(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】導電性特徴部を有するガラス組立体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20241119BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20241119BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241119BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C03C27/12 M
B32B17/06
B60J1/00 B
B60S1/02 300
C03C27/12 R
(21)【出願番号】P 2023112546
(22)【出願日】2023-07-07
【審査請求日】2023-07-07
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519196036
【氏名又は名称】エージーシー オートモーティヴ アメリカズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジャンピン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル スミス
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ディー.ペック
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック マウリス シャイブル, サード
(72)【発明者】
【氏名】アブデルハリム モハマッド
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エー. イメソン
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0059644(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0243796(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02750419(FR,A1)
【文献】欧州特許第01644295(EP,B1)
【文献】特表2017-500271(JP,A)
【文献】特開2018-159128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 1/00 - 43/00
B60S 1/02
B60J 1/00
C03C 17/00 - 17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導電線を含む導電性特徴部を有するガラス組立体を製造する方法であって、
第1の湾曲ガラス基板を形成するステップ
であって、前記第1の湾曲ガラス基板は、外側(P1)表面と、対向する内側(P2)表面とを有する、ステップと、
第2の湾曲ガラス基板を形成するステップであって、前記第2の湾曲ガラス基板は、内側(P3)表面と、対向する外側(P4)表面とを有する、ステップと、
マスクを使用せずに、
前記P2表面および前記P3表面の少なくとも一つに導電性インクをデジタル的に設置するステップと、
前記導電性インクを硬化させて、
前記P2表面および前記P3表面の少なくとも一つに導電性特徴部を形成するステップ
であって、前記導電性特徴部は、単位インチ当たり200ドットよりも大きな解像度を有する、ステップと、
前記第1の湾曲ガラス基板の前記P2表面と前記第2の湾曲ガラス基板の前記P3表面の間に、ポリマー中間層を設置するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの導電線は、前記ガラス組立体の少なくとも一部に熱を付与するように構成された加熱素子を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱素子は、前記ガラス組立体に取り付けられた光学センサの視野と整列され、前記光学センサの前記視野に対応する前記ガラス組立体の少なくとも一部が加熱され、
前記ガラス組立体は、前記光学センサの前記視野内で100ミリディオプター未満の光学歪みを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの導電線は、540キロヘルツから6ギガヘルツの周波数を有する無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナを画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの導電線は、50マイクロメートル未満の線幅を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの導電線は、無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナを画定し、
前記アンテナは、
前記P2表面および前記P3表面の1つの上の第1のアンテナ部分と、
前記P1表面、前記P2表面、前記P3表面、および前記P4表面の1つの上の第2のアンテナ部分と、
を有し、
前記第2のアンテナ部分は、前記第1のアンテナ部分とは異なる表面上にある、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性インクをデジタル的に設置するステップは、さらに、前記導電性インクをインクジェット印刷するステップを有し、および/または
前記導電性インクは、熱劣化温度を有し、前記導電性インクを硬化させて前記導電性特徴部を形成するステップは、前記導電性インクの前記熱劣化温度よりも低い温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性インクは、金属-有機錯体を含み、前記導電性インクが熱硬化され、前記導電性特徴部が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記導電性インクを硬化させて、前記導電性特徴部を形成するステップは、UV硬化装置により前記導電性インクを光硬化させるステップを有し、および/または
前記導電性インクを硬化させるステップは、前記導電性インクをデジタル的に設置するステップの後、5秒以内に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらに、
プリントヘッドおよび硬化装置を有するロボットアプリケータを提供するステップと、
前記ロボットアプリケータを前記湾曲ガラス基板の前記表面に隣接して配置するステップと、
を有し、
前記導電性インクをデジタル的に設置するステップは、前記ロボットアプリケータが前記湾曲ガラス基板の前記表面に沿って移動する際に、マスクを使用せずに、前記湾曲ガラス基板の表面に、前記ロボットアプリケータの前記プリントヘッドから前記導電性インクをデジタル的に設置するステップを有し、
前記導電性インクを硬化させて、前記導電性特徴部を形成するステップは、前記ロボットアプリケータが前記湾曲ガラス基板の前記表面に沿って移動する際に、前記ロボットアプリケータの前記硬化装置を作動させ、前記デジタル的に設置された導電性インクを硬化させるステップを有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年7月8日に出願された米国特許出願第17/860,576号に対する優先権を主張するものであり、この出願は、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、全般に、ガラス組立体およびガラス組立体を製造する方法に関し、より詳細には、導電性特徴部を有するガラス組立体および導電性特徴部を有するガラス組立体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車に関して使用されるガラス組立体は、しばしば、導電性特徴部を有する。これらの導電性特徴部は、ガラス組立体の少なくとも一部にエネルギーを提供して、霜取りおよび/またはデフロストするように構成された加熱素子と、無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナと、を有する。通常、これらの導電性特徴部は、しばしば導電性粒子およびセラミックフリットを有する、導電性ペーストを平坦ガラス基板上に堆積させ、その後、500℃を超える温度でガラス基板を焼成して、導電性ペーストをガラス基板に融着させることにより、形成される。溶融した導電性ペーストを有するガラス基板は、通常、600℃を超える温度で焼成され、ガラス基板が所望の形状に曲げられる。問題として、導電性ペーストを含むガラス組立体がこのような高温で焼成された際、導電性ペーストを含むガラス組立体の部分では、導電性ペーストを含まないガラス組立体の残りの部分とは異なる熱吸収が生じる。例えば、導電性ペーストを含むガラス組立体の一部は、焼成の間、650℃の温度となる一方、(導電性ペーストを含まない)残りのガラス組立体は、焼成中に640℃の温度となる。従って、導電性ペーストを含むガラス組立体の部分は、導電性ペーストを含まない残りのガラス組立体よりも軟化性を有する。導電性ペーストを含むガラス組立体の部分とガラス組立体の残りの部分との異なる軟化性により、ガラス組立体の各部分に異なる変形が生じ、これにより、ガラス組立体に大きな光学歪みが生じるとともに、ガラス組立体の強度に影響が生じる。この光学歪みは、カメラおよびLIDARセンサを有する半自律的または自律的な駆動に使用される光学センサの特性に大きな悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、導電性ペーストを堆積するための従来のアナログ印刷プロセス(例えば、スクリーン印刷、マスクによるスプレー印刷など)では、一般に、最大約200ドット/インチの解像度に制限されるとともに、通常、マスクが必要となる。一例として、従来のスクリーン印刷プロセスでは、印刷されるべき所望の領域に対応する空隙を画定するマスク(すなわち、「スクリーン」)が、基板の上部に配置される。導電性ペーストは、ローラ、スキージ、ブラシ、スプレー等の手動プロセスにより、マスクの上に堆積される。これらの手動プロセスでは、しばしば、マスクの全ての空隙が適切に充填されるように、マスクの上に過剰な導電性ペーストを堆積させる必要がある。また、従来のアナログ印刷プロセスは、通常、平坦な基板上で実施される。湾曲基板では、正確に繰り返し印刷することが難しいためである。
【0005】
上記に鑑み、導電性特徴部を有するガラス組立体を製造する改良された方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、少なくとも1つの導電線を有する導電性特徴部を有するガラス組立体を製造する方法を有する。また当該方法は、湾曲ガラス基板を形成するステップを有する。また当該方法は、マスクを使用せずに、湾曲ガラス基板の表面に導電性インクをデジタル的に設置するステップを有する。当該方法は、さらに、導電性インクを硬化させて、湾曲ガラス基板の表面に導電性特徴部を形成するステップを有し、導電性特徴部は、単位インチ当たり200ドット超の解像度を有する。有意には、湾曲ガラス基板を形成するステップの後、導電性インクをデジタル的に設置することにより、従来の導電性ペーストを含むガラス組立体を焼成することにより生じる光学歪みを防止することができる。さらに、導電性インクをデジタル的に設置するステップにより提供される精密な制御により、導電性インクは、従来のアナログ印刷プロセスよりも有意に厳しい公差で堆積され、より精細な特徴部を形成することができる。
【0007】
本開示の利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を参照することにより、容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】湾曲ガラス基板を形成するステップの概略的な断面図である。
【
図3A】湾曲ガラス基板に導電性インクをデジタル的に設置し、導電性インクを硬化させて導電性特徴部を形成するステップの概略的な正面図である。
【
図4A】導電性特徴部を有するガラス組立体の実施例の概略的な断面図である。
【
図4B】導電性特徴部を有するガラス組立体の実施例の概略的な断面図である。
【
図4C】導電性特徴部を有するガラス組立体の実施例の概略的な断面図である。
【
図5】第1の湾曲ガラス基板と第2の湾曲ガラス基板の間にポリマー中間層を配置するステップの概略的な断面図である。
【
図6A】導電性特徴部を有する合わせガラス組立体の一例の概略的な断面図である。
【
図6B】導電性特徴部を有する合わせガラス組立体の一例の概略的な断面図である。
【
図6C】導電性特徴部を有する合わせガラス組立体の一例の概略的な断面図である。
【
図6D】導電性特徴部を有する合わせガラス組立体の一例の概略的な断面図である。
【
図7】加熱素子を画定する導電性特徴部を含むリアガラス組立体を有する車両の後方斜視図である。
【
図8A】
図7のガラス組立体の線8-8に沿った一例の概略的な断面図である。
【
図8B】
図7のガラス組立体の線8-8に沿った一例の概略的な断面図である。
【
図9】加熱素子を画定する導電性特徴部を含むフロントガラス組立体を有する車両の正面図である。
【
図10A】
図9のガラス組立体の線10-10に沿った一例の概略的な断面図である。
【
図10B】
図9のガラス組立体の線10-10に沿った一例の概略的な断面図である。
【
図11】アンテナを画定する導電性特徴部を含むリアガラス組立体を有する車両の後方斜視図である。
【
図12A】
図11のガラス組立体の線12-12に沿った一例の概略的な断面図である。
【
図12B】
図11のガラス組立体の線12-12に沿った一例の概略的な断面図である。
【
図12C】
図11のガラス組立体の線12-12に沿った一例の概略的な断面図である。
【
図13】アンテナを画定する導電性特徴部を含むフロントガラス組立体を有する車両の正面図である。
【
図14A】
図13のガラス組立体の線14-14に沿った一例の概略的な断面図である。
【
図14B】
図13のガラス組立体の線14-14に沿った一例の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各種図面において、同様のまたは等しい部材には、同様の参照符号が使用されている。図面を参照すると、
図1には、少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26を有するガラス組立体20を形成する方法100を概略的に示す。一例では、ガラス組立体20は、自動車の文脈で、フロントガラス、サイドウインドウ、クオータウインドウ、リアウインドウ等のような車両18のウインドウとして使用されてもよい。例えば、
図7および
図11には、方法100に従って形成された、少なくとも1つの導電線27を有含む導電性特徴部26を有するリアガラス組立体20を有する車両18を示す。
図9および
図13には、方法100に従って形成された、少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26を有するフロントガラス組立体20を有する車両18を示す。当然のことながら、ガラス組立体20を形成する方法100は、自動車以外の文脈であってもよいことが理解される。
【0010】
図1乃至
図3Bを参照すると、ガラス組立体20を形成する方法100は、湾曲ガラス基板22を形成するステップS1と、マスクを使用せずに、湾曲ガラス基板22の表面に導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2と、導電性インクCIを硬化させて、湾曲ガラス基板22の表面に少なくとも1つの導電線27を有する導電性特徴部26を形成するステップS3と、を有し、前記導電性特徴部26は、単位インチ当たり200ドットを超える解像度を有する。方法100のステップS1、S2、S3の各々の説明は、以降にさらに詳細に記載される。
【0011】
前述のように、方法100のステップS1は、湾曲ガラス基板22を形成するステップを有する。
図2を参照すると、湾曲ガラス基板22は、外表面(P1)、および該外表面に対向する内表面(P2)を有するように形成されてもよい。一例では、ガラス組立体20が車両18に取り付けられた際、P2表面は、車両18の内部に対向するように配置され、ガラス組立体20が車両18に取り付けられた際、P1表面は、車両18から外方に対向するように配置されてもよい。
【0012】
引き続き
図2を参照すると、ステップS1の一例では、湾曲ガラス基板22は、最初に、平板ガラスシート22Fとして形成される。平坦ガラスシート22Fは、これに限られるものではないが、フロート法を含む任意の好適な板ガラス製造法を用いて製造されてもよい。平坦ガラスシート22Fは、これに限られるものではないが、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウアルミノケイ酸塩ガラスなどを含む、任意の好適なガラス組成物で構成されてもよい。
【0013】
引き続き
図2を参照すると、平坦ガラスシート22Fの形成の後、平坦ガラスシート22Fが曲げられ、湾曲ガラス基板22が形成される。平坦ガラスシート22Fは、これに限られるものではないが、プレス曲げ、重力曲げ(すなわち撓み曲げ)、ロール成形、または冷間曲げを含む、任意の好適なガラス曲げプロセスを用いて曲げられてもよい。平坦ガラスシート22Fは、所望の用途に適した任意の形状に曲げられてもよい。
【0014】
ステップS1の他の例では、湾曲ガラス基板22は、平坦ガラスシート22Fを製造し、その後湾曲させる方法ではなく、最初から湾曲した基板として形成される。湾曲ガラス基板22は、これに限られるものではないが、ガラスブロー成形法を含む、任意の好適な湾曲ガラス製造プロセスを使用して、製造されてもよい。前述の平坦ガラスシート22Fと同様、湾曲ガラス基板22が最初に形成されるこの実施例では、湾曲ガラス基板22は、これに限られるものではないが、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウアルミノケイ酸塩ガラスなどを含む、任意の好適なガラス組成物から構成されてもよい。
【0015】
いくつかの例では、ガラス組立体20は、合わせガラス組立体20として形成される。これらの実施例では、合わせガラス組立体20は、外表面(P1)および対向する内表面(P2)を有する湾曲ガラス基板22(「第1の湾曲ガラス基板22」とも称される)、内表面(P3)および対向する外表面(P4)を有する第2の湾曲ガラス基板24、ならびにP2表面とP3表面の間に配置されたポリマー中間層28(以下、さらに詳細に説明する)を有する。従って、合わせガラス組立体20に関し、方法100のステップS1は、さらに、湾曲した第2のガラス基板24を形成するステップを有してもよい。第2の湾曲ガラス基板24は、第1の湾曲ガラス基板22に関して前述したプロセスのいずれかに従って形成されてもよいことが理解される。また、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24は、いっしょに形成されてもよく(すなわち、相互に隣接して配置して曲げられる)、または別個に形成されてもよいことが理解される。第1の湾曲ガラス基板22と同様、第2の湾曲ガラス基板24は、これに限られるものではないが、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ホウアルミノケイ酸塩ガラスなどを含む、任意の好適なガラス組成物から構成されてもよい。第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24は、同じまたは異なるガラス組成から構成されてもよい。
【0016】
有意には、湾曲プロセスの間、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、特に歪みを最小化することが重要となるガラス組立体20の一部(例えば、光学センサの視野)に、セラミックフリットを含む従来の導電性ペーストを含まなくてもよい。従って、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、従来の導電性ペーストを含む基板に比べてより均一に熱を吸収し、これにより、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の不均一な変形(すなわち、光学歪み)が抑制される。代わりに、ステップS2およびS3の文脈で後述するように、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に、導電性インクCIが設置、硬化され、ステップS1の後に導電性特徴部26が形成される。
【0017】
いくつかの例では、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、透明である。この文脈において、「実質的に透明」とも称される、「透明」という用語は、所定の可視光の範囲において、光の70%以上の透過が可能となる材料を表す。特に断らない限り、所定の可視光の範囲は、人の目が見ることができる電磁スペクトルのセグメントである。より簡単には、この範囲の波長は、可視光と呼ばれる。通常、人間の眼は、約380から約780ナノメートルの波長を検出することができ、従って、本願に記載される所定の可視光の範囲は、特に断らない限り、約380から約780ナノメートルの光の波長を表す。いくつかの例では、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、湾曲ガラス基板の透過性を変化させる各種添加剤を含む。例えば、添加剤は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24を、前述のような「透明」または「実質的に透明」に維持しつつ、各種レベルの着色または配色を提供してもよい。
【0018】
他の例では、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24は、前述のものよりも透明性が低い。例えば、ガラス組立体20がプライバシーガラスである場合、ガラス組立体20の透明性は、実質的に低下し、従って、ガラス組立体20は、所定の波長範囲において、70%未満の光透過率が可能となり、例えば、所定の波長範囲において、0から70%を超える光透過率が可能となる。
【0019】
湾曲ガラス基板22は、厚さT1を有する。湾曲ガラス基板22の厚さT1は、用途に適した厚さであってもよい。例えば、自動車ウインドウ用途では、湾曲ガラス基板22の厚さT1は、約0.3mmから約4.1mmであってもよい。より具体的には、厚さT1は、約0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、3.0mm、3.1mm、3.2mm、3.3mm、3.4mm、3.5mm、3.6mm、3.7mm、3.8mm、3.9mm、4.0 mm、または4.1mmであってもよい。
【0020】
同様に、合わせガラス組立体20に関して、第2の湾曲ガラス基板24は、厚さT2を有する。第2の湾曲ガラス基板24の厚さT2は、用途に適した任意の好適な厚さであってもよい。例えば、自動車用合わせガラスの用途では、第2の湾曲ガラス基板24の厚さT2は、約0.3mmから約4.1mmであってもよい。より詳細には、厚さT2は、約0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、3.0mm、3.1mm、3.2mm、3.3mm、3.4mm、3.5mm、3.6mm、3.7mm、3.8mm、3.9mm、4.0mm、または4.1 mmであってもよい。厚さT1および厚さT2は、同じであっても、異なってもよいことが理解される必要がある。一例では、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24は、ガラス組立体20が「対称」な積層体とみなされるように、同じ厚さ(すなわち、T1はT2に等しい)を有する。しかしながら、別の例では、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24は、ガラス組立体20が「非対称」な積層体とみなされるような、異なる厚さを有する(すなわち、T1はT2に等しくない)。上記の例示的なT1およびT2の値の全ての組み合わせ、およびそれらの間の全ての値が考慮される。
【0021】
方法100のステップS2は、マスクを使用せずに、湾曲ガラス基板22の表面に導電性インクCIをデジタル的に設置するステップを有する。例えば、
図3A乃至
図3Bには、湾曲ガラス基板22のP2表面に、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップを示す。特に、通常、ステップS2でデジタル的に設置される際、導電性インクCIは、液体である。しかしながら、導電性インクCIは、これに限られるものではないが、粉末の形態を含む、他の形態でも適用可能であることが理解される必要がある。また、導電性インクCIは、セラミックフリットを含まなくてもよく、従って、いくつかの例では、ガラス組立体20は、セラミックフリットを含まなくてもよい。以下にさらに詳細に説明するように、方法100は、導電性インクCIを硬化させて導電性インクCIを固化し、導電性特徴部26を形成するステップS3を有する。
【0022】
「デジタル的に設置する」という用語は、従来のアナログ印刷プロセスとは対照的に、導電性インクCIの設置がデジタル的に制御され、デジタルベース画像に従って基板に導電性インクCIが堆積される、任意の好適な設置プロセスを表す。導電性インクCIをデジタル的に設置する例示的なプロセスには、これに限られるものではないが、インクジェット印刷、電気流体力学的印刷、レーザ印刷などが含まれる。特に、方法100のステップS2に従って導電性インクCIをデジタル的に設置することにより提供される精密な制御のため、導電性インクCIは、従来のアナログ印刷プロセスに比べて十分に高い解像度で堆積され得る。例えば、導電性インクCIは、200ドット/インチ超、300ドット/インチ超、400ドット/インチ超、500ドット/インチ超、600ドット/インチ超、700ドット/インチ超、800ドット/インチ超、900ドット/インチ超、1000ドット/インチ超、1100ドット/インチ超、1200ドット/インチ超、1300ドット/インチ超、1400ドット/インチ超、1500ドット/インチ超、1600ドット/インチ超、1700ドット/インチ超、1800ドット/インチ超、1900ドット/インチ超、2000ドット/インチ超、2100ドット/インチ超、2200ドット/インチ超、2300ドット/インチ超、2400ドット/インチ超、2500ドット/インチ超、または2600ドット/インチ超の解像度で、湾曲ガラス基板22の表面にデジタル的に設置されてもよい。
【0023】
従って、ステップS2のデジタル設置プロセスのより高い解像度および正確な制御により、導電性インクCIを堆積させ、従来のアナログ印刷プロセスに比べて有意に精細な特徴部を形成し、有意に厳しい公差が達成されてもよい。換言すれば、「より精細な」特徴部は、従来のアナログ印刷プロセスで達成可能なものに比べて、より小さな幾何学的形状(例えば、少なくとも1つの導電線27のより短い幅W)を有する導電性特徴部26の部材を形成するステップを有してもよい。また、スクリーン印刷のような従来のアナログ印刷プロセスを用いた場合、導電性特徴部は、+/-1.5ミリメートルの許容誤差内でしか反復可能に配置されない。一方、方法100のステップS2に従って、導電性インクCIをデジタル的に設置することにより提供される精密な制御のため、導電性特徴部26は、従来のアナログスクリーン印刷プロセスに比べて、生産の際に、より反復可能に配置され得る。例えば、ステップS2のデジタル設置プロセスを使用した場合、導電性特徴部26は、+/-0.1ミリメートルの許容誤差内で反復可能に配置され得る。
【0024】
また、導電性インクCIをデジタル的に設置する場合、従来のアナログ印刷プロセスでは一般に必要とされる、マスクが不要となることは注目に値する。例えば、
図3Aおよび
図3Bに示すように、方法100のステップS2に従って導電性インクCIをデジタル的に設置する場合、導電性インクCIは、デジタルベース画像に従って、湾曲ガラス基板22の表面に直接堆積され、マスクの必要性が排除され、マスクを使用する従来のアナログ印刷で必要となる余分なインクよりも少ないインクが使用される。さらに、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップにより提供される改善された制御により、従来のアナログ印刷プロセスで可能な層よりも十分に薄い層として、導電性インクCIをデジタル的に設置することが可能となる。一例として、導電性インクCIは、湾曲ガラス基板22の表面に、0.1マイクロメートル超、15マイクロメートル未満の厚さを有してもよい。また、導電性インクCIは、可変の厚さでデジタル的に設置され、硬化され、可変の厚さを有する導電性特徴部26が形成されてもよいことが考慮される。
【0025】
さらに、本方法100により導電性インクCIをデジタル的に設置するステップは、従来のアナログ印刷プロセスよりも有意である。デジタル設置プロセスを制御するために使用されるデジタルベース画像は、迅速かつ電子的に変更することができる一方、従来のアナログ印刷プロセスの設計を変更する場合、新しい物理的な印刷ツール(スクリーン印刷のスクリーン版など)を生産する必要が生じるからである。従って、本方法100のステップS2による導電性インクCIをデジタル的に設置するステップにより、新しいアナログ印刷ツールを製造する代わりに、単にデジタルベース画像を変更することにより、導電性特徴部26の多くの異なる配置の迅速なプロトタイプ化が可能となる。これは、アンテナ(以下に記載)として形成された導電性特徴部26を開発する際に特に有意である。なぜなら、方法100に従って、導電性インクCIをデジタル的に設置することにより、各想定されるアンテナ設計に対して、独自のアナログ印刷ツール(例えば、スクリーン)を発注する必要がなくなるからである。従って、アンテナ(および他の導電性特徴部26)の開発時間およびコストは、実質的に低減され得る。
【0026】
合わせガラス組立体20に関し、方法100のステップS2は、第1の湾曲ガラス基板22のP1表面、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面、および第2の湾曲ガラス基板24のP4表面の少なくとも1つに、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップを有してもよい。導電性インクCIは、前述の任意のデジタル設置プロセスに従って、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の少なくとも1つにデジタル的に設置されてもよいことが理解される必要がある。導電性インクCIは、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の任意の組み合わせに設置されてもよいことが考慮される。
【0027】
特に、導電性インクCIは、設置される基板上で、焼成されるのではなく、固化されるため、導電性インクCIは、セラミックフリットを含む従来の導電性ペーストのように基板に融着しない。有意には、方法100に従って形成されたガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24に導電性インクCIを融着するために焼成されないため、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の強度は、影響を受けない。ただし、導電性インクCIは、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24に融着しないため、導電性特徴部26は、セラミックフリットを含む導電性ペーストを用いて形成される従来の導電性特徴部と比べて、脆い可能性がある。従って、いくつかの例では、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面および第2の湾曲ガラス基板24のP3表面の少なくとも1つに、導電性インクCIをデジタル的に設置することが有意であり、これにより、ガラス組立体20(以下、ステップS4の文脈で説明する)の積層の際に、導電性特徴部26がガラス組立体20内に挟まれ、第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24により、導電性特徴部26が周囲の環境から保護される。
【0028】
一例では、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2は、湾曲ガラス基板22の表面に導電性インクCIをインクジェット印刷するステップを有する。一般に、「インクジェット印刷」という用語は、デジタル制御されたプリントヘッドがデジタルベース画像に従って、基板にインクの液滴を推進する印刷プロセスを表す。インクジェット印刷プロセスの例には、これに限られるものではないが、連続インクジェット印刷、サーマルインクジェット印刷、ピエゾインクジェット印刷、ドロップオンデマンドインクジェット印刷などが含まれる。第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に、導電性インクCIをインクジェット印刷するステップは、200ドット/インチ超、300ドット/インチ超、400ドット/インチ超、500ドット/インチ超、600ドット/インチ超、700ドット/インチ超、800ドット/インチ超、900ドット/インチ超、1000ドット/インチ超、1100ドット/インチ超、1200ドット/インチ超、1300ドット/インチ超、1400ドット/インチ超、1500ドット/インチ超、1600ドット/インチ超、1700ドット/インチ超、1800ドット/インチ超、1900ドット/インチ超、2000ドット/インチ超、2100ドット/インチ超、2200ドット/インチ超、2300ドット/インチ超、2400ドット/インチ超、2500ドット/インチ超、または2600ドット/インチ超の解像度で実施されてもよい。
【0029】
別の例では、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2は、湾曲ガラス基板22の表面に、導電性インクCIを電気流体力学的に印刷するステップを有する。一般に、「電気流体力学的印刷」という用語は、デジタル制御され、電気的に帯電されたプリントヘッドが、デジタルベース画像に従って、ノズルを介してインクを基板に誘導する印刷プロセスを表す。本開示の文脈において、ノズルは、導電性特徴部26の少なくとも1つの線27の線幅W(後述)と同じ幅であってもよい。いくつかの例において、ノズルの幅は、10マイクロメートル程度であってもよい。従って、いくつかの例において、導電性特徴部26の線幅Wは、同様に10マイクロメートルである。当然のことながら、ノズルの幅は、10マイクロメートルよりも広く選択され、10マイクロメートルよりも広い線幅Wを有する導電性特徴部26が形成されてもよいことが理解される必要がある。また、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に、200ドット/インチ超、300ドット/インチ超、400ドット/インチ超、500ドット/インチ超、600ドット/インチ超、700ドット/インチ超、800ドット/インチ超、900ドット/インチ超、1000ドット/インチ超、1100ドット/インチ超、1200ドット/インチ超、1300ドット/インチ超、1400ドット/インチ超、1500ドット/インチ超、1600ドット/インチ超、1700ドット/インチ超、1800ドット/インチ超、1900ドット/インチ超、2000ドット/インチ超、2100ドット/インチ超、2200ドット/インチ超、2300ドット/インチ超、2400ドット/インチ超、2500ドット/インチ超、または2600ドット/インチ超の解像度で、導電性インクCIを電気流体力学的に印刷することも考えられる。
【0030】
前述のように、湾曲基板上にインクをデジタル的に設置することには課題がある。従って、一例では、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2は、プリントヘッド32を有するロボットアプリケータ30を提供するステップを有する。この実施例では、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2は、さらに、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に、ロボットアプリケータ30を隣接して配置するステップを有する。また、この実施例では、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2は、ロボットアプリケータ30が第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に沿ってプリントヘッド32を移動させる際に、マスクを使用せずに、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に、ロボットアプリケータ30のプリントヘッド32から、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップを有する。例えば、
図3Aおよび3Bには、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に隣接して配置された、ロボットアプリケータ30およびプリントヘッド32の概略図を示す。従って、本実施例の文脈では、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2は、ロボットアプリケータ30が第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に沿ってプリントヘッド32を移動させる際に、マスクを使用せずに、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に、ロボットアプリケータ30のプリントヘッド32から導電性インクCIをデジタル的に設置するステップを有する。
【0031】
第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に沿ってプリントヘッド32を移動させることができる、任意の好適なロボットアプリケータ30が考えられる。換言すれば、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に沿って、ロボットアプリケータ30がプリントヘッド32を移動させる際に、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の曲率を有する湾曲した経路をたどるように構成された、ロボットアプリケータ30が望ましい。より具体的には、プリントヘッド32と第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面の間にある距離が維持され、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に対して、実質的に垂直な角度にプリントヘッド32を維持することに適したロボットアプリケータ30が望ましい。例えば、ロボットアプリケータ30は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面に沿ってプリントヘッド32を移動させるように構成された、6軸ロボット、デカルト(Cartesian)ロボット等であってもよい。
【0032】
導電性インクCIは、ロボットアプリケータ30の各パス当たりの幅で設置されることが考慮される。プリントヘッド32が導電性インクCIを設置する際のパス当たりの最大幅は、プリントヘッド32の設計および設定に基づく。マスクを使用せずに導電性インクCIをデジタル的に設置できる、任意の好適なプリントヘッド32が考えられる。一例では、プリントヘッド32は、ロボットアプリケータ30の1パス当たり30ミリメートルから70ミリメートルの最大幅で、導電性インクCIをデジタル的に設置する。他のプリントヘッド32も考えられる。また、ロボットアプリケータ30は、互いに隣接して配置された複数のプリントヘッド32を有し、ロボットアプリケータ30が導電性インクCIをデジタル的に設置する際の単位パス当たりの幅を増加させることも考えられる。
【0033】
前述のように、本開示の導電性特徴部26は、少なくとも1つの導電線27を有する。有意には、導電性インクCIをデジタル的に設置することにより、導電性特徴部26の少なくとも1つの導電線27は、従来のアナログ印刷プロセスで可能なものに比べて、十分に短い幅Wを有することが可能となる。例えば、100ドット/インチの従来のスクリーン印刷プロセスに基づき、アナログ印刷プロセスで理論的に印刷することが可能な線の最小幅は、約254マイクロメートルである。一方、例えば、400ドット/インチの解像度で導電性インクCIをデジタル的に設置した際、64マイクロメートルの短い幅Wで、導電性特徴部26の少なくとも1つの導電性ライン27が印刷されてもよい。別の例として、2500ドット/インチの解像度で導電性インクCIをデジタル的に設置することにより、10マイクロメートルの短い幅Wで、少なくとも1つの導電性ライン27を印刷できる。
【0034】
方法100のステップS3は、導電性インクCIを硬化させて、湾曲ガラス基板22の表面に、少なくとも1つの導電線27を有する導電性特徴部26を形成するステップを有する。特に、導電性インクCIは、デジタル設置の後、導電性インクCIを硬化させるステップS3の前に、湾曲ガラス基板22の表面に拡散または分散されてもよい。例えば、導電性インクCIは、ステップS2において、400ドット/インチの解像度でデジタル的に設置されてもよい。ただし、硬化ステップS3の前に、400ドット/インチでデジタル的に設置された導電性インクCIは、湾曲ガラス基板22の表面に広がり、硬化ステップS3の完了の際に、導電性特徴部26は、最初のデジタル設置の際の解像度に比べて、例えば、200ドット/インチの低い解像度を有してもよい。また、硬化ステップS3自体が、導電性特徴部26の解像度に影響を及ぼしてもよい。例えば、導電性インクCIは、硬化ステップS3の間に膨張または収縮して、導電性特徴部26の解像度に影響を及ぼしてもよい。
【0035】
従って、ステップS2でデジタル的に設置された導電性インクCIの解像度は、デジタル的に設置された導電性インクCIを硬化するステップS3の完了後の導電性特徴部26の解像度とは異なってもよい。従って、デジタル的に設置された導電性インクCIを硬化するステップS3の完了の際に、導電性特徴部26は、インチ当たり200ドットを超える解像度を有する。特に、導電性特徴部26は、200ドット/インチ超、300ドット/インチ超、400ドット/インチ超、500ドット/インチ超、600ドット/インチ超、700ドット/インチ超、800ドット/インチ超、900ドット/インチ超、1000ドット/インチ超、1100ドット/インチ超、1200ドット/インチ超、1300ドット/インチ超、1400ドット/インチ超、1500ドット/インチ超、1600ドット/インチ超、1700ドット/インチ超、1800ドット/インチ超、1900ドット/インチ超、2000ドット/インチ超、2100ドット/インチ超、2200ドット/インチ超、2300ドット/インチ超、2400ドット/インチ超、2500ドット/インチ超、または2600ドット/インチ超の解像度を有してもよいことが考慮される。
【0036】
前述のように、ステップS2でデジタル的に設置された際には導電性インクCIは、通常液体であるため、導電性インクCIを硬化させることは有意である。従って、導電性インクCIを硬化させるステップS3は、、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2の後、速やかに開始され、導電性インクCIの流れまたは汚れが防止されてもよい。例えば、硬化ステップS3は、湾曲ガラス基板22の表面に導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2の後、ゼロ秒から5秒の時間内に開始されてもよい。より具体的には、硬化ステップS3は、ステップS2の後、5秒未満、ステップS2の後、4秒未満、ステップS2の後、3秒未満、ステップS2後、2秒未満、またはステップS2の後、1秒未満に開始されてもよい。
【0037】
一例では、方法100のステップS3は、導電性インクCIを熱硬化(時折「焼結」と称される)させて、導電性特徴部26を形成するステップを有する。これに限られるものではないが、導電性インクCIを熱硬化させる、オーブン、ヒートガン、または赤外線ヒータを含む、任意の好適な熱硬化装置が、考慮される。本開示の文脈において、熱硬化は、ガラス組立体20を焼成されるレベルまで、加熱しないことが理解される必要がある。前述のように、通常の焼成プロセスは、500℃を超える温度までガラス基板を加熱し、セラミックフリットを有する導電性ペーストをガラス基板に融着し、および/またはガラス基板を所望の形状に曲げるステップを有する。一方、本開示の文脈における熱硬化処理は、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24を十分な温度(ただし、500℃の焼成温度未満)に供し、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24の表面の導電性インクCIを硬化させるステップを有する。
【0038】
いくつかの例では、導電性インクCIを硬化させる硬化温度は、導電性インクCIの熱劣化温度を考慮して選択される。より具体的には、硬化温度は、導電性インクCIの熱劣化温度未満に選択され、導電性インクCIが湾曲ガラス基板22から焼失することが抑制され、ガラス組立体20の光学歪みが最小限に抑制される。例えば、導電性インクCIは、熱硬化性有機モノマー、および該有機モノマー中に分散された導電性粒子(例えば、銀ナノ粒子など)を含んでもよい。他の実施例では、有機モノマーは、代わりに、オリゴマー、またはモノマーとオリゴマーの組み合わせであってもよいことが理解される必要がある。この例では、導電性インクCIは、210℃の熱劣化温度を有してもよい。従って、硬化温度は、210℃未満、例えば200℃に選定されてもよい。特に、導電性インクCIを硬化させる硬化温度は、従来の導電性ペーストを焼成するために必要な温度よりも十分に低い。従って、ガラス組立体20は、ガラス組立体20が大きく変形するような、ガラス組立体20を軟化させる温度には晒されない。従って、導電性インクCIを硬化させるステップS3により、ガラス組立体20に大きな光学歪みが導入される可能性は低くなる。
【0039】
別の例では、導電性インクCIは、金属-有機錯体を有し、熱的に硬化されて導電性特徴部26が形成される。金属-有機錯体は、銀-有機化合物、または有機成分および導電性金属成分、例えば、銅-有機化合物などを有する、任意の他の好適な金属-有機錯体を含んでもよい。この実施例では、ステップS2において、金属-有機錯体を含む導電性インクCIが湾曲ガラス基板22の表面にデジタル的に設置された後、ステップS3は、金属-有機錯体の有機成分を揮発させるのに十分な温度に、導電性インクCIを暴露するステップを有し、湾曲ガラス基板22の表面に金属粒子(例えば、銀粒子)のみが残留し、導電性特徴部26が形成される。特に、金属-有機錯体の有機成分を揮発させるのに十分な温度は、従来の導電性ペーストを焼成するため必要な温度よりも十分に低くてもよい。従って、ガラス組立体20は、該ガラス組立体20が大きく変形するような、ガラス組立体20が軟化する温度にはさらされない。従って、導電性インクCIを硬化するステップS3により、ガラス組立体20に大きな光学歪みが導入される可能性は低い。
【0040】
他の実施例では、方法100のステップS3は、UV硬化装置34を用いて、導電性インクCIを光硬化させるステップを有する。この実施例では、導電性インクCIは、光硬化性導電性インクCIである。光硬化性導電性インクCIは、有機モノマー中に分散された光開始剤、有機モノマー、および導電性粒子(例えば、銀ナノ粒子など)を含んでもよい。他の実施例では、有機モノマーは、代わりに、オリゴマー、またはモノマーとオリゴマーの組み合わせであってもよいことが理解される必要がある。光開始剤は、UV光への曝露に応答して有機モノマーの重合を開始する、任意の好適な化合物を含んでもよい。例えば、光開始剤は、有機モノマーおよび/またはオリゴマーの重合を開始するUV光で露光された際に、反応性種(例えば、フリーラジカル、カチオン、またはアニオン)を生成する化合物であってもよい。従って、本実施例では、導電性インクCIを硬化させて導電性特徴部26を形成するステップS3は、導電性インクCIをUV硬化装置34に暴露して光開始剤を活性化させ、有機モノマーの重合を開始させ、導電性インクCIを硬化させるステップを有する。この実施例では、導電性インクCIを硬化させるステップS3は、いかなる外部からの熱の印加も伴わず、従って、このステップS3の実施例では、ガラス組立体20に大きな光学歪みが導入する可能性が抑制される。
【0041】
一例では、UV硬化装置34は、UV光を放射するUV発光ダイオードである。例えば、UV硬化装置34は、315ナノメートルから400ナノメートル(一般にUV-Aスペクトルとして知られる)の波長を有するUV光を放射してもよい。UV発光ダイオードは、実質的に385ナノメートルの波長を有するUV光のような、より狭いスペクトルを有するUV光を放射してもよい。UVスペクトル内の任意の波長が考慮される。
【0042】
図3Aには、ステップS3の一例を示す。
図3Aの例では、ロボットアプリケータ30は、さらに、UV硬化装置34を有する。必ずしも必要ではないが、UV硬化装置34は、プリントヘッド32に隣接して配置され、UV硬化装置34は、ロボットアプリケータ30がプリントヘッド32を湾曲ガラス基板22の表面に沿って移動する際に、同じ経路を通ってもよい。従って、本実施例では、導電性インクCIを硬化させ、導電性特徴部26を形成するステップS3は、ロボットアプリケータ30が湾曲ガラス基板22の表面に沿って移動する際に、ロボットアプリケータ30のUV硬化装置34を起動し、デジタル的に設置された導電性インクCIの光硬化を開始するステップを有する。これにより、導電性インクCIを硬化させるステップS3は、導電性インクCIをデジタル的に設置するステップS2の後、速やかに開始され、導電性インクCIの流れまたは汚れが防止される。
【0043】
いくつかの例では、方法100のステップS3は、さらに、上記の硬化プロセスの1つの間に、ガラス組立体20を高められた湿度および/または圧力に暴露するステップを有してもよい。
【0044】
合わせガラス組立体20に関し、方法100のステップS3は、導電性インクCIを硬化させて、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の少なくとも1つに、導電性特徴部26を形成するステップを有する。導電性インクCIを硬化させて、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の少なくとも1つに導電性特徴部26を形成するステップは、前述の任意の硬化プロセスに従って実施されてもよいことを理解する必要がある。
【0045】
図4A乃至4Cには、方法100に従って形成されたガラス組立体20の各種例の概略的な断面図を示す。
図4Aには、湾曲ガラス基板22を有するあるガラス組立体20を示す。湾曲ガラス基板22は、該湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された導電性特徴部26を有する。
図4Bには、湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された導電性特徴部26を含む湾曲ガラス基板22を有する別のガラス組立体20を示す。
図4Cには、さらに別のガラス組立体20を示す。これは、湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された1つの導電性特徴部26と、湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された別の導電性特徴部26とを含む、湾曲ガラス基板22を有する。
【0046】
図5を参照すると、ガラス組立体20が合わせガラス組立体20である場合、方法100は、さらに、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面と第2の湾曲ガラス基板24のP3表面との間に、ポリマー中間層28を配置するステップS4を有する。ポリマー中間層28は、第1の湾曲ガラス基板22と第2の湾曲ガラス基板24を結合し、ポリマー中間層28は、合わせガラス組立体20の衝突または破損の際に、第1の湾曲ガラス基板22および/または第2の湾曲ガラス基板24を保持する。ポリマー中間層28は、ポリマーまたは熱可塑性樹脂、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等を含む。ポリマー中間層28を実施するための他の好適な材料を利用して、光学的ヘイズ、ガラスへの接着、および構造的剛性に関する必要な性能特性を提供してもよい。第1の湾曲ガラス基板22および第2の湾曲ガラス基板24と同様に、ポリマー中間層28も、実質的に透明であり、または、光に対して透過性である。従って、第1の湾曲ガラス基板22と第2の湾曲ガラス基板24との間にポリマー中間層28を有する合わせガラス組立体20もまた、光に対して実質的に透明であり、または光に対して透過性である。
【0047】
積層プロセスの例は、第1の湾曲ガラス基板22、第2の湾曲ガラス基板24、ポリマー中間層28、および合わせガラス組立体20の一部であり得る任意の他の中間層を、積層して整列するステップを有する。これらの部材を積層し、配列した後、ガラス組立体20は、脱気プロセスに供され、ガラス組立体20が真空にさらされ、第1の湾曲ガラス基板22、第2の湾曲ガラス基板24、ポリマー中間層28、および任意の他の中間層の間にトラップされ得る任意の空気が除去される。脱気プロセスの後、ガラス組立体20は、オートクレーブ工程に供され、ガラス組立体20が高温および/または高圧にさらされ、ポリマー中間層28が該ポリマー中間層28に隣接する各層に結合され、合わせガラス組立体20が形成される。特に、オートクレーブ内の温度は、導電性インクCIの熱劣化温度よりも低く、導電性インクCIに対する損傷が防止される必要がある。
【0048】
図6Aに示す例では、合わせガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第1の湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された導電性特徴部26と、第2の湾曲ガラス基板24と、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマー中間層28とを有する。
図6Bに示す例では、合わせガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された導電性特徴部26と、第2の湾曲ガラス基板24と、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマー中間層28とを有する。
図6Cに示す例では、合わせガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第2の湾曲ガラス基板24と、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に形成された導電性特徴部26と、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマー中間層28とを有する。
図6Dに示す例では、合わせガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22と、第2の湾曲ガラス基板24と、第2の湾曲ガラス基板24のP4表面に形成された導電性特徴部26と、P2表面とP3表面との間に配置されたポリマー中間層28とを有する。
図6A乃至
図6Dには、個々に、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面に形成された導電性特徴部26が示されているが、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の任意の組み合わせに、複数の導電性特徴部26が形成されてもよいことが考慮される。
【0049】
図7乃至
図10Bを参照すると、いくつかの例では、少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26は、ガラス組立体20の少なくとも一部に熱を付与(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)するように構成された加熱素子36を画定する。加熱素子36は、方法100に従って、ガラス組立体20の少なくとも一部に熱を付与(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)するように構成された回路を形成する、任意の好適な形状を有するように、形成されてもよい。加熱素子36の好適な幾何学的形状には、これに限られるものではないが、蛇行形状、グリッド形状、ファン形状、および螺旋形状が含まれる。少なくとも1つの導電線27は、線幅Wを有する。加熱素子36を定める任意の好適な線幅Wが考慮される。少なくとも1つの導電線27の線幅W、および導電性インクCIの導電性粒子の充填は、加熱素子36に所望の抵抗率が得られるように調整されてもよいことが理解される必要がある。例えば、加熱素子36は、10μΩ・cm未満の抵抗率を有してもよい。好ましくは、加熱素子60は、5μΩ・cm未満の抵抗率を有してもよい。
【0050】
図7には、リアガラス組立体20を有する車両18の一例を示す。リアガラス組立体20は、蛇行形状を有する加熱素子36を画定する、少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26を有する。この実施例では、
図7の加熱素子36は、導電配線27により画定される。導電線27は、湾曲ガラス基板22の表面を横断して前後に方向転換し、ガラス組立体20の少なくとも一部に熱を付与(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)するように構成された回路を形成する。
図8A乃至8Bには、
図7のガラス組立体20の概略的な断面図の各種例を示す。より具体的には、
図8Aには、湾曲ガラス基板22のP1表面に形成された導電線27を有する導電性特徴部26を示す。
図8Bには、湾曲ガラス基板22のP2表面に形成された導電線27を有する導電性特徴部26を示す。また、いくつかの例では、湾曲ガラス基板22のP1表面およびP2表面の両方に、少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26が形成されてもよいことを理解する必要がある。
【0051】
図9には、フロントガラス組立体20を有する車両18の別の例を示す。フロントガラス組立体20は、グリッド形状を有する加熱素子36を画定する少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26を有する。この例では、加熱素子36は、複数の導電線27によって画定され、これらの導電線は、交差して、ガラス組立体20の少なくとも一部に、熱を付与(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)するように構成された回路が形成される。
図10Aおよび10Bには、
図9のガラス組立体20の概略的な断面図の各種例を示す。特に、この例では、フロントガラス組立体20は、合わせガラス組立体20である。従って、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22、第2の湾曲ガラス基板24、およびポリマー中間層28を有する。
【0052】
図10A乃至10Bには、
図9のガラス組立体20の実施例の概略的な断面図を示す。前述のように、いくつかの例では、P2表面およびP3表面の少なくとも1つに導電性特徴部26を形成して、導電性特徴部26を周囲の環境から保護することが有意である。従って、
図10Aの例では、導電性特徴部26は、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に形成される。
図10Bの例では、導電性特徴部26は、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に形成される。
図10Aおよび10Bでは、P2表面およびP3表面に形成された導電性特徴部26が示されているが、導電性特徴部26は、ガラス組立体20のP1表面および/またはP4表面に形成されてもよいことを理解する必要がある。
【0053】
引き続き
図9乃至10Bを参照すると、いくつかの例では、ガラス組立体20は、さらに、該ガラス組立体20に取り付けられた光学センサ48を有してもよい。光学センサ48は、半自律式のまたは自律式の駆動システムの部材であってもよい。光学センサ48は、任意の好適な方法で、ガラス組立体20に取り付けられてもよいことを理解する必要がある。例えば、
図10A乃至
図10Bでは、ガラス組立体20のP4表面に取り付けられた光学センサ48を有するガラス組立体20の例も示されている。光学センサ48は、視野FOV(すなわち、光学センサ48が静止中の間「見る」ことができる限定された角度範囲)を有する。
【0054】
特に、霜または他の凝縮は、視野FOVを不明瞭にし、従って、光学センサ48の特性を妨害し得る。従って、いくつかの例では、ガラス組立体20は、少なくとも1つの導電線27を含む別の導電特徴26を有し、これは光学センサ48の視野FOVに整列された加熱素子36を画定し、光学センサ48の視野FOVに対応するガラス組立体20の少なくとも一部が加熱(すなわち、霜取りおよび/またはデフロスト)される。前述のように、従来の導電性ペーストを用いて形成された導電性特徴部は、ガラス組立体の大きな光学歪みを示す傾向にあり、これは、歪みが光学センサの視野FOV内にある場合、光学センサの特性に特に有害である。しかしながら、本開示では、導電性特徴部26(例えば、加熱素子36)は、印刷後に焼成に供されず、これにより、ガラス組立体20の光学歪みが実質的に抑制される。従って、有意には、方法100に従って形成されたガラス組立体20により示される光学歪みは、十分に低く、カメラまたはLIDARセンサのような光学センサ48、ならびにヘッドアップディスプレイのような光学投影デバイスの最適な特性のために必要な仕様が満たされる。例えば、方法100に従って形成されたガラス組立体20は、光学センサの視野FOV内で100ミリディオプター未満の光学歪みを有し得る。
【0055】
光学センサ48の視野FOVと整列された加熱素子36に関し、加熱素子36を画定する少なくとも1つの導電線27は、光学センサ48の特性に影響が生じないように、光学センサ48の視認性を妨げないことが望ましい。特に、加熱素子36が光学センサ48の視野FOVと整列される場合、導電性特徴部26の導電線27を形成し、該導電線27が光学センサ48の視野に「ブラインドスポット」が確実に生じないように、十分に小さな線幅Wを有し、導電線27により生じる光センサ48に入射する光の回折が最小限に抑制されることが有意である。前述のように、ステップS2のデジタル設置プロセスの高い解像度により、従来のアナログ印刷プロセスに比べて有意に小さな線幅Wで、導電性特徴部26の少なくとも1つの導電線27を形成することが可能になる。従って、一実施形態では、光学センサ48がカメラである場合、導電性特徴部26の少なくとも1つの導電線27は、100マイクロメートル未満の線幅Wを有するように形成されてもよい。別の例では、光学センサがLIDARセンサである場合、導電性特徴部26の少なくとも1つの導電線27は、65マイクロメートル未満のより小さな線幅Wを有するように形成されてもよい。
【0056】
再度
図9を参照すると、方法100により形成された少なくとも1つの導電線27を有する導電性特徴部26の別の例は、バスバー37である。バスバー37は、ガラス組立体20の別の導電性特徴部26(加熱素子36など)にエネルギーを伝達するように構成されてもよい。例えば、ガラス組立体20は、方法100により加熱素子36を有するように形成されてもよい。加熱素子36に電力を供給するため、方法100により形成され得るバスバー37は、加熱素子36と電気的に連通され、加熱素子36に電力が供給される。任意の好適な形状(例えば、線幅W)および他の導電性特徴部26に対するバスバー37の配置が考慮される。また、加熱素子36を越えて他の導電性特徴部26に電力を供給するためのバスバー37が考慮される。
【0057】
図11乃至
図14Bを参照すると、他の実施例では、少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26は、無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナ50を画定する。いくつかの例では、アンテナ50は、540キロヘルツから6ギガヘルツの周波数を有する無線信号を送信および/または受信するように構成されてもよい。従って、アンテナ50は、これに限られるものではないが、振幅変調(AM)、周波数変調(FM)、デジタルオーディオ放送(DAB)、リモートキーレスエントリ(RKE)、デジタルテレビジョン(DTV)、全地球測位システム(GPS)、2Gセルラー、3Gセルラー、4Gセルラー、およびいくつかの5Gセルラーの周波数(より具体的には、6ギガヘルツ未満の低帯域および中帯域の5Gセルラー周波数)を有する、多くの標準周波数内の任意の無線信号を送信および/または受信するように構成されてもよい。
【0058】
アンテナ50は、方法100により、540キロヘルツから6ギガヘルツの周波数を有する無線信号を送信および/または受信することに適した任意の構成を有するように、形成されてもよい。アンテナ50に適したアンテナ構造の例には、これに限られるものではないが、平面モノポールアンテナ、平面ダイポールアンテナ、パッチアンテナ、スロットアンテナ、ビバルディアンテナ、平面円錐アンテナ、平面球状アンテナ、平面ホーンアンテナのような、平面アンテナの様々な構成が含まれる。導電性特徴部の少なくとも1つの導電線27は、アンテナ50の一部または全体を画定してもよいことが理解される必要がある。例えば、少なくとも1つの導電線27は、供給配線FL、放射素子RE、および接地面GPの1つ以上を画定してもよい。アンテナ50の一部が非線形構造(例えば、パッチアンテナ)を有する例では、複数の導電線27がデジタル的に設置され、相互に隣接して硬化され、非線形構造を有するアンテナ50の一部が画定されてもよい。
【0059】
方法100によりアンテナ50を形成することは、様々な態様において有意である。一態様では、前述のように、ステップS2のデジタル設置プロセス高い解像度により、従来のアナログ印刷プロセスに比べて有意に厳しい公差で、導電性インクCIを堆積させることができる。例えば、スクリーン印刷のような従来のアナログ印刷プロセスを使用した場合、導電性特徴部は、+/-1.5ミリメートルの許容誤差内でしか反復可能に配置できない可能性がある。しかしながら、ステップS2のデジタル設置プロセスの正確な制御により、アンテナ50を画定する少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26は、+/-0.1ミリメートルの許容誤差未満で反復可能に配置することができる。
【0060】
別の態様では、前述のように、ステップS2のデジタル設置プロセスの高い解像度により、導電性インクCIを堆積させて、従来のアナログ印刷プロセスに比べて有意に精細な特徴部を形成することができる。例えば、スクリーン印刷のような従来のアナログスクリーン印刷プロセスを用いた場合、導電性特徴部は、113マイクロメートルの幅Wでなければ、堆積させることは難しい。しかしながら、ステップS2のデジタル設置プロセスの精度および精細さの向上により、方法100により形成されたアンテナ50は、従来のアナログ印刷プロセスを用いて形成されたアンテナに比べて有意に精細な特徴部を有し得る。例えば、アンテナ50を画定する少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26は、100マイクロメートル未満の、または10マイクロメートルの短い幅Wを有するように形成されてもよい。またより精細な特徴部のため、本開示のアンテナ50では、従来のアナログ印刷プロセスを用いて形成されたアンテナよりも高い周波数および/または高い帯域幅で、無線信号を送信および/または受信することができる。一例として、本開示のアンテナ50は、アンテナ50から延びる小さな「チューニングスタブ」特徴部を有し、アンテナ50の帯域幅が改善されてもよい。
【0061】
図11には、リアガラス組立体20を有する車両18の一例を示す。リアガラス組立体20は、方法100により形成され、無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナ50を画定する少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26を有する。この例では、アンテナ50は、放射素子REに結合された給電線FLと、該給電線FLおよび放射素子REに隣接して配置された接地面GPとを有する。
図11には、アンテナ50の1つの想定される構成が示されているが、任意の好適なアンテナ構造が考えられることを理解する必要がある。
図12A乃至12Cには、
図11のガラス組立体20の概略的な断面図の各種例を示す。
図12Aの例では、アンテナ50は、湾曲ガラス基板22のP1表面に形成され、給電線FL、放射素子REおよび接地面GPは、全てP1表面に配置される。
図12Bの例では、アンテナ50は、湾曲ガラス基板22のP2表面に形成され、給電線FL、放射素子REおよび接地面GPは、全てP2表面に配置される。他の例では、アンテナ50は、多重平面アンテナとして形成されてもよい。例えば、
図12Cを参照すると、ガラス組立体20は、湾曲ガラス基板22のP1表面に、アンテナ50の第1の部分52(この例では、給電線FLおよび放射素子RE)を有し、湾曲ガラス基板22のP2表面に、アンテナの第2の部分54(この例では、接地面GP)を有してもよい。任意の好適な多層プレーナアンテナ構成が考えられる。
【0062】
ガラス組立体20が合わせガラス組立体20として形成される場合、アンテナ50を画定する少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26は、P1表面、P2表面、P3表面、P4表面の1つに形成される第1のアンテナ部分52と、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の別の1つに形成される第2のアンテナ部分54とを含んでもよい。有意には、方法100のステップS2に従って導電性インクCIをデジタル的に設置することにより提供されるより厳しい公差により、第1のアンテナ部分52と第2のアンテナ部分54との配列を改善することが可能となり、これにより、第1のアンテナ部分52と第2のアンテナ部分54との間の電気的通信が改善され、従って、アンテナ50の特性が改善される。
【0063】
さらに、前述のように、合わせガラス組立体20に関し、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面および第2の湾曲ガラス基板24のP3表面の少なくとも1つに導電性インクCIをデジタル的に設置することは、ガラス組立体20の積層の際に導電性特徴部26がガラス組立体20内に挟まれる点で有意である。従って、いくつかの例では、第1のアンテナ部分52および第2のアンテナ部分54の少なくとも一方がガラス組立体20内に挟まれるように、第1のアンテナ部分52がP2表面およびP3表面の一つに形成され、第2のアンテナ部分54がP1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面の一つに形成される。いくつかの例では、第2のアンテナ部分54は、第1のアンテナ部分52とは異なる表面に形成される。しかしながら、他の実施例では、第2のアンテナ部分54は、第1のアンテナ部分52と同じ表面上に形成されることが想定される。
図12Cおよび14A乃至14Bには、第2のアンテナ部分54が第1のアンテナ部分52とは異なる表面に形成された例を示す。
【0064】
図13には、方法100に従って形成されたフロントガラス組立体20を有する車両18を示す。車両18は、無線信号を送信および/または受信するように構成されたアンテナ50を画定する少なくとも1つの導電線27を含む導電性特徴部26を有する。
図11の例と同様、
図13のアンテナ50は、放射素子REに結合された給電線FLと、該給電線FLおよび放射素子REに隣接して配置された接地面GPとを有する。
図14A乃至
図14Bには、
図13のガラス組立体20の概略的な断面図の各種例を示す。
図14Aの例では、ガラス組立体20は、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面に、アンテナ50の第1の部分52(この例では、給電線FLおよび放射素子RE)を有し、第2の湾曲ガラス基板24のP4表面に、アンテナの第2の部分54(この例では、接地面GP)を有する。
図14Bの例では、ガラス組立体20は、第1の湾曲ガラス基板22のP2表面に、アンテナ50の第1の部分52(この例では、給電線FLおよび放射素子RE)を有し、第2の湾曲ガラス基板24のP3表面およびP4表面の1つに、アンテナの第2の部分54(この例では、接地面GP)を有する(第2のアンテナ部分54のこれらの別の配置は、破線の輪郭線で示されている)。
図14Aおよび
図14Bには、接地面GPが車両18の内部に接近して配置された例示的な構成が示されているが、第1のアンテナ部分52および第2のアンテナ部分54は、相互に独立に、P1表面、P2表面、P3表面、およびP4表面のいずれかに形成され、好適なアンテナ50が形成されてもよいことを理解する必要がある。
【0065】
前述の記載において、いくつかの実施形態を説明した。しかしながら、本願に記載の実施形態は、本発明を網羅することを意図するものではなく、また、本発明を特定の形態に限定することを意図するものでもない。使用された用語は、説明された用語の一般的な性質を有し、限定なものではない。前述の示唆に照らして、多くの修正および変更が可能であり、本発明は、具体的に記載された方法以外の方法で実施されてもよい。
【0066】
前述の実施形態に対して、本願に既に記載されたもの以外の各種追加の変更および改変を行うことができる。この開示は、説明用に提示されており、全ての実施形態を網羅的に説明するもの、またはこれらの実施形態に関連して示され、説明された特定の要素に特許請求の範囲を限定するものと、解してはならない。例えば、これに限られるものではないが、記載された実施形態の任意の個々の要素は、実質的に同様の機能を提供し、または好適な動作を提供する別の要素と置換されてもよい。これには、例えば、当業者に現在知られているような、既に知られている代替要素、および当業者が開発の時点で代替要素として認識しているような、将来開発され得る代替要素が含まれる。例えば、冠詞「a」、「an」、「the」または「said」を用いた単数形のクレーム要素に対する言及は、当該要素を単数形に限定するものと解してはならない。さらに、「include」、「includes」および「including」と言う用語は、「comprise」、「comprises」および「comprising」という用語と同じ意味を有することが理解される。
【符号の説明】
【0067】
18 車両
20 ガラス組立体
22 湾曲ガラス基板
26 導電性特徴部
30 ロボットアプリケータ
32 プリントヘッド