(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】昇降補助装置
(51)【国際特許分類】
E06C 7/18 20060101AFI20241119BHJP
E06C 7/12 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
E06C7/18
E06C7/12
(21)【出願番号】P 2024072291
(22)【出願日】2024-04-26
【審査請求日】2024-05-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [試験場所] 東光電気工事株式会社 つくば技能開発センター [試験日] 令和 5年 5月 8日 [刊行物等] [公開者名] 株式会社電気情報社 [刊行物名] 電気現場 62巻734号 2023年7月 [発行日] 令和 5年 7月 1日 [刊行物等] [配布場所] 東光電気工事株式会社 つくば技能開発センター [配布日] 令和 5年 5月 8日 [刊行物等] [公開者名] 株式会社日刊建設通信新聞社 [刊行物名] 建設通信新聞 令和 5年 5月 15日付 [発行日] 令和 5年 5月 15日 [刊行物等] [掲載日] 令和 5年 5月 15日 [掲載アドレス] https://www.youtube.com/@kensetsunews1950 https://www.kensetsunews.com/web-kan/823641 https://www.youtube.com/shorts/VjK7iWRBJEU [刊行物等] [公開者名] 株式会社日刊建設工業新聞社 [刊行物名] 日刊建設工業新聞 令和 5年 5月 16日付 [発行日] 令和 5年 5月 16日 [刊行物等] [掲載日] 令和 5年 5月 16日 [掲載アドレス] https://nikkankensetsukogyo2.blogspot.com/2023/05/blog-post_561.html [刊行物等] [公開者名] 一般社団法人日本電気協会新聞部 [刊行物名] 電気新聞 令和 5年 5月 22日付 [発行日] 令和 5年 5月 22日 [刊行物等] [集会名] JECA FAIR 2023 - 第71回電設工業展 [公開場所] インテックス大阪 [開催日] 令和 5年 5月 24日 令和 5年 5月 25日 令和 5年 5月 26日 [刊行物等] [試験場所] 東光電気工事株式会社 つくば技能開発センター [試験日] 令和 5年 12月 13日 令和 5年 12月 14日 令和 5年 12月 15日 [刊行物等] [配布場所] 東光電気工事株式会社 つくば技能開発センター [配布日] 令和 5年 12月 13日 令和 5年 12月 14日 令和 5年 12月 15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [刊行物等] [公開者名] 株式会社日刊建設通信新聞社 [刊行物名] 建設通信新聞 令和 5年 12月 14日付 [発行日] 令和 5年 12月 14日 [刊行物等] [公開者名] 株式会社日刊建設工業新聞社 [刊行物名] 日刊建設工業新聞 令和 5年 12月 14日付 [発行日] 令和 5年 12月 14日 [刊行物等] [公開者名] 一般社団法人日本電気協会新聞部 [刊行物名] 電気新聞 令和 5年 12月 26日付 [発行日] 令和 5年 5月 26日 [刊行物等] [試験場所] 東光電気工事株式会社 つくば技能開発センター [試験日] 令和 6年 1月 23日 令和 6年 1月 24日 [刊行物等] [掲載日] 令和 6年 2月 21日 [掲載アドレス] https://www.youtube.com/channel/UCK8fzDU7U15SKNSCiEO74_A https://www.youtube.com/watch?v=uX41w6cO2_o [刊行物等] [集会名] 架空送電工事協働カイゼン施策展示会 [公開場所] 東京電力パワーグリッド株式会社 相模原研修センター [開催日] 令和 6年 3月 5日 令和 6年 3月 6日 令和 6年 3月 7日 [刊行物等] [配布場所] 東京電力パワーグリッド株式会社 相模原研修センター [配布日] 令和 6年 3月 5日 令和 6年 3月 6日 令和 6年 3月 7日 [刊行物等] [公開者名] 株式会社オーム社 [刊行物名] 電気と工事 2024年4月号(第65巻第4号通巻848号) [発売日] 令和 6年 3月 15日 [刊行物等] [試験場所] 櫻井技研工業株式会社 [試験日] 令和 6年 4月 3日 [刊行物等] [配布場所] 櫻井技研工業株式会社 [配布日] 令和 6年 4月 3日 [刊行物等] [公開者名] 一般社団法人日本電気協会新聞部 [刊行物名] 電気新聞 令和 6年 4月 4日付 [発行日] 令和 6年 4月 4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592131674
【氏名又は名称】櫻井技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 峰之
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-197644(JP,A)
【文献】特開平10-131655(JP,A)
【文献】特開2001-089082(JP,A)
【文献】特開平09-242452(JP,A)
【文献】特開平08-199956(JP,A)
【文献】特開2000-136100(JP,A)
【文献】特開平07-017694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B9/00-11/08
B66D1/00-5/34
B66F7/00-7/28
13/00-19/02
E06C1/00-9/14
E04G21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が着用する墜落制止用器具が取り付けられた状態で、上下方向に長尺に延びる昇降用レールに沿って昇降する、前記作業者の昇降を補助する昇降補助装置であって、
前記昇降用レールにスライド可能となるように係合する本体部と、
前記昇降用レールに沿って進退駆動することで前記本体部を昇降させる進退機構と、
前記進退機構の進退駆動を制御する制御装置と、
前記墜落制止用器具のランヤードをつなぐことが可能な取付部と、
前記取付部と前記本体部とをつなぎ、前記ランヤードから前記取付部にかかる張力に応じて、所定の伸縮領域内で伸び縮みする弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材は、その伸び縮みの変形量が比較的少ない第1状態と、前記第1状態よりも伸び縮みの変形量が多い第2状態と、前記第2状態よりも伸び縮みの変形量が多い第3状態と、を取りうるものであり、
前記制御装置は、
前記弾性部材が前記第1状態から前記第2状態となるときに前記進退機構を進退駆動が可能な駆動可能状態とし、
前記駆動可能状態かつ前記第2状態であるときに前記進退機構を進退駆動させ、
前記弾性部材が前記第3状態となったときに前記進退機構を進退駆動が禁じられた駆動不能状態にし、
前記駆動不能状態を、前記第3状態となった前記弾性部材が前記第1状態に戻って再び前記第2状態となるまでの間解除しない
ものであり、
さらに、
前記弾性部材に設けられて、前記伸縮領域に対応して設定された進退領域内を、前記弾性部材の伸び縮みに伴って進退する進退部材と、
前記進退領域に沿って並べられた複数個の検出スイッチと、
を備え、
前記進退領域は、
前記弾性部材が前記第1状態から前記第2状態となるときに前記進退部材が位置される第1領域と、
前記弾性部材が前記第2状態であるときに前記進退部材が位置される第2領域と、
前記弾性部材が前記第3状態であるときに前記進退部材が位置される第3領域と、
を含み、
複数個の前記検出スイッチには、
前記第1領域において、前記進退部材が前記本体部側から近づいて接触したときには前記進退部材を検出するが、前記進退部材が前記取付部側から近づいて接触したときには前記進退部材を検出しないワンウェイ式の接触検出スイッチである第1スイッチと、
前記第2領域にある前記進退部材の検出を行う第2スイッチと、
前記第3領域にある前記進退部材の検出を行う第3スイッチと、
が含まれ、
前記制御装置は、
前記第1スイッチが前記進退部材を検出したときに前記進退機構を前記駆動可能状態にする制御と、
前記駆動可能状態において前記第2スイッチが前記進退部材を検出したときに、前記進退機構を進退駆動させる制御と、
前記第3スイッチが前記進退部材を検出したときに、前記進退機構の進退駆動を停止させて前記駆動不能状態を設定する制御と、
を含む複数種類の制御を実行する、
昇降補助装置。
【請求項2】
請求項
1に記載された昇降補助装置であって、
前記第2スイッチが、前記進退部材が前記第2領域にあることを非接触で検出する非接触スイッチである、
昇降補助装置。
【請求項3】
作業者が着用する墜落制止用器具が取り付けられた状態で、上下方向に長尺に延びる昇降用レールに沿って昇降する、前記作業者の昇降を補助する昇降補助装置であって、
前記昇降用レールにスライド可能となるように係合する本体部と、
前記昇降用レールに沿って進退駆動することで前記本体部を昇降させる進退機構と、
前記進退機構の進退駆動を制御する制御装置と、
前記墜落制止用器具のランヤードをつなぐことが可能な取付部と、
前記取付部と前記本体部とをつなぎ、前記ランヤードから前記取付部にかかる張力に応じて、所定の伸縮領域内で伸び縮みする弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材は、その伸び縮みの変形量が比較的少ない第1状態と、前記第1状態よりも伸び縮みの変形量が多い第2状態と、前記第2状態よりも伸び縮みの変形量が多い第3状態と、を取りうるものであり、
前記制御装置は、
前記弾性部材が前記第1状態から前記第2状態となるときに前記進退機構を進退駆動が可能な駆動可能状態とし、
前記駆動可能状態かつ前記第2状態であるときに前記進退機構を進退駆動させ、
前記弾性部材が前記第3状態となったときに前記進退機構を進退駆動が禁じられた駆動不能状態にし、
前記駆動不能状態を、前記第3状態となった前記弾性部材が前記第1状態に戻って再び前記第2状態となるまでの間解除しないものであり、
さらに、
前記本体部に取り付けられた状態で前記昇降用レールに係合し、前記本体部の昇降にあわせて正逆回転する伝動車と、
前記伝動車と一緒に回転するように設けられて、この回転に伴い作用する遠心力に応じて前記伝動車の径方向外方へ張り出す遠心ウェイトと、
前記伝動車に干渉しない非干渉位置、および、前記伝動車に設けられた当接部に当接して前記伝動車の回転にブレーキをかける当接位置、の2か所の間を行き来可能なストッパーと、
前記ストッパーを前記非干渉位置から前記当接位置に向かう向きに付勢する付勢部材と、
前記非干渉位置にある前記ストッパーに対して係止状態をとることで、この前記ストッパーの前記当接位置への移動をロックするロック部材と、
を備え、
前記遠心ウェイトは、前記伝動車の回転速度が所定以下の場合は前記係止状態の前記ロック部材に干渉しない軌跡で回転し、前記回転速度が所定以上の場合は前記係止状態の前記ロック部材にあたって前記係止状態を解除する軌跡で回転する、
昇降補助装置。
【請求項4】
請求項
3に記載された昇降補助装置であって、
前記当接部は、所定以上のトルクを空転により逃がすトルクリミッターを介して前記伝動車に設けられている、
昇降補助装置。
【請求項5】
作業者が着用する墜落制止用器具が取り付けられた状態で、上下方向に長尺に延びる昇降用レールに沿って昇降する、前記作業者の昇降を補助する昇降補助装置であって、
前記昇降用レールにスライド可能となるように係合する本体部と、
前記昇降用レールに沿って進退駆動することで前記本体部を昇降させる進退機構と、
前記進退機構の進退駆動を制御する制御装置と、
前記墜落制止用器具のランヤードをつなぐことが可能な取付部と、
前記取付部と前記本体部とをつなぎ、前記ランヤードから前記取付部にかかる張力に応じて、所定の伸縮領域内で伸び縮みする弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材は、その伸び縮みの変形量が比較的少ない第1状態と、前記第1状態よりも伸び縮みの変形量が多い第2状態と、前記第2状態よりも伸び縮みの変形量が多い第3状態と、を取りうるものであり、
前記制御装置は、
前記弾性部材が前記第1状態から前記第2状態となるときに前記進退機構を進退駆動が可能な駆動可能状態とし、
前記駆動可能状態かつ前記第2状態であるときに前記進退機構を進退駆動させ、
前記弾性部材が前記第3状態となったときに前記進退機構を進退駆動が禁じられた駆動不能状態にし、
前記駆動不能状態を、前記第3状態となった前記弾性部材が前記第1状態に戻って再び前記第2状態となるまでの間解除しないものであり、
さらに、
前記本体部の上縁部または下縁部に沿って長尺に延びるバンパーと、
付勢力を発揮して前記バンパーと前記本体部とを離間させる離間部材と、
互いに交差するように配置されて、それぞれが前記バンパーと前記本体部とをつなぐ第1リンクおよび第2リンクと、
前記第1リンクおよび前記第2リンクを、その中途交差部で回動自在に連結する連結ピンと、
を備え、
前記第1リンクにおける前記本体部側のジョイント、および、前記第2リンクにおける前記バンパー側のジョイントは、それぞれ回転1自由度のピンジョイントであり、
前記第2リンクにおける前記本体部側のジョイント、および、前記第1リンクにおける前記バンパー側のジョイントは、それぞれ、前記バンパーの長手方向に沿って延びる直線1自由度のスライダーであり、
前記制御装置は、前記離間部材の付勢力に抗して前記バンパーと前記本体部とを近づける外力が作用した際に、前記進退機構の進退駆動を停止させる制御を行う、
昇降補助装置。
【請求項6】
請求項
5に記載された昇降補助装置であって、
前記バンパーに固設されて、前記本体部に向かって直線状に延びだされるガイド部材と、
前記本体部に固設されて、前記ガイド部材に対してスライド可能となるように係合する係合ブロックと、
を備えている、
昇降補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇降補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄塔作業等における作業者は、そのはしごの昇降に伴う疲労を軽減するため、昇降補助装置を用いることがある。例えば、特許文献1には、はしごに固定したレール沿いに昇降する昇降補助装置のフックと作業者の墜落制止用器具のランヤードとをつなぎ、はしごを昇降する際、作業者の体重の一部を昇降補助装置に保持させて負担を軽減できるようにした技術が開示されている。
【0003】
ここで、昇降補助装置は、はしごを昇降する作業者の手よりも高い位置で昇降することで、作業者の昇降を補助する。また、昇降補助装置は、ばね式の荷重リミッターを備えて、フックに所定以上の荷重がかかったとき(ばねの伸びが所定以上になったとき)に停止し、荷重が解除された瞬間(ばねの伸びが所定以下になった瞬間)に昇降を再開させるようになっている。昇降補助装置は作業者の体重の全部を保持するものではないため、荷重リミッターが反応する荷重は、作業者の体重よりも少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された従来の技術では、例えば昇降補助装置が作業者よりも速く上昇する場合などには、昇降補助装置は、作業者よりも所定距離だけ上の位置(ばねの伸びが所定値となる位置)にて停止して作業者を待つ。この状態において作業者がはしごを昇っていくと、昇降補助装置は、作業者との距離が所定距離をきった瞬間に上昇を再開し、その直後に再度停止することを繰り返す。すなわち、上記従来の技術では、昇降補助装置が停止と再駆動とを繰り返すハンチング現象が発生するおそれがあった。
【0006】
本開示は、昇降補助装置において、停止と再駆動とが繰り返されるハンチング現象の発生を減らすことを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における1つの側面によると、作業者が着用する墜落制止用器具が取り付けられた状態で、上下方向に長尺に延びる昇降用レールに沿って昇降する、作業者の昇降を補助する昇降補助装置が提供される。この昇降補助装置は、昇降用レールにスライド可能となるように係合する本体部を備えている。また、昇降補助装置は、昇降用レールに沿って進退駆動することで本体部を昇降させる進退機構を備えている。また、昇降補助装置は、進退機構の進退駆動を制御する制御装置を備えている。また、昇降補助装置は、墜落制止用器具のランヤードをつなぐことが可能な取付部を備えている。また、昇降補助装置は、取付部と本体部とをつなぎ、ランヤードから取付部にかかる張力に応じて、所定の伸縮領域内で伸び縮みする弾性部材を備えている。この弾性部材は、その伸び縮みの変形量が比較的少ない第1状態と、第1状態よりも伸び縮みの変形量が多い第2状態と、第2状態よりも伸び縮みの変形量が多い第3状態と、を取りうるものである。制御装置は、弾性部材が第1状態から第2状態となるときに進退機構を進退駆動が可能な駆動可能状態とする。また、制御装置は、駆動可能状態かつ第2状態であるときに進退機構を進退駆動させる。また、制御装置は、弾性部材が第3状態となったときに進退機構を進退駆動が禁じられた駆動不能状態にする。また、制御装置は、駆動不能状態を、第3状態となった弾性部材が第1状態に戻って再び第2状態となるまでの間解除しない。
【0008】
上記の側面によれば、昇降補助装置は、作業者が体重の一部をあずけて弾性部材が第2状態にまで伸び縮みするときに駆動可能状態の設定を行い、その後本体部を昇降させて作業者の昇降を補助する。また、昇降補助装置は、作業者との距離が離れすぎて弾性部材が第3状態にまで伸びたときには、昇降を停止させて駆動不能状態を設定し、作業者を待つ。この駆動不能状態は、作業者が昇降補助装置に近づいて弾性部材を第1状態に戻し、その後作業者が体重の一部をあずけて弾性部材を第2状態にまで伸ばすまでの間解除されない。これにより、上記の側面では、昇降補助装置において停止と再駆動とが繰り返されるハンチング現象の発生を減らすことができる。
【0009】
他の側面によると、昇降補助装置は、弾性部材に設けられて、上記伸縮領域に対応して設定された進退領域内を、弾性部材の伸び縮みに伴って進退する進退部材と、進退領域に沿って並べられた複数個の検出スイッチと、を備えている。進退領域は、弾性部材が第1状態から第2状態となるときに進退部材が位置される第1領域と、弾性部材が第2状態であるときに進退部材が位置される第2領域と、弾性部材が第3状態であるときに進退部材が位置される第3領域と、を含む。複数個の検出スイッチには、第1領域において、進退部材が本体部側から近づいて接触したときには進退部材を検出するが、進退部材が取付部側から近づいて接触したときには進退部材を検出しないワンウェイ式の接触検出スイッチである第1スイッチが含まれる。また、複数個の検出スイッチには、第2領域にある進退部材の検出を行う第2スイッチと、第3領域にある進退部材の検出を行う第3スイッチと、が含まれる。制御装置は、以下を含む複数種類の制御を実行する。複数種類の制御には、第1スイッチが進退部材を検出したときに進退機構を駆動可能状態にする制御が含まれる。また、複数種類の制御には、駆動可能状態において第2スイッチが進退部材を検出したときに、進退機構を進退駆動させる制御が含まれる。また、複数種類の制御には、第3スイッチが進退部材を検出したときに、進退機構の進退駆動を停止させて駆動不能状態を設定する制御が含まれる。
【0010】
上記の側面によれば、昇降補助装置の制御装置を、複数個の検出スイッチの検出結果により制御を行うシンプルなものとすることができる。
【0011】
他の側面によると、第2スイッチが、進退部材が第2領域にあることを非接触で検出する非接触スイッチである。
【0012】
上記の側面によれば、進退部材との接触による第2スイッチの損耗および位置ずれを減らして、第2スイッチによる進退部材の検出がうまくいかなくなる不具合の発生を抑えることができる。
【0013】
他の側面によると、昇降補助装置は、本体部に取り付けられた状態で上記昇降用レールに係合し、本体部の昇降にあわせて正逆回転する伝動車を備えている。また、昇降補助装置は、伝動車と一緒に回転するように設けられて、この回転に伴い作用する遠心力に応じて伝動車の径方向外方へ張り出す遠心ウェイトを備えている。また、昇降補助装置は、伝動車に干渉しない非干渉位置、および、伝動車に設けられた当接部に当接して伝動車の回転にブレーキをかける当接位置、の2か所の間を行き来可能なストッパーを備えている。また、昇降補助装置は、ストッパーを非干渉位置から当接位置に向かう向きに付勢する付勢部材を備えている。また、昇降補助装置は、非干渉位置にあるストッパーに対して係止状態をとることで、このストッパーの当接位置への移動をロックするロック部材を備えている。遠心ウェイトは、伝動車の回転速度が所定以下の場合は係止状態のロック部材に干渉しない軌跡で回転し、上記回転速度が所定以上の場合は係止状態のロック部材にあたって係止状態を解除する軌跡で回転する。
【0014】
特許文献1に開示された従来の技術では、昇降補助装置は、作業者が足を踏み外すなどしたときの急降下を抑制する遠心ブレーキを備えている。この遠心ブレーキは、昇降補助装置の降下にあわせて回転するキーパー軸受けを備え、その回転に伴い作用する遠心力に応じて径方向外方へスライドするブレーキシューをブレーキハウジングに押し当てることで急降下を抑制する。しかしながら、上記従来の技術では、昇降補助装置の降下速度が遅いときには遠心ブレーキの機能が低下するという課題があった。
【0015】
これに対し、上記の側面によれば、本体部の昇降にともなう伝動車の遠心力によって径方向外方へ張り出す遠心ウェイトを、伝動車の回転を停止させるストッパーのロック解除に用いる。ストッパーは付勢部材に付勢されたものであるため、昇降補助装置の降下速度によらず伝動車の回転にブレーキをかける。これにより、上記の側面では、昇降補助装置の降下に対し、より確実なブレーキをかけることができる。
【0016】
他の側面によると、当接部は、所定以上のトルクを空転により逃がすトルクリミッターを介して伝動車に設けられている。
【0017】
上記の側面によれば、ストッパーが当接部に当接して伝動車の回転にブレーキがかかった場合でも、伝動車に過剰な負荷がかかったときには、トルクリミッターの空転により過剰分の負荷が逃がされる。これにより、上記の側面では、作業者から昇降補助装置への衝撃負荷の反作用として作業者にかかる衝撃負荷を和らげることができる。
【0018】
他の側面によると、昇降補助装置は、本体部の上縁部または下縁部に沿って長尺に延びるバンパーを備えている。また、昇降補助装置は、付勢力を発揮してバンパーと本体部とを離間させる離間部材を備えている。また、昇降補助装置は、互いに交差するように配置されて、それぞれがバンパーと本体部とをつなぐ第1リンクおよび第2リンクを備えている。また、昇降補助装置は、第1リンクおよび第2リンクを、その中途交差部で回動自在に連結する連結ピンを備えている。第1リンクにおける本体部側のジョイント、および、第2リンクにおけるバンパー側のジョイントは、それぞれ回転1自由度のピンジョイントである。第2リンクにおける本体部側のジョイント、および、第1リンクにおけるバンパー側のジョイントは、それぞれ、バンパーの長手方向に沿って延びる直線1自由度のスライダーである。制御装置は、付勢部材の付勢力に抗してバンパーと本体部とを近づける外力が作用した際に、進退機構の進退駆動を停止させる制御を行う。
【0019】
特許文献1に開示された従来の技術では、昇降補助装置は、はしごを昇降する作業者の手よりも高い位置で、作業者の昇降に追従して昇降する。このため、例えばはしごを降りている作業者が立ち止まった場合などには、追従して降りてきた昇降補助装置と、作業者がつかんでいる横木との間に作業者の手が挟まれることがある。この問題の対策として、上記従来の技術では、昇降補助装置の本体下部にバンパーを設けて、このバンパーが押し込まれた際に挟み込み防止機構を動作させる。
【0020】
ここで、上記従来の技術では、バンパーは、左右一対の直動軸を介して昇降補助装置の本体に取り付けられる。また、バンパーの押し込みは、右側の直動軸の押し込みをマイクロスイッチが検出することによって検出される。このため、上記従来の技術では、例えばバンパーの押し込みが左側部分に偏った場合などに、バンパーの押し込みの検知精度が低下するという課題があった。
【0021】
これに対し、上記の側面によれば、バンパーと本体部との間に、互いに対向する2つの往復スライダーてこ機構が介装される。これらの往復スライダーてこ機構は、互いに交差する第1リンクおよび第2リンクを共有するものであるため、バンパーを本体部に近づけようとする外力は、バンパーのどの部分にかかるものであっても、バンパーの全体を本体部に近づける。これにより、上記の側面では、バンパーの押し込みの検知精度が低下することをさけることができる。
【0022】
他の側面によると、昇降補助装置は、バンパーに固設されて、本体部に向かって直線状に延びだされるガイド部材と、本体部に固設されて、ガイド部材に対してスライド可能となるように係合する係合ブロックと、を備えている。
【0023】
上記の側面によれば、ガイド部材を直動軸として機能させてバンパーの本体部に対するぐらつきを抑えることができる。また、ガイド部材をバンパーから本体部に向かって延びださせる構成によれば、外力によりバンパーと本体部とが近づけられたときに、ガイド部材がバンパーから突出することをさけることができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、昇降補助装置において、停止と再駆動とが繰り返されるハンチング現象の発生を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の一実施形態にかかる昇降補助装置10の使用状態を表した説明図である。
【
図2】
図1の昇降補助装置10においてカバー10Aおよびバッテリー10Bを外した状態を表した正面図である。
【
図5】
図2のV部を、本体部11および進退機構12を省略して表した拡大図である。
【
図6】
図3のVI部を、進退機構12および本体部11の一部構成を省略して表した拡大図である。
【
図9】
図8と同様の拡大図であり、第3状態にまで伸びた弾性部材21が縮んでいく状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本開示の一実施形態にかかる昇降補助装置10について、
図1ないし
図11を用いて説明する。以下の説明においては、「前」「後」「左」「右」「上」「下」の各方向を、
図1に示す昇降補助装置10の使用状態における、作業者90から見た方向によって定義する。
【0027】
昇降補助装置10は、
図1に示すように、墜落制止用器具90Aを着用した作業者90が、鉄塔91に設定された昇降経路91A(
図1の仮想線を参照)に沿って昇降することを補助するものである。ここで、鉄塔91は、その昇降経路91Aに沿って上下方向に長尺に延びる昇降用レール91Bを備えている。また、昇降補助装置10には、墜落制止用器具90Aが備えるランヤード90Bが取り付けられる。この状態で、昇降補助装置10は、作業者90が昇降経路91Aを昇降する際に、墜落制止用器具90Aのランヤード90Bを介して作業者90を引っ張り上げながら、昇降用レール91Bに沿って昇降することで、作業者90の昇降を補助する。
【0028】
昇降用レール91Bは、
図2に示すように、その片側(
図2では左側)の縁部に沿って歯(cogs)の列を設けた長尺板状のレールであり、「ラック」の機械要素として機能可能なものである。このようなレールは、一般には「歯軌条」と呼ばれることもある。
【0029】
昇降補助装置10は、
図2および
図3に示すように、2つのバッテリー10Bと、本体部11と、進退機構12と、制御装置13と、接続機構20と、伝動車30と、2つの緩衝機構40、50とを備えている。これらのうち、緩衝機構40、50以外の各構成は、本体部11に対して着脱可能に取り付けられるカバー10Aによって、後ろ側から覆われている。
【0030】
各バッテリー10Bは、昇降補助装置10の各構成(主として進退機構12および制御装置13)が消費する電気エネルギーの供給源である。これらのバッテリー10Bは、本体部11に対して着脱交換可能に取り付けられている。
【0031】
本体部11は、
図4に示すように、左右方向に並ぶ2つの挟み込み部材11A、11Bを備えている。これらの挟み込み部材11A、11Bは、それぞれ、昇降用レール91Bの左右の縁部を前後方向から挟み込む。これにより、本体部11は、昇降用レール91Bにスライド可能となるように係合する。
【0032】
本実施形態においては、本体部11は、複数の操作スイッチ14Aが設けられた操作パネル14によって下側から覆われている。これらの操作スイッチ14Aは、例えばバッテリー10Bからの電力供給のオンオフや、進退機構12のモーター12B(後述。
図2参照)の回転方向を切り替える際に操作される。
【0033】
進退機構12は、
図3に示すように、ギアボックス12C付きのモーター12Bによってピンホイール12Aを正逆回転させる構成である。本実施形態においては、モーター12Bの回転方向は、操作パネル14の操作スイッチ14Aの操作によって、切り替え可能に設定される。
【0034】
ピンホイール12Aは、本体部11に取り付けられた状態で昇降用レール91Bに係合する(具体的には昇降用レール91Bの歯(cogs)とかみあわせられる)ことで、その正逆回転を昇降用レール91Bに沿った進退駆動に変換する。これにより、進退機構12は、本体部11(ひいては昇降補助装置10の全体)を昇降させる。
【0035】
制御装置13は、昇降補助装置10に設けられた種々のスイッチからの入力に基づいて、進退機構12の進退駆動を制御するものである。ここで、「種々のスイッチ」には、操作パネル14に設けられた複数の操作スイッチ14Aが含まれる。また、「種々のスイッチ」には、接続機構20に設けられた複数個の検出スイッチ(具体的には
図8に示す第1スイッチ22A、第2スイッチ22B、および第3スイッチ22C)が含まれる。また、「種々のスイッチ」には、伝動車30の回転にブレーキをかけるストッパー32(後述。
図5参照)を非接触で検出するセンサー13Aが含まれる。また、「種々のスイッチ」には、緩衝機構40、50にそれぞれ備えられるセンサー43A、53A(後述。
図10、
図11を参照)が含まれる。なお、制御装置13による制御の詳細については後述するものとし、ここではその詳細な説明を省略する。
【0036】
接続機構20は、墜落制止用器具90Aのランヤード90B(
図1参照)と本体部11とを接続するための構成である。接続機構20は、
図2に示すように、本体部11の一部として構成されたケーシング20Aを備えている。本実施形態においては、ケーシング20Aは、上下方向に延びるように配設された長尺の中空円筒パイプである。この中空円筒パイプの後ろ側(
図2では紙面手前側)の側面には、中空円筒パイプの上端から下方に向かって延びるスリット20Bが形成されている。
【0037】
ケーシング20Aの中には、
図8および
図9に示すように、長尺の金属ロッド23Aが、上下方向に延びた状態で収納されている。この金属ロッド23Aにおける下側(
図8では下側)の端には、「オタフクシャックル(Bow Shackle)」と呼ばれる種類の金具23Bが取り付けられている。この金具23Bは、
図1に示すように、昇降補助装置10のカバー10Aよりも下方に突出して。墜落制止用器具90Aのランヤード90Bをつなぐことが可能とされている。なお、「オタフクシャックル」にランヤードをつなぐ構成は、従前公知のものであるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0038】
以下においては、金属ロッド23Aと金具23Bとをあわせた構成のことを、「取付部23」とも称する。すなわち、接続機構20は、墜落制止用器具90Aのランヤード90B(
図1参照)をつなぐことが可能な取付部23を備えている。
【0039】
ケーシング20Aと取付部23の金属ロッド23Aとの間には、上下方向に延びる圧縮つるまきばねである弾性部材21が介装されている。この弾性部材21は、本体部11の一部であるケーシング20Aの下端と取付部23における金属ロッド23Aの上端とをつないでいる。これにより、弾性部材21は、墜落制止用器具90Aのランヤード90B(
図1参照)にかかる下向きの張力に応じて、ケーシング20Aに設定される伸縮領域21A内で伸び縮みするように構成される。
【0040】
以下においては、弾性部材21の伸び縮みの状態を、「第1状態」「第2状態」「第3状態」の3つの状態に分けて説明する。「第1状態」は、弾性部材21の縮みの変形量が、制御装置13にとって無視できる程度に小さい状態である。具体的には、「第1状態」は、「取付部23にランヤード90Bがつながれていないとき」、または、「取付部23につながれたランヤード90Bに作業者90の体重がかけられていないとき」の弾性部材21の伸び縮みの状態である。「第2状態」は、例えば昇降補助装置10が作業者90の昇降を補助しているときの弾性部材21の伸び縮みの状態である。第2状態における弾性部材21の縮みの変形量は、第1状態における弾性部材21の縮みの変形量よりも多い。「第3状態」は、例えば作業者90が足を踏み外すなどして、昇降補助装置10が補助可能な荷重よりも大きな荷重がランヤード90Bにかかったときの弾性部材21の伸び縮みの状態である。第3状態における弾性部材21の縮みの変形量は、第2状態における弾性部材21の縮みの変形量よりも多い。
【0041】
ケーシング20Aのスリット20Bには、板状の進退部材22がスライド可能に係合されている。この進退部材22は、弾性部材21における後ろ側の外側面から、スリット20Bを貫通して後ろ側(
図8では紙面手前側)に突出するように設けられる。これにより、進退部材22は、伸縮領域21Aに対応してスリット20Bに沿うように設定された進退領域24内を、弾性部材21の伸び縮みに伴って進退することが可能とされる。
【0042】
進退領域24は、以下に説明する、第1領域24A、第2領域24B、および第3領域24C(
図8および
図9を参照)を含んでいる。第1領域24Aは、弾性部材21が第1状態から第2状態となるときに進退部材22の下端が位置される領域である。第2領域24Bは、弾性部材21が第2状態であるときに進退部材22の下端が位置される領域である。第3領域24Cは、弾性部材21が第3状態であるときに進退部材22の下端が位置される領域である。
【0043】
接続機構20は、進退領域24に沿って複数個の検出スイッチが並べられたスイッチ列を備えている。これらの検出スイッチは、それぞれが進退部材22の検出を行い、その検出結果を制御装置13に出力する。制御装置13は、スイッチ列の各検出スイッチからの出力に基づいて、進退機構12の進退駆動を制御する。本実施形態においては、スイッチ列は、上から順に、1つの第1スイッチ22A、複数(
図8では2つ)の第2スイッチ22B、および、1つの第3スイッチ22Cが並べられたものである。
【0044】
第1スイッチ22Aは、アクチュエーター(検出物からの力を受け止める部分)が第1領域24Aに位置されるように配設されたリミットスイッチである。第1スイッチ22Aのアクチュエーターは、開き角度が最大となるように付勢されたちょうつがいを備えて、ちょうつがいを開く方向の力は受け止めるが、その反対方向の力はちょうつがいを曲げていなすように構成されている。第1スイッチ22Aは、その「ちょうつがいを開く方向」が上から下に向かう方向となるように配設されている。このため、第1スイッチ22Aは、第1領域24Aにおいて、進退部材22が本体部11につながる側(
図8では上側)から近づいて接触したときには進退部材22を検出するが、進退部材22が取付部23につながる側(
図9では下側)から近づいて接触したときには進退部材22を検出しない。言いかえると、第1スイッチ22Aは、本開示における「ワンウェイ式の接触検出スイッチ」に相当する。
【0045】
第2スイッチ22Bは、第2領域24B内の所定範囲にある進退部材22を非接触で検出するように配設された非接触スイッチである。複数の第2スイッチ22Bは、その検出範囲が上下方向にずれるように配設される。また、複数の第2スイッチ22Bは協働するものであり、これら第2スイッチ22Bの中に進退部材22を検出したものが1つでも含まれていた場合、「第2領域24Bにて進退部材22が検出された」旨の検出結果を制御装置13に出力する。
【0046】
第3スイッチ22Cは、アクチュエーターが第2領域24Bと第3領域24Cとの境界部分に位置されるように配設されたリミットスイッチである。
【0047】
上記の各検出スイッチからの出力に対する制御装置13の制御について説明する。制御装置13は、第1スイッチ22Aが進退部材22を検出したときに進退機構12を進退駆動が可能な駆動可能状態にする制御を行う。ここで、第1スイッチ22Aが「進退部材22を検出した」旨の検出結果を出力するのは、進退部材22の下端が第1領域24Aから第2領域24B側に向かうとき、すなわち、弾性部材21が第1状態から第2状態となるときのみである。したがって、上記の制御装置13の制御は、「弾性部材21が第1状態から第2状態となるときに進退機構12を駆動可能状態とする」制御であると言いかえることができる。なお、「弾性部材21が第1状態から第2状態となるとき」は、具体的には例えば、「昇降補助装置10の補助を受けるために作業者90がランヤード90Bに体重をかけ始めたとき」である。
【0048】
また、制御装置13は、駆動可能状態において第2スイッチ22Bが進退部材22を検出したとき(すなわち駆動可能状態かつ第2状態であるとき)に、進退機構12を進退駆動させる制御を行う。
【0049】
また、制御装置13は、第3スイッチ22Cが進退部材22を検出したとき(すなわち弾性部材21が第3状態となったとき)に、進退機構12の進退駆動を停止させて、進退機構12を進退駆動が禁じられた駆動不能状態にする制御を行う。この駆動不能状態は、進退機構12を駆動可能状態にする制御によって解除されるが、この制御は、上述もしたように、弾性部材21が第1状態から第2状態となるときのみに実行される。言いかえると、制御装置13は、進退機構12の駆動不能状態を、第3状態となった弾性部材21が第1状態に戻って再び第2状態となるまでの間解除しない。
【0050】
伝動車30は、
図2および
図6に示すように、ピンホイール30Bを備えて、本体部11に回転自在に取り付けられる。ピンホイール30Bは、昇降用レール91Bに係合する(具体的には昇降用レール91Bの歯(cogs)とかみあわせられる)ことで、本体部11の昇降用レール91Bに沿った昇降を正逆回転に変換する。これにより、伝動車30は、本体部11の昇降にあわせて正逆回転する。
【0051】
伝動車30には、
図5に示すように、本体部11に設けられたストッパー32が当接されることによって伝動車30の回転にブレーキをかける当接部30Aが設けられている。この当接部30Aは、所定以上のトルクを空転により逃がすトルクリミッター30Cを介して、伝動車30に設けられている。トルクリミッター30Cが空転を始めるトルクの大きさは、進退機構12による昇降補助装置10の昇降によって伝動車30にかかりうるトルクの大きさよりも大きくなるように設定されている。
【0052】
本実施形態においては、当接部30Aは伝動車30の外周面に設けられた1つの歯(cog)であり、ストッパー32は当接部30Aの歯と係止可能に構成された爪(pawl)である。ストッパー32と当接部30Aとは、伝動車30の正逆回転のいずれか一方のみにブレーキをかけるラチェット機構を構成する。本実施形態においては、ラチェット機構は、本体部11の降下に対応する方向の回転(
図5では反時計回りの回転)のみにブレーキをかける。
【0053】
ストッパー32は、本体部11に回動可能に軸支されるとともに、その軸支位置から離れた位置において、付勢部材32A(本実施形態では引きばね)を介して本体部11に接続されている。これにより、ストッパー32は、伝動車30に干渉しない非干渉位置(
図5にて実線で表したストッパー32を参照)、および、伝動車30の当接部30Aに当接して係止する当接位置(
図5にて仮想線で表したストッパー32を参照)、の2か所の間を行き来可能とされる。また、付勢部材32Aは、ストッパー32を上記非干渉位置から上記当接位置に向かう向きに付勢する。
【0054】
本実施形態においては、ストッパー32は、取っ手としてのレバー部32Bを備えて、ストッパー32を強制的に上記当接位置から上記非干渉位置に動かすことが可能とされている。レバー部32Bは、例えばストッパー32と当接部30Aとの係止を手動で解除する際に用いられる。
【0055】
ストッパー32には、このストッパー32が上記非干渉位置から上記当接位置に移動することをロックするロック部材33が付設されている。このロック部材33は、
図7に示すように、台座33Bを介して本体部11に取り付けられ、この台座33Bから後ろ側に突出部33Cを突出させた構成である。この突出部33Cは、非干渉位置にあるストッパー32に対して当接位置側(
図5では右側)から係止された係止状態をとることで、ストッパー32の移動をロックする。
【0056】
ロック部材33は、
図7に示すように、台座33Bに対して上下方向に回動可能に軸支されるとともに、その軸支位置から離れた位置において、ばね33Aを介して本体部11に接続されている。このため、ロック部材33は、その突出部33Cに上下方向の外力が加わった際に、突出部33Cを台座33B側に引っ込めて上記係止状態を一時的に解除する(
図7の仮想線を参照)ようになっている。
【0057】
伝動車30は、
図5に示すように、この伝動車30と一緒に回転するように設けられた円弧状の遠心ウェイト31を備えている。この遠心ウェイト31は、その一端が伝動車30に軸支され、他端が引きばね31Aを介して伝動車30に取り付けられたものである。これにより、遠心ウェイト31は、伝動車30の回転に伴い作用する遠心力に応じて、伝動車30の径方向外方へ張り出す(
図5の仮想線を参照)ように構成される。
【0058】
上記構成のため、遠心ウェイト31の回転の軌跡は、一緒に回転する伝動車30の回転速度が速くなるほど、伝動車30の径方向外方へ張り出す。
図5では、遠心ウェイト31がゆっくり回転し、その遠心力の影響を無視できる場合の遠心ウェイト31の回転の軌跡を、軌跡31Bとして描いている。また、昇降補助装置10の通常昇降時よりも速い回転速度(具体的には例えば1.2倍以上の回転速度)で伝動車30が回転しているときの遠心ウェイト31の回転の軌跡を、軌跡31Cとして描いている。
【0059】
ここで、軌跡31Bは係止状態のロック部材33に干渉しない軌跡である。また、軌跡31Cは係止状態のロック部材33に干渉し、遠心ウェイト31がロック部材33の突出部33Cに上側からぶつかる軌跡である。ここから、遠心ウェイト31は、伝動車30の回転速度が所定以下の場合は係止状態のロック部材33に干渉しない軌跡で回転し、回転速度が所定以上の場合は係止状態のロック部材33にあたって係止状態を解除する軌跡で回転する、ということができる。
【0060】
遠心ウェイト31によってロック部材33の係止状態が解除されると、ストッパー32は、付勢部材32Aの付勢力によって上記非干渉位置から上記当接位置に移動し、伝動車30の当接部30Aに係止することで伝動車30の回転にブレーキをかける。このストッパー32の動きは、ストッパー32の近傍(
図5では左側)に設けられた非接触式のセンサー13Aによって検出される。制御装置13(
図2参照)は、上記のストッパー32の動きをセンサー13Aが検出したときに、進退機構12の進退駆動を停止させる制御を行う。
【0061】
緩衝機構40は、
図10に示すように、本体部11の上方にバンパー40Aを張り出させて、このバンパー40Aによって障害物等の上方からの衝突を受け止める構成である。バンパー40Aは、本体部11の上縁部に沿って長尺に延びるように配設される。
【0062】
緩衝機構40は、それぞれがバンパー40Aと本体部11とをつなぐ第1リンク41および第2リンク42を備えている。これらは互いに交差するように配置されて、その中途交差部にて連結ピン40Bによって回動自在に連結されることで、リンク機構を構成する。
【0063】
緩衝機構40のリンク機構において、第1リンク41における本体部11側(
図10では下側)のジョイントは、回転1自由度のピンジョイント41Aとされる。また、第1リンク41におけるバンパー40A側(
図10では上側)のジョイントは、バンパー40Aの長手方向(
図10では左右方向)に沿って延びる直線1自由度のスライダー41Bとされる。また、第2リンク42におけるバンパー40A側のジョイントは、回転1自由度のピンジョイント42Aとされる。また、第2リンク42における本体部11側のジョイントは、バンパー40Aの長手方向に沿って延びる直線1自由度のスライダー42Bとされる。これらにより、緩衝機構40のリンク機構は、第1リンク41および第2リンク42を共有する2つの往復スライダーてこ機構を、互いに対向する状態に組み合わせた構成となる。
【0064】
ピンジョイント41Aとスライダー42Bとの間には、これらを互いに近づける向きの付勢力を発揮する引きばね40Cが介装されている。緩衝機構40のリンク機構は、引きばね40Cによりスライダー42Bがピンジョイント41Aに近づけられる動きを、バンパー40Aと本体部11とを離間させる動きに変換する。これにより、引きばね40Cは、付勢力を発揮してバンパー40Aと本体部11とを離間させる離間部材として機能する。
【0065】
バンパー40Aには、本体部11に向かって直線状に延びだされる円柱状のガイド部材43が固設されている。このガイド部材43は、本体部11に固設された円筒状の係合ブロック43Aに差し込まれ、この係合ブロック43Aに対してスライド可能となるように係合する。
【0066】
係合ブロック43Aには、ガイド部材43の差し込み深さを検出して制御装置13(
図2参照)に出力するセンサー43Bが付設されている。制御装置13は、センサー43Bの出力に基づいてバンパー40Aと本体部11との距離を判定し、この距離が縮められたときには進退機構12の進退駆動を停止させる制御を行う。すなわち、制御装置13は、引きばね40Cの付勢力に抗してバンパー40Aと本体部11とを近づける外力が作用した際に、進退機構12の進退駆動を停止させる制御を行う。
【0067】
緩衝機構50は、
図11に示すように、本体部11の下方にバンパー50Aを張り出させて、このバンパー50Aによって障害物等の下方からの衝突を受け止める構成である。バンパー50Aは、本体部11の下縁部に沿って長尺に延びるように配設される。
【0068】
ここで、緩衝機構40および緩衝機構50は、緩衝機構40が上方からの衝突を受け止め、緩衝機構50が下方からの衝突を受け止めることに対応して上下が反転している点を除いて、同様の構成を有している。このため、緩衝機構50の各構成については、
図10にて緩衝機構40の各構成に付した符号の数字に「10」を加えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0069】
上述した昇降補助装置10は、作業者90が体重の一部をあずけて弾性部材21が第2状態にまで伸び縮みするときに駆動可能状態の設定を行い、その後本体部11を昇降させて作業者90の昇降を補助する。また、昇降補助装置10は、作業者90との距離が離れすぎて弾性部材21が第3状態にまで伸びたときには、昇降を停止させて駆動不能状態を設定し、作業者90を待つ。この駆動不能状態は、作業者90が昇降補助装置10に近づいて弾性部材21を第1状態に戻し、その後作業者90が体重の一部をあずけて弾性部材21を第2状態にまで伸ばすまでの間解除されない。これにより、昇降補助装置10は、停止と再駆動とが繰り返されるハンチング現象の発生を減らすことができる。
【0070】
また、昇降補助装置10によれば、昇降補助装置10の制御装置13を、複数個の検出スイッチの検出結果により制御を行うシンプルなものとすることができる。
【0071】
また、昇降補助装置10によれば、進退部材22との接触による第2スイッチ22Bの損耗および位置ずれを減らして、第2スイッチ22Bによる進退部材22の検出がうまくいかなくなる不具合の発生を抑えることができる。
【0072】
また、昇降補助装置10によれば、本体部11の昇降にともなう伝動車30の遠心力によって径方向外方へ張り出す遠心ウェイト31を、伝動車30の回転を停止させるストッパー32のロック解除に用いる。ストッパー32は付勢部材32Aに付勢されたものであるため、昇降補助装置10の降下速度によらず伝動車30の回転にブレーキをかける。これにより、昇降補助装置10は、その降下に対し、より確実なブレーキをかけることができる。
【0073】
また、昇降補助装置10によれば、ストッパー32が当接部30Aに当接して伝動車30の回転にブレーキがかかった場合でも、伝動車30に過剰な負荷がかかったときには、トルクリミッター30Cの空転により過剰分の負荷が逃がされる。これにより、昇降補助装置10は、作業者90から昇降補助装置10への衝撃負荷の反作用として作業者90にかかる衝撃負荷を和らげることができる。
【0074】
また、昇降補助装置10によれば、バンパー40Aと本体部11との間、および、バンパー50Aと本体部11との間に、それぞれ互いに対向する2つの往復スライダーてこ機構が介装される。これらの往復スライダーてこ機構は、互いに交差する第1リンクおよび第2リンクを共有するものであるため、バンパー40A、50Aを本体部に近づけようとする外力は、バンパー40A、50Aのどの部分にかかるものであっても、バンパー40A、50Aの全体を本体部11に近づける。これにより、昇降補助装置10は、バンパー40A、50Aの押し込みの検知精度が低下することをさけることができる。
【0075】
また、昇降補助装置10によれば、ガイド部材43、53を直動軸として機能させてバンパー40A、50Aの本体部11に対するぐらつきを抑えることができる。また、ガイド部材43、53をバンパー40A、50Aから本体部11に向かって延びださせる構成によれば、外力によってバンパー40A、50Aと本体部11とが近づけられたときに、ガイド部材43、53がバンパー40A、50Aから突出することをさけることができる。
【0076】
以上、本開示を実施するための形態について、上述した一実施形態によって説明した。しかしながら、当業者であれば、本開示の目的を逸脱することなく種々の代用、手直し、変更が可能であることは明らかである。すなわち、本開示を実施するための形態は、本明細書に添付した特許請求の範囲の精神および目的を逸脱しない全ての代用、手直し、変更を含みうるものである。例えば、本開示を実施するための形態として、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0077】
(1)本開示において、取付部と本体部とをつなぐ弾性部材は、取付部を通してかかる張力により下に向かって押し縮められる圧縮つるまきばねに限定されない。すなわち、本開示において、弾性部材は、例えば引きばねやエラストマー(ゴム)など、張力によって伸びるものであってもよい。この場合、弾性部材の「第1状態」「第2状態」「第3状態」は、「縮みの変形量」ではなく「伸びの変形量」に基づいて設定される。また、本開示においては、取付部と弾性部材との間に力の向きを変更させる機構(例えば滑車またはリンク機構)を介装して、弾性部材が適宜設定された方向に伸び縮みするようにされた構成を採用することもできる。
【0078】
(2)本開示においては、伝動車の回転にブレーキをかける構成として、遠心ウェイトに設けられたブレーキシューをブレーキハウジングとして形成された当接部に押し当てる構成を用いてもよい。
【0079】
(3)本開示においては、バンパーと本体部との間に離間部材をかけ渡して、離間部材の付勢力を直接に作用させてバンパーと本体部とを離間させる構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 昇降補助装置
10A カバー
10B バッテリー
11 本体部
11A 挟み込み部材
11B 挟み込み部材
12 進退機構
12A ピンホイール
12B モーター
12C ギアボックス
13 制御装置
13A センサー
14 操作パネル
14A 操作スイッチ
20 接続機構
20A ケーシング
20B スリット
21 弾性部材
21A 伸縮領域
22 進退部材
22A 第1スイッチ(検出スイッチ、ワンウェイ式の接触検出スイッチ)
22B 第2スイッチ(検出スイッチ)
22C 第3スイッチ(検出スイッチ)
23 取付部
23A 金属ロッド
23B 金具
24 進退領域
24A 第1領域
24B 第2領域
24C 第3領域
30 伝動車
30A 当接部
30B ピンホイール
30C トルクリミッター
31 遠心ウェイト
31A 引きばね
31B 軌跡
31C 軌跡
32 ストッパー
32A 付勢部材
32B レバー部
33 ロック部材
33A ばね
33B 台座
33C 突出部
40 緩衝機構
40A バンパー
40B 連結ピン
40C 引きばね(離間部材)
41 第1リンク
41A ピンジョイント
41B スライダー
42 第2リンク
42A ピンジョイント
42B スライダー
43 ガイド部材
43A 係合ブロック
43B センサー
50 緩衝機構
50A バンパー
50B 連結ピン
50C 引きばね(離間部材)
51 第1リンク
51A ピンジョイント
51B スライダー
52 第2リンク
52A ピンジョイント
52B スライダー
53 ガイド部材
53A 係合ブロック
53B センサー
90 作業者
90A 墜落制止用器具
90B ランヤード
91 鉄塔
91A 昇降経路
91B 昇降用レール
【要約】
【課題】昇降補助装置において、停止と再駆動とが繰り返されるハンチング現象の発生を減らす。
【解決手段】昇降補助装置は、昇降用レールに係合する本体部、本体部を昇降させる進退機構、進退機構を制御する制御装置、墜落制止用器具のランヤードをつなぐ取付部、および取付部と本体部とをつなぐ弾性部材を備える。弾性部材は、伸び縮みの少ない第1状態と、より伸び縮みが多い第2状態と、さらに伸び縮みが多い第3状態とを取りうる。制御装置は、弾性部材が第1状態から第2状態となるときに進退機構を駆動可能状態とし、駆動可能状態かつ第2状態であるときに進退機構を進退駆動させ、弾性部材が第3状態となったときに進退機構を駆動不能状態にする。駆動不能状態は、第3状態となった弾性部材が第1状態に戻って再び第2状態となるまでの間解除されない。
【選択図】
図9