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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】整髪料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20241119BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241119BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/92
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/891
A61K8/81
A61K8/73
A61Q5/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020127435
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024700
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 幸一郎
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058771(JP,A)
【文献】Asubisou, Japan,Perfection Treatment Bonne! Femme Emulsion,Mintel GNPD [online],2017年05月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4802351, Mintel GNPD [online], 全文,全図
【文献】DHC, Japan,Hair Design Wax,Mintel GNPD [online],2009年09月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#1189591, [検索日:2024.05.10], 全文,全図
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジミリストイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジステアロイルグルタミン酸リシンナトリウム、およびジリノレイルグルタミン酸リシンナトリウムから選択される少なくとも1種のジアシルグルタミン酸リシン塩(A)を0.02~0.3質量%と、
キャンデリラロウ(B)を1~7質量%と、
液状油(C)を2~10質量%と、
被膜形成性樹脂(D)を4~15質量%と、
水溶性増粘剤(E)と、
水(F)とを含
前記成分(A)が、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムであり、
前記液状油(C)が、炭化水素油、植物油、エステル油、およびシリコーンオイルから選択される少なくとも1種であり、
前記水溶性増粘剤(E)が、カルボマー、ポリアクリルアミド、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキルコポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー、アクリレーツ/ネオデカン酸ビニル)クロスポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される少なくとも1種である、整髪料。
【請求項2】
前記液状油(C)が、ミネラルオイル、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、植物性スクワラン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、ホホバ油、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、ヒマシ油、コハク酸ジエチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、オクタン酸セチル、イソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸アルキル(C12-C15)、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、およびアルコキシ変性ポリシロキサンから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の整髪料。
【請求項3】
前記被膜形成性樹脂(D)が、カチオン性の被膜形成性樹脂、アニオン性の被膜形成性樹脂、およびノニオン性の被膜形成性樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の整髪料。
【請求項4】
前記液状油(C)が、ミネラルオイル、コハク酸ジエチルヘキシル、ホホバ油、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、および水添ポリイソブテンから選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の整髪料。
【請求項5】
前記被膜形成性樹脂(D)が、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-69、および(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMPから選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の整髪料。
【請求項6】
前記水溶性増粘剤(E)が、カルボマー、ポリアクリルアミド、およびヒドロキシエチルセルロースから選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれか一項に記載の整髪料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、整髪料として、ジェル、ヘアクリーム、ヘアワックス等が用いられてきた。
ジェルは、被膜を形成する高分子化合物が配合されているため、毛髪を固めてヘアスタイルを維持することに優れている。一方、ジェルでは立体的な毛束を作りにくいという問題があった。
【0003】
ヘアクリームおよびヘアワックスは、乳化されたロウ類や液状油等が配合されているため、セットしやすく、立体的な毛束をつくることに優れている。一方、ヘアクリームおよびヘアワックスでは、長時間ヘアスタイルを維持できないことや、整髪後もべたつきが残るという問題があった。
【0004】
ジェルのように毛髪を固めてヘアスタイルを維持することに優れ、かつ、ヘアクリームおよびヘアワックスのように立体的な毛束をつくりやすい整髪剤が求められている。例えば、特許文献1では、軟毛や細毛でもセットができるスタイリング化粧料が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-087096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、ヘアスタイルの持続性が満足な品質ではなかった。ヘアスタイルの持続性が弱くなる理由の一つとして、ロウ類を乳化するために使用される界面活性剤が、被膜を形成する高分子化合物の可塑剤として働いてしまうことが考えられた。すなわち、しっかりと毛髪を固める高分子化合物の作用を、界面活性剤が阻害することが考えられた。そのため、ヘアスタイルの持続性があり、しっかりと毛髪が固まる仕上がりでありながら、ヘアクリームおよびヘアワックスのような、セットのしやすさを併せ持つ整髪剤は得られていなかった。
【0007】
このようなことから、本発明は、セット時に立体的な毛束が作りやすく、セット後はべたつかず、毛髪が固まる仕上がりで、ヘアスタイルの持続性に優れる整髪料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する整髪料により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[4]である。
【0009】
[1]ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジミリストイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジステアロイルグルタミン酸リシンナトリウム、およびジリノレイルグルタミン酸リシンナトリウムから選択される少なくとも1種のジアシルグルタミン酸リシン塩(A)を0.02~0.3質量%と、キャンデリラロウ(B)を1~7質量%と、液状油(C)を2~10質量%と、被膜形成性樹脂(D)を4~15質量%と、水溶性増粘剤(E)と、水(F)とを含む、整髪料。
【0010】
[2]前記液状油(C)が、ミネラルオイル、コハク酸ジエチルヘキシル、ホホバ油、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、および水添ポリイソブテンから選択される少なくとも1種である、[1]に記載の整髪料。
【0011】
[3]前記被膜形成性樹脂(D)が、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-69、および(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMPから選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の整髪料。
【0012】
[4]前記水溶性増粘剤(E)が、カルボマー、ポリアクリルアミド、およびヒドロキシエチルセルロースから選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の整髪料。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、セット時に立体的な毛束が作りやすく、セット後はべたつかず、毛髪が固まる仕上がりで、ヘアスタイルの持続性に優れる整髪料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の整髪料について具体的に説明する。
<整髪料>
本発明の整髪料は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジミリストイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジステアロイルグルタミン酸リシンナトリウム、およびジリノレイルグルタミン酸リシンナトリウムから選択される少なくとも1種のジアシルグルタミン酸リシン塩(A)(以下、単に「成分(A)」ともいう。)を0.02~0.3質量%と、キャンデリラロウ(B)を1~7質量%と、液状油(C)を2~10質量%と、被膜形成性樹脂(D)を4~15質量%と、水溶性増粘剤(E)と、水(F)とを含む。
【0015】
本発明の整髪料は、ワックスジェルであることが好ましい。
なお、本発明における各成分の含有量は、整髪料全体を100質量%とした場合の含有量を示している。
【0016】
<成分(A)>
本発明の整髪料は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジミリストイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジステアロイルグルタミン酸リシンナトリウム、およびジリノレイルグルタミン酸リシンナトリウムから選択される少なくとも1種のジアシルグルタミン酸リシン塩(A)を0.02~0.3質量%、好ましくは0.03~0.15質量%、より好ましくは0.04~0.1質量%含む。
【0017】
本発明の整髪料は、成分(A)を上記の量で含むことによって、毛髪へのなじみやすさ、および毛束の作りやすさを付与することができる。
成分(A)が、前記下限量より少ないと、充分に乳化せず、毛髪になじみづらくなることがあり、前記上限量より多いと、セット力が低下し、ヘアスタイルの持続性が悪くなる傾向がある。
【0018】
成分(A)は、ごく少量で脂溶性成分と水溶性成分を乳化できるため、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムであることが好ましい。
本発明者は、本発明の整髪料が成分(A)を上述の量で含むことで、立体的な毛束の作りやすさとヘアスタイルの持続性とを両立できると考えている。
【0019】
<キャンデリラロウ(B)>
本発明の整髪料は、キャンデリラロウ(B)を1~7質量%、好ましくは2~6質量%、より好ましくは3~5質量%含む。
【0020】
本発明の整髪料は、キャンデリラロウ(B)を上記の量で含むことによって、毛髪を立ち上げて保持することができる高いセット力が得られ、毛束が作りやすくなる。
キャンデリラロウ(B)が前記下限量より少ないと、毛束が作りにくくなることがあり、前記上限量より多いと、毛髪になじみづらくなり、毛束が作りにくくなることがある。
【0021】
<液状油(C)>
本発明の整髪料は、液状油(C)を2~10質量%、好ましくは3~9質量%、より好ましくは4~8質量%含む。
【0022】
本発明の整髪料は、液状油(C)を上記の量で含むことによって、毛髪になじみやすく、毛束の作りやすさを付与することができる。液状油(C)が前記下限量より少ないと、毛髪になじみづらく、毛束を作りにくくなることがある。前記上限量より多いと、しっかりと毛髪が固まらず、ヘアスタイルの持続性が悪くなる傾向がある。
【0023】
液状油(C)として、具体的には、25℃で液体の油が挙げられる。
液状油(C)としては、液状油であれば特に制限なく用いることができる。
液状油(C)は、例えば、炭化水素類、植物油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーンオイル類等が挙げられる。
【0024】
炭化水素類としては、ミネラルオイル、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、植物性スクワラン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン;
植物油類としては、ホホバ油、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、ヒマシ油;
エステル油類としては、コハク酸ジエチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、オクタン酸セチル、イソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸アルキル(C12-C15);
脂肪酸類としては、イソステアリン酸、オレイン酸;
高級アルコール類としては、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール;
シリコーンオイル類としては、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサンが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、液状油(C)が、ミネラルオイル、コハク酸ジエチルヘキシル、ホホバ油、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、および水添ポリイソブテンから選択される少なくとも1種であることが好ましく、べたつきが少なく伸びに優れることから、液状油(C)が、ミネラルオイルであることがより好ましい。
液状油(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<被膜形成性樹脂(D)>
本発明の整髪料は、被膜形成性樹脂(D)を4~15質量%、好ましくは6~14質量%、より好ましくは9~13質量%含む。
【0027】
本発明の整髪料は、被膜形成性樹脂(D)を上記の量で含むことによって、被膜を形成し、セット力や被膜の固さを付与できる。
被膜形成性樹脂(D)が前記下限量より少ないと、セット力が弱く、被膜の固さが充分に得られないことがある。前記上限量より多いと、毛髪になじみづらく、毛束も作りにくくなることがある。
【0028】
被膜形成性樹脂(D)としては、被膜形成性樹脂であれば特に制限なく用いることができる。
被膜形成性樹脂(D)としては、例えば、カチオン性、アニオン性、両性、およびノニオン性の被膜形成性樹脂が挙げられる。
【0029】
カチオン性の被膜形成性樹脂として、具体的には、ポリクオタニウム-69、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化О-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、(ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)共重合体が挙げられる。
【0030】
アニオン性の被膜形成性樹脂として、具体的には、アクリル樹脂アルカノールアミン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロニルアクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体、ポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1-18)/アルキル(C1-8)アクリルアミド)コポリマーAMP(「AMP」は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを表す。以下においても同様である。)、(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMPが挙げられる。
【0031】
両性の被膜形成性樹脂として、具体的には、ジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体、(アクリレーツ/アクリル酸ラウリル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー、(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマーが挙げられる。
【0032】
ノニオン性の被膜形成性樹脂として、具体的には、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体((VP/VA)コポリマーとも記す)、ポリビニルピロリドン(PVPとも記す)、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体、酢酸ビニル/N-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン共重合体、(ビニルピロリドン/VA)コポリマー(「VA」は、酢酸ビニルを表す。)が挙げられる。
【0033】
上記のカチオン性、アニオン性、両性、およびノニオン性の被膜形成性樹脂の中でも、被膜形成性樹脂(D)としては、アニオン性およびノニオン性の被膜形成性樹脂が好ましく、剤の安定性に優れることから、ノニオン性の被膜形成性樹脂がより好ましい。
【0034】
被膜形成性樹脂(D)が、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム-69、および(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMPから選択される少なくとも1種であることが好ましく、毛髪がまとまり、毛束が作りやすいことから、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体がより好ましい。
被膜形成性樹脂(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
<水溶性増粘剤(E)>
本発明の整髪料は、水溶性増粘剤(E)を好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.1~2、より好ましくは0.2~1質量%含む。
【0036】
本発明の整髪料は、水溶性増粘剤(E)を含むことで、増粘させ、ジェル状にすることができ、毛髪へのなじみやすさや、毛束の作りやすさを付与できる。また、脂溶性成分の乳化状態を安定に維持することにも寄与する。
【0037】
水溶性増粘剤(E)としては、水溶性増粘剤であれば特に制限なく用いることができる。なお、本明細書において、水溶性増粘剤(E)には、上述した被膜形成性樹脂(D)に該当する樹脂は含まれないものとする。
【0038】
水溶性増粘剤(E)としては、例えば、カルボマー(カルボキシビニルポリマーとも記す)、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキルコポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマーアクリレーツ/ネオデカン酸ビニル)クロスポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ゼラチン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガムが挙げられる。
【0039】
これらの中でも、水溶性増粘剤(E)がカルボマー、ポリアクリルアミド、およびヒドロキシエチルセルロースから選択される少なくとも1種であることが好ましく、少量で増粘できることから、カルボマーおよびポリアクリルアミドがより好ましい。
【0040】
<水(F)>
本発明の整髪料は、水(F)を好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~80質量%含む。
水(F)として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
【0041】
<その他成分>
本発明の整髪料は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、および色素等の添加剤を含有することができる。
本発明の整髪料は、例えば、pH調整剤としてトリエタノールアミンを用いることができる。
【0042】
<整髪料の製造等>
本発明の整髪料は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、乳化、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、好ましくは加熱条件下、例えば75~85℃の加熱条件下で、本発明の整髪料を製造することが好ましい。
【0043】
〔剤型〕
本発明の整髪料の状態としては、例えば、ミルク状、クリーム状、ジェル状、液状が挙げられる。これらの中でも、本発明の整髪料は、ジェル状、クリーム状、および液状が好ましく、毛髪に塗布する際に垂れ落ちしにくく、取扱い性に優れる観点から、ジェル状であることがより好ましい。
【0044】
本発明の整髪料は、例えば、白濁、および透明な外観が挙げられる。
本発明の整髪料は、ジェル状であり、白濁した外観であることが好ましい。
本発明の整髪料は、脂溶性成分と水溶性成分とが分離していないことが好ましく、均質であることが好ましい。
【0045】
<用途>
本発明の整髪料は、毛髪に塗布して使用することができる。
本発明の整髪料は、洗髪後の水分等が付着していない乾いた状態の毛髪、および、セミドライの毛髪に塗布して使用することが好ましい。
【0046】
本発明の整髪料は、適用する毛髪の長さに特に制限はないが、毛髪を立ち上げて保持することができる高いセット力を有することから、ショートヘア、およびミディアムヘアの毛髪に適用することが好ましい。
【0047】
本発明の整髪料は、ヘアウォーター、ヘアワックス、ヘアジェル、ワックスジェル、およびヘアミルクであることが好ましく、ワックスジェル、ヘアワックスおよびヘアジェルであることがより好ましく、ワックスジェルであることが最も好ましい。
本発明の整髪料は、セット時に立体的な毛束が作りやすく、セット後はべたつかず、毛髪が固まる仕上がりで、ヘアスタイルの持続性に優れる。
【実施例
【0048】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1~34、比較例1~13〕
実施例、および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0050】
【表1】
【0051】
表2~6の処方の数値は、整髪料全体を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
表2~6に示す処方で各成分を混合することにより整髪料を製造し、試料として以下の方法で評価した。
【0052】
〔評価方法〕
室温(25℃)の条件下で、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ、試料2gを手に取り、てのひらに伸ばし広げた後、トップ10cm、ネープ3cmにカットしたPAMS社製人毛ウイッグUNに万遍なく塗布し、ヘアスタイルを作った。一連の施術およびヘアスタイルについて、後述する(1)~(5)の各項目に記載した評価項目および評価基準に従って官能評価を行った。
【0053】
各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0054】
〔評価項目および評価基準〕
(1)セット力
毛髪全体に試料を塗布した後、根元を立ち上げ、毛束を作り、立体的なヘアスタイルを作った。その際の、毛流れ(ヘアスタイル)の作りやすさと根本の立ち上がりについて、触感で評価した。
4点:セット力が非常に高く、ヘアスタイルが非常に作りやすい
3点:セット力が高く、ヘアスタイルが作りやすい
2点:セット力が弱く、ヘアスタイルがやや作りづらい
1点:セット力が非常に弱く、ヘアスタイルが満足に作れない
【0055】
(2)毛髪へのなじみやすさ
ヘアスタイルをセットする時の試料の毛髪へのなじみやすさを触感で評価した。
4点:非常になじみやすい
3点:なじみやすい
2点:ややなじみづらい
1点:非常になじみづらい
【0056】
(3)被膜の固さ
ヘアスタイルをセットし、30分後の毛束の固さおよびべたつきを触感で評価した。
4点:毛束が非常に固く、全くべたつきがない
3点:毛束が固く、べたつきがない
2点:毛束がやわらかく、べたつく
1点:毛束がやわらかいためセットできず、べたつく
【0057】
(4)毛束の作りやすさ
ヘアスタイルをセットする時の、毛束の作りやすさを触感で評価した。
4点:手ぐしや毛髪を軽く握ることで自然に毛束ができる
3点:毛先をつまんで問題なく毛束を作ることができる
2点:毛束を作りにくい
1点:毛髪がまとまらず毛束にならない
【0058】
(5)ヘアスタイルの持続性
毛髪全体に試料を塗布した後、根元を立ち上げ、毛束を作り、立体的なヘアスタイルを作った。その後、湿度50%、室温28℃の条件下で6時間放置し、ヘアスタイルが維持されているか目視で評価した。
4点:ヘアスタイルが崩れることなく全体的に維持されている
3点:ヘアスタイルが全体的に維持されている
2点:ヘアスタイルがボリュームダウンしているが、部分的に維持されている
1点:ヘアスタイルが全体的にボリュームダウンし、維持されていない
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
実施例1~34で製造した整髪料は、いずれも(1)~(5)の全ての評価項目において良好な結果となった。
本発明の整髪料は、セット時に立体的な毛束が作りやすく、セット後はべたつかず、毛髪が固まる仕上がりで、ヘアスタイルの持続性に優れることがわかる。
【0065】
比較例1で製造した整髪料は、成分(A)の配合量が少ないため、毛髪になじみづらく、毛束も作りにくかった。
比較例2で製造した整髪料は、成分(A)の配合量が多いため、セット力が弱く、毛束はやわらかく、べたついていた。
【0066】
比較例3で製造した整髪料は、キャンデリラロウ(B)の配合量が少ないため、毛束が作りにくかった。
比較例4で製造した整髪料は、キャンデリラロウ(B)の配合量が多いため、毛髪になじみづらく、毛束が作りにくかった。
【0067】
比較例5で製造した整髪料は、液状油(C)の配合量が少ないため、毛髪になじみづらく、毛束が作りにくかった。
比較例6で製造した整髪料は、液状油(C)の配合量が多いため、毛束はやわらかく、べたつき、ヘアスタイルの持続性も悪かった。
【0068】
比較例7で製造した整髪料は、被膜形成性樹脂(D)の配合量が少ないため、セット力が弱く、毛束はやわらかく、べたついていた。
比較例8で製造した整髪料は、被膜形成性樹脂(D)の配合量が多いため、毛髪になじみづらく、毛束も作りにくかった。
【0069】
比較例9~11で製造した整髪料は、成分(A)が配合されておらず、一般的にヘアワックスに用いられるノニオン性界面活性剤であるセテス-10が配合されている。比較例9では、剤型を保てず、分離してしまった。比較例10および11では、セット力、被膜の固さ、毛束の作りやすさ、ヘアスタイルの持続性が悪かった。
【0070】
比較例12で製造した整髪料は、キャンデリラロウ(B)が配合されておらず、一般的にヘアワックスに用いられるマイクロクリスタリンワックスが配合されている。比較例12で製造した整髪料は、毛髪になじみづらく、被膜の固さ、毛束の作りやすさ、ヘアスタイルの持続性も悪かった。
【0071】
比較例13で製造した整髪料は、キャンデリラロウ(B)が配合されておらず、一般的にヘアワックスに用いられるミツロウが配合されている。比較例13で製造した整髪料は、セット力、被膜の固さ、毛束の作りやすさ、ヘアスタイルの持続性が悪かった。