(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】光線照射装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20241119BHJP
B60Q 3/70 20170101ALI20241119BHJP
【FI】
A61L2/10
B60Q3/70
(21)【出願番号】P 2021112624
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394001087
【氏名又は名称】株式会社京都プラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 元貴
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】石津 陽平
(72)【発明者】
【氏名】酒向 慎貴
(72)【発明者】
【氏名】倉本 興一
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0338220(US,A1)
【文献】特開2016-221852(JP,A)
【文献】中国実用新案第209290116(CN,U)
【文献】特開2009-272283(JP,A)
【文献】特開平11-332963(JP,A)
【文献】国際公開第2008/099818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00- 2/28
B60Q 3/00- 3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の室内の取付面に取り付けられる光線照射装置であって、
照射素子が実装面に実装された照射基板と、
前記照射素子を駆動する駆動素子が実装された制御基板と、
送風口を有し、当該光線照射装置を冷却するための冷却ファンと、
吸気口および排気口を有し、前記照射基板,前記制御基板および前記冷却ファンを収容するハウジングと、を備え、
当該光線照射装置が前記取付面に取り付けられた状態において、
前記制御基板は、前記冷却ファンに対して前記取付面と直交する方向に重畳する状態で前記ハウジング内に収容されるとともに、前記吸気口から前記冷却ファンまでの吸気路に位置しており、
前記照射基板は、前記冷却ファンに対して前記取付面に沿う方向に横並びとなる状態で前記ハウジング内に収容されるとともに、前記冷却ファンの前記送風口から前記排気口までの排気路に位置している光線照射装置。
【請求項2】
前記冷却ファンは、前記取付面に直交する方向から吸気して、前記取付面に沿う方向に送風する構成である請求項1に記載の光線照射装置。
【請求項3】
前記冷却ファンと前記照射基板との横並び方向に沿って延びる前記照射基板の両側部と、前記照射基板の前記実装面の反対面と対向して配される前記ハウジングの対向面との間は、仕切り壁により塞がれており、
前記冷却ファンの前記送風口と前記照射基板とは離隔して配され、前記送風口と、前記照射基板および前記仕切り壁との間は隔壁により塞がれており、
前記隔壁と、前記反対面と、前記仕切り壁と、前記対向面と、により囲まれた空間が、前記送風口から前記排気口までの前記排気路を構成している、請求項1または請求項2に記載の光線照射装置。
【請求項4】
前記対向面は、前記照射基板の前記反対面と平行に延在している請求項3に記載の光線照射装置。
【請求項5】
前記ハウジングの内部空間うち前記排気路の周囲は、前記吸気路と連通した状態とされている請求項3または請求項4に記載の光線照射装置。
【請求項6】
前記駆動素子は、前記制御基板のうち前記冷却ファンと対向する面に実装されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【請求項7】
前記駆動素子は、前記制御基板のうち前記冷却ファンと重畳する位置に実装されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【請求項8】
前記照射基板は、第1および第2の前記照射素子を実装するとともに、前記第1の照射素子を実装する第1部分および前記第2の照射素子を実装する第2部分を備え、
前記第1部分および前記第2部分は、前記排気路の延び方向と交差する方向に並んで、互いに交差する方向に延在している請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【請求項9】
前記照射基板はアルミ製である請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、光線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光を照射する機能を有する車載用の装置1として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このものは、
図9に示すように、光触媒作用を有する物質を含む構造体2と、構造体2へ紫外線を含む光を照射する照射手段3と、蓄熱した熱を構造体2の光触媒へ供給する蓄熱材4と、構造体2へ送風する送風手段5と、が順に重畳された構成となっている。送風手段5から送り出された気流は、蓄熱材4を通して照射手段3および構造体2へ供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照射手段において発生する熱を送風手段により放散させる装置において、上述した特許文献1の構成のように、照射手段3と送風手段5とが重畳した状態で配置される構成では、重畳方向における装置の寸法が大きくなる。このため、装置を例えば乗物の天井等の乗物室内に取り付ける場合には、これを配置するために、取付面から突出する方向のスペースを要することとなるが、乗物にそのようなスペースを確保することは容易ではない。また、装置を取付面から突出するように取り付ける場合には、できるだけ突出寸法を小さくすることが望まれる。つまり、装置を薄型化することが要望されている。
【0005】
一方、最近では除菌ニーズの高まりにより、乗物においても、使用後都度の除菌が望まれている。従来、紫外線の中でも短い波長を有する深紫外線(100~280nm)は、除菌効果があることが知られており、この深紫外線を乗物に照射することが考えられる。このような深紫外線の照射装置は、従来の可視光照射装置や長波長の紫外線照射装置と比較して高出力とされるため、従来以上に冷却効率を高めることが望まれる。
【0006】
本明細書に開示される技術は上記事情に鑑みてなされたものであって、薄型であり、かつ、冷却効率に優れる光線照射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本明細書に開示の技術は、乗物の室内の取付面に取り付けられる光線照射装置であって、照射素子が実装面に実装された照射基板と、前記照射素子を駆動する駆動素子が実装された制御基板と、 送風口を有し、当該光線照射装置を冷却するための冷却ファンと、吸気口および排気口を有し、前記照射基板,前記制御基板および前記冷却ファンを収容するハウジングと、を備え、当該光線照射装置が前記取付面に取り付けられた状態において、前記制御基板は、前記冷却ファンに対して前記取付面と直交する方向に重畳する状態で前記ハウジング内に収容されるとともに、前記吸気口から前記冷却ファンまでの吸気路に位置しており、前記照射基板は、前記冷却ファンに対して前記取付面に沿う方向に横並びとなる状態で前記ハウジング内に収容されるとともに、前記冷却ファンの前記送風口から前記排気口までの排気路に位置している。
【0008】
このような構成によれば、照射基板と冷却ファンとが横並びとされているから、照射基板と冷却ファンとが重畳した配置とされた従来の構成と比較して、光線照射装置の薄型化が実現可能である。また、制御基板を吸気口から冷却ファンまでの吸気路に配置することで、ハウジング内に吸気された空気によって制御基板を冷却し、温められた空気を排気路に送り込むことができる。さらに、照射基板を送風口から排気口までの排気路に配置することで、冷却ファンから送風された空気によって照射基板を冷却し、温められた空気を排気口から排気することができる。
【0009】
前記冷却ファンは、前記取付面に直交する方向から吸気して、前記取付面に沿う方向に送風する構成であってもよい。このような構成によれば、冷却ファンが取付面に直交する方向から吸気して、取付面に直交する方向に送風する構成と比較して、より光線照射装置の薄型化が可能である。
【0010】
前記冷却ファンと前記照射基板との横並び方向に沿って延びる前記照射基板の両側部と、前記照射基板の前記実装面の反対面と対向して配される前記ハウジングの対向面との間は、仕切り壁により塞がれており、前記冷却ファンの前記送風口と前記照射基板とは離隔して配され、前記送風口と、前記照射基板および前記仕切り壁との間は隔壁により塞がれており、前記隔壁と、前記反対面と、前記仕切り壁と、前記対向面と、により囲まれた空間が、前記送風口から前記排気口までの前記排気路を構成していてもよい。
【0011】
このような構成によれば、送風口から排気口までの排気路が周辺領域から仕切られ、しかも、照射基板が排気路の一部を構成しているから、照射基板を高い流速の空気により効率的に冷却することができる。また、送風口から送風された空気がハウジング内で広がることなく排気口(ハウジングの外部)に案内されるから、光線照射装置全体の冷却効率が高まる。
【0012】
前記対向面は、前記照射基板の前記反対面と平行に延在していてもよい。このような構成によれば、基板の反対面から対向面までの距離がどの位置においても一定になるから、基板を均等に冷却可能となり、冷却効率がさらに良好になる。
【0013】
前記ハウジングの内部空間うち前記排気路の周囲は、前記吸気路と連通した状態とされていてもよい。このような構成によれば、吸気口から吸気された空気の一部が排気路の周囲に循環することで排気路を冷却することが可能となり、もって、照射基板がより冷却され易くなる。
【0014】
前記駆動素子は、前記制御基板のうち前記冷却ファンと対向する面に実装されていてもよい。このような構成によれば、冷却ファンに吸気される空気が駆動素子に接し易くなるため、駆動素子そのものを効率的に冷却することができる。
【0015】
前記駆動素子は、前記制御基板のうち前記冷却ファンと重畳する位置に実装されていてもよい。このような構成によれば、冷却ファンに吸気されるべく流速が高まった空気が、駆動素子、あるいは制御基板のうち駆動素子が実装された部分に接して熱を吸収し易くなり、冷却効率を高めることができる。
【0016】
前記照射基板は、第1および第2の前記照射素子を実装するとともに、前記第1の照射素子を実装する第1部分および前記第2の照射素子を実装する第2部分を備え、前記第1部分および前記第2部分は、前記排気路の延び方向と交差する方向に並んで、互いに交差する方向に延在していてもよい。
【0017】
このような構成によれば、2つの照射素子が一方向だけを向いている構成と比較して、高さ方向に対する照射範囲が広がるから、乗物室内の広い範囲を照射可能である。また、第1部分および第2部分が排気路の延び方向に沿って並ぶ構成と比較して、排気路を通過する気流の流れが直線的になり、気流が安定するとともに、流速も安定する。すなわち、冷却効率が向上する。また、第1部分および第2部分を均等に冷却可能である。
【0018】
前記照射基板はアルミ製であってもよい。アルミは熱伝導性が高いため、冷却効率に優れる。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に開示される技術によれば、薄型であり、かつ、冷却効率に優れる光線照射装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】深紫外線照射装置の水平方向の断面図(
図1のI-I断面図)
【
図3】深紫外線照射装置の水平方向の断面図(
図1のII-II断面図)
【
図5】深紫外線照射装置の排気路と交差する方向の断面図(
図1のIII-III断面図)
【
図6】深紫外線照射装置の排気路と交差する方向の断面図(
図1のIV-IV断面図)
【
図7】深紫外線照射装置を取り付けた車両の前後方向の概略図
【
図8】深紫外線照射装置を取り付けた車両の左右方向の概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に開示の光線照射装置を、車両室内を除菌可能な深紫外線照射装置10に適用した一実施形態を
図1から
図8によって説明する。各図面には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。X軸方向を右方向、Y軸方向を前方、Z軸方向を上方とする。また、複数の同一部材については、一の部材に符号を付して他の部材の符号は省略することがある。
【0022】
図1に示すように、深紫外線照射装置10は、全体として扁平な箱状をなすハウジング11を有する。ハウジング11のうち、
図1の上方に配される天井壁12は、前方側に位置する前天井壁13と、後方側に位置し、前天井壁13よりやや高い位置に配された後天井壁15と、前天井壁13と後天井壁15とを連結するように前方から後方に向けて斜めに立ち上がる連結壁14と、により構成されている。連結壁14の傾斜角度は、水平方向から35度傾いた角度に設定されている。また、ハウジング11のうち、
図1の下方に配される底壁18には、後述するLED42に対向する部分に、開口19が設けられている。あるいは底壁18のうちLED42に対向する部分は、例えば石英等の深紫外線を透過可能な透明または半透明の素材で形成されていてもよい。
【0023】
図1に示すように、ハウジング11の後壁21には、後天井壁15に跨るように吸気口22が貫通形成されている。また前壁23には、前天井壁13に跨るように排気口24が貫通形成されている。吸気口22は、側壁や天井壁12、底壁18の障害物に塞がれない位置に形成されてもよく、本実施形態のように、複数の壁に跨って形成されていてもよい。本実施形態の吸気口22は、後壁21のうち、後述する制御基板50の実装面50Aより上方に設けられている。吸気口22および排気口24は、ハウジング11の内部に異物等が容易に入り込まないように、多数の縦スリット状に形成されている(
図2および
図4参照)。
【0024】
以下、ハウジング11の内部空間のうち、前天井壁13および連結壁14の下方の空間を前方空間R1とし、後天井壁15の下方の空間を後方空間R2として説明する。
図1に示すように、前方空間R1と後方空間R2との境界部の一部には、後述するように、底壁18から立ち上がる立壁(隔壁の一例)25が設けられている。前方空間R1には、照射部40が収容されている。後方空間R2には、冷却ファン30および制御基板50が収容されている。
【0025】
照射部40は、
図2および
図5に示すように、2枚の平坦な板状の第1基板(照射基板および第1部分の一例)411、および、第2基板(照射基板および第2部分の一例)412と、第1基板411の下面(実装面の一例)411Lに実装された第1LED(第1の照射素子の一例)421と、第2基板412の下面(実装面の一例)412Lに実装された第2LED(第2の照射素子の一例)422と、を備える。以下、
図2および
図5に示す左側の基板を第1基板411、右側の基板を第2基板412とし、2枚の基板を区別しない場合はLED基板41とし、2つのLEDを区別しない場合には、LED42として説明する。
【0026】
本実施形態のLED42は、紫外線の中でも波長が短い深紫外線(100~280nm)を照射する深紫外線LEDである。これらのLED42が照射する深紫外線の波長は、200~280nmの範囲内であることが好ましい。なお、第1基板411および第2基板412には、深紫外線LED42と併せて、可視光を発光する可視光LEDを搭載してもよい。
【0027】
本実施形態のLED42は、LED基板41に実装した際に、LED基板41と反対側の端面(頂面)から照射を行う頂面照射型LEDを採用している。これらLED42の指向角は、頂面に対して垂直な軸を中心とした120度の範囲内とされている(
図7および
図8参照)。
【0028】
第1基板411および第2基板412はアルミニウム製であり、
図5に示すように、正面視扁平なV字形状となるように互いに交差した状態で、左右方向(後述する排気路28の延び方向と交差する方向)に並んで配されている。より詳細には、第1基板411および第2基板412は、水平方向から左右方向における中央に向けてそれぞれ約15度下方に傾いた状態で、左右方向に隣り合って配されている。これにより、第1基板411の下面411Lに搭載された第1LED421と、第2基板412の下面412Lに搭載された第2LED422とは、それぞれ頂面が下方からやや外側(左右方向)を向いた状態とされる。
【0029】
第1基板411および第2基板412が左右方向にV字形状に並んだ状態における第1基板411および第2基板412の左右方向の幅寸法L1は、ハウジング11の左右方向の幅寸法の1/2程度とされている。また、第1基板411および第2基板412の前後方向の長さ寸法L2は、ハウジング11の前壁23と立壁25との間の寸法と同等とされている。これにより、第1基板411および第2基板412は、前壁23と立壁25との間に隙間なく嵌め入れられる形で、ハウジング11の前方空間R1内に収容されている(
図1および
図2参照)。
【0030】
上述した前天井壁13には、
図5に示すように、その下面13L(天井面(対向面の一例)12Lの一部)が第1基板411の上面(反対面の一例)411Uおよび第2基板412の上面(反対面の一例)412Uと平行に対向するように、左右方向における中央部分が断面扁平なV字形状に窪む窪み部16が形成されている。前天井壁13のうち窪み部16の左右両側は、水平方向に延在する水平部17とされている。水平部17は、ハウジング11の底壁18と平行な状態で対向している。
【0031】
また、窪み部16と水平部17との境界部には、下方に向けて突出する仕切りリブ(仕切り壁の一例)26が設けられている。これら一対の仕切りリブ26は、
図1示すように、後方に向けて直線状に延びて、連結壁14の下方まで連なっている。これら一対の仕切りリブ26の先端(下端)は、前後方向の全体にわたって同一面状に配されている。つまり、仕切りリブ26のうち連結壁14から突出する部分は、後方に向けて突出寸法が徐々に長くなっている。これら一対の仕切りリブ26の先端(下端)は、第1基板411の上面411Uの左端、および、第2基板412の上面412Uの右端に当接するように設定されている(
図5参照)。つまり、第1基板411および第2基板412の両端部と、ハウジング11の天井面12Lとの間は、仕切りリブ26により塞がれている。
【0032】
上述した立壁25は、
図6に示すように、ハウジング11の底壁18からの高さが、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uよりも高い位置に配される高さ寸法とされており、左右方向の幅が、第1基板411および第2基板412が左右方向にV字形状に並んだ状態における第1基板411および第2基板412の左右方向の幅寸法L1と同等とされている。このような構成により、仕切りリブ26の後端と、立壁25の左右の両端部とは、連なるように配されている。なお、立壁25の側方(右側および左側)は、前方空間R1と後方空間R2とが連通した状態とされている(
図2および
図3参照)。
【0033】
上述したように、ハウジング11の後方空間R2には、冷却ファン30が収容されている。冷却ファン30は、LED基板41に対して、天井壁12に沿う方向に横並びとされた状態で、ハウジング11内に収容されている。なお、横並びとは、深紫外線照射装置10を平面視した際に、LED基板41の板面と冷却ファン30とが重畳しない配置とされていることを指しており、上下方向の高さがずれている場合を含むこととする。本実施形態では、冷却ファン30は、LED基板41よりやや上方に配されている。
【0034】
冷却ファン30は全体として扁平な略円柱型の本体部31を備えている。当該本体部31は、一対の底面が上下方向を向くようにハウジング11の後方空間R2内に配され、上方の底面(上面)が図示しない緩衝材を介して後天井壁15に当接する形で収容されている(
図1参照)。冷却ファン30は、下方から吸い上げた空気を前方に向けて送風する構成とされており、前方に向けて扁平な角筒状に突出する送風口32を備えている。送風口32は、その上面が本体部31の上面と面一になるように、本体部31の上方部分から前方に向けて突出している。つまり、送風口32の上面も、図示しない緩衝材を介して後天井壁15に当接している。
【0035】
送風口32の幅寸法は、第1基板411および第2基板412が左右方向にV字形状に並んだ状態における第1基板411および第2基板412の左右方向の幅寸法L1と同寸法とされている(
図5および
図6参照)。また送風口32は、
図1、
図5および
図6に示すように、第1基板411および第2基板412の上面411U、412U(反対面の一例)から上方(天井面12Lと直交する方向)に離隔した位置に配されている。送風口32の突出方向における先端(前端)は、ハウジング11の底壁18から立ち上がる立壁25の上端に支持されている。つまり、立壁25の高さ寸法は、ハウジング11の底壁18から送風口32の下端までの寸法と同等とされている。また立壁25の幅寸法は、上述したように、第1基板411および第2基板412が左右方向にV字形状に並んだ状態における第1基板411および第2基板412の左右方向の幅寸法L1とほぼ同寸法、つまり、送風口32の幅寸法とほぼ同等とされている。これにより、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uと、送風口32との間に形成される隙間は、立壁25により閉塞された状態とされている。
【0036】
このような構成により、立壁25のうち第1基板411および第2基板412と送風口32との間を塞ぐ部分(閉塞部25Aとする)と、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uと、ハウジング11の天井面12Lと、2つの仕切りリブ26と、により囲まれた筒状の空間によって、冷却ファン30の送風口32からハウジング11の排気口24までの排気路28が構成されている。排気路28は、ハウジング11内において、その周囲から区切られるとともに、送風口32および排気口24以外の部分が周囲から閉じられた空間とされている。前方空間R1のうち排気路28以外の部分(排気路28の周囲)は、後方空間R2と連通した状態とされている。
【0037】
なお、
図4に示すように、上述した排気口24の幅寸法は、排気路28の幅寸法、つまり、一対の仕切りリブ26の間の寸法と同等寸法とされている。また、排気口24の高さ寸法は、前壁23の上端から、第1基板411および第2基板412の下面411L、412Lの一部が露出可能な寸法とされている。すなわち、排気口24は、前方空間R1のうち排気路28の周辺領域を一部露出する構成とされている。
【0038】
図1に示すように、ハウジング11のうち冷却ファン30の下方には、制御基板50が収容されている。換言すると、制御基板50は、その板面が冷却ファン30に対して天井壁12と直交する方向に重畳した配置とされている。制御基板50の実装面50Aには、上述したLED42を駆動するためのLEDドライバ(駆動素子の一例)51が実装されている。制御基板50は、実装面50Aが冷却ファン30と対向する向きでハウジング11の後方空間R2内に配されている。LEDドライバ51は、平面視において、冷却ファン30と重畳する位置に配置されている(
図2および
図3参照)。制御基板50は、吸気口22から冷却ファン30の図示しない吸い込み口(冷却ファン30の下面)までの空気の通り道である、吸気路27に位置している。
【0039】
吸気口22からハウジング11の後方空間R2に吸い込まれた空気の一部は、吸気路27、具体的には、吸気口22から制御基板50の実装面50A上を通って、冷却ファン30に吸い込まれる。そして、冷却ファン30を通過するとともに当該冷却ファン30の送風口32から前方に向けて放出され、前方側が下方に向けて傾斜する連結壁14に沿って、第1基板411および第2基板412の上面411U,412Uに吹き付けられる。この時、連結壁14により空気が圧縮され、流速が高められる。そして、空気は上述した排気路28を通過して、排気口24からハウジング11の外部に排気される。
【0040】
また、吸気口22からハウジング11の後方空間R2に吸い込まれた空気の一部は、ハウジング11の内壁に沿って前方に向けて進んで前方空間R1の排気路28以外の部分(排気路28の下方および側方)に流れ込み、その後、冷却ファン30の吸い込みによる空気の流れにより、前方空間R1に戻される。つまり、ハウジング11内を循環する。そして、一部は吸気口22から吸い込まれた空気とともに冷却ファン30に吸い込まれ、送風口32から前方(排気路28)に向けて放出されて、排気口24からハウジング11の外部に排出される。
【0041】
このように、吸気口22から吸い込まれた空気が、吸気路27を通って冷却ファン30に吸い込まれたり、ハウジング11内を循環する際に、制御基板50に実装されているLEDドライバ51の周囲にも気流が生じるため、LEDドライバ51は効率的に冷却されることとなる。
【0042】
本実施形態の深紫外線照射装置10は上述した通りであって、次に、使用方法について説明する。深紫外線照射装置10は、例えば、タクシー等の車両60(乗物の一例)の客室(室内の一例)の除菌を目的として使用することができる。
図7および
図8は、深紫外線照射装置10をタクシー等の車両60の客室(後部座席)の天井(取付面の一例)61に取り付けた状態を示す概念図である。深紫外線照射装置10は、、照射部40が前方に配され、冷却ファン30および制御基板50が後方に配される向きで、車両60の天井61に対してその天井壁12が取り付けられている。すなわち、LED基板41と冷却ファン30とが前後方向に並ぶとともに、制御基板50と冷却ファン30とが天井61と直交する方向に重畳した状態で、車両60の天井61に対して取り付けられている。
【0043】
深紫外線照射装置10を使用する場合には、上述したように、LED42の頂面から120度の指向角で座席および側面(ドアトリム)に対して深紫外線が照射される。この時、
図8に示すように、車両幅方向において、第1LED421および第2LED422は互いに水平方向から外側に向けて15度の傾斜角度で傾いた状態とされているから、これらのLED42が下方に向けて真っ直ぐ照射される場合と比較して、車室側面の高い位置まで照射して、除菌を行うことができるようになっている。つまり、乗員が触れる可能性が高いドアトリムの上端部分まで除菌できるようになっている。このような深紫外線の照射は、例えば、運航後に格納庫で行ったり、前部座席と後部座席の間に深紫外線カットフィルム付きセパレータ62等が設けられている場合であれば、運行中、客待ち時間や回送時間に行うことができる。
【0044】
次に、作用効果について説明する。本実施形態の深紫外線照射装置10は、車両60の室内の天井61に取り付けられるものであって、LED42が実装面41Aに実装されたLED基板41と、LED42を駆動するLEDドライバ51が実装された制御基板50と、送風口32を有し、当該深紫外線照射装置10を冷却するための冷却ファン30と、吸気口22および排気口24を有し、LED基板41,制御基板50および冷却ファン30を収容するハウジング11と、を備え、当該深紫外線照射装置10が天井61に取り付けられた状態において、制御基板50は、冷却ファン30に対して天井61と直交する方向に重畳する状態でハウジング11内に収容されるとともに、吸気口22から冷却ファン30までの吸気路27に位置しており、LED基板41は、冷却ファン30に対して天井61に沿う方向に横並びとなる状態でハウジング11内に収容されるとともに、冷却ファン30の送風口32から排気口24までの排気路28に位置している。
【0045】
このような構成によれば、LED基板41と冷却ファン30とが横並びとされているから、LED基板41と冷却ファン30とが重畳した配置とされた従来の構成と比較して、深紫外線照射装置10の薄型化が実現可能である。また、制御基板50を吸気口22から冷却ファン30までの吸気路27に配置することで、ハウジング11内に吸気された空気によって制御基板50を冷却し、温められた空気を排気路28に送り込むことができる。さらに、LED基板41を送風口32から排気口24までの排気路28に配置することで、冷却ファン30から送風された空気によってLED基板41を冷却し、温められた空気を排気口24から排気することができる。これにより、高電流(高出力)の深紫外線LED42を、従来品と同様に駆動することが可能となる。
【0046】
また、上記冷却ファン30は、天井61に直交する方向から吸気して、天井61に沿う方向に送風する構成である。このような構成によれば、冷却ファン30が天井61に直交する方向から吸気して、天井61に直交する方向に送風する構成と比較して、冷却ファン30をハウジング11の一方側(本実施形態では天井壁12)に当接させる形でハウジング11内に収容することができるから、より深紫外線照射装置10の薄型化が可能である。
【0047】
また、冷却ファン30とLED基板41との横並び方向(前後方向)に沿って延びるLED基板41の両側部と、LED基板41の上面41Uと対向して配されるハウジング11の天井面12Lとの間は、仕切りリブ26により塞がれており、冷却ファン30の送風口32とLED基板41とは離隔して配され、送風口32と、LED基板41および仕切りリブ26との間は立壁25の閉塞部25Aにより塞がれており、立壁25の閉塞部25Aと、LED基板41の上面41Uと、仕切りリブ26と、天井面12Lと、により囲まれた空間が、送風口32から排気口24までの排気路28を構成している。
【0048】
このような構成によれば、送風口32から排気口24までの排気路28が周辺領域から仕切られ、しかも、LED基板41が排気路28の一部を構成しているから、LED基板41を冷却ファン30から送風された空気により効率的に冷却することができる。また、送風口32から送風された空気を吸気路27に戻さず、熱せられた空気をハウジング11内で広げることなく排気口24(ハウジングの外部)に案内するから、深紫外線照射装置10全体の冷却効率が高まる。
【0049】
ハウジング11の天井面12Lは、LED基板41の上面41Uと平行に延在している。このような構成によれば、LED基板41の上面41Uからハウジング11の天井面12Lまでの距離がどの位置においても一定になるから、LED基板41を均等に冷却可能となり、冷却効率がさらに良好になる。
【0050】
また、ハウジング11の内部空間のうち排気路28の周囲は、吸気路27と連通した状態とされている。このような構成によれば、吸気口22から吸気された空気の一部が排気路28の周囲に循環することで排気路28を冷却することが可能となり、もって、LED基板41がより冷却され易くなる。
【0051】
LEDドライバ51は、制御基板50のうち冷却ファン30と対向する面に実装されている。このような構成によれば、冷却ファン30に吸気される空気がLEDドライバ51に接し易くなるため、LEDドライバ51そのものを効率的に冷却することができる。
【0052】
LEDドライバ51は、制御基板50のうち冷却ファン30と重畳する位置に実装されている。このような構成によれば、冷却ファン30に吸気されるべく流速が高まった空気がLEDドライバ51あるいは制御基板50のうちLEDドライバ51が実装された部分に接して熱を吸収し易くなり、冷却効率を高めることができる。
【0053】
LED基板41は、第1LED421および第2LED422を実装するとともに、第1LED421を実装する第1基板411および第2LED422を実装する第2基板412を備え、第1基板411および第2基板412は、排気路28の延び方向と交差する方向(左右方向)に並んで、互いに交差する方向に延在している。
【0054】
このような構成によれば、2つのLEDが一方向だけを向いている構成と比較して、高さ方向に対する照射範囲が広がるから、車両室内の広い範囲を照射可能である。また、第1基板411および第2基板412が排気路28の延び方向(前後方向)に沿って並ぶ構成と比較して、排気路28を通過する気流の流れが直線的になり、気流が安定するとともに、流速も安定する。すなわち、冷却効率が向上する。また、第1基板411および第2基板412を均等に冷却可能である。
【0055】
LED基板41はアルミ製とされている。アルミは熱伝導性が高いため、冷却効率に優れる。
【0056】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0057】
(1)上記実施形態では、立壁25をハウジング11の底壁18から立ち上げて形成する構成を示したが、立壁25は送風口32とLED基板41との間を塞ぐことが可能な構成であれば、どのような形態としてもよい。例えば、仕切りリブから延設することにより構成してもよい。
【0058】
(2)また、上記実施形態では、送風口32がLED基板41の上面41Uから上方(天井面12Lと直交する方向)に離隔した位置に配される構成を示したが、送風口とLED基板とは、斜め方向や前後方向に離隔する構成としてもよい。その場合、送風口とLED基板との間を塞ぐだけでなく、送風口と仕切り壁との間を塞ぐ壁(隔壁)を設けることにより、排気路を周辺領域から区切ることができる。
【0059】
(3)上記実施形態では、ハウジング11の内部空間うち排気路28の周囲を、吸気路27と連通した状態とした構成を示したが、排気路の周囲が吸気路と連通していない構成も、本明細書に開示する技術範囲に含まれる。
【0060】
(4)上記実施形態では、LEDドライバ51が、制御基板50のうち冷却ファン30と対向する面に実装されている形態を示したが、LEDドライバは、制御基板のうち冷却ファンと対向する面の反対面に実装されている構成とすることもできる。このような構成では、冷却ファンに吸い込まれる気流により制御基板の実装面の反対面を効率的に冷却するができる。
【0061】
(5)上記実施形態では、LEDドライバ51が制御基板50のうち冷却ファン30の本体部31と重畳する位置に実装されている構成を示したが、LEDドライバは、冷却ファンの本体部と重畳しない位置に実装される構成も技術範囲に含まれる。
【0062】
(6)上記実施形態では光線照射装置の一例として深紫外線照射装置10を示したが、深紫外線以外の例えば可視光等の光線を照射する装置に対しても本明細書に開示される技術を適用することができる。
【0063】
(7)上記実施形態では、ハウジング11の前方部分の高さを後方部分の高さよりも低くする形態を示したが、ハウジングの高さは全体的に同等であってもよい。
【0064】
(8)排気路28の天井面12Lは、必ずしもLED基板41の上面41Uと平行に配されていなくてもよい。
【0065】
(9)光線照射装置は、乗物の天井に限らず、例えば側壁や床上等、乗物室内の天井以外の部分にも設置することができる。
【0066】
(10)上記実施形態では、照射部40として2枚の第1基板411および第2基板412を互いに交差するように並べて配置する構成を示したが、照射部は、1枚の基板を屈曲させ、第1LEDを搭載する第1部分と、第2LEDを搭載する第2部分とを1枚の基板で構成してもよい。また、照射部は、1枚の平坦な基板を使用したり、3枚以上のLED基板を互いに交差するように配置した深紫外線照射装置としてもよい。
【0067】
(11)上記実施形態では、冷却ファン30は、下方から吸気して前方に送風する構成としたが、冷却ファンは、下方から吸気して上方に送風する構成とすることもできる。そのような場合、冷却ファンの上方に、前方空間に形成された排気路に連なる空間が形成されることとなる。またそのような場合、後方空間内における排気路(冷却ファンの上方部分)とその排気路以外の部分とを仕切る壁部を設け、冷却ファンから送風された空気が後方空間内に広がらない構成とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0068】
10:深紫外線照射装置(光線照射装置)、11:ハウジング、12L:天井面(対向面)、22:吸気口、24: 排気口、25:立壁、26:仕切りリブ(仕切り壁)、27:吸気路、28:排気路、30:冷却ファン、31:本体部、32:送風口、40:照射部、41:LED基板(照射基板)、41A:実装面、41U:上面(反対面)、42:LED(照射素子)、50:制御基板、51:LEDドライバ(駆動素子)、60:車両(乗物)、61:天井(取付面)、411:第1基板(第1部分)、411L:下面(実装面)、411U:上面(反対面)、412:第2基板(第2部分)、412L:下面(実装面)、412U:上面(反対面)、421:第1LED(第1の照射素子)、422:第2LED(第2の照射素子)