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特許7590035低融点多孔質セラミックス材料及びその製造方法
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  • 特許-低融点多孔質セラミックス材料及びその製造方法 図1
  • 特許-低融点多孔質セラミックス材料及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】低融点多孔質セラミックス材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/06 20060101AFI20241119BHJP
   A47G 19/14 20060101ALI20241119BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20241119BHJP
   C04B 35/14 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C04B38/06 D
A47G19/14 A
B24D3/00 320A
C04B35/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023535015
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2021100348
(87)【国際公開番号】W WO2022142168
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202011586853.X
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521319258
【氏名又は名称】華僑大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陸 静
(72)【発明者】
【氏名】王 艶輝
(72)【発明者】
【氏名】馬 忠強
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102030513(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106938911(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106866175(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103467066(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105906311(CN,A)
【文献】特表2006-512182(JP,A)
【文献】江 夏ら,宣興紫砂泥料性能研究,Jiangsu Ceramics,2011年,Vol.44 No.3 June,2011,P.20-25,DOI:10.16860/j.cnki-321251/lq.2011.03.008
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 33/00-33/34
C04B 35/00-35/84
C04B 38/00-38/10
A47G 19/14
B24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低融点多孔質セラミックス材料であって、
孔率が24~42%であり、
インダーと、下記の質量百分率の原料成分を含むことを特徴とする低融点多孔質セラミックス材料。
ホウケイ酸ガラス砂 27.5~50%
紫砂粉末 15~20%
石英粉末 20~50%
NaO粉末 6~12%
ZrO粉末 1~2%
LiO粉末 0.5~1.5%
【請求項2】
前記バインダーがデキストリンであることを特徴とする請求項1に記載の低融点多孔セラミックス材料。
【請求項3】
前記ホウケイ酸ガラス砂とNaO粉末は、2000メッシュの篩を通過することができることを特徴とする請求項1に記載の低融点多孔質セラミックス材料。
【請求項4】
前記紫砂粉末、石英粉末及びLiO粉末は、1000メッシュの篩を通過できることを特徴とする請求項1に記載の低融点多孔質セラミックス材料。
【請求項5】
前記原料成分とバインダーとの質量比が80~90:10~20であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の低融点多孔質セラミックス材料。
【請求項6】
前記原料成分と前記バインダーとの質量比が85:15であることを特徴とする請求項5に記載の低融点多孔質セラミックス材料。
【請求項7】
前記原料成分の原料粉末が5000メッシュの篩を通過できることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の低融点多孔質セラミックス材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の低融点多孔質セラミックス材料の製造方法であって、
(1)前記質量百分率に基づいて秤量し、各原料成分原料粉末を得るステップと、
(2)ホウケイ酸ガラス砂とNaO粉末を均一に混合した後、順に乾式粉砕及びがけを経て、第1の混合物を取得するステップと、
(3)紫砂粉末と石英粉末とLiO粉末とZrO粉末とを均一に混合した後、順に乾式粉砕及び篩がけを経て、第2の混合物を取得するステップと、
(4)前記第1の混合物と第2の混合物を均一に混合した後、順にガラス化処理、湿式粉砕、乾燥及び篩がけを経て、前記原料粉末を取得するステップと、
(5)前記原料粉末をバインダーと均一に混合した後、造粒し混合原料を取得するステップと、
(6)前記混合原料を所望の形状にプレス成形し、十分に乾燥して素地を取得するステップと、
(7)前記素地を成温度まで昇温して、保温焼成するステップと、を含み、前記焼成温度は680~830℃であることを特徴とする低融点多孔質セラミックス材料の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス化処理の温度は800~900℃であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(7)における昇温速度は4~6℃/minであり、保持焼成の時間は1.5~2.5時間であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス材料の技術分野に属し、特に、低融点多孔質セラミックス材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質セラミックスは、比表面積が大きく、エネルギー吸収、減衰等の特性を有し、特殊な加工を施した多孔質セラミックスは、液体、気体等の物質に対する選択透過性を有するため、自動車環境、化学工業、機械、生物医学等の様々な分野で広く用いられている。現在、商業化されている多孔質セラミックスは、主にAl、SiC、ZrO及びムライトを主原料としているが、これらの材料は、製造プロセスが複雑であり、焼成温度が高く、エネルギー消費が大きく、コストが高く、又は造孔剤とマトリックスの耐火度との不整合等の問題により造孔が困難であり、従来の多孔質セラミックス製品は、機械的強度が低く、耐震性、制振性が劣り、理想的な貫通孔が生じにくい等の問題があり、多孔質セラミックスの普及及び応用が著しく制限されている。そこで、焼結温度を効果的に低下させ、多孔質セラミックスの気孔率および比表面積を向上させる適切な原料を見出すことが、多孔質セラミックスの広範な用途に積極的に寄与している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決し、低融点の多孔質セラミックス材料を提供することを目的とする。
【0004】
本発明の他の目的は、上記低融点多孔質セラミックス材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
低融点多孔質セラミックス材料であって、
焼成温度が680~830℃であり、気孔率が24~42%であり、
原料はバインダーと、下記の質量百分率の原料成分を混合した後、ガラス化処理、湿式粉砕、乾燥及び篩がけを経て得られる原料粉末とからなる、ことを特徴とする低融点多孔質セラミックス材料。
ホウケイ酸ガラス砂 27.5~50%
紫砂粉末 15~20%
石英粉末 20~50%
NaO粉末 6~12%
ZrO粉末 1~2%
LiO粉末 0.5~1.5%
【0006】
本発明の好ましい実施形態において、バインダーはデキストリンである。
【0007】
本発明の好ましい実施形態において、前記ホウケイ酸ガラス砂およびNaO粉末は、2000メッシュスクリーンを通過できる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、前記紫外線研磨剤粉末、石英粉末及びLi 粉末は、1000メッシュスクリーンを通過できる。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記原料粉末と上記仮バインダーとの質量比が80~90:10~20である。
【0010】
さらに好ましくは、前記原料粉末と仮バインダーとの質量比が85:15である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、前記原料粉末は、5000メッシュの篩を通過できる。
【0012】
前記低融点多孔質セラミックス材料の製造方法であって、
(1)前記質量百分率に基づいて秤量し、各成分原料粉末を得るステップと、
(2)ホウケイ酸ガラス砂とNaO粉末を均一に混合した後、順に乾式粉砕及びがけを経て、第1の混合物を取得するステップと、
(3)紫砂粉末と石英粉末とLiO粉末とZrO粉末とを均一に混合した後、順に乾式粉砕及び篩がけを経て、第2の混合物を取得するステップと、
(4)前記第1の混合物と第2の混合物を均一に混合した後、順にガラス化処理、湿式粉砕、乾燥及び篩がけを経て、前記原料粉末を取得するステップと、
(5)前記原料粉末をバインダーと均一に混合した後、造粒し混合原料を取得するステップと、
(6)前記混合原料を所望の形状にプレス成形し、十分に乾燥して素地を取得するステップと、
(7)前記素地を前記焼成温度まで昇温して、保温焼成するステップと、を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記ガラス化処理の温度が800~900℃である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、工程(7)における昇温速度は4~6℃/分であり、保持焼成時間は1.5~2.5時間である。
【発明の効果】
【0015】
本発明における各原料成分の相乗作用により、得られる製品は、焼結工程が簡単で、機械的強度が良く、造孔剤無しで気孔を生成できる等の利点を有し、バインダーと造孔剤の耐火度の不整合、放熱能力の低下、ガス透過性の低下等の問題を効果的に解決し、多孔質セラミックス材料の寿命や把持力を向上させることができるが。焼成温度が680~780℃にすぎず、造孔剤を添加しない条件下では気孔率が最大42%であるとともに、優れた圧縮強度、抗折強度及び硬度を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1の低融点多孔質セラミックス材料の焼成後の多孔質構造の電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の比較例6の低融点多孔質セラミックス材料の焼成後の多孔質構造の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施例1~6>
(1)原料粉末を構成する原料成分を質量百分率で秤量する。
(2)ホウケイ酸ガラス砂とNaO粉末とを均一に混合した後、順に乾式粉砕し、2000メッシュの篩を通すことにより、第1の混合物を取得する。
(3)紫砂粉末、石英粉末、ZrO粉末及びLiO粉末を均一に混合した後、順に乾式粉砕し、1000メッシュの篩を通すことにより、第二混合物を取得する。
(4)前記第1混合物と第2混合物を均一に混合した後、順に800℃でのガラス化処理、湿式粉砕、乾燥、5000メッシュ篩の通しを経て、前記原料粉末を取得する。
(5)前記原料粉末とデキストリンを85:15の質量比で均一に混合した後、さらに造粒して混合原料を取得する。
(6)前記混合原料を所望の形状にプレス成形し、24時間十分に乾燥して素地を取得する。
(7)上記素地を5℃/minの速度で焼成温度まで昇温し、2時間保持して焼成した。
実施例1~6の原料成分の配合割合、焼成温度、得られた技術的効果を表1に示し、実施例1で得られた低融点多孔質セラミックス材料の焼成後の多孔構造を図1に示す。
【0018】
<比較例1~5>
具体的な作製手順は実施例1~6と同様であり、原料成分の配合比、焼成温度および得られる技術的効果を表1に示す。
【0019】
表1から明らかなように、紫砂粉の添加量が15%未満の場合には、多孔質セラミックスの気孔が貫通孔から閉止孔に変化し、多孔質セラミックスの気孔率が急激に低下し、多孔質セラミックスの利点が発揮できない。一方、紫砂粉末の添加量が20%を超えると、多孔質セラミックスの気孔の重なりが急激に大きくなり、多孔質セラミックスの気孔率が急激に上昇し、セラミックスの機械的特性が急激に低下する。この様な焼結品は強度が低く、使用範囲が大幅に小さくなり、使用寿命が急激に低減する。
【0020】
ホウケイ酸ガラス砂の添加量が20%未満の場合、多孔質セラミックの焼成温度が1100℃と高くなり、焼成温度が高すぎると、その適用範囲(例えば、セラミック砥石など)が狭くなり、且つ砥粒の形態が破壊される(ShaX,YueW,ZhangH,etal.Thermal stability of polycrystalline diamond compact sintered with boron-coated diamond particles[J]。Diamondand Related Materials.2020,104:107753を参照)。一方、ホウケイ酸ガラス砂の添加量が55%未満の場合には、焼成温度が依然として680℃を必要とし、ホウケイ酸ガラスの含有量の増加に伴う焼成温度の低下は見られない。本発明で得られるビトリファイドボンドに使用される仮バインダーはデキストリンであるが、市販の水ガラス等の仮バインダーは、コンパウンド時にビトリファイドボンドと反応し、或いは焼結後に気孔を生じ、紫砂自身の自着気孔を破壊し、ビトリファイドボンドを緻密化することになる。
【0021】
<比較例6>
実施例1の原料粉末と水ガラス(バインダーとして、デキストリンの代わりに水と水ガラスの比率13.6:1)溶液を85:15の質量比で均一に混合した後、造粒して混合原料取得する。混合原料を所望の形状にプレス成形し、24時間十分に乾燥して素地を取得し、素地を5℃/minの速度で750℃まで昇温し、2時間保温焼成して、図2に示す多孔質構造を取得する。実施例1に比べて、比較例で得られたセラミックス本体の多孔質構造が緻密になり、紫砂による天然多孔質構造の優位性がなくなり、その力学的性能が向上し、その圧縮強度が55.4MPa、抗折強度が50.25MPa、硬度が40HRBである。
【0022】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、従って、本発明の実施範囲をこれらによって限定することはできず、即ち、本発明の特許請求の範囲及び明細書の内容に基づく等価な変更及び修飾は、いずれも本発明の包括的な範囲内に属する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、焼成温度680~830℃、気孔率24~42%であり、その原料は仮バインダーと原料粉末からなる低融点多孔質セラミックス材料及びその製造方法を開示する。本発明における各原料成分の相乗作用により、得られる製品は、焼結工程が簡単で、機械的強度が良く、造孔剤無しで気孔を生成できる等の利点を有し、バインダーと造孔剤の耐火度の不整合、放熱能力の低下、ガス透過性の低下等の問題を効果的に解決し、多孔質セラミックス材料の寿命や把持力を向上させることができるが。焼成温度が680~780℃にすぎず、造孔剤を添加しない条件下では気孔率が最大42%であるとともに、優れた圧縮強度、抗折強度及び硬度を保持し、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2