(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】医療用組立体の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/205 20210101AFI20241119BHJP
B29C 65/16 20060101ALI20241119BHJP
B29C 65/72 20060101ALI20241119BHJP
B29C 65/56 20060101ALI20241119BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20241119BHJP
A61M 60/232 20210101ALI20241119BHJP
A61M 60/90 20210101ALI20241119BHJP
【FI】
A61M60/205
B29C65/16
B29C65/72
B29C65/56
F04D29/62 A
A61M60/232
A61M60/90
(21)【出願番号】P 2020083993
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-02-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000200677
【氏名又は名称】泉工医科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【氏名又は名称】山本 晃司
(72)【発明者】
【氏名】河野 剛
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028322(JP,A)
【文献】特開2009-083406(JP,A)
【文献】特開2002-306591(JP,A)
【文献】特開平05-185521(JP,A)
【文献】特開平06-335979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363103(US,A1)
【文献】特開2013-084487(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10257774(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-99/00
A61F 1/00-17/00
F04D 29/62
B29C 65/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な熱可塑性樹脂から形成された第1部材及び第2部材を準備し、
前記第1部材の第1嵌合部分を加熱して膨張させ、
前記第1嵌合部分と、前記第2部材の第2嵌合部分とを嵌め合わせ、
前記第1嵌合部分を冷却し、
前記第1嵌合部分と前記第2嵌合部分との界面における、前記第2部材の底よりも低い高さの位置にレーザを照射することにより、前記第1嵌合部分と前記第2嵌合部分とを溶着させる、医療用組立体の製造方法。
【請求項2】
前記第2部材
には、
凸部と、前記凸部を囲む周辺凹部とが形成されており、
前記第1嵌合部分と前記第2嵌合部分との
前記界面に
おける、前記周辺凹部の前記底よりも低い高さの位置に前記レーザを照射することによって、前記第1嵌合部分と前記第2嵌合部分とを溶着させる、請求項1に記載の医療用組立体の製造方法。
【請求項3】
前記第1嵌合部分は、前記第1部材の開口部を画定する環状の薄肉部分であり、
前記第2嵌合部分は、嵌め合わされた後に前記薄肉部分と対向する環状の隆起部分であり、
加熱前の前記第1嵌合部分の内側寸法は、前記第2嵌合部分の外側寸法よりも小さく、
前記薄肉部分の外面側から、前記界面に前記レーザを照射する、請求項2に記載の医療用組立体の製造方法。
【請求項4】
前記第1部材と前記第2部材とによって画定される空間を避けるように、前記界面に前記レーザを照射する、請求項2又は3に記載の医療用組立体の製造方法。
【請求項5】
前記レーザは、近赤外領域のレーザである、請求項2から4のいずれか一項に記載の医療用組立体の製造方法。
【請求項6】
前記第1嵌合部分及び前記第2嵌合部分は、環状の形状を有しており、
加熱前の前記第1嵌合部分の内側寸法は、前記第2嵌合部分の外側寸法よりも小さい、請求項1又は2に記載の医療用組立体の製造方法。
【請求項7】
前記第1部材と前記第2部材とによって画定される空間内にインペラが収容されるように、前記第1嵌合部分と前記第2嵌合部分とを嵌め合わせる前に前記インペラを配置する、請求項1から6のいずれか一項に記載の医療用組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着を用いた医療用組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプハウジングと、ポンプハウジングの内部に設けられるインペラとを備えている血液ポンプが開示されている。ポンプハウジングは、可視光の波長域に対して透過性を有する樹脂を素材として形成された成形品である。また、インペラは、回転可能な状態でポンプハウジング内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療用組立体の一例である血液ポンプを製造する場合、血液ポンプのポンプハウジングを複数の部材を組み立てて製造する方法が考えられる。この場合、複数の部材を接合することによって、ポンプハウジングの内部に空間を形成して、当該空間にインペラを収容する。複数の部材を接合する方法としては、例えば接着剤によって接合する方法が考えられる。しかし、接着剤によって接合した場合には、接着剤が劣化する可能性があり安定的な接合が難しい。
【0005】
そこで、接着剤を用いずに複数の部材を接合する別の方法としては、例えば溶着によって接合する方法が考えられる。この場合、安定的に溶着するためには、複数の部材のそれぞれの溶着部分が密着した状態で溶着することが必要となる。そして、溶着部分を密着させる方法としては、例えば、圧入によって複数の部材を嵌め合わせる方法が考えられる。しかし、圧入するためには、各部材を押える冶具と、圧入装置とが必要となるため、比較的に高額な設備を用意する必要があり、生産コストが増加してしまう。さらに、複数の部材のそれぞれに、圧入時に押える部分を形成する必要がある。加えて、複雑な形状の部材は、圧入によって嵌め合わせることが難しい。そのため、各部材に設計上の制約が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る医療用組立体の製造方法においては、第1部材及び第2部材を準備し、前記第1部材の第1嵌合部分を加熱して膨張させ、前記第1嵌合部分と、前記第2部材の第2嵌合部分とを嵌め合わせ、前記第1嵌合部分を冷却し、前記第1嵌合部分と前記第2嵌合部分とを溶着させる。
【0007】
これにより、医療用組立体を構成する部材同士を安定的に接合できるとともに、嵌め合わせの対象となる各部材が設計上の制約を受けることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第1実施形態に係る血液ポンプの概略断面図。
【
図6】第2実施形態に係る血液ポンプの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。なお、本明細書においては、入口ポート側を上方向とした場合に、その反対側が下方向に対応する。
【0010】
[第1実施形態]
図1に示す医療用組立体の一例である血液ポンプ100は、体外循環回路に使用される単回使用の遠心ポンプであり、不図示の駆動ユニットによって駆動される。なお、医療用組立体は、複数の部材を組み立てて構成される物品である。医療用組立体の他の例としては、人工肺、熱交換器、動脈フィルタ、及び貯血槽のリザーバ等がある。以下では、医療用組立体として、血液ポンプ100を例に説明する。
【0011】
一例として、血液ポンプ100が使用される体外循環回路は、流量センサ、貯血槽及び人工肺等を含んでいる。そして、貯血槽の上流側には、脱血回路、吸引回路、陰圧吸引補助回路及び補液充填回路が接続される。また、人工肺の下流側には、動脈フィルタが設けられている送血回路が接続される。人工肺には、酸素交換用のガスを送り込むためのガス供給回路が接続される。さらに、人工肺と貯血槽とは、活栓が設けられている採血回路によって接続される。送血回路は、脱血回路と再循環回路を介して接続されるが、体外循環の実施中は再循環回路が閉鎖される。体外循環を開始する場合、貯血槽に血液を注入し、貯血槽に蓄えられた血液を血液ポンプ100に導く。
【0012】
血液ポンプ100は、ポンプハウジング10と、ポンプハウジング10の内部に収容されるインペラ50(
図5)とを備えている。ポンプハウジング10は、第1部材の一例であるトップケース20と、第2部材の一例であるベースケース30とを組み立てて構成されている。血液ポンプ100の入口ポート21は、トップケース20に形成されており、貯血槽の下流側と接続される。さらに、血液ポンプ100の出口ポート22は、トップケース20に形成されており、人工肺の上流側と接続される。
【0013】
トップケース20とベースケース30とは、透明な熱可塑性樹脂、例えばレーザ光の波長領域に対して透過性を有するポリカーボネートから形成されている。一例として、本実施形態において使用する透明な熱可塑性樹脂の近赤外領域のレーザ光の吸収率は、60パーセント以下である。また、他の例に係る熱可塑性樹脂の近赤外領域のレーザ光の吸収率は、40パーセント以下、又は30パーセント以下かつ20パーセント以上である。代替的に、外側に位置するトップケース20が透明な熱可塑性樹脂から形成され、内側に位置するベースケース30の少なくとも溶着部分が不透明な熱可塑性樹脂から形成されてもよい。
【0014】
図2に示すトップケース20には、ベースケース30に被されるように、略円筒状の内部空間が形成されている。そして、トップケース20は、第1嵌合部分の一例として、環状の薄肉部分24(
図4)を有している。当該薄肉部分24は、トップケース20の開口部23を画定する。また、ベースケース30は、下方に開口する凹部を構成するように形成された略円筒状の凸部32を有している。当該凸部32は、ベースケース30の内部空間に挿入される。また、凸部32の頂面の中央には中央凸部33が形成されている。さらに、凸部32の外周面には、動圧軸受を実現する略螺旋状の動圧溝34が複数形成されている。
【0015】
凸部32の周辺には、凸部32を囲むように略ドーナツ状の周辺凹部35が形成されている。さらに、ベースケース30は、第2嵌合部分の一例として、隆起部分36を有している。当該隆起部分36は、ベースケース30の外周縁部と周辺凹部35との間において、周辺凹部35から隆起している。また、隆起部分36は、嵌め合わされた後に、薄肉部分24と対向する。すなわち、隆起部分36の外面は、トップケース20とベースケース30とが嵌め合わされた状態で、トップケース20の薄肉部分24の内面と対向する。言い換えると、ベースケース30の半径方向における隆起部分36の外周面が、トップケース20の半径方向における薄肉部分24の内周面と対向する。
【0016】
図3は、入口ポート21側から見た血液ポンプ100の概略平面図である。
図3に示すように、ベースケース30は、入口ポート21側から見た場合に略円形の外形を有している。そして、入口ポート21は、ポンプハウジング10の頂面から突出するように形成されている。また、出口ポート22は、ポンプハウジング10の外周面から突出するように形成されている。
【0017】
図4は、血液ポンプ100の中央を通る
図3の一点鎖線に沿ったIV-IV断面を示す概略断面図である。なお、
図4においては、説明の便宜上、ポンプハウジング10の内部に収容されているインペラ50を破線で示している。また、
図5は、インペラ50の中心を通る断面を示す概略断面図である。なお、
図5に示す断面は、
図4に示す断面と対応しており、IV-IV断面はインペラ50の中心を通る断面である。
【0018】
図5に示すように、インペラ50の下部の中央には、下方に開口する中央凹部51が形成されている。中央凹部51の外側には、液密にシールされたドーナツ状の密閉空間52が形成されている。当該密閉空間52の内部には、複数の磁気素子53が周方向に所定の間隔をおいて収納されている。一例として、密閉空間52の内部には、複数の磁気素子53が収納されている。当該磁気素子53は、例えば永久磁石である。代替的に、磁気素子53を鉄片によって構成して、鉄片を引き付ける磁力を有する永久磁石又は電磁石を後述する駆動ユニットが有していてもよい。
【0019】
インペラ50は、血液を押し出す不図示の複数の羽根を有している。また、インペラ50の中央には、血液が流れる導入流路54が、インペラ50の回転軸CLに沿って形成されている。そして、複数の羽根は、インペラ50の回転軸CLに交差する方向に延びる一対の端板55A、55Bの間の空間に配置されており、インペラ50の半径方向に延びている。また、インペラ50の中央には、導入流路54に連通する貫通孔56が、回転軸CLと同軸的に形成されている。当該貫通孔56とは、導入流路54を介して入口ポート21と連通している。さらに、導入流路54は、端板55A、55Bの間の空間に形成された複数の流路57を介して、後述するポンプハウジング10の内部の流動路11(
図4)に連通している。また、インペラ50のインペラ頂面58には、円弧状に湾曲している複数の動圧溝が形成されている。さらに、インペラ50のインペラ底面59にも、円弧状に湾曲している複数の動圧溝が形成されている。また、中央凹部51の上面51Aには、円弧状に湾曲している複数の動圧溝が形成されている。これらの動圧溝は、一例として、インペラ50の周縁部からインペラ50の回転軸CLに向かって延在している。
【0020】
導入流路54は、インペラ50の回転軸CLと同軸的に形成されている。そして、入口ポート21から流入する血液は、導入流路54を介してインペラ50の端板55A、55B間の流路57に導かれる。また、複数の羽根は、各流路57を区画するように設けられている。そして、インペラ50が回転軸CLの回りに回転することにより、流路57に導かれた血液が遠心力でインペラ50の外周側に移送される。移送された血液は、ポンプハウジング10の内周面に沿って流動路11を流れ、出口ポート22から逐次送り出される。
【0021】
図4に示すように、ベースケース30は、ポンプハウジング10の底側に配置されている。そして、ベースケース30と、ベースケース30を覆うトップケース20とは液密に接合されている。また、ベースケース30とトップケース20との間には、インペラ50の周囲を囲むようにドーナツ状の流動路11が形成されている。そして、流動路11には、出口ポート22が連通している。また、ベースケース30の中央に形成されている凸部32の頂面から突出する中央凸部33は、略円錐状の形状を有している。
【0022】
入口ポート21は、インペラ50の回転軸CLと同軸的に延びるように形成されている。また、入口ポート21は、血液ポンプ100に対して上流側の流路の一部を形成する不図示のチューブと接続される。そして、入口ポート21の先端開口部は、血液の吸込口として機能する。出口ポート22は、インペラ50の回転方向に対して概ね接線方向に延びるように形成されている。また、出口ポート22は、血液ポンプ100に対して下流側の流路の一部を形成する不図示のチューブと接続される。そして、出口ポート22の先端開口部は、血液の吐出口として機能する。
【0023】
凸部32は、インペラ50の中央凹部51の内側に挿入される。当該凸部32には内部空間が形成されており、下方に開口する凹部を構成している。そして、凸部32の内部空間には、駆動ユニットの駆動部(不図示)が配置される。当該駆動ユニットは、磁気素子53を介してインペラ50を回転させる。一例として、駆動ユニットは、モータを有している。そして、モータに接続された出力軸に取り付けられて駆動部が、出力軸とともに回転する。また、駆動部には、インペラ50の磁気素子53と同数の駆動磁気素子が周方向に一定の間隔を空けて配置されている。当該駆動磁気素子は、磁気素子53と互いに引き付け合うようにその向きが調整されている。これにより、駆動部は、磁力によって磁気素子53を引き付ける。そして、モータが駆動して出力軸が回転すると、出力軸に固定された駆動部が回転する。そして、駆動部が回転すると、磁気素子53とともにインペラ50が回転する。
【0024】
インペラ50の回転軸CLは、モータの出力軸と同軸的に設定されている。つまり、インペラ50は、回転軸CLがモータの出力軸と同軸的に位置するように、回転軸CLを中心に回転可能な状態でポンプハウジング10内に配置されている。そして、インペラ50が回転すると、入口ポート21を介してポンプハウジング10の内部に血液が流れ込む。ポンプハウジング10に流れ込んだ血液は、インペラ50の導入流路54に流れ込む。そして、導入流路54に流れ込んだ血液は、回転する複数の羽根によって流動路11に流される。その後、流動路11に流れた血液は、流動路11から出口ポート22を介して血液ポンプ100の外部へと送られる。
【0025】
なお、トップケース20の薄肉部分24は、トップケース20のベースケース30側における端部において段差を形成するように、他の部分と比較して肉厚が薄くなっている。そして、ベースケース30とトップケース20とが嵌め合わされた状態では、薄肉部分24の内側寸法は、隆起部分36の外側寸法と略一致している。また、隆起部分36の肉厚は、トップケース20の半径方向における上記段差の幅と略一致している。さらに、インペラ50の回転軸CLに沿った方向において、隆起部分36の高さは、当該段差の高さと略一致している。これにより、ベースケース30とトップケース20とが嵌め合わされた状態で、ポンプハウジング10の内面側において、薄肉部分24と隆起部分36との境界に段差が形成されることが抑制される。
【0026】
[動圧軸受]
ポンプハウジング10の内面とインペラ50のインペラ頂面58との間には、インペラ50を回転可能に支持する動圧軸受DB1を形成するための比較的狭い隙間が形成されている。また、ポンプハウジング10の内面とインペラ50のインペラ底面59との間には、インペラ50を回転可能に支持する動圧軸受DB2を形成するための比較的狭い隙間が形成されている。そして、インペラ底面59には動圧溝が形成されており、インペラ50が回転することによって動圧が生じ、動圧軸受DB2からインペラ50が浮揚する。さらに、凸部32の外周面と、インペラ50の中央凹部51の内周面との間には、インペラ50を回転可能に支持する動圧軸受DB3を形成するための比較的狭い隙間が形成されている。加えて、中央凹部51の上面51Aと凸部32の凸部頂面との間には、インペラ50を回転可能に支持する動圧軸受DB4を形成するための比較的狭い隙間が形成されている。なお、インペラ50の貫通孔56によって、血液は、端板55A、55B間の流路57と動圧軸受DB2、DB3、DB4との間で移動できる。
【0027】
ポンプハウジング10内に血液が導入されると、導入された血液の一部は動圧軸受DB1、DB2、DB3、DB4に流れ込む。これにより、ポンプハウジング10に導入された血液がポンプハウジング10とインペラ50との隙間に流れ込む。血液が流れ込んだ状態でインペラ50が回転すると、動圧軸受DB1、DB2、DB3、DB4における血液の圧力が上昇する。これにより、動圧軸受DB1、DB2、DB3、DB4に軸支作用が生じてインペラ50が回転可能に支持される。すなわち、インペラ50の回転に伴なって発生する液体の圧力(動圧)の作用によって、インペラ50がポンプハウジング10に接触しない状態で回転する。動圧軸受DB1、DB2、DB4による軸支は、インペラ50の回転軸方向において作用する。つまり、動圧軸受DB1、DB2、DB4は、スラスト軸受の一種として機能する。また、動圧軸受DB3による軸支は、インペラ50の半径方向において作用する。つまり、動圧軸受DB3は、ラジアル軸受の一種として機能する。
【0028】
変形例として、動圧溝は、インペラ50のインペラ頂面58と対向するトップケース20の内面に形成されてもよい。また、動圧溝は、インペラ50のインペラ底面59と対向するベースケース30の内面、又は中央凹部51の上面51Aと対向する凸部32の凸部頂面に形成されてもよい。さらに、動圧溝は、インペラ50の中央凹部51の内周面に形成されてもよい。また、駆動ユニットとインペラ50との間の磁気結合によってスラスト軸受を実現してもよい。一例として、磁気素子53と駆動磁気素子との磁気結合を形成して、インペラ50を回転軸CLに沿った方向に拘束する。これにより、インペラ50をポンプハウジング10と非接触の状態で支持できる。または、インペラ50を浮上させる磁気素子を、インペラ50の下方に配置することによって、スラスト軸受を実現してもよい。
【0029】
[組立体の製造方法]
まず、トップケース20と、ベースケース30と、インペラ50とを準備する。トップケース20及びベースケース30は、透明な熱可塑性樹脂から形成されている。透明な熱可塑性樹脂は一例としてポリカーボネートであり、トップケース20及びベースケース30は、射出成形によって形成できる。代替的に、トップケース20及びベースケース30は、注型成形及び3Dプリント等の他の方法によって形成してもよい。なお、インペラ50は公知の方法で形成できる。
【0030】
具体的に、ベースケース30の射出成形は、以下のように行われる。まず、固定側金型と可動側金型との間に成形キャビティが画定されるように、可動側金型を移動して、射出成形用金型を閉鎖する。次に、成形キャビティに溶融された熱可塑性樹脂を射出する。続いて、一次冷却工程によって、熱可塑性樹脂を固化する。その後、射出成形用金型を開放するために、可動側金型を移動する。さらに、二次冷却工程によって、成形品であるベースケース30を冷却して収縮させる。その後、収縮したベースケース30を、ストリッパーによって可動側金型から突き出す。これにより、ベースケース30が離型される。また、トップケース20も、二次冷却工程を除いて同様に射出成形される。
【0031】
ベースケース30の射出成形においては、動圧溝34が所定の深さ、例えば45μmから55μm、望ましくは50μmの深さを有するように、ベースケース30を形成する。動圧溝34を45μmよりも深く形成することによって、インペラ50の中央凹部51の内周面と、ベースケース30の凸部32の外周面との間の圧力が所望の値よりも低下することを抑制できる。これにより、回転中のインペラ50が偏心することを抑制して、ベースケース30とインペラ50との接触を防止できる。また、動圧溝34を55μmよりも浅く形成することによって、溶血を抑制できる。
【0032】
トップケース20とベースケース30とによって画定される空間内にインペラ50が収容されるように、トップケース20の薄肉部分24とベースケース30の隆起部分36とを嵌め合わせる前に、インペラ50を配置する。具体的に、トップケース20、ベースケース30、及びインペラ50を準備した後に、インペラ50の中央凹部51にベースケース30の凸部32を挿入するように、ベースケース30上にインペラ50を載置する。なお、インペラ50の配置は、薄肉部分24の加熱工程の後又は加熱工程と同時であってもよい。例えば、加熱して膨張した状態のトップケース20の内部にインペラ50を配置してもよい。この場合、インペラ50の中央凹部51にベースケース30の凸部32を挿入するように、保持されたトップケース20にベースケース30が嵌め合わされる。
【0033】
次に、加熱工程において、トップケース20の薄肉部分24を加熱して膨張させる。加熱前においては、薄肉部分24の内側寸法と、隆起部分36の外側寸法とを比較すると、薄肉部分24の内側寸法が隆起部分36の外側寸法よりも小さい。すなわち、トップケース20の半径方向における薄肉部分24の内径をIDとし、ベースケース30の半径方向における隆起部分36の外径をODとした場合に、OD>IDの関係が成り立つ。そのため、加熱工程において、薄肉部分24を加熱して膨張させることによって、薄肉部分24の内側寸法を隆起部分36の外側寸法よりも大きくする。なお、隆起部分36の外側寸法は、加熱して膨張する薄肉部分24の内側寸法よりも小さくなるように設定されている。言い換えると、薄肉部分24の内側寸法は、加熱して膨張する大きさを加えた場合に、隆起部分36の外側寸法よりも大きくなるように設定されている。
【0034】
加熱工程においては、具体的に、薄肉部分24を加熱して膨張させる。そのために、トップケース20を高温槽に投入して、40℃から60℃の空気雰囲気下で15分から30分間加熱する。その後、トップケース20を高温槽から取り出して、常温の空気雰囲気下で、保持された状態のベースケース30にトップケース20を嵌め合わせる。代替的に、保持された状態のトップケース20にベースケース30を嵌め合わせてもよい。また、加熱装置(例えばヒータ)を薄肉部分24に接触させること、又は高温流体(例えば加熱した気体)を薄肉部分24に吹き付けることによって、薄肉部分24を加熱してもよい。
【0035】
薄肉部分24及び隆起部分36を嵌め合わせる際には、薄肉部分24の下端をベースケース30に突き当てる。具合的には、薄肉部分24の下端を、隆起部分36とベースケース30の周縁との間の平面に突き当てる。これにより、薄肉部分24を高さ方向において位置決めできる。そのため、薄肉部分24と隆起部分36の溶着位置がずれてしまうことを抑制できる。これに対して、圧入によって嵌め合わせる場合は、薄肉部分24と隆起部分36とが当接した状態で、トップケース20及びベースケース30を嵌め合わせる。そのため、嵌め合わせ時に抵抗が生じて、トップケース20が傾いた状態で固定される可能性がある。さらに、圧入時に薄肉部分24と隆起部分36に変形又は損傷が生じる可能性がある。
【0036】
続いて、冷却工程において、薄肉部分24を冷却する。そのために、トップケース20及びベースケース30を常温の空気雰囲気下で10秒から20秒間冷却する。これにより、薄肉部分24が収縮して、薄肉部分24と隆起部分36とが固定される。さらに、収縮した薄肉部分24が隆起部分36を内方に加圧するため、薄肉部分24と隆起部分36とが密着する。代替的に、低温流体(例えば冷却した気体)を薄肉部分24に吹き付けることによって、薄肉部分24を冷却してもよい。
【0037】
次に、溶着工程において、薄肉部分24と隆起部分36とを溶着させる。このとき、薄肉部分24と隆起部分36とが密着していないと、発熱した熱可塑性樹脂の熱の伝導効率が低下して、接合の強度が低下してしまう。この点、上述のように嵌め合わされた組立体によれば、収縮した薄肉部分24が隆起部分36を内方に加圧する。そのため、薄肉部分24と隆起部分36とが密着して、接合の強度の低下を抑制できる。また、溶着による接合は、熱変質する可能性又は人体へ影響する可能性がある接着剤による接合と比較すると、医療用組立体に適している。
【0038】
溶着工程においては、薄肉部分24と隆起部分36との界面にレーザを照射することによって、薄肉部分24と隆起部分36とを溶着させる。代替的に、レーザ溶着以外の方法、例えば超音波溶着又は高周波溶着によってトップケース20とベースケース30とを溶着してもよい。この場合には、トップケース20及びベースケース30の少なくとも一方は、不透明な熱可塑性樹脂から形成されてもよい。ただし、医療用組立体においては、透明樹脂を用いることによって組立体の内部を視認することができる利点がある。
【0039】
レーザ溶着する場合、トップケース20とベースケース30とは、レーザ光を透過する同一の熱可塑性樹脂によって形成される。代替的に、トップケース20とベースケース30とのレーザ光の透過率は、異なっていてもよい。そして、インペラ50の回転軸CLと直交する
図4の矢印Dに示す方向において、薄肉部分24の外面側から、薄肉部分24と隆起部分36との界面に焦点を設定して、レーザを照射する。例えば、レーザは、近赤外領域のレーザであり、一例として800nmから2500nmの波長領域のレーザであり、望ましくは中心波長1940nmのレーザである。代替的に、レーザは、回転軸CLと交差する斜め方向から、薄肉部分24と隆起部分36との界面に焦点を設定して照射してもよい。
【0040】
レーザが照射されると、トップケース20とベースケース30との界面において、薄肉部分24の内周面及び隆起部分36の外周面の少なくとも一方に発熱が生じて熱可塑性樹脂が溶け出す。その後、薄肉部分24の内周面及び隆起部分36の外周面の他方に熱が伝導して、他方の熱可塑性樹脂も溶け出す。そして、溶け出した熱可塑性樹脂は、照射を停止して発熱が収まると再凝固する。これによって、薄肉部分24の内周面と隆起部分36の外周面とが溶着され、薄肉部分24と隆起部分36とが液密に接合される。代替的に、レーザは、隆起部分36の頂面と、トップケース20における当該頂面と対向する面との界面に照射してもよい。
【0041】
そして、レーザを照射した状態において、回転軸CLを中心に等速度で血液ポンプ100を回転させる。これにより、血液ポンプ100の外周をレーザによって走査して、血液ポンプ100の全周を溶着できる。代替的に、レーザの出射部が血液ポンプ100の周りを回って、血液ポンプ100の全周を溶着してもよい。なお、レーザは、断続的に照射してもよく、連続的に照射してもよい。ただし、連続的に照射することによって、溶着部分の形状にひずみが生じることを抑制できる。これにより、トップケース20とベースケース30とが、より確実に液密に接合される。
【0042】
さらに、レーザを照射する場合、トップケース20とベースケース30とによって画定される空間を避けるように、薄肉部分24と隆起部分36との界面にレーザを照射する。すなわち、インペラ50が収容される空間を避けるように、レーザを照射してもよい。具体的に、
図4の例では、周辺凹部35の底よりも低い高さにおいて、レーザを照射している。これにより、インペラ50に、トップケース20及びベースケース30を透過したレーザが照射されることを防止できる。ただし、レーザの照射が問題とならない場合には、トップケース20とベースケース30とによって画定される空間にレーザが照射されてもよい。
【0043】
以上説明した第1実施形態に係る医療用組立体の製造方法によれば、医療用組立体を構成する部材同士を安定的に接合できる。また、圧入する必要がないため、嵌め合わせの対象となる各部材が設計上の制約を受けることを抑制できる。すなわち、嵌め合わせる両部材の一方を加熱し膨張させ、膨張した状態で両部材を嵌め合わせて冷却している。これにより、収縮した一方の部材が他方の部材を加圧して、容易に両部材の密着状態を得ることができる。そのため、圧入によらず安定的に両部材を溶着できるとともに、溶着部分によってシール性を付与することもできる。さらに、圧入するためには圧入装置が必要となるが、部材を加熱するのみで嵌め合わせることができるため、圧入装置を用いる必要がない。
【0044】
[第2実施形態]
図6を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、薄肉部分224と隆起部分236の形成位置が、第1実施形態と異なる。第2実施形態においても、第1嵌合部分の一例である隆起部分236と、第2嵌合部分の一例である薄肉部分224とは、いずれも環状の形状を有している。ただし、加熱前において、隆起部分236の内側寸法が、薄肉部分224の外側寸法よりも小さい点で、第1実施形態と異なる。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0045】
図6は、血液ポンプ200の中央を通る断面を示す概略断面図である。なお、
図6においては、説明の便宜上、ポンプハウジング210の内部に収容されているインペラ50を破線で示している。
図6において、第1部材の一例であるベースケース230と、第2部材の一例であるトップケース220とは液密に接合されている。当該トップケース220には、ベースケース230に被されるように略円筒状の内部空間が形成されている。そして、トップケース220は、第2嵌合部分の一例として、環状の薄肉部分224を有している。また、ベースケース230は、下方に開口する凹部を構成するように形成された略円筒状の凸部232を有している。当該凸部232は、ベースケース230の内部空間に挿入される。
【0046】
また、凸部232の周辺には、凸部232を囲むように略ドーナツ状の周辺凹部235が形成されている。さらに、ベースケース230は、第1嵌合部分の一例として、隆起部分236を有している。当該隆起部分236は、ベースケース230の外周縁部と周辺凹部235との間において、外周縁部から隆起している。また、隆起部分236の内面は、トップケース220とベースケース230とが嵌め合わされた状態で、トップケース220の薄肉部分224の外面と対向する。すなわち、ベースケース230の半径方向における隆起部分236の内周面は、トップケース220の半径方向における薄肉部分224の外周面と対向する。
【0047】
ベースケース230とトップケース220との間には、インペラ50の周囲を囲むようにドーナツ状の流動路11が形成されている。当該流動路11には、出口ポート222が連通している。また、入口ポート221は、インペラ50の回転軸CLと同軸的に延びるように形成されている。また、出口ポート222は、インペラ50の回転方向に対して概ね接線方向に延びるように形成されている。また、ベースケース230の凸部232は、インペラ50の中央凹部51の内側に挿入される。当該凸部232には内部空間が形成されており、下方に開口する凹部を構成している。また、ベースケース230の凸部232の頂面から突出する中央凸部233は、略円錐状の形状を有している。
【0048】
凸部232の内部空間には、駆動ユニットの駆動部(不図示)が配置される。インペラ50が回転すると、入口ポート221を介してポンプハウジング210の内部に血液が流れ込む。ポンプハウジング210に流れ込んだ血液は、インペラ50の導入流路54に流れ込む。そして、導入流路54に流れ込んだ血液は、回転する複数の羽根によって流動路11に流される。その後、流動路11に流れた血液は、流動路11から出口ポート222を介して血液ポンプ200の外部へと送られる。
【0049】
ポンプハウジング210の内面とインペラ50のインペラ頂面58との間には、インペラ50を回転可能に支持する動圧軸受DB1を形成するための比較的狭い隙間が形成されている。また、ポンプハウジング210の内面とインペラ50のインペラ底面59との間には、インペラ50を回転可能に支持する動圧軸受DB2を形成するための比較的狭い隙間が形成されている。さらに、凸部232の外周面と、インペラ50の中央凹部51の内周面との間には、インペラ50を回転可能に支持する動圧軸受DB3を形成するための比較的狭い隙間が形成されている。加えて、中央凹部51の上面51Aと凸部232の凸部頂面との間には、インペラ50を回転可能に支持する動圧軸受DB4を形成するための比較的狭い隙間が形成されている。
【0050】
ポンプハウジング210に血液が導入されると、導入された血液の一部は動圧軸受DB1、DB2、DB3、DB4に流れ込む。これにより、ポンプハウジング210に導入された血液がポンプハウジング210とインペラ50との隙間に流れ込む。血液が流れ込んだ状態でインペラ50が回転すると、動圧軸受DB1、DB2、DB3、DB4における血液の圧力が上昇する。これにより、動圧軸受DB1、DB2、DB3、DB4に軸支作用が生じてインペラ50が回転可能に支持される。
【0051】
第2実施形態においては、加熱前において、薄肉部分224の外側寸法と、隆起部分236の内側寸法とを比較すると、隆起部分236の内側寸法が薄肉部分224の外側寸法よりも小さい。すなわち、トップケース220の半径方向における薄肉部分224の外径をODとし、ベースケース230の半径方向における隆起部分236の内径をIDとした場合に、OD>IDの関係が成り立つ。そのため、加熱工程において、ベースケース230の隆起部分236を加熱して膨張させる。なお、薄肉部分224の外側寸法は、加熱して膨張させた隆起部分236の内側寸法よりも小さくなるように設定されている。言い換えると、隆起部分236の内側寸法は、加熱して膨張する大きさを加えた場合に、薄肉部分224の外側寸法よりも大きくなるように設定されている。さらに、隆起部分236と、薄肉部分224との間には、ベースケース230が膨張した際にサイズが拡大する部分を吸収する隙間が設けられている。すなわち、隆起部分236における薄肉部分224と対向する面と、薄肉部分224における隆起部分236と対向する面との間には、隙間が設けられている。
【0052】
[組立体の製造方法]
まず、トップケース220と、ベースケース230と、インペラ50とを準備する。トップケース220及びベースケース230は、透明な熱可塑性樹脂から形成されている。透明な熱可塑性樹脂は一例としてポリカーボネートであり、トップケース220及びベースケース230は、射出成形によって形成できる。
【0053】
そして、トップケース220とベースケース230とによって画定される空間内にインペラ50が収容されるように、トップケース220の薄肉部分224とベースケース230の隆起部分236とを嵌め合わせる前に、インペラ50を配置する。具体的に、トップケース220、ベースケース230、及びインペラ50を準備した後に、トップケース220を逆さまの姿勢にして、入口ポート221が下方を向いた状態で、トップケース220の内部にインペラ50を挿入する。
【0054】
次に、加熱工程において、ベースケース230の隆起部分236を加熱して膨張させる。その後、常温の空気雰囲気下で、保持された状態のトップケース220にベースケース230を嵌め合わせる。代替的に、保持された状態のベースケース230にトップケース220を嵌め合わせてもよい。また、加熱装置を隆起部分236に接触させること、又は高温流体を隆起部分236に吹き付けることによって、隆起部分236を加熱してもよい。
【0055】
トップケース220及びベースケース230を嵌め合わせる際には、隆起部分236の頂面をトップケース220に突き当てる。具合的には、隆起部分236の頂面を、薄肉部分224とトップケース220の周縁との間の平面に突き当てる。これにより、隆起部分236を高さ方向において位置決めできる。そのため、溶着位置がずれてしまうことを抑制できる。
【0056】
続いて、冷却工程において、隆起部分236を冷却する。そのために、トップケース220及びベースケース230を常温の空気雰囲気下で冷却する。これにより、隆起部分236が収縮して、薄肉部分224と隆起部分236とが固定される。さらに、収縮した隆起部分236が薄肉部分224を内方に加圧するため、薄肉部分224と隆起部分236とが密着する。代替的に、低温流体を隆起部分236に吹き付けることによって、隆起部分236を冷却してもよい。なお、インペラ50の配置は、隆起部分236の加熱工程の後又は加熱工程と同時であってもよい。例えば、加熱して膨張した状態のベースケース230の上にインペラ50を載置してもよい。この場合、インペラ50の中央凹部51にベースケース230の凸部232を挿入する。そして、保持されたベースケース230にトップケース220が嵌め合わされる。
【0057】
次に、溶着工程において、薄肉部分224と隆起部分236とを溶着させる。このとき、薄肉部分224と隆起部分236とが密着していないと、発熱した熱可塑性樹脂の熱の伝導効率が低下して、接合の強度が低下してしまう。この点、上述のように嵌め合わされた組立体によれば、収縮した隆起部分236が薄肉部分224を内方に加圧する。そのため、薄肉部分224と隆起部分236とが密着して、接合の強度の低下を抑制できる。溶着工程においては、薄肉部分224と隆起部分236との界面にレーザを照射することによって、薄肉部分224と隆起部分236とをレーザ溶着する。
【0058】
レーザ溶着する場合、トップケース220とベースケース230とは、レーザ光を透過する同一の熱可塑性樹脂によって形成される。そして、インペラ50の回転軸CLと直交する
図6の矢印Dに示す方向において、隆起部分236の外面側から、薄肉部分224と隆起部分236との界面に焦点を設定して、レーザを照射する。レーザが照射されると、トップケース220とベースケース230との界面において、隆起部分236の内周面及び薄肉部分224の外周面の一方に発熱が生じて熱可塑性樹脂が溶け出す。その後、隆起部分236の内周面及び薄肉部分224の外周面の他方の熱可塑性樹脂も溶け出す。そして、溶け出した熱可塑性樹脂は、照射を停止して発熱が収まると再凝固する。これによって、薄肉部分224の外周面と隆起部分236の内周面とが溶着され、薄肉部分224と隆起部分236とが液密に接合される。
【0059】
そして、レーザを照射した状態において、回転軸CLを中心に等速度で血液ポンプ200を回転させる。これにより、血液ポンプ200の外周をレーザによって走査して、血液ポンプ200の全周を溶着できる。さらに、レーザが照射する場合、トップケース220とベースケース230とによって画定される空間を避けるように、薄肉部分224と隆起部分236との界面にレーザを照射する。具体的に、
図6の例では、周辺凹部235の底よりも低い高さにおいて、レーザを照射している。これにより、インペラ50に、トップケース220及びベースケース230を透過したレーザが照射されることを防止できる。ただし、レーザの照射が問題とならない場合には、トップケース20とベースケース30とによって画定される空間にレーザが照射されてもよい。
【0060】
以上説明した第2実施形態に係る医療用組立体の製造方法によっても、医療用組立体を構成する部材同士を安定的に接合できる。また、圧入する必要がないため、嵌め合わせの対象となる各部材が設計上の制約を受けることを抑制できる。すなわち、嵌め合わせる両部材の一方を加熱し膨張させ、膨張した状態で両部材を嵌め合わせて冷却している。これにより、収縮した一方の部材が他方の部材を加圧して、容易に両部材の密着状態を得ることができる。そのため、圧入によらず安定的に両部材を溶着できるとともに、溶着部分によってシール性を付与することもできる。さらに、圧入するためには圧入装置が必要となるが、部材を加熱するのみで嵌め合わせることができるため、圧入装置を用いる必要がない。
【0061】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0062】
例えば、トップケース20、220は、薄肉部分24、224を有していなくともよい。具体的に、トップケース20、220において隆起部分36、236と対向する部分の肉厚は、トップケース20、220の他の部分と肉厚が同一か又はそれよりも厚くともよい。ただし、薄肉部分24、224を設けて、当該薄肉部分24、224を透過したレーザによって溶着することによって、樹脂に吸収されるレーザ光の割合を低減できる。
【符号の説明】
【0063】
20 :トップケース(第1部材)
23 :開口部
24 :薄肉部分(第1嵌合部分)
30 :ベースケース(第2部材)
36 :隆起部分(第2嵌合部分)
50 :インペラ
100 :血液ポンプ(医療用組立体)
200 :血液ポンプ(医療用組立体)
220 :トップケース(第2部材)
224 :薄肉部分(第2嵌合部分)
230 :ベースケース(第1部材)
236 :隆起部分(第1嵌合部分)