(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】地中排水具及び地中排水構造
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20241119BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
E02D3/10 101
E02D17/20 106
(21)【出願番号】P 2021011220
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591019368
【氏名又は名称】株式会社第四紀地質研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】前田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】古屋 武士
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-348605(JP,A)
【文献】実開昭60-066731(JP,U)
【文献】実公昭48-032679(JP,Y1)
【文献】特開2019-044564(JP,A)
【文献】特開2018-146072(JP,A)
【文献】特開平06-088335(JP,A)
【文献】特開2019-100047(JP,A)
【文献】米国特許第04182581(US,A)
【文献】米国特許第10858795(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
E02D 17/20
E02D 29/02
E02B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に挿入され地中に浸透している地下水を排出する地中排水具であって、
内部中空の第1管材および第2管材と、上記第1管材および上記第2管材を接続する中空筒状の接続管とを備え、
該接続管は、管軸方向の一端側に、上記第1管材
の一端が挿入されて接続される第1接続部を有すると共に、管軸方向の他端側に、上記第2管材
の一端が挿入されて接続される第2接続部を有し、
上記第1接続部には、該第1接続部と上記第1管材との間に、上記接続管外方の地中に向けて
かつ上記第1管材の他端側に向けて開口される流入口を有する、該第1管材の内部を地中に連通させるための流路が形成されており、
上記地中排水具は、上記流路の上記流入口と、上記第1管材
の他端と、上記第2管材
の一端と、上記接続管の第1接続部とが斜め下向きと
なり、かつ、上記第1管材が上記第2管材より下方に位置する姿勢で地中に挿入されるよう構成され、上記第1管材の
他端は、挿入終端として地中から地盤面に露出されるように配置され、
上記流入口から上記流路内に流入した水が、上記挿入終端から離れるよう、上記流路内を斜め上向きに流れ、その後、上記第1管材の内部に流入し、上記挿入終端に向かうよう、上記第1管材の内部を斜め下向きに流れるよう構成されていることを特徴とする地中排水具。
【請求項2】
前記流路は、前記第1接続部に少なくとも一つ形成されることを特徴とする請求項1に記載の地中排水具。
【請求項3】
前記第1接続部には、該第1接続部の内径を部分的に大きくして、溝状部が形成され、前記流路は、上記溝状部と前記第1管材との間に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の地中排水具。
【請求項4】
前記接続管には、前記第1接続部と前記第2接続部とを仕切る内部仕切りが形成され、該内部仕切りには、上記接続管に接続された上記第1管材および上記第2管材の内部を連通する通孔が形成されていることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載の地中排水具。
【請求項5】
上記第1管材および上記第2管材には、外周にねじ条が形成され、前記接続管の前記第1及び第2接続部には、内周にねじ溝が形成され、上記第1管材および上記第2管材がそれぞれ、これら第1及び第2接続部に螺合されることを特徴とする請求項1~4いずれかの項に記載の地中排水具。
【請求項6】
前記第2管材
の他端が挿入されて接続される接続部が形成された自穿孔ビットを備え、
上記接続部には、該接続部と上記第2管材との間に、該第2管材の内部を該自穿孔ビット外方の地中に連通させるためのビット部流路が形成されていることを特徴とする請求項1~5いずれかの項に記載の地中排水具。
【請求項7】
請求項1~6いずれかの項に記載の地中排水具を用いたことを特徴とする地中排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂などの粒分によって目詰まりが生じることがなく、地下水を円滑に排出することが可能な地中排水具及び地中排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に浸透している地下水を排出する技術として、例えば特許文献1及び2が知られている。特許文献1の「排水管」は、地中に埋設して、地中に浸透した水を排水する排水管であって、周面に軸方向に延びる多数のスリット状通水孔を開設して構成されている。
【0003】
特許文献2の「土中埋設用集水管」は、目詰まりが起こりにくく、かつ、製造コストが低くて製造が容易である集水管の提供を課題とし、開口率5~50%の有孔板からなる集水管としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平4-37624号公報
【文献】特開2003-232028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地中に浸透している地下水は、土や砂などの粒分が混ざり合って、混濁状態となっている。これら粒分は、水中で浮遊するものもあるが、比重が水よりも重くて沈殿する。
【0006】
背景技術では、孔の形状や個数、開口率によって、孔に目詰まりを生じさせずに、土中から排水することを企図している。
【0007】
しかしながら、地下水が排水管や集水管へ流入する際、地下水と共に流れ込もうとする土や砂などの粒分によって孔が塞がれて目詰まりが生じてしまうことは避けられず、また、排水管等の内部に流れ込んでしまった粒分がその重さによって当該排水管等の内部に沈殿し堆積して、これにより排水管等それ自体に目詰まりが生じてしまって、排水や集水の機能を継続して果たすことができないという課題があった。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、土砂などの粒分によって目詰まりが生じることがなく、地下水を円滑に排出することが可能な地中排水具及び地中排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる地中排水具は、地中に浸透している地下水を排出する地中排水具であって、内部中空の管材と、該管材同士を接続する中空筒状の接続管とを備え、該接続管は、管軸方向の一端側に、上記管材が挿入されて接続される第1接続部を有すると共に、管軸方向の他端側に、他の上記管材が挿入されて接続される第2接続部を有し、上記第1接続部には、該第1接続部と上記管材との間に、上記接続管外方の地中に向けて開口される流入口を有する、該管材の内部を地中に連通させるための流路が形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記流路は、前記第1接続部に少なくとも一つ形成されることを特徴とする。
【0011】
前記第1接続部には、該第1接続部の内径を部分的に大きくして、溝状部が形成され、前記流路は、上記溝状部と前記管材との間に形成されることを特徴とする。
【0012】
前記接続管には、前記第1接続部と前記第2接続部とを仕切る内部仕切りが形成され、該内部仕切りには、上記接続管に接続された前記管材同士の内部を連通する通孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記管材には、外周にねじ条が形成され、前記接続管の前記第1及び第2接続部には、内周にねじ溝が形成され、2本の上記管材がそれぞれ、これら第1及び第2接続部に螺合されることを特徴とする。
【0014】
前記管材が挿入されて接続される接続部が形成された自穿孔ビットを備え、上記接続部には、該接続部と上記管材との間に、該管材の内部を該自穿孔ビット外方の地中に連通させるためのビット部流路が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる地中排水構造は、上記地中排水具を用い、該地中排水具は、前記流路の前記流入口及び前記管材が斜め下向きとなる姿勢で地中に挿入され、上記管材の斜め下向き先端は、挿入終端として地中から地盤面に露出されるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる地中排水具及び地中排水構造にあっては、土砂などの粒分によって目詰まりが生じることがなく、地下水を円滑に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る地中排水具及び地中排水構造の好適な一実施形態を説明する説明図である。
【
図2】
図1に示した地中排水具の要部斜視図である。
【
図3】
図1に示した地中排水具を説明する図であって、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は一部破断側面図である。
【
図4】
図1に示した地中排水具の接続管の側断面図である。
【
図5】
図1に示した地中排水具を、
図4中、A-A矢視方向から見た図であって、(A)は管材未挿入の様子、(B)は管材挿入後の様子を示す図である。
【
図6】
図1に示した地中排水具及び地中排水構造の作用を説明する説明図である。
【
図7】
図1に示した地中排水具に装着され、切断線で切断されるカバーの側断面図である。
【
図8】
図1に示した地中排水具に設けられる自穿孔ビットの変形例を示す要部側断面図である。
【
図9】上記実施形態に係る地中排水具の変形例を説明する図であって、(A)は、地中排水具を、接続管の部分を断面にして示した説明図、(B)は、
図9(A)中、D-D線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる地中排水具及び地中排水構造の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係る地中排水具1は基本的に、
図1に示すように、2本の管材2,3を1つの接続管4で、管材2,3の長さ方向(管軸方向とも言う)に接続することで構成され、地中Eに浸透している地下水wを排出するようになっている。
【0020】
地中排水具1は、地中Eに挿入して用いられるもので、地中排水具1の挿入先端となる管材3の端部には自穿孔ビット5が設けられ、自穿孔ビット5がモータによって管軸C周りに回転駆動されることにより、地中Eへの貫入が行われ、地中排水具1の挿入後端となる管材2の端部は、地中Eから地盤面Gに露出されるように配置され、これにより、本実施形態に係る地中排水構造6が構成される。
【0021】
図示例では、2本の管材2,3と1つの接続管4で構成した地中排水具1が示されているが、地中排水具1は、接続管4で管材2,3を順次継ぎ足していくようにして、複数の接続管4で複数本の管材2,3を、当該管材2,3の長さ方向に連結接続した長尺な構成としてもよい。
【0022】
また、地中排水具1は、自穿孔ビット5を必須とするものではなく、地中Eに向けて形成されたプレボーリング穴に差し込んで挿入されるものであってもよい。
【0023】
図1~
図5に示すように、本実施形態に係る地中排水具1を構成する管材2,3は、同じ寸法(長さは異なっていてもよい)であって、長さ方向に一端から他端に亘って一連に、地下水wを流通させるための中空通路7が形成されて、内部中空に形成される。
【0024】
管材2,3は例えば、鋼製などの金属製のロックボルトもしくは塩化ビニールなどの硬質樹脂製の中空状の塩ビ管で構成されており、ロックボルトの場合には、管材2,3の外周には、ねじ条8が形成されている。
【0025】
接続管4は、管材2,3と同様に、金属製もしくは硬質樹脂製であって、長さ方向(管軸方向とも言う)に一端から他端に亘って中空筒状に形成される。
【0026】
接続管4は、
図3及び
図4に示すように、中空筒状の内方に、後述する内部仕切り13が一体的に形成されて、内部仕切り13よりも長さ方向の一端側に、2本の管材2,3のうち、一方の管材2が挿入されて接続される筒状の第1接続部10を有すると共に、長さ方向の他端側に、他方の管材3が挿入されて接続される筒状の第2接続部11を有する。
【0027】
これら第1及び第2接続部10,11の内周には、ねじ溝12が形成され、2本の管材2,3それぞれのねじ条8が、これら接続部10,11のねじ溝12に螺合され、これにより、接続管4の長さ方向両端それぞれから挿入される2本の管材2,3同士が当該接続管4によって接続される。
【0028】
接続管4内には、第1接続部10と第2接続部11とを仕切る壁状の内部仕切り13が一体的に形成される。
【0029】
第2接続部11のねじ溝12は、第2接続部11に挿入される管材3が内部仕切り13に当接するように、当該内部仕切り13に達するように形成される。従って、第2接続部11では、内部仕切り13が、螺合される管材3の挿入量を規制するストッパとして機能される。
【0030】
他方、第1接続部10のねじ溝12は、第1接続部10に挿入される管材2が内部仕切り13との間に間隙Sを形成するように、当該内部仕切り13から間隔を隔てた位置まで形成される。
【0031】
内部仕切り13には、第1接続部10から第2接続部11へ貫通させて、これら第1及び第2接続部10,11に接続された2本の管材2,3同士の中空通路7を連通し、地下水wを管材2,3間で流通させるための通孔14が形成される。また、間隙Sが、第1接続部10に挿入された管材2の中空通路7と連通される。
【0032】
第1接続部10には、
図3~
図5に示すように、第1接続部10の内面とこの第1接続部10に挿入された管材2の外面との間に、管材2の中空通路7を地中排水具1の外方、すなわち当該地中排水具1が挿入される地中Eに連通させるための流路15が形成される。
【0033】
流路15は、第1接続部10の長さ方向(接続管4の長さ方向)において、内部仕切り13側とは反対側である接続管4の端部で、接続管4外方の地中Eに向けて開口される流入口16を有する。
【0034】
また、流路15は、内部仕切り13側で、間隙Sと連通される。これにより、第1接続部10では、流入口16から流路15、そして間隙S、管材2の中空通路7が一連に連通される。
【0035】
本実施形態では、第1接続部10の内面には、その周方向の適宜位置で、接続管4の長さ方向端部から第1接続部10の長さ方向に沿って第1接続部10の内径を部分的に大きくして、条溝状の溝状部17が形成され、この溝状部17によって第1接続部10の内面と管材2の外面(ねじ条8)との間に流路15が形成される。
【0036】
図5は、
図4中、A-A矢視方向から見た図であって、(A)は管材2の未挿入の様子、(B)は管材2の挿入後の様子を示す図である。第1接続部10内面の溝状部17は、当該第1接続部10の周方向において、地下水wが円滑に流通し得る凹条の曲面で形成され、当該溝状部17にはねじ溝12は形成されない。すなわち、第1接続部10では、管材2は、溝状部17以外の位置で、ねじ溝12に螺合される。
【0037】
図2~
図5に示すように、溝状部17の形成箇所には、流路15を加工成形し、そしてまた接続管4全体で肉厚を確保する関係から、接続管4の第1接続部10の外面から膨出する凸条部18が形成されている。
【0038】
本実施形態では、流路15は、第1接続部10の直径方向において、相対向する2箇所に形成されている。
【0039】
しかしながら、流路15は少なくとも一つ形成すればよく、あるいは第1接続部10の周方向に適宜間隔を隔てて3つ以上設けてもよい。
【0040】
本実施形態に係る地中排水具1を用い、これを地中Eに挿入することによって、
図1に示すように、本実施形態に係る地中排水構造6が構成される。
【0041】
地中排水具1は、挿入先端となる管材3の端部に設けた自穿孔ビット5で地中Eを穿孔しながら、地中Eに挿入されていく。
【0042】
その際、挿入箇所の地中Eにおける水平に対し、自穿孔ビット5により斜め上向きに穿孔が進められて、地中排水具1は、接続管4の流入口16及び接続管4で接続される管材2,3(それらの管軸方向)が斜め下向きとなる姿勢で挿入される(
図1中、「傾斜角」参照)。
【0043】
そして、地中Eにおいて斜め上方に位置される挿入先端とは反対側の斜め下方に位置される管材2の斜め下向き(中空通路7が斜め下に向かって開放している)の先端は、挿入終端として、中空通路7を地盤面G外方と連通させるために、地中Eから地盤面Gに露出されるように配置される。
【0044】
図1に示すように、挿入終端となる管材2の端部には、これより延出するようにねじ条8に螺合させて、塩化ビニール製など、容易に加工できるカバー19が設けられる。このカバー19は、
図7に示すように、挿入終端が地盤面Gに突起物として現れないように、地盤面Gに沿う切断面で切除加工される。
【0045】
本実施形態に係る地中排水具1及び地中排水構造6の作用について説明する。
【0046】
まず、地中排水具1の設置施工について説明すると、地中排水具1を地中Eに埋設するときには、自穿孔ビット5を設けた先頭となる管材3にモータを取り付け、地盤面Gから地中Eに向けて斜め上向きに穿孔作業を開始し、この管材3が斜め下向きに地盤面Gに出ている状態で穿孔を一旦停止し、モータを管材3から取り外した後、接続管4の第2接続部11を管材3に接続し、さらに、接続管4の第1接続部10に管材2を接続する。従って、接続管4の流路15の流入口16は、斜め下方に向けられる。
【0047】
第1接続部10に接続した管材2にモータを取り付け、さらに穿孔作業を行う。複数の接続管4を用いて複数の管材2,3を継ぎ足していく場合には、以上の作業を繰り返し行っていく。
【0048】
これにより、適宜必要な長さの地中排水具1は、流入口16及び管材2,3が斜め下向きとなる姿勢で、地中Eに挿入される。
【0049】
穿孔作業の最後には、穿孔を開始した地盤面G近くまで地中Eに埋設された地中排水具1の挿入終端となる管材2の端部に、カバー19を装着し、このカバー19を地盤面Gに合わせて切除し、これにより、地中排水具1を、地盤面Gに露出されるように配置する。以上のようにして、地中排水具1を地中Eに挿入した地中排水構造6の施工が完了する。
【0050】
次に、地中排水具1による地下水wの排出について説明する。
【0051】
地中Eの水圧が高まっていくと、地中Eには、土砂などの粒分を随伴した地下水wが空所に向けて移動していく。
【0052】
本実施形態に係る地中排水具1の流入口16を有する流路15は、土中の空所となり、
図6に示すように、土砂などの粒分と共に地下水wが流入してくる。また、流入口16や流路15に土砂などの粒分があると、その付近の地下水wは毛細管現象で、流路15へと導かれる。
【0053】
地中排水具1は、地中Eに挿入された状態で、接続管4の流入口16が斜め下向きとされ、その流路15も斜め下向きであるため、流入口16から流路15へ流入した土砂などの粒分を含む地下水wは、水よりも比重の重い土砂などが流路15から地中E側へ沈殿して残留される一方、地下水wは、浮遊物を含むものの、上澄みとして流路15の上端から越流し、間隙Sを通じて、管材2の中空通路7へと流れ込む。
【0054】
管材2,3は、高所から低所に向けて地下水wが自然流下して地盤面Gに向かう斜め下向きに挿入されているので、流れ込んだ地下水wは、管材2,3の中空通路7を通じて、挿入終端のカバー19のところから地盤面Gへ向けて排出される。
【0055】
これにより、本実施形態に係る地下排水具1は、土砂などの粒分による目詰まりが生じることなく、地中Eの地下水wを円滑かつ効率よく排出することができる。
【0056】
複数の管材2,3を複数の接続管4で接続している場合には、各接続管4において同様に地下水wが流れ込んで管材2,3の中空通路7を流下し、順次下方に位置している接続部4それぞれにおいて
図6に示すように、内部仕切り13の通孔14を経て合流しながら、管材2,3の中空通路7を流れ下っていく。
【0057】
これにより、地中排水具1の挿入箇所及びその周辺の地下水wを、地中Eから排出することができる。
【0058】
本実施形態では、管材2,3がロックボルトであるので、地盤を補強することができる。地中排水具1を挿入する孔を自穿孔ビット5で形成するので、穿孔と地中排水具1の設置とを同時に行うことができ、高い施工効率を確保できると共に、例えばボーリング機械でプレボーリングする場合に比して、狭隘な場所でもスムーズに施工することができる。
【0059】
管材2,3がロックボルトであるので、塩化ビニール製パイプなどが挿入・埋設されている既存の排水設備に対して、本実施形態に係る地下排水具1を当該パイプ内に差し入れることができ、排水機能が低下した設備を補修することができる。
【0060】
図8には、地下排水具1を地中Eに挿入するために穿孔を行う自穿孔ビット5の変形例が示されている。
【0061】
この変形例の自穿孔ビット5は、挿入方向先頭となる管材3を挿入して接続するための接続部20に、通孔14を除き、接続管4の第1接続部10と同じ構造で、すなわち上述と同様に、接続部20の内面と管材3の外面との間に、管材3の内部を、流入口16を介して、当該自穿孔ビット5外方の地中Eに連通させるためのビット部流路21を形成し、また、接続部20に形成した閉止壁22と管材3との間に間隙Sが形成される。
【0062】
そして、自穿孔ビット5においても、地中Eの地下水wを、流入口16からビット部流路21を通じ、間隙Sを介して管材3の中空通路7へ流入させて、挿入終端の管材2から排出することができ、これにより、地下排水具1の最奥部となる自穿孔ビット5からも地盤面G外方へ向けて地下水wを排出することができる。
【0063】
上記実施形態及び変形例では、間隙Sを、接続管4内部の内部仕切り13や自穿孔ビット5内部の閉止壁22との間に形成する場合について説明したが、間隙Sを形成することに限らず、接続管4や自穿孔ビット5に挿入される管材2,3に対し、切り欠きや穴開けなどによって、その中空通路7が流路15やビット部流路21と連通する連通部を形成するようにしてもよい。管材2,3に連通部を形成した場合には、第1接続部10のねじ溝12は、第1接続部10に対して挿入される管材2が内部仕切り13に当接するように、当該内部仕切り13に達するように形成すればよい。これにより、第1接続部10でも、内部仕切り13を、螺合される管材2の挿入量を規制するストッパとして機能させることができる。
【0064】
図9には、上記実施形態の地中排水具1の変形例が示されている。
図9(A)は、当該変形例に係る地中排水具1を、接続管4の部分を断面にして示した説明図、
図9(B)は、
図9(A)中、D-D線矢視断面図である。
【0065】
地中排水具1は、管材2,3及び接続管4のすべてが、加工性に優れた塩化ビニール製で形成され、地中Eに掘削されたプレボーリング穴に挿入して設けられる。
【0066】
上記実施形態と同様に、中空筒状の接続管4の長さ方向両端側の第1及び第2接続部10,11それぞれには、内部中空の管材2,3が挿入されて接続される。変形例では、管材2,3と接続管4とは、管材2,3が接続管4に対し嵌合するように挿入されて接続される。2本の管材2,3は接続管4内方で、端部2a,3a同士が突き合わされ、これにより中空通路7同士が互いに連通される。
【0067】
また、他方の管材2に突き合わされる一方の管材3の端部3aには、その周方向に適宜間隔を隔てて複数の切り欠き23が形成される。そして、切り欠き23と他方の管材2の端部2aとに区画して、通水口部24が形成される。
【0068】
図示例では、切り欠き23は、複数形成されているが、少なくとも一つ形成されていればよい。切り欠き23は、第2接続部11に接続される管材3に形成する場合が示されているが、これに限らず、第2接続部11に接続される管材3に代えて、第1接続部10に接続される管材2に形成しても、あるいは両管材2,3に形成するようにしてもよい。
【0069】
接続管4の構成は、内部仕切り13を備えないこと以外は、上記実施形態と同様であって、第1接続部10には、第1接続部10の内面とこの第1接続部10に挿入された管材2の外面との間に、管材2の中空通路7を、地中排水具1が挿入される地中Eに連通させるための流路15が形成される。流路15は、接続管4外方の地中Eに向けて開口される流入口16を有する。
【0070】
また、流路15は、流入口16とは反対側で、通水口部24と連通される。これにより、第1接続部10では、流入口16から流路15、そして通水口部24、管材2の中空通路7が一連に連通される。
【0071】
変形例であっても、上記実施形態と同様に、第1接続部10の内面には、その周方向の適宜位置で、接続管4の長さ方向端部から第1接続部10の長さ方向に沿って第1接続部10の内径を部分的に大きくして、条溝状の溝状部17が形成され、この溝状部17によって第1接続部10の内面と管材2の外面との間に流路15が形成される。
【0072】
また、溝状部17の形成箇所には、接続管4の第1接続部10の外面から膨出する凸条部18が形成されている。
【0073】
図示例では、流路15は、第1接続部10の周方向に等間隔で4箇所形成する場合が示されているが、流路15は一つ以上設けられていればよい。
【0074】
このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【符号の説明】
【0075】
1 地中排水具
2,3 管材
4 接続管
5 自穿孔ビット
6 地中排水構造
8 ねじ条
10 第1接続部
11 第2接続部
12 ねじ溝
13 内部仕切り
14 通孔
15 流路
16 流入口
17 溝状部
20 接続部
21 ビット部流路
E 地中
G 地盤面
w 地下水