(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】制御状態同士の間の段階的な力フィードバック移行
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20241119BHJP
A61B 17/29 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B17/29
(21)【出願番号】P 2018533730
(86)(22)【出願日】2017-01-12
(86)【国際出願番号】 US2017013237
(87)【国際公開番号】W WO2017123796
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2020-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-18
(32)【優先日】2016-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーナー,ロートン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,シェン-シン
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】栗山 卓也
【審判官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0142592(US,A1)
【文献】特開2009-187550(JP,A)
【文献】国際公開第2015/148293(WO,A1)
【文献】特表2011-519286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B34/00-34/37
B25J1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術システムであって、当該手術システムは、
入力装置と、
該入力装置から制御入力を受信し、触覚フィードバックを前記入力装置に提供するコントローラと、を有しており、
前記コントローラは、当該手術システムが
第1の器具の非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルに関連する第1の制御状態から
第2の器具の非ゼロの第2の触覚力フィードバックプロファイルに関連する第2の制御状態に移行するときに、前記入力装置における前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルから前記入力装置における前記非ゼロの第2の触覚力フィードバックプロファイルに段階的な移行を適用するように構成され、
前記段階的な移行は、時間依存であり、且つ前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルと前記非ゼロの第2の触覚力フィードバックプロファイルとの間にゼロの触覚力状態を含み、前記非ゼロの第1及び第2の触覚力フィードバックプロファイルの一方が前記ゼロの触覚力を境に減少関数を示し、他方が前記ゼロの触覚力を境に増加関数を示す、
手術システム。
【請求項2】
前記段階的な移行は、前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルの線形スケーリング、曲線スケーリング、及び方向修正のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項3】
前記段階的な移行は、前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルの力の大きさをスケーリングすることを含む、請求項1又は2に記載の手術システム。
【請求項4】
前記段階的な移行は、前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルの力ベクトルの方向を変化させることを含む、請求項1又は2に記載の手術システム。
【請求項5】
当該手術システムは器具をさらに有し、
前記第1の制御
状態は、前記器具の器具制御モードを含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項6】
前記第1及び第2の制御状態は、器具制御モード、クラッチモード、器具交換モード、カメラ制御モード、システム設定モード、アーム交換モード、後続ステップ終了モード、及び対話型仮想要素操作モードのうちの異なるモードを含む、請求項1又は5に記載の手術システム。
【請求項7】
前記段階的な移行は、前記入力装置における前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルを所定の期間に亘って維持することを含む、請求項1又は2に記載の手術システム。
【請求項8】
前記コントローラは、少なくとも1つの触覚効果を前記段階的な移行に重ねた状態にするようにさらに構成される、請求項1又は2に記載の手術システム。
【請求項9】
前記コントローラは、当該手術システムが前記第2の制御状態から前記第1の制御状態に戻るときに、前記入力装置における前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルを復元するようにさらに構成される、請求項1又は2に記載の手術システム。
【請求項10】
方法であって、当該方法は、
手術システムの入力装置において前記手術システムの
第1の器具の第1の制御状態の間に非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルを生成するステップと、
前記手術システムの前記入力装置において前記手術システムの
第2の器具の第2の制御状態の間に非ゼロの第2の触覚力フィードバックプロファイルを生成するステップと、
前記手術システムの前記第1の制御状態から前記手術システムの前記第2の制御状態への変化を検出すると、段階的な移行を、前記手術システムの前記入力装置において前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルから前記非ゼロの第2の触覚力フィードバックプロファイルに適用するステップと、を含み、
前記段階的な移行は、時間依存であり、且つ前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルと前記非ゼロの第2の触覚力フィードバックプロファイルとの間にゼロの触覚力状態を含み、前記非ゼロの第1及び第2の触覚力フィードバックプロファイルの一方が前記ゼロの触覚力を境に減少関数を示し、他方が前記ゼロの触覚力を境に増加関数を示す、
方法。
【請求項11】
当該方法は、
前記手術システムが前記第1の制御状態にある間に、前記入力装置で受信した入力に従って、手術器具を制御するステップと、
前記手術システムが前記第1の制御状態にある間に、前記手術器具から感知された力データを受信するステップと、をさらに含み、
前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルは、前記感知された力データに基づく、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルは、コントローラによって生成された対話型仮想要素に基づく、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記段階的な移行は、前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルの力の大きさをスケーリングすることを含む、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記段階的な移行は、前記非ゼロの第1の触覚力フィードバックプロファイルの力ベクトルの方向を変更することを含む、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2016年1月12日に出願された米国仮特許出願第62/277,820号に対する優先権の利益を主張するものであり、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、手術システムのオペレータに触覚フィードバックを提供するためのシステム及び方法に関し、より具体的には、システムの制御状態が変化したときに直感的な触覚プロファイルをユーザのために維持するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
遠隔操作式手術システムは、大抵の場合、医療処置中に外科医の精度を高め及び/又は患者の外傷を低減することを意図している。そのようなシステムでは、外科医は、入力装置(「マスター」又は「マスターコントローラ」と呼ばれることもある)と対話して、モータ等の駆動機構によって作動される手術器具を制御する。外科医が手術器具を直接的に操縦していないので、手術器具で感じ取られた力を示す又は再現する触覚フィードバックを入力装置に与えることが有益となることがあり得る。優れたユーザ体験を提供するため、外科医は、システムの状態変化及び構成変更によって、シームレスな触覚体験を理想的に経験するだろう。しかしながら、これは、特に所与の入力装置が複数の異なる制御状態で使用される場合に、達成するのが困難となり得る。例えば、単一の入力装置は、複数の異なる器具を制御する(これらの異なる器具同士の間の切替え制御を必要とする)ために使用してもよく、手術システムの全体的な位置付けを制御する(例えば、解剖学的な関心領域を眺めている内視鏡の視点を変更する)ために使用してもよく、手術システムの設定を変更するために使用してもよく、及び/又は単に任意の制御効果から分離してもよい。
【0004】
このような制御状態の変化に応答して、単に触覚フィードバックを活性化/非活性化/変化させることは、途切れ途切れで(jerky)、直感的でない相互作用を生じさせる可能性がある。ある状態で力がユーザに加えられており、次の状態で力がユーザに加えられていない場合に、力を完全な状態の力から力の全くない状態に直ちに変更することは、ユーザには戸惑いを与える。例えば、触覚フィードバックを伴う器具の制御から、触覚フィードバックの伴わない器具(例えば、内視鏡)の制御への移行、又は他に、器具変更(すなわち、マニピュレータからの器具の取外し)、後続のステップから抜け出る(exit from following:
後続ステップを終了する)こと(すなわち、入力装置による命令の制御を無効にすること)、又はアーム交換(すなわち、入力装置の制御の下での手術器具/アーム/マニピュレータの変更)等の、触覚フィードバックの伴わない制御状態に入る移行のときに、触覚フィードバックの即時の喪失は、ユーザにとって予期せぬ抵抗の喪失のように感じるであろう。
【0005】
ユーザは、力が全くない(又は低い)状態の(rendering)器具から(高い)力を有する器具に移行させるときに、力のフィードバックが即座に有効されるかどうか、同様に戸惑うことがある。これは、例えば、カメラ制御から力フィードバックを伴う器具に戻るときに発生する可能性がある。これは、ユーザが最初に器具の制御を行う(例えば、器具を用いて最初の進行状態から次の進行状態に移る)場合にも起こる。
【0006】
別の問題は、ユーザが制御状態を、特定の器具(例えば、クラッチング(clutching)、ヘッドインUI等)に関連付けられたままであるが制御が適用されていない中間状態に変更しているときに生じる。器具を直接制御に戻すときに、中間状態の間に力フィードバックをオフにして、再びオンに戻すことは、ユーザにとって理想的ではない。大抵の場合、これらの中間制御状態は持続時間が短いので、力を急速にオン/オフすることは問題となり得る。
【0007】
ユーザに提示される力フィードバックは、センサからのフィードバック、アルゴリズムからのフィードバック、ユーザインターフェイスキュー(cue)からのフィードバック、衝突検出からフィードバック等の総和であってもよいことに留意されたい。
【発明の概要】
【0008】
制御状態を変化させるときの急激な力の移行の違和感を緩和するために、入力装置に(従って、ユーザに)出される元の力から新しい制御状態に適したレベルまで段階的な移行を行うことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、触覚フィードバック力ベクトルは、(ある非ゼロ時間に亘って、ある方向及び/又は大きさで)力Aから力Bに移行する。力Aの大きさは、力Bより大きくても、小さくてもよい(又は、いくつかの実施形態では等価であり、移行は一方向のみである)。力Aの大きさから力Bの大きさへの段階的な移行のプロファイルは、線形的な移行又は曲線的な移行を含む、経時的に生じる任意のプロファイルとすることができ、且つ移行の一部としての不連続性(例えば、ステップ)を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、特定の器具に関連してユーザが状態を留めておく中間モードに入ることを含む制御状態の変化について、力フィードバックは、ユーザが器具を直接的に制御するのを停止させたときの最後のレベルに留まることができる。例えば、制御状態が器具制御(後続ステップ)から非器具制御(後続ステップから抜け出る)に移行する場合に、関連する入力装置における触覚フィードバックを、少なくともある期間に亘ってその現在のレベルに維持することができる。様々な実施形態において、そのような安定(変動のない)期間の後に、力が減少した状態又は力が全く無い状態への段階的な移行が続いて適用され得る。
【0011】
前述の発明の概要と以下の詳細な説明との両方は、本質的に例示的で説明的であり、且つ本開示の範囲を限定することなく本開示の理解を与えることを意図していることを理解されたい。その点で、本開示の追加の態様、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の様々な実施形態による、制御状態の変化中に直感的な触覚フィードバックを手術システムのユーザに提供する方法を示す図である。
【
図1B】本発明の様々な実施形態による、制御状態の変化中に直感的な触覚フィードバックを手術システムのユーザに提供する方法を示す図である。
【
図2A】本発明の様々な実施形態による、制御状態の変化中の例示的な触覚力ベクトルの移行を示す図である。
【
図2B】本発明の様々な実施形態による、例示的な触覚力フィードバック移行プロファイルを示す図である。
【
図3A】本発明の様々な実施形態による、制御状態の変化に応答して触覚力フィードバックの移行を与える例示的な手術システムを示す図である。
【
図3B】本発明の様々な実施形態による、制御状態の変化に応答して触覚力フィードバックの移行を与える例示的な手術システムを示す図である。
【
図3C】本発明の様々な実施形態による、制御状態の変化に応答して触覚力フィードバックの移行を与える例示的な手術システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の態様は、添付図面と併せて読むときに、以下の詳細な説明から最もよく理解される。業界の一般的な慣例に従って、様々な特徴は一定の縮尺で描かれていないことを強調しておく。実際に、様々な特徴の寸法は、議論の明瞭化のために適宜増減され得る。さらに、本開示は、様々な例において参照符号及び/又は文字を繰り返し得る。この繰返しは、簡潔さ及び明瞭さを目的とするものであり、それ自体が議論された様々な実施形態及び/又は構成の間の関係を規定するものではない。
【0014】
本発明の態様の以下の詳細な説明では、開示された実施形態の完全な理解を与えるために、多数の具体的な詳細について記載している。しかしながら、当業者には、本開示の実施形態がこれらの特定の詳細なしに実施され得ることは明らかであろう。他の例では、本発明の実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないために、周知の方法、手順、構成要素、及び回路は詳細に説明していない。また、不必要な説明の繰返しを避けるために、ある例示的な実施形態に従って説明した1つ又は複数の構成要素又は動作は、他の例示的な実施形態から適用可能であるように、使用又は省略され得る。
【0015】
手術システムの制御状態が変化したときに力フィードバックプロファイル同士の間に段階的な移行を与えることによって、手術システムのユーザにとって直観的な触覚体験を維持させることができる。
【0016】
図1Aは、このような段階的な触覚移行を与える例示的な方法を示す。触覚フィードバック提供ステップ110において、手術システムによって、ユーザ(例えば、外科医)が、手術器具(及び/又はロボットアーム、セットアップ構造等の手術システムの他の要素、又はブーム又はカート等の位置付け要素)を入力装置(複数可)(レバー(複数可)、把持具(複数可)、ジョイスティック(複数可)、及び/又はユーザ入力を受け取ることができる任意の他の構造)を介して制御することを可能にし、次に、所望の触覚フィードバックプロファイル(実際又は仮想/モデル化された相互作用の物理的経験を少なくとも部分的に再現又は再提示する1つ又は複数の触覚フィードバック効果のセット)に基づいて力フィードバックをその入力装置に提供する。触覚フィードバックプロファイルは、器具において感知された力(例えば、組織又は他の器具の相互作用)又はロボットアームにおいて感知された力(例えば、構造又はスタッフとのアームの衝突)、ユーザ案内(例えば、所望の経路又は軌跡に沿って入力装置(複数可)を移動させるためにユーザに案内を提供するための触覚ディテント(detent)、フェンス(fences)、他のプロファイル)、及びユーザインターフェイス(UI)要素(例えば、仮想ハンドル又はステアリングホイールをユーザに提示する)等の任意の触覚入力モデルに基づいてもよい。入力装置で触覚フィードバックを生成するために所望の触覚フィードバックプロファイルに適用される変換は、触覚フィードバックプロファイルの直接的な再現から、触覚フィードバックプロファイルのスケーリング(scaling)への変換、触覚フィードバックの非線形修正を適用することへの変換、又は任意の他の変換(例えば、器具状態/速度、視聴倍率等の1つ又は複数の他の要因に依存して変化する力のスケーリング)であってもよい。ステップ110における触覚フィードバックは、位置センサ、ボタン、又は接触センサ等の、手術システムの追加のセンサに基づいて計算される力も含むことができる。
【0017】
次に、制御モード変更ステップ120において、手術システムにおける制御モードの変更が(典型的には、ユーザのコマンド/アクションに応答するが、他の例では、システムのタイマー又は警告等の外部コマンドに応答して、又は第3者アクション/コマンドに応答して)生じ、それによって入力装置における入力は、もはや手術器具において同じ効果を与えない。例えば、手術器具とカメラ(例えば、内視鏡)との両方を含む手術システムでは、制御状態が、入力装置が手術器具を制御している状態から、入力装置がカメラの視点/手術部位の視野を制御しているカメラ制御モードに変化する場合があり得る。このような制御状態の変化が生じたときに入力装置がユーザに触覚フィードバックを提供している場合に、その変化に応答して触覚フィードバックを直ちに除去することは、入力装置における力フィードバックの急激な喪失を招き、ユーザを惑わせ、方向性を失わせ得る。
【0018】
従って、段階的な触覚フィードバック移行を適用するステップ130において、元の触覚フィードバックプロファイルから新しい制御状態の所望の触覚フィードバックプロファイルに、段階的な移行が実行される。換言すれば、元の触覚フィードバックプロファイルから所望の触覚フィードバックプロファイルへの移行は、制御状態同士の間の切替えに対応する旧触覚プロファイルと新触覚プロファイルとの間の即時の切り替えから生じるであろう触覚フィードバックの突然の変化を低減する少なくとも1つの中間ステージを含む。
【0019】
大抵の場合、元の触覚フィードバックプロファイルから所望の(新しい)触覚フィードバックプロファイルへのこの移行は、入力装置に表現された力フィードバックベクトルに対する調整を含むだろう。
図2Aは、初期力F
Aから新しい力F
Bへの例示的な触力フィードバックベクトルの移行を示す。力F
Aは、力F
Bより大きくても、小さくてもよい(又はいくつかの実施形態では等価であり、移行は一方向のみである)。力F
Aから新しい力F
Bへの段階的な移行は、線形的な移行又は曲線的な移行を含む任意の経路をとることができ、移行の一部として不連続性(例えばステップ)を含み得る。例えば、
図2Bは、直線的な線形スケーリング(#1)、単調スケーリング(#2)、鋸歯状双方向スケーリング(#3)、及び曲線的な多方向スケーリング(#4)を含む、ステップ120に応答して起こり得る触覚フィードバックプロファイル同士の間のいくつかの例示的な段階的な移行を示す。いくつかの例では、この移行は、力の大きさをゼロ力状態(例えば、#3及び#4)を介して移動させてもよい。様々な他の実施形態では、力F
Aから力F
Bへの移行は、中間の方向ベクトルを生成するために力F
A及びF
Bのスケーリングされたバージョンを加算すること、又はある期間に亘って力F
Aと整列させたままにし、次に力F
Bと整列させたままにすることを含むいくつかのアルゴリズムを使用することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、触覚フィードバックを有する制御状態と、通常は触覚フィードバックを生成しない制御状態との間で変化するときに、「ファントム(phantom)」触覚フィードバックが維持され得ることに留意されたい。
図1Bは、このタイプの安定した移行を与える例示的な方法を示す。
【0021】
図1Aに対して上述したように、触覚フィードバック提供ステップ110において、手術システムは、器具及び/又は他のシステム構造において感知された力等の触覚モデル入力、又は仮想又は合成対話型要素(例えば、数ある中でもユーザインターフェイス要素、仮想フェンス、及び/又は仮想制御フィーチャ等)に基づく触覚フィードバックプロファイルに基づいて、力フィードバックを入力装置に提供する制御状態にある。また上記のように、ステップ110における触覚フィードバックは、位置センサ、ボタン、又は接触センサ等の、手術システムの追加のセンサに基づいて計算される力も含むことができる。そして、制御モード変更ステップ120において、手術システムの制御状態は、数ある中でもシステム設定モード、アーム変更モード(すなわち、手術システム上の異なる器具への制御を切り替える)、後続ステップから抜け出る(exit
following)モード(すなわち、入力装置と手術器具との間の制御リンクを単に不能にする)等の、触覚フィードバックが関連しない(又は、元の触覚フィードバックプロファイルとは異なる)制御状態に変化する。
【0022】
次に、触覚フィードバックを維持するステップ125において、システムの制御状態が変化しても、触覚フィードバックプロファイルは変更されないままである。このような触覚フィードバックの一貫性は、時にはフィードバックを完全に変更又は排除することと比較して、ユーザにより直観的な経験を与えることができる。例えば、(触覚フィードバックを有する)器具制御状態から、入力装置を使用してシステムパラメータを変更する(例えば、メニューオプションを選択する)制御状態に変化し、従って手術器具の力に対して論理的な触覚フィードバック関係を何ら有さない場合に、システム設定制御状態中であっても、器具制御状態からフィードバック制御プロファイルを単に維持することが有益であり得、それによって制御状態が器具制御状態に戻ったときに、ユーザは、入力装置での突然の力フィードバックの出現によって驚くことはない。こうして、新しい状態の触覚フィードバックプロファイルは、新しい状態について入力装置で実行される制御動作と技術的に一致しないが、その触覚の不一致は、実際にはより一貫したユーザ体験を与えることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ステップ125は、新しい制御状態に関連する追加の触覚フィードバックを元の触覚フィードバックプロファイルに重ねる(overlay)か、又は追加することを含み得ることに留意されたい。上述したシステムの設定例では、設定が変更又は選択されたときに、触覚「クリック」又は「バンプ(bumps)」等の特定の触覚フィードバック効果をシステム設定制御状態と関連付けることができる。いくつかの実施形態では、そのような触覚効果は、元の力フィードバックと共に以前の制御状態から提供され得る。
【0024】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップ125の触覚フィードバック維持の後に、
図1Aに関して上述したように、段階的な触覚フィードバック移行を適用するステップ130を続けてもよいことに留意されたい。そのような場合に、触覚フィードバックプロファイルは、最初に、ステップ120の制御状態の変更後に変更されないであろうが、最終的に新しい触覚フィードバックプロファイルへの段階的な移行を受けるだろう。
【0025】
図3Aは、触覚フィードバックを組み込んだ手術システム300と、
図1A及び/又は
図1Bに関して上述したような直感的な触覚体験をユーザに与えるための手段とのブロック図を示す。手術システムは、外科的タスクを行う器具310(例えば、鉗子、カッター、リトラクタ(retractor)、血管シーラー、針ドライバ、カテーテル等)と、ユーザ(例えば、外科医)からの入力を受け取る入力装置330(例えば、ユーザ入力を受け取ることができるレバー(複数可)、把持具(複数可)、ジョイスティック(複数可)、又は他の任意の構造等)と、コントローラ320と、を含み、コントローラ320は、入力装置330からの入力命令を受信し、それに応じて器具310の動作を操縦構造313を介して制御し、且つ命令を触覚フィードバックアクチュエータ340に提供して、所望の触覚フィードバックプロファイルに従った触覚フィードバックを入力装置330に提供する。様々な実施形態では、操縦構造313は、数ある中でも、ロボットアーム(複数可)/マニピュレータ(複数可)、セットアップ構造(複数可)、及び/又はブーム(複数可)又はカート(複数可)等の位置付け要素を含む、器具330の挙動を操作、位置付け、作動、又は他に制御するための任意数のシステム及び構造を含むことができる。コントローラ320は、本明細書に記載の動作を発生、管理、制御、及び実行するためのハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、及び他のモダリティの任意の組合せを含むことができる。様々な実施形態において、コントローラ320は、器具310、入力装置330、及び/又は個別の制御ハードウェア(例えば、スタンドアロン型処理装置又はコンピュータプラットフォーム)と一体化してもよい。
【0026】
例示目的のために、
図3Aは、入力装置330が器具310を制御している制御状態Aの手術システム300を示す。
図3Aに示されるように、外科医は、入力装置330を使用して、器具310のシャフト312上のエンドエフェクタ311を用いて組織390の一部を掴み、後退させる。この結果、エンドエフェクタ311に下向きの力Fsが生じ、これに応答して、(例えば、上記のステップ110に関して説明したように)コントローラ320が触覚フィードバック力F
Aを入力装置330に伝える。このようにして、外科医は、組織390が後退されているときに組織390によって与えられる抵抗を「感じる」だろう。
【0027】
この制御状態Aのこの説明は、この初期制御状態Aが手術システム300の任意の状態であり得るため、例示的な目的のみであることに留意されたい。例えば、触覚フィードバックプロファイル力FAは、例示的な目的のために器具310のエンドエフェクタ311で感知された力Fsから導出されるように表現され、様々な他の実施形態において、シャフト312又は操作構造313の他の任意の要素における相互作用(例えば、構造物又はスタッフに対するアームの圧力)等の力FSは、入力装置330における対応する触覚フィードバックが有益となる任意の場所で感知され得る。
【0028】
様々な他の実施形態において、力FSは、上述した合成対話型要素等の非物理的パラメータに従って規定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、手術システム300は、オプションのディスプレイ350(例えば、モニタ(複数可)、ヘッドインビューア(複数可)、投影機、ビデオ眼鏡/ヘルメット(複数可)、及び/又は任意の他のグラフィカルプレゼンテーション要素)を含むことができる。様々な実施形態において、ディスプレイ350は、入力装置330を介して対話することができる仮想又は合成要素361を提示することができる。いくつかの実施形態では、合成要素361は、手術システム300の物理的要素と相互作用するための補助インターフェイスとして使用することができる。例えば、
図3Aに示されるように、合成要素361は、器具310を手術部位に再配置するために入力装置330を用いて「把持」して引きずることができる仮想のハンドル又はノブとすることができる。他の実施形態では、合成要素361は、手術システム300を制御するためのダイヤル、トグル、レバー、又は任意の他の構造等の純粋に仮想的な相互作用要素を提供することができる。いずれの場合でも、合成素子361との相互作用に関連するモデル力FS1(例えば、丸いノブを把持したときに生じる半径方向外向きの抵抗力)に基づいて触覚フィードバックプロファイルを生成することによって、コントローラ320は、次に、入力装置330に適切な触覚フィードバックプロファイル力FAを与えようと試みることができる。
【0029】
様々な他の実施形態において、手術システム300は、器具310及び/又は入力装置330の動きに関してユーザに案内を提供することができる。例えば、器具310の所望の動き(例えば、標的決めされた又は安全な切開経路、所望の後退運動、又は任意の他の有益な関節運動)は、オプションで、軌跡362として規定することができる。軌跡362に沿って器具310の位置を維持することに関連するモデル力FS2(例えば、軌跡362から逸脱した際に生成された内向きの所望の力)に基づいて触覚フィードバックプロファイルを生成することによって、コントローラ320は、次に、適切な触覚フィードバックプロファイル力FAを入力装置330に与えようと試みることができる。
【0030】
次に、例示的な制御状態では、(例えば、上記のステップ120に関して説明したように)
図3Bに示される新しい制御状態Bへの変更によって、入力装置330による制御をその既存の要素(例えば、リトラクター等の元の器具310)から新しい要素(例えば、組織390を縫合するための針ドライバ等の器具310(2))にシフトする。制御状態の変化は、元の要素(例えば、器具310)における力Fs(入力装置において触覚フィードバックF
Bとして表現する必要がある)とは異なる新しい要素(例えば、器具310(2))における力Fs’を生じさせる。こうして、時間(t2-t1)に亘って、触覚力フィードバックF
AからF
Bへの段階的な移行が、上記のステップ130に関して説明したように実行される。前述したように、段階的な移行のために、入力装置330のユーザは、力フィードバック変換が制御状態の変化と同時に切り替えられた感知された力に加えられた場合に起こる、力フィードバックF
AからF
Bへの突然の思いがけないジャンプを経験しない。例えば、段階的な移行は、支持している組織を後退させることを表する触覚フィードバックが直ちに消滅しないこと、又は仮想ノブ又はハンドルを保持する感覚が直ちに消えないことを確実にする。
【0031】
他の実施形態では、
図3Aの制御状態Aから
図3Cに示される新たな制御状態Cへの別の例示的な制御状態の変化によって、器具310からの入力装置330の制御(又は、触覚フィードバックを伴う任意の他の制御状態)をシステム設定選択インターフェイス321の制御(又は触覚フィードバックを伴わない任意の他の制御状態(又は、異なる触覚フィードバック))にシフトさせる。ここでは、制御状態が変更されても触覚フィードバックプロファイルが維持されるので、設定選択メニューが力発生環境でなくても、入力装置330におけるフィードバック力は力F
Aとして維持される。結果として、ユーザは、入力装置での力フィードバックの突然の消滅(又は、選択メニューが終了した後の力フィードバックの突然の再出現)によって驚くことはない。
【0032】
上述したように、いくつかの実施形態では、保持された触覚力FAは、設定が変更又は選択されたときに、触覚「クリック」又は「バンプ」等の、新しい制御状態に関連する追加的な触覚フィードバックと重ね合わされる。さらに上述したように、維持された触覚フィードバックに続いて、新しい触覚フィードバックプロファイルへの次の段階的な移行が続くことができる。
【0033】
本発明の特定の例示的な実施形態について添付図面に記載して示したが、そのような実施形態は、本発明を単に説明するものであり、広範な本発明を限定するものではなく、本発明の実施形態は、当業者には様々な他の改変が想起され得るので、図示され記載された特定の構造及び配置に限定されるものではない。