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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】土留め壁の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/08 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
E02D5/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021180552
(22)【出願日】2021-11-04
(65)【公開番号】P2023069014
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】521484475
【氏名又は名称】吉田重機建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 尊彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智也
(72)【発明者】
【氏名】中迫 哉太
(72)【発明者】
【氏名】岩田 広之進
(72)【発明者】
【氏名】仲田 國夫
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/008905(WO,A1)
【文献】特開2002-146773(JP,A)
【文献】特開2007-332639(JP,A)
【文献】特開2016-156247(JP,A)
【文献】特開平11-036283(JP,A)
【文献】特開2019-031829(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038629(WO,A1)
【文献】特開2003-213686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0290843(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113373904(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に圧入された既設の鋼矢板上に沿って横方向に自走しながら新たな鋼矢板の圧入を行う鋼矢板圧入機を用いて鋼矢板を連続配置して土留め壁を構築する土留め壁の構築方法であって、
第1の圧入側鋼矢板と、前記第1の圧入側鋼矢板よりも短い全長の第2の圧入側鋼矢板および当該第2の圧入側鋼矢板の上部に撤去可能に接合された仮設鋼矢板で構成されて前記第2の圧入側鋼矢板と前記仮設鋼矢板とで前記第1の圧入側鋼矢板と同じ全長となった圧入側鋼矢板ユニットと、を上端が揃い且つ前記仮設鋼矢板が地上に位置するように前記鋼矢板圧入機を用いて交互に圧入して並列設置する第1の工程と、
前記圧入側鋼矢板ユニットから前記仮設鋼矢板を撤去する第2の工程と、
第1の継ぎ側鋼矢板を前記第1の圧入側鋼矢板に直列接合し、前記仮設鋼矢板の長さ分だけ前記第1の継ぎ側鋼矢板よりも長くなった第2の継ぎ側鋼矢板を前記第2の圧入側鋼矢板に直列接合する第3の工程と、
を順次実行することを特徴とする土留め壁の構築方法。
【請求項2】
前記仮設鋼矢板と前記第2の圧入側鋼矢板とは、添接板を介してボルトで接合されている、
ことを特徴とする請求項1記載の土留め壁の構築方法。
【請求項3】
前記第3の工程では、前記第1の継ぎ側鋼矢板および前記第2の継ぎ側鋼矢板を交互に前記第1の圧入側鋼矢板および前記第2の圧入側鋼矢板にそれぞれ接合する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の土留め壁の構築方法。
【請求項4】
前記第1の工程では、最初と最後の圧入が第1の圧入側鋼矢板となるように設置し、
前記第3の工程では、前記第2の継ぎ側鋼矢板を前記第2の圧入側鋼矢板に全て接合した後に前記第1の継ぎ側鋼矢板を前記第1の圧入側鋼矢板に接合する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の土留め壁の構築方法。
【請求項5】
前記第3の工程では、前記第1の継ぎ側鋼矢板および前記第2の継ぎ側鋼矢板をクレーンで吊り上げて前記第1の圧入側鋼矢板の上端および前記第2の圧入側鋼矢板の上端にそれぞれ降ろして接合する、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の土留め壁の構築方法。
【請求項6】
前記第1の継ぎ側鋼矢板と前記第1の圧入側鋼矢板、ならびに前記第2の継ぎ側鋼矢板と前記第2の圧入側鋼矢板は、添接板を介してボルトで接合、または溶接により接合されている、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の土留め壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板で構成される土留め壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
盛土をしたり地盤を掘削して形成される土砂の段差の崩壊を防止するための構造物として土留め壁が設置される。そして、土留め壁を構築する方法として、鋼矢板圧入機を用いて鋼矢板を連続配置する方法が知られている。このときに用いられる圧入機として、オペレータの操作により、圧入された既設の鋼矢板上に沿って横方向に自走しながら新たな鋼矢板の圧入を行う鋼矢板圧入機がある。
【0003】
ここで、鋼矢板圧入機を用いて鋼矢板で土留め壁を構築する場合、次のような問題があった。
【0004】
つまり、目標高さの土留め壁を構築するために、圧入された鋼矢板の上端部が高い位置となった場合、高所の鋼矢板上という不安定な場所で重量物である鋼矢板圧入機が稼働することになる。すると、鋼矢板圧入機が転倒したり落下して破損・故障のおそれが発生する。
【0005】
このようなおそれを回避するためには、上端部が地上付近となるように鋼矢板圧入機で鋼矢板を圧入し、当該鋼矢板の上端部にさらに所定長の鋼矢板を接合して目標高さの土留め壁を構築すればよい。
【0006】
なお、鋼矢板で土留め壁を構築する技術としては、例えば特許文献1(特開2014-015809号公報)に記載されたものがある。この特許文献1には、鋼矢板の継手部と近接する部分の締切壁の外側の水中に目詰材を投入し、締切作業空間と外側の水面との水頭差によって継手部の隙間を介して締切作業空間に流入する水の流れに乗せて、投入した目詰材を継手部の隙間に引き込むことにより、当該隙間を目詰材によって目詰りさせて、締切作業空間に流入する漏水の水量を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-015809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した鋼矢板圧入機の動作原理(圧入された既設の鋼矢板上に沿って横方向に自走しながら新たな鋼矢板の圧入を行うとの動作原理)上、圧入された各鋼矢板の上端が揃うことになる。したがって、圧入された鋼矢板の上端部にさらに鋼矢板を接合するということは、同一の高さで鋼矢板を継ぐことになる。すなわち、土留め壁を構成する鋼矢板の継ぎ目が横一列になってしまうことになる。
【0009】
一般に、鋼矢板を継いだ場合、継ぎ目の強度は鋼矢板自体の強度の約70%程度になることから、鋼矢板で構築された土留め壁の横一列となった継ぎ目箇所の強度が他の箇所に比較して大きく低下することになり、土留め壁の強度上の品質に問題が発生する。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、圧入された鋼矢板の上端にさらに鋼矢板を接合して構築された土留め壁の強度低下を抑制することのできる土留め壁の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の土留め壁の構築方法は、地盤に圧入された既設の鋼矢板上に沿って横方向に自走しながら新たな鋼矢板の圧入を行う鋼矢板圧入機を用いて鋼矢板を連続配置して土留め壁を構築する土留め壁の構築方法であって、第1の圧入側鋼矢板と、前記第1の圧入側鋼矢板よりも短い全長の第2の圧入側鋼矢板および当該第2の圧入側鋼矢板の上部に撤去可能に接合された仮設鋼矢板で構成されて前記第2の圧入側鋼矢板と前記仮設鋼矢板とで前記第1の圧入側鋼矢板と同じ全長となった圧入側鋼矢板ユニットと、を上端が揃い且つ前記仮設鋼矢板が地上に位置するように前記鋼矢板圧入機を用いて交互に圧入して並列設置する第1の工程と、前記圧入側鋼矢板ユニットから前記仮設鋼矢板を撤去する第2の工程と、第1の継ぎ側鋼矢板を前記第1の圧入側鋼矢板に直列接合し、前記仮設鋼矢板の長さ分だけ前記第1の継ぎ側鋼矢板よりも長くなった第2の継ぎ側鋼矢板を前記第2の圧入側鋼矢板に直列接合する第3の工程と、を順次実行することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の本発明の土留め壁の構築方法は、上記請求項1記載の発明において、前記仮設鋼矢板と前記第2の圧入側鋼矢板とは、添接板を介してボルトで接合されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の本発明の土留め壁の構築方法は、上記請求項1または2記載の発明において、前記第3の工程では、前記第1の継ぎ側鋼矢板および前記第2の継ぎ側鋼矢板を交互に前記第1の圧入側鋼矢板および前記第2の圧入側鋼矢板にそれぞれ接合する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の本発明の土留め壁の構築方法は、上記請求項1または2記載の発明において、前記第1の工程では、最初と最後の圧入が第1の圧入側鋼矢板となるように設置し、前記第3の工程では、前記第2の継ぎ側鋼矢板を前記第2の圧入側鋼矢板に全て接合した後に前記第1の継ぎ側鋼矢板を前記第1の圧入側鋼矢板に接合する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の本発明の土留め壁の構築方法は、上記請求項1~4の何れか一項に記載の発明において、前記第3の工程では、前記第1の継ぎ側鋼矢板および前記第2の継ぎ側鋼矢板をクレーンで吊り上げて前記第1の圧入側鋼矢板の上端および前記第2の圧入側鋼矢板の上端にそれぞれ降ろして接合する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の本発明の土留め壁の構築方法は、上記請求項1~5の何れか一項に記載の発明において、前記第1の継ぎ側鋼矢板と前記第1の圧入側鋼矢板、ならびに前記第2の継ぎ側鋼矢板と前記第2の圧入側鋼矢板は、添接板を介してボルトで接合、または溶接により接合されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1の圧入側鋼矢板と交互に地盤に圧入された圧入側鋼矢板ユニットを構成している仮設鋼矢板を撤去し、第1の継ぎ側鋼矢板を第1の圧入側鋼矢板に接合し、第2の継ぎ側鋼矢板を第2の圧入側鋼矢板に接合して土留め壁を構築している。よって、第1の継ぎ側鋼矢板と第1の圧入側鋼矢板との継ぎ目(接合部)と、第2の継ぎ側鋼矢板と第2の圧入側鋼矢板との継ぎ目(接合部)とが、仮設鋼矢板の長さ分だけ交互に上下にずれることになる。
【0018】
これにより、圧入された鋼矢板(第1の圧入側鋼矢板・第2の圧入側鋼矢板)の上端にさらに鋼矢板(第1の継ぎ側鋼矢板・第2の継ぎ側鋼矢板)を接合して構築された土留め壁の強度低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)~(d)は本発明の一実施の形態である土留め壁の構築方法で使用される鋼矢板圧入機による鋼矢板の圧入動作を順を追って示す説明図である。
図2】本発明の一実施の形態である土留め壁の構築方法において圧入された第1の圧入側鋼矢板を示す説明図である。
図3】本発明の一実施の形態である土留め壁の構築方法において第1の圧入側鋼矢板に隣接して圧入された鋼矢板ユニットを示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態である土留め壁の構築方法において第1の圧入側鋼矢板と鋼矢板ユニットとが交互に圧入された状態を示す説明図である。
図5図4から鋼矢板ユニットに接合された仮設鋼矢板を撤去した状態を示す説明図である。
図6図5から第1の継ぎ側鋼矢板を前記第1の圧入側鋼矢板の上端に接合し、第2の継ぎ側鋼矢板を第2の圧入側鋼矢板の上端に接合して構築された土留め壁を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
先ず、本実施の形態の土留め壁の構築方法において使用される鋼矢板圧入機による鋼矢板の圧入動作について、図1を用いて説明する。
【0022】
本実施の形態においては、図1に示すように、鋼矢板圧入機10として株式会社技研製作所製のサイレントパイラー(登録商標)が用いられる。この鋼矢板圧入機10は、地盤に圧入された既設の鋼矢板Pa上に沿って横方向に自走しながら新たな鋼矢板Pbの圧入を行う圧入機である。なお、鋼矢板圧入機10としては、このような動作により鋼矢板Pの圧入を行うことができる圧入機であればよく、特に株式会社技研製作所製のサイレントパイラーに限定されるものではない。
【0023】
図1に示す鋼矢板圧入機10は、既設の鋼矢板Paを掴んで反力を得るための複数のクランプ11が設けられたサドル12と、サドル12の上部に水平方向にスライド可能に設置されたマスト13と、マスト13に昇降可能に設置されて鋼矢板Pを把持して地盤に圧入するチャック14とを備えている。なお、この鋼矢板圧入機10は、圧入した鋼矢板Paをチャック14で把持してマスト13を上昇させ、その状態でサドル12をマスト13に沿ってチャック14側にスライドさせることにより、既設の鋼矢板Pa上に沿って横方向に自走(前後に自走)可能になっている。
【0024】
このような鋼矢板圧入機10を用いて鋼矢板Pの圧入施工を開始するにあたっては、鋼矢板圧入機10の積載された反力架台(図示せず)を地面に設置し、クランプ11で反力架台を掴んで鋼矢板Pを地盤に圧入する。このような圧入動作を数回繰り返し行って初期反力用の鋼矢板Paを設置して、図1(a)に示すように、鋼矢板圧入機10が反力架台から圧入された鋼矢板Paへと移動すると、クランプ11で鋼矢板Paを掴むとともにマスト13を前方にスライド移動させた状態でチャック14で新たな鋼矢板Pbを把持する。
【0025】
そして、図1(b)に示すように、チャック14を昇降させながら鋼矢板Pbを圧入するとともに、前述した要領でサドル12をマスト13に沿ってチャック14側にスライドさせる。その後、図1(c)に示すように、引き続きチャック14を昇降させながら鋼矢板Pbを地盤に圧入して行き、図1(d)に示すように、鋼矢板Pbが既設の鋼矢板Paと同じ高さになったならば圧入完了となる。
【0026】
なお、鋼矢板Pは幅方向の断面形状が略コ字状や略U字状などになっており、幅方向の両端が、相互に異なる向きとなった相手方の鋼矢板Pと係合する形状となっている。したがって、土留め壁RW(図6)を構築する際には、向きが互い違いになるようにして鋼矢板Pを横並びに圧入して行く。
【0027】
さて、以上に説明した鋼矢板圧入機10を用いた本実施の形態の土留め壁の構築方法について、図2図6を用いて説明する。
【0028】
ここで、本実施の形態の土留め壁RWの構築方法で用いられる鋼矢板Pは4種類であり、地盤に圧入される鋼矢板Pとして第1の圧入側鋼矢板Pp1および圧入側鋼矢板ユニットPpuの2種類、地上に位置する鋼矢板Pとして第1の継ぎ側鋼矢板Pj1および第2の継ぎ側鋼矢板Pj2の2種類である。
【0029】
第1の圧入側鋼矢板Pp1は全長5mである。また、圧入側鋼矢板ユニットPpuは、第1の圧入側鋼矢板Pp1よりも短い全長の全長4mの第2の圧入側鋼矢板Pp2と当該第2の圧入側鋼矢板Pp2の上部に撤去可能に接合された全長1mの仮設鋼矢板Prで構成されており、圧入側鋼矢板ユニットPpuとしての全長は第1の圧入側鋼矢板Pp1の全長と同じ5mとなっている。
【0030】
なお、第2の圧入側鋼矢板Pp2の全長は第1の圧入側鋼矢板Pp1の全長よりも短くなっていれば足り、4mに限定されるものではない。よって、仮設鋼矢板Prの全長も1mに限定されるものではなく、第2の圧入側鋼矢板Pp2の全長との合計で第1の圧入側鋼矢板Pp1と同じ全長となるような全長に設定されていればよい。また、本実施の形態において、仮設鋼矢板Prと第2の圧入側鋼矢板Pp2とは、添接板Aを介してボルト(図示せず)で接合されているが、仮設鋼矢板Prは第2の圧入側鋼矢板Pp2から撤去可能に接合されていればよく、本実施の形態の接合形態である必要はない。
【0031】
第1の継ぎ側鋼矢板Pj1は全長3mの鋼矢板Pである。また、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2は全長4mの鋼矢板Pである。但し、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2は仮設鋼矢板Prの長さ分だけ第1の継ぎ側鋼矢板Pj1よりも長くなっていればよく、本実施の形態では仮設鋼矢板Prの全長が1mであることから、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2の全長は、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1は全長よりも1m長い4mとなっている。なお、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2が仮設鋼矢板Prの長さ分だけ第1の継ぎ側鋼矢板Pj1よりも長くなっているのは、後述するように、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1を第1の圧入側鋼矢板Pp1に直列接合し、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2を第2の圧入側鋼矢板Pp2に直列接合したときに、両者の上端が水平方向に揃うようにするためである。
【0032】
さらに、本実施の形態において、これらの鋼矢板P(第1の圧入側鋼矢板Pp1、圧入側鋼矢板ユニットPpu、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2)の幅は、何れも400mmである。
【0033】
なお、以上に示した寸法は限定的な数値ではなく、必要に応じて自由に設定することができる。例えば、本実施の形態においては、第1の圧入側鋼矢板Pp1の全長は5m、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1の全長は3mと相互に異なっているが、目標とする土留め壁RWの高さによっては、同じ全長となることもあり得る。
【0034】
さて、土留め壁RWの構築に当たっては、先ず、第1の工程として、第1の圧入側鋼矢板Pp1と圧入側鋼矢板ユニットPpuとを鋼矢板圧入機10を用いて交互に圧入し、並列配置する。すなわち、図2に示すように、最初の第1の圧入側鋼矢板Pp1を所定の深さ(例えば、3m)圧入し、続いて、図3に示すように、その隣接位置に、幅方向の端部が当該第1の圧入側鋼矢板Pp1と係合するようにして、圧入側鋼矢板ユニットPpuを圧入する。このとき、第1の圧入側鋼矢板Pp1の上端と圧入側鋼矢板ユニットPpuの上端とが揃い、且つ、仮設鋼矢板Prが地上に位置する深さに圧入側鋼矢板ユニットPpuを圧入する。以下、同様にして第1の圧入側鋼矢板Pp1と圧入側鋼矢板ユニットPpuとを交互に圧入し、図4に示すように、第1の圧入側鋼矢板Pp1と圧入側鋼矢板ユニットPpuとを並列配置する。
【0035】
なお、本実施の形態では、圧入された最初と最後が何れも第1の圧入側鋼矢板Pp1となっているが、最初と最後が何れも圧入側鋼矢板ユニットPpuとなっていてもよい。さらには、最初が第1の圧入側鋼矢板Pp1で最後が圧入側鋼矢板ユニットPpuとなっていても、あるいは最初が圧入側鋼矢板ユニットPpuで最後が第1の圧入側鋼矢板Pp1となっていてもよい。
【0036】
このようにして第1の圧入側鋼矢板Pp1と圧入側鋼矢板ユニットPpuとの圧入が完了したならば、第2の工程として、図5に示すように、圧入側鋼矢板ユニットPpuから仮設鋼矢板Prを撤去する。前述のように、仮設鋼矢板Prと第2の圧入側鋼矢板Pp2とは添接板Aを介してボルトで接合されているので、ボルトを取り外して仮設鋼矢板Prを撤去する。これにより、図示するように、正面から見ると、第1の圧入側鋼矢板Pp1と第2の圧入側鋼矢板Pp2とが凹凸になって地盤に圧入された状態になる。
【0037】
さて、圧入側鋼矢板ユニットPpuから仮設鋼矢板Prを撤去したならば、第3の工程として、図6に示すように、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1を第1の圧入側鋼矢板Pp1に直列接合し、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2を第2の圧入側鋼矢板Pp2に直列接合して、土留め壁RWの構築が完了する。前述のように、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2は、仮設鋼矢板Prの長さ分だけ第1の継ぎ側鋼矢板Pj1よりも長くなっているので、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1を第1の圧入側鋼矢板Pp1に接合し、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2を第2の圧入側鋼矢板Pp2に接合して構築された土留め壁RWは、図示するように、その上端が水平方向に沿って真っ直ぐになる。
【0038】
ここで、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1および第2の継ぎ側鋼矢板Pj2という重量物を接合する場合、一例として、図示しないクレーンで吊り上げて第1の圧入側鋼矢板Pp1の上端および第2の圧入側鋼矢板Pp2の上端にそれぞれ降ろして接合する。但し、クレーンを用いる以外の方法で行ってもよい。また、本実施の形態において、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1と第1の圧入側鋼矢板Pp1、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2と第2の圧入側鋼矢板Pp2とは、添接板Aを介してボルト(図示せず)で接合されているが、当該接合形態である必要はなく、例えば、溶接により接合してもよい。
【0039】
なお、接合順序については、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1および第2の継ぎ側鋼矢板Pj2を交互に第1の圧入側鋼矢板Pp1および第2の圧入側鋼矢板Pp2にそれぞれ接合することができる。これによれば、並設設置された第1の圧入側鋼矢板Pp1および第2の圧入側鋼矢板Pp2に対して一方端から他方端に向けて順番に接合して行くことができ、効率よく作業を行うことができる。
【0040】
なお、接合順序はこれに限定されるものではなく、様々な方法が採用可能である。例えば、図4に示すように、第1の工程において、最初と最後の圧入が第1の圧入側鋼矢板Pp1となるように設置しておき、第3の工程では、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2を第2の圧入側鋼矢板Pp2に全て接合した後に第1の継ぎ側鋼矢板Pj1を第1の圧入側鋼矢板Pp1に接合するようにしてもよい。このようにすれば、第3の工程において第2の継ぎ側鋼矢板Pj2を第2の圧入側鋼矢板Pp2に接合する際に、当該第2の継ぎ側鋼矢板Pj2が第1の圧入側鋼矢板Pp1で挟まれて横方向が規制されるので、接合の際の位置決めが容易になる。さらに、その後、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1を第1の圧入側鋼矢板Pp1に接合する際には、両端に位置する第1の圧入側鋼矢板Pp1に第1の継ぎ側鋼矢板Pj1を接合する場合を除き、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1が第2の圧入側鋼矢板Pp2で挟まれて横方向が規制されるので、同様に、接合の際の位置決めが容易になる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1の圧入側鋼矢板Pp1と交互に地盤に圧入された圧入側鋼矢板ユニットPpuを構成している仮設鋼矢板Prを撤去し、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1を第1の圧入側鋼矢板Pp1に接合し、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2を第2の圧入側鋼矢板Pp2に接合して土留め壁RWを構築しているので、第1の継ぎ側鋼矢板Pj1と第1の圧入側鋼矢板Pp1との継ぎ目(接合部)と、第2の継ぎ側鋼矢板Pj2と第2の圧入側鋼矢板Pp2との継ぎ目(接合部)とが、仮設鋼矢板Prの長さ分だけ交互に上下にずれることになる。
【0042】
これにより、土留め壁RWを構成する鋼矢板Pの横一列となった継ぎ目の強度が他の箇所に比較して大きく低下することがなくなり、圧入された鋼矢板P(第1の圧入側鋼矢板Pp1・第2の圧入側鋼矢板Pp2)の上端にさらに鋼矢板P(第1の継ぎ側鋼矢板Pj1・第2の継ぎ側鋼矢板Pj2)を接合して構築された土留め壁RWの強度低下を抑制することが可能になる。
【0043】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0044】
例えば、本実施の形態において用いられる鋼矢板圧入機10は、鋼矢板Pの圧入専用機である必要はなく、鋼矢板Pの引き抜きも可能であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明では、水平となった地盤に土留め壁を構築していることから、第1の圧入側鋼矢板と圧入側鋼矢板ユニットとの圧入する深さが同じになっているが、傾斜した地盤に土留め壁を構築する場合に同じ深さ圧入すると、上端が揃わずに地盤の傾斜と同じ傾斜になってしまう。したがって、第1の圧入側鋼矢板と圧入側鋼矢板ユニットとの圧入深さは、上端が揃うように地盤の傾斜に応じて変更される。
【符号の説明】
【0046】
10 鋼矢板圧入機
11 クランプ
12 サドル
13 マスト
14 チャック
A 添接板
P 鋼矢板
Pa 既設の鋼矢板(鋼矢板)
Pb 新たに圧入される鋼矢板(鋼矢板)
Pj1 第1の継ぎ側鋼矢板(鋼矢板)
Pj2 第2の継ぎ側鋼矢板(鋼矢板)
Pp1 第1の圧入側鋼矢板(鋼矢板)
Pp2 第2の圧入側鋼矢板(鋼矢板)
Ppu 圧入側鋼矢板ユニット(鋼矢板)
Pr 仮設鋼矢板
RW 土留め壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6