IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 島津メクテム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱処理炉 図1
  • 特許-熱処理炉 図2
  • 特許-熱処理炉 図3
  • 特許-熱処理炉 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 5/06 20060101AFI20241119BHJP
   F27B 5/14 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
F27B5/06
F27B5/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021084483
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022178005
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591159619
【氏名又は名称】島津産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(72)【発明者】
【氏名】森元 陽介
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-318676(JP,A)
【文献】中国実用新案第210832997(CN,U)
【文献】実開平03-034593(JP,U)
【文献】実開昭60-002292(JP,U)
【文献】特開平08-327241(JP,A)
【文献】特開平05-288470(JP,A)
【文献】特開2001-183072(JP,A)
【文献】特開2000-186889(JP,A)
【文献】特開平05-157453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/06
F27B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱空間を形成して、該加熱空間内に収容された被処理物を加熱するタイトボックスを備えた熱処理炉であって、
前記タイトボックスに、前記加熱空間内からガスを排出する排出口が形成されており、
前記タイトボックス内に前記排出口と対向かつ離隔させて設けられた放射冷却緩和部材を備え、
前記タイトボックスの内部壁面に形成された凹部内に前記排出口が形成されており、
前記放射冷却緩和部材の少なくとも一部が前記凹部内に配置される、熱処理炉。
【請求項2】
前記排出口から見た場合に、前記放射冷却緩和部材が前記排出口よりも大きい、請求項1記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記排出口の開口面積を第1面積として、
前記排出口の周長に前記放射冷却緩和部材と前記排出口との離間距離を乗じた面積を第2面積とした場合に、
前記第1面積よりも前記第2面積のほうが大きくなるように構成されている、請求項1又は2いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記排出口の開口面積を第1面積として、
前記放射冷却緩和部材の前記排出口に対向する面の面積を第3面積とした場合に、
前記第1面積よりも前記第3面積のほうが大きくなるように構成されている、請求項1乃至3いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記タイトボックスが直方体形状をなし、
前記排出口が前記タイトボックスの底面に開口する、請求項1乃至4いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記タイトボックスの内面から前記放射冷却緩和部材を前記排出口から所定量だけ離間した位置で支持する1又は複数の支持棒をさらに備えた、請求項1乃至5いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項7】
記タイトボックスの外側において、前記排出口とは反対側に設けられた第1ヒータと、
前記タイトボックスの外側において、前記排出口側に設けられた第2ヒータと、をさらに備え、
前記加熱空間内の温度分布が略均一となるように、前記第2ヒータの発熱量が前記第1ヒータの発熱量よりも大きく設定されている、請求項1乃至6いずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項8】
前記タイトボックスの下側に、前記排出口が形成されており、
前記第1ヒータが、前記タイトボックスの上部に設けられ、
前記第2ヒータが、前記タイトボックスの下部に設けられた、請求項7記載の熱処理炉。
【請求項9】
加熱空間を形成して、該加熱空間内に収容された被処理物を加熱するタイトボックスを備えた熱処理炉であって、
前記タイトボックスに、前記加熱空間内からガスを排出する排出口が形成されており、
前記タイトボックス内に前記排出口と対向かつ離隔させて設けられた放射冷却緩和部材と、
前記加熱空間を加熱するヒータ機構とを備え、
前記加熱空間内の温度分布が略均一となるように、前記ヒータ機構から前記排出口の近傍に与えられる熱量が、他の部分よりも多く設定されている、熱処理炉。
【請求項10】
加熱空間を形成して、該加熱空間内に収容された被処理物を加熱するタイトボックスを備えた熱処理炉であって、
前記タイトボックスに、前記加熱空間内からガスを排出する排出口が形成されており、
前記タイトボックス内に前記排出口と対向かつ離隔させて設けられた放射冷却緩和部材を備え、
前記タイトボックスが直方体形状をなし、
前記排出口が前記タイトボックスの底面に開口し、
前記タイトボックスの底面に形成された凹部内に前記排出口が形成されており、
前記放射冷却緩和部材の少なくとも一部が前記凹部内に配置される熱処理炉。
【請求項11】
前記放射冷却緩和部材が円板状をなし、
前記凹部内からの前記放射冷却緩和部材の突出量が所定値以下に設定されている、請求項10記載の熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属又は磁性材料等からなる被処理物を熱処理炉に入れ、所定圧力下において所定温度に加熱し、被処理物の脱脂や焼結が行われている。このような熱処理炉は、被処理物が収容される加熱空間を形成するタイトボックスと、タイトボックスの外側に配置されたヒータ機構と、を備えている。加熱された被処理物からはガス状になったバインダや粒子状のダスト等を含む放出ガスが被処理物から発生する。この放出ガスの成分がタイトボックスの内面やヒータ機構に付着するのを防ぐために、例えばタイトボックスの底面に形成された排出口から放出ガスが排出されるように構成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平02―228404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、金属3Dプリンタが市場投入され、少量多品種の熱処理が可能な熱処理炉が求められつつある。このような用途の熱処理炉は、従来の大規模な工場で使用される熱処理炉と異なり、ラボルームやオフィス等の設置面積が限られた場所で使用できるように小型化する必要がある。小型化に伴って加熱空間の容積は小さくなるが、より多くの処理物を処理するためには処理エリア内の加熱温度を均一にし、被処理物の歩留まりを高める必要がある。
【0005】
このような問題について本願発明者が鋭意検討を行ったところ、加熱空間において排出口の近傍において放射冷却による影響で温度低下が発生し、温度が均一とならないことを見出した。
【0006】
そこで、本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、排出口の近傍における放射冷却による温度低下を緩和し、加熱空間内の温度を均一にすることができる熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る熱処理炉は、加熱空間を形成して、該加熱空間内に収容された被処理物を加熱するタイトボックスを備えた熱処理炉であって、前記タイトボックスに、内部のガスを排出する排出口が形成されており、前記タイトボックス内に前記排出口と対向かつ離隔させて設けられた放射冷却緩和部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記排出口と対向かつ離隔させて前記放射冷却緩和部材が設けられているので、温度の低い前記排出口側から前記タイトボックス内へ低温度の放射が出てしまうのを防ぎ、前記排出口近傍における放射冷却を緩和し、温度低下を生じにくくできる。この結果、前記加熱空間内の温度の均一にして、被処理物の歩留まりを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における熱処理炉の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態におけるタイトボックスの排出口近傍の構成を示す模式的斜視図である。
図3】同実施形態におけるタイトボックスの排出口近傍の構成を示す模式的斜視断面図である。
図4】同実施形態における排出口の開口面積と、放射冷却緩和部材の周長とタイトボックスの底面との離間距離で規定される仮想円筒の側面積との関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[装置構成]
本発明の一実施形態における熱処理炉100について図1を参照しながら説明する。
【0011】
この熱処理炉100は、例えばラボルームやオフィス等の限られたスペース内で設置できるように構成されたものであり、例えば金属や磁性材料等の被処理物Wの脱脂や焼結を行うために用いられる。なお、熱処理炉100は、半焼結、焼成、ろう付け、メタライズ、焼き入れ、焼戻し、焼きなまし、溶体化処理、または時効熱処理等を行うために用いてもよい。
【0012】
図1に示すように熱処理炉100は、内部に収容された被処理物Wを加熱する炉本体1と、炉本体1内を排気又は減圧する排気ポンプ4と、炉本体1内の被処理物Wから発生する放出ガスからバインダや油脂成分等を捕集するトラップ2及び回収ボックス3を具備する捕集機構TMと、を備えている。
【0013】
炉本体1は、内部が所定圧力に保たれる圧力容器11と、圧力容器11内に設けられた概略直方体状をなす断熱体12と、断熱体12内に設けられ、概略直方体形状をなすとともに内部に被処理物Wが収容されるタイトボックス13と、断熱体12とタイトボックス13との間に設けられたヒータ機構14と、を備えている。すなわち、圧力容器11、断熱体12、タイトボックス13は入れ子構造をなす。
【0014】
また、タイトボックス13と排気ポンプ4との間にはタイトボックス13内の被処理物Wから発生する放出ガス及び/又は処理時に炉本体1内に導入されるガスを炉本体1の外部に排出するためのガス排出流路Lが接続されている。
【0015】
圧力容器11は、その一部が蓋体により開閉可能に構成されており、蓋体が閉じられると圧力容器11内は気密空間になる。圧力容器11内は排気ポンプ4の作用によって内部が減圧されたり、図示しないガス源から圧力容器11内に供給される不活性ガス等によって加圧されたりする。
【0016】
断熱体12は例えばグラファイトフェルトまたはグラファイトフォイルなどの耐熱性材料で構成される。この断熱体12はヒータ機構14で発生する熱が断熱体12の外側へ放熱されるのを防止する。
【0017】
タイトボックス13(インナーケース)は、内部に加熱空間HSを形成する概略直方体形状をなす箱体であって、加熱空間HS内には4段の被処理物Wが載置される棚板が設けられている。タイトボックス13の側面板の内部壁面には複数の導入口13Aが形成されており、底面板にはタイトボックス13内のガスを排出するための排出口13Bが形成されている。具体的には側面板の外側に開口する吸入口からタイトボックス13の外側にあるガスが吸入されて、側面板内に形成されている内部流路を通り、各導入口13Aからタイトボックス13内へとガスは流入する。なお、各棚板の端にはガスを下方へと流通させるための切り欠きが形成されている。また、タイトボックス13内のガスは排出口13Bからガス排出流路Lを通って炉本体1の外側へ排出される。すなわち、被処理物Wから発生する放出ガスはヒータ機構14や断熱体12へと流れて付着することが無いように構成されている。
【0018】
次に排出口13Bの近傍におけるタイトボックス13の構成について図2乃至図4を参照しながら詳述する。
【0019】
本実施形態では排出口13Bはタイトボックス13の加熱空間HS内に直接露出しないようにして、加熱空間HSにおける排出口13Bの近傍が放射冷却によって温度低下が生じるのを防ぐように構成されている。具体的には図3及び図4に示すように排出口13Bはタイトボックス13の内部底面13Cに形成された概略扁平円板状をなす凹部EX3の底の中央に形成されているとともに、この排出口13Bに対して加熱空間HS側へ離隔させて薄肉円板状をなす放射冷却緩和部材EX1の裏面を対向させて設けてある。すなわち、放射冷却緩和部材EX1の裏面と凹部EX3の底との間には円筒状のガスが通過できる隙間が形成されている。
【0020】
加えて、排出口13Bと放射冷却緩和部材EX1の裏面とはほぼ平行となるように配置されているとともに、放射冷却緩和部材EX1の表面はタイトボックス13の内部底面13Cとほぼ面一となるように構成されている。
【0021】
また、排出口13Bの開口径A(流路面積)よりも放射冷却緩和部材EX1の直径は大きく設定してあり、排出口13Bと放射冷却緩和部材EX1は同軸となるように配置される。すなわち、排出口13Bの開口面に対して垂直な中心軸方向に沿って見た場合に、放射冷却緩和部材EX1は排出口13Bの全体を覆うように構成されている。したがって、放射冷却緩和部材EX1は、低温側である排出口13B及びガス排出流路Lから高温側である加熱空間HS内に向かう放射(電磁波)を遮り、加熱空間HSにおける排出口13Bの近傍において放射冷却が発生することを抑制する。
【0022】
加えて、凹部EX3の直径は放射冷却緩和部材EX1の直径よりも大きく形成してある。排出口13Bと放射冷却緩和部材EX1を同軸となるように配置した状態において、放射冷却緩和部材EX1の外周と凹部EX3の側壁面との間には所定面積の円環状のガスが通過できる隙間が形成される。
【0023】
放射冷却緩和部材EX1と、凹部EX3の底との間には4本の細円柱状をなす支持棒EX2が設けられており、これらの支持棒EX2は放射冷却緩和部材EX1の裏面を排出口13Bから所定量Bだけ離れた位置で固定支持する。
【0024】
次に排出口13Bの開口径Aと排出口13Bと放射冷却緩和部材EX1との離間距離Bとの関係について詳述する。本実施形態では放射冷却緩和部材EX1を設けても排出口13Bの排出能力が保たれるように構成してある。具体的には排出口13Bの開口面積を第1面積S1=π(A/2)^2として、排出口13Bの周長πAに放射冷却緩和部材EX1と排出口13Bとの離間距離Bを乗じた面積を第2面積S2=πABとした場合に、第1面積S1よりも第2面積S2のほうが大きくなるように構成されている。言い換えると、上流側の流路面積である第2面積S2のほうが下流側の流路面積である第1面積S1よりも大きくなるようにして、排出口13Bよりも上流側で流れが絞られないようにしてある。本実施形態では、このような関係を満たす離間距離Bが設定されて、離間距離Bと放射冷却緩和部材EX1の厚み寸法の和が凹部EX3の深さとほぼ等しくなるようにしてある。また、放射冷却緩和部材EX1において排出口13Bに対向する面の面積を第3面積S3とした場合に、前述したように第1面積S1よりも第3面積S3が大きくなるように構成されている。
【0025】
次にヒータ機構14等について図1を参照しながら説明する。図1に示すようにヒータ機構14は、断熱体12とタイトボックス13との間に設けられた複数のグラファイト製のヒータプレートを具備する。ヒータ機構14はタイトボックス13の外側それぞれ発熱量が異ならせてある第1ヒータ及び第2ヒータを少なくとも備えている。本実施形態では第1ヒータは、タイトボックス13の外側において排出口13Bとは反対側であるタイトボックス13の上部側に設けられた上部ヒータ14Uである。また、第2ヒータは、タイトボックス13の外側において排出口13Bとは同じ側であるタイトボックス13の下部側に設けられる下部ヒータ14Dである。上部ヒータ14U及び下部ヒータ14Dは、タイトボックス13内の温度が均一となるようにそれぞれ発熱量を異ならせてある。より具体的には、上部ヒータ14Uはタイトボックス13の外側上面と対向する2つのヒータプレートと、タイトボックス13の各外部側面の上部と対向する一対のヒータプレートとから構成される。また、下部ヒータ14Dは、タイトボックス13の各外部側面の下部と対向する一対のヒータプレートと、タイトボックス13の外部底面と対向する2つのヒータプレートとから構成される。上部ヒータ14Uと下部ヒータ14Dを構成する各ヒータプレートは支持機構14Sによってタイトボックス13の外表面から所定距離離間した位置に配置される。本実施形態では上部ヒータ14Uと下部ヒータ14Dを構成する各ヒータプレートの厚みを異ならせることで上部ヒータ14Uと下部ヒータ14Dの抵抗値を調整し、各ヒータプレートの発熱量を調整することで、加熱空間HS内の温度を略均一にしている。すなわち、下部ヒータ14Dの発熱量が上部ヒータ14Uの発熱量よりも大きくなるように設定されている。
【0026】
[効果]
このように構成された熱処理炉100であれば、タイトボックス13において排出口13Bと対向するように放射冷却緩和部材EX1が配置されており、排出口13Bから加熱空間HSへと向かう低温度の放射が遮られるように構成されているので、放射冷却によって排出口13Bの近傍の温度が低下するのを防ぐことができる。さらに、ヒータ機構14では、放射冷却によって温度が下がりやすい排出口13Bと同じ側であるタイトボックス13の下側に設けられた下部ヒータ14Dの発熱量が、排出口13Bとは反対側に設けられた上部ヒータ14Uの発熱量よりも大きくなるようにそれぞれを構成するヒータプレートの抵抗値を異ならせている。したがって、放射冷却緩和部材EX1を設けても発生するタイトボックス13内下部におけるわずかな温度低下についてもヒータ機構14で抑制することができ、加熱空間HS内の温度が略均一になるように加熱することができる。
【0027】
これらのことから、加熱空間HSにおける温度を例えば4℃以内の温度幅で均一に保ち、被処理物Wの焼結不足や過焼結を防ぐことで歩留まりを向上させることができるようになる。したがって、例えばラボルームやオフィスのような限られたスペースに好適な熱処理炉100として、フットプリントを小さくし、コンパクトに構成するためにタイトボックス13の容積を小さくして、被処理物Wの収容可能量が少なくなったとしても、十分な処理能力を得られる。
【0028】
また、第1面積S1よりも第2面積S2のほうが大きくなるように排出口13Bの開口径Aと、排出口13Bから放射冷却緩和部材EX1の離間距離Bを定めてあるので、放射冷却緩和部材EX1を設けたことによって排出口13Bよりも上流で流路面積が小さくなって流路が絞られることはない。したがって、排気能力従来と同等に保つ事が可能となる。
【0029】
その他の実施形態について説明する。
【0030】
前記実施形態ではタイトボックスの底面に排出口及び放射冷却緩和部材が設けられていたが、タイトボックスの側面や上面等のその他の面に設けられていてもよい。また、凹部内に排出口を形成せずに壁面と排出口が面一となるようにしてもよい。この場合には、放射冷却緩和部材は加熱空間内に所定量突出させた状態で配置すればよい。
【0031】
放射冷却緩和部材の形状は円板状に限られず、任意の形状であってもよい。少なくとも排出口から見た場合に排出口よりも放射冷却緩和部材のほうが大きく、加熱空間が遮られるように構成されていればよい。
【0032】
凹部の側壁面と放射冷却緩和部材の外周との間に形成される円環状の隙間の面積を第4面積とした場合に、第4面積は第1面積よりも大きく、かつ、第2面積よりも大きくしてもよい。このようにすれば、排出口の排出能力をさらに保つことができる。
【0033】
ヒータ機構の構成についても前記実施形態において説明したものに限られない。前記実施形態では第1ヒータと第2ヒータにおいて発熱量を異ならせるためにヒータプレートの厚みを異ならせていたが、各ヒータプレートの厚みを同じにして、各ヒータプレートに印加する電圧を異ならせることで発熱量を異ならせても良い。また、前記タイトボックスにおいて排出口が設けられている位置に応じて第1ヒータ及び第2ヒータは配置すればよい。例えば第2ヒータのほうが第1ヒータよりも前記排出口の近くとなるように各ヒータを配置すればよい。
【0034】
(第1項)本発明の熱処理炉の一態様は、加熱空間を形成して、該加熱空間内に収容された被処理物を加熱するタイトボックスを備えた熱処理炉であって、前記タイトボックスに、内部のガスを排出する排出口が形成されており、前記タイトボックス内に前記排出口と対向かつ離隔させて設けられた放射冷却緩和部材を備えたことを特徴とする。
【0035】
このようなものであれば、前記放射冷却緩和部材によって前記排出口及びそれに連なる配管等から前記加熱空間内へ向かう放射を遮り、放射冷却による温度低下が前記排出口の近傍で生ずることを抑制することができる。この結果、前記加熱空間の温度の均一性を高めて、前記被処理物の歩留まりを改善できる。したがって、ラボルームやオフィスで使用可能なコンパクトな熱処理炉とするために前記タイトボックスの容積を小さくしても、十分な処理能力を実現できる。
【0036】
(第2項)前記加熱空間内から前記排出口へと向かう放射を十分に遮れるようにして、前記加熱空間における温度低下を所定値以下に低減できるようにするには、前記排出口から見た場合に、前記放射冷却緩和部材が前記排出口よりも大きいものであればよい。より具体的には前記排出口の開口面に対して垂直な方向からみた場合に、前記放射冷却緩和部材が前記排出口の全体を覆うように構成されていればよい。
【0037】
(第3項)前記放射冷却緩和部材によって前記放出ガスの排出能力等が低下しないようにするには、前記排出口の開口面積を第1面積として、前記排出口の周長に前記放射冷却緩和部材と前記排出口との離間距離を乗じた面積を第2面積とした場合に、前記第1面積よりも前記第2面積のほうが大きくなるように構成されていればよい。
【0038】
(第4項)放射冷却を十分に防ぐことができる具体的な態様としては、前記排出口の開口面積を第1面積として、前記放射冷却緩和部材の前記排出口に対向する面の面積を第3面積とした場合に、前記第1面積よりも前記第3面積のほうが大きくなるように構成されていれるものが挙げられる。
【0039】
(第5項)高温となったガスが前記タイトボックスの底面側にも十分に流れるようにして、比重の差で前記加熱空間の上部に高温のガスが集まるのを防ぎ、前記加熱空間内の温度の均一性を高められるようにするには、前記タイトボックスが直方体形状をなし、前記排出口が前記タイトボックスの底面に開口するものであればよい。
【0040】
(第6項)前記放射冷却緩和部材が前記加熱空間内に突出して収容容積が減ってしまうのを防ぐとともに、前記加熱空間内から前記排出口へ向かう放射のうち入射角が大きいものも十分に遮れるようにするには、タイトボックスの底面に形成された凹部内に前記排出口が形成されており、前記放射冷却緩和部材の少なくとも一部が前記凹部内に配置されるものであればよい。
【0041】
(第7項)前記加熱空間内の温度の均一性をさらに高められるようにするには、前記放射冷却緩和部材が円板状をなし、前記凹部内からの前記放射冷却緩和部材の突出量が所定値以下に設定されていればよい。
【0042】
(第8項)前記排出口からの放出ガスの排出をほとんど妨げずに、前記放射冷却緩和部材を前記排出口に所定距離離間した位置に対向させて固定するための具体的な構成例としては、前記タイトボックスの内面から前記放射冷却緩和部材を前記排出口から所定量だけ離間した位置で支持する1又は複数の支持棒をさらに備えたものが挙げられる。
【0043】
(第9項)本発明の別の態様の熱処理炉は、加熱空間を形成して、該加熱空間内に収容された被処理物を加熱するタイトボックスを備え、前記タイトボックスに、内部のガスを排出する排出口が形成された熱処理炉であって、前記タイトボックスの外側において、前記排出口とは反対側に設けられた第1ヒータと、前記タイトボックスの外側において、前記排出口側に設けられた第2ヒータと、を備え、前記加熱空間内の温度分布が略均一となるように、前記第2ヒータの発熱量が前記第1ヒータの発熱量よりも大きく設定されている、ことを特徴とする。
【0044】
このようなものであれば、前記タイトボックスに、内部のガスを排出する排出口が形成されていることによって、前記排出口の近傍において放射冷却による温度低下が生じるとしても、その影響が緩和されるように前記排出口の近傍に与えられる熱量を他の部分よりも多くして、前記加熱空間内の温度の均一性を高めることができる。
【0045】
(第10項)前記加熱空間内の温度分布の均一性を高めることができる具体的な態様としては、前記タイトボックスの下側に、前記排出口が形成されており、前記第1ヒータが、前記タイトボックスの上部に設けられ、前記第2ヒータが、前記タイトボックスの下部に設けられたものが挙げられる。
【符号の説明】
【0046】
100 :熱処理炉
1 :炉本体
11 :圧力容器
12 :断熱体
13 :タイトボックス
13A :導入口
13B :排出口
13C :内部底面
HS :加熱空間
EX1 :放射冷却緩和部材
EX2 :支持棒
EX3 :凹部
14 :ヒータ機構
14U :上部ヒータ(第1ヒータ)
14D :下部ヒータ(第2ヒータ)
2 :トラップ
3 :回収ボックス
4 :排気ポンプ
L :ガス排出流路
TM :捕集機構
W :被処理物
図1
図2
図3
図4