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特許7590095防水シート固定板およびこれを用いた防水シート固定構造、防水シート固定方法
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  • 特許-防水シート固定板およびこれを用いた防水シート固定構造、防水シート固定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】防水シート固定板およびこれを用いた防水シート固定構造、防水シート固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
E04D5/14 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020174990
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022066077
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小倉 広
(72)【発明者】
【氏名】大槻 雅也
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-016864(JP,A)
【文献】特開2001-115608(JP,A)
【文献】特開2005-146774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/14
F16B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートを下地に固定するための固定板であって、厚み方向に貫通するネジ孔を有する平坦な薄板からなり、前記ネジ孔が一点から放射状に延びた複数の細孔を有し、平面視において前記ネジ孔の一点を通り前記固定板の両端を結ぶ線分における断面が複数の矩形からなる防水シート固定板。
【請求項2】
前記ネジ孔が中心に円孔を有する請求項1に記載の防水シート固定板。
【請求項3】
下地の上に配置された請求項1または2に記載の防水シート固定板と、
前記下地の上に敷設された防水シートと、を備え、
前記防水シート固定板は前記ネジ孔を通し前記下地に打ち込まれたフレキ形状の頭部を有する固定用ネジにより前記下地に固定され、
前記防水シート固定板の上面と前記防水シートの下面とが接合されている防水シート固定構造。
【請求項4】
前記防水シート固定板の上面と前記固定用ネジのネジ頭部の上面とが略面一である請求項3に記載の防水シート固定構造。
【請求項5】
下地の上に請求項1または2に記載の防水シート固定板を配置して前記ネジ孔を通しフレキ形状の頭部を有する固定用ネジを下地に打ち込み前記防水シート固定板を前記下地に固定する工程と、
前記防水シート固定板の上から防水シートを敷設する工程と、
前記防水シート固定板の上面と前記防水シートの下面とを接合する工程とを備える
防水シート固定方法。
【請求項6】
前記防水シート固定板の上面と前記固定用ネジのネジ頭部の上面とを略面一にして固定する工程を備える請求項5に記載の防水シート固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水シートを下地に固定する際に使用される防水シート固定板とこれを用いた防水シート固定構造、防水シート固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上や屋根等に防水シートを施工する際、下地に防水シートを固定する方法として接着剤を用いる接着工法と固定板を用いた機械的固定工法とがある。ここで、機械的固定工法の一つである先付工法においては、樹脂を被覆した鋼板等からなる固定板をネジ(ビス)により下地に固定し、その上から防水シートを敷設する。そして、防水シート上から固定板に対応する位置に誘導加熱装置を配置し、固定板を加熱することで固定板の上面の樹脂層と防水シートを接合固定するという工法である。また、接着工法と機械的固定工法のいずれの工法においても、平場の周縁部分(平場と立ち上がり壁の境界部分)や下地の段差部分などにおいては、上記のような固定板を使用して防水シートを下地に固定することがある。下地に固定した固定板の上から防水シートを敷設し、専用の溶着剤や熱風溶接機などを用いて固定板の上面と防水シートの下面とを接合して固定する。
【0003】
固定板はディスクと呼ばれる円盤状や細長の平板状のほか、立ち上がりなどの固定板を固定する場所に対応した形状のものがあり、これら固定板には下地固定用のネジ(ビス)を通すための下穴が形成されている。特許文献1の防水鋼板にはビス挿通穴が設けられ、ビス挿通穴の周囲に固定ビスの頭部のテーパに対応する凹部が形成され、防水鋼板の上面と固定ビスの頭部の上面とが略面一となるように構成されている。
【0004】
このようなネジ(ビス)挿通穴の周囲に形成された凹部は、鋼板の上側から穴開けと同時にエンボス加工を施して形成されており、鋼板の下側に凹部の下底が突出した状態となっている。図7に同様の固定板を示すが、線分AA´の断面を見るとネジ挿通穴5aの部分が下側に突出している。そのため、特に下地が硬質な材料からなる場合には、防水鋼板をネジで下地に固定した際に下地と防水鋼板の間に隙間が生じるため段差が生じたり鋼板が変形したりし、また防水鋼板が長尺状で複数のネジ挿通穴を有し複数のネジで固定される場合には、図8(8-2)のようにネジとネジの間の防水鋼板が撓んだ状態で固定されることがあり、防水鋼板の平滑性が得られず、防水シートを敷設固定する際にも平滑な仕上がりとならないことがあった。しかし、エンボス加工なしの丸穴をネジ挿通穴とした防水鋼板では、防水鋼板の平滑性は得られるもののネジ頭部が挿通穴の径より小さい部分までしか入り込まず、ネジ頭部の上部が防水鋼板の上面より突出してしまうため防水シートを傷つける恐れもあり好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-36321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、防水シートを下地に敷設固定する際に平滑な仕上がりを得ることができる防水シート固定板とこれを用いた防水シート固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明が用いた手段は、防水シートを下地に固定するための固定板であって、厚み方向に貫通するネジ孔を有する平坦な薄板からなり、前記ネジ孔が一点から放射状に延びた複数の細孔を有し、平面視において前記ネジ孔の一点を通り前記固定板の両端を結ぶ線分における断面が複数の矩形からなる防水シート固定板である。さらに前記ネジ孔が中心に円孔を有する請求項1に記載の防水シート固定板である。
【0008】
また、下地の上に配置された請求項1または2に記載の防水シート固定板と、前記下地の上に敷設された防水シートと、を備え、前記防水シート固定板は前記ネジ孔を通し前記下地に打ち込まれたフレキ形状の頭部を有する固定用ネジにより前記下地に固定され、前記防水シート固定板の上面と前記防水シートの下面とが接合されている防水シート固定構造である。さらに前記防水シート固定板の上面と前記固定用ネジの頭部の上面とが略面一である請求項3に記載の防水シート固定構造である。
【0009】
また、下地の上に前述の防水シート固定板を配置して前記ネジ孔を通しフレキ形状の頭部を有する固定用ネジを下地に打ち込み前記防水シート固定板を前記下地に固定する工程と、前記防水シート固定板の上から防水シートを敷設する工程と、前記防水シート固定板の上面と前記防水シートの下面とを接合する工程とを備える防水シート固定方法である。さらに前記防水シート固定板の上面と前記固定用ネジの頭部の上面とを略面一にして固定する工程を備える請求項5に記載の防水シート固定方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固定板を下地に固定する際の変形を防止できる。また、本発明の防水シート固定板を用いることにより仕上がりが平滑な防水シート固定構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の防水シート固定板の一実施形態の平面図及び断面図である。
図2】本発明の防水シート固定板に形成されるネジ孔の形状例を示した平面図である。
図3】本発明の防水シート固定構造の一実施形態の部分断面図である。
図4】本発明の防水シート固定板を下地に固定するための固定用ネジの一態様を示す平面図および側面図である。
図5】本発明の防水シート固定構造の一実施形態の部分断面図である。
図6】本発明の防水シート固定構造の一実施形態の部分断面図である。
図7】従来の固定板の一例を示す平面図および断面図である。
図8】従来の防水シート固定構造の一例を示す部分断面図である。
図9】防水シート固定板の固定性能試験の試験方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本発明の防水シート固定板は平坦な薄板であり、厚み方向に貫通するネジ孔を有している。固定板は矩形や円形などのプレート形状をしており、固定板の厚みは0.5mm~2.0mm程度であり、大きさは一辺または外径が50mm~100mm程度とすることができる。また防水シート固定板は長尺状であってもよく、その長さは100mm~2500mm程度とすることができる。防水シート固定板が長尺状の場合は、厚み方向に貫通するネジ孔を複数設けることが好ましい。
【0014】
図1は本発明の防水シート固定板の一実施形態を示している。図1は長尺状の防水シート固定板であり、複数のネジ孔1aが間隔を開けて形成されている。線分AA´の断面は平坦であり、従来の固定板のようなエンボス加工によるビス孔周辺の底部の突出はない。ネジ孔1aはスリット状に形成された4つの細孔が一点で連結した形状となっている。本発明の防水シート固定板はネジ孔付近に突出部がなく平坦であり、また防水シート固定板に形成されたネジ孔が一点から放射状に延びた複数の細孔を有することを特徴としている。
【0015】
一点から延設された複数の細孔は同形状であることが好ましく、この場合一点がネジ孔の中心となる。一つのネジ孔に対して細孔は2~8本程度形成され、加工しやすさと固定用ネジによる固定強度の面から3~6本程度であることが好ましい。図2にネジ孔の形状例を示した。図2(2-1)、(2-2)、(2-3)は、細孔の数がそれぞれ4本、3本、6本のものである。細孔の幅Wは通常0.5mm~3.0mm程度であり、細孔の長さL(一点P(ネジ孔の中心O)から端部までの長さ)は防水シート固定板を下地に固定する際に使用する固定用ネジのネジ頭部のサイズによって適宜設定することができ、ネジ頭部の上面の径の半分と同程度か、それよりやや長めであることが好ましい。例えば、ネジ頭部の上面の径が7mmであった場合、細孔の長さLは3mm~5mm程度が好ましい。
【0016】
図2(2-4)のように、ネジ孔はさらにその中心に円孔を有していてもよい。円孔は細孔と連結しており、大きさは防水シート固定板を下地に固定する際に使用する固定用ネジのネジ部の径(呼び径)より大きく、細孔の長さの2倍より小さい径を有していることが好ましい。ネジ孔の中心にこのような円孔を有することで、防水シート固定板を貫通して下地に固定用ネジを打ち込む際、円孔の中心にねじ先を合わせて固定用ネジを打ち込むことで、ネジ穴の中心に固定用ネジを打ち込みやすくすることができる。円孔の直径は使用する固定用ネジにより適宜調整することができ、固定用ネジの呼び径(図4のd)と同等かやや大きめが好ましく、ネジ頭部の上面の径(図4のD)より小さい。
【0017】
防水シート固定板は薄板状の鋼板や合成樹脂などから成形することができ、強度の面から薄板鋼板が好適である。薄板鋼板の場合、その表面が合成樹脂等で被覆されていてもよい。表面が防水シートと同じ合成樹脂等で被覆されている固定板の場合、防水シートを固定する際に固定板との接合性が向上し、また溶剤による溶着や熱風溶接機、誘導加熱などによる加熱圧着での溶接固定が可能となる。防水シート固定板および防水シートに使用される合成樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。防水シート固定板のネジ孔は例えばパンチング加工、プレス加工、エンボス加工などにより穿孔することができ、前述のようなネジ孔の形状に対応した金型を用いて孔開け加工を行う。
【0018】
続いて本発明の防水シート固定板を用いた防水シートの固定構造について説明する。本発明の防水シート固定板は固定用ネジにより下地に固定され、防水シートは下地に固定された該防水シート固定板に固定される。図3に本発明の防水シート固定板を用いた防水シートの固定構造の一実施形態を示す。下地4の上に防水シート固定板1が載置され、防水シート固定板1のネジ孔1aを通して固定用ネジ2が下地4に留め付けられ防水シート固定板1が下地4に固定されており、その上から敷設された防水シート3の裏面と防水シート固定板1の表面とが接合されている。防水シート固定板1のネジ孔1aは厚み方向に突出することなく平坦に形成され、下地4から浮く箇所なく配置されており、ネジ孔1aに留め付けられた固定用ネジ2のネジ頭部の上面と防水シート固定板の上面がほぼ同じ高さで略面一に固定されている。このように防水シート固定板の上面と固定用ネジのネジ頭部の上面との間に段差が生じないようにすることで、防水シートを敷設固定する際に仕上がりを平滑にすることができるとともに、突出したネジ頭部によって防水シートを傷つけることを防ぐことができる。防水シート固定板の上面に対するネジ頭部上面の突出高さは1.2mm未満がよく、1mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましい。
【0019】
下地の種類としては特に限定されず、コンクリート下地、軽量発泡コンクリート下地、金属下地、木質下地や、これらの下地の上に載置されたケイカル板などの無機質ボードも含まれる。
【0020】
防水シート固定板を下地に固定するための固定用ネジは、例えば図4に示すようなタッピングネジやドリルネジ、コースレッドなどが好適に用いられる。これらのネジは雌ネジのない下地にねじ立てしながら下地に留め付けられるネジである。材質は鉄(炭素鋼)またはステンレスのものが使用でき、各種表面処理が施されていてもよい。ネジ山の形状やピッチ等は留め付ける下地に合わせて適宜選択できる。頭部の形状は特に限定されないが、鋼板を下地に留め付けた後に頭部の突き出しが少ないものが好ましく、サラ、フレキ、ラッパ、ウェハー、平などが好適である。図4のような頭部側面にリブを有するフレキ形状の頭部を有するネジは、防水シート固定板を留め付ける際に頭部側面のリブがネジ孔の周縁部から固定板およびその下の下地表面を削りながら留められるため、留め付け後に防水シート固定板の上面と固定用ネジのネジ頭部の上面との間に段差が生じずに略面一となりやすく好ましい。
【0021】
本発明の防水シート固定板は通常の固定板と同様に防水シートの機械的固定工法に使用することができ、また接着工法においても、下地の立ち上がり部や段差部など、部分的に機械的固定で防水シートを固定する場合にも用いることができる。特に立ち上がり部や段差部は視覚的に目立ちやすい部分であり、本発明の防水シート固定板を用いることで施工後の防水シートの表面を平滑な状態に仕上げることができる。
【0022】
図5は、凸状の段差部を有する下地に本発明の防水シート固定板を用いて熱可塑性樹脂製の防水シートを施工した防水シート固定構造の部分断面図を示している。段差部分の下地の頂部41および立ち上がり部42には、それぞれ平板状の防水シート固定板11,12が各々に形成されたネジ孔(図示なし)から下地に打ち込まれた固定用ネジ2により固定されている。防水シート固定板11,12は表面を熱可塑性樹脂で覆われた樹脂被覆鋼板からなり、段差部分を覆う防水シート31は防水シート固定板11,12に接合されており、平場を覆う防水シート32は接着剤(図示せず)により下地43に固定されている。防水シート31と防水シート32の重なり部分は、溶剤による溶着や熱風溶接機による溶接などにより接合されている。防水シート31の端部はシーリング材により処理されている。
【0023】
図6は、立ち上がり壁付近の下地に本発明の防水シート固定板を用いて熱可塑性樹脂製の防水シートを施工した防水シート固定構造の部分断面図を示している。平場の下地43と立ち上がり壁の下地44の交わる部分に、断面がL字型の長尺状の防水シート固定板13がネジ孔(図示なし)から下地に打ち込まれた固定用ネジ2により固定されている。図6では固定用ネジ2が立ち上がり壁の下地44に打ち込まれているが、平場の下地43に固定用ネジ2を打ち込んでもよく、両方の下地に打ち込んでもよい。防水シート固定板13のネジ孔も適宜対応して形成される。防水シート固定板13は表面を熱可塑性樹脂で覆われた樹脂被覆鋼板からなり、立ち上がり壁の下地44から平場の下地43を覆う防水シート33は防水シート固定板13に接合されており、平場を覆う防水シート32は接着剤(図示せず)により下地43に固定されている。防水シート33と防水シート32の重なり部分は、溶剤による溶着や熱風溶接機による溶接などにより接合されている。防水シート33の端部はシーリング材により処理されている。
【0024】
続いて本発明の防水シート固定板を用いた防水シートの固定方法について説明する。まず下地の上に本発明の防水シート固定板を配置し、ネジ孔を通して固定用ネジを下地に打ち込み防水シート固定板を固定する。この際、防水シート固定板の上面と固定用ネジのネジ頭部の上面とを略面一とすることが望ましい。下地に固定された防水シート固定板の上から防水シートを敷設し、防水シートの下面と防水シート固定板の上面とを接合する。防水シートの下面と防水シート固定板の上面とは、溶剤による溶着や熱風溶接機などによる溶接、または誘導加熱などにより接合する。
【実施例
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
厚さ1.2mm、幅50mm、長さ300mmの塩化ビニル系樹脂被覆鋼板(塩ビ鋼板)に表1、表2に記載の形状の平坦なネジ孔を長さ方向に約40mm間隔をあけて幅方向中央部に複数、パンチングプレス加工により穿孔して防水シート固定板を作製し、防水シート固定板を合板(12mm×2枚)上に重ねた無機質板(10mm)の上に載置し、呼び径3.8mm、ネジ頭径7.5mm、長さ32mmのフレキ形状の頭部を有するコースレッドビスである固定用ネジをネジ孔に打ち込み防水シート固定板を固定した。このときの防水シート固定板上面からの固定用ネジの突出高さと、削れた下地の直径を計測した。削れた下地の直径は固定用ネジを取り外して計測した。表1、2の計測値はn=3での平均値である。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表1,2より、実施例1~9の細孔を有するネジ孔を備えた防水シート固定板を用いたものは、固定用ネジの突出高さは1.0mm以下であり、また防水シート固定板の下に位置する下地部分が多く削られ固定用ネジのネジ頭部が深く固定されていることが分かる。これは細孔を有するネジ孔の中心部に固定用ネジが旋回しながら打ち込まれる際に、固定用ネジがネジ孔周囲の鋼板の角部を削りながら打ち込まれることにより、固定用ネジが防水シート固定板を下地に固定しつつ深く下地に打ち込まれネジ頭部の突出を抑えるものと考えられる。これに対し比較例1の円孔のみのネジ孔を備えた防水シート固定板は、固定用ネジの突出高さが1.0mmを超えており、固定用ネジによる下地削れ直径は実施例より小さく、平滑性が不十分であった。
【0030】
厚さ1.2mm、幅100mm、長さ395mm、高さ10mmの断面略L字型の塩ビ鋼板に、表3に記載のネジ孔を長さ方向の両端から35mm、幅方向端から10mmの位置に2か所設けた防水シート固定板を用い、防水シート固定板の固定性能試験を行った。試験方法は、合板(12mm×2枚)上に重ねた無機質板(10mm)の上に各防水シート固定板を載置し、呼び径3.8mm、ネジ頭径7.5mm、長さ32mmのフレキ形状の頭部を有するコースレッドビスである固定用ネジをネジ孔2か所に打ち込み防水シート固定板を固定した後、長さ400mm、幅150mm、厚さ2.0mmの塩化ビニル系防水シートを、熱風溶接機を用いて防水シート固定板に融着したものを試験体とし、各試験体を引張試験機に固定して図9に示すように防水シートを引張試験機のチャックに挟み、チャックを引張速度10mm/minで引っ張ったときの同変位における防水シート固定板の固定状態を確認した。また各試験体作成時の固定用ネジの突出高さも表3に示した。
【0031】
<防水シート固定板の固定状態の評価>
○:固定保持
×:固定外れ
【0032】
【表3】
【0033】
実施例11はチャックの変位が20mmの時点では防水シート固定板の固定状態に変化はなく固定保持しており、変位が40mmの時点では防水シート固定板が浮き上がりネジが外れた状態であった。実施例10においては変位が40mmの時点でも防水シート固定板の固定状態に変化はなく固定を保持していた。これより、各施工現場における防水シートの動きを想定し、ネジ孔の細孔の長さや幅を設定する必要があると言える。例えば、機械的固定工法においては防水シートが下地に対して部分的に固定されているため風などの影響を受け防水シートの変位は大きくなるためそれに耐え得る防水シート固定板の固定状態が必要となるが、接着工法においては全面接着を基本としているため防水シートの変位は小さく、接着工法における一部の立ち上がり部や段差部においては小さい変位に耐え得る防水シート固定板の固定状態を維持できれば十分である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の防水シート固定板およびこれを用いた防水シート固定構造は、防水シートを下地に敷設固定する際に平滑な仕上がりを得ることができるため各種の防水シート固定工法に利用することができ、特に接着工法における一部の立ち上がり部や段差部において有用である。
【符号の説明】
【0035】
1,11,12,13 防水シート固定板
1a ネジ孔
2,6 固定用ネジ
3,31,32,33 防水シート
4,41,42,43,44 下地
5 従来の防水シート固定板
7 無機質板
8 合板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9