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  • 特許-プロテアソーム活性化剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】プロテアソーム活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/14 20060101AFI20241119BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20241119BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241119BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241119BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241119BHJP
   A61K 8/9761 20170101ALI20241119BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20241119BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241119BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20241119BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20241119BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
A61K36/14
A61K36/185
A61K36/73
A61P43/00 111
A61P43/00 107
A61P17/00
A61Q19/08
A61K8/9761
A61K8/9789
A23L33/105
A61K125:00
A61K127:00
A61K131:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021024746
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2021134215
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2020029477
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂元 孝太郎
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203725(JP,A)
【文献】特開2006-176436(JP,A)
【文献】特開2013-166713(JP,A)
【文献】特開2003-183171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの中から選ばれる1種、又は2種以上に由来 する抽出物を含むプロテアソーム活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアソームの活性化剤に関し、主にヒトなどの細胞内の役割を終えたタンパク質や機能不全を起こしたタンパク質や外来性タンパク質の分解を促進する化粧品、食品、医薬品等、及び/又はこれらに配合する素材に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアソームは、細胞内に発現する複合型プロテアーゼであり、細胞内で役割を終えたタンパク質や機能不全を起こしたタンパク質や外来性タンパク質を分解する(非参考文献1)。
【0003】
細胞内では、生理機能に必要なタンパク質が作られ、役割を終えるとプロテアソームに認識され、分解される。プロテアソームは、役割を終えたタンパク質だけでなく、酸化されたタンパク質、構造変性したタンパク質、凝集したタンパク質といった機能不全を起こしたタンパク質も分解する。このサイクルが繰り返されることで、細胞の恒常性が維持されている。また、プロテアソームは、細胞に侵入したウイルスなどの病原体に由来する外来性タンパク質も分解し、分解された断片を抗原提示させることで、免疫系を賦活化する役割も担っている。
【0004】
プロテアソーム活性は、加齢に伴って減弱することが知られている(非特許文献2、3)。このため、老化した細胞では、役割を終えたタンパク質の分解が遅れたり、UV、ストレス、活性酵素、遊離ラジカル、物理的刺激などによって酸化されたタンパク質、構造変性したタンパク質、凝集したタンパク質が蓄積したり、抗原提示の力価が落ちる。
【0005】
又、例えば、肌では、凝集したタンパク質の一種であるリポフスチンが蓄積することで、弾力の低下やくすみにつながることが知られている(特許文献1)。
【0006】
一方で、プロテアソームの活性化が生物個体の寿命と相関することも、良く知られた事実である。例えば、プロテアソームを高発現するハダカデバネズミは、一般的なマウスよりも有意に長い寿命を示す。また、人為的にプロテアソームの活性を亢進させた出芽酵母、線虫、ショウジョウバエ、ヒト細胞においても、その寿命の延長が報告されている(非特許文献4~6)。
【0007】
以上の知見から、細胞内のプロテアソーム活性を促進し、細胞内で役割を終えたタンパク質や機能不全を起こしたタンパク質や外来性タンパク質を積極的に分解することは、生物個体の細胞組織の老化を防ぎ、免疫系を賦活化し、ひいては生物個体そのものの老化を防ぐことにつながると期待される。
【0008】
ところで、特許文献2には、ハマメリス由来の抽出物を有効成分とする肌のくすみ抑制剤が開示されている。しかしながら、その作用メカニズムは、生体の抗酸化機能を向上させ、生体内における活性酸素濃度を低減させることによって細胞内のタンパク質の変性を抑制することに基づくものであり、細胞内のプロテアソーム活性を促進させることについては何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Pharmacol Rev. “A practical review of proteasome pharmacology” 2019 Apr;71(2):170-197.
【文献】Curr Genomics. “The mechanistic links between proteasome activity, ageing and age-related diseases” 2014 Feb;15(1):38-51.
【文献】J Invest Dermatol. “Functional interplay between mitochondrial and proteasome activity in skin ageing” 2011 Mar;131(3):594-603.
【文献】IUBMB Life. “Proteasome activation as a novel antiaging strategy” 2008 Oct;60(10):651-655.
【文献】Exp Gerontol. “Anti-ageing and rejuvenating effects of quercetin” 2010 Oct;45(10):763-771.
【文献】Free Radic Biol Med. “Proteasome activation delays ageing in vitro and in vivo” 2014 Jun;71:303-320.
【文献】Redox Biol. “Lipofuscin: formation, effects and role of macroautophagy” 2013 Jan;1:140-144.
【文献】病理標本の作り方 病理技術研究会 (株)文光堂
【文献】J Cosmet Sci. “Use of non-melanocytic HEK293 cells stably expressing human tyrosinase for the screening of anti-melanogenic agents” 2011 Sep-Oct;62(5):515-523.
【0010】
【文献】特開2001-131044
【文献】特開2018-203725
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、新規なプロテアソームの活性化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、プロテアソームの活性化作用を持つ物質を探索した結果、トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物が、この活性化作用を持つことを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、以下の項を含む。
〔項1〕トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの中から選ばれる1種、又は2種以上に由来する抽出物を含むプロテアソーム活性化剤。
〔項2〕〔項1〕記載の剤を含有する皮膚外用剤。好ましくは、表皮細胞のプロテアソーム活性化のための皮膚外用剤である。
〔項3〕〔項1〕記載の剤を含有する経口組成物。好ましくは、細胞内プロテアソームの活性化を必要とする対象者のための経口組成物である。
〔項4〕トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの中から選ばれる1種、又は2種以上に由来する抽出物を用いて、プロテアソームを活性化することを特徴とする、肌細胞の老化抑制のための美容方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、例えば、主にヒトなどの細胞内のプロテアソームの活性化を誘導する組成物(剤など)が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、ヒト由来の株化細胞を用いて、トルメンチラ、セイヨウネズ及びハマメリスのそれぞれの抽出物の細胞内プロテアソーム活性に与える影響を評価した結果である。
図2図2は、ヒト表皮角化細胞を用いて、ハマメリス抽出物の細胞内プロテアソーム活性に与える濃度依存的影響を評価した結果である。
図3A図3Aは、ヒト由来の株化細胞を用いて、細胞内リポフスチンの蓄積に与える影響を評価した比較対象細胞のマッソン・フォンタナ染色の結果である。
図3B図3Bは、ヒト由来の株化細胞を用いて、細胞内リポフスチンの蓄積に与える影響を評価したハマメリス抽出物を添加した細胞のマッソン・フォンタナ染色の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(プロテアソームの活性化剤)
プロテアソームの活性化剤は、細胞内のプロテアソームの活性化を誘導するための剤である。この剤は、液体だけでなく、固形等も挙げられ、皮膚外用剤だけでなく、経口組成物(固体でも液体でも作製可能)も考えられる。
【0017】
(トルメンチラ)
「トルメンチラ」は、バラ科、ポテンティラ属の植物(トルメンチラ(学名 Potentilla tormentilla))である。「トルメンチラ」の抽出物を製造する際には、材料として、例えば、根、根茎、葉、茎、花、果実、果皮、種子、全草、又はこれらの混合物を用いる。
【0018】
(セイヨウネズ)
「セイヨウネズ」は、ヒノキ科、ビャクシン属の植物(セイヨウネズ(学名 Juniperus communis))である。「セイヨウネズ」の抽出物を製造する際には、材料として、例えば、根、根茎、葉、茎、花、果実、果皮、種子、全草、又はこれらの混合物を用いる。
【0019】
(ハマメリス)
「ハマメリス」は、マンサク科、マンサク属の植物(ハマメリス(学名 Hamamelis virginiana))である。「ハマメリス」の抽出物を製造する際には、材料として、例えば、根、根茎、葉、茎、花、果実、果皮、種子、全草、又はこれらの混合物を用いる。
【0020】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の製造例)
トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物は、例えば、材料を生のまま又は乾燥したものを粉砕後に溶媒で抽出して作製する。以下に製造例を示す。
【0021】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の製造例1)
トルメンチラの根乾燥物、セイヨウネズの果実乾燥物、又はハマメリスの葉乾燥物を粉砕する。これらの粉砕物について、各100gを個別に50℃~80℃の温水1kgに5~24時間浸漬する。この浸漬を経て得られる溶液を所定の濾過材(Glass Fiber Filter (ADVANTEC製 Gf-75)とMixed Cellurose ester (ADVANTEC製 A045A047A)など)を用いて濾過する。終濃度30%となるように1,3-ブチレングリコールを添加し、0℃~10℃の環境で10~20日間、静置する。この溶液を所定の濾過材を用いて濾過し、得られた溶液をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いる。この製造例1で得られる各抽出物に含まれる乾燥固形分は、1~5%である。
【0022】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の製造例2)
トルメンチラの根乾燥物、セイヨウネズの果実乾燥物、又はハマメリスの葉乾燥物を粉砕する。これらの粉砕物について、各100gを個別に50%エタノール溶液1kgに浸漬する。10℃~30℃の環境で、5~15日間浸漬する。この浸漬を経て得られる溶液を所定の濾過材を用いて濾過する。濾過後の溶液に含まれるエタノールをエバポレーションによって所定量除去する。この除去後の溶液に対して、終濃度50%となるように1,3-ブチレングリコールを添加する。この添加後の溶液を0℃~10℃の環境で、10~20日間静置する。再度、所定の濾過材を用いて濾過し、得られた溶液をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いる。この製造例2で得られる各抽出物に含まれる乾燥固形分は、1~5%である。
【0023】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の製造例3)
トルメンチラの根乾燥物、セイヨウネズの果実乾燥物、又はハマメリスの葉乾燥物を粉砕する。これらの粉砕物について、各100gを個別に70%1,3-ブチレングリコール溶液1kgに浸漬する。10℃~30℃の環境で5~15日間浸漬する。この浸漬を経て得られる溶液を所定の濾過材を用いて濾過する。-30℃~-10℃の環境で10~20日間静置した後、所定の濾過材を用いて濾過する。さらに、0℃~10℃の環境で10~20日間静置した後、所定の濾過材を用いて濾過する。得られた溶液をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いる。この製造例3で得られる各抽出物に含まれる乾燥固形分は、1~5%である。
【0024】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の製造例4)
トルメンチラの根乾燥物、セイヨウネズの果実乾燥物、又はハマメリスの葉乾燥物を粉砕する。これらの粉砕物について、各100gを個別に70%の1,3-ブチレングリコール溶液1kgに浸漬する。10℃~30℃の環境で5~15日間浸漬する。この浸漬を経て得られる溶液を所定の濾過材を用いて濾過する。-30℃~-10℃の環境で10~20日間静置した後、所定の濾過材を用いて濾過する。1,3-ブチレングリコールが終濃度50%となるように水を添加し、0℃~10℃の環境で10~20日間静置する。この溶液を所定の濾過材を用いて濾過し、得られた溶液をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いる。この製造例4で得られる各抽出物に含まれる乾燥固形分は、1~5%である。
【0025】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の製造例5)
トルメンチラの根乾燥物、セイヨウネズの果実乾燥物、又はハマメリスの葉乾燥物を粉砕する。これらの粉砕物について、各100gを個別に70%1,3-ブチレングリコール溶液1kgに浸漬する。0℃~10℃の環境で10~20日間浸漬する。この浸漬を経て得られる溶液を所定の濾過材を用いて濾過した後、活性炭によって成分吸着する。所定の濾過材を用いて濾過することで活性炭を除き、更に限外濾過膜を用いて、濾過し、分子量50000以下の分画を作製して、得られた溶液をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いる。この製造例5で得られる各抽出物に含まれる乾燥固形分は、1~5%である。
【0026】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の製造に用いる抽出溶媒)
抽出溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール或いは含水低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3,5-ペンタントリオール、グリセリン、ポリエチレングリコール(分子量100~10万)等の多価アルコール或いは含水多価アルコール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、フェノール、トルエン等の各種有機溶媒や適宜規定度を調製した酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸等)やアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)の中から選ばれる1種、もしくは2種以上の混液が挙げられる。
【0027】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の精製操作)
本発明で用いるトルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物は、溶媒抽出後、更に適宜精製操作を施すことも可能である。精製操作は、例えば、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、有機酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)添加による分解、微生物による発酵又は代謝変換、イオン交換樹脂や活性炭、ケイ藻土等による成分吸着、種々の分離モード(イオン交換、親水性吸着、疎水性吸着、サイズ排除、配位子交換、アフィニティー等)を有するクロマトグラフィーを用いた分画、濾紙やメンブランフィルター、限外濾過膜等を用いた分子量分画濾過、加圧又は減圧、加温又は冷却、乾燥、pH調整、脱臭、脱色、長時間の静置保管等であり、これらを任意に選択し、組み合わせて処理することも可能である。
【0028】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の更なる精製法例1)
本発明のトルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物は、澱の析出をより防ぐ観点から、上述の製造例1及び製造例2において、1,3-ブチレングリコールを添加する前に、HP-20といった樹脂で精製してもよい。HP-20を用いる場合、1,3-ブチレングリコールを添加する前の溶液を20%エタノール濃度にした後、HP-20を充填したカラムに添加する。20%エタノールでカラムを洗浄後、50%エタノールで溶出する。得られた溶出液に含まれるエタノールをエバポレーションによって所定量除去する。この除去後の溶液に対して、所定量の1,3-ブチレングリコールを添加する。この添加後の溶液を約0℃~約10℃の環境で10~20日間静置する。再度、所定の濾過材を用いて濾過し、得られた溶液をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いる。
【0029】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の更なる精製法例2)
本発明のトルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物は、澱の析出をより防ぐ観点から、上述の製造例4において、HP-20といった樹脂で精製する工程を挿入してもよい。HP-20を用いる場合、HP-20を5~15%重量で添加し、10℃~30℃の環境で一晩撹拌する。所定の濾過材を用いて濾過し、得られた溶液をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いる。
【0030】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の更なる精製法例3)
本発明のトルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物は、澱の析出をより防ぐ観点から、上述の製造例1~4において、活性炭で精製する工程を追加してもよい。活性炭を0.1~3%重量で添加し、10℃~30℃の環境で0.5~2時間撹拌する。所定の濾過材を用いて濾過し、得られた溶液をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いる。
【0031】
(トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物の更なる精製法例4)
本発明のトルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物は、澱の析出をより防ぐ観点から、製造例1~5などで作製した各抽出物を、更に限外濾過膜を用いて、濾過し、所定の分子量の分画を作製して、その分画をトルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物として用いてもよい。この分画の分子量の上限は、澱の析出をより防ぐ観点から、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、更に好ましくは50000以下である。
【0032】
(経口組成物の形態)
本発明による経口組成物は、例えば、飲料、食品、医薬品、医薬部外品が挙げられる。本実施形態の抽出物を配合して食品組成物を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類等の任意の助剤を添加して任意の剤形に製剤化することができる。また、本実施形態の抽出物の経口組成物への配合量は、一般的な摂取量を考慮して成人一日当たり本実施形態の抽出物の摂取量が1日当たり約1~1000mg程度となるように調整することが好ましい。経口組成物における本発明の抽出物の配合量は、抽出物の固形分として、0.001~50%、好ましくは0.01~15質量%の範囲が好ましい。
【0033】
(皮膚外用剤の形態)
本発明による皮膚外用剤は、アンプル、カプセル、粉末、顆粒、液体、ゲル、気泡、エマルジョン、シート、ミスト、スプレー剤等利用上の適当な形態の1)医薬品類、2)医薬部外品類、3)局所用又は全身用の皮膚外用剤類(例えば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック等の基礎化粧料、固形石鹸、液体ソープ、ハンドウォッシュ等の洗顔料や皮膚洗浄料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、除毛剤、脱毛剤、髭剃り処理料、アフターシェーブローション、プレショーブローション、シェービングクリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等のメークアップ化粧料、香水類、美爪剤、美爪エナメル、美爪エナメル除去剤、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、シート剤、貼付剤、エアゾール剤等)、4)頭皮・頭髪に適用する薬用又は/及び化粧用の製剤類(例えば、シャンプー剤、リンス剤、ヘアートリートメント剤、プレヘアートリートメント剤、パーマネント液、染毛料、整髪料、ヘアートニック剤、育毛・養毛料、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、シート剤、エアゾール剤等)、5)浴湯に投じて使用する浴用剤、6)その他、腋臭防止剤や消臭剤、制汗剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ等が挙げられる。
【0034】
皮膚外用剤における本発明のトルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリス抽出物の配合量は、抽出物の固形分として、基礎化粧料の場合は、一般に0.001~1.0質量%、好ましくは0.01~0.2質量%の範囲、メークアップ化粧料の場合は、一般に0.001~1.0質量%、好ましくは0.01~0.2質量%の範囲、又、清浄用化粧料の場合は、一般に0.001~10.0質量%、好ましくは0.01~7.0質量%の範囲である。又、毛髪用化粧料の場合は、抽出物の固形分として、一般的には0.00001~5.0質量%であり、好ましくは、0.0001~3.0質量%である。
【0035】
(皮膚外用剤の構成成分)
また、このような剤には、必要に応じて、本発明の効果を損ねない範囲で以下に例示する成分や添加剤を任意に選択・併用して製造することができ、これらの処方系中への配合量は、特に規定するものではないが、通常、0.0001~50質量%程度が好ましいと考えられる。
【0036】
(1)各種油脂類
アボカド油、アーモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、ゴマ油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、サフラワー油、シア脂、液状シア脂、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、卵黄油、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、牛脂、豚脂、スクワレン、スクワラン、プリスタン、又はこれら油脂類の水素添加物(硬化油等)等。
【0037】
(2)ロウ類
ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウ、ライスワックス等。
【0038】
(3)鉱物油
流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタンワックス等。
【0039】
(4)脂肪酸類
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油、ラノリン脂肪酸等の天然脂肪酸、イソノナン酸、カプロン酸、2-エチルブタン酸、イソペンタン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソペンタン酸等の合成脂肪酸。
【0040】
(5)アルコール類
エタノール、イソプロパノール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、フェノキシエタノール等の天然アルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の合成アルコール。
【0041】
(6)多価アルコール類
酸化エチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、酸化プロピレン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール等。
【0042】
(7)エステル類
ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール等。
【0043】
(8)金属セッケン類
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等。
【0044】
(9)ガム質、糖類又は水溶性高分子化合物
アラビアゴム、ベンゾインゴム、ダンマルゴム、グアヤク脂、アイルランド苔、カラヤゴム、トラガントゴム、キャロブゴム、クインシード、寒天、カゼイン、乳糖、果糖、ショ糖又はそのエステル、トレハロース又はその誘導体、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、カルボキシメチルキチン又はキトサン、エチレンオキサイド等のアルキレン(C~C)オキサイドが付加されたヒドロキシアルキル(C~C)キチン又はキトサン、低分子キチン又はキトサン、キトサン塩、硫酸化キチン又はキトサン、リン酸化キチン又はキトサン、アルギン酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヘパリン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド又はその架橋重合物、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン等。
【0045】
(10)界面活性剤
アニオン界面活性剤(アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤:カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤)等。
【0046】
(11)各種ビタミン類
ビタミンA群:レチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB群:チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、ビタミンC群:ビタミンC酸又はその誘導体、ビタミンD群:エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群:ビタミンE又はその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群:フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)、その他、必須脂肪酸(ビタミンF)、カルニチン、フェルラ酸、γ-オリザノール、オロット酸、ビタミンP類(ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン)、ビタミンU等。
【0047】
(12)各種アミノ酸類
バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等や、それらの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、或いはピロリドンカルボン酸などのアミノ酸誘導体等。
【0048】
(13)添加物
添加しようとする製品種別、形態に応じて常法的に行われる加工(例えば、粉砕、製粉、洗浄、加水分解、醗酵、精製、圧搾、抽出、分画、濾過、乾燥、粉末化、造粒、溶解、滅菌、pH調整、脱臭、脱色等を任意に選択、組み合わせた処理)を行い、各種の素材から任意に選択して供すれば良い。
【0049】
尚、抽出に用いる溶媒については、供する製品の使用目的、種類、或いは後に行う加工処理等を考慮した上で選択すれば良いが、通常では、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール或いは含水低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール或いは含水多価アルコール、アセトン、酢酸エチル等の各種有機溶媒の中から選ばれる1種若しくは2種以上の混液を用いるのが望ましい。但し、用途により有機溶媒の含有が好ましくない場合においては、水のみを使用したり、若しくは抽出後に除去しやすいエタノールを採用し、単独、又は水との任意の混液で用いたりすれば良く、又、搾取抽出したものでも良い。
【0050】
尚、植物又は動物系原料由来の添加物を、全身用又は局所用の外用剤、化粧品類に供する場合、皮膚や頭髪の保護をはじめ、保湿、感触・風合いの改善、柔軟性の付与、刺激の緩和、芳香によるストレスの緩和、細胞賦活(細胞老化防止)、炎症の抑制、肌質・髪質の改善、肌荒れ防止及びその改善、発毛、育毛、脱毛防止、光沢の付与、清浄効果、疲労の緩和、血流促進、温浴効果等の美容的効果のほか、香付け、消臭、増粘、防腐、緩衝等の効果も期待できる。
【0051】
さらにこの他にも、これまでに知られている各原料素材の様々な美容的、薬剤的効果を期待し、これらを組み合わせることによって、本発明の目的とする効果の増進を図り、多機能的な効果を期待した製品とすることも可能である。
【0052】
[美容方法]
本発明の美容方法は、トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの中から選ばれる1種、又は2種以上に由来する抽出物を用いて、細胞内のプロテアソームを活性化することを特徴とする。前述のとおり、本発明者らは、トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリス由来の抽出物に、細胞内のプロテアソームを活性化する作用を見出した。そして、この知見から本発明者らは、肌改善のための美容方法として、トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの中から選ばれる1種、又は2種以上に由来する抽出物を用いてプロテアソームを活性化することに至り、本発明を完成させた。また、本発明において、美容方法とは、単に個人的に行われる方法のみならず、美容に関わる商品の提供の際に、顧客にあわせた化粧料の処方として提供され、医師以外の化粧料販売員やエステティシャンにより提供されるものを含む。また、美容に関わる商品の説明書(添付文書等)等においてその商品の使用方法として提供されるものも含む。
【0053】
本発明の美容方法において、トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの中から選ばれる1種、又は2種以上に由来する抽出物は、上記に説明したものを用いることができる。また、上記抽出物を含有する剤および組成物も、本発明の美容方法における抽出物として好適に使用できる。このような組成物は、例えば、被験者の所望の部位の皮膚に適用することによって使用することができる。皮膚への適用は、例えば1日1回または複数回行ってよい。
【0054】
本発明の美容方法は、例えば、プロテアソームの活性化が所望される肌の症状の改善のために使用することができる。例えば、肌細胞の老化防止のために使用することができ、また肌におけるリポフスチンの蓄積を抑制することで、弾力の低下やくすみを改善することができる。
【実施例
【0055】
以下、本発明の実施例について、説明する。なお、本実施例において用いた各種抽出物等の添加量として記載した単位%は体積%を意味する
【0056】
(実験1(ヒト由来の株化細胞内プロテアソーム活性の評価))
ヒト由来の株化細胞に対して、トルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物を添加し、一定時間の培養後、細胞を溶解し、細胞内で発現したプロテアソームの活性を評価した。プロテアソームの活性は、その活性を発光強度で定量するCell-Based Proteasome-GloTM Assaysキット(Promega製 G8660(キモトリプシン様活性測定用))を用いて測定した。
【0057】
HEK293T細胞(TAKARA社製)を、10%FBSを含むDMEM培地を用いて、96ウェル黒プレートに対して1×10(個)/ウェルで撒き、5%CO培養機にて37℃で16時間培養した。トルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物を終濃度1%となるようにウェルに添加し、5%CO培養機にて37℃で2時間培養した。ウェル内の培地を抜き取り、PBSでウェルを2回洗浄後、PBSを50μL/ウェルで添加した。そして、Cell-Based Proteasome-GloTM Assaysキットを用いて、メーカーが推奨する方法に従って、プロテアソーム活性を評価した。本実験のコントロールとして、トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物を含まない抽出溶媒である30%1,3ブチレングリコール、又は50%1,3ブチレングリコールを終濃度1%となるように添加したウェルを設定し、プロテアソーム活性を測定した。抽出溶媒のみを添加したウェルのプロテアソーム活性を100として、トルメンチラ、セイヨウネズ、又はハマメリスの抽出物を添加したウェルのプロテアソーム活性の割合(相対値)を算出した。
【0058】
上述の製造例1で製造したトルメンチラの抽出物、上述の製造例1で製造したセイヨウネズの抽出物、そして上述の製造例2及び製造例3で製造したハマメリスの抽出物を用いて、n=4で試験を行った。プロテアソームの活性の割合(相対値)を算出したところ、トルメンチラの抽出物は平均714、セイヨウネズの抽出物は平均491、製造例2のハマメリスの抽出物は平均490、製造例3のハマメリスの抽出物は平均541であった(図1参照)。この結果から、トルメンチラ、セイヨウネズ、ハマメリスの抽出物を添加することによって、細胞内のプロテアソームが活性化されることが示された。
【0059】
(実験2(ヒト角化細胞内プロテアソーム活性の評価))
ヒト皮膚角化細胞ケラチノサイト(TOYOBO社製)をメーカーの推奨する培地を用いて、96ウェル黒プレートに対して1×10(個)/ウェルで撒き、5%CO培養機にて37℃で16時間培養した。ハマメリスの抽出物を終濃度0.5%、0.3%、又は0.15%となるようにウェルに添加し、5%CO培養機にて37℃で2時間、4時間、8時間、又は24時間培養した。ウェル内の培地を抜き取り、PBSでウェルを2回洗浄後、PBSを50μL/ウェルで添加した。そして、Cell-Based Proteasome-GloTM Assaysキットを用いて、メーカーが推奨する方法に従って、プロテアソーム活性を評価した。本実験のコントロールとして、ハマメリスの抽出物を含まない抽出溶媒である50%1,3ブチレングリコールを終濃度0.5%、0.3%、又は0.15%となるように添加したウェルを設定し、プロテアソーム活性を測定した。抽出溶媒のみを添加したウェルのプロテアソーム活性を100として、ハマメリスの抽出物を添加したウェルのプロテアソーム活性の割合(相対値)を算出した。
【0060】
上述の製造例4で製造し、精製工程例3で更に精製したハマメリスの抽出物を用いて、n=6で試験を行った。プロテアソームの活性の割合(相対値)を算出したところ、ハマメリスの抽出物は添加濃度依存的に細胞内のプロテアソームを活性化した。また、その作用は、少なくとも8時間は持続することが示された(図2参照)。
【0061】
(実験3(ヒト由来の株化細胞内リポフスチンの蓄積の評価))
細胞の老化に伴い、細胞内で酸化されたタンパク質や構造変性したタンパク質が凝集し、リポフスチンと呼ばれる酸化凝集物が蓄積することが知られている。プロテアソームの活性化の結果として、リポフスチンの蓄積が抑制されるかを評価した。
【0062】
リポフスチンの検出方法の一つにマッソン・フォンタナ染色法があるが、リポフスチンだけでなく、メラニン顆粒の染色にも用いられている(非特許文献8)。本試験では、リポフスチンを選択的に染色するために、メラニンを産生しないHEK293T細胞を用いた(非特許文献9)。
【0063】
HEK293T細胞(TAKARA社製)を、上述の製造例5で製造したハマメリスの抽出物を終濃度0.3%となるように添加した10%FBSを含むDMEM培地を用いて、5%CO培養機にて37℃で30日間培養した。培地交換は毎日行い、コンフルエントになった段階で継代した。継代時は、10%FBSを含むDMEM培地でプレーティングし、一晩培養することで、細胞を接着させた後、ハマメリス抽出物を含む培地に交換した。比較対象は、70%1,3ブチレングリコールを終濃度0.3%となるように添加した10%FBSを含むDMEM培地を用いて、同様に培養した細胞とした。細胞をグラスチャンバースライド(松浪硝子 SCS-NO2)にまき、接着後、細胞を10%中性緩衝ホルマリン(和光純薬製 062-01661)で固定した。マッソン・フォンタナ染色に用いるアンモニア銀は、10%硝酸銀10mLに対して、28%アンモニア水を滴下し、薄い混濁液となったところで、精製水100mLを加え、室温・遮光下で24時間静置した後の上澄みとして調製した。固定化後の細胞を精製水で洗浄後、アンモニア銀液を加え、室温・遮光下で24時間静置した。細胞を精製水で洗浄後、5%チオ硫酸ナトリウムを加え、室温で2分間脱色した。細胞を精製水で洗浄後、封入剤を用いて封入した。倒立顕微鏡(オリンパス製 本体:BX50、カメラ:DP70)にて、染色されたリポフスチンを検出した。
【0064】
マッソン・フォンタナ染色された比較対象の細胞では、リポフスチンの蓄積による黒いドットが多数みられた(図3A)。一方、ハマメリス抽出物の存在下で培養した細胞では、黒いドットの数が明らかに少なかった(図3B)。この結果から、ハマメリスの抽出物を添加することによって、細胞内のリポフスチンの蓄積が抑制されることが示された。プロテアソームもリポフスチンも哺乳類細胞に共通して存在するため、ヒト由来の株化細胞でみられた現象は、ヒト皮膚細胞でもみられる可能性が極めて高いと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明により、プロテアソームの活性化を介して、主にヒトなどの細胞内の役割を終えたタンパク質や機能不全を起こしたタンパク質(例えば、酸化されたタンパク質、構造変性したタンパク質、凝集したタンパク質など)や外来性タンパク質(例えば、細胞に侵入したウイルスなどの病原体に由来するものなど)の分解を促進し、肌を初めとする細胞組織の老化を防ぎ、生物個体を健やかにすることが可能となる。また、本発明は細胞内のプロテアソーム活性を向上させるため、免疫系の賦活化剤としてや標的タンパク質分解誘導剤(疾患の発症や増悪に関わる標的タンパク質をユビキチン化するなどして、ユビキチン―プロテアソーム系を介して人為的に標的タンパク質の分解を誘導する薬剤)の増強剤として用いることもできる。

図1
図2
図3A
図3B