(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ガラス合紙
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20241119BHJP
B65D 85/48 20060101ALI20241119BHJP
D04H 3/011 20120101ALI20241119BHJP
【FI】
D21H27/00 Z
B65D85/48
D04H3/011
(21)【出願番号】P 2024083169
(22)【出願日】2024-05-22
【審査請求日】2024-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516054287
【氏名又は名称】K-PLUS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392036393
【氏名又は名称】カネモ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 菜菜子
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅己
(72)【発明者】
【氏名】赤松 慎二
(72)【発明者】
【氏名】守安 将人
(72)【発明者】
【氏名】原 将吾
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173510(JP,A)
【文献】特開2011-126724(JP,A)
【文献】特開2004-277991(JP,A)
【文献】特開2022-152429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 3/011
D21H 27/00
B65D 85/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが60μm以上160μm以下の不織布であり、
該不織布が20mm×150mmで切り出された第1試験片に対して、JIS-L1096-2010のB法に規定する剛軟度測定法により、張り出し長さ100mmの場合に測定した垂下長が70mm以下であ
り、
前記不織布を構成する繊維の直径が20μm以上であり、
前記繊維の構成が、芯鞘構造である、
ことを特徴とするガラス合紙。
【請求項2】
前記不織布が、295mm×208mmで切り出され、洗濯処理が行われていない第2試験片に対して、JIS-B9923-1997のタンブリング法を用いた計測における毎秒ごとの分離可能な粒子数について、0.3μm以上0.5μm未満の粒子数が10個以下、0.5μm以上1.0μm未満の粒子数が20個以下、かつ1.0μm以上5.0μm未満の粒子数が20個以下である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のガラス合紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス合紙に関する。さらに詳しくは、本発明は、不織布であるガラス合紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス合紙は、建築用ガラス板、自動車用ガラス板、液晶ディスプレイ用ガラス板など板状ガラスの搬送の際、板状ガラス同士の間に挟まれて使用される。これら板状ガラスのうち、特に液晶ディスプレイ等に使用されるフラットパネルディスプレイ用の板状ガラスでは、表面に微細な電気配線、電極、電気回路、隔壁などの素子が形成されるので、表面にわずかな傷または汚染があっても、断線等の不良の原因となる。そのため、傷または汚染を生じないように、ガラス合紙にもパーティクル等の発生に関して高い品質が求められている。加えて最近では、自動車用ガラス板で使用されるガラス合紙にもフラットパネルディスプレイ用の板状ガラスで用いられるガラス合紙と同等の品質が要求される場合がある。
【0003】
特許文献1、2では、上記の課題を解決するために、所定の構成を有する不織布であるガラス合紙が開示されている。
【0004】
また特許文献3では、パレット上でガラス板とガラス合紙とを縦姿勢で交互に重ね合わせた積層体が開示されている。フラットパネルディスプレイ用の板状ガラスは、フラットパネルディスプレイのサイズが大きくなることに伴って大きくなり、近年では積層体での搬送においても、ガラス板を縦方向にした状態で搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-2777991号公報
【文献】特開2009-173510号公報
【文献】特開2022-143331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに不織布は、その厚さが同じである場合、パルプを抄紙した紙と比較して、一般に剛軟度などで表される曲げ強さの数値が低い。
図3に、ガラス板52とガラス合紙53とを縦姿勢で交互に重ね合わせた積層体51の説明図を示す。また、ガラス合紙53の突出部の拡大模式図も併せて示す。ガラス板52が大きくなる、すなわちその面積が大きくなると、ガラス板52を水平姿勢で重ね合わせるよりも縦姿勢で重ね合わせたほうが、そのハンドリングが容易となる。ここでガラス板52を、搬送台50上に縦姿勢で重ね合わせる場合、ガラス板52の間に挟まれるガラス合紙53は、100mm程度積層体51の上方に突出する。積層体51からガラス板52を1枚ずつ取り上げる際に、ガラス合紙53も1枚ずつ取り上げることとなるが、この際にガラス合紙53の曲げ強さの数値が低いと、ガラス合紙53の突出部が、隣接するガラス合紙53の突出部と重なり合い、ガラス合紙53同士の間にガラス合紙53の把持部品を適切に送り込むことができなくなり、ガラス合紙53を積層体51から1枚ずつを取り去ることができない。このため曲げ強さの数値が低いガラス合紙53は、縦搬送では使うことが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、あらかじめ定められた曲げ強さを有する、不織布であるガラス合紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明のガラス合紙は、厚みが60μm以上160μm以下の不織布であり、該不織布が20mm×150mmで切り出された第1試験片に対して、JIS-L1096-2010のB法に規定する剛軟度測定法により、張り出し長さ100mmの場合に測定した垂下長が70mm以下であり、前記不織布を構成する繊維の直径が20μm以上であり、前記繊維の構成が、芯鞘構造であることを特徴とする。
第2発明のガラス合紙は、第1発明において、前記不織布が、295mm×208mmで切り出され、洗濯処理が行われていない第2試験片に対して、JIS-B9923-1997のタンブリング法を用いた計測における毎秒ごとの分離可能な粒子数について、0.3μm以上0.5μmよりも小さい粒子数が10個以下、0.5μm以上1.0μmよりも小さい粒子数が20個以下、かつ1.0μm以上5.0μmよりも小さい粒子数が20個以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、所定の厚み以下である場合の曲げ強さの値が70mm以下であることにより、ガラスが積層された場合の厚さを抑制しながら、あらかじめ定められた曲げ強さの不織布からなるガラス合紙を提供できる。これによりガラス合紙の積層時のパーティクル発生を抑制でき、ガラス合紙が用いられるガラスを清浄に維持することができるとともに、縦姿勢で積層された積層体のハンドリングが可能となる。
また、不織布を構成する繊維の径が20μm以上であることにより、不織布の厚さを薄い状態で維持しながら、曲げ強さをより高めることができる。
第2発明によれば、不織布の粒子数について、あらかじめ定められた個数以下であることにより、不織布がガラス合紙として利用された場合に、ガラスをより清浄に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】不織布の曲げ強さの測定方法の説明図である。
【
図2】不織布の厚みの測定時の測定箇所の説明図である。
【
図3】ガラス板とガラス合紙とを縦姿勢で交互に重ね合わせた積層体の説明図およびガラス合紙の突出部の拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのガラス合紙を例示するものであって、本発明はガラス合紙を以下のものに特定しない。なお、実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。また、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0012】
本発明に係るガラス合紙は、厚みが60μm以上160μm以下の不織布であり、該不織布が20mm×150mmで切り出された第1試験片20に対して、JIS-L1096-2010のB法に規定する剛軟度測定法により、張り出し長さ100mmの場合に測定した垂下長が70mm以下である。
【0013】
ガラス合紙の厚みが、所定の厚みの範囲にある場合の垂下長が70mm以下であることにより、ガラスが積層された場合の厚さを抑制しながら、あらかじめ定められた曲げ強さの不織布からなるガラス合紙を提供できる。これによりガラス合紙の積層時のパーティクル発生を抑制でき、ガラス合紙が用いられるガラスを清浄に維持することができるとともに、縦姿勢で積層された積層体のハンドリングが可能となる。
【0014】
また、不織布を構成する繊維の直径が20μm以上であることが好ましい。不織布を構成する繊維の径が20μm以上であることにより、不織布の厚さを薄い状態で維持しながら、曲げ強さをより高めることができる。
【0015】
また、前記不織布が、295mm×208mmで切り出され、洗濯処理が行われていない第2試験片に対して、JIS-B9923-1997のタンブリング法を用いた計測における毎秒ごとの分離可能な粒子数について、0.3μm以上0.5μmよりも小さい粒子数が10個以下、0.5μm以上1.0μmよりも小さい粒子数が20個以下、かつ1.0μm以上5.0μmよりも小さい粒子数が20個以下であることが好ましい。不織布の粒子数について、あらかじめ定められた個数以下であることにより、不織布がガラス合紙として利用された場合に、ガラスをより清浄に維持することができる。
【0016】
<実施形態>
(不織布の厚さ)
従前のガラス合紙の多くは、パルプを抄紙した紙であり、その厚みとして、60μm以上160μm以下が求められている。ガラス合紙の厚さが60μmよりも薄い場合、ガラスを積層した際に、ガラス同士が接触する可能性が高くなるからである。またガラス合紙の厚さが160μmよりも厚い場合、ガラスを数十枚積層した際に、その積層方向の高さが高くなりすぎるからである。そのため、ガラス合紙となる不織布に求められる厚さは、60μm以上160μm以下である。
【0017】
本実施形態に係る不織布の厚さは、JIS-L1913-2010に規定されている「厚さ」のA法の試験方法に準ずる。また、
図2には、不織布の厚みの測定時の測定箇所の説明図を示す。
図2は、150mm×100mmの長方形の試験片30を示している。例えば、試験片30では、図に示すような5か所を測定して、それぞれ厚みの測定値を得て、その測定値の平均値をその試験片30の厚み、すなわちその不織布の厚みとすることができる。これは、不織布の厚さは測定箇所によりばらつきを生じるからである。
【0018】
(不織布の曲げ強さ)
図1にはガラス合紙としての不織布の曲げ強さの測定方法の説明図である。
図1では試験機10の正面図が示されている。なおこの試験機10はJIS-L1096-2010のB法に規定する試験機の一例である。上記の不織布の厚さは、JIS-L1913-2010の「一般不織布試験方法」に準じて行われたのに対し、ガラス合紙としての不織布の曲げ強さは、JIS-L1096-2010「織物及び編物の記事試験方法」のB法に準じて行われる。ガラス合紙は、静電気を利用してガラス合紙とガラスとを密着させて挟み込まれることがある。この場合、ガラス合紙の材料としては、静電気を帯電させやすい材料が用いられる。そうすると、第1試験片20が容易に静電気を帯びることとなり、JIS-L1913-2010の「一般不織布試験方法」規定する方法では、曲げ強さを精度よく測定することができないためである。
【0019】
試験機10は、平面上のベース11上に、柱状のコラム12が立設されている構成である。このコラム12に対し、コラム12の側面に沿って上下に動作する移動台13が設けられている。この移動台13の上面が水平になるように、ベース11は調整される。移動台13は、コラム12に設けられているノブ15により、コラム12に対して固定される。このノブ15は、コラム12の移動台13が設けられている側面の対面に位置している。コラム12には、移動台13の、コラム12の頂上からの距離を示すスケール14が設けられている。
【0020】
試験機10の使用者は、測定対象の不織布を、20mm×150mmに切断し、測定対象である第1試験片20を準備する。第1試験片20の長手方向は、不織布全体の長手方向と一致、すなわち不織布全体の幅方向と垂直方向と一致していることが好ましい。
図3のように積層体50を形成する場合、積層体50の上方向から供給されることが多く、ガラス合紙53の突出部の上下方向と第1試験片20の長手方向が一致していることが好ましいからである。
【0021】
試験機10の使用者は、ノブ15を緩め、移動台13の上面をコラム12の上面と一致する位置まで動かし、この状態でノブ15を締め、移動台13を固定する。次に使用者は、第1試験片20をコラム12の上面に載置する。この際、使用者は、第1試験片20の張り出し長さl、すなわち移動台13側に張り出した長さが、例えば100mmとなるように、あらかじめ定められた長さだけ張出すように載置し、その後コラム12の端部にウェイト16を置いて第1試験片20を固定する。ウェイト16は、移動台13側に若干張り出すように置くのが好ましい。そして使用者は、ノブ15を緩め、移動台13を下方に移動させる。そして使用者は、第1試験片20の自由端側が、移動台13に対して離れる高さにおいて、ノブ15により移動台13をコラム12に固定し、垂下長bを測定する。
【0022】
本実施形態に係るガラス合紙では、不織布が20mm×150mmで切り出された第1試験片20に対して、JIS-L1096-2010のB法に規定する剛軟度測定法により、張り出し長さ100mmの場合に測定した垂下長が70mm以下である。垂下長が小さい場合、曲げ強さの値が大きいことを意味し、垂下長が大きい場合、曲げ強さの値が小さいことを意味する。垂下長は、0mmとなることが好ましいが、不織布が重さを有する限り0mmとなることはほぼない。しかし、垂下長が30mm以上であれば、ガラス合紙を把持するための把持部品を正確にガラス合紙の間に位置させることができ、好ましい。垂下長が70mmよりも大きいと、縦姿勢でガラスの積層体が形成されている場合、ガラス合紙同士が重なり合い、ガラス合紙を取り除くための把持部品がガラス合紙の間に送り込むことが難しくなるという問題がある。
【0023】
ガラス合紙が、所定の厚み以下である場合の垂下長が70mm以下であることにより、ガラスが積層された場合の厚さを抑制しながら、あらかじめ定められた曲げ強さの不織布からなるガラス合紙を提供できる。これによりガラス合紙の積層時のパーティクル発生を抑制でき、ガラス合紙が用いられるガラスを清浄に維持することができるとともに、縦姿勢で積層された積層体のハンドリングが可能となる。
【0024】
(不織布の材質)
本実施形態に係るガラス合紙である不織布の材質は、特に限定されない。例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ボリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などを適宜用いることができる。また、これらの繊維が複数用いられる場合もある。なおこの中でも本実施形態に係るガラス合紙は、ポリエステル繊維が堆積されていることが好ましい。堆積された連続繊維同士は、熱的に圧着されることが好ましい。連続繊維の構成成分としてポリエステルという熱可塑性合成繊維が用いられていることにより、ガラス合紙を安価でかつ良好に生産できる。またポリエステル繊維は、強度に優れているという利点、適度な親水性を有するため、空気中で帯電しにくく、空気中の埃などを誘引しにくいという利点がある。
【0025】
本実施形態に係るガラス合紙である不織布の材質に用いられているポリエステルは、いわゆる多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)との重縮合体であり、ポリアルコール(アルコール性の官能基-OHを複数有する化合物)と、多価カルボン酸(カルボン酸官能基-COOHを複数有する化合物)を脱水縮合させて得られるものであれば、特に限定するものではない。例えば、多価カルボン酸(酸成分)としてテレフタル酸、ポリアルコール(グリコール成分)としてエチレングリコール、ブタンジオールより得られるポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、酸成分が、テレフタル酸と他の酸成分を用いた共重体でもよい。また、グリコール成分が、エチレングリコールと他のグリコール成分を用いた共重合体であってもよい。他の酸成分としては、イソフタル酸、ジフェニルエーテル-4,4′-ジカルボン酸、ナフタリン-1,4-ジカルボン酸、ナフタリン-2,6-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。他のグリコール成分としては、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA 等の芳香族ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。ポリエステルとして、一種のポリエステルのみを用いてもよいが、ホモポリマー同士を混合したブレンド体またはホモポリマーとコポリマーとを混合したブレンド体を用いてもよい。
【0026】
本実施形態に係るガラス合紙である不織布において、好ましく用いられるポリエステルとしては、酸成分が芳香族のジカルボン酸、グリコール成分が直鎖のジオールからなるポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートが挙げられる。前記ポリエステルは、機械的強度に優れ、さらに耐熱性、柔軟性にも優れるためである。
【0027】
上記のポリエステルには、添加剤を必要に応じて適宜配合することができる。配合する添加剤としては、帯電防止剤、着色剤、柔軟性付与剤、老化防止剤、熱安定剤、耐候剤、金属不活性剤、光安定剤、防菌・防黴剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、結晶核剤、難燃剤、発泡剤、発泡助剤等が挙げられる。ただし、ポリエステルからブリードアウトするもの、および粉または埃が発生して脱落するような添加物は配合しない。
【0028】
本実施形態に係るガラス合紙である不織布を構成する繊維は、一種のポリエステルによって構成される単相繊維であっても、同種または異種の2種以上のポリエステルによって構成される複合繊維であっても問題ない。また、異なるポリエステルによって構成される単相繊維同士あるいは異なるポリエステルの組み合わせからなる複合繊維同士、あるいは単相繊維と複合繊維同士とが混繊してなるものであっても問題ない。
【0029】
(不織布の繊維の製造方法および繊維径)
本実施形態に係るガラス合紙である不織布で用いられる繊維は、連続繊維が好ましい。脱落繊維が発生しないためである。連続繊維が堆積してなる不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、フラッシュ紡糸不織布が挙げられる。単繊維強度が優れる点、シートの寸法安定性が良好な点、単糸繊度が小さすぎないことによりガラス板との接触面積を少なくできる点、製造時に溶媒を使用しない点等からスパンボンド不織布を用いることが好ましい。また、不織布を構成する繊維の直径が20μm以上であることが好ましい。例えばスパンボンド法により不織布に用いられる連続繊維を製造する場合、繊維を射出する金型の孔径を20μm以上にすることで、繊維の直径を、その金型の孔径と同じ20μm以上とすることができる。また、不織布の繊維の構成を、いわゆる芯鞘構造とすることも可能である。繊維の構成が芯鞘構造である場合、繊維の径を容易に太くすることができる。不織布を構成する繊維の直径の上限については特に限定はないが、製造後の取り扱いを考慮すると、不織布を構成する繊維の直径は40μm以下が好ましい。
【0030】
本実施形態に係るガラス合紙である不織布を構成する繊維の径が20μm以上であることにより、不織布の厚さを薄い状態で維持しながら、曲げ強さをより高めることができる。
【0031】
(不織布の発塵量)
本実施形態に係るガラス合紙である不織布は、295mm×208mmで切り出され、洗濯処理がおこなわれていない第2試験片が準備された場合、それに対してJIS-B9923-1997のタンブリング法を用いた計測における毎秒ごとの分離可能な粒子数について、0.3μm以上0.5μmよりも小さい粒子数が10個以下、0.5μm以上1.0μmよりも小さい粒子数が20個以下、かつ1.0μm以上5.0μmよりも小さい粒子数が20個以下であることが好ましい。JIS-L1913-2010の「一般不織布試験方法」では、不織布の発塵に関する測定方法は規定されていない。そのためJIS-B9923-1997「クリーンルーム用衣服の汚染粒子測定方法」に規定される計測を準用し、その計測法を用いて、その不織布の発塵量を特定する。
【0032】
不織布の粒子数について、あらかじめ定められた個数以下であることにより、不織布がガラス合紙として利用された場合に、ガラスをより清浄に維持することができる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明に係るガラス合紙の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(厚み、坪量、垂下長、および繊維太さに関する実施例)
(実施例1)
連続繊維の芯鞘構造のポリエチレンテレフタレートにより不織布を製造した。この不織布の厚みをJIS-L1913-2010に規定されている「厚さ」のA法の試験方法により測定した。測定の際には150mm×100mmの長方形の試験片30を用い、
図2に示すように5か所の厚みを測定し、その平均値を測定値とした。厚みの測定値は109.2μmであった。また不織布の坪量、すなわちこの不織布1平方メートル当たりの重量は20gであった。その数値を表1に示す。
【0035】
次に不織布を、長手方向が不織布全体の長手方向となるように20mm×150mmの短冊状に切り出した第1試験片20を準備した。この第1試験片20に対して、JIS-L1096-2010のB法に規定する剛軟度測定法により、張り出し長さ100mmの場合の垂下長を、それぞれの第1試験片20において裏表で2回測定し、それらの平均値を測定値とした。垂下長の測定値は、52.9mmであり、十分な曲げ強さを有していることが確認できた。その数値を表1に示す。
【0036】
最後にこの不織布の繊維太さを、デジタルマイクロスコープを用いて測定した。20mm×150mmの第1試験片20が5枚用意され、それぞれの第1試験片20について2回、倍率200倍で測定した。計10回の測定の平均値を繊維太さの測定値とした。繊維太さの測定値は25.28μmであり、十分な太さを有していることが確認できた。その数値を表1に示す。
【0037】
(実施例2)
実施例1と実施例2との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。実施例2での厚みの測定値は、120.8μmであった。坪量は25gであった。その数値を表1に示す。
【0038】
また実施例2において、垂下長の測定値は48.5mmであり十分な曲げ強さを有していることが確認できた。加えて繊維太さの測定値は29.70μmであり、十分な太さを有していることが確認できた。その数値を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
実施例1と比較例1との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例1での厚みの測定値は、168.9μmであった。坪量は35gであった。その数値を表1に示す。
【0040】
比較例1において、垂下長の測定値は73.8mmであり、曲げ強さが小さいことが確認できた。この場合の繊維太さの測定値は14.75μmであり、太さが十分でなかった。さらに比較例1では、厚みが基準値の160μm以上であり、このガラス合紙の場合、積層時に積層高さが規定以上に達することとなることが分かった。その数値を表1に示す。
【0041】
(比較例2)
実施例1と比較例2との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例2での厚みの測定値は、169.4μmであった。坪量は30gであった。その数値を表1に示す。
【0042】
比較例2において、垂下長の測定値は73.4mmであり、曲げ強さが小さいことが確認できた。この場合の繊維太さの測定値は18.41μmであり、太さが十分でなかった。さらに比較例2では、厚みが基準値の160μm以上であり、このガラス合紙の場合、積層時に積層高さが規定以上に達することとなることが分かった。その数値を表1に示す。
【0043】
(比較例3)
実施例1と比較例3との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例3での厚みの測定値は、181.0μmであった。坪量は35gであった。その数値を表1に示す。
【0044】
比較例3において、垂下長の測定値は69.1mmであり十分な曲げ強さを有していることが確認できた。しかし繊維太さの測定値は17.91μmであり、太さが十分でなかった。さらに比較例3では、厚みが基準値の160μm以上であり、このガラス合紙の場合、積層時に積層高さが規定以上に達することとなることが分かった。その数値を表1に示す。
【0045】
(比較例4)
実施例1と比較例4との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例4での厚みの測定値は、186.6μmであった。坪量は40gであった。その数値を表1に示す。
【0046】
比較例4において、垂下長の測定値は63.6mmであり十分な曲げ強さを有していることが確認できた。しかし繊維太さの測定値は13.53μmであり、太さが十分でなかった。さらに比較例4では、厚みが基準値の160μm以上であり、このガラス合紙の場合、積層時に積層高さが規定以上に達することとなることが分かった。その数値を表1に示す。
【0047】
(比較例5)
実施例1と比較例5との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例5での厚みの測定値は、192.5μmであった。坪量は45gであった。その数値を表1に示す。
【0048】
比較例5において、垂下長の測定値は61.0mmであり十分な曲げ強さを有していることが確認できた。しかし繊維太さの測定値は12.82μmであり、太さが十分でなかった。さらに比較例5では、厚みが基準値の160μm以上であり、このガラス合紙の場合、積層時に積層高さが規定以上に達することとなることが分かった。その数値を表1に示す。
【0049】
(比較例6)
実施例1と比較例6との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例6での厚みの測定値は、197.1μmであった。坪量は45gであった。その数値を表1に示す。
【0050】
比較例6において、垂下長の測定値は45.4mmであり十分な曲げ強さを有していることが確認できた。しかし繊維太さの測定値は16.37μmであり、太さが十分でなかった。さらに比較例6では、厚みが基準値の160μm以上であり、このガラス合紙の場合、積層時に積層高さが規定以上に達することとなることが分かった。その数値を表1に示す。
【0051】
(比較例7)
実施例1と比較例7との相違点は、製造後の厚みおよび繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例7での厚みの測定値は、117.7μmであった。坪量は20gであった。その数値を表1に示す。
【0052】
比較例7において、厚みが基準値の160μm以下であり、厚みに関しては十分に薄いことが分かった。しかし、垂下長の測定値は100.9mmであり、曲げ強さは小さいことが確認できた。そして繊維太さの測定値は14.34μmであり、太さが十分でなかった。その数値を表1に示す。
【0053】
(比較例8)
実施例1と比較例8との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例8での厚みの測定値は、129.8μmであった。坪量は25gであった。その数値を表1に示す。
【0054】
比較例8において、厚みが基準値の160μm以下であり、厚みに関しては十分に薄いことが分かった。しかし、垂下長の測定値は91.2mmであり、曲げ強さは小さいことが確認できた。そして繊維太さの測定値は15.60μmであり、太さが十分でなかった。その数値を表1に示す。
【0055】
(比較例9)
実施例1と比較例9との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。比較例9での厚みの測定値は、156.3μmであった。坪量は30gであった。その数値を表1に示す。
【0056】
比較例9において、厚みが基準値の160μm以下であり、厚みに関しては十分に薄いことが分かった。しかし、垂下長の測定値は86.2mmであり、曲げ強さは小さいことが確認できた。そして繊維太さの測定値は13.09μmであり、太さが十分でなかった。その数値を表1に示す。
【0057】
(参考例1)
実施例1と参考例1との相違点は、実施例1が不織布であるのに対し参考例1はパルプを抄紙した紙である点である。すなわち参考例1では繊維太さという概念は存在しない。加えて実施例1と参考例1との相違点は、製造後の厚みと坪量である。また、厚みの測定、垂下長の測定、繊維太さの測定の方法は実施例1と同じである。参考例1での厚みの測定値は、83.2μmであった。坪量は50gであった。その数値を表1に示す。
【0058】
参考例1において、垂下長の測定値は41.3mmであり十分な曲げ強さを有していることが確認できた。その数値を表1に示す。
【0059】
【0060】
実施例および比較例のそれぞれについてガラス合紙を作成し、ガラス合紙の積層した後の隣接するガラス合紙同士の姿勢について目視で確認を行った結果、実施例1、2のガラス合紙については、隣接するガラス合紙同士の間に十分な空間を有することができ、ガラス合紙の把持部品をガラス合紙の間に容易に送り込むことができた。これに対し、比較例1~6のガラス合紙については、ガラス合紙の厚みが大きく、積層体の厚みが大きくなった。また比較例7~9では、ガラス合紙同士がくっつく形となり、隣接するガラス合紙同士の間にガラス合紙の把持部品を送り込むことができない場合があった。
【0061】
(不織布の発塵量に関する実施例)
実施例1と比較例1については、不織布としての発塵量に関して第2試験片を作成して測定を行った。発塵量については、JIS-B9923-1997「クリーンルーム用衣服の汚染粒子測定方法」に規定されるタンブリング法を用いた計測により、その不織布の発塵量を特定した。
【0062】
(実施例1)
試料サイズとして、295mm×208mmの不織布である第2試験片が準備された。この試料は洗濯処理が行われていない。この第2試料を(株)赤土製作所製のタンブリング式発塵試験機CW-HDT-102により発塵量を特定した。試験装置のドラム回転速度は30RPM、流量は0.0102m3/s、吸引量は1立方フィート/mであり、使用されている粒子計数器は、Hach Ultra AnalyticsのMet One A2400Bである。測定結果は、毎秒ごとの分離可能な粒子数について、0.3μm以上0.5μm未満の粒子数が1.3、0.5μm以上1.0μm未満の粒子数が3.7、1.0μm以上5.0μm未満の粒子数が2.0であり、パルプを抄紙した紙における基準値である0.3μm以上0.5μm未満の粒子数が10、0.5μm以上1.0μm未満の粒子数が20、1.0μm以上5.0μm未満の粒子数が20よりも小さい値であることが確認できた。その数値を表2に示す。
【0063】
(比較例1)
実施例1と比較例1との相違点は、製造後の厚み、坪量および繊維太さである。また、繊維構造は、芯鞘構造ではなく単独の繊維構造である。その他の製造条件は実施例1と同じである。また、発塵量の測定の方法は実施例1と同じである。測定結果は、毎秒ごとの分離可能な粒子数について、0.3μm以上0.5μm未満の粒子数が13.8、0.5μm以上1.0μm未満の粒子数が22.3、1.0μm以上5.0μm未満の粒子数が28.5であり、パルプを抄紙した紙における基準値に対して、いずれもその基準値を超える値となっている。その数値を表2に示す。
【0064】
【符号の説明】
【0065】
10 試験機
11 ベース
12 コラム
13 移動台
14 スケール
15 ノブ
16 ウェイト
20 試験片
b 垂下長
l 張り出し長さ
【要約】
【課題】あらかじめ定められた曲げ強さを有する、不織布であるガラス合紙を提供する。
【解決手段】ガラス合紙は、厚みが60μm以上160μm以下の不織布である。この不織布が20mm×150mmで切り出された第1試験片に対して、JIS-L1096-2010のB法に規定する剛軟度測定法により、張り出し長さ100mmの場合に測定した垂下長が70mm以下である。このような構成により、ガラスが積層された場合の厚さを抑制しながら、あらかじめ定められた曲げ強さの不織布からなるガラス合紙を提供できる。これによりガラス合紙の積層時のパーティクル発生を抑制でき、ガラス合紙が用いられるガラスを清浄に維持することができるとともに、縦姿勢で積層された積層体のハンドリングが可能となる。
【選択図】なし