラジカル重合させた場合に交互共重合体が得られるという報告があるものの(非特許文献1、2)、ビニルエーテル系モノマーと共重合させるものとして無水マレイン酸又はマレイミドを用いた場合は、無水マレイン酸由来の構造単位又はマレイミド由来の構造単位が連続するセグメントが生じることがあり、構造単位の交互性が不充分であった。
【0003】
近年では、3-[2-[2-(ビニルオキシ)エトキシ]エトキシ]-1-プロピンとともにジエチルフマレートをラジカル重合させた場合に、共重合体中のビニルエーテル系モノマー由来の構造単位の交互性が改善されるということが本発明者らの研究によりわかってきたが、ビニルエーテル系モノマー由来の構造単位の交互性の更なる改善が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Macromolecules,1,482-488(1968)
【文献】Macromol.Chem.Phys.,200(5),1005-1013(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ビニルエーテル系モノマー由来の構造単位を有し且つ当該構造単位の交互性が高い共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、エチニル基とオキシアルキレン基とを分子内に有するビニルエーテル系モノマーと特定のフマレート系モノマーとを共重合させることによって、上記ビニルエーテル系モノマーがエチニル基を分子内に有するにも拘らず、意外にも、ビニルエーテル系モノマー由来の構造単位を有し且つ当該構造単位の交互性が高い共重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<9>に関するものである。
<1> 以下のモノマー(A-1)及び(B-1)を含有する重合性組成物(以下、「本発明の重合性組成物」とも称する)。
(A-1)エチニル基とオキシアルキレン基とを分子内に有するビニルエーテル系モノマー
(B-1)下記式(1-1)で表されるモノマー
【0008】
【0009】
〔式(1-1)中、
R1は、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、
R2は、単結合、又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
R3は、*-C≡C-R4(R4はエチニル基の保護基を示し、*は結合手を示す)を示す。〕
【0010】
<2> モノマー(A-1)が、下記式(2-1)で表されるモノマーである、<1>に記載の重合性組成物。
【0011】
【0012】
〔式(2-1)中、
R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
R6は、単結合、又は炭素数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
pは、1~12の整数である。〕
【0013】
<3> 以下の構造単位(A-2)及び(B-2)を有する共重合体(以下、「本発明の共重合体」とも称する)。
(A-2)エチニル基とオキシアルキレン基とを分子内に有するビニルエーテル系モノマー由来の構造単位
(B-2)下記式(1-2)で表される構造単位
【0014】
【0015】
〔式(1-2)中、
R1は、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、
R2は、単結合、又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
R7は、*-C≡C-R8(R8は水素原子又はエチニル基の保護基を示し、*は結合手を示す)を示す。〕
【0016】
<4> 構造単位(A-2)が、下記式(2-2)で表される構造単位である、<3>に記載の共重合体。
【0017】
【0018】
〔式(2-2)中、
R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
R6は、単結合、又は炭素数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
pは、1~12の整数である。〕
【0019】
<5> 交互共重合体である、<3>又は<4>に記載の共重合体。
【0020】
<6> 上記モノマー(A-1)と上記モノマー(B-1)とを重合させる重合工程を含む、共重合体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも称する)。
<7> 前記重合が、可逆的付加開裂連鎖移動重合(以下、「RAFT重合」とも称する)である、<6>に記載の製造方法。
【0021】
<8> 上記式(1-1)で表される化合物(以下、「本発明の化合物」とも称する)。
<9> R4が、総炭素数3~12のトリアルキルシリル基である、<8>に記載の化合物。
【発明の効果】
【0022】
本発明の重合性組成物、本発明の製造方法によれば、ビニルエーテル系モノマー由来の構造単位を有し且つ当該構造単位の交互性が高く狭分散(分子量分布が狭い)の共重合体を得ることができる。
したがって、本発明の共重合体は、ビニルエーテル系モノマー由来の構造単位を有し且つ当該構造単位の交互性が高いものである。
本発明の化合物は、本発明の共重合体の製造中間体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1で得られたETPFAの
1H-NMRスペクトルを示す図。
【
図2】実施例1で得られたETPFAの
13C-NMRスペクトルを示す図。
【
図3】実施例2で得られた共重合体の
1H-NMRスペクトルを示す図。
【
図4】実施例2で得られた共重合体のMSスペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔重合性組成物〕
本発明の重合性組成物は、以下のモノマー(A-1)及び(B-1)を含有するものである。
(A-1)エチニル基とオキシアルキレン基とを分子内に有するビニルエーテル系モノマー
(B-1)下記式(1-1)で表されるモノマー
【0025】
【0026】
〔式(1-1)中、
R1は、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、
R2は、単結合、又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
R3は、*-C≡C-R4(R4はエチニル基の保護基を示し、*は結合手を示す)を示す。〕
【0027】
(モノマー(A-1))
モノマー(A-1)は、エチニル基とオキシアルキレン基とを分子内に有するビニルエーテル系モノマーである。モノマー(A-1)は、エチニル基を分子内に有するが、このエチニル基を保護せずにモノマー(B-1)と共重合させた場合でも、モノマー(A-1)由来の構造単位の交互性が高い共重合体が得られる。
モノマー(A-1)としては、構造単位の交互性、共重合体の製造簡便性、モノマー原料の入手容易性、モノマー合成の簡便性等の観点から、下記式(2-1)で表されるモノマーが好ましい。
【0028】
【0029】
〔式(2-1)中、
R5は、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
R6は、単結合、又は炭素数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
pは、1~12の整数である。〕
【0030】
式(2-1)中、R5で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは2又は3であり、特に好ましくは2である。
R5で示されるアルカンジイル基としては、例えば、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、R5で示されるアルカンジイル基としては、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基が好ましく、エタン-1,2-ジイル基がより好ましい。
【0031】
R6は、単結合、又は炭素数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルカンジイル基を示すが、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基が好ましい。
R6で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~3であり、特に好ましくは1である。R6で示されるアルカンジイル基としては、例えば、上記R5で示されるアルカンジイル基と同様のものが挙げられるが、メタン-1,1-ジイル基が好ましい。
【0032】
pとしては、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1~3の整数が更に好ましく、2が特に好ましい。なお、pが2~12の整数の場合、p個のR5は同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
モノマー(A-1)としては、具体的には、3-[2-[2-(ビニルオキシ)エトキシ]エトキシ]-1-プロピン、1-(エテニルオキシ)-4-(2-プロピニルオキシ)ブタン、3-[2-(エテニルオキシ)エトキシ]-1-プロピン、3-[(エテニルオキシ)メトキシ]-1-プロピン、4-エテニルオキシ-1-ブチン、5-エテニルオキシ-1-ペンチン等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
モノマー(A-1)の含有量は、構造単位の交互性、機能発現等の観点から、モノマー全量中、好ましくは40モル%以上、より好ましくは42.5モル%以上、更に好ましくは45モル%以上、特に好ましくは48モル%以上であり、また、構造単位の交互性、機能発現等の観点から、モノマー全量中、好ましくは60モル%以下、より好ましくは57.5モル%以下、更に好ましくは55モル%以下、特に好ましくは52モル%以下である。具体的な範囲としては、モノマー全量中、40モル%以上60モル%以下が好ましく、42.5モル%以上57.5モル%以下がより好ましく、45モル%以上55モル%以下が更に好ましく、48モル%以上52モル%以下が特に好ましい。
【0035】
(モノマー(B-1))
モノマー(B-1)は、上記式(1-1)で表されるフマル酸エステルである。
式(1-1)中、R1は、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。
R1で示されるアルキル基の炭素数は、構造単位の交互性、モノマー原料の入手容易性、モノマー合成の簡便性等の観点から、好ましくは1~4であり、より好ましくは1又は2である。R1で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中では、構造単位の交互性、モノマー原料の入手容易性、モノマー合成の簡便性等の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0036】
R2は、単結合、又は炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルカンジイル基を示すが、構造単位の交互性、モノマー原料の入手容易性、モノマー合成の簡便性等の観点から、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基が好ましい。
R2で示されるアルカンジイル基の炭素数は、構造単位の交互性、モノマー原料の入手容易性、モノマー合成の簡便性等の観点から、好ましくは1~3であり、特に好ましくは1である。R2で示されるアルカンジイル基としては、例えば、上記R5で示されるアルカンジイル基と同様のものが挙げられるが、構造単位の交互性、モノマー原料の入手容易性、モノマー合成の簡便性等の観点から、メタン-1,1-ジイル基が好ましい。
【0037】
式(1-1)中、R3は、*-C≡C-R4を示し、当該R4はエチニル基の保護基を示す。
R4で示されるエチニル基の保護基は、エチニル基を保護できるものであればよいが、例えば、トリアルキルシリル基、ジアリールアルキルシリル基(ジフェニルメチルシリル基等)、トリアリールシリル基等が挙げられるが、入手容易性、合成の簡便性等の観点から、トリアルキルシリル基が好ましい。
トリアルキルシリル基の総炭素数は、入手容易性、合成の簡便性等の観点から、好ましくは3~12、より好ましくは3~9、特に好ましくは3~6である。トリアルキルシリル基に含まれるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、また、同一であっても異なっていてもよい。
トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、テキシルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0038】
モノマー(B-1)としては、具体的には、メチル(トリメチルシリル)プロパルギルフマレート、メチル(トリエチルシリル)プロパルギルフマレート、メチル(トリイソプロピルシリル)プロパルギルフマレート、エチル(トリメチルシリル)プロパルギルフマレート、エチル(トリエチルシリル)プロパルギルフマレート、エチル(トリイソプロピルシリル)プロパルギルフマレート等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
モノマー(B-1)の含有量は、構造単位の交互性、機能発現等の観点から、モノマー全量中、好ましくは40モル%以上、より好ましくは42.5モル%以上、更に好ましくは45モル%以上、特に好ましくは48モル%以上であり、また、構造単位の交互性、機能発現等の観点から、モノマー全量中、好ましくは60モル%以下、より好ましくは57.5モル%以下、更に好ましくは55モル%以下、特に好ましくは52モル%以下である。具体的な範囲としては、モノマー全量中、40モル%以上60モル%以下が好ましく、42.5モル%以上57.5モル%以下がより好ましく、45モル%以上55モル%以下が更に好ましく、48モル%以上52モル%以下が特に好ましい。
【0040】
また、モノマー(A-1)に対するモノマー(B-1)の含有量のモル比〔(B-1)/(A-1)〕は、構造単位の交互性、重合性組成物の機能発現等の観点から、好ましくは0.67以上、より好ましくは0.74以上、更に好ましくは0.82以上、特に好ましくは0.92以上であり、また、構造単位の交互性、重合性組成物の機能発現等の観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.35以下、更に好ましくは1.22以下、特に好ましくは1.08以下である。具体的な範囲としては、0.67以上1.5以下が好ましく、0.74以上1.35以下がより好ましく、0.82以上1.22以下が更に好ましく、0.92以上1.08以下が特に好ましい。
【0041】
本発明の重合性組成物は、上記モノマー(A-1)及び(B-1)の他に、更にラジカル重合開始剤、連鎖移動剤及び溶媒から選ばれる1種又は2種以上の成分を含有していてもよい。
【0042】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイル、tert-ブチルヒドロペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
モノマー(A-1)及び(B-1)の合計に対するラジカル重合開始剤の含有量のモル比〔(ラジカル重合開始剤)/((A-1)+(B-1))〕としては、重合反応制御の観点から、0.0001以上0.1以下が好ましく、0.0005以上0.05以下がより好ましく、0.001以上0.01以下が特に好ましい。
【0044】
連鎖移動剤としては、RAFT重合に用いられる連鎖移動剤(以下、「RAFT剤」とも称する)が好ましい。
RAFT剤は、RAFT重合に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゾジチオ酸2-シアノプロパン-2-イル、4-シアノ-4-[(チオベンゾイル)スルファニル]ペンタン酸等のジチオベンゾエート型RAFT剤;トリチオ炭酸ベンジル2-ヒドロキシエチル、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸、2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル等のトリチオカルボナート型RAFT剤;4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸2’-シアノブタン-2’-イル、3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸2’-シアノブタン-2’-イル、3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸シアノメチル、N-メチル-N-フェニルジチオカルバミン酸シアノメチル等のジチオカルバマート型RAFT剤などが挙げられる。また、これらの他にも、例えば、O-フェニル-S-ベンジルザンテート、O-エチル-S-(1-フェニルエチル)ザンテート、O-エチル-S-[2-(エトキシカルボニル)プロパ-2-イル]ザンテート、O-エチル-S-(2-シアノプロパ-2-イル)ザンテート、O-エチル-S-シアノメチルザンテート、O-ペンタフルオロフェニル-S-ベンジルザンテート等のザンテート(Xanthate)型RAFT剤が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、モノマーとの反応性、重合反応速度等の観点から、トリチオカルボナート型RAFT剤が好ましい。
【0045】
ラジカル重合開始剤に対する連鎖移動剤の含有量のモル比〔(連鎖移動剤)/(ラジカル重合開始剤)〕としては、重合反応制御の観点から、0.001以上1.0以下が好ましく、0.005以上0.5以下がより好ましく、0.01以上0.2以下が特に好ましい。
【0046】
溶媒としては、有機溶媒が好ましい。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート系溶媒;ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート系溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル系溶媒;1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテル系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
モノマー(A-1)及び(B-1)の合計に対する溶媒の含有質量比〔(溶媒)/((A-1)+(B-1))〕としては、反応効率、重合反応制御等の観点から、0.1以上100以下が好ましく、0.5以上50以下がより好ましく、1.0以上20以下が更に好ましく、2.0以上10以下が特に好ましい。
【0048】
そして、本発明の重合性組成物を用いることにより、ビニルエーテル系モノマー由来の構造単位を有し且つ当該構造単位の交互性が高い共重合体を簡便に且つ効率良く製造できる。また、狭分散(分子量分布が狭い)の共重合体を製造することもできる。
【0049】
〔共重合体〕
本発明の共重合体は、以下の構造単位(A-2)及び(B-2)を有するものである。
(A-2)エチニル基とオキシアルキレン基とを分子内に有するビニルエーテル系モノマー由来の構造単位
(B-2)下記式(1-2)で表される構造単位
【0050】
【0051】
〔式(1-2)中、
R1及びR2は、式(1-1)中のR1及びR2と同義であり、
R7は、*-C≡C-R8(R8は水素原子又はエチニル基の保護基を示し、*は結合手を示す)を示す。〕
なお、上記R8で示されるエチニル基の保護基は、R4で示されるエチニル基の保護基と同様である。
【0052】
構造単位(A-2)としては、構造単位の交互性、共重合体の製造簡便性、モノマー原料の入手容易性、モノマー合成の簡便性等の観点から、下記式(2-2)で表される構造単位が好ましい。
【0053】
【0054】
〔式(2-2)中、R5、R6及びpは、式(2-1)中のR5、R6及びpと同義である。〕
【0055】
構造単位(A-2)の合計含有量は、構造単位の交互性、共重合体の機能発現等の観点から、共重合体の全構造単位に対して、好ましくは40モル%以上、より好ましくは42.5モル%以上、更に好ましくは45モル%以上、特に好ましくは48モル%以上であり、また、構造単位の交互性、共重合体の機能発現等の観点から、共重合体の全構造単位に対して、好ましくは60モル%以下、より好ましくは57.5モル%以下、更に好ましくは55モル%以下、特に好ましくは52モル%以下である。具体的な範囲としては、共重合体の全構造単位に対して、40モル%以上60モル%以下が好ましく、42.5モル%以上57.5モル%以下がより好ましく、45モル%以上55モル%以下が更に好ましく、48モル%以上52モル%以下が特に好ましい。
【0056】
構造単位(B-2)の合計含有量は、構造単位の交互性、共重合体の機能発現等の観点から、共重合体の全構造単位に対して、好ましくは40モル%以上、より好ましくは42.5モル%以上、更に好ましくは45モル%以上、特に好ましくは48モル%以上であり、また、構造単位の交互性、共重合体の機能発現等の観点から、共重合体の全構造単位に対して、好ましくは60モル%以下、より好ましくは57.5モル%以下、更に好ましくは55モル%以下、特に好ましくは52モル%以下である。具体的な範囲としては、共重合体の全構造単位に対して、40モル%以上60モル%以下が好ましく、42.5モル%以上57.5モル%以下がより好ましく、45モル%以上55モル%以下が更に好ましく、48モル%以上52モル%以下が特に好ましい。
なお、本発明の共重合体中の各構造単位の含有量は、1H-NMR等により測定可能である。
【0057】
また、構造単位(A-2)に対する構造単位(B-2)の含有量のモル比〔(B-2)/(A-2)〕は、構造単位の交互性、共重合体の機能発現等の観点から、好ましくは0.67以上、より好ましくは0.74以上、更に好ましくは0.82以上、特に好ましくは0.92以上であり、また、構造単位の交互性、共重合体の機能発現等の観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.35以下、更に好ましくは1.22以下、特に好ましくは1.08以下である。具体的な範囲としては、0.67以上1.5以下が好ましく、0.74以上1.35以下がより好ましく、0.82以上1.22以下が更に好ましく、0.92以上1.08以下が特に好ましい。
【0058】
また、構造単位(A-2)と構造単位(B-2)とが結合してなるセグメントの合計含有量としては、共重合体の全構造単位に対して、80モル%以上100モル%以下が好ましく、90モル%以上100モル%以下がより好ましく95モル%以上100モル%以下が特に好ましい。
【0059】
本発明の共重合体としては、交互共重合体が好ましい。また、本発明の共重合体としては、非架橋型重合体が好ましい。
本発明の共重合体の末端としては、水素原子、ハロゲン原子、連鎖移動剤残基、重合開始剤残基が挙げられる。
【0060】
本発明の共重合体の数平均分子量(Mn)としては、500~100000が好ましく、1000~50000がより好ましい。
また、本発明の共重合体の重量平均分子量(Mw)としては、500~100000が好ましく、1000~50000がより好ましい。
また、分子量分布(Mw/Mn)としては、1~2.5が好ましく、1~2がより好ましい。
なお、数平均分子量、重量平均分子量及び分子量分布は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0061】
〔共重合体の製造方法〕
本発明の製造方法は、上記モノマー(A-1)と上記モノマー(B-1)とを重合させる重合工程を含む、共重合体の製造方法である。本発明の製造方法によれば、本発明の共重合体を簡便に且つ効率良く製造できる。
モノマー(A-1)、(B-1)は、上記重合性組成物に使用されるものと同様である。
モノマー(A-1)は、市販品を用いても常法に従って合成して得たものを用いてもよい。また、モノマー(A-1)は、重合工程に用いるに先立って乾燥剤(例えば、活性アルミナ等)で処理してもよい。なお、モノマー(A-1)は、エチニル基を分子内に有するが、このエチニル基を保護せずにモノマー(B-1)と共重合させた場合でも、モノマー(A-1)由来の構造単位の交互性が高い共重合体が得られる。
【0062】
モノマー(B-1)は、本発明の共重合体の製造中間体として有用な新規化合物である。
モノマー(B-1)は、Chemistry A European Journal (2011) 17,13692-13696、Chemistry A European Journal (2014) 20,14698-14704等に記載の公知の方法を適宜組み合わせて製造できる。例えば、ハロトリアルキルシラン及びグリニャール試薬等を用いてエチニル基含有アルコール(PR-1)のエチニル基を保護し、得られた保護基含有アルコール(PR-2)とフマル酸モノエステル(PR-3)とを脱水縮合させることにより製造できる。
【0063】
【0064】
(重合工程)
重合工程における重合法としては、構造単位の交互性の観点から、リビング重合が好ましく、リビングラジカル重合がより好ましく、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)、原子移動ラジカル重合(ATRP重合)、ニトロキシド媒介ラジカル重合(NMP重合)が更に好ましく、狭分散とする観点から、RAFT重合が特に好ましい。
【0065】
重合工程は、反応効率の観点から、ラジカル重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の存在下で行うのが好ましい。また、重合工程は、反応効率の観点から、溶媒存在下で行うのが好ましい。
本発明の製造方法における各種文言の意義、各成分の使用量及びその比率等は、「本発明の重合性組成物」について説明した各種文言の意義、各成分の含有量及びその比率等と同様である。
【0066】
重合工程の重合温度は、通常40~140℃であるが、反応効率の観点から、60~80℃が好ましい。重合時間は、通常20分間~72時間であるが、反応効率の観点から、4~24時間が好ましく、6~20時間がより好ましい。
【0067】
本重合工程により、本発明の共重合体のうち、式(1-2)中のR8がエチニル基の保護基であるものを得ることができる。
【0068】
(脱保護工程)
本発明の共重合体のうち、式(1-2)中のR8が水素原子であるものを得る場合には、上記重合工程に加えて、当該重合工程で得られた共重合体(R8=エチニル基の保護基)を脱保護する脱保護工程を行えばよい。
保護基の脱離(脱保護)は、保護基の種類に応じて公知の方法で適宜行えばよい。例えば、保護基がトリアルキルシリル基である場合には、フッ化物イオン源(例えばテトラブチルアンモニウムフルオリド等)を用いて脱保護することができる。
なお、上記各工程で得られた反応生成物は、必要に応じて精製してもよい。
【0069】
そして、上記のようにして製造できる本発明の共重合体は、ビニルエーテル系モノマー由来の構造単位を有し且つ当該構造単位の交互性が高いものである。
したがって、本発明の共重合体は、反応性が異なる二種類のエチニル基をそれぞれ交互に配列する手法として有用である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
(1H-NMR)
装置:Bruker製AC-500、内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:CDCl3
(13C-NMR)
装置:Bruker製AC-500、内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:CDCl3
(分子量測定)
測定法:GPC法、装置:TOSOH製EcoSEC HLC-8320GPC、カラム:TOSOH製TSKgel-GMHHR-M、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、標準:ポリスチレン
(MALDI-TOF-MS)
装置:Bruker製autoflex III TOF/TOF、マトリックス試薬:1,8,9-トリヒドロキシアントラセン
【0072】
(実施例1 エチル(トリメチルシリル)プロパルギルフマレートの合成)
以下の合成経路に従い、エチル(トリメチルシリル)プロパルギルフマレート(以下、「ETPFA」とも称する)を合成した。
【0073】
【0074】
プロパルギルアルコール1.3gにエチルマグネシウムブロミド溶液(濃度:2M、溶媒:テトラヒドロフラン)33mLを加え、10℃で25分間反応させた後、反応系内の温度を5℃に変えた。次に、クロロトリメチルシラン7.3gを添加し、反応系内の温度を20分間かけて5℃から25℃に変えた。120分間還流した後、硫酸水溶液(1M)27mLを加え、45℃で15分間反応させることで、TMSで保護されたプロパルギルアルコールを得た。
上記で得たTMS保護プロパルギルアルコール670mgにジクロロメタン50mLを加え、更にモノエチルフマレート(以下、「MEFA」とも称する)500mgを添加した。そこに、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)430mg及びWSC(東京化成工業製N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩)1.0gを添加し、室温で24時間反応させることで、ETPFAを得た。
実施例1で得られたETPFAの
1H-NMRスペクトルを
図1に、
13C-NMRスペクトルを
図2に、それぞれ示す。
【0075】
(実施例2 共重合体の合成)
以下の合成経路に従い、ETPFAと3-[2-[2-(ビニルオキシ)エトキシ]エトキシ]-1-プロピン(以下、「VEEP」とも称する)との共重合体を合成した。
【0076】
【0077】
直径8mmのガラス製カラム管に活性アルミナ(富士フイルム和光純薬製カラムクロマトグラフ用活性アルミナ)を充填し、VEEPを1分間通過させた。このVEEP160mgに1,2-ジクロロエタン400mgを加え、更に実施例1で得たETPFA240mg、トリチオ炭酸ベンジル2-ヒドロキシエチル4.6mg及びアゾビスイソブチロニトリル1.7mgを添加した。直ちに真空ラインに接続し、凍結脱気法を3回繰り返すことで脱気を行った。減圧下で封管し、60℃で反応を開始させた。
反応開始から8時間経過後、16時間経過後、24時間経過後に、転化率(モル%)と得られた共重合体の分子量及び組成比(モル%)とを測定し、反応時間24時間にて反応を終了させ、目的とする共重合体を得た。結果を表1に示す。なお、転化率、組成比は、
1H-NMRにより求めた。
また、実施例2で得られた共重合体の
1H-NMRスペクトルを
図3に、MSスペクトルを
図4に、それぞれ示す。
【0078】
【0079】
表1に示すとおり、実施例2で得られた共重合体は、VEEP由来の構造単位のモル数とETPFA由来の構造単位のモル数が同程度であった。また、
図3~4に示すとおり、実施例2で得られた共重合体は、VEEP由来の構造単位とETPFA由来の構造単位の交互性が高かった。
このように、VEEPとETPFAとを共重合させることによって、VEEP由来の構造単位を有し且つ当該構造単位の交互性が高い線状共重合体が得られることがわかった。
【0080】
(比較例1)
ETPFAをエチルプロパルギルフマレート(以下、「EPFA」とも称する)に変更した以外は実施例2と同様にして60℃で24時間反応させた。EPFAがもつ二重結合と三重結合による架橋反応が進行し、重合生成物は汎用有機溶媒に不溶となり、構造の明確な共重合体は得られなかった。
【0081】
(比較例2)
ETPFAをジエチルフマレート(以下、「DEFA」とも称する)に変更した以外は実施例2と同様にして60℃で24時間反応させた。転化率(モル%)と得られた共重合体の組成比(モル%)とを、1H-NMRにより測定した。結果を表2に示す。
【0082】