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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】タイヤ試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
G01M17/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022154435
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2021522220の分割
【原出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2022177256
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2023-05-05
(31)【優先権主張番号】P 2019098135
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391046414
【氏名又は名称】国際計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100123124
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 昌大
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】宮下 博至
(72)【発明者】
【氏名】村内 一宏
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 修一
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-156087(JP,A)
【文献】特開2019-078772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ試験に使用可能な試験ユニットであって、
試験タイヤが装着された試験輪を路面に接地した状態で回転可能に支持する車軸ユニットと、
前記試験輪の向き及び荷重を調整可能なアライメントユニットと、を備え、
前記アライメントユニットが、前記試験輪の荷重を調整可能な荷重調整機構を備え、
前記荷重調整機構が、
上下に移動可能な第1可動フレームと、
前記第1可動フレームの上下の移動を案内するリニアガイドと、
前記第1可動フレームを上下に駆動する第1駆動ユニットと、を備えた、
試験ユニット。
【請求項2】
前記試験ユニットが、ベースフレームを備え、
前記リニアガイドが、
前記ベースフレーム及び前記第1可動フレームの一方に取り付けられたレールと、
前記ベースフレーム及び前記第1可動フレームの他方に取り付けられ、前記レール上を走行可能なキャリッジと、を備え、
前記第1駆動ユニットが、
運動変換器と、
前記運動変換器を駆動する第2モーターと、を備え、
前記運動変換器が、
前記ベースフレームに取り付けられた本体と、
前記本体に対して上下に移動可能な可動部と、を備え、
前記可動部に前記第1可動フレームが固定された、
請求項に記載の試験ユニット。
【請求項3】
前記アライメントユニットが、前記試験輪のキャンバー角を調整可能なキャンバー角調整機構を備え、
前記キャンバー角調整機構が、
走行方向と平行なEφ軸を中心に回転可能な第2可動フレームと、
前記第2可動フレームから前記Eφ軸と同軸に突出する第1ピボットと、
前記第1ピボットを回転可能に支持する第3軸受と、
前記第2可動フレームを回転駆動するφ駆動ユニットと、を備えた、
請求項1又は請求項に記載の試験ユニット。
【請求項4】
タイヤ試験に使用可能な試験ユニットであって、
試験タイヤが装着された試験輪を路面に接地した状態で回転可能に支持する車軸ユニットと、
前記試験輪の向き及び荷重を調整可能なアライメントユニットと、を備え、
前記アライメントユニットが、前記試験輪のキャンバー角を調整可能なキャンバー角調整機構を備え、
前記キャンバー角調整機構が、
走行方向と平行なE φ 軸を中心に回転可能な第2可動フレームと、
前記第2可動フレームから前記E φ 軸と同軸に突出する第1ピボットと、
前記第1ピボットを回転可能に支持する第3軸受と、
前記第2可動フレームを回転駆動するφ駆動ユニットと、を備えた、
試験ユニット。
【請求項5】
前記第2可動フレームの回転を案内する曲線ガイドを備えた、
請求項3又は請求項4に記載の試験ユニット。
【請求項6】
前記アライメントユニットが、前記試験輪のスリップ角を調整可能なスリップ角調整機構を備え、
前記スリップ角調整機構が、
前記試験輪の回転軸であるEλ軸及び前記Eφ軸のそれぞれと直交するEθ軸を中心に回転可能な第3可動フレームと、
前記第3可動フレームから前記Eθ軸と同軸に突出する第2ピボットと、
前記第2ピボットを回転可能に支持する第4軸受と、
前記第3可動フレームを回転駆動するθ駆動ユニットと、を備えた、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の試験ユニット。
【請求項7】
前記車軸ユニットが、
スピンドルと、
前記スピンドルを回転可能に支持する第5軸受と、
前記スピンドルの先端部に同軸に取り付けられた、前記試験輪が取り付けられるホイールハブと、を備えた、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の試験ユニット。
【請求項8】
タイヤ試験に使用可能な試験ユニットであって、
試験タイヤが装着された試験輪を路面に接地した状態で回転可能に支持する車軸ユニットと、
前記試験輪の向き及び荷重を調整可能なアライメントユニットと、を備え、
前記車軸ユニットが、
スピンドルと、
前記スピンドルを回転可能に支持する第5軸受と、
前記スピンドルの先端部に同軸に取り付けられた、前記試験輪が取り付けられるホイールハブと、を備えた、
試験ユニット。
【請求項9】
前記車軸ユニットが、前記スピンドルの回転を制動する制動装置を備えた、
請求項7又は請求項8に記載の試験ユニット。
【請求項10】
前記試験輪を回転駆動する動力を出力する動力ユニットと、
前記動力ユニットから出力された動力を前記スピンドルに伝達する動力伝達ユニットを備え、
前記動力伝達ユニットが、
その一端が前記スピンドルに連結されたスライド式等速ジョイントを備えた、
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の試験ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試験タイヤを装着して自動車テストコース等の実際の路面上を走行することにより自動車用タイヤの各種性能を試すタイヤの路上試験を行うことが可能な試験車(以下「タイヤ路上試験装置」という。)が知られている。
【0003】
特開2016-80414号公報(特許文献1)に記載のタイヤ路上試験装置は、バスを改造した車両に試験設備が備え付けられたものである。タイヤの路上試験では、試験タイヤが装着された試験輪を高速で回転させながら、急激に変動する大きなトルク(駆動力、制動力)を試験輪に与える必要がある。このような駆動を一般的な電動機で行うには、大容量の電動機が必要になるが、そのような大型の電動機を車両内に設置することは難しい。そのため、特許文献1のタイヤ路上試験装置は、油圧モーターを使用して試験輪の駆動及び制動を行うように構成されている。
【発明の概要】
【0004】
特許文献1のタイヤ路上試験装置の車両内には、油圧モーターに油圧を供給するための油圧供給装置が設置されている。そのため、車両内の多くのスペースが油圧供給装置によって占められ、試験機器を設置するためのスペースや車両内でオペレーターが作業するための作業スペースを十分に確保することできなかった。
【0005】
また、油圧システムから作動油が漏れると、作動油によって試験タイヤや路面が汚染され、試験の精度が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、油圧システムを使わずにタイヤの路上試験を可能にすることを目的とする。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、車両と、車両に備え付けられ、試験タイヤが装着された試験輪を路面に接地した状態で支持可能な試験ユニットとを備え、試験ユニットが、試験輪を回転駆動する動力を出力する動力ユニットを備え、動力ユニットが、車両の走行速度に応じた回転数の回転運動を出力する回転出力ユニットと、回転運動にトルクを付加して出力するトルク付加ユニットとを備えた、タイヤ試験装置が提供される。
【0008】
上記のタイヤ試験装置において、回転出力ユニットが、路面に接地する従動輪と、従動輪と連結した第1車軸と、第1車軸とトルク付加ユニットの入力軸とを結合する第1伝動機構とを備えた構成としてもよい。この場合において、回転出力ユニットが、第1車軸を回転可能に支持する第1軸受を備えた構成としてもよい。
【0009】
上記のタイヤ試験装置において、第1伝動機構が、第1車軸と結合した第1駆動プーリーと、トルク付加ユニットの入力軸と結合した第1従動プーリーと、第1駆動プーリーと第1従動プーリーとに張り渡された第1歯付ベルトとを備えた構成としてもよい。
【0010】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付加ユニットが、回転可能に支持された回転フレームと、回転フレームに取り付けられた第1モーターと、回転フレームと同軸に配置され、第1モーターの軸に連結された第1シャフトとを備え、回転フレームが回転出力ユニットによって回転駆動される構成としてもよい。
【0011】
上記のタイヤ試験装置において、第1従動プーリーが回転フレームと結合した構成としてもよい。
【0012】
上記のタイヤ試験装置において、回転フレームを回転可能に支持する一対の第2軸受を備え、回転フレームが、筒状であり、第1モーターを収容するモーター収容部と、モーター収容部の軸方向両側に配置された、モーター収容部よりも小径の一対の軸部と、を有し、一対の軸部において、一対の第2軸受により、回転可能に支持された構成としてもよい。
【0013】
上記のタイヤ試験装置において、試験ユニットが、試験輪を回転可能に支持する車軸ユニットと、試験輪の向き及び荷重を調整可能なアライメントユニットとを備えた構成としてもよい。
【0014】
上記のタイヤ試験装置において、アライメントユニットが、試験輪の荷重を調整可能な荷重調整機構を備え、荷重調整機構が、上下に移動可能な第1可動フレームと、第1可動フレームの上下の移動を案内するリニアガイドと、第1可動フレームを上下に駆動する第1駆動ユニットとを備えた構成としてもよい。
【0015】
上記のタイヤ試験装置において、試験ユニットが、車両のフレームに固定されたベースフレームを備え、リニアガイドが、ベースフレーム及び第1可動フレームの一方に取り付けられたレールと、ベースフレーム及び第1可動フレームの他方に取り付けられ、レール上を走行可能なキャリッジとを備え、第1駆動ユニットが、運動変換器と、運動変換器を駆動する第2モーターとを備え、運動変換器が、ベースフレームに取り付けられた本体と、本体に対して上下に移動可能な可動部とを備え、可動部に第1可動フレームが固定された構成としてもよい。
【0016】
上記のタイヤ試験装置において、アライメントユニットが、試験輪のキャンバー角を調整可能なキャンバー角調整機構を備え、キャンバー角調整機構が、車両の走行方向と平行なEφ軸を中心に回転可能な第2可動フレームと、第2可動フレームからEφ軸と同軸に突出する第1ピボットと、第1ピボットを回転可能に支持する第3軸受と、第2可動フレームを回転駆動するφ駆動ユニットとを備えた構成としてもよい。
【0017】
上記のタイヤ試験装置において、第2可動フレームの回転を案内する曲線ガイドを備えた構成としてもよい。
【0018】
上記のタイヤ試験装置において、アライメントユニットが、試験輪のスリップ角を調整可能なスリップ角調整機構を備え、スリップ角調整機構が、試験輪の回転軸であるEλ軸及びEφ軸のそれぞれと直交するEθ軸を中心に回転可能な第3可動フレームと、第3可動フレームからEθ軸と同軸に突出する第2ピボットと、第2ピボットを回転可能に支持する第4軸受と、第3可動フレームを回転駆動するθ駆動ユニットとを備えた構成としてもよい。
【0019】
車軸ユニットが、スピンドルと、スピンドルを回転可能に支持する第5軸受と、スピンドルの先端部に同軸に取り付けられた、試験輪が取り付けられるホイールハブとを備えた構成としてもよい。
【0020】
上記のタイヤ試験装置において、車軸ユニットが、スピンドルの回転を制動する制動装置を備えた構成としてもよい。
【0021】
上記のタイヤ試験装置において、動力ユニットから出力された動力をスピンドルに伝達する動力伝達ユニットを備え、動力伝達ユニットが、その一端がスピンドルに連結されたスライド式等速ジョイントを備えた構成としてもよい。
【0022】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付加ユニットが、第1モーターの出力を減速する減速機を備え、第1シャフトが、減速機を介して第1モーターの軸に連結された構成としてもよい。
【0023】
上記のタイヤ試験装置において、第1モーターのローターの慣性モーメントが0.01kg・m以下である構成としてもよい。
【0024】
上記のタイヤ試験装置において、第1モーターの定格出力が7kW乃至37kWである構成としてもよい。
【0025】
上記のタイヤ試験装置において、φ駆動ユニットが、Eφ軸と同軸に配置された第1歯車と、第1歯車と噛み合う第1ピニオンと、第1ピニオンを回転駆動する第3モーターとを備えた構成としてもよい。
【0026】
上記のタイヤ試験装置において、第1歯車が、第1可動フレーム及び第2可動フレームの一方に取り付けられ、第3モーターが、第1可動フレーム及び第2可動フレームの他方に取り付けられた構成としてもよい。
【0027】
上記のタイヤ試験装置において、曲線ガイドが、Eφ軸と同心に配置され、第1可動フレーム及び第2可動フレームの一方に取り付けられた円弧状の曲線レールと、第1可動フレーム及び第2可動フレームの他方に取り付けられた、曲線レール上を走行可能なキャリッジとを備えた構成としてもよい。
【0028】
上記のタイヤ試験装置において、θ駆動ユニットが、Eθ軸と同軸に配置された第2歯車と、第2歯車と噛み合う第2ピニオンと、第2ピニオンを回転駆動する第4モーターとを備えた構成としてもよい。
【0029】
上記のタイヤ試験装置において、第2歯車が、第2可動フレーム及び第3可動フレームの一方に取り付けられ、第4モーターが、第2可動フレーム及び第3可動フレームの他方に取り付けられ、第4軸受が第2可動フレームに取り付けられた構成としてもよい。
【0030】
上記のタイヤ試験装置において、車軸ユニットが、第5軸受が取り付けられたケーシングと、スピンドルの周りに配列された複数の圧電素子とを備え、圧電素子が、第5軸受とケーシングとで挟み込まれ、第5軸受をケーシングに取り付けるボルトによって締め付けられた構成としてもよい。
【0031】
上記のタイヤ試験装置において、動力伝達ユニットが、動力ユニットと結合した第2シャフトと、第2シャフトを回転可能に支持する第6軸受と、スライド式等速ジョイントと結合した第3シャフトと、第3シャフトを回転可能に支持する第7軸受と、動力伝達ユニットによって伝達されるトルクを検出するトルクセンサとを備え、第2シャフトと第3シャフトがトルクセンサを介して連結された構成としてもよい。
【0032】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付加ユニットが、第1シャフトと動力伝達ユニットの入力軸とを結合する第2伝動機構を備え、第2伝動機構が、第1シャフトと結合した第2駆動プーリーと、スピンドルと結合した第2従動プーリーと、第2駆動プーリーと第2従動プーリーとに張り渡された第2歯付ベルトとを備えた構成としてもよい。
【0033】
上記のタイヤ試験装置において、第2歯付ベルトが、鋼線又は炭素繊維の心線を有する構成としてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、油圧システムを使わずに試験輪を駆動することが可能なタイヤ路上試験装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ路上試験装置の右側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ路上試験装置の背面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ路上試験装置の前部の平面図である。
図4】試験ユニットの平面図である。
図5】試験ユニットの正面図である。
図6】ピックアップユニット及びトルク付加ユニットの概略構造を示す図である。
図7】動力伝達ユニットの概略構造を示す図である。
図8】アライメントユニットの概略構造を示す図である。
図9】アライメントユニットの概略構造を示す図である。
図10】アライメントユニットの概略構造を示す図である。
図11図9のD-D矢視図である。
図12】制御システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図において、説明の便宜上、構成の一部を省略し又は断面で示している。また、各図において、符号が共通する事項が複数表示される場合は、必ずしもそれらの複数の表示の全てに符号を付さず、それらの複数の表示の一部について符号の付与を適宜省略する。
【0037】
以下に説明する本発明の一実施形態に係るタイヤ路上試験装置は、大型の乗用自動車(以下「バス車両」という。)から改造された自走式のタイヤ試験装置である。タイヤ路上試験装置は、自動車テストコース等の路面上を試験タイヤTが装着された試験輪W(図1)を接地させた状態で走行することにより、様々な状態の路面に対する試験タイヤTの各種性能の試験を行うことが可能な装置である。
【0038】
タイヤ路上試験装置は、ベース車両であるリアエンジン・リアドライブ方式(以下「RR方式」という。)のバス車両を改造した車両1に試験ユニット2及びその付帯装置が備え付けられたものである。RR方式(又は、フロントエンジン・フロントドライブ方式〔以下「FF方式」という。〕)のバス車両は、車両の中央部に配置されるドライブシャフトを有しないため、試験ユニット2の配置の自由度が高いという利点がある。
【0039】
図1図2及び図3は、それぞれタイヤ路上試験装置における試験ユニット2の配置を示す側面図、背面図及び平面図である。なお、図3においては、車両1の後部の図示が省略されている。
【0040】
以下の説明において、前後、上下、左右の各方向を、車両1の走行方向を向いたとき(すなわち、図示しない運転席に着座したとき)の各方向として定義する。また、前方をX軸正方向、後方をX軸負方向、左方をY軸正方向、右方をY軸負方向、上方をZ軸正方向、下方をZ軸負方向と定義する。
【0041】
図4及び図5は、それぞれ試験ユニット2の平面図及び正面図である。試験ユニット2は、車両1のフレーム(不図示)に固定されたベースフレーム10と、ベースフレーム10に保持されたアライメントユニット2aと、アライメントユニット2aに支持された車軸ユニット60と、試験輪Wの車軸(図10に示されるスピンドル61)を駆動する動力ユニット20を備えている。
【0042】
なお、動力ユニット20は、その一部(後述するピックアップユニット21)がベースフレーム10上に設置され、残りの部分(後述するトルク付加ユニット22及び動力伝達ユニット24)がアライメントユニット2aの後述する昇降フレーム31上に設置されている。
【0043】
車軸ユニット60(図5)は、試験輪Wを回転可能に支持するユニットであり、試験輪Wと一体に回転する車軸であるスピンドル61(図10)を備えている。車軸ユニット60は、その高さ及び向きを変更可能に、アライメントユニット2aによって支持されている。
【0044】
アライメントユニット2aは、試験輪Wに加わる荷重(試験荷重)及び試験輪Wの向き(スリップ角及びキャンバー角)を調整可能なユニットである。
【0045】
動力ユニット20は、試験輪Wに動力を供給するユニットであり、その出力軸はスピンドル61に連結されている。
【0046】
図4に示されるように、動力ユニット20は、ピックアップユニット21、トルク付加ユニット22及び動力伝達ユニット24を備えている。ピックアップユニット21(回転出力ユニット)は、路面に接地するピックアップ輪211(従動輪)を備え、車両1の走行速度に応じた回転数の回転運動を路面から取得して出力する。トルク付加ユニット22は、試験輪Wに与えるべき制動力及び駆動力(以下「制駆動力」という。)を発生して、この制駆動力(すなわち、トルク)をピックアップユニット21から出力された回転運動に付加して出力する。トルク付加ユニット22は、ピックアップユニット21が取得した回転運動の位相を変化させることにより、試験輪Wにトルクを付与する(すなわち、路面と試験輪Wとの間に駆動力又は制動力を与える)ことを可能にする。トルク付加ユニット22から出力された動力は、動力伝達ユニット24及びスピンドル61を介して試験輪Wに伝達される。なお、ピックアップユニット21によって路面から取得された動力は、試験輪Wを介して路面に伝達される。すなわち、動力ユニット20は、試験輪W及び路面と共に動力循環系を構成する。
【0047】
図6は、ピックアップユニット21及びトルク付加ユニット22の概略構造を示す図である。ピックアップユニット21は、軸受214と、軸受214によって回転可能に支持された車軸212と、車軸212の一端部に同軸に結合したホイールハブ213と、ホイールハブ213に取り付けられたピックアップ輪211と、車軸212の回転をトルク付加ユニット22に伝達する第1ベルト伝動機構216(第1伝動機構)を備えている。
【0048】
第1ベルト伝動機構216は、車軸212の他端部に取り付けられた駆動プーリー216aと、トルク付加ユニット22の後述するハウジング220に取り付けられた従動プーリー216cと、駆動プーリー216aと従動プーリー216cに掛け渡された歯付ベルト216bを備えている。
【0049】
ピックアップ輪211は、路面に接地する従動輪であり、車両1の走行時に路面によって駆動され、車両1の走行速度と同じ周速で回転する。ピックアップ輪211の回転は、ホイールハブ213、車軸212及び第1ベルト伝動機構216を介して、トルク付加ユニット22に伝達される。
【0050】
トルク付加ユニット22は、軸受224A及び224Bと、軸受224A及び224Bによって回転可能に支持された筒状のハウジング220(回転フレーム)と、ハウジング220に取り付けられたモーター221、減速機222及びシャフト223と、シャフト223の回転を動力伝達ユニット24に伝達する第2ベルト伝動機構228(第2伝動機構)を備えている。モーター221が試験輪Wに与えるべきトルクを発生可能な性能を有していれば、減速機222を設けずに、モーター221の軸221sにシャフト223を直結してもよい。また、この場合、モーター221の軸221sとシャフト223とを一体に形成してもよい。
【0051】
ハウジング220は、略円筒状の第1胴部220a(モーター収容部)及び第2胴部220cと、第1胴部220aよりも細い略円筒状の軸部220d及び220eを有している。第1胴部220aの右端には軸部220dが同軸に(すなわち中心線を共有するように)結合している。また、第1胴部220aの左端には、第2胴部220cを介して、軸部220eが同軸に結合している。右側の軸部220dは軸受224Aにより回転可能に支持され、左側の軸部220eは軸受224Bにより回転可能に支持されている。
【0052】
左側の軸部220eの先端部には第1ベルト伝動機構216の従動プーリー216cが取り付けられている。ハウジング220は、ピックアップユニット21によって回転駆動される。すなわち、ハウジング220は、ピックアップユニット21によって取得されて第1ベルト伝動機構216によって伝達された動力により、車両1の走行速度に比例する回転数で回転駆動される。
【0053】
第1胴部220aの中空部にはモーター221が収容されている。モーター221は、ハウジング220と同軸に(すなわち、互いに回転軸が一致するように)配置されてもよい。モーター221がハウジング220と同軸に配置されることにより、トルク付加ユニット22の回転部のアンバランスが軽減し、回転部をスムーズに(すなわち、回転数やトルクの不要な揺らぎが少なく)回転させることが可能になる。モーター221のステーター221bは、複数のボルト220bによって第1胴部220aに固定されている。モーター221の出力側のフランジ221cは、連結筒22aを介して、減速機222のケースと結合している。また、減速機222のケースは、第1胴部220aの左端部に形成されたフランジに固定されている。すなわち、モーター221のステーター221b及び減速機222のケースは、それぞれハウジング220に固定されている。
【0054】
モーター221の軸221sは、減速機222の入力軸と接続されている。また、減速機222の出力軸には、ハウジング220内に同軸に収容されたシャフト223が接続されている。モーター221から出力されるトルクは、減速機222によって増幅されて、シャフト223に伝達される。
【0055】
シャフト223は、ハウジング220の左側の軸部220eの内周に設けられた一対の軸受220fによって回転可能に支持されている。また、シャフト223の先端側は、ハウジング220の左端に設けられた開口部から外部に突出し、軸受224Cによって回転可能に支持されている。
【0056】
シャフト223は、第2ベルト伝動機構228に接続されている。第2ベルト伝動機構228は、シャフト223の先端部に取り付けられた駆動プーリー228aと、動力伝達ユニット24(図7)の後述するシャフト241Lに取り付けられた従動プーリー228cと、駆動プーリー228aと従動プーリー228cに掛け渡された歯付ベルト228bを備えている。トルク付加ユニット22の出力は、第2ベルト伝動機構228を介して、動力伝達ユニット24に伝達される。
【0057】
トルク付加ユニット22は、回転するハウジング220に取り付けられたモーター221とトルク付加ユニット22の外部に設置されたアンプ221a(図12)とを電気的に接続する電気接続部225を備えている。電気接続部225は、ハウジング220の右側の軸部220dと結合した略円柱状の軸部225aと、軸部225aを回転可能に支持する軸受225dと、軸部225aの外周に同軸に取り付けられた複数のスリップリング225bと、各スリップリング225bの外周面と接触する複数のブラシ225cと、ブラシ225cと軸受225dを支持する支持部225eを備えている。
【0058】
モーター221のケーブル221dは、ハウジング220の軸部220dの中空部に通されている。また、ケーブル221dを構成する複数の電線が、電気接続部225の軸部225aの中空部に通され、対応するスリップリング225bにそれぞれ接続されている。また、ブラシ225cはケーブル(不図示)を介してアンプ221a(図12)に接続されている。
【0059】
また、トルク付加ユニット22は、ハウジング220の回転数を検出するロータリーエンコーダー226を備えている。ロータリーエンコーダー226は、本体が電気接続部225の支持部225eに取り付けられ、軸が軸部225aに接続されている。
【0060】
以上のように構成されたトルク付加ユニット22によれば、ピックアップユニット21が路面から取得した回転運動によりハウジング220に固定されたモーター221のステーター221bが車両1の走行速度に比例する回転数で回転駆動されると共に、モーター221の軸221sが回転駆動され(本実施形態では更に軸221sの回転が減速機222によって減速され)、これらの2つの回転を合成したものがシャフト223から出力され、この合成された回転運動によって試験輪Wが回転駆動される。
【0061】
本実施形態においては、ピックアップ輪211と試験輪Wの外径が等しく、第1ベルト伝動機構216の駆動プーリー216aと従動プーリー216cの歯数が等しく、更に、第2ベルト伝動機構228の駆動プーリー228aと従動プーリー228cの歯数が等しい。すなわち、本実施形態の動力ユニット20は、モーター221の駆動が停止した状態において、車両1の走行速度に等しい周速で試験輪Wが回転駆動されるように構成されている。
【0062】
動力ユニット20にトルク付加ユニット22を組み込むことにより、試験輪Wの回転数を制御するための動力源(ピックアップユニット21)とトルクを制御するための動力源(モーター221)とに動力源を分離することが可能になる。これにより、各動力源の低容量化が可能になると共に、試験輪Wに加わる回転数及びトルクをより高い精度で制御することが可能になる。また、本実施形態では、回転数を制御するための動力源として、車両1の運動エネルギーの一部を取り込んで動力源として再利用するピックアップユニット21を採用することにより、回転数を制御するための原動機が不要になるため、回転数制御用動力源の小型化、軽量化及びコスト低減が実現されている。
【0063】
上述のように、モーター221は、試験輪Wに与えるべき制駆動力(トルク)を発生するための動力源である。モーター221は、制駆動時にタイヤに加わる急激なトルク変化を正確に再現することが求められ、それを実現するために、高い加速性能が要求される。本実施形態では、モーター221には、ローターの慣性モーメントが0.01kg・m以下、定格出力が7kW乃至37kWの超低慣性高出力型のACモーターが使用されている。このような超低慣性高出力型のACサーボモーターを使用することにより、100Hzを超える高い周波数で変動する制駆動力を試験輪Wに与えることが可能になる。
【0064】
図7は、動力伝達ユニット24の概略構造を示す図である。動力伝達ユニット24は、シャフト241L及び241Rと、軸受242L及び242Rと、トルクセンサ244と、スライド式等速ジョイント245を備えている。シャフト241L及び241Rは、軸受242L及び242Rによってそれぞれ回転可能に支持され、トルクセンサ244を介して互いに連結されている。トルクセンサ244によって、動力伝達ユニット24によって伝達されるトルクが検出される。シャフト241Lの左端部には、第2ベルト伝動機構228の従動プーリー228cが取り付けられている。シャフト241Rは、右端部において、スライド式等速ジョイント245の入力軸245aと接続されている。スライド式等速ジョイント245の出力軸245bはスピンドル61(図10)に接続されている。
【0065】
スライド式等速ジョイント245は、作動角(入力軸245aと出力軸245bとのなす角度)によらず、回転変動無くスムーズに回転を伝達可能に構成されている。また、スライド式等速ジョイント245は、長さも可変である。スライド式等速ジョイント245を介してスピンドル61を接続することにより、アライメントユニット2aによりスピンドル61の位置や向きが変更されても、スピンドル61へのスムーズな動力の伝達が維持される。
【0066】
図8図9及び図10は、それぞれアライメントユニット2aの概略構造を示す図である。また、図11は、図9のD-D矢視図である。
【0067】
アライメントユニット2aは、荷重調整機構30、キャンバー角調整機構40及びスリップ角調整機構50を備えている。
【0068】
荷重調整機構30は、スピンドル61の高さを変更することにより、試験輪Wに加わる荷重を調整する機構である。荷重調整機構30は、ベースフレーム10に対して上下に移動可能な昇降フレーム31(第1可動フレーム)と、昇降フレーム31の上下(Z軸方向)の移動を案内する複数(本実施形態においては3対)のリニアガイド32と、昇降フレーム31を上下に駆動するZ駆動ユニット35を備えている。
【0069】
昇降フレーム31は、側面から見て(すなわち、Y軸方向に見て)門形(∩形)のベースフレーム10の空洞部に収容されている。リニアガイド32は、上下に延びるレール32aと、レール32a上を走行可能な1つ以上(本実施形態においては2つ)のキャリッジ32bを備えている。各リニアガイド32のレール32aはベースフレーム10に取り付けられ、キャリッジ32bは昇降フレーム31に取り付けられている。
【0070】
Z駆動ユニット35(第1駆動ユニット)は、モーター351と、モーター351の回転運動をZ軸方向の直線運動に変換する運動変換器352を備えている。運動変換器352は、ウォーム歯車装置等の減速機とボールねじ等の送りねじ機構とを組み合わせたスクリュージャッキであるが、別の方式の運動変換器を使用してもよい。運動変換器352の本体352aはベースフレーム10に固定され、可動部(上下に移動可能なロッド352b)は昇降フレーム31に固定されている。
【0071】
モーター351により運動変換器352を駆動すると、ロッド352bと共に昇降フレーム31が昇降する。これに伴い、キャンバー角調整機構40、スリップ角調整機構50及び車軸ユニット60を介して昇降フレーム31に支持された試験輪Wが昇降し、試験輪Wの高さに応じた荷重が試験輪Wに加わる。
【0072】
キャンバー角調整機構40は、スピンドル61のEφ軸(試験輪Wの中心を通る前後に延びる軸)周りの向きを変更することにより、路面に対する試験輪Wの傾きであるキャンバー角を調整する機構である。キャンバー角調整機構40は、Eφ軸を中心に回転可能なφ回転フレーム41(第2可動フレーム)と、φ回転フレーム41を回転可能に支持する一対の軸受44と、φ回転フレーム41の回転を案内する一対の曲線ガイド42と、φ回転フレーム41を回転駆動する左右一対のφ駆動ユニット45(第2駆動ユニット)を備えている。
【0073】
図8に示されるように、φ回転フレーム41及び昇降フレーム31もY軸方向に見て門形(∩形)の形状を有している。φ回転フレーム41は、∩形の昇降フレーム31の空洞部に収容されている。φ回転フレーム41の正面側及び背面側の壁部には、それぞれEφ軸と同軸に外側へ(すなわち、後述するEθ軸から遠ざかる方向へ)突出するピボット411が設けられている。各ピボット411は、昇降フレーム31に固定された一対の軸受44によって、それぞれ回転可能に支持されている。φ回転フレーム41は、ピボット411を支軸として、Eφ軸を中心に回転可能に支持されている。なお、φ回転フレーム41に軸受44を取り付け、昇降フレーム31にボット411を取り付ける構成としてもよい。
【0074】
曲線ガイド42は、Eφ軸と同心に配置された円弧状の曲線レール42aと、曲線レール42a上を走行可能な1つ以上(本実施形態においては2つ)のキャリッジ42bを備えている。曲線レール42a及びキャリッジ42bの一方が昇降フレーム31に取り付けられ、他方がφ回転フレーム41に取り付けられている。
【0075】
図11に示されるように、φ駆動ユニット45は、昇降フレーム31の正面側及び背面側の壁部にそれぞれ取り付けられた一対の平歯車453と、各平歯車453と噛み合う一対のピニオン452と、各ピニオン452を回転駆動する一対のモーター451を備えている。平歯車453は、Eφ軸を中心とする円弧状に形成された(すなわち、Eφ軸と同軸の)セグメント歯車である。モーター451はφ回転フレーム41に取り付けられ、ピニオン452はモーター451の軸451sと結合している。
【0076】
モーター451によりピニオン452を回転駆動すると、ピニオン452が平歯車453のピッチ円筒上を転動する。そして、φ回転フレーム41は、平歯車453が一体に結合した昇降フレーム31に対して、ピニオン452が軸に取り付けられたモーター451と共にEφ軸の周りに旋回する。これに伴い、スリップ角調整機構50及び車軸ユニット60を介してφ回転フレーム41に支持された試験輪WがEφ軸の周りに回転し、キャンバー角が変化する。なお、φ回転フレーム41に平歯車453を取り付け、昇降フレーム31にモーター451を取り付ける構成としてもよい。
【0077】
スリップ角調整機構50は、スピンドル61のEθ軸(試験輪Wの中心を通る上下に延びる軸)周りの向きを変更することにより、車両1の走行方向(X軸方向)に対する試験輪W(より具体的には、車軸に垂直な車輪中心面)の傾きであるスリップ角を調整する機構である。図8に示されるように、スリップ角調整機構50は、Eθ軸を中心に回転可能なθ回転フレーム51(第3可動フレーム)と、θ回転フレーム51を回転可能に支持する軸受52と、θ回転フレーム51を回転駆動するθ駆動ユニット55を備えている。
【0078】
θ回転フレーム51は、Y軸方向に見て門形(∩形)のφ回転フレーム41の空洞部に収容されている。θ回転フレーム51の上面には、Eθ軸と同軸に突出するピボット511が設けられている。ピボット511は、φ回転フレーム41の天板に固定された軸受52によって回転可能に支持されている。θ回転フレーム51は、ピボット511を支軸として、Eθ軸を中心に回転可能に支持されている。
【0079】
θ駆動ユニット55は、θ回転フレーム51に取り付けられた平歯車553と、平歯車553と噛み合うピニオン552と、各ピニオン552を回転駆動するモーター551を備えている。平歯車553は、ピボット511に同軸に結合している。モーター551はφ回転フレーム41に取り付けられ、ピニオン552はモーター551の軸と結合している。
【0080】
図10に示されるように、車軸ユニット60は、θ回転フレーム51の下端部に取り付けられている。車軸ユニット60は、θ回転フレーム51に取り付けられたフレーム63と、フレーム63に取り付けられた軸受62と、軸受62に回転可能に支持されたスピンドル61と、スピンドル61に加わる力を検出する6分力センサー64と、スピンドル61の回転を抑えるディスクブレーキ66(制動装置)と、スピンドル61の先端部に同軸に取り付けられたホイールハブ65を備えている。ホイールハブ65には、試験輪WのホイールリムWr(図1)が取り付けられる。
【0081】
車軸ユニット60のフレーム63は、6分力センサー64を介して、θ回転フレーム51に取り付けられている。6分力センサー64は、複数の(本実施形態では4つ)の圧電素子から構成される。複数の圧電素子は、Eλ軸を中心とする円周上に等間隔に配置され、車軸ユニット60のフレーム63とθ回転フレーム51とで挟み込まれ、車軸ユニット60のフレーム63をθ回転フレーム51に取り付けるボルトによって締め付けられ、予荷重が与えられている。なお、圧電素子には、予荷重が均一に加わるように、ボルトを通す孔が形成されている。
【0082】
ディスクブレーキ66は、スピンドル61の末端部に同軸に取り付けられたディスクローター661と、フレーム63に取り付けられた電動式のキャリパー662を備えている。キャリパー662に内蔵された一対のブレーキパッドによりディスクローター661を両面から挟み込むことにより、スピンドル61に制動力が作用する。
【0083】
アライメントユニット2aは、キャンバー角(φ角)やスリップ角(θ角)を変更しても試験輪Wの位置が移動しないように、Eθ軸、Eφ軸及びEλ軸の3軸が試験輪Wの中心位置の一点で交差するように構成されている。
【0084】
図12は、タイヤ路上試験装置の制御システムの概略構成を示すブロック図である。制御システムは、装置全体の動作を制御する制御部70、各種計測を行う計測部80及び外部との入出力を行うインターフェース部90を備えている。
【0085】
制御部70には、トルク付加ユニット22のモーター221、荷重調整機構30のモーター351、キャンバー角調整機構40のモーター451及びスリップ角調整機構50のモーター551が、各アンプ221a、351a、451a及び551aを介して接続されている。また、制御部70には、ディスクブレーキ66のキャリパー662が接続されている。
【0086】
制御部70と各アンプ221a、351a、451a及び551aとは、光ファイバによって通信可能に接続され、制御部70と各アンプ221a、351a、451a及び551aとの間で高速のフィードバック制御が可能になっている。これにより、より高精度(時間軸において高分解能かつ高確度)の同期制御が可能になっている。
【0087】
計測部80には、車軸ユニット60の6分力センサー64、トルク付加ユニット22のロータリーエンコーダー226及び動力伝達ユニット24のトルクセンサ244が接続されている。計測部80において、6分力センサー64(複数の圧電素子)からのアナログ信号が増幅及びデジタル変換された後、デジタル信号に基づいて6分力(X軸、Y軸、Z軸の3方向の力Fx、Fy、Fzと各軸まわりのモーメントMx、My、Mz)の計測値が計算される。また、計測部80において、トルクセンサ244からのアナログ信号が増幅及びデジタル変換された後、デジタル信号に基づいて試験輪Wのトルクの計測値が計算される。
【0088】
また、各モーター221、351、451及び551に内蔵されたロータリーエンコーダーREが検出した位相情報は、各アンプ221a、351a、451a及び551aを介して、制御部70に入力される。
【0089】
インターフェース部90は、例えば、ユーザーとの間で入出力を行うためのユーザーインターフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインターフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インターフェースの1つ以上を備えている。また、ユーザーインターフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の1つ以上を含む。
【0090】
制御部70は、試験輪Wのトルクの測定値と目標値との偏差が解消されるように、トルク付加ユニット22のモーター221を駆動する。なお、6分力センサー64によって検出されたトルクMyの測定値に基づいてモーター221の駆動を制御する構成としてもよい。
【0091】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な実施形態等の構成を適宜組み合わせた構成も本願の実施形態に含まれる。
【0092】
上記の実施形態では、トルク付加ユニット22及びアライメントユニット2aの各調整機構(荷重調整機構30、キャンバー角調整機構40及びスリップ角調整機構50)の駆動にそれぞれサーボモーター(モーター221、351、451及び551)が使用されているが、駆動量(回転角)の制御が可能なDCサーボモーターやステッピングモーター等の別の種類の電動機を使用してもよい。
【0093】
上記の実施形態の歯付ベルト228bは鋼線の心線を有している。歯付ベルト228bには、例えば炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などの所謂スーパー繊維から形成された心線を有するものを使用してもよい。カーボン心線などの軽量かつ高強度の心線を使用することにより、比較的に出力の低いモーターを使用することが可能になり、トルク付加ユニット22の小型化が可能になる。また、一般的な自動車用又は工業用のタイミングベルトを歯付ベルト228bとして使用してもよい。
【0094】
上記の実施形態では、トルク付加ユニット22及びディスクブレーキ66の2つの機構により試験輪Wに制動力を与えることができるように構成されているが、ディスクブレーキ66を設けずに、トルク付加ユニット22のみによって制動力を与える構成としてもよい。
【0095】
上記の実施形態では、図4に示されるように、動力ユニット20のトルク付加ユニット22及び動力伝達ユニット24は、昇降フレーム31上に設置され、車軸ユニット60と共に上下に移動可能に構成されている。しかしながら、動力ユニット20の全体をベースフレーム10上に設置する構成としてもよい。
【0096】
上記の実施形態では、キャンバー角調整機構40のφ駆動ユニット45やスリップ角調整機構50のθ駆動ユニット55には、それぞれ平歯車が使用されているが、これらに替えて、例えば傘歯車、円筒ウォームギヤ、フェースギヤ等の他の種類の歯車を使用してもよい。
【0097】
上記の実施形態では、第1ベルト伝動機構216(第1伝動機構)及び第2ベルト伝動機構228(第2伝動機構)に、それぞれ巻掛け媒介節として歯付ベルトを使用したベルト伝動機構が使用されているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。ベルト伝動機構の少なくとも1つについて歯付ベルトに替えて平ベルトやVベルトを使用してもよい。また、ベルト機構に替えて、チェーン伝動機構やワイヤ伝動機構等の他の種類の巻掛け伝動機構や、ボールねじ機構、歯車伝動機構又は油圧機構等の他の種類の動力伝達機構を使用してもよい。
【0098】
上記の実施形態では、第1ベルト伝動機構216の歯付ベルト216bにも、第2ベルト伝動機構228の歯付ベルト228bと同じ剛性の高いものが使用されているが、第1ベルト伝動機構216には大きなトルクが加わらないため、例えば標準的な大型車両用のタイミングベルトのような、より剛性の低い歯付ベルトを使用してもよい。
【0099】
上記の実施形態では、回転出力ユニットとして路面から動力を取得するピックアップユニット21が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、回転数の制御が可能なサーボモーターやインバーターモーター等の電動機、油圧モーター、発動機又はその他の種類の原動機を備えた装置を回転出力ユニットとして使用する構成としてもよい。また、車両1の動力伝達装置から動力の一部を分岐する機構(例えば、歯車機構やベルト機構等)をピックアップユニット21として設ける構成としてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12