IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山東大学の特許一覧

特許7589999圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用
<>
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図1
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図2
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図3
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図4
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図5
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図6
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図7
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図8
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図9
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図10
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図11
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図12
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図13
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図14
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図15
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図16
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図17
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図18
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図19
  • 特許-圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】圧電単結晶M3RE(PO4)3およびその育成方法および応用
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/14 20060101AFI20241119BHJP
   C01B 25/32 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C30B29/14
C01B25/32 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021568831
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 CN2020095244
(87)【国際公開番号】W WO2020248987
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】201910517507.7
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910517509.6
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521017642
【氏名又は名称】山東大学
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.17923, Jingshi Road, Lixia District Jinan, Shandong 250061, China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】于 法鵬
(72)【発明者】
【氏名】武 広達
(72)【発明者】
【氏名】樊 夢迪
(72)【発明者】
【氏名】李 妍▲ル▼
(72)【発明者】
【氏名】程 秀鳳
(72)【発明者】
【氏名】趙 顕
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】Znamierowska,THE SYSTEM LaPO4 - Ba3(PO4)2 ,PRACE NAUKOWE AKADEMII EKONOMICZNEJ WE WROCLAWIU,1994年,Vol.677,p.371-373
【文献】Optical spectroscopic investigation of Ba3Tb(PO4)3 single crystals for visible laser applications,Journal of Alloys and Compounds,2017年12月11日,Vol.740,p.1133-1139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/14
C01B 25/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式MRE(POを有し(ただし、Mはアルカリ土類金属を示し、REは希土類元素を示す)、非中心対称性の構造を持ち、立方晶系で43m点群に属し、
前記の希土類元素がY、La、GdまたはYbであり、
前記のアルカリ土類金属がBa、CaまたSrであり、
325nm~4302nm帯域での光透過率が70%を超える
ことを特徴とする圧電単結晶。
【請求項2】
前記のMRE(PO圧電単結晶がBaY(PO単結晶、Ba3La(PO単結晶、BaYb(PO単結晶、CaGd(PO単結晶、SrY(PO単結晶、SrLa(PO単結晶、SrGd(PO単結晶の中のいずれかひとつである
請求項1に記載の圧電単結晶。
【請求項3】
前記の各圧電単結晶の構造のパラメータがそれぞれ、
BaY(PO単結晶:立方晶系~43m点群;空間群I~43d;格子定数a=b=c=10.4655Å,密度=4.553g/cm
Ba3La(PO単結晶:立方晶系 ~43m点群;空間群 I~43d;格子定数a=b=c=10.521 Å,密度=4.77g/cm
BaYb(PO単結晶:立方晶系 ~43m点群;空間群I~43d; 格子定数a=b=c=10.459 Å,密度= 5.149g/cm
CaGd(PO単結晶:立方晶系 ~43m点群;空間群I~43d; 格子定数a=b=c=9.857Å,密度=3.9g/cm
SrY(PO単結晶:立方晶系 ~43m点群;空間群I~43d;格子定数a=b=c=10.0814 Å,密度=4.093g/cm
SrLa (PO単結晶:立方晶系 ~43m点群;空間群I~43d;格子定数a=b=c=10.192 Å,密度=4.3g/cm
SrGd(PO単結晶:立方晶系 ~43m点群;空間群 I~43d;格子定数a=b=c=10.114 Å、密度=4.526g/cmである
請求項2に記載の圧電単結晶。
【請求項4】
化学式SrY(POを有するリン酸イットリウムストロンチウム単結晶において、
非中心対称性の構造をもち、立方晶系で43m点群に属し、格子定数a=10.0814 Å ,b=10.0814 Å ,c=10.0814 Å, α=β=γ=90°で、室温から融点への相転移がない
ことを特徴とするリン酸イットリウムストロンチウム単結晶。
【請求項5】
480nm~4100nmの帯域で80%を超える光透過率を示す
請求項4に記載のリン酸イットリウムストロンチウム単結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電単結晶MRE(PO、その育成方法および応用に関し、光電気機能性結晶の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
光電気機能性結晶材料はマイクロエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス、通信、航空宇宙、現代の軍事技術など、さまざまなハイテク分野の重要な材料として世界中から高く評価されている。レーザーとオプトエレクトロニクスの開発により、機能性結晶の開発と応用がさらに促進されている。中国は、光電機能性結晶、特に無機非線形光学結晶の研究と応用において世界の最前線に立っている。にもかかわらず、光電気機能性結晶の分野における国際競争はますます激しくなっており、中国の結晶材料の研究者たちは、新しい結晶材料の開発に引き続き努力している。
【0003】
光電気機能性結晶は種類が豊富で、機能別に主に非線形光学結晶、圧電結晶、レーザー結晶、シンチレーション結晶などがある。現在利用可能な光電気機能性結晶材料は限られており、新しい光電デバイスを開発し、新しい応用を拡大するために、新しい機能性結晶材料の探索が急務である。MRE(PO構造をもつ化合物の研究では、現在、異なる希土類イオンをドープしたナノ蛍光体粉末の合成と発光特性に焦点が当てられている。たとえば、2008年、同済大学のXu Shuai氏らは、溶液ゲル法によりEu3+、Tb3+、Ce3+をドープしたSrY(PO)3粉末を調製した(非特許文献1:Journal of Optoelectronics And Advanced Materials Vol.10,No10, October 2008,p2727~2731)。また、別の例として、蛍光体粉末の合成では、2013年、長春応用化学研究所Guo Ningらは、高温固相法により立方晶ビスマス石型BaGd(PO蛍光体粉末を合成し、Eu2+、Mn2+をドープしたものの発光性能を研究した(非特許文献2:Chem Phys Chem 2013,14,192~197)。いくつかのMRE(POタイプの化合物粉末の調製が成功しているが、MRE(POタイプの構造をもつ単結晶および成長技術に関する報告はほとんどみられない。
【0004】
これまでのところ、リン酸イットリウムストロンチウム結晶に関する研究は報告されてない。SrY(POに関するいくつかの研究は、異なる希土類イオンがドープされたSrY(POナノ蛍光体粉末に限定されている。SrY(PO粉末合成について、2008年に、同済大学のXu Shuaiらは、希土類イオンをドープしたナノ蛍光体粉末の発光特性を研究するために、溶液ゲル法により、Eu3+、Tb3+、Ce3+をドープしたSrY(POを調製したが、単結晶の成長と光電気特性および応用についての研究を行わなかった(非特許文献3:Journal of Optoelectronics And Advanced Materials Vol.10,No10, October 2008,p2727~2731)。したがって、出願人は新しい圧電単結晶を開発するために、本発明を提案した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Optoelectronics And Advanced Materials Vol.10,No10, October 2008,p2727~2731
【文献】Chem Phys Chem 2013,14,192~197
【文献】Journal of Optoelectronics And Advanced Materials Vol.10,No10, October 2008,p2727~2731
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の有する問題点に鑑みて一般式MRE(POを有する圧電単結晶およびその育成方法を提供する。
【0007】
本発明は、また、リン酸イットリウムストロンチウムの単結晶を提供する。
【0008】
本発明は、また、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶の応用を提供する。
【0009】
用語の定義:
以下に、本明細書において用いられる用語の定義を説明する。
【0010】
「リン酸イットリウムストロンチウムの単結晶」とは、化学式SrY(POで、この分野における慣用名はSYPと略される。本発明においてSrY(POおよびSYPは、同じ意味を有する。
【0011】
「室温」とは、この技術分野での通常の知識として知られている意味を有し、一般的に25±5℃を指す。
【0012】
「結晶の分離」とは、引き上げた結晶を融液から切り離すことを指す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、引き上げ法を使用して、非中心対称性の構造を有するMRE(PO圧電単結晶を初めて成長された。MRE(PO圧電単結晶は、立方晶系の~43m点群に属する。光透過率が高く、吸収端が広いだけでなく、室温から融点への相転移がなく、圧電活性と非線形周波数変換特性があり、光電気機能性デバイスの分野で応用される見通しである。
【0014】
前記の課題を解決するためになされた本発明は、以下のとおり。本発明の技術案は以下に示すとおりである。
【0015】
一般式MRE(POを有する圧電単結晶を提供する。
【0016】
前記単結晶は非中心対称性の構造を持ち、立方晶系~43m点群に属し、その中、Mはアルカリ土類金属を示し、REは希土類元素を示す。
【0017】
本発明によれば、好ましくは、アルカリ土類金属は、Ba、CaまたはSrである。
【0018】
本発明によれば、好ましくは、希土類元素は、Y、La、GdまたはYbである。
【0019】
本発明の希土類元素は、Y、La、GdまたはYbの4金属に限定されるものではなく、他の希土類元素にも適用可能で、同様に優れた機械的特性を持ち、潮解しにくく、均一溶融特性を備えている。非中心対称性の構造から、非線形光学結晶や圧電結晶としての使用に適している。非線形光学結晶や圧電結晶として応用される利点は、結晶の融点が高く、室温から融点への相転移がなく、化学特性が安定的で、潮解しないことにある。非中心対称性の構造を有し、且つ融点が高い化合物として、高温圧電性と広い温度範囲の非線形光学の分野で明らかな利点がある。
【0020】
好ましくは、前記MRE(PO圧電単結晶は、以下の単結晶からいずれか1つ選択される。
【0021】
BaY(PO単結晶、BaLa(PO単結晶、BaYb(PO単結晶、CaGd(PO単結晶、SrY(PO単結晶、SrLa(PO単結晶、SrGd(PO単結晶;対応する化学名は順に、リン酸イットリウムバリウム単結晶、リン酸ランタンバリウム単結晶、リン酸イッテルビウムバリウム単結晶、リン酸ガドリニウムカルシウム単結晶、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶、リン酸ランタンストロンチウム単結晶、リン酸ガドリニウムストロンチウム単結晶となる。
【0022】
さらに、前記単結晶の構造パラメータは以下に示すとおりである。
【0023】
BaY(PO単結晶:立方晶系~43m点群;空間群I~43d;格子定数a=b=c=10.4655Å,密度=4.553g/cm3;
【0024】
BaLa(PO単結晶:立方晶系~43m点群;空間群I~43d;格子定数a=b=c=10.521Å,密度=4.77g/cm
【0025】
BaYb(PO単結晶:立方晶系~43m点群;空間群I~43d; 格子定数a=b=c=10.459Å,密度=5.149g/cm
【0026】
CaGd(PO単結晶:立方晶系 ~43m点群;空間群I~43d; 格子定数a=b=c=9.857Å,密度=3.9g/cm
【0027】
SrY(PO単結晶:立方晶系 ~43m点群;空間群I~43d;格子定数a=b=c=10.0814Å,みつど=4.093g/cm
【0028】
SrLa(PO単結晶:立方晶系~43m点群;空間群I~43d;格子定数a=b=c=10.192Å,密度=4.3g/cm
【0029】
SrGd(PO単結晶:立方晶系~43m点群;空間群 I~43d;格子定数a=b=c=10.114Å、密度=4.526g/cm
【0030】
本発明によれば、前記MRE(POの圧電単結晶はスペクトル分析により、BaY(PO単結晶、Ba3La(PO単結晶、BaYb(PO単結晶、CaGd(PO単結晶、SrLa(PO単結晶、SrGd(PO単結晶をそれぞれ測定すると、上記の単結晶はすべて325nm~4302nm帯域で70%を超える光透過率を示す。
【0031】
本発明によれば、前記MRE(POの圧電単結晶はインピーダンス法により、BaY(PO単結晶、Ba3La(PO単結晶、BaYb(PO単結晶、CaGd(PO単結晶、SrLa(PO単結晶、SrGd(PO単結晶をそれぞれ測定すると、上記の単結晶はすべて実効圧電定数deff>6pC/Nと圧電活性を持っていることを示す。
【0032】
化学式SrY(POを有するリン酸イットリウムストロンチウム単結晶であり、非中心対称性の構造を持ち、立方晶系の~43m点群に属し、格子定数はa=10.0814Å,b=10.0814Å,c=10.0814Å,α=β=γ=90°であり、室温から融点への相転移がない。
【0033】
さらに、前記リン酸イットリウムストロンチウム単結晶の融点は基本的には1850℃で、かつ、室温から融点への相転移がない。
【0034】
さらに、前記リン酸イットリウムストロンチウム単結晶を、スペクトル分析で測定すると、480nm~4100nmの帯域で80%を超える光透過率を示す。
【0035】
さらに、前記リン酸イットリウムストロンチウム単結晶をインピーダンス法で測定すると、実効圧電定数はd14=6~10pC/Nである。
【0036】
さらに、前記リン酸イットリウムストロンチウム単結晶をインピーダンス法で測定、計算すると、実効電気機械結合係数はk14=10~30%である。
【0037】
本発明は、下記工程(1)~(3)を含む、前記MRE(PO圧電単結晶の育成方法を提供する。
【0038】
工程(1)多結晶材料の合成において、一般式MRE(POによれば、原料のMCO、REおよびリン含有化合物を化学量論比によって正確に計量し、さらに、リン含有化合物を総質量(式中のリン化合物の化学量論的比率に基づく)の1.5~10%で過剰にする;
【0039】
前記の秤量した原料を均一に粉砕・混合した後、1回焼結し、好ましくはセラミックるつぼに入れて焼結し、焼結温度は800C~950Cで、且つ、温度を10~15時間一定に保ち、その後、降温し、一次焼結の原料を粉砕・精製し、均一に混合し、丸いケーキのようなブロックに押し込んで二次焼結し、焼結温度は1200C~1400Cで、且つ、それを20~40時間一定温度に保ち、固相反応によってMRE(PO多結晶材料を得る;
【0040】
工程(2)多結晶材料の溶融において、工程(1)で合成したMRE(PO多結晶材料を単結晶成長炉内のイリジウムるつぼに入れ、炉内を真空引きして、保護ガスの窒素またはアルゴンを充填して、中間周波数誘導加熱によりMRE(PO多結晶材料を加熱して溶融し、多結晶材料が完全に溶融した後、降温して、凝縮させた後、再び昇温してすべてを溶融させ、このように複数回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除き、次に、融液を10C~20C過熱し、0.5~2時間一定温度に保った後、均一に溶融したMRE(PO融液を得る;
【0041】
工程(3)引き上げ法による結晶の成長において、イリジウムロッドまたはMRE(PO単晶を種結晶として使用し、種結晶をMRE(PO融液につけて、種結晶の下端を垂直にし、融液とちょうど接触させて単結晶の成長を開始する;単結晶成長の技術的条件は次に示すとおり。成長温度は1800 oC~1950°Cで、種結晶の引き上げ速度は、ネック部成長時に、1~5mm/hであり、肩部成長時に、0.2~1mm/hに低下させ、定径部成長時に0.5~1mm/hであり、結晶が希望のサイズに成長すると、結晶を融液から切り離す。
【0042】
さらに好ましくは、引き上げて切り離した結晶を温度場で0.5~1時間一定温度に保ち、その後5~30℃/hの速度で室温に下げてMRE(PO結晶を得る。
【0043】
さらに、単結晶成長炉からMRE(PO結晶を取り出した後、1200~1400℃の温度でアニールする。好ましくは、アニーリング時間は24~48時間の範囲にあり、MRE(PO圧電単結晶成長中に発生する熱応力が完全に解放される。 好ましくは、MRE(PO圧電単結晶を高温マッフル炉に入れてアニールする。
【0044】
本発明によれば、好ましくは、工程(1)において、前記リン含有化合物は、NHPOまたはPである。さらに好ましくは、リン含有化合物をその総質量の3~6%で過剰にする。本発明によれば、工程(1)前記原料はすべて純度99.9%を超える高純度の原料で作られている;これらの原料は、従来の方法で購入できる。
【0045】
本発明によれば、好ましくは、工程(1)において、前記原料の一次焼結と二次焼結はセラミックるつぼで行われる。その中で、一次焼結の目的は、CO、NHとHOを分解および除去し、合成多結晶材料の純度を向上させることにある。
【0046】
本発明は、単結晶の成長に融液体の引き上げ法を使い、イリジウムるつぼを使用する場合、高温でのイリジウムの酸化を防ぐために、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で結晶を成長させる必要があり、とりわけ、窒素または不活性ガスの体積分率は90%~95%である。
【0047】
本発明によれば、工程(2)において、多結晶材料を溶融した後、降温、凝縮加熱、溶融を繰り返した後、融液中に発生した気泡を完全に排出し、結晶成長欠陥(気泡や介在物など)を減らして結晶成長の品質を向上させる 。好ましくは、降温-凝縮-加熱-溶融を3~4回繰り返すことが推奨される。
【0048】
本発明によれば、好ましくは、工程(3)においては、結晶成長工程はネック部成長、肩部成長、定径部成長、引き上げた結晶の融液からの切り離しと4つの工程を経る;その中、ネック部成長において、引き上げ速度は1~8mm/hで、種結晶直径が0.5~2.0mmまでに細くなると、0.5~5°C/hの速度でゆっくりと降温し、肩部を成長させる。肩部成長において、引き上げ速度を0.2~1mm / hに下げる;結晶の肩部直径が希望のサイズに達すると、温度を0.5~5°C/hの速度で上昇または下降し、温度を1800~1950°Cに維持して定径部を成長させる;結晶が希望のサイズに成長したら、引き上げた結晶を融液から切り離す。
【0049】
さらに好ましくは、前記の引き上げた結晶を融液から切り離す方法は以下に示すとおり。10~50°C/hの速度でゆっくりと温度を上げ、結晶の下端部が内側に収縮する傾向がある場合、引き上げ速度を5~20mm/hに上げ、結晶を引き上げて融液から切り離す。
【0050】
本発明によれば、好ましくは、単結晶成長のサイズは、一般的に直径15~30mm、高さ20~50mmである。このサイズのMRE(PO圧電単結晶の成長には、通常4~7日かかる。 前記結晶サイズは、結晶の通常の直径と全高を指す。
【0051】
本発明によれば、前記リン酸イットリウムストロンチウム単結晶は引き上げ法成長し、その技術の鍵は、原料の配合率にあり、特に過剰なリン酸塩原料の使用、多結晶材料の合成、および適切な温度および特定の温度場の条件下、非線形光学・圧電機能性材料の応用ニーズを満たす高光学品質の単結晶を得るすることにある。
【0052】
本発明は、以下に示す工程を含む前記リン酸イットリウムストロンチウム単結晶の育成方法を提供する。
【0053】
Sr含有化合物、Y含有化合物、P含有化合物の原料を混合・焼結して、リン酸イットリウムストロンチウムの多結晶材料を合成し、リン酸イットリウムストロンチウムの多結晶材料を溶融するために温度を上げ、降温、凝縮、加熱、溶融を複数回繰り返した後、均一に溶融したリン酸イットリウムストロンチウム溶融液を得る;
【0054】
その中で、化学式SrY(POによると、前記原料のなか、Sr含有化合物、Y含有化合物およびP含有化合物は化学量論比に基づいて配合し、さらにP含有化合物を質量百分率2.5~7.5%で過剰にする;
【0055】
イリジウムロッドまたはリン酸イットリウムストロンチウム単結晶を種結晶とし、前記種結晶の下端を前記リン酸イットリウムストロンチウム溶融液とちょうど接触させて引き上げ法で単結晶を成長させ、単結晶の成長温度は1700~1850℃で、種結晶の引き上げ速度は、ネック部成長時に、2~5mm/hであり、肩部成長時に、0.2~2mm/hに低下させ、定径部成長時に0.2~1mm/hである;結晶が希望のサイズに成長すると、結晶を引き上げて融液から切り離し、且つ、温度場で0.5~1時間一定温度に保ち、次に、30°C/h以下の速度で室温まで下げて、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶を得る
【0056】
好ましくは、前記Sr含有化合物、Y含有化合物およびP含有化合物はそれぞれ対応する酸化物、炭酸塩、リネート、ハロゲン化物、硝酸塩、シュウ酸塩、およびホウ酸塩のうちの少なくとも1つから独立して選択され、且つ、Sr、Y、およびP元素を含む化合物は、同時にハロゲン化物にすることはできない。
【0057】
さらに好ましくは、前記のSr含有化合物は、対応する酸化物、炭酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩または硝酸塩化合物から選択され、前記のY含有化合物は、対応する酸化物、硝酸塩または硝酸塩から選択され、前記のP含有化合物は対応する酸化物またはリン酸塩から選択される。最も好ましくは、前記のSr含有化合物はSrCOであり、Y含有化合物はYであり、P含有化合物はNHPOまたはPである。
【0058】
さらに好ましくは、前記原料のなか、Sr含有化合物、Y含有化合物およびP含有化合物は化学量論比に基づいて配合し、さらにP含有化合物を質量百分率3~5%で過剰にする。
【0059】
本発明によれば、好ましくは、リン酸イットリウムストロンチウム多結晶材料を調製する際に、原料を混合した後、単結晶の成長品質を確保するために高温焼結を2回行う。前記原料の混合と焼結は、次に示す方法で実行する必要がある。秤量した原料を粉砕し、均一に混合し、1回焼結し、焼結温度は800C~950Cで、温度を10~15時間一定に保ち、CO、NHとHOを分解して除去する;その後、室温まで下げ、一次焼結の原料を完全に粉砕、精製し、均一に混合し、丸いケーキのようなブロックに押し込んで2回焼結し、焼結温度は1200C~1400Cで、20~40時間一定温度に保ち、原料は固相反応を経て、リン酸イットリウムストロンチウム多結晶材料が得られる。さらに好ましくは、前記の焼結は、原料をセラミックるつぼに入れて焼結炉内で行われる。
【0060】
本発明によれば、好ましくは、前記リン酸イットリウムストロンチウム多結晶材料が溶融後、降温、凝縮、加熱、溶融を3~4回繰り返す。多結晶材料を加熱、溶融、降温、凝縮を複数回繰り返すことは、融液中に発生した気泡を完全に排出し、結晶成長欠陥(気泡や介在物など)を減らして結晶成長の品質を向上させるためである。さらに、前記リン酸イットリウムストロンチウム多結晶材料を溶融して、降温、凝縮加熱、溶融を何回か繰り返した後、次に、融液を10C~20C過熱し、0.5~2時間一定温度に保ち、さらに均一に溶融する。
【0061】
本発明によれば、好ましくは、イリジウムるつぼを使用する場合、高温でのイリジウムの酸化を防ぐために、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で単結晶を成長させる必要があり、そのなかも、窒素または不活性ガスの体積分率は90%~95%である。
【0062】
リン酸イットリウムストロンチウム単結晶の融点が白金の融点(1772℃)よりも高く、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶を初めて成長させる場合、融点の高いイリジウムを種結晶として使用する必要がある;リン酸イットリウムストロンチウム単結晶が得られた後、リン酸イットリウムストロンチウムを種結晶として使用すればよい。
【0063】
本発明によれば、前記結晶成長工程はネック部成長、肩部成長、定径部成長、引き上げた結晶の融液からの切り離しと4つの工程を経る;好ましくは、ネック部成長において、引き上げ速度は2~5mm/hで、種結晶直径が0.5~2.0mmまでに細くなると、0.5~5°C/hの速度でゆっくりと降温し、肩部を成長させる;肩部成長において、引き上げ速度を0.2~2mm/hに下げ、結晶の肩部直径が希望のサイズに達すると、温度を0.5~5°C/hの速度で上昇または下降し、定径部を成長させ、定径部成長時の引き上げ速度は0.4~0.7mm/hで、回転数は6~8r/minである;結晶が希望のサイズに成長したら、引き上げた結晶を融液から切り離す。
【0064】
さらに好ましくは、前記の引き上げた結晶を融液から切り離す方法は以下に示すとおり。10~50°C/hの速度でゆっくりと温度を上げ、結晶の下端部が内側に収縮する傾向がある場合、引き上げ速度を5~20mm/hに上げ、引き上げた結晶を融液から切り離す。
【0065】
本発明によれば、好ましくは、本発明のリン酸イットリウムストロンチウム単結晶育成方法はアニーリング工程を含む;前記のアニーリング工程は以下に示すとおり。リン酸イットリウムストロンチウム単結晶成長完了後、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶を取り出して、高温マッフル炉に入れて1200~1400°Cの温度で24~48時間アニールして、SrY(PO単結晶成長中に発生する熱応力が完全に解放される。
【0066】
実際の必要性に応じて、本発明において、成長されたSr3 Y (PO4)3単結晶のサイズは、一般的に高さ20~50mmで、直径15~30mmである。このサイズのSrY(PO)単結晶の成長には、通常4~5日かかる。 ここに、前記の単結晶のサイズは、結晶の通常の直径と全高を指す。
【0067】
1つの好ましい実施実態では、以下に示す(1)~(5)の工程を含む、前記のリン酸イットリウムストロンチウム単結晶の育成方法を提供する。
【0068】
工程(1)原料の計量において、リン酸イットリウムストロンチウムの化学式SrY(POによれば、原料のSrCO、YおよびNHPOを化学量論比を使用して計量し、さらに、NHPOをリン酸塩総質量の3~7%で過剰に計量する。
【0069】
工程(2)多結晶材料合成において、工程(1)で秤量した原料を均一に粉砕・混合した後、セラミックるつぼに入れて1回焼結し、焼結温度は800C~950Cで、且つ、温度を10~15時間一定に保ち、その後、室温まで降温し、一次焼結の原料を粉砕・精製し、均一に混合し、丸いケーキのようなブロックに押し込んでセラミックるつぼに入れて二次焼結し、焼結温度は1200C~1400Cで、且つ、20~40時間一定温度に保ち、このように、固相反応によって純粋なリン酸イットリウムストロンチウム多結晶材料を得られる;
【0070】
工程(3)多結晶材料の溶融において、工程(2)で合成したリン酸イットリウムストロンチウム多結晶材料を単結晶成長炉内のイリジウムるつぼに入れ、炉内を真空引きして、保護ガスの窒素またはアルゴンを充填して、中間周波数誘導加熱によりリン酸イットリウムストロンチウム多結晶材料を加熱して溶融し、前記の多結晶材料が完全に溶融後、降温して、凝縮させた後、再び昇温してすべてを溶融させ、このように複数回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除き、次に、融液を10 oC~20 oC過熱し、0.5~2時間一定温度に保った後、均一に溶融したリン酸イットリウムストロンチウム融液を得る;
【0071】
工程(4)引き上げ法による結晶の成長において、イリジウムロッドまたはリン酸イットリウムストロンチウム単結晶を種結晶として使用し、種結晶を工程(3)で得たリン酸イットリウムストロンチウム融液の中に入れて、種結晶の下端を垂直にし、融液とちょうど接触させて単結晶の成長を開始し、単結晶の成長温度は1700~1850°Cである;前記結晶成長工程はネック部成長、肩部成長、定径部成長、引き上げた結晶の融液からの切り離しと4つの工程を経る;ネック部成長時の引き上げ速度は2~5mm/hで、種結晶直径が0.5~2.0mmまでに細くなると、0.5~5°C/hの速度でゆっくりと降温し、肩部を成長させる;肩部成長において、引き上げ速度を0.2~2mm/hに下げ、結晶の肩部直径が希望のサイズに達すると、温度を0~5°C / hの速度で上昇または下降し、定径部を成長させる;結晶が希望のサイズに成長したら、引き上げた結晶を融液から切り離す。切り離した結晶を温度場で0.5~1時間一定温度に保ち、その後5~30℃/hの速度で室温に下げてリン酸イットリウムストロンチウム単結晶を得る。
【0072】
工程(5)アニール処理において、単結晶炉からリン酸イットリウムストロンチウム単結晶を取り出した後、それを高温マッフル炉に入れてアニールする必要があり、アニール温度は1200~1400℃で、アニーリング時間は24~48時間である。
【0073】
本発明によれば,さらに好ましくは、ネック部成長時の引き上げ速度は3~5mm/hで、回転数は8~15r/minで、肩部成長時の引き上げ速度を0.3~0.8mm/hに下げ、回転数は6~10r/minで、定径部成長時の引き上げ速度は0.5~0.6mm/hで、回転数は8r/minである。
【0074】
本発明によれば、好ましくは、前記原料はすべて純度99.9%を超える高純度の原料であり、単結晶成長に必要な原料は、従来の方法で購入できる。
【0075】
本発明が提供するリン酸イットリウムストロンチウムSrY(POは新型圧電単結晶であり、立方晶系の~43m点群に属し、非中心対称性の構造を持ち、優れた機械的特性を持ち、均一溶融特性を備えおり、且つ、潮解しにくく引き上げ法で短時間に大きなサイズの単結晶を成長できる;その非中心対称性の構造から、非線形光学結晶や圧電結晶としての使用に適している。
【0076】
本発明は、以下に示すとおりSrY(PO単結晶の用途を提供する。
【0077】
本発明が提供するSrY(PO単結晶の非線形光学結晶と圧電結晶としての用途を提供する。 好ましくは、前記SrY(PO単結晶のレーザーホスト結晶、非線形周波数変換結晶および高温圧電結晶としての用途を提供する。
【0078】
本発明によれば、前記のSrY(PO単結晶の非線形光学結晶および圧電結晶としての用途は、以下に示すようにさらに詳細に説明される。
【0079】
1.非線形光学結晶としての応用において、X線配向装置を使って、SrY(PO結晶の結晶軸を配向する。リン酸ストロンチウムイットリウム単結晶を2090nmレーザーに通すと、周波数倍増効果が観察され、この単結晶は2090nm波長レーザーの有効周波数倍増を実現できることを示す。 その中、図12に示すように、AgGaS結晶と比較してみた。
【0080】
2.圧電単結晶としての応用において、インピーダンス法で測定すると、単結晶の実効圧電定数はd14=6~10PC/Nである。インピーダンス解析法で測定と計算によって得られた単結晶の実効電気機械結合係数は、k14=10~30%である。切削方法の異なるSrY(PO単結晶を室温から1000Cに上げて、単結晶はまだ圧電活性を持っていることが観察される。図14に示すように、単結晶は圧電分野、特に高温圧電分野における応用の可能性をを示している。そのなか、前記のSrY(PO単結晶の切削方向は、XZ、XYまたはZXで、またはXZ、XY、ZXで、それぞれXまたはYまたはZを中心に回転して得られる単結晶切削方向である。
【0081】
さらに、本発明は、前記のSrY(PO単結晶の非線形光学機能デバイスおよび圧電デバイスにおける応用を提供する。好ましくは、前記の非線形光学機能デバイスは、レーザー周波数変換器、光パラメトリック増幅器、光パラメトリック発振器、またはラマン周波数変換器を含む;好ましくは、前記の圧電デバイスは、圧電共振器、発振器、フィルター、圧電トランスデューサー、圧電圧力センサー、音響トランスデューサーまたは超音波センサーを含む。
【0082】
上記の方法で明確に定義されていないものはすべて、この分野の既存技術に基づくことができる。
【発明の効果】
【0083】
1.本発明者は、研究により、MRE(PO圧電単結晶が他の同形化合物とは異なり、その均一な溶融ゾーンは非常に狭いくて、リン酸塩または五酸化二リンをその総質量の1.5~10%で過剰に加えてこそ、単結晶成長中の五酸化二リンの揮発による成分偏差を補償し、高品質の単結晶を取得し、高光学品質の単結晶の技術的条件を満たすことができることを発見した。なお、化学量論比を使用して原料を配合すると、単結晶を成長させることができないことを発見した。
【0084】
2.本発明の方法で、多結晶材料を調製する場合、原料を混合した後、高温焼結を2回行い、一次焼結は融点以下の温度で行いCO、NHとHOを分解、除去する;次に、固相反応温度で二次焼結を行い、高純度の多結晶材料を調製して、単結晶成長の品質を確保する。単結晶の成長には、完全な融点で種結晶を入れる必要がある。高品質の単結晶を得るために、単結晶成長の全工程において、引き上げ速度と回転数の制御がかなめとなる。本発明は、引き上げ法利用で短時間に大きなサイズで高品質の光電機能性MRE(PO単結晶を成長できる。
【0085】
3.本発明が提供する光電機能性を備えた新型MRE(PO圧電単結晶シリーズは優れた機械的特性を持ち、潮解しにくく、均一溶融特性を備えている。非中心対称性の構造から、非線形光学結晶や圧電結晶としての使用に適している。非線形光学結晶や圧電結晶として応用される利点は、結晶の融点が高く、室温から融点への相転移がなく、化学特性が安定的で、潮解しないことにある。非中心対称性の構造と高融点を有する希少な化合物として、高温圧電性と広い温度範囲の非線形光学の分野で明らかな利点がある。また、この単結晶シリーズは溶融粘度が小さく、単結晶成長過程で不純物を除去しやすく、成長速度が速いから、高品質の単結晶が容易に得られて、その後の応用研究開発に有利ある。
【0086】
4.本発明者らは、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶が、均一溶融ゾーンが非常に狭いという点で他の同形化合物とは異なることを偶然発見した。本発明は、過剰なP含有化合物(リン酸塩または五酸化二リン)を総質量の2.5~7.5%で過剰に加える方法を創造的に採用して、高光学品質の技術的条件を満たす高品質のリン酸イットリウムストロンチウム単結晶を育成できた。研究により、従来通りに化学量論比を使用して原料を配合すると、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶を育成できなく、過剰に加えたリン酸塩または五酸化リンの量が低すぎる場合、得られたリン酸イットリウムストロンチウム単結晶の品質が高光学品質の技術的条件を満たさないことが分かる。
【0087】
5.本発明は新型圧電単結晶としてSrY(POを提供する。SrY(PO単結晶は非線形光学結晶や圧電結晶として応用される時に、結晶の融点が1800℃を超え、室温から融点への相転移がなく、化学特性が安定的で、潮解しないことなどが利点であり、非中心対称性の構造と高融点を有する希少な化合物として高温圧電性と広い温度範囲の非線形光学の分野で優位性が顕著である。また、この単結晶シリーズは溶融粘度が小さく、単結晶成長過程で不純物を除去しやすく、成長速度が速いから、高品質の単結晶が容易に得られて、その後の応用研究開発に有利ある。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】MR(POシ単結晶シリーズのXRD状態図である。
図2】実施例1で成長されたBaY(PO単結晶の写真です。
図3】実施例2で成長されたBaY(PO単結晶の写真である。
図4】実施例3で成長されたCaGd(PO単結晶の写真である。
図5】実施例1のBaY(PO単結晶の透過スペクトルである。
図6】実施例1のBaY(PO単結晶の誘電スペクトルである。
図7】比較例1の化学量論比に従って成長されたBaY(PO多結晶の写真である。
図8】比較例2で得られた得られた、光学的品質低いCaGd(PO単結晶の写真である。
図9】実施例5で成長されたSrY(PO単結晶の写真である。
図10】SrY(PO単結晶のX線回折スペクトルである。
図11】比較例3の方法で得られた生成物の写真である。
図12】実施例5のSrY(PO単結晶の2090nm周波数倍増データである。比較としてAgGaS単結晶を使う。横軸はリン酸イットリウムストロンチウム単結晶とAgGaS単結晶粉末サンプルの粒度であり、縦軸は相対強度である。
図13】実施例5のSrY(PO単結晶の透過スペクトルである。
図14】実施例7のXY切削方向のSrY(PO単結晶の誘電スペクトルである。
図15】実施例9のZX切削方向のSrY(PO単結晶の圧電効果のインピーダンス位相角スペクトルである。
図16】比較例4で成長されたSrY(PO単結晶である。
図17】実施例11で成長されたBaYb(PO単結晶の写真である。
図18】実施例11で成長されたBaYb(PO単結晶のX線回折パターンである。
図19】実施例11のBaYb(PO単結晶の誘電スペクトルである。
図20】実施例11のBaYb(PO単結晶の抵抗率プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例のなか、1~6実施例の原料の純度は99.9%を超えている。
【実施例1】
【0090】
下記(1)~(5)工程を含むリン酸イットリウムバリウム単結晶の育成方法である。
【0091】
工程(1)において、BaCO、YとNHPOを原料にし、リン酸イットリウムバリウムの化学式BaY(POにより、化学量論比で原料を配合し、ただし、リン酸塩はリン酸二水素アンモニウム総質量の5%で過剰にする;
【0092】
工程(2)において、前記の工程(1)で配合した原料を均一に混合した後、アルミナ坩堝内に入れ、マッフル炉内で1次焼結し、焼結温度は850±50℃で且つ温度を12時間一定に保ち、原料のなかのCO、NHとHOを除去する;
降温して、1次焼結の原料を粉砕、精製後に再び均一に混合し、円柱型の金型でブロック状に押し込み、アルミナ坩堝内に入れて固相反応させ、焼結温度は1350℃で且つ温度を40時間一定に保ち、前記のリン酸イットリウムバリウムの多結晶を得る;
【0093】
工程(3)において、前記の工程(2)で合成したリン酸イットリウムバリウムの多結晶を単結晶炉内のイリジウム坩堝の中に入れて、炉内を真空引きし、且つ、窒素を保護ガスに充填し、中間周波数誘導加熱により多結晶を加熱して溶融し、多結晶材料が完全に溶融した後、降温して、凝縮させた後、再び昇温してそのすべてを溶融させ、このように3回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除く。その後、融液を20 oC過熱し、0.5~2時間一定温度に保った後、均一に溶融したリン酸イットリウムバリウム融液を得る;
【0094】
工程(4)において、リン酸イットリウムバリウムの多結晶棒を種結晶にし、ゆっくりと工程(3)の多結晶融液につけて、種結晶の上端部を垂直にし、融液とちょうど接触させて単結晶の成長を開始する;
単結晶成長の技術的条件は次に示すとおり:温度1850±50℃である;種結晶の引き上げ速度は、ネック部成長時に5mm/hであり、種結晶の直径が約1mmまでに収縮する時に、1~4℃/hの速度でゆっくり降温し、肩部を成長させる;肩部成長時の引き上げ速度は0.5~1mm/hに低下する。結晶肩部の直径が希望のサイズ22mm前後に成長すると、再び1~4℃/hの速度で昇温・降温し、定径部を成長させる。定径部成長時の引き上げ速度は0.5~0.7mm/hである。結晶が希望サイズ40mm前後までに成長すると、まず15~20℃/hの速度でゆっくりと昇温して、昇温にともない結晶の下端部に内側に収縮するように見えた時に、引き上げ速度10~15mm/hまでにあげて結晶を融液から切り離す。
切り離した結晶を温度場で45分間一定温度に保ち、その後、10C/hの速度で室温まで降温して、リン酸イットリウムバリウム結晶を得る。
【0095】
工程(5)において、結晶を取り出した後、高温電気抵抗炉内にいれて1300℃の温度でアニールし、アニーリング時間は24時間にして、BaY(PO結晶成長中に発生した熱応力が完全に解放される。
【0096】
図2に示されるとおり、BaY(PO単結晶は高光学品質を有する。
【実施例2】
【0097】
下記(1)~(5)工程を含むリン酸ランタンバリウム単結晶の育成方法である。
【0098】
工程(1)において、BaCO、LaとNHPOを原料にし、リン酸ランタンバリウムの化学式Ba3La(POにより、化学量論比で原料を配合し、さらに、NHPOをリン酸塩の総質量の5%で過剰にする;
【0099】
工程(2)において、工程(1)で配合した原料を均一に混合した後、アルミナ坩堝内に入れ、マッフル炉内で1次焼結し、焼結温度は900Cで且つ温度を10時間一定に保ち、CO、HOとNHを分解、除去する;
降温して、1次焼結の原料を粉砕、精製後に再び均一に混合し、ブロック状に押し込み、アルミナセラミック坩堝内に入れて固相反応させ、焼結温度は1400℃で且つ温度を30時間一定に保ち、前記のリン酸ランタンバリウムの多結晶を得る;
【0100】
工程(3)において、 工程(2)で合成したリン酸ランタンバリウムの多結晶を単結晶炉内のイリジウム坩堝の中に入れ、炉内を真空引きし、イリジウム坩堝の酸化を防ぐために、窒素を保護ガスに充填し、中間周波数誘導加熱により多結晶を加熱して溶融し、多結晶材料が完全に溶融した後、降温して、凝縮させた後、再び昇温してそのすべてを溶融させ、このように2~4回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除く。その後、融液を15oC前後過熱し、1時間一定温度に保った後、均一に溶融したリン酸ランタンバリウム融液を得る;
【0101】
工程(4)において、イリジウムロッドを種結晶として使用し、ゆっくりと工程(3)の多結晶融液につけて、種結晶の上端部を垂直にし、融液とちょうど接触させて単結晶の成長を開始する;
単結晶成長の技術的条件は次に示すとおり:温度1850±50℃である;種結晶の引き上げ速度は、ネック部成長時に6mm/hであり、種結晶の直径が約1.5mmまでに収縮する時に、5℃/hの速度でゆっくり降温し、肩部を成長させる;肩部成長時の引き上げ速度は0.3mm/hに低下する。結晶肩部の直径が希望のサイズ30mm前後に成長すると、再び0~5℃/hの速度で昇温・降温し、定径部を成長させる。定径部成長時の引き上げ速度は0.6mm/hである。結晶が希望サイズ50mm前後までに成長すると、まず20℃/hの速度でゆっくりと昇温して、昇温にともない結晶の下端部に内側に収縮するように見えた時に、引き上げ速度を15mm/hまでにあげて結晶を融液から切り離す。
【0102】
工程(5)において、切り離した結晶を温度場で1時間一定温度に保ち、その後、10oC/hの速度で室温まで降温して、リン酸ランタンバリウム単結晶を得る。図3に示されるとおり、BaLa(PO)単結晶は高光学品質を有する。
【0103】
結晶のアニール処理は実施例1と同じである。
【実施例3】
【0104】
下記(1)~(4)工程を含むリン酸ガドリニウムカルシウム単結晶の育成方法である。
【0105】
工程(1)において、 以CaCO、GdとNHPOを原料にし、リン酸ガドリニウムカルシウムの化学式CaGd(POにより、化学量論比で原料を配合し、ただし、リン酸塩をリン酸二水素アンモニウム総質量の3.5%で過剰にする;
【0106】
工程(2)において、工程(1)で配合した原料を均一に混合した後、アルミナ坩堝内に入れ、マッフル炉内で1次焼結し、焼結温度は900℃で且つ温度を13時間一定に保ち、CO、HOとNHを除去する;
降温して、1次焼結の原料を粉砕、精製後に再び均一に混合し、円柱型の金型でブロック状に押し込み、アルミナ坩堝内に入れて固相反応させ、焼結温度は1350℃で且つ温度を30時間一定に保ち、前記の前記的リン酸ガドリニウムカルシウム多結晶を得る;
【0107】
工程(3)において、工程(2)で合成したリン酸ガドリニウムカルシウム多結晶を単結晶炉内のイリジウム坩堝の中にいれ、炉内を真空引きして、且つ、窒素を保護ガスに充填し、中間周波数誘導加熱により多結晶を加熱して溶融し、多結晶材料が完全に溶融した後、降温して、凝縮させた後、再び昇温してそのすべてを溶融させ、このように3回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除く。その後、融液を20C前後過熱し、0.5時間一定温度に保った後、均一に溶融したリン酸ガドリニウムカルシウム融液を得る;
【0108】
工程(4)において、イリジウムロッドを種結晶として使用し、ゆっくりと工程(3)の多結晶融液につけて、種結晶の上端部を垂直にし、融液とちょうど接触させて、単結晶の成長を開始する;
単結晶成長の技術的条件は次に示すとおり:温度1850±50℃である;種結晶の引き上げ速度は、ネック部成長時に5mm/hであり、種結晶の直径が約1mmまでに収縮する時に、3℃/hの速度でゆっくり降温し、肩部を成長させる;肩部成長時の引き上げ速度は0.3~1mm/hに低下する。結晶肩部の直径が希望のサイズ15~25mm前後に成長すると、再び1~4℃/hの速度で昇温・降温し、定径部を成長させる。定径部成長時の引き上げ速度は0.5mm/hである。結晶が希望サイズ30~50mm前後までに成長すると、まず25℃/hの速度でゆっくりと昇温して、昇温にともない結晶の下端部に内側に収縮するように見えた時に、引き上げ速度15~20mm/hまでにあげて結晶を融液から切り離す。
切り離した結晶を温度場で45分間一定温度に保ち、その後、10C/hの速度で室温まで降温して、リン酸ガドリニウムカルシウム結晶を得る。図4に示されるとおり、CaGd(PO単結晶は高光学品質を有する。
【0109】
結晶のアニール処理は実施例1と同じである。
【実施例4】
【0110】
下記(1)~(4)工程を含むリン酸ランタンストロンチウム単結晶の育成方法である。
【0111】
工程(1)において、SrCO、LaとNHPOを原料にし、リン酸ランタンストロンチウムの化学式Sr3La(PO4)3により、化学量論比で原料を配合し、ただし、リン酸塩をリン酸二水素アンモニウム総質量の3%で過剰にする;
【0112】
工程(2)において、工程(1)で配合した原料を均一に混合した後、アルミナ坩堝内に入れ、マッフル炉内で1次焼結し、焼結温度は850Cで且つ温度を15時間一定に保ち、CO、HOとNHを除去する;
降温して、1次焼結の原料を粉砕、精製後に再び均一に混合し、円柱型の金型でブロック状に押し込み、アルミナ坩堝内に入れて固相反応させ、焼結温度は1300~1400℃で且つ温度を20~30時間一定に保ち、前記のリン酸ランタンストロンチウム多結晶を得る;
【0113】
工程(3)において、工程(2)で合成したリン酸ランタンストロンチウム多結晶を単結晶炉内のイリジウム坩堝の中に入れ、炉内を真空引きして、且つ、窒素を保護ガスに充填し、中間周波数誘導加熱により多結晶を加熱して溶融し、多結晶が完全に溶融した後、降温して、凝縮させた後、再び昇温してそのすべてを溶融させ、このように3回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除く。その後、融液を20C過熱し、0.5時間一定温度に保った後、均一に溶融したリン酸ランタンストロンチウム融液を得る;
【0114】
工程(4)において、イリジウムロッドを種結晶として使用し、ゆっくりと工程(3)の多結晶融液につけて、種結晶の上端部を垂直にし、融液とちょうど接触させて、単結晶の成長を開始する;
単結晶成長の技術的条件は次に示すとおり:温度は1800~1900℃である;種結晶の引き上げ速度は、ネック部成長時に6mm/hであり、種結晶の直径が約1mmまでに収縮する時に、1~3°C/hの速度でゆっくり降温し、肩部を成長させる;肩部成長時の引き上げ速度は0.4mm/hに低下する。結晶肩部の直径が希望のサイズ15~25mmに成長すると、再び1~4°/hの速度で昇温・降温し、定径部を成長させる。定径部成長時の引き上げ速度は0.6mm/hである。結晶が希望サイズ20~35mmまでに成長すると、まず20℃/hの速度でゆっくりと昇温して、昇温にともない結晶の下端部に内側に収縮するように見えた時に、引き上げ速度10~15mm/hまでにあげて結晶を融液から切り離す。
切り離した結晶を温度場で45分間一定温度に保ち、その後、10C/hの速度で室温まで降温して、リン酸ランタンストロンチウム単結晶を得る。
【0115】
結晶のアニール処理は実施例1と同じである。
【0116】
(比較例1)
化学量論比での配合によるリン酸イットリウムバリウム単結晶の育成方法である。
上記の実施例1と同様であるが、ただし、工程(1)において、BaCO、YとNHPOを結晶育成用の原料にし、リン酸イットリウムバリウムの化学式BaY(POにより化学量論比で配合し、NHPOを過剰にしない。結果からは、リン酸イットリウムバリウム原料溶融後に組成偏差と成層現象が発生し、種結晶を引き上げたら、BaY(PO単結晶に成長しなかったことが分かる。生成物は図7に示すとおりで、BaY(PO多結晶である。
【0117】
(比較例2)
NHPOを0.5%過剰にする、リン酸ガドリニウムカルシウム単結晶の育成方法である。
上記の実施例3と同様の方法であるが、ただし、工程(1)において、原料のCaCO、GdとNHPO原料を化学式CaGd(POにより化学量論比で配合し、さらに、NHPOを質量百分率0.5%で過剰にする。生成した単結晶は図8に示すとおりに品質低い。研究により、この例の中、リン酸塩はただ0.5%過剰だけでは、単結晶の成長に伴うリンの揮発による組成偏差を補うできなくて、リン酸ガドリニウムカルシウム単結晶の低い結晶化度をもたらすことが分かる。
【実施例5】
【0118】
下記(1)~(5)工程を含むリン酸イットリウムストロンチウム単結晶の育成方法である。
【0119】
工程(1)において、SrCO、Y3とNHPOを結晶育成の原料にし、リン酸イットリウムストロンチウムの化学式SrY(POにより、化学量論比で配合し、さらに、NHPOをリン酸塩総質量の3%で過剰にする;
【0120】
工程(2)において、工程(1)配合した原料均一に混合した後、アルミナ坩堝内にいれ、1次焼結し、焼結温度は900℃で且つ、温度を10時間一定に保ち、CO、HOとNHを分解、除去する;
降温して、一次焼結の原料を粉砕、精製後に再び均一に混合し、ブロック状に押し込み、アルミナセラミック坩堝内で固相反応させ、焼結温度は1250℃で、且つ、温度を48時間一定に保ち、前記のリン酸イットリウムストロンチウムの多結晶を得る;
【0121】
工程(3)において、工程(2)で得られたリン酸イットリウムストロンチウムの多結晶を単結晶炉内のイリジウム坩堝内に入れ、炉内に真空引きして且つ、イリジウム坩堝の酸化を防ぐために、窒素を保護ガスに充填し、中間周波数誘導加熱で多結晶を加熱して溶融し、多結晶完全に溶融後、降温して、凝縮させた後、然后再び昇温してそのすべてを溶融させ、このように3回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除く。その後、融液を20℃前後過熱し、一定温度に1時間保ち、均一に溶融したリン酸イットリウムストロンチウム融液を得る;
【0122】
工程(4)において、イリジウムロッドを種結晶に使い、ゆっくりと工程(3)の多結晶融液中につけて、種結晶の上端部を垂直にし、融液とちょうど接触させて、単結晶の成長を開始する;
単結晶成長の技術的条件は以下に示すとおり:成長温度は1800℃である;種結晶のネック部成長時の引き上げ速度は3~3.5mm/hで、回転数は8~15r/minである;種結晶直径が細くなり1mmまでになったとき、0.5℃/hの速度でゆっくりと降温し、肩部を成長させる;肩部成長時の引き上げ速度は0.3~0.4mm/hまでに低下させ、回転数は6~8r/minである;結晶肩部の直径が希望のサイズ20mmになった場合、再び0.3℃/hの速度で温度を昇降し、定径部を成長させる;定径部成長時の引き上げ速度は0.5mm/hで、回転数は8r/minである。結晶は高さ36mm前後に成長した場合、20℃/hの速度で温度を上げ、昇温にともない結晶の下端部が内側に収縮するように見えた時、引き上げ速度を5mm/hまでに上げて結晶を融液から切り離す。切り離した結晶を、温度場中で一定温度に1時間保ち、10℃/hの速度で室温までに下げて、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶を得る。
【0123】
工程(5)において、結晶を取り出した後、高温電気抵抗炉内にいれて1300℃の温度でアニール処理し、アニーリング時間は24時間であり、SrY(PO単結晶成長中に発生した熱応力が完全に解放される。
【0124】
得られたSrY(PO単結晶の実物写真は図9に示される。得られたSrY(PO単結晶のX線回折スペクトルは図10に示すとおりに、2θ=27.88°、33.13°と45.74°などに特徴的なピークを示す。
【0125】
得られたSrY(PO単結晶は周波数倍増効果を2090nmの光を通した時周波数倍増が観察され、単結晶は2090nm波長レーザーの効果的な周波数倍増を実現できることを示す。図12に示すように、AgGaS2単結晶と比較したら、SrY(PO単結晶が赤外線帯域で効果的な周波数増倍を実現できることを示す。
【0126】
前記SrY(PO単結晶の透過スペクトルは図13に示される。480nm~4100nmの帯域では、透過率が80%を超えており、成長された単結晶の光学的均一性が良好で、吸収カットオフエッジが180nm未満であることが示されている。前記の単結晶が深紫外線帯域における応用の可能性を示している。
【実施例6】
【0127】
下記(1)~(5)工程を含むリン酸ガドリニウムストロンチウム単結晶の育成方法である。
【0128】
工程(1)において、SrCO、GdとPを結晶の成長原料にし、リン酸ガドリニウムストロンチウムの化学式SrGd(POにより、化学量論比で配合し、さらに、Pを総質量の5%で過剰にする;
【0129】
工程(2)において、工程(1)で配合した原料を均一に混合した後、アルミナ坩堝内にいれて、1次焼結し、焼結温度は900oCで、且つ、一定温度に15時間保ち、COとHOを分解、除去する;
降温し、一次焼結した原料を粉砕、精製後に再び均一に混合し、ブロック状に押し込み、アルミナセラミック坩堝内にいれて固相反応させ、焼結温度は1300oCで且つ、一定温度に48時間保ち、前記のリン酸ガドリニウムストロンチウム多結晶を得る;
【0130】
工程(3)において、工程(2)で得られたリン酸ガドリニウムストロンチウム多結晶を単結晶炉内のイリジウム坩堝中に入れ、炉内を真空引きして、且つ、イリジウム坩堝の酸化を防ぐために窒素を保護ガスを充填する。中間周波数誘導加熱で多結晶を加熱して溶融する。多結晶が完全に溶融後、降温凝縮させた後、然后再び昇温してそのすべてを溶融させ、このように3回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除く。その後、融液を20℃前後過熱し、一定温度に1時間保ち、均一に溶融したリン酸ガドリニウムストロンチウム融液を得る;
【0131】
工程(4)において、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶を種結晶にし、ゆっくりと工程(3)による多結晶融液中につけて、種結晶の上端部を垂直にし、融液とちょうど接触させて、単結晶の成長を開始する;
単結晶成長の技術的条件は以下に示す:成長温度は1800℃である;種結晶ネック部成長時の引き上げ速度は4~4.5mm/hで、回転数は8~15r/minである;種結晶直径が1mmまでに収縮する時、0.8℃/hの速度でゆっくりと降温し、肩部を成長させる;肩部成長時の引き上げ速度は0.4~0.5mm/hまでに下げ、回転数は6~8r/minである;結晶肩部の直径が希望のサイズ20mmになった時、再び0.2℃/hの速度で温度を昇降して、定径部を成長させる;定径部成長時の引き上げ速度は0.6mm/hで、回転数は8r/minである。結晶が高さ30mmに成長したときに、20℃/hの速度で昇温し、昇温にともない結晶の下端部が内側に収縮するように見えた場合、引き上げ速度を6mm/hまでに上げて結晶を融液から切り離す。切り離した結晶を、温度場中で一定温度に1時間保ち、15℃/hの速度で室温まで降温し、リン酸ガドリニウムストロンチウム単結晶を得る。
【0132】
工程(5)において、単結晶を取り出した後、高温電気抵抗炉内にいれて温度1300oCでアニール処理し、アニーリング時間は24時間にし、SrGd(PO単結晶成長中に発生した熱応力が完全に解放される。
【0133】
得られたSrGd(PO単結晶は直径20mm、高さ30mmである;2090nm光を通したときに周波数倍増効果を観察される。テストにより、前記単結晶は480nm~4100nmの帯域では、透過率が80%を超え、光学的均一性が高いことが分かる。
【0134】
(比較例3)
上記の実施例5と同様であるが、ただし、工程(1)において、原料のSrCO3、Y2O3とNHPOは化学式SrY(POにより化学量論比で配合し、NHPOは過剰にしない。結果からは、リン酸イットリウムストロンチウム原料溶融後に組成偏差と成層現象が発生し、種結晶を引き上げてSrY(PO単結晶に成長できなかったことが分かる。生成物の実物写真は図3に示すとおりで、この生成物はSrY(PO多結晶である。
【0135】
(比較例4)
上記の実施例5と同じであるが、ただし、工程(1)において、原料のSrCO、YとNHPOは化学式SrY(POにより化学量論比で配合し、さらに、NHPOを0.5%過剰にする。
【0136】
生成した単結晶は図8に示すとおりに品質低くて、形状が不規則である。研究により、当該例の中、リン酸塩はただ0.5%過剰だけでは、単結晶の成長に伴うリンの揮発による組成偏差を補うできなくて、リン酸イットリウムストロンチウム単結晶の低い結晶化度をもたらすことが分かる。
【実施例7】
【0137】
実施例5で成長されたSrY(PO単結晶を物理圧電軸を基準に配向させた後、物理軸のX方向およびY方向に沿って、X方向を厚さに、Y方向を長さに、Z方向を幅に結晶板を加工する。結晶板の寸法は厚さ×幅×長さ= 1.2mm×3.5mm×10.0mmで、厚さ方向の結晶面には導電性電極がめっきされている。 インピーダンスアナライザーで前記の結晶板サンプルを試験すると、圧電共振と反共振のピークが検出され、単結晶が当該切削方向に圧電効果を持っていることがわかる。特に、温度を1000℃に上げても、圧電共振と 反共振ピークは依然として観察されており、前記単結晶が高温圧電結晶として応用できることを示している。 図14をご参照ください。
【実施例8】
【0138】
実施例6で成長されたSrY(PO単結晶を物理圧電軸を基準に配向させた後、物理軸のX方向およびY方向に沿って、X方向を厚さに、Y方向を長さに、Z方向を幅に結晶板を加工する。結晶板の寸法は、厚さ×幅×長さ=(0.5~1.5)mm×(3.0~4.0)mm×(8.0~12.0)mmで、厚さ方向の結晶面には導電性電極がめっきされている。
【0139】
インピーダンスアナライザーで前記の結晶板サンプルをテストすると、圧電共振と反共振のピークが検出され、この単結晶が切削方向に圧電効果を持っていることが示される。実施5と同様に、温度を1000℃に上げても、圧電共振および反共振のピークが依然として観察され、単結晶が高温圧電結晶として適用できることを示している。前記サンプルの共振周波数と反共振周波数は、それぞれ881.8kHzと887.8kHzに現れる。
【実施例9】
【0140】
実施例5で成長されたSrY(PO単結晶を物理圧電軸を基準に配向させた後、物理軸のX方向およびY方向に沿って、Z方向を厚さに、X方向を長さに、Y方向を幅に結晶板を加工する。結晶板の寸法は厚さ×幅×長さ= 1.0mm×3.5mm×10.0mmで、厚さ方向の結晶面には導電性電極がめっきされている。
【0141】
インピーダンスアナライザーで結晶板サンプルをテストすると、圧電共振と反共振のピークが検出され、単結晶が切削方向に圧電効果を持っていることが示される。温度を1000℃に上げても、単結晶は依然として圧電活性をもっていることから、高温圧電単結晶に使えることがわかる。SrY(PO単結晶の圧電活性は、切削方向をとわず、温度を室温から1000℃に上げても変化しない。インピーダンス分析図は図15に示される。
【実施例10】
【0142】
実施例6で成長されたSrY(PO単結晶を物理圧電軸X、Y、Zを基準に配向させた後、X、Y、Z軸に沿ってθ度(θ=0~180o)回転させて、切削方向の異なるSrY(PO単結晶に加工する。次に、実施例5を参照して結晶板を加工する。結晶板の寸法は、厚さ×幅×長さ=(0.5~1.5)mm×(3.0~4.0)mm×(8.0~12.0)mmであり、厚み方向の結晶面は、導電性電極でメッキされている。
【0143】
上記の切削方向が異なるSrY(PO単結晶板サンプルをインピーダンスアナライザーでテストすると、すべてのサンプルに圧電共振と反共振のピークが検出され、この単結晶は空間のすべての方向で圧電効果を持っていることがわかる。前記単結晶は切削方向にせよ、1000℃の温度でも圧電活性が変化しないから、高温圧電結晶として利用できる。
【実施例11】
【0144】
下記(1)~(5)工程を含むリン酸イッテルビウムバリウム単結晶の育成方法である。
【0145】
工程(1)において、BaCO3、Yb2O3とNHPOを結晶の成長原料に使い、リン酸イッテルビウムバリウムの化学式BaYb(POにより、化学量論比で配合し、さらに、NHPOをリン酸塩総質量の5%で過剰にする;
【0146】
工程(2)において、工程(1)で配合した原料を均一に混合した後、アルミナ坩堝内に入れ、1次焼結し、焼結温度は900℃で且つ、一定温度に10時間保ち、CO、HOとNHを分解、除去する;
降温し、1次焼結した原料を粉砕、精製後に再び均一に混合し、ブロック状に押し込み、アルミナセラミック坩堝内で固相反応し、焼結温度は1250℃且つ、一定温度に48時間保ち、前記のリン酸イッテルビウムバリウム多結晶を得る;
【0147】
工程(3)において、工程(2)で得られたリン酸イッテルビウムバリウム多結晶を単結晶炉内のイリジウム坩堝中にいれて、炉内を真空引きして、且つ、イリジウム坩堝の酸化を防ぐために窒素を保護ガスに充填し、中間周波数誘導加熱により多結晶を加熱して溶融し、多結晶が完全に溶融後、降温度して凝縮させた後、再び昇温してそのすべてを溶融させ、このように3回繰り返して、融液に発生した気泡を取り除く。その後、融液を20℃前後過熱し、一定温度に1時間保ち、均一に溶融したリン酸イッテルビウムバリウム融液を得る;
【0148】
工程(4)において、イリジウムロッドを種結晶に使い、ゆっくりと工程(3)で得た多結晶融液中につけて、種結晶の上端部を垂直にし、融液とちょうど接触させて、単結晶の成長を開始する;
単結晶成長の技術的条件は以下に示すとおり:成長温度は1800℃である;種結晶ネック部成長時の引き上げ速度は1~3.5mm/hで、回転数は6~12r/minである;種結晶直径が1mmまでに収縮する際に、0.5℃/hの速度でゆっくりと降温し、肩部を成長させる;肩部成長時に、引き上げ速度を0.3~0.5mm/hまでに低下させ、回転数は6~8r/minである;結晶肩部の直径が希望のサイズ15mmに成長した時、再び0.3℃/hの速度で温度を昇降し、定径部を成長させる;定径部成長時の引き上げ速度は0.5mm/hで、回転数は5r/minである。結晶が高さ30mm前後に成長した時に、15℃/hの速度で昇温し、昇温にともない結晶の下端部が内側に収縮するように見えた場合、5mm/hの速度で結晶を引き上げて融液から切り離す。切り離した結晶を、温度場中で一定温度に1時間保ち、10~30℃/hの速度で室温まで降温し、リン酸イッテルビウムバリウム単結晶を得る。
【0149】
工程(5)において、単結晶を取り出した後、高温電気抵抗炉内で1300℃の温度でアニール処理し、アニーリング時間は48時間にし、BaYb(PO単結晶成長中に発生した熱応力が完全に解放される。
【0150】
得られたBaYb(PO単結晶の実物写真は図17に示される。得られたBaYb(PO単結晶のX線回折スペクトルは図18に示すとおりに、2θ=26.93°、31.99°と44.10°に特徴的なピークを示す。
【0151】
前記BaYb(PO単結晶の誘電スペクトルと抵抗率特性は図19図20に示される。900℃で誘電損失が低く(<1.1)、抵抗率が高い(ρ> 107 (Ohm・cm))。 高温圧電体分野での応用の可能性を示している。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20