(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ゲル状浴用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241119BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20241119BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241119BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241119BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241119BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20241119BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241119BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/04
A61K8/60
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/36
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020155683
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】佐原 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】三木 大輝
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-030928(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107440943(CN,A)
【文献】特開2019-073562(JP,A)
【文献】特開2017-119717(JP,A)
【文献】特開2014-047179(JP,A)
【文献】GBG Beauty, USA,Color Swirl Bubble Bath,Mintel GNPD [online],2020年02月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#7183883, [検索日:2024.05.23], 表題部分,成分,製品分析
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)
を組成物中0.01重量%~2重量%の範囲、下記成分(B)を組成物中6重量%~50重量%の範囲、下記成分(C)を組成物中3重量%~30重量%の範囲、下記成分(D)を組成物中2重量%~15重量%の範囲で含有するゲル状浴用組成物。
(A)海藻由来、植物種子由来、微生物由来の多糖類から選択される1種以上
(B)糖類または糖アルコールから選択される1種以上
(C)多価アルコールから選択される1種以上
(D)炭素数10以上20以下の脂肪酸からなるトリグリセリド、炭素数15以上50以下の飽和炭化水素、炭素数10以上20以下の脂肪酸、カチオン化セルロースから選択される1種以上
(E)水
【請求項2】
25℃におけるゲル強度が0.001~0.2kgfの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のゲル状浴用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状浴用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、浴湯に芳香や色調を与え入浴の気分を爽快にし、新陳代謝を活発にして冷え性などを改善、温浴効果を得る目的で、浴湯に入浴剤を入れることが一般に普及しており、粉末状、錠剤型、液状など各種形態のものが販売されている。
一方、ゲル状の入浴剤として、下記特許文献1、2には、寒天等の水溶性ゲル化剤と、ポリエチレングリコール等の高級多価アルコールを含有する温水徐溶性ゲル組成物が開示されている。この温水徐溶性ゲル組成物は、効能や効果を長期間にわたり持続させることを目的とするものであり、1回の入浴時に完溶させて使用する入浴剤とは相違する。
また、下記特許文献3には、ヒドロキシエチルセルロース等の増粘剤を含有するゲル状入浴剤が開示されている。このゲル状入浴剤は、浴湯中に溶解拡散せず、皮膚にゲル状膜として付着して身体に作用する、または塗って使用するものであり、これも、1回の入浴時に完溶させて使用する入浴剤とは相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-026213号公報
【文献】特開昭62-026214号公報
【文献】特開2005-053883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近は、粉末状や錠剤型の入浴剤が主流であり、そのほとんどが、浴湯に入浴剤を完溶させて、浴湯に溶解した成分の効果を入浴時に得るという使い方のものである。この場合、成分が浴湯中で希釈されてしまうために、求める効果が十分に得られない場合がある。一方、ゲル状の入浴剤は、肌に塗布しながら入浴することで成分を直接皮膚に送達できるため、効果の面で優れている場合がある。しかしながら、特に油性の保湿剤を多く配合した場合、この油性の保湿剤を安定して保持できないためにゲル強度が低下する、浴湯中での溶解性が低下する、あるいは経時的に離水を生じる、といった問題があった。
そこで本発明は、油性の保湿剤を多く配合し、かつ安定なゲル状浴用組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するゲル状浴用組成物を検討する過程において、保湿効果を得るために配合する保湿剤の種類によっては、適切にゲル化しない、または、ゲル化しても時間経過により離水するなど経時安定性が悪いという問題があることを見出した。
そこで、本発明者は上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の油性の保湿成分を配合することにより、適度なゲル強度を有し、かつ、経時安定性や浴湯溶解性に優れるゲル状の入浴剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.下記成分(A)~(E)を含有するゲル状浴用組成物。
(A)海藻由来、植物種子由来、微生物由来の多糖類から選択される1種以上
(B)糖類または糖アルコールから選択される1種以上
(C)多価アルコールから選択される1種以上
(D)炭素数10以上20以下の脂肪酸からなるトリグリセリド、炭素数15以上50以下の飽和炭化水素、炭素数10以上20以下の脂肪酸、カチオン化セルロースから選択される1種以上
(E)水
2.25℃におけるゲル強度が0.001~0.2kgfの範囲内であることを特徴とする、1.に記載のゲル状浴用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゲル状浴用組成物は、特定の油性の保湿剤を選択することで、油性の保湿剤を多く含有しているにも関わらず、適度なゲル強度を有し、離水などの問題もなく経時安定性に優れているため、保管時および輸送時にゲルの割れ等の破損が生じることがなく、優れた保形性を発揮する。しかも、浴湯中における溶解性にも優れるという効果を発揮する。
すなわち、本発明のゲル状浴用組成物は、経時安定性と浴湯における溶解性の両立が図られており、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のゲル状浴用組成物について詳細に説明する。
本発明のゲル状浴用組成物は、下記成分(A)~(E)を含有するものである。
(A)海藻由来、植物種子由来、微生物由来の多糖類から選択される1種以上
(B)糖類または糖アルコールから選択される1種以上
(C)多価アルコールから選択される1種以上
(D)炭素数10以上20以下の脂肪酸からなるトリグリセリド、炭素数15以上50以下の飽和炭化水素、炭素数10以上20以下の脂肪酸、カチオン化セルロースから選択される1種以上
(E)水
【0009】
<成分(A)>
本発明のゲル状浴用組成物は、ゲル化剤として機能する、海藻由来、植物種子由来、微生物由来の多糖類から選択される1種以上を成分(A)として含有する。
成分(A)としては、例えば、紅藻類から抽出されるカラギーナン、植物種子、特に、マメ科植物の種子の胚乳から得られるガラクトマンナン類であるローカストビーンガム、タマリンドガム、グァーガム、タラガム、微生物の発酵により得られるキサンタンガム、ジェランガム、サクシノグリカンなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の成分(A)としては、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガムから選択される1種以上が好ましい。
カラギーナンは、D-ガラクトースによる繰り返しの単位からなる多糖類で、必ず硫酸基を有しており、その硫酸基の結合状態により、カッパ(κ)-カラギーナン、イオタ(ι)-カラギーナン、ラムダ(λ)-カラギーナンの3タイプに分類される。カラギーナンとしては、カッパ(κ)-カラギーナンが好ましい。
ローカストビーンガムは、主鎖がマンノース、側鎖はガラクトースで構成される、ガラクトマンナンと呼ばれる電荷を持たない水溶性高分子に分類され、ガラクトースとマンノースはランダムに1:4の比率で存在している。なお、この比率が1:3のものをタラガム、1:2のものをグァーガムという。
キサンタンガムは、微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)がブドウ糖などを栄養源として菌体外に分泌した多糖類を、回収・精製して生産される多糖類であり、主鎖が2個のグルコース、側鎖は2個のマンノースと1個のグルクロン酸で構成され、側鎖が主鎖に対し非常に長い構造をしていることから、非常に高い安定性を示すものである。
【0010】
本発明のゲル状浴用組成物は、成分(A)を組成物中0.01重量%~2重量%の範囲で含有していることが好ましく、0.05重量%~1.5重量%の範囲で含有していることがより好ましく、0.1重量%~1重量%の範囲で含有していることが特に好ましい。成分(A)を組成物中0.01重量%より少なく含有する場合は、製剤がゲル状にならないまたは離水など経時安定性が低下する場合があり、2重量%を超えて含有する場合は、ゲル強度が強くなり浴湯中における溶解性が悪化する場合がある。
【0011】
<成分(B)>
本発明のゲル状浴用組成物は、ゲル化助剤として機能する、糖類または糖アルコールから選択される1種以上を成分(B)として含有する。
本発明の成分(B)の糖類には、単糖類、多糖類に区別されるが、これらの中でも、単糖類、二糖類、少糖類が好ましい。単糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースなどが挙げられ、単糖類が2個結合した二糖類としては、例えば、ラクトース、スクロース、マルトース、パラチノース等などが挙げられ、単糖類が数個~10個結合した少糖類はオリゴ糖とも呼称される。
本発明の成分(B)の糖アルコールは、1分子中水酸基を少なくとも5個以上含有するものが好ましく、具体的には、例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトールなどが挙げられる。これらの中でも、キシリトール、ソルビトール、マンニトールが好ましい。
【0012】
本発明のゲル状浴用組成物は、成分(B)を組成物中6重量%~50重量%の範囲で含有していることが好ましく、7重量%~40重量%の範囲で含有していることがより好ましく、8重量%~35重量%の範囲で含有していることが特に好ましい。成分(B)を組成物中6重量%より少なく含有する場合は、製剤がゲル化しなかったり、経時安定性が悪化したりする場合があり、また、50重量%を超えて含有する場合は、浴湯中での溶解性の低下や、ゲル状製剤の感触の低下など使用感が悪化するほか、ゲル強度を適切な範囲に維持することが困難となる場合がある。
【0013】
<成分(C)>
本発明のゲル状浴用組成物は、溶剤として機能する、多価アルコールから選択される1種以上を成分(C)として含有する。
本発明の成分(C)の多価アルコールは、2~4価のアルコールが好ましい。中でも、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソペンチルジオール、1,3-ブチレングリコールなどの2価のアルコールや、グリセリンなどの3価のアルコールがより好ましい。
【0014】
本発明のゲル状浴用組成物は、成分(C)を組成物中3重量%~30重量%の範囲で含有していることが好ましく、5重量%~25重量%の範囲で含有していることがより好ましく、8重量%~20重量%の範囲で含有していることが特に好ましい。成分(C)を組成物中3重量%より少なく含有する場合は、製剤がゲル化せず、30重量%を超えて含有する場合は、浴湯中での溶解性の低下のほか、ゲル強度を適切な範囲に維持することが困難となる場合がある。
【0015】
本発明のゲル状浴用組成物は、成分(B)と成分(C)との併用が、適切なゲル強度を得るために不可欠であり、成分(B)と成分(C)を合計で、組成物中20重量%~50重量%の範囲で含有していることが好ましい。
【0016】
<成分(D)>
本発明のゲル状浴用組成物は、保湿効果を付与するために、炭素数10以上20以下の脂肪酸からなるトリグリセリド(D-1)、炭素数15以上50以下の飽和炭化水素(D-2)、炭素数10以上20以下の脂肪酸(D-3)、カチオン化セルロース(D-4)から選択される1種以上を成分(D)として含有する。
本発明の成分(D)の1つである、炭素数10以上20以下の脂肪酸からなるトリグリセリド(D-1)は、下記にその化学構造を示すとおり、炭素数10以上20以下の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルであり、炭素数10以上20以下の脂肪酸各種が種々の割合に混合された混酸基グリセリドを意味する。なお、脂肪酸における炭素数は、カルボン酸基中の1つの炭素も含めた数を表す。
【化1】
(式中、R
1~R
3は、炭素数9~19の炭化水素基を表す。)
本発明の成分(D-1)は、単独で使用しても良いが、成分(D-1)を主成分として含有する天然油脂を使用しても良い。天然油脂としては、植物性油脂である植物油と植物脂が好ましく、これらの中でも、そのヨウ素価が100以下のものがより好ましい。
本発明の成分(D-1)における好適な植物性油脂としては、具体的に、ババス油、テオブロマグランジフロルム種子油、マンゴー種子油、オリーブ油、ヒマシ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アーモンド油、アマニ油、ブドウ種子油、ゴマ油、エゴマ油、サフラワー油、ダイズ油、アンズ核油、綿実油、ナタネ油等の植物油や、シア脂、カカオ脂、ヤシ油、モクロウ、パーム核油、パーム油等の植物脂が挙げられる。これらの中でも、そのヨウ素価が100以下であるババス油、テオブロマグランジフロルム種子油、マンゴー種子油、オリーブ油、ヒマシ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油や、シア脂、カカオ脂、ヤシ油、モクロウ、パーム核油、パーム油がより好適である。
【0017】
本発明の成分(D)の1つである、炭素数15以上50以下の飽和炭化水素(D-2)としては、例えば、ワセリン、ミネラルオイル、スクワランなどが挙げられる。ワセリンとミネラルオイルは石油系の飽和炭化水素であり、スクワランは深海ザメなどから得られたスクアレンを水素添加して得られる飽和炭化水素である。
本発明の成分(D)の1つである、炭素数10以上20以下の脂肪酸(D-3)は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸いずれでも良い。脂肪酸における炭素数は、カルボン酸基中の1つの炭素も含めた数を表す。具体的には、カプリン酸(炭素数:10)、ラウリン酸(炭素数:12)、ミリスチン酸(炭素数:14)、ペンタデシル酸(炭素数:15)、パルミチン酸(炭素数:16)、パルミトレイン酸(炭素数:16)、マルガリン酸(炭素数:17)、ステアリン酸(炭素数:18)、オレイン酸(炭素数:18)、パクセン酸(炭素数:18)、リノール酸(炭素数:18)、リノレン酸(炭素数:18)、エレオステアリン酸(炭素数:18)、アラキジン酸(炭素数:20)、ミード酸(炭素数:20)、アラキドン酸(炭素数:20)などが挙げられる。中でも、炭素数12以上18以下の脂肪酸が好ましい。
本発明の成分(D)の1つである、カチオン化セルロース(D-4)としては、例えば、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・ヒドロキシエチルセルロース共重合体等が挙げられる。
【0018】
本発明のゲル状浴用組成物において、成分(D)は組成物中2重量%~15重量%の範囲で含有することが好ましい。成分(D)は、組成物中15重量%を超えて含有する場合は、浴湯中でのべたつきなど使用感の悪化のほか、ゲル強度の適切な範囲での維持が困難となるほか、ゲル状浴用組成物が離水などの問題を生じる場合がある。中でも、成分(D)の含有量の上限値は、10重量%以下とすることがより好ましく、8重量%以下とすることがさらに好ましい。また、成分(D)の含有量の下限値は、3重量%以上とすることがより好ましく、4重量%以上とすることがさらに好ましい。成分(D)の含有量が組成物中2重量%より少ないと、保湿剤が皮膚に十分送達されず保湿効果が得られない場合がある。
【0019】
<成分(E)>
本発明のゲル状浴用組成物は、成分(E)として水を含有するものである。使用できる水としては、例えば、精製水、水道水、イオン交換水、蒸留水、ろ過処理した水、滅菌処理した水、地下水、井戸水等が挙げられる。
本発明のゲル状浴用組成物では、成分(E)は成分(A)~(D)の配合量に合わせ全体量を調整する量を使用すればよく、その含有量は、組成物中40重量%~70重量%の範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明のゲル状浴用組成物には、上述した成分(A)~(E)の他に、必要に応じて、当該分野で知られている各種成分(以下「任意成分」と称することもある)を1種または2種以上組み合せて含有することができる。以下に本発明のゲル状浴用組成物に含有することのできる任意成分を例示するが、ここに記載された成分等に限定されないことは言うまでもない。
【0021】
<香料成分・精油成分類>
ハッカ、ユーカリ、レモン、バーベナ、シトロネラ、カヤプテ、サルビア、タイム、クローブ、ローズマリー、ヒソップ、ジャスミン、カモミール、ネロリ、ヨモギ、ペリーラ、マジョラム、ローレル、ジュニパーベリー、ナツメグ、ジンジャー、オニオン、ガーリック、ラベンダー、ベルガモット、クラリーセージ、ペパーミント、バジル、ローズ、プチグレン、シナモン、メース、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ロジノール、オレンジ、アルテミシア、カンフル、メントール、シネオール、オイゲノール、ヒドロキシシトロネラール、サンダルウッド、コスタス、ラブダナム、アンバー、ムスク、α-ピネン、リモネン、サリチル酸メチル、ソウジュツ、ビャクジュツ、カノコソウ、ケイガイ、コウボク、センキュウ、トウヒ、トウキ、ショウキョウ、シャクヤク、オウバク、オウゴン、サンシン、ケイヒ、ニンジン、ブクリョウ、ドクカツ、ショウブ、ガイヨウ、マツブサ、ビャクシ、ジュウヤク、ウイキョウ、チンピ、カミツレ等の精油類、亜硝酸アミル、トリメチルシクロヘキサノール、アリルサルファイド、ノニルアルコール、デシルアルコール、フェニルエチルアルコール、炭酸メチル、炭酸エチル、フェニル酢酸エステル、グアイアコール、インドール、クレゾール、チオフェノール、p-ジクロロベンゼン、p-メチルキノリン、イソキノリン、ピリジン、アブシンス油酢酸、酢酸エステル等の「Perfume and FlaVor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1960)、「香りの百科」,日本香料協会編,朝倉書店(1989)、「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Pajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)、「Perfume and FlaVor Chemicals(aroma chemicals)」,Vols.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「香料と調香の基礎知識」, 中島基貴編著,産業図書(1995)、「合成香料 化学と商品知識」,印藤元一著,化学工業日報社(1996)、「香りの百科事典」,谷田貝光克編,丸善(2005)に記載の香料成分や精油成分が挙げられる。これらの香料成分、精油成分は、1種単独で使用することも、また2種以上を任意に組み合わせて、調合香料として使用することもできる。さらに、溶剤、香料安定化剤等を適宜混合し、香料組成物として使用することもできる。
【0022】
<生薬類>
カミツレ、ガイヨウ、カンピ、ウイキョウ、ケイガイ、ケイヒ、ショウキョウ、チンピ、センキュウ、ショウブ、トウキ、トウヒ、ドクダミ、トウガラシ、シラカバ、ゴボウ、ニンジン、ニンニク、チョウジ、ローズマリー、ユズ、タイム等が挙げられる。これらは抽出液として含有しても良い。
<酵素類>
トリプシン、α-キモトリプシン、ブロメライン、パパイン、プロテアーゼ、プロクターゼ、セラチオペプチダーゼ、リゾチーム、ペプシン等が挙げられる。
<色素類>
青色1号、青色2号、赤色102号、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、緑色3号、緑色201号、緑色204号、橙色205号等の法定色素、クロロフィル、リボフラビン、アンナット、アントシアニン等の天然色素等が挙げられる。
<ビタミン類およびその誘導体>
ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンH、パントテン酸、ニコチン酸またはその誘導体、ビタミンEニコチン酸エステル、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、保湿成分や酸化防止剤としても含有することができる。
【0023】
<海藻抽出物類>
アナアオサ、ミル、ウスバアオノリ、ヒトエグサ、スジアオノリ、カサノリ、ヘライワヅタ、ハネモ、ナガミル等の緑藻植物、ウミウチワ、アミジグサ、モズク、イロロ、マツモ、イワヒゲ、ハバノリ、ウルシグサ、カジメ、マコンブ、ワカメ、トロロコンブ、ヒジキ、アラメ、ホンダワラ、ウミトラノオ等の褐藻植物、マルバアマノリ、アサクサノリ、スサビノリ、ウミゾウメン、ヒラクサ、マクサ、トリアシ、ハナフノリ、フクロフノリ、トサカノリ、トゲキリンサイ、アカバギンナンソウ、コトジツノマタ、ツノマタ、アヤニシキ、マクリ、エゴノリ、オゴノリ、イバラノリ等の紅藻植物等から得られる抽出物等が挙げられる。これらは、保湿成分としても含有することができる。
<植物抽出物類>
アロエ抽出物、緑茶抽出物、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス、コンフリーエキス、ユーカリエキス、ローヤルゼリーエキス、レモン抽出液、ローズヒップ抽出液、モモの葉エキス等が挙げられる。抽出方法に特に制限はない。これらは、保湿成分としても含有することができる。
<界面活性剤>
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;石けん用素地、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。本発明のゲル状浴用組成物において、本発明の効果を妨げない範囲おいて界面活性剤を配合することに問題はない。本発明のゲル状浴用組成物は、基本的に界面活性剤を配合せずとも、成分(A)~(E)を安定して保持し適切なゲル強度が得られるため、界面活性剤は配合しないことが好ましい場合がある。
【0024】
<退色防止剤>
グリシン、アラニン、グルタミン酸などのアミノ酸;サリチル酸およびその塩等が挙げられる。
<pH調整剤>
リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
<防腐剤>
イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ジクロロイソシアヌル酸、銀ゼオライト、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、塩化クロルヘキシジン、ヒノキチオール、フェノールおよびその誘導体等が挙げられる。
上述した任意成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定すればよい。
【0025】
<本発明のゲル状浴用組成物>
本発明のゲル状浴用組成物は、25℃におけるゲル強度が0.001~0.2kgfの範囲内にあることが好ましく、0.003~0.15kgfの範囲内であることがより好ましく、0.005~0.12kgfの範囲内であることが特に好ましい。
本発明におけるゲル強度は、容器(底面直径63mm/天面直径72mm×高さ27mm、ポリプロピレン製)に本発明のゲル状浴用組成物を充填して作成した試験検体を、25℃環境下において、試験検体の天面中央部を速度40mm/分、直径8mmのプランジャーで押圧し、4mm押し下げるのに必要な荷重を意味する。
【0026】
<本発明のゲル状浴用組成物の製造方法>
本発明のゲル状浴用組成物は、下記工程(1)~(5)により製造するものである。
工程(1):成分(E)に成分(B)を撹拌しながら添加し混合する工程
工程(2):成分(C)に成分(A)を分散させる工程
工程(3):工程(1)により得られた混合物に、工程(2)により得られた分散物を添加し混合する工程
工程(4):工程(3)により得られた混合物を75~90℃まで加温したのち、55~70℃まで放冷する工程
工程(5):工程(4)により得られた混合物に、成分(D)を撹拌しながら添加し混合する工程
上記工程(5)により得られた混合物がゲル化する前に、容器に充填する工程(6)を経て、これを冷却前または後に容器上面を密閉フィルム等のフタ部を形成する工程(7)を設けてもよい。
【実施例】
【0027】
以下に実施例において本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
<試験検体の製造方法>
成分(E)に成分(B)を撹拌しながら添加して混合液Iを、また、成分(C)に成分(A)を分散させた分散液IIを、それぞれ得た。混合液Iに分散液IIを添加して混合し、75~90℃の範囲に加温したのち、55~70℃まで放冷して得られた溶液IIIに、香料を分散させた成分(D)を添加、撹拌して溶液IVを得た。この溶液IVに、防腐剤等のその他成分を添加、撹拌して最終溶液Vを得た。
最終溶液V40gがゲル化する前に、容器(底面直径63mm/天面直径72mm×高さ27mm、ポリプロピレン製)に充填し、フィルム(PET/AL蒸着PET/CPP)密閉後、固化するまで室温(25℃)で静置して、容器に充填された試験検体を得た。
【0029】
以下の例における、各「評価方法」について、説明する。
<評価1:ゲル化可否の評価>
上記「試験検体の製造方法」において得られた容器に充填された試験検体を容器から取り出し、その試験検体を目視し、下記評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
〇:完全にゲル化し、固体として保持している状態
×:適切にゲル化していない状態(例えば、分離、表面に離液/離水や析出物、固体として保持できない)
【0030】
<評価2:ゲル強度の評価試験方法>
上記「試験検体の製造方法」において得られた容器に充填された試験検体を容器から取り出し、その試験検体のゲル強度を、ゼリー強度(ブルーム値)の評価方法に準じて3回測定し、その平均値を採用した。
測定機器:オートグラフAGS-5kNX(島津製作所(株)製)
試験力計測:ロードセル(1kN)
端子:直径8mm、長さ100mmの円筒状金属端子
負荷速度:40mm/分
測定点:試験検体表面から侵入距離4mmの応力(kgf)を測定
試験検体温度:25℃
試験環境温度:25℃
【0031】
<評価3:溶解性の評価>
上記「試験検体の製造方法」において得られた容器に充填された試験検体を容器から取り出し、その試験検体の天面中央部から底面方向に切り出した1cm3の試験検体小片を、40℃の湯200mLに入れて撹拌(666rpm)し、40℃下で当該試験検体小片が完全に溶解するまでの時間を測定した。この評価試験は2回実施し、測定時間の平均値を、下記評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
◎:15分以上20分未満で完全溶解する
〇:15分未満、または20分以上30分未満で完全溶解する
×:完全溶解まで30分以上を要する
【0032】
<評価4:経時安定性の評価>
上記「試験検体の製造方法」において得られた容器に充填された試験検体を50℃の恒温槽で1カ月間保管し、保管後の試験検体を目視により、下記評価基準に基づき評価した。この評価試験は2回実施し、その評価結果は2回とも同じであることを確認した。
[評価基準]
〇:保管前と変化なし
×:保管前と変化した状態(例えば、分離、表面に離液/離水や析出物、固体として保持できない)
【0033】
<成分(A)の評価試験:参考例1~5>
本発明のゲル状浴用組成物の組成検討に先立ち、ゲル状浴用組成物のゲル化剤として、どのような成分が好適であるか確認する試験を行った。
[試験検体の調製]
下記表1に示す組成に基づき、上記「試験検体の製造方法」に従い、本発明の成分(D)を含有しない参考例1~5の試験検体を調製し、上記評価1~4の評価を行った。
下記表1に、参考例1~5の組成とそれぞれの評価結果をまとめて示す。なお、表1中の数字は重量%を表す。
また、表1中に総合評価として、上記評価1~4の評価結果の内、評価1、3、4の評価項目において「〇」もしくは「◎」の評価であり、かつ、ゲル強度が0.001~0.2kgfの範囲内である場合は「〇」と、それ以外の場合は「×」と表記した。
【0034】
【0035】
表1に示すとおり、ゲル状浴用組成物のゲル化剤としては、カラギーナン等の海藻由来、ローカストビーンガム等の植物種子由来、キサンタンガム等の微生物由来の多糖類であれば、評価1~4の評価項目において良好な結果を示し、適用可能であることが確認された。参考例1~4以外の多くの組成検討の結果(記載省略)、カラギーナンとローカストビーンガムの組合せ、キサンタンガムとローカストビーンガムの組合せが、ゲル状浴用組成物のゲル化剤として好適であることも確認された。
一方、動物由来のゲル化剤であるゼラチンは、経時安定性が悪く、ゲル状浴用組成物のゲル化剤として好ましくないことが明らかとなった。
【0036】
<成分(D)の評価試験:実施例1~15、比較例1~3>
本発明のゲル状浴用組成物として、上記参考例1の試験検体に公知の保湿剤であるホホバ種子油を添加した(比較例2)ところ、液分離しゲル状浴用組成物にはできないことが判明した。そこで、各種公知の保湿剤を添加した試験検体を調製し、上記評価1~4の評価を行った。
下記表2に、実施例1~15、比較例1~3の組成とそれぞれの評価結果をまとめて示す。なお、表2中の数字は重量%を表す。
また、上記と同様の総合評価を、表2中に示した。
【0037】
【0038】
表2に示すとおり、特定の保湿成分を特定量含有する実施例1~15の本発明のゲル状浴用組成物は、評価1~4の評価項目において良好な結果を示すことが明らかとなった。詳しくは、シア脂、ババス油、テオブロマグランジフロルム種子脂、カカオ脂、マンゴー種子油、オリーブ油、ナタネ油等の炭素数10以上20以下の脂肪酸からなるトリグリセリド、スクワラン、ミネラルオイル等の炭素数15以上50以下の飽和炭化水素、ラウリン酸、オレイン酸等の炭素数10以上20以下の脂肪酸、ポリオクタニウム-10等のカチオン化セルロースを含有する本発明のゲル状浴用組成物は、適度なゲル強度を有し、かつ、経時安定性や浴湯溶解性に優れるゲル状の入浴剤であることが明らかとなった。
一方、保湿剤として汎用されるミツロウやホホバ種子油を含有する比較例1、2や、本発明の成分(D)の脂肪酸と炭素数が相違するベヘニン酸を含有する比較例3のゲル状浴用組成物は、油分離や液分離して適切にゲル化しないことが確認された。
【0039】
<成分(B)の評価試験:実施例16~23、比較例4>
本発明のゲル状浴用組成物として、成分(B)を各種変更した試験検体を調製し、上記評価1~4の評価を行った。
下記表3に、実施例16~23、比較例4の組成とそれぞれの評価結果をまとめて示す。なお、表3中の数字は重量%を表す。
また、上記と同様の総合評価を、表3中に示した。
【0040】
【0041】
表3に示すとおり、本発明の成分(B)である糖類または糖アルコールから選択される1種以上を含有する実施例16~23のゲル状浴用組成物は、評価1~4の評価項目において良好な結果を示すことから、適度なゲル強度を有し、かつ、経時安定性や浴湯溶解性に優れることが明らかとなった。
一方、本発明の成分(B)である糖類または糖アルコールから選択される1種以上を含有しない比較例4のゲル状浴用組成物は、適切にゲル化しないことも確認された。
【0042】
<成分(C)の評価試験:実施例24~29、比較例5>
本発明のゲル状浴用組成物として、成分(C)を各種変更した試験検体を調製し、上記評価1~4の評価を行った。
下記表4に、実施例24~29、比較例5の組成とそれぞれの評価結果をまとめて示す。なお、表4中の数字は重量%を表す。
また、上記と同様の総合評価を、表4中に示した。
【0043】
【0044】
表4に示すとおり、本発明の成分(C)である多価アルコールを含有する実施例24~29のゲル状浴用組成物は、評価1~4の評価項目において良好な結果を示すことから、適度なゲル強度を有し、かつ、経時安定性や浴湯溶解性に優れることが明らかとなった。
一方、本発明の成分(C)である多価アルコールを含有しない比較例5のゲル状浴用組成物は、適切にゲル化しないことも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のゲル状浴用組成物は、特定の油性の保湿剤を選択することで、油性の保湿剤を多く含有しているにも関わらず、適度なゲル強度を有し、離水などの問題もなく経時安定性に優れているため、保管時および輸送時にゲルの割れ等の破損が生じることがなく、優れた保形性を発揮する。しかも、浴湯中における溶解性にも優れるという効果を発揮する。すなわち、本発明のゲル状浴用組成物は、経時安定性と浴湯における溶解性の両立が図られており、極めて有用である。