(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】伸縮継手
(51)【国際特許分類】
F16L 27/10 20060101AFI20241119BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
F16L27/10 Z
F16L55/00 D
(21)【出願番号】P 2024000704
(22)【出願日】2024-01-05
【審査請求日】2024-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027189(JP,A)
【文献】特開2017-080771(JP,A)
【文献】特開2016-198786(JP,A)
【文献】特開2023-144167(JP,A)
【文献】特開2008-043981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/10
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する第1ダクトと第2ダクトとの間を接続し内部を前記流体が流通する伸縮継手であって、
前記第1ダクトに接続される第1フランジと、
前記第2ダクトに接続される第2フランジと、
前記第1フランジ及び前記第2フランジとの間に設けられ伸縮性を有し前記流体の流出を防止する流出防止部と、
前記流出防止部の外側及び内側に設けられ、前記流出防止部
の内側に
おいては周方向に沿って設けられた管状保護部材と、
前記管状保護部材の内部に設けられた線状センサと、
前記流出防止部、前記第1フランジ又は前記第2フランジの少なくともいずれか1つに設けられ、前記管状保護部材及び前記線状センサを前記流出防止部の
内側に導入する導入部と
を備え、
前記導入部は、前記導入部が設けられている前記流出防止部、前記第1フランジ又は前記第2フランジの少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されている伸縮継手。
【請求項2】
前記流出防止部、前記第1フランジ又は前記第2フランジの少なくともいずれか1つに設けられ、前記導入部から前記流出防止部の
内側に導入された前記管状保護部材及び前記線状センサが導出される、導出部を備え、
前記導出部は、前記導出部が設けられている前記流出防止部、前記第1フランジ又は前記第2フランジの少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されている請求項1に記載の伸縮継手。
【請求項3】
前記管状保護部材は、金属により形成されている請求項1又は2に記載の伸縮継手。
【請求項4】
前記管状保護部材は、樹脂により形成されている請求項1又は2に記載の伸縮継手。
【請求項5】
前記管状保護部材は、前記線状センサと接触する径方向内側部分が樹脂により形成され、径方向外側部分が金属により形成されている請求項1又は2に記載の伸縮継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は伸縮継手に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や化学プラント等の設備に設けられている、高温ガス等の流体を移送するダクトの連結部には、ダクト自体に生じる変位、振動及び応力等を吸収する目的で伸縮継手が使用されている。従来の伸縮継手の例として、例えば特許文献1に記載された伸縮継手が知られている。この伸縮継手は、ダクトと接続可能に形成された1対のフランジを、伸縮可撓性を有する筒状の非金属製のベローズ材及び断熱部で繋いだものであって、断熱部に複数の温度ヒューズが配列されており、これらの温度ヒューズの断線状態を検出することで、断熱部の断熱機能の低下を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の伸縮継手では、伸縮継手の内部に設けられた温度ヒューズが高熱により断線した場合や、伸縮継手本体の損傷によらない、使用による経年劣化等により断線した場合には、温度ヒューズを交換するために伸縮継手を解体し、再度温度ヒューズを組み込んで伸縮継手を組み立て直す必要があるため、伸縮継手自体は解体修理する必要が無いにもかかわらず温度ヒューズの交換のために伸縮継手本体の解体修理が必要となり、作業工数が多く、莫大なコストがかかってしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、内部に設けられたセンサ等を簡単に交換することができる伸縮継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る伸縮継手は、流体が流通する第1ダクトと第2ダクトとの間を接続し内部を流体が流通する伸縮継手であって、第1ダクトに接続される第1フランジと、第2ダクトに接続される第2フランジと、第1フランジ及び第2フランジとの間に設けられ伸縮性を有し流体の流出を防止する流出防止部と、流出防止部よりも内側に周方向に沿って設けられた管状保護部材と、管状保護部材の内部に設けられた線状センサと、流出防止部、第1フランジ又は第2フランジの少なくともいずれか1つに設けられ、管状保護部材及び線状センサを流出防止部の内部に導入する導入部とを備え、導入部は、導入部が設けられている流出防止部、第1フランジ又は第2フランジの少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されている。
【0007】
また、流出防止部、第1フランジ又は第2フランジの少なくともいずれか1つに設けられ、導入部から流出防止部の内部に導入された管状保護部材及び線状センサが導出される、導出部を備え、導出部は、導出部が設けられている流出防止部、第1フランジ又は第2フランジの少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されていてもよい。
また、管状保護部材は、金属により形成されていてもよい。
また、管状保護部材は、樹脂により形成されていてもよい。
また、管状保護部材は、線状センサと接触する径方向内側部分が樹脂により形成され、径方向外側部分が金属により形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る伸縮継手は、管状保護部材の内部に設けられた線状センサと、流出防止部、第1フランジ又は第2フランジの少なくともいずれか1つに設けられ、管状保護部材及び線状センサを流出防止部の内部に導入する導入部とを備え、導入部は、導入部が設けられている流出防止部、第1フランジ又は第2フランジの少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されているため、内部に設けられたセンサを簡単に交換することが可能な伸縮継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1における非金属製伸縮継手の概略図である。
【
図2】
図1に示す上流側ダクト、下流側ダクト及び伸縮継手の断面概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る保護管及びFBGセンサを径方向に沿って切断した断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る伸縮継手と、保護管と、FBGセンサとの模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る上流側ダクト、下流側ダクト及び伸縮継手の概略断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る伸縮継手と、保護管と、FBGセンサとの模式図である。
【
図7】本発明の実施の形態3に係る保護管及びFBGセンサを径方向に沿って切断した断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態4に係る保護管及びFBGセンサを径方向に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る伸縮継手を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態1における非金属製伸縮継手の概略図である。本実施の形態1では火力発電設備等に配設されているダクト構造1は、内部に排気ガス等の高温の流体が流通する、円筒状の上流側ダクト11と下流側ダクト12とを有している。ダクト構造1に設けられた非金属製伸縮継手である伸縮継手20は、上流側ダクト11と下流側ダクト12との間に配置されて両ダクト間を接続し、内部の流体の流出を防止している。また、伸縮継手20は、上流側ダクト11と下流側ダクト12との膨張、収縮による両ダクトの間隔の変動を吸収し、流体の流通により上流側ダクト11と下流側ダクト12とに発生する振動等も吸収している。なお、
図1に示される伸縮継手20は円筒状のものを例示しているが、実際の形状はこれに限られず、接続するダクト構造の形状に合わせた構造とすることが一般的であり、例えば角筒形の形状を用いることもできる。
【0011】
伸縮継手20は、上流側ダクト11に接続される第1フランジ21と、下流側ダクト12に接続される第2フランジ22と、第1フランジ21及び第2フランジ22の間に設けられ、これらのフランジを気密に接続するベローズ材23とを有している。一対の第1,第2フランジ21,22およびベローズ材23は、円筒形状の上流側ダクト11及び下流側ダクト12の形状に合わせて、円筒形状に構成されている。上流側ダクト11には第1ダクトフランジ14が形成されており、第1フランジ21は第1ダクトフランジ14に対応するように形成される。第1フランジ21と第1ダクトフランジ14とを接続(例えば、ボルト等で締結)することにより、伸縮継手20と上流側ダクト11とは気密に接続されている。下流側ダクト12には第2ダクトフランジ15が形成されており、第2フランジ22は第2ダクトフランジ15に対応するように形成される。第2フランジ22と第2ダクトフランジ15とを接続(例えば、ボルト等で締結)することにより、伸縮継手20と下流側ダクト12とは気密に接続されている。また、第1フランジ21及び第2フランジ22は、ステンレス鋼等の任意の金属で形成することができる。ベローズ材23は、伸縮継手20の両端部(上流側ダクト11及び下流側ダクト12との接続面)間の距離が、接続する上流側ダクト11及び下流側ダクト12の離間距離よりも十分長くなるのに必要な寸法を有している。そして、ベローズ材23を弛ませた状態で伸縮継手20を上流側ダクト11及び下流側ダクト12の間に取付けることにより、両ダクトの熱伸縮および振動等を吸収する。
【0012】
図2は、
図1に示す上流側ダクト11、下流側ダクト12及び伸縮継手20の断面概略図である。上流側ダクト11の下流側には、先端が下流側ダクト12の内径よりも小さな筒状体として形成されたバッフル板13が設けられている。このバッフル板13は、例えばステンレス鋼等の金属により形成することができる。伸縮継手20は、バッフル板13の存在により、上流側ダクト11を通過して矢印A方向に流通する流体に直接曝されないよう配設されている。
【0013】
伸縮継手20は、径方向の最も外側に、第1フランジ21と第2フランジ22との間に配設され、上流側ダクト11及び下流側ダクト12を流れる流体の流出を防止するベローズ材23を有している。ベローズ材23は、径方向外側から順に第1ベローズ部材24、第2ベローズ部材25、第3ベローズ部材26及び第4ベローズ部材27の4層の層状部材が、積層されて構成されている。また、ベローズ材23は、矢印A方向で示す流体の流動方向及び流動方向に交差する方向に沿って伸縮可撓性を有するように構成されている。なお、ベローズ材23は伸縮部を構成している。
【0014】
ベローズ材23を構成する第1ベローズ部材24、第2ベローズ部材25、第3ベローズ部材26及び第4ベローズ部材27は、流体の流出を防止するシール層、ベローズ材23の強度を補強する補強層、ベローズ材23を外気、水分及び紫外線等の周辺環境から保護するための保護層等の任意の層を含むことができ、ベローズ材23はこのような任意の層を任意の好適な順番で組み合わせることで形成することができる。また、ベローズ材23は、4層の部材による構成に限定されず、例えば、1~3層の部材による構成とすることができ、5層以上の部材による構成とすることができる。また、第1ベローズ部材24、第2ベローズ部材25、第3ベローズ部材26及び第4ベローズ部材27は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ガラスクロス等の無機繊維クロス、ナイロン等の有機繊維クロス、金属繊維クロス及び膜状樹脂等の、既知の任意の材料を適当に採用して形成することができる。
【0015】
また、伸縮継手20は、ベローズ材23の径方向内側に、断熱部30を有している。断熱部30は、伸縮継手20内を流通する流体の熱を断熱し、径方向外側に設けられているベローズ材23に流体の熱が直接伝達されることを防止する。断熱部30は、径方向外側から順に第1断熱部材31、第2断熱部材32、第3断熱部材33、第4断熱部材34及び第5断熱部材35の5層の断熱部材が、積層されて構成されている。断熱部30を構成する第1断熱部材31、第2断熱部材32、第3断熱部材33、第4断熱部材34及び第5断熱部材35は、断熱性能等条件を満たすための断熱層として任意の層を含むことができ、断熱部30はこのような任意の層を任意の好適な順番で組み合わせることで形成することができる。また、断熱部30は、5層の部材が積層された構成に限定されず、例えば、1~4層の部材による構成とすることができ、6層以上の部材による構成とすることができる。なお、断熱部30を構成する第1断熱部材31、第2断熱部材32、第3断熱部材33、第4断熱部材34及び第5断熱部材35の材料は、既知の任意の材料を適当に採用して形成することができる。第1断熱部材31、第2断熱部材32、第3断熱部材33、第4断熱部材34及び第5断熱部材35は、例えば、グラスフェルトやセラミックフェルト、アルミナフェルト等の無機繊維フェルトをガラスクロスやセラミッククロス、アルミナクロス等の無機繊維クロスで包み、これを任意でステンレス鋼線等の鋼線、インコネル(登録商標)線又は銅線等の、適当な金属線で編んだ網(メッシュ等)で包んで構成されてもよいし、これに代えて、PTFE等による有機繊維や有機フィルム等で包んで構成されてもよい。
【0016】
伸縮継手20の第1断熱部材31の径方向外側には、ステンレス鋼により形成された保護管37が巻回されており、保護管37の内側にFBGセンサ41が挿入されている。また、第2断熱部材32の径方向外側であって、FBGセンサ41に対して下流側ダクト12に近い側には、保護管37が巻回されており、保護管37の内側にFBGセンサ40が挿入されている。さらに、第2断熱部材32の径方向外側であって、FBGセンサ41に対して上流側ダクト11に近い側には、保護管37が巻回されており、保護管37の内側にFBGセンサ42が挿入されている。すなわち、保護管37は、断熱部30の径方向外側に巻回されている。また、FBGセンサ40,41,42は、断熱部30の径方向外側且つベローズ材23の径方向内側に配設されている。FBGセンサ40,41,42は、光ファイバのコア部にレーザ加工により複数の回折格子を形成して構成された温度センサである。
【0017】
後に詳しく説明するように、保護管37及びFBGセンサ40,41,42は、ベローズ材23に形成された導入部を経由して伸縮継手20の外側から内側に導入されている。なお、FBGセンサ40,41,42は光ファイバ温度センサを構成し、保護管37は管状保護部材を構成している。
【0018】
図3は、本実施の形態1に係る保護管37及びFBGセンサ40,41,42を径方向に沿って切断した断面図である。FBGセンサ40,41,42は、ステンレス鋼により形成された保護管37によって収容され、
図2に示す断熱部30の径方向外側に巻回されている。
【0019】
図4は、本実施の形態1に係る伸縮継手20と、保護管37と、FBGセンサ40,41,42との模式図である。なお、説明の便宜のために
図4においてはフランジ21,22等の、伸縮継手20の一部の構成の記載を省略している。矢印Aで示す流体の流動方向に対して、下流側から順にFBGセンサ40、FBGセンサ41、FBGセンサ42が設けられている。FBGセンサ40,41,42は、保護管37に収容された状態で、伸縮継手20の断熱部30の径方向外側に、周方向に沿ってそれぞれ間隔を開けて互いに平行に巻回されている。すなわち、FBGセンサ40,41,42は、ベローズ材23(
図2参照)の径方向内側において周方向に沿ってそれぞれ間隔を開けて互いに平行に巻回されている。
【0020】
FBGセンサ40,41,42は、表面をポリイミド樹脂で被覆したクラッド部と、クラッド部の内側に配設されたコア部とを有する光ファイバであって、光ファイバの延びる方向において所定の間隔毎に、レーザ加工によりコア部に形成された図示しない回折格子が複数設けられている光ファイバ温度センサである。なお、
図4において伸縮継手20に隠れており破線で記載されているFBGセンサ40,41,42の部分にも回折格子が設けられている。すなわち、各FBGセンサ40,41,42は、1本の光ファイバ上に、それぞれ複数の回折格子を有している。なお、回折格子は、温度測定部を構成している。
【0021】
保護管37の一端部は、第1フランジ21(
図2参照)に近い側のベローズ材23に形成された導入部50に挿入されており、FBGセンサ40,41,42は、導入部50を経由して伸縮継手20の外側から内側に導入されている。導入部50は、保護管37が挿入されているときにベローズ材23の外側と内側との気密性及び強度を保つことが可能に構成されている。
【0022】
ベローズ材23に設けられた導入部50の構成としては、例えば、貼り合わせられたベローズ材23の間に保護管37を挿入したものや、ベローズ材23の一部を穿孔して保護管37を挿入し、次に穿孔された部分をシーリング部材によりシーリングしたもの等を用いてもよい。また、導入部50を第1フランジ21又は第2フランジ22に設けてもよい。第1フランジ21又は第2フランジ22に設けられた導入部50の構成としては、例えば、第1フランジ21又は第2フランジ22の一部を穿孔して保護管37を挿入し、次に穿孔された部分をシーリング部材によりシーリングしたものを用いてもよいし、第1フランジ21又は第2フランジ22の一部に保護管37を挿入可能な切欠部を予めプレス成形等により成形し、この切欠部に保護管を挿入したものを用いてもよい。
【0023】
保護管37の一端部は、導入部50の外側に突出しており、FBGセンサ40,41,42は、導入部50から遠位側において保護管37に収容されず露出している。FBGセンサ40,41,42は、伸縮継手20の外部に設けられたインテロゲータ44に接続されている。インテロゲータ44は、FBGセンサ40,41,42に光を入射させる光源装置と、各回折格子からの反射光の波長を測定、分析する光波長測定装置とを有しており、適当な耐候ケースに収納されて配設されている。
【0024】
次に、本実施の形態1に係る伸縮継手20の動作を説明する。本実施の形態1の火力発電設備等は、
図1に示す伸縮継手20が設けられているダクト構造1を有する。この火力発電設備等の稼働中に、
図4に示すインテロゲータ44は、FBGセンサ40,41,42に光を入射し、各回折格子からの反射光の波長を測定して分析する。
【0025】
ダクト構造1を有する火力発電設備等の稼働中に、
図2に示す伸縮継手20の断熱部30の一部に経年劣化や異常運転、流体内の異物の干渉等による損傷が発生した場合には、内部を流れる流体の熱を遮断する(断熱する)断熱性能が部分的に低下する。このため、断熱部30の断熱性能の低下が発生した箇所の径方向外側の断熱部30、ベローズ材23及びそれらの周囲の温度が、断熱性能の低下の発生前よりも上昇する。これにより、断熱部30の断熱性能の低下が発生した箇所の近傍に配設されている、回折格子(
図4参照)の温度が上昇する。この回折格子の温度上昇により、当該回折格子からの反射光の波長が温度上昇に対応して変化(シフト)する。インテロゲータ44が、この反射光の波長を測定して波長の変化を変化前の波長と比較し、分析することで、FBGセンサ40,41,42に設けられた回折格子のうちどの回折格子において温度変化が発生したかを検出することができる。そして、温度変化が発生した回折格子の近傍で、断熱部30の劣化が発生したことを特定することができる。すなわち、伸縮継手20のうち、断熱部30の劣化が発生した箇所を特定することができる。
【0026】
また、
図2に示す伸縮継手20の、ベローズ材23の一部に熱や外力等による損傷が発生し、ベローズ材23の気密性が損なわれる場合がある。この場合には、ベローズ材23の損傷が発生した箇所においてベローズ材23の内外に内部流体や外気が流通することにより、損傷が発生した箇所の径方向内側に位置する断熱部30及びその周囲の温度が、損傷の発生前に対して上昇又は低下することがある。これにより、損傷が発生した箇所の近傍に配設されている、回折格子(
図4参照)の温度が上昇又は低下する。この回折格子の温度上昇又は低下により、当該回折格子からの反射光の波長が変化する。インテロゲータ44が、この反射光の波長の変化を変化前の波長と比較し、分析することで、FBGセンサ40,41,42のどの回折格子において温度変化が発生したかを検出することができる。そして、温度変化が発生した回折格子の近傍で、ベローズ材23の損傷が発生したことを特定することができる。すなわち、伸縮継手20のうち、ベローズ材23の損傷が発生した箇所を特定することができる。
【0027】
次に、
図4に示すFBGセンサ40、41、42が故障した場合について説明する。本実施の形態1においては、伸縮継手20の組立時に、ステンレス鋼で形成された保護管37が予めベローズ材23の内部の断熱部30に巻回されている。例えば、FBGセンサ40が経年劣化や異常な温度の影響により故障した場合には、作業者が導入部50の外側からFBGセンサ40を引き抜く。保護管37はステンレス鋼により形成されているため、FBGセンサ40を挿入するために十分に剛性を有しており、且つFBGセンサ40と保護管37の内部との摩擦が小さい。そのため、作業者が導入部50の外側からFBGセンサ40を引き抜くことで、簡単に伸縮継手20の内側からFBGセンサ40を抜去することができる。
【0028】
次に、故障したFBGセンサ40の抜去後に、作業者が導入部50の外側から保護管37に正常なFBGセンサ40を挿入する。保護管37はステンレス鋼により形成されているため、十分に剛性を有しており、且つFBGセンサ40と保護管37の内部との摩擦が小さく、作業者が簡単に導入部50の外側から内側にFBGセンサ40を導入することができる。
【0029】
上述したように、ベローズ材23の内側に配置された保護管37により簡単にFBGセンサ40の抜去、導入を行うことができるため、FBGセンサの交換時に伸縮継手20のベローズ材23を取り除いて伸縮継手20を解体する必要がない。さらに、伸縮継手20が設けられているダクト構造1と、ダクト構造1が配設されている火力発電設備等との稼働を停止する必要がなく、火力発電設備とダクト構造1との稼働中にFBGセンサ40の交換を行うことができる。なお、上述した例ではFBGセンサ40の交換を行う場合を説明したが、FBGセンサ41,42の交換についても同じである。
【0030】
このように、本実施の形態1の伸縮継手20は、流体が流通する第1ダクト11と第2ダクト12との間を接続し内部を流体が流通し、第1ダクト11に接続される第1フランジ21と、第2ダクト12に接続される第2フランジ22と、第1フランジ21及び第2フランジ22との間に設けられ伸縮性を有し流体の流出を防止するベローズ材23と、ベローズ材23よりも内側に周方向に沿って設けられた保護管37と、保護管37の内部に設けられたFBGセンサ40,41,42と、ベローズ材23、第1フランジ21又は第2フランジ22の少なくともいずれか1つに設けられ、保護管37及びFBGセンサ40,41,42をベローズ材23の内部に導入する導入部50とを備え、導入部50は、導入部50が設けられているベローズ材23、第1フランジ21又は第2フランジ22の少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されているため、ベローズ材23の内部に設けられたFBGセンサ40を簡単に交換することができる。
【0031】
また、保護管37は、金属であるステンレス鋼により形成されているため、十分な剛性を有するとともにFBGセンサ40と保護管37との摩擦が小さくなり、簡単に保護管37に対してFBGセンサ40を挿入又は抜去することができる。
【0032】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2に係る伸縮継手を説明する。なお、以下の実施の形態において、
図1~
図4の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。実施の形態2に係る伸縮継手は、実施の形態1に対してFBGセンサの導出部を設けたものである。
図5は、本発明の実施の形態2に係る上流側ダクト、下流側ダクト及び伸縮継手の概略図である。伸縮継手20のベローズ材23の内側且つ、断熱部30の径方向外側には、ステンレス鋼により形成された保護管37が周方向に沿って螺旋状に巻回されており、保護管37の内側にFBGセンサ40が挿入されている。
【0033】
保護管37の一端部は導入部50に挿入されており、他端部は第2フランジ22に近い側のベローズ材23に設けられた導出部51から導出されている。保護管37に収容されているFBGセンサ40は、導出部51を経由して伸縮継手20の内側から外側に導出されている。
【0034】
図6は、本実施の形態2に係る伸縮継手20と、保護管37と、FBGセンサ40との模式図である。なお、説明の便宜のために
図6においてはフランジ21,22等の、伸縮継手20の一部の構成の記載を省略している。保護管37は、伸縮継手20の断熱部30の径方向外側に、周方向に沿って螺旋状に巻回されている。保護管37の他端部は第2フランジ22(
図5参照)に近い側のベローズ材23に設けられた導出部51から導出されている。保護管37に収容されているFBGセンサ40は、導出部51を経由して伸縮継手20の内側から外側に導出されている。導出部51は、保護管37が挿入されているときにベローズ材23の外側と内側との気密性を保つことが可能に構成されている。
【0035】
ベローズ材23に設けられた導出部51の構成としては、導入部50と同様に、例えば、貼り合わせられたベローズ材23の間に保護管37を挿入したものや、ベローズ材23の一部を穿孔して保護管37を挿入し、次に穿孔された部分をシーリング部材によりシーリングしたもの等を用いてもよい。また、導出部51を第1フランジ21に近い側のベローズ材23に設けてもよい。
【0036】
ベローズ材23に設けられた導出部51の構成としては、例えば、貼り合わせられたベローズ材23の間に保護管37を挿入したものや、ベローズ材23の一部を穿孔して保護管37を挿入し、次に穿孔された部分をシーリング部材によりシーリングしたもの等を用いてもよい。また、導出部51を第1フランジ21又は第2フランジ22に設けることもできる。第1フランジ21又は第2フランジ22に設けられた導出部51の構成としては、例えば、第1フランジ21又は第2フランジ22の一部を穿孔して保護管37を挿入し、次に穿孔された部分をシーリング部材によりシーリングしたものを用いてもよいし、第1フランジ21又は第2フランジ22の一部に保護管37を挿入可能な切欠部を予めプレス成形等により成形したものを用いてもよい。
【0037】
保護管37の他端部は、導出部51の外側に突出しており、FBGセンサ40は、導出部51から遠位側において保護管37に収容されず露出している。FBGセンサ40は、伸縮継手20の外部に設けられたインテロゲータ44に接続されている。インテロゲータ44は、FBGセンサ40に光を入射させる光源装置と、各回折格子からの反射光の波長を測定、分析する光波長測定装置とを有しており、適当な耐候ケースに収納されて配設されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0038】
このように、本実施の形態2に係る伸縮継手20は、ベローズ材23、第1フランジ21又は第2フランジ22の少なくともいずれか1つに設けられ、導入部50からベローズ材23の内部に導入された保護管37及びFBGセンサ40が導出される導出部51を備え、導出部51は、導出部51が設けられているベローズ材23、第1フランジ21又は第2フランジ22の少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されているため、導入部50の保護管37から導入したFBGセンサ40を導出部51の保護管37から導出して、伸縮継手20の外部からベローズ材23の内部に導入され、ベローズ材23の内部を通過して伸縮継手20の外部に導出される、FBGセンサ40を簡単に設けることができる。
【0039】
なお、本実施の形態1及び2では、保護管37は、ステンレス鋼で形成されていたが、十分な剛性を確保することができ、FBGセンサ40との摩擦力が小さい金属材料であれば、ステンレス鋼以外の任意の金属材料を用いて形成されてもよい。
【0040】
また、本実施の形態2の伸縮継手20の構成では、FBGセンサ40を伸縮継手20のベローズ材23の内側に設けるために誘導用ワイヤを用いてもよい。FBGセンサ40を誘導するための誘導用ワイヤ(図示せず)をFBGセンサ40に接続し、この誘導用ワイヤを導入部50に設けられた保護管37から伸縮継手20のベローズ材23の内側に導入し、さらにこの誘導用ワイヤを導出部51に設けられた保護管37から伸縮継手20のベローズ材23の外側に導出することで、誘導用ワイヤに接続されたFBGセンサ40をベローズ材23の外側から内側に導入し、ベローズ材23の内側から外側に導出することができる。このように誘導用ワイヤを用いることで、直径が小さく、剛性が低いFBGセンサ40を用いる場合であっても、ベローズ材23の内側でFBGセンサ40が折れ曲がり導入不能となる可能性が低減される。
【0041】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3に係る伸縮継手は、実施の形態1に対して保護管の材料を変更したものである。
図7は、本実施の形態3に係る保護管37a及びFBGセンサ40,41,42を径方向に沿って切断した断面図である。保護管37aは、樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により形成されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0042】
PTFEは、保護管37aにFBGセンサ40,41,42を挿入するために十分な剛性を有し、一般的な金属よりも摩擦係数が小さい。そのため、保護管37aにPTFEを用いることでFBGセンサ40,41,42を挿入又は抜去するときに、挿入又は抜去の作業が容易となり、また挿入又は抜去の作業時にFBGセンサ40,41,42を損傷させる可能性が低減されるという利点を有する。
【0043】
また、PTFEは一般的な金属よりも熱伝導率が低い。そのため、断熱部30又はベローズ材23に発生した温度変化が保護管37aを経由して離れた場所に伝わりにくく、温度変化が発生した断熱部30又はベローズ材23上の位置をFBGセンサ40,41,42により明確に特定しやすいという利点を有する。
【0044】
このように、本実施の形態3に係る伸縮継手は、保護管37aが、樹脂であるPTFEにより形成されているため、FBGセンサ40,41,42と保護管37aとの摩擦が小さくなり、簡単に保護管37aに対してFBGセンサ40,41,42を挿入又は抜去することができる。
【0045】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4に係る伸縮継手は、実施の形態1に対して保護管の径方向内側の材料を変更したものである。
図8は、本実施の形態4に係る保護管37b及びFBGセンサ40,41,42を径方向に沿って切断した断面図である。保護管37bの径方向外側の外側部材37cはステンレス鋼により形成されており、径方向内側の内側部材37dは、PTFEにより形成されている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0046】
このように、本実施の形態4に係る伸縮継手は、保護管37bは、少なくともFBGセンサ40,41,42と接触する内側部材37dが、樹脂であるPTFEにより形成され、径方向外側部分である外側部材37cが金属であるステンレス鋼により形成されているため、FBGセンサ40,41,42と保護管37bとの摩擦が小さくなり、簡単に保護管37bに対してFBGセンサ40,41,42を挿入又は抜去することができ、且つ保護管37bの耐久性、耐候性を向上させることができる。
【0047】
なお、実施の形態3の保護管37a及び実施の形態4の保護管37bで用いることができる非金属製の樹脂材料としてはPTFEに限定されるものではなく、PTFE以外の樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド又は耐熱性シリコーンゴム等の耐熱性ゴム等の樹脂材料を適宜用いることができる。また、保護管37a,37bに用いる樹脂材料とベローズ材23の材質とに同じ材質を採用することで、保護管37a,37bのFBGセンサ40,41,42との接触部とベローズ材23との熱伝導率が同じとなるため、保護管37a,37bに伝導される熱によりベローズ材23が過剰に熱の影響を受ける可能性を低減することができる。
【0048】
また、実施の形態4の保護管37は、十分な剛性を確保することができ、FBGセンサ40,41,42との摩擦力が小さい金属材料であれば、ステンレス鋼以外の任意の金属材料を用いて形成されてもよい。
【0049】
なお、実施の形態1~4におけるFBGセンサの本数、FBGセンサの回折格子の数及び回折格子の位置は、伸縮継手20において必要な温度検出位置に対応して決定されればよく、例えば断熱部30及びベローズ材23の全体の温度変化を検出可能にFBGセンサ及び回折格子を配設してもよいし、断熱部30又はベローズ材23の一部の箇所の温度変化を検出可能にFBGセンサ及び回折格子を配設してもよい。また、伸縮継手20のフランジ21,22等にFBGセンサ及び回折格子を配設してもよい。さらに、全ての保護管37が第1断熱部材31の径方向外側に設けられていてもよい。
【0050】
また、本発明の実施の形態1~4に係る伸縮継手20は、火力発電設備に設けられたダクト構造1に配設されていたが、ダクト構造1が設けられる設備はこれに限定されるものではなく、工場設備等の各種設備に設けられたダクト構造1であってもよい。
【0051】
また、本発明の実施の形態1~4では、FBGセンサは、断熱部30の径方向外側且つベローズ材23の径方向内側に配設されていたが、FBGセンサの配設される位置はこれに限定されるものではなく、例えば、断熱部30を構成する第1断熱部材31、第2断熱部材32、第3断熱部材33、第4断熱部材34及び第5断熱部材35のうち、第3断熱部材33と第4断熱部材34との間等の、隣接する断熱部材同士の間に配設されてもよい。
【0052】
なお、本発明の実施の形態1~4に含まれる構成要素及びその変形例に含まれる構成要素は、適当に組み合わせて用いることができる。
【0053】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0054】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0055】
(付記1)
流体が流通する第1ダクトと第2ダクトとの間を接続し内部を前記流体が流通する伸縮継手であって、
前記第1ダクトに接続される第1フランジと、
前記第2ダクトに接続される第2フランジと、
前記第1フランジ及び前記第2フランジとの間に設けられ伸縮性を有し前記流体の流出を防止する流出防止部と、
前記流出防止部よりも内側に周方向に沿って設けられた管状保護部材と、
前記管状保護部材の内部に設けられた線状センサと、
前記流出防止部、前記第1フランジ又は前記第2フランジの少なくともいずれか1つに設けられ、前記管状保護部材及び前記線状センサを前記流出防止部の内部に導入する導入部と
を備え、
前記導入部は、前記導入部が設けられている前記流出防止部、前記第1フランジ又は前記第2フランジの少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されている伸縮継手。
(付記2)
前記流出防止部、前記第1フランジ又は前記第2フランジの少なくともいずれか1つに設けられ、前記導入部から前記流出防止部の内部に導入された前記管状保護部材及び前記線状センサが導出される、導出部を備え、
前記導出部は、前記導出部が設けられている前記流出防止部、前記第1フランジ又は前記第2フランジの少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されている付記1に記載の伸縮継手。
(付記3)
前記管状保護部材は、金属により形成されている付記1又は2に記載の伸縮継手。
(付記4)
前記管状保護部材は、樹脂により形成されている付記1又は2に記載の伸縮継手。
(付記5)
前記管状保護部材は、前記線状センサと接触する径方向内側部分が樹脂により形成され、径方向外側部分が金属により形成されている付記1又は2に記載の伸縮継手。
【符号の説明】
【0056】
11 上流側ダクト(第1ダクト)、12 下流側ダクト(第2ダクト)、21 第1フランジ、22 第2フランジ、23 ベローズ材(流出防止部)、30 断熱部、37 保護管(管状保護部材)、37a 保護管(管状保護部材)、37b 保護管(管状保護部材)、40 FBGセンサ(線状センサ)、41 FBGセンサ(線状センサ)、42 FBGセンサ(線状センサ)、50 導入部、51 導出部。
【要約】
【課題】内部に設けられたセンサを簡単に交換することができる伸縮継手を提供する。
【解決手段】伸縮継手20は、第1フランジ21及び第2フランジ22との間に設けられ伸縮性を有し流体の流出を防止するベローズ材23とベローズ材23よりも内側に周方向に沿って設けられた保護管37と、保護管37の内部に設けられたFBGセンサ40,41,42と、ベローズ材23、第1フランジ21又は第2フランジ22の少なくともいずれか1つに設けられ、保護管37及びFBGセンサ40,41,42をベローズ材23の内部に導入する導入部50とを備え、導入部50は、導入部50が設けられているベローズ材23、第1フランジ又は第2フランジの少なくともいずれか1つの内側と外側との間の気密を確保するように構成されている。
【選択図】
図4