(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】中実タイヤ用着脱装置
(51)【国際特許分類】
B60C 25/135 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B60C25/135
(21)【出願番号】P 2023200242
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000185916
【氏名又は名称】小野谷機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智將
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-272908(JP,A)
【文献】特開2003-341323(JP,A)
【文献】特開2002-2243(JP,A)
【文献】実開昭61-16903(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 25/00-25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられた平坦状の載置面を有する基台と、
複動油圧シリンダであって、
前記開口から上部が突出した状態で、前記基台に収容される第1シリンダケースと、
前記第1シリンダケースに収容される第1ピストンと、
前記第1ピストンに固定され、前記第1シリンダケースの軸線に沿って移動可能な第2シリンダケースと、
前記第2シリンダケースに収容される第2ピストンと、
前記第2ピストンに固定され、前記第1シリンダケースの軸線と同一直線をなす第2シリンダケースの軸線に沿って移動可能なピストン棒と、を有する複動油圧シリンダと、
前記複動油圧シリンダに作動油を供給する油圧源と、
前記載置面上に載置され、ホイールを支持するための円筒状の支持体と、
前記ホイール上に乗載された中実のタイヤまたは前記ホイールに装着された前記タイヤに乗載される押圧体であって、前記支持体が挿入可能な、前記支持体よりも大径の押圧リング部を有する押圧体と、
前記第2シリンダケースから突出する前記ピストン棒の突出部分に螺着され、前記押圧体の前記載置面から離反する方向への変位を阻止するナットと、
を備え、
前記第1シリンダケースは、前記開口から露出した前記第1シリンダケースの端面に設けられる位置決め突部であって、前記支持体に嵌合することによって、前記支持体の軸線が前記第1シリンダケースの軸線と同軸となるように前記支持体を位置決めする位置決め突部、を含むことを特徴とする中実タイヤ用着脱装置。
【請求項2】
前記油圧源は、前記第1シリンダケースおよび前記ピストン棒が縮退するように、前記複動油圧シリンダに前記油圧源の作動油を導く第1油路と、前記第1シリンダケースおよび前記ピストン棒が伸長するように、前記油圧源から前記複動油圧シリンダに作動油を導く第2油路とを含む油路構成部、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の中実タイヤ用着脱装置。
【請求項3】
前記油路構成部は、前記油圧源から前記第1油路または前記第2油路を経て前記複動油圧シリンダに供給される作動油の圧力を減圧する減圧弁、をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の中実タイヤ用着脱装置。
【請求項4】
前記複動油圧シリンダに前記油圧源から供給される作動油の圧力が13MPa以上であるとき点灯する警報灯、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の中実タイヤ用着脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトなどの産業用車両に使用される中実タイヤのタイヤ本体をホイールから取り外し、ホイールにタイヤ本体を装着するための中実タイヤ用着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の中実タイヤ用着脱装置は、たとえば特許文献1にタイヤ着脱装置として記載されている。この従来技術のタイヤ着脱装置は、タイヤ、支持体およびホイールをセットする載置面を有し、中央に開口を有するテーブル本体と、テーブル本体の下面側に垂下されるように取付けられたシリンダと、シリンダの駆動によってテーブル本体の中央の開口を伸縮自在に貫通し、上方に延びる筒状のピストンと、ピストンに伸縮自在にかつ係止可能に設けられるセット螺杆と、を備える。
【0003】
シリンダの駆動によるピストンおよびセット螺杆の降下時の押圧力によってタイヤを、セット螺杆の端部に係止した着脱リングによって、テーブル本体の方向に加圧し、タイヤがホイールに装着される。支持体は、円筒状であり、ホイールの下縁をピストンと略同心円となるように支持するように構成される。ホイールにタイヤを装着する場合、載置面上に支持体が載置され、支持体によってホイールの下縁が支持され、ホイールの上縁にタイヤが乗載され、タイヤを上方から着脱リングによって押圧することによって、ホイールにタイヤが装着される。また、ホイールからタイヤを取外す場合、タイヤが装着されたホイールの下縁が支持体によって支持され、タイヤに乗載された着脱リングがシリンダによって載置面に近づく方向に駆動されることによって、タイヤがホイールから取外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の従来技術では、載置面に乗載される支持体をピストンの軸線と同一軸線をなすように、支持体を位置決めできる構成を備えていないので、作業者が目視で支持体を載置面上に乗載しなければならず、乗載後に支持体をピストンの軸線と同一軸線をなすように、支持体の位置を調整しなければならず、作業性がわるいという問題がある。また、支持体を作業者が手作業で位置決めすると、支持体がピストンの軸線と同一軸線からずれる場合もあり、支持体の軸線がピストンの軸線からずれていると、支持体に乗載されるホイールおよびホイールに乗載されるタイヤの軸線もずれてしまう。この状態でタイヤを着脱リングによって80ton以上の大きな押圧力で押圧すると、着脱リングによるタイヤへ押圧力が偏心して作用するという問題がある。
【0006】
したがって本発明の目的は、支持体を高精度でピストンの軸線と同一軸線をなすように乗載することができる、作業性の向上された中実タイヤ用着脱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、開口が設けられた平坦状の載置面を有する基台と、
複動油圧シリンダであって、
前記開口から上部が突出した状態で、前記基台に収容される第1シリンダケースと、
前記第1シリンダケースに収容される第1ピストンと、
前記第1ピストンに固定され、前記第1シリンダケースの軸線に沿って移動可能な第2シリンダケースと、
前記第2シリンダケースに収容される第2ピストンと、
前記第2ピストンに固定され、前記第1シリンダケースの軸線と同一直線をなす前記第2シリンダケースの軸線に沿って移動可能なピストン棒と、を有する複動油圧シリンダと、
前記複動油圧シリンダに作動油を供給する油圧源と、
前記載置面上に載置され、ホイールを支持するための円筒状の支持体と、
前記ホイール上に乗載された中実のタイヤまたは前記ホイールに装着された前記タイヤに乗載される押圧体であって、前記支持体が挿入可能な、前記支持体よりも大径の押圧リング部を有する押圧体と、
前記第2シリンダケースから突出する前記ピストン棒の突出部分に螺着され、前記押圧体の前記載置面から離反する方向への変位を阻止するナットと、
を備え、
前記第1シリンダケースは、前記開口から露出した前記第1シリンダケースの端面に設けられる位置決め突部であって、前記支持体に嵌合することによって、前記支持体の軸線が前記第1シリンダケースの軸線と同軸となるように前記支持体を位置決めする位置決め突部、を含むことを特徴とする中実タイヤ用着脱装置である。
【0008】
また本発明は、前記油圧源は、前記第1シリンダケースおよび前記ピストン棒が縮退するように、前記複動油圧シリンダに前記油圧源の作動油を導く第1油路と、前記第1シリンダケースおよび前記ピストン棒が伸長するように、前記油圧源から前記複動油圧シリンダに作動油を導く第2油路とを含む油路構成部、をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記油路構成部は、前記油圧源から前記第1油路または前記第2油路を経て前記複動油圧シリンダに供給される作動油の圧力を減圧する減圧弁、をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記複動油圧シリンダに前記油圧源から供給される作動油の圧力が13MPa以上であるとき点灯する警報灯、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基台に複動油圧シリンダが収容される。基台は載置面を有し、載置面には開口が設けられる。複動油圧シリンダは、第1シリンダケース、第1ピストン、第2シリンダケース、第2ピストン、およびピストン棒を有する。複動油圧シリンダは、油圧源から供給される作動油によって、第1シリンダケースおよびピストン棒を伸長させ、または縮退させることができる。開口から露出する第1シリンダケースの端面には、位置決め突部が設けられる。位置決め突部は、支持体に嵌合可能であるので、位置決め突部が嵌合するように支持体を第1シリンダケースの端面に乗載することによって、支持体の軸線が第1シリンダケースの軸線と同軸となるように支持体が位置決めされる。
【0012】
したがって、作業者が手作業で支持体の位置決め作業を行う必要がなくなり、作業性が向上される。支持体の軸線が第1ピストンの軸線に対してずれが生じないので、支持体に乗載させるホイールの軸線も第1シリンダケースの軸線と同軸にすることができ、ホイールに乗載されたタイヤを押圧体によって第1シリンダケースの軸線から大きくずれることなく押圧することができる。
【0013】
また本発明によれば、油圧源は、油路構成部を含み、油路構成部は第1油路と第2油路とを含む。第1油路は、第1シリンダケースおよびピストン棒が縮退するように、油圧源から複動油圧シリンダに供給される作動油の経路を構成する。また第2油路は、第1シリンダケースおよびピストン棒が伸長するように、油圧源から複動油圧シリンダに供給される作動油の経路を構成する。第1油路および第2油路は、選択的に切り換えられる。これによって、複動油圧シリンダの動作をタイヤの押圧または退避に対応させて容易に切換えることができ、利便性を向上することができる。
【0014】
また本発明によれば、油圧源から第1油路または第2油路を経て複動油圧シリンダに供給される作動油の圧力を減圧弁によって減圧することができ、大型の産業用車両のタイヤなどのように、タイヤをホイールに装着するために大きな押圧力を必要とする場合と、中型および小型の産業用車両のタイヤなどのように、タイヤをホイールに装着するために大型の産業用車両のタイヤの押圧力よりも低い普通の押圧力で済む場合とに応じて、作動油の圧力を異ならせることができる。たとえば大型の産業用車両のタイヤであれば、減圧弁によって減圧しない高圧の作動油を複動油圧シリンダに供給し、小型および中型の産業用車両のタイヤであれば、減圧弁によって減圧された中圧の作動油を複動油圧シリンダに供給することができる。これによって、油圧源の稼動を抑制し、省エネルギ化を図り、経済性を向上することができる。
【0015】
また本発明によれば、作動油の圧力が13MPa以上になる警報灯が点灯するので、作業者に高圧の作動油による作業中であることを報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の中実タイヤ用着脱装置1の斜視図である。
【
図4】中実タイヤ用着脱装置1の内部構造を示す断面図である。
【
図6】中実タイヤ用着脱装置1の電気的構成を説明するための展開接続図である。
【
図7】中実タイヤ用着脱装置1の油圧系統の構成を説明するための油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態の中実タイヤ用着脱装置1の斜視図であり、
図2は、中実タイヤ用着脱装置1の正面図である。
図3は、中実タイヤ用着脱装置1の平面図である。
図4は、中実タイヤ用着脱装置1の内部構造を示す断面図である。
図5は、支持体33を示す拡大断面図である。
図6は、中実タイヤ用着脱装置1の電気的構成を説明するための展開接続図である。
図7は、中実タイヤ用着脱装置1の油圧系統の構成を説明するための油圧回路図である。本実施形態では、タイヤTがフォークリフトなどの産業用車両のタイヤであって、タイヤ径が8インチ以上16インチ以下のノーパンクタイヤとも称される中実タイヤ(以下、単に「タイヤ」と記す場合がある)TをホイールWへ装着し、または取外すために用いられるものとする。タイヤTは、ホイールWが装着される。タイヤTの交換時にタイヤTをホイールWから取外すためにタイヤTを押圧する押圧力の最大値は100tonを想定する。
【0018】
図1~
図7を参照して、本実施形態の中実タイヤ用着脱装置1は、基台4と、ピストン棒15を含む複動油圧シリンダCY1と、油圧源5と、円筒状の支持体7と、押圧体10と、ナット9とを備える。ピストン棒15の上端部には、ナット9の脱落を防止するための脱落防止ワッシャ9aがボルト9bによって固定されている。基台4は、中央に開口2が設けられた平坦状の載置面3を有する。開口2から位置決め突部3aが露出している。油圧源5は、複動油圧シリンダCY1に作動油を供給する。支持体7は、載置面3上に載置され、ホイールWを支持する。押圧体10は、押圧リング部8を有し、ホイールW上に乗載された中実のタイヤTまたはホイールWに装着されたタイヤTに乗載される。押圧リング部8は、支持体7が挿入可能であり、支持体7よりも大径である。
【0019】
基台4は、ベースプレート16上に固定される。ベースプレート16には、支柱17が垂直に立設され、支柱17の上端部にはアーム18の一端部が連結され、アーム18の他端部には、ウインチとも称される昇降装置19が掛け止められる。昇降装置19は、巻取り部20と、巻取り部20によって巻き上げられ、または巻き下ろされる第1索条21および第2索条22と、第1索条21の先端部に連結されるフック部材23と、第2索条22の先端部に連結されるタイヤ把持具24と、第1索条21が巻き取られた状態で収容されるチェーンブロック25と、を有する。第1索条21は、たとえばチェーンであり、第2索条22は、たとえばワイヤロープである。
【0020】
支柱17には、操作ボックス26と、警報灯27とが設けられる。操作ボックス26は、シーケンスコントローラであって、ケース28、パイロットランプ29、油圧源5に備えられる第2モータM2(
図7参照)のオン/オフ切換スイッチSW5、押圧力切換ボタン31、および複動油圧シリンダCY1の操作レバー32を有する。パイロットランプ29は、中実タイヤ用着脱装置1の電源が投入されると、中実タイヤ用着脱装置1が運転中であることを示すために点灯する。警報灯27は、複動油圧シリンダCY1に油圧源5から供給される作動油の圧力が13MPa以上の高圧であるとき点灯するように構成され、中実タイヤ用着脱装置1が高圧モードであることを作業者に報知し、注意を促すことができる。押圧力切換ボタン31を作業者が押下した状態で操作レバー32を操作する必要があるので、作業者は大形のタイヤTをホイールWに装着する場合には、中実タイヤ用着脱装置1を普通タイヤまたは小形タイヤ用の通常圧力モードから高圧モードに切換るために、一方の手で押圧力切換ボタン31を押圧操作しながら操作レバー32を操作する必要がある。これによって、作業者に中実タイヤ用着脱装置1が高圧モードに切換えられて、50ton以上の押圧力でタイヤTを押圧する高圧モードであることを認識させ、作業者への注意を促し、安全性を向上するためのものである。警報灯27は、たとえば赤色光を発生する発光素子(Light Emitting Diode;LED)を光源として備える構成であってもよい。
【0021】
図3を参照して、基台4の一側方の床99には、後述の支持体33が載置され、基台4の他側方の床99には、タイヤT、ホイールW、またはタイヤ付きホイールが載置される。基台4の載置面3には、もう一つの支持体7が載置される。支持体33は、大形のタイヤTをホイールWに装着し、または大形のタイヤTをホイールWから取外す際に使用される。また、小形の支持体7は、小形のタイヤTをホイールEに装着し、または小形のタイヤTをホイールWから取外す際に使用される。
【0022】
図4を参照して、複動油圧シリンダCY1は、第1シリンダケース11と、第1ピストン12と、第2シリンダケース13と、第2ピストン14と、ピストン棒15と、を有する。第1シリンダケース11は、開口2から上部が突出した状態で、基台4に収容される。第1ピストン12は、第1シリンダケース11に収容される。第2シリンダケース13は、第1ピストン12に固定され、第1シリンダケース11の軸線L1に沿って移動可能である。第2ピストン14は、第2シリンダケース13に収容される。ピストン棒15は、第2ピストン14に固定され、第1シリンダケース11の軸線L1と同一直線をなす第2シリンダケース13の軸線L2に沿って移動可能である。ピストン棒15は、第2シリンダケース13から突出するピストン棒15の突出部分15aを有し、ピストン棒15の突出部分15aには、外ねじが刻設されている。ナット9は、ピストン棒15の突出部分15aに螺着される。ナット9は、押圧体10の載置面3から離反する方向への変位を阻止する。
【0023】
第1シリンダケース11は、位置決め突部3aを含む。位置決め突部3aは、開口2から露出した第1シリンダケース11の端面に設けられ、支持体7に嵌合することによって、支持体7の軸線が第1シリンダケース11の軸線L1と同軸となるように支持体7を位置決めする。第1シリンダケース11は、円筒状のシリンダチューブ41と、第1フランジ43と、第2フランジ44とを備える。第1フランジ43は、シリンダチューブ41の一端部に液密に接合され、前述の載置面3および位置決め突部3aを有する。第2フランジ44は、シリンダチューブ41の他端部に液密に接合される。位置決め突部3aは、たとえば円環状であってもよく、周方向に断続的に位置する構成であってもよく、少なくとも3つの凸状部分によって構成されてもよい。
【0024】
第1シリンダケース11内の空間は、第1ピストン12によって第1圧力室S1と第2圧力室S2とに液密に仕切られる。第1フランジ43は、作動油を供給または排出するための第1ポートP1と、第1圧力室S1および第1ポートP1間を連通する第1通路45とを有する。第2フランジ44は、作動油を供給または排出するための第2ポートP2と、第2圧力室S2および第2ポートP2間を連通する第2通路46とを有する。
【0025】
第2シリンダケース13は、長円筒状のシリンダチューブ47と、短円筒状の第1補強リング48と、短円筒状の第2補強リング49とを有する。第1補強リング48は、シリンダチューブ47の一端部内に液密に同軸に接合される。第2補強リング49は、シリンダチューブ47の他端部内に液密に同軸に接合される。シリンダチューブ47内の空間は、第2ピストン14によって第1圧力室S11と第2圧力室S12とに仕切られる。第2シリンダケース13が第2ピストン14、第1補強リング48、および第2補強リング49とともに、第1シリンダケース11内で軸線L1に沿って移動可能である。
【0026】
基台4は、工場内などの水平な床99に設置される。基台4は、載置面3を有する金属製の天板40と、天板40が一端部にたとえば溶接して固定される円筒状の金属製の周壁41aと、を有する。
【0027】
図5を参照して、前述の支持体7に代えて、大径のホイールWを乗載するための支持体33を用いることができる。支持体33は、第1シリンダケース11の載置面3に乗載されたとき、位置決め突部3aに嵌合し、位置決めされる。支持体33は、円筒状の本体35と、円環状の底板36と、複数のリブ37と、を有する。底板36は、本体35の一端部にたとえば溶接によって固定される。複数のリブ37は、本体35の内周面に例えば溶接して固定される。底板36の内径は、位置決め突部3aの外径よりも交差の範囲で僅かに大きい。これによって支持体33を位置決め突部3aに嵌合させ、第1シリンダケース11の軸線L1と同軸に乗載して、大径のホイールWを支持することができる。このように、支持体33によって、大径のホイールを第1シリンダケース11の軸線L1と同軸となるように案内される。したがって支持体33を載置面3に乗載するという単純な作業によって、支持体33の軸線が第1シリンダケース11の軸線L1と同軸となるように案内され、簡単な作業によって支持体33を位置決めすることができる。
【0028】
図6を参照して、中実タイヤ用着脱装置1は、制御装置50を備える。制御装置50は、油圧源5の本体部5aの背面に設けられるケース5b内に備えられる(
図3参照)。制御装置50は、三相交流電源からR相、S相、T相の各TR、S相端子TS、およびT相端子TTには、電線51R,51S,51Tがそれぞれ接続される。これらの電線51R,51S,51Tは、電磁開閉器53を介して第1モータM1に接続され、第1モータM1に駆動電力が供給される。これらの電線51R,51S,51Tには、第2モータM2に駆動電力を供給するための電線52R,52S,52Tが接続される。第1モータM1および第2モータM2は、たとえば三相誘導電動機が用いられる。第1モータM1は、油圧源5の油圧ポンプの駆動モータであり、第2モータM2は、昇降装置19のチェーンブロックに設けられる、第1索条21(チェーン)の巻き上げ、または巻き下ろし用の駆動モータである。
【0029】
電線51Rには電線54Rが分岐して接続され、電線51Sには電線54Sが分岐して接続される。電線54Rには、電線55RがジャックJ1を介して接続される。電線55Rには、電線56~59,74がそれぞれ接続される。電線54Sには、複数のジャックJ2~J7が介在される。電線56は、ジャックJ8を介して電線61に接続され、ジャックJ3に接続される。電線57は、ジャックJ9を介して電線66に接続され、電線66はジャックJ12を介して電線62に接続され、電線62はジャックJ4に接続される。ジャックJ1には電線60が接続され、電線60はジャックJ2に接続される。電線60には、前述のパイロットランプ29が接続される。電線61には電磁開閉器68が介在される。電線62にはフューズF1が介在される。
【0030】
電線58は、ジャックJ10を介して電線67に接続され、電線67はジャックJ12に接続される。電線73は、電線58から分岐し、ジャックJ11を介して電線69に接続され、ジャックJ13を介して電線63に接続され、ジャックJ5に接続される。電線59は、電線71,64に接続され、ジャックJ6に接続される。
【0031】
電線66には第1電磁ソレノイドSoL1が介在される。電線63にはフューズF2が介在される。電線67には第2電磁ソレノイドSoL2が介在される。電線69には第3電磁ソレノイドSoL3が介在される。電線64には継電器70が介在される。各電線57,58には、2方向モノレバースイッチSW1が介在される。
【0032】
各電線58,73にはコントロールスイッチSW2が介在される。電線56にはコントロールスイッチSW3が介在される。電線71には圧力スイッチSW4が介在される。電線74は、電線72,65に接続され、ジャックJ7に接続される。電線74にはコンデンサCが介在される。電線72には警報灯27が介在される。電線65にはフューズF3が介在される。
【0033】
図7を参照して、油圧源5は、作動油が貯留される油タンクTK、ピストンポンプ80、ストレーナ81、エアブリーザ82、油面計83、圧力計84、および前述の第1モータM1を含む。中実タイヤ用着脱装置1は、前述の油圧源5から複動油圧シリンダCY1に供給される作動油を制御する流路構成部30を含む。油圧源5の吐出ポートP11および戻りポートP12は、流路構成部30によって複動油圧シリンダCY1の第1ポートP1および第2ポートP2に接続される。
【0034】
流路構成部30は、第1電磁操作弁V1、第2電磁操作弁V2、減圧弁V3、リリーフ弁V4、および前述の圧力スイッチSW4を含む。第1電磁操作弁V1は、ポートa1,a2,b1,b2を有する4ポート3位置電磁弁によって構成される。第2電磁操作弁V2は、第1電磁操作弁V1と同様に、ポートa3,a4,b3,b4を有する4ポート3位置電磁弁によって構成される。減圧弁V3は、パイロット差動形減圧弁によって構成される。リリーフ弁V4は、直動形リリーフ弁によって構成される。
【0035】
第1電磁操作弁V1は、入り側のポートa1,a2と、出側のポートb1,b2とを有する。第1電磁操作弁V1は、ポートa1とポートb1とが接続され、ポートa2とポートb2とが接続される第1位置と、ポートa1とポートb2とが接続され、ポートa2とポートb1とが接続される第2位置と、全ポートa1,a2,b1,b2が閉鎖される中立位置との3位置のいずれかに電磁ソレノイドによって切換え可能に構成される。また、第2電磁操作弁V2は、入り側のポートa3,a4と、出側のポートb3,b4とを有する。第2電磁操作弁V2は、ポートa3とポートb3とが接続され、ポートa4とポートb4とが接続される第1位置と、ポートa3とポートb4とが接続され、ポートa4とポートb3とが接続される第2位置と、全ポートa3,a4,b3,b4が閉鎖される中立位置との3位置のいずれかに電磁ソレノイドによって切換可能に構成される。
【0036】
油圧源5は、流路構成部30を含む。流路構成部30は、第1油路と、第2油路とを含む。第1油路は、第1シリンダケース11およびピストン棒15が縮退するように、複動油圧シリンダCY1に油圧源5の作動油を供給する。第2油路は、第1シリンダケース11およびピストン棒15が伸長するように、油圧源5から複動油圧シリンダCY1に作動油を導く。減圧弁V3は、ピストンポンプ80から第1油路または第2油路を経て複動油圧シリンダCY1に供給される作動油の圧力を減圧する。
【0037】
油圧源5は、作動油を吐出する吐出ポートP11と、作動油を取り込む戻りポートP12とを有する。吐出ポートP11には、管路85が接続され、戻りポートP12には、管路86が接続される。管路85には、管路87が接続され、各管路85,87を経て減圧弁V3に油圧源5の作動油が導かれる。減圧弁V3は、管路87から流入した15MPaの作動油を9MPaに減圧する。減圧弁V3には、管路89が接続される。管路89は、第1電磁操作弁V1のポートa1に接続される。第1電磁操作弁V1のポートa2には、管路88が接続される。管路88は、管路86に接続される。また管路88は、管路90によって減圧弁V3の戻りポートに接続される。
【0038】
減圧弁V3によって減圧された作動油は、管路89を経て第1電磁操作弁V1のポートa1に供給される。第1電磁操作弁V1のポートb1には、管路91が接続される。第1電磁操作弁V1のポートb2には、管路92が接続される。管路91と管路88とは、管路93によって接続され、管路93にはリリーフ弁V4が介在される。管路92は、複動油圧シリンダCY1の第1ポートP1に接続され、管路91は複動油圧シリンダCY1の第2ポートP2に接続される。管路92には管路94が接続され、管路91には管路95が接続され、管路88には管路96が接続され、管路87には管路97が接続される。
【0039】
吐出ポートP11の作動油は、管路85,87,97を経て第2電磁操作弁V2のポートa3に供給される。第2電磁操作弁V2のポートa4は、管路96,88,86を経て戻りポートP12に接続される。第2電磁操作弁V2のポートb3には、管路95が接続される。第2電磁操作弁V2のポートb4には、管路94が接続される。管路92には、圧力スイッチSW4が接続される。この管路92を経て第1電磁操作弁V1のポートb2の作動油の圧力変化が伝達され、スイッチング態様が変化する。
【0040】
小形のタイヤTをホイールWに装着する場合について説明する。支持体7を、位置決め突部3aに嵌合させながら、基台4の載置面3上に載置する。支持体7上にホイールWを載置するとともに、ホイールW上に小形のタイヤTを載置する。押圧体10をピストン棒15に挿通し、ナット9を突出部分15aに螺着する。作業者によって操作ボックス26(
図1参照)のオン/オフ切換スイッチSW5を操作してオフからオンに切換えると、油圧源5に電源が投入され、管路85,87に吐出ポートP11から作動油が供給される。次に操作レバー32を下方へ角変位操作すると、制御装置50によって、第1電磁操作弁V1は中立位置から第2位置へ変位し、吐出ポートP11から管路87に吐出された高圧の作動油は、減圧弁V3によって減圧され、管路89に供給される。管路89の低圧の作動油は、管路92を経て複動油圧シリンダCY1の第1ポートP1に供給される。このとき、複動油圧シリンダCY1の第2ポートP2は、管路91から第1電磁操作弁V1のポートb1,a2および管路88,86を経て、油タンクTKに連通し、第2ポートP2から吐出された作動油が油タンクTKに戻される。また、第2電磁操作弁V2は、中立位置に保たれ、管路94,95と管路96,97との間は閉鎖され、第1油路が構成される。こうして油圧源5の吐出ポートP11に吐出される高圧の作動油が減圧されるとともに、複動油圧シリンダCY1の第2ポートP2が油タンクTKに開放されることによって、ピストン棒15は縮退し、押圧体10によって小形のタイヤTが支持体7上のホイールWに向けて押圧されて装着される。小形のタイヤTをホイールWから取外す場合については、支持体7上にタイヤ付きホイールWを載置し、同様の操作を行うことで小形のタイヤTをホイールWから取外すことができる。
【0041】
大形のタイヤTをホイールWに装着する場合について説明する。支持体33を、位置決め突部3aに嵌合させながら、基台4の載置面3上に載置する。支持体33上にホイールWを載置するとともに、ホイールW上に大形のタイヤTを載置する。押圧体10をピストン棒15に挿通し、ナット9を突出部分15aに螺着する。作業者が押圧力切換ボタン31(
図1参照)を押圧すると、第1電磁操作弁V1は、第2位置から中立位置に変位して、管路89は閉鎖され、低圧の作動油の管路92から第1ポートP1への供給が遮断される。これとともに第2電磁操作弁V2は中立位置から第2位置に変位する。これによって油圧源5の吐出ポートP11から管路85に吐出される高圧の作動油は、管路97から第2電磁操作弁V2のポートa3,b4を経て、管路94,92から第1ポートP1へ高圧の作動油が供給される。このとき、第2ポートP2は、管路91から管路93のリリーフ弁V4を通過して管路88,86および戻りポートP12に接続され、第2ポートP2から吐出される作動油は油タンクTKに戻される。こうして油圧源5の吐出ポートP11に吐出される高圧の作動油は、高圧のままで複動油圧シリンダCY1の第1ポートP1に供給され、第2ポートP2の作動油は油タンクTKに戻されることによって、ピストン棒15は高圧で縮退し、押圧体10によって大形のタイヤTが支持体33上のホイールWに向けて押圧されて装着される。大形のタイヤTをホイールWから取外す場合については、支持体7上にタイヤ付きホイールWを載置し、同様の操作を行うことで大形のタイヤTをホイールWから取外すことができる。
【0042】
また、作業者が操作レバー32を上方へ角変位操作すると、制御装置50によって、第1電磁操作弁V1は中立位置から第1位置に移動し、第2電磁操作弁V2は中立位置に維持される。減圧弁V3から管路89に吐出された低圧の作動油は、第1電磁操作弁V1のポートa1,b1を経て、管路91から複動油圧シリンダCY1の第2ポートP2に供給され、第2油路が構成される。このように流路構成部30によって第2油路が構成されることによって、油圧源5の低圧の作動油が複動油圧シリンダCY1の第2ポートP2に供給され、これによってピストン棒15が伸長されて、初期位置に戻る。その後ナット9および押圧体10を取外し、タイヤ付きホイールW、またはタイヤTおよびホイールWを取り除く。
【0043】
本実施形態によれば、基台4に複動油圧シリンダCY1が収容される。基台4は載置面3を有し、載置面3には開口2が設けられる。複動油圧シリンダCY1は、第1シリンダケース11、第1ピストン12、第2シリンダケース13、第2ピストン14、およびピストン棒15を有する。複動油圧シリンダCY1は、油圧源5から供給される作動油によって、第1シリンダケース11およびピストン棒15を伸長させ、または縮退させることができる。開口2から露出する第1シリンダケース11の端面には、位置決め突部3aが設けられる。位置決め突部3aは、支持体7に嵌合可能であるので、位置決め突部3aが嵌合するように支持体7を第1シリンダケース11の端面に乗載することによって、支持体7の軸線が第1シリンダケース11の軸線L1と同軸となるように支持体7が位置決めされる。したがって、作業者が手作業で支持体7の位置決め作業を行う必要がなくなり、作業性が向上される。支持体7の軸線が第1ピストン12の軸線L1に対してずれが生じないので、支持体7に乗載させるホイールWの軸線も第1シリンダケース11の軸線L1と同軸にすることができ、ホイールWに乗載されたタイヤTを押圧体10によって第1シリンダケース11の軸線L1から大きくずれることなく押圧することができる。
【0044】
また本実施形態によれば、油圧源5は、流路構成部30を含み、流路構成部30は、第1油路と第2油路とを含む。第1油路は、第1シリンダケース11およびピストン棒15が縮退するように、油圧源5から複動油圧シリンダCY1に供給される作動油の経路を構成する。また第2油路は、第1シリンダケース11およびピストン棒15が伸長するように、油圧源5から複動油圧シリンダCY1に供給される作動油の経路を構成する。第1油路および第2油路は、選択的に切り換えられる。これによって、複動油圧シリンダCY1の動作をタイヤTの押圧または退避に対応させて容易に切換えることができ、利便性を向上することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、油圧源5から第1油路または第2油路を経て複動油圧シリンダCY1に供給される作動油の圧力を減圧弁V3によって減圧することができ、大型の産業用車両のタイヤなどのように、タイヤTをホイールWに装着するために大きな押圧力を必要とする場合と、中型および小型の産業用車両のタイヤTなどのように、タイヤTをホイールWに装着するために大型の産業用車両のタイヤTの押圧力よりも低い押圧力で済む場合とに応じて、作動油の圧力を異ならせることができる。たとえば大型の産業用車両のタイヤTであれば、減圧弁V3によって減圧しない、たとえばと70ton以上の高圧の作動油を複動油圧シリンダCY1に供給し、小型および中型の産業用車両のタイヤTであれば、減圧弁V3によって減圧された、たとえば50ton未満の中圧の作動油を複動油圧シリンダCY1に供給することができる。これによって、油圧源5の不要な高圧の稼動を抑制し、これによって省エネルギ化を図り、安全性を向上することができる。
【0046】
また本実施形態によれば、圧力計84によって検出される作動油の圧力が13MPa以上になると、警報灯27が点灯するので、作業者に高圧の作動油による作業中であることを報知することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、また、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 中実タイヤ用着脱装置
2 開口
3 載置面
3a 位置決め突部
4 基台
5 油圧源
7,33 支持体
8 押圧リング部
9 ナット
10 押圧体
11 第1シリンダケース
12 第1ピストン
13 第2シリンダケース
14 第2ピストン
15 ピストン棒
15a 突出部分
16 ベースプレート
17 支柱
18 アーム
19 昇降装置
20 巻取り部
21 第1索条
22 第2索条
23 フック部材
24 タイヤ把持具
25 チェーンブロック
26 操作ボックス
27 警報灯
28 ケース
29 パイロットランプ
31 押圧力切換ボタン
32 操作レバー
CY1 複動油圧シリンダ
J1~J13 ジャック
L1 第1シリンダケースの軸線
L2 第2シリンダケースの軸線
SW5 オン/オフ切換スイッチ
T タイヤ
V1 第1電磁操作弁
V2 第2電磁操作弁
V3 減圧弁
W ホイール
【要約】
【課題】 支持体を高精度でピストンの軸線と同一軸線をなすように乗載することができる、作業性の向上された中実タイヤ用着脱装置を提供する。
【解決手段】 中実タイヤ用着脱装置1は、第1シリンダケース11と、第1ピストン12と、第2シリンダケース13と、第2ピストン14と、ピストン棒15と、を有する複動油圧シリンダCY1と、油圧源5と、ホイールWを支持するための円筒状の支持体7と、タイヤTに乗載され、支持体7が挿入可能な、支持体7よりも大径の押圧リング部8を有する押圧体10と、第2シリンダケース13から突出するピストン棒15の突出部分15aに螺着され、押圧体10の載置面3から離反する方向への変位を阻止するナット9と、を備える。第1シリンダケース11は、開口2から露出した第1シリンダケース11の端面に設けられる位置決め突部3aを含む。
【選択図】
図1