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特許7590101土石流対策工構造、土石流対策工構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】土石流対策工構造、土石流対策工構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023199698
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】399035386
【氏名又は名称】株式会社本久
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】小布施 栄
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-143557(JP,A)
【文献】特開2009-127280(JP,A)
【文献】特開2011-084882(JP,A)
【文献】特開2021-147823(JP,A)
【文献】特開平06-010329(JP,A)
【文献】特開昭57-205604(JP,A)
【文献】特開2006-052540(JP,A)
【文献】特開昭58-210205(JP,A)
【文献】特開2002-180453(JP,A)
【文献】特開2011-117247(JP,A)
【文献】特開2009-167629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無流水渓流や小規模渓流に構築され、地盤を掘削して形成した基礎工穴内に現地発生土砂を含む母材とセメントミルク又はセメントと水を投入して、撹拌、混錬して前記基礎工穴内において生成した泥状の改良土を固化させた固化体からなる改良地盤と、鋼管、H形鋼、チャネルのいずれかからなり前記改良地盤に略鉛直方向に挿入、建て入れされ前記改良地盤と一体化された複数の支持部材と、を有し、上部に上部構造物が配置される土石流対策工基礎工を備えている、
ことを特徴とする土石流対策工構造。
【請求項2】
前記支持部材は、上部に鋼管、H形鋼、チャネルのいずれかからなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材を連結する連結部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の土石流対策工構造。
【請求項3】
前記複数の支持部材は、
土石流の流れに沿って見たときに幅方向に配置される複数の第1支持部材と、
前記第1支持部材と対応し土石流の流れ方向の下流側に配置された複数の第2支持部材と、
を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の土石流対策工構造。
【請求項4】
前記第1支持部材と前記第2支持部材を連結する梁部材を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の土石流対策工構造。
【請求項5】
前記支持部材の上部に上部構造物である鋼管、H形鋼、チャネルのいずれかからなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材が連結されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4に記載のいずれか一項に記載の土石流対策工構造。
【請求項6】
無流水渓流や小規模渓流に位置される土石流対策工構造構築予定地を掘削して基礎工穴を形成し、
前記基礎工穴内に現地発生土砂を含む母材とセメントミルク又はセメントと水を投入、撹拌して前記基礎工穴内において泥状の改良土を生成し、
前記基礎工穴内に所定量の泥状の改良土が生成されたら、複数の鋼管、H形鋼、チャネルのいずれかからなる支持部材を前記泥状の改良土に略鉛直方向に挿入、建て入れして泥状の改良土を固化させて、泥状の改良土の固化体からなる改良地盤と建て入れした支持部材とが一体化された土石流対策工基礎工を構築する、
ことを特徴とする土石流対策工構築方法。
【請求項7】
前記複数の支持部材として、
土石流の流れに沿って見たときに幅方向に配置される複数の第1支持部材と、
前記第1支持部材と対応し土石流の流れ方向の下流側に配置された複数の第2支持部材と、を挿入、建て入れして土石流対策工基礎工を構築する、
ことを特徴とする請求項6に記載の土石流対策工構築方法。
【請求項8】
複数の土石流対策工基礎工を備えた土石流対策工構造を構築する土石流対策工構築方法であって、
前記基礎工穴を掘削する複数の区画を設定し、
いずれかの区画に請求項6又は請求項7に記載の土石流対策工基礎工構造を形成し、
一つの土石流対策工基礎工を形成した後に別の区画に基礎工穴を形成し、順次土石流対策工基礎工を構築する、
ことを特徴とする土石流対策工構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
無水渓流(小規模渓流)をはじめとする軟質な地盤等に用いられる土石流対策工構造、土石流対策工構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、豪雨災害が頻発化しそれに伴って土石流災害も増加する傾向にあるが、なかでも人的被害を伴う土砂災害の特徴として小規模渓流または無流水渓流で発生する土砂災害が指摘されている。例えば、令和4年3月に国土交通省水管理・国土保全局砂防部より発出された「無流水渓流対策に係る技術的留意事項(試行案)」によると、土石流が発生する可能性がある無流水渓流や小規模渓流として以下のような特徴が示されている。
1)流路が不明瞭で常時流水がなく、平常時の土砂移動が想定されない渓流
2)渓床勾配が10°程度以上で流域全体が土石流発生・流下区間である渓流
さらに、その解説によれば「無流水渓流は谷形状を呈しているものの、流域の大半が0次谷ないし斜面で構成されることが多く、中小出水時の土砂流出の頻度やその規模は小さい」と考えられている。また、無流水渓流や小規模渓流では、「谷出口に住居が近接していることが多く、土石流が発生すると人的被害に直結する可能性が高い」ことが指摘され、対策の必要性が示されている。
【0003】
そして、このような渓流においては小規模であるために、通常行われている土石流対策工(砂防堰堤)では施設規模が過大となるばかりでなく住居の近接や工事用道路の確保が制約となり、通常実施されるような砂防施設構築が困難であることが多く、施工性やコスト縮減の観点から合理的な施設構築方法が望まれている。
そうした制約条件の多い無流水渓流(「小規模渓流」)の土石流対策工について、コンクリートを基礎として鋼材を格子状またはビーム状にして構築するものや、鋼管杭を打設して鋼材を連結した土石流対策工構造が開示されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】https://www.proteng.co.jp/product_detail.php?keyno=33
【文献】http://jw-safety.jp/product/jdfence/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような土石流対策工は施工条件や地盤条件による制約を受け、必ずしも施工性が良好であるとはいい難い点がある。例えば、コンクリート基礎を前提とする場合、工事用道路を確保できない狭い渓流ではコンクリートを現場に搬入することが困難である場合や、杭式を前提とする工事では大がかりな施工機械の必要であったり地中内の礫や玉石により杭の打ち込みが困難な場合がある。
【0006】
また、無流水渓流(小規模渓流)は崩壊堆積物や土石流堆積物で形成されていることがあるなど地盤が相対的に軟質な場合もあり、コンクリート基礎を前提とした小規模土石流対策工の支持地盤として不適切となる可能性があることや、杭式の場合は土石流荷重に対して受動抵抗が小さくなることが課題として挙げられ、地盤の状態により構造物の信頼性に大きな影響を生じる場合がある。
【0007】
本発明はかかる技術的背景に基づいて創案されたものであって、軟質な地盤等においても地盤の影響を受けにくく、長期間にわたる耐久性と高い信頼性を確保することが可能な土石流対策工構造、土石流対策工構築方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、
無流水渓流や小規模渓流に構築され、地盤を掘削して形成した基礎工穴内に現地発生土砂を含む母材とセメントミルク又はセメントと水を投入して、撹拌、混錬して前記基礎工穴内において生成した泥状の改良土を固化させた固化体からなる改良地盤と、鋼管、H形鋼、チャネルのいずれかからなり前記改良地盤に略鉛直方向に挿入、建て入れされ前記改良地盤と一体化された複数の支持部材と、を有し、上部に上部構造物が配置される土石流対策工基礎工を備えている、
ことを特徴とし、
または、
前記支持部材は、上部に鋼管、H形鋼、チャネルのいずれかからなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材を連結する連結部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の土石流対策工構造。
ことを特徴とし、
または、
前記複数の支持部材は、
土石流の流れに沿って見たときに幅方向に配置される複数の第1支持部材と、
前記第1支持部材と対応し土石流の流れ方向の下流側に配置された複数の第2支持部材と、
を備える、
ことを特徴とし、
または、
前記第1支持部材と前記第2支持部材を連結する梁部材を備える、
ことを特徴とし、
または、
前記支持部材の上部に上部構造物である鋼管、H形鋼、チャネルのいずれかからなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材が連結されている、
ことを特徴とし、
または、
土石流対策工構築方法であって、
無流水渓流や小規模渓流に位置される土石流対策工構造構築予定地を掘削して基礎工穴を形成し、
前記基礎工穴内に現地発生土砂を含む母材とセメントミルク又はセメントと水を投入、撹拌して前記基礎工穴内において泥状の改良土を生成し、
前記基礎工穴内に所定量の泥状の改良土が生成されたら、複数の鋼管、H形鋼、チャネルのいずれかからなる支持部材を前記泥状の改良土に略鉛直方向に挿入、建て入れして泥状の改良土を固化させて、泥状の改良土の固化体からなる改良地盤と建て入れした支持部材とが一体化された土石流対策工基礎工を構築する、
ことを特徴とし、
または、
前記複数の支持部材として、
土石流の流れに沿って見たときに幅方向に配置される複数の第1支持部材と、
前記第1支持部材と対応し土石流の流れ方向の下流側に配置された複数の第2支持部材と、を挿入、建て入れして土石流対策工基礎工を構築する、
ことを特徴とし、
または、
複数の土石流対策工基礎工を備えた土石流対策工構造を構築する土石流対策工構築方法であって、
前記基礎工穴を掘削する複数の区画を設定し、
いずれかの区画に請求項6又は請求項7に記載の土石流対策工基礎工構造を形成し、
一つの土石流対策工基礎工を形成した後に別の区画に基礎工穴を形成し、順次土石流対策工基礎工を構築する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る土石流対策工構造、土石流対策工構築方法によれば、軟質な地盤等においても土質変化による品質への影響や転石などの障害物による施工への影響を受けにくく、上部構造物が地盤と一体化されるので長期間にわたる耐久性と高い信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る土石流対策工構造の概略構成を説明する土石流の流れ方向に沿って見た正面図である。
図2】一実施形態に係る土石流対策工構造の要部構成を説明する土石流の流れ方向に沿って見た正面図である。
図3】一実施形態に係る土石流対策工構造の要部構成を説明する図であり、(A)は側面図を、(B)は斜視図を示している。
図4】一実施形態の変形例に係る土石流対策工構造の要部構成を説明する図であり、(A)は側面図を、(B)は斜視図を示している。
図5】一実施形態に係る土石流対策工構築方法の概略を説明する図である。
図6】一実施形態に係る土石流対策工構築方法において複数の土石流対策工構造を構築する際の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図3を参照して、本発明の一実施形態に係る土石流対策工構造について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る土石流対策工構造の概略構成を説明する土石流の流れ方向に沿って見た正面図であり、図2は土石流対策工構造の要部構成を説明する土石流の流れ方向に沿って見た正面図であり、図3は要部構成を説明する図であり、図3(A)は側面図を、図3(B)は支持部材の斜視図を示している。
図において、符号1は土石流対策工構造(全体)を、符号10は設定した区画に形成された土石流対策工基礎工を、符号11は改良地盤を、符号20は支持部材を、符号21は第1支持部材を、符号22は第2支持部材を、符号50は鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)を示している。
【0012】
土石流対策工構造1は、例えば無水流渓流(小規模渓流)等の軟質地盤に構築され、図1に示すように、例えば5つの地盤Gに設定された区画に対応する土石流対策工構造1A、1B、1C、1D、1Eを備え、最も低位置にある土石流対策工構造1Cから左右にそれぞれ土石流対策工構造1B、土石流対策工構造1A、及び土石流対策工構造1D、土石流対策工構造1Eが順次高位置となるように配置されている。
また、それぞれの土石流対策工構造1(1A、1B、1C、1D、1E)は、図2に示すように、例えば土石流対策工基礎工10と、被覆工12と、フレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(柱材)(上部構造物)50とを備えている。
なお、土石流対策工構造1を構成する土石流対策工構造の数及び配置は任意に設定してもよく、例えばひとつの土石流対策工構造により土石流対策工構造1を構成してもよい。
【0013】
土石流対策工基礎工10は、例えば改良地盤11と、複数の支持部材20とを備えている。
改良地盤11は、ブロック範囲の対象土砂を一度掘り出して、掘り出した土を戻しながらセメントミルク等と混合攪拌する。具体的には、設定した区画ごとに掘削して個別に形成した基礎工穴内で現地発生土砂を含む母材と、セメントミルク又はセメント及び水を混合、撹拌して生成した泥状の改良土が固化した固化体により形成されている。ここで、現地発生土砂を含む母材としては、例えば現地発生土砂に礫、砕石や製鋼スラグなどの改質材を含んでもよい。なお、泥状の改良土11Aはソイルセメント材(砂防ソイルセメント材)流動タイプと概ね同等の性状であり、固化した改良地盤(固化体)は概ね低強度(<3N/mm)のソイルセメント(砂防ソイルセメント)流動タイプと同等である。
【0014】
被覆工12は土石流対策工基礎工10の上部に配置されている。
被覆工12は、改良地盤11が地表に露出する場合は劣化による影響が考えられるため、保護コンクリートや吹付モルタル、土砂等で被覆してもよい。なお、被覆工12の構成や被覆工12を配置するかどうかは任意に設定してもよい。
【0015】
支持部材20は、例えば第1支持部材21と、第2支持部材22とを備え、支持部材20の上部(上端部)にはプレート(連結部)20Aが形成されている。
第1支持部材21、第2支持部材22の構成は任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、第1支持部材21、第2支持部材22は、例えばH形鋼により構成されていて、泥状の改良土が固化して集積体が形成されたら改良地盤11が形成される前に、泥状の改良土の集積体に略鉛直方向に挿入、建て入れして埋設されている。
【0016】
第1支持部材21は、例えば土石流の流れ方向に沿って見たときの幅方向に複数配置されている。
また、第1支持部材21の上部には、鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)50を連結するためのプレート(連結部)21Aが形成されている。プレート21Aは例えば溶接やボルトにより取り付けられている。なお、連結部21Aの構成は任意に設定してもよく、プレート21Aに限定されずフランジ、ブラケット、締結構造等を装着して構成してもよいし第1支持部材21の上部に形成されたボルト穴等により構成してもよい。
【0017】
第2支持部材22は、例えば複数の第1支持部材21のそれぞれと対応して土石流の流れ方向の下流側に配置されている。
また、第2支持部材22の上部には、鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)50を連結するためのプレート(連結部)22Aが形成されている。プレート22Aは例えば溶接やボルトにより取り付けられている。なお、連結部21Aの構成は任意に設定してもよく、プレート22Aに限定されずフランジ、ブラケット、締結構造等を装着して構成してもよいし第1支持部材21の上部に形成されたボルト穴等により構成してもよい。
【0018】
鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)50は、図1図2に示すように、それぞれの第1支持部材21、第2支持部材22の上部に連結部21A、22Aを介して連結され、略鉛直方向に伸びる柱材を備えている。
なお、鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材50は、例えば土石流を抑止するための鋼材やワイヤ等を備えることで透過型砂防堰堤を構成してもよい。そして、流木や土石が補足され下流に流出することを抑止する。
【0019】
次に、図4を参照して、一実施形態の変形例に係る土石流対策工構造について説明する。図4は、一実施形態の変形例に係る土石流対策工構造の要部構成を説明する図であり、図4(A)は側面図を、図4(B)は斜視図を示している。図4において、符号40は梁部材を示している。
変形例に係る土石流対策工構造1(1A、1B、1C、1D、1E)は、図4に示すように、例えば土石流対策工基礎工10と、被覆工12と、梁部材40と、鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)50とを備えている。
変形例に係る土石流対策工構造1が一実施形態に係る土石流対策工構造1と異なるのは、変形例に係る土石流対策工構造1が梁部材40を備え、支持部材20の上部(上部側面)にブラケット(連結部)20Bが形成されている点である。その他は一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0020】
第1支持部材21、第2支持部材22は、例えば土石流の流れ方向に沿って見たときの幅方向に複数配置され、第1支持部材21、第2支持部材22の上部(上部側面)には、梁部材40を連結するための略L字形のブラケット(連結部)21B、22Bが形成されている。ブラケット(連結部)21B、22Bは例えば溶接やボルトにより取り付けられている。なお、連結部21B、22Bについては、ブラケット(連結部)21B、22Bに限定されず、フランジ、プレート、締結構造等、任意に設定してもよい。
【0021】
梁部材40は、例えばH形鋼により構成され、複数の第1支持部材21の上部に形成された連結部21Aと、それぞれの第1支持部材21と対応して下流側に配置された第2支持部材22の上部に形成された連結部22Aを略水平方向に連結し、第1支持部材21と第2支持部材22が一体的に形成されることで上下流方向の強度を向上する構成とされている。
【0022】
次に、図5図6を参照して、一実施形態に係る土石流対策工構築方法について説明する。
図5は一実施形態に係る土石流対策工構築方法の概略を説明する図であり、図6は複数の土石流対策工構造を構築する際の概略を説明する図である。
【0023】
まず、図5を参照して、設定した区画に新たに土石流対策工を形成する土石流対策工構築方法について説明する。
(1)設定区画へのブロック状改良地盤の形成
無水流渓流(小規模渓流)等に堆積する軟質地盤に土石流対策工構造を構築する際に土石流対策工基礎工を形成する区画を設定し、図5(A)に示すように、設定した区画をバックホウTにより平面視略矩形状のブロック状地盤改良工を形成するために基礎工穴Mを掘削する。
具体的には、施工箇所平面に区画割りしたブロックの区画(範囲)を、所定の深さまで掘り上げる。一回で掘る深さは0.5m~5.0mとすることが好適である。
【0024】
(2)基礎工穴内において泥状の改良土を生成
次に、掘り出した現地発生土砂を含む母材とセメントミルク又はセメントと水を基礎工穴Mに投入、バックホウT又はミキシングバケットを装着したバックホウTにより母材とセメントミルク又はセメントと水を撹拌、混合して泥状の改良土11Aを生成する。
この地盤改良方法は、現場にバックホウTが進入することができれば施工が可能である。施工現場へのセメントミルクの供給は、近傍に設けたスラリープラントからグラウトポンプで供給してもよいし、バックホウTで袋入りセメントを現場に運搬し、近傍に設置した水タンクからポンプアップして供給することでもよい。よって工事用道路が確保できない渓流であっても施工が可能となる。また、平面視矩形状の掘削をともなうブロック状地盤改良工法において対象個所を一時的に掘り上げる工程により、礫などの地中障害物をその過程で除去できるため、 H形鋼や鋼管の挿入が容易となることに加えて地中障害物による高止まりを防止でき、支持部材を高い精度での打ち込むことが可能となる。
掘り上げた土砂は、例えば1.0m~1.5m程度の厚さで投入し、その土砂量に対応したセメントミルクまたはセメントと水を投入し、撹拌、混錬して泥状の改良地盤11を形成する。なお、投入する土砂の厚さは任意に設定してもよい。
そして、図5(C)に示すように、この工程を繰り返すことで改良地盤11を形成する。泥状の改良地盤のコンシステンシーはシリンダーフローにより管理し、83mm~150mmの範囲とすることが好適である。
【0025】
(3)支持部材の挿入、建て入れ
次いで、図5(D)に示すように、基礎工穴M内に所定量の泥状の改良土11Aが生成されて、泥状の改良土11Aの集積体11Bが形成されたら、泥状の改良土11Aの集積体11Bに複数の支持部材20を挿入、建て入れ、固化して土石流対策工基礎工10が形成される。
その結果、改良地盤11と支持部材20を構成するH形鋼が一体化される。
なお、支持部材20が立設されていない土石流対策工基礎工10を構築する場合には上記支持部材の挿入、建て入れを省略する。
【0026】
(4)上部構造物の連結
その後、図5(E)に示すように、挿入した支持部材20の上部(上端)にフランジやプレートを設置することで上部構造物50を連結することが可能となる。このように上部構造物50と一体となった支持部材20を構成するH形鋼または鋼管は固化した改良地盤11と一体になって移動土砂の荷重を支えることで、軟質な地盤においても信頼性の高い小規模渓流構造物の基礎構築が可能となる。
なお、複数の土石流対策工構造1を構築する場合には上部構造物50の連結をまとめて実施してもよい。
【0027】
次に、図6を参照して、複数の土石流対策工構造を構築する際の概略を説明する。
(1)基礎工穴を掘削する複数の区画を設定する。
(2)次いで、上記手順によっていずれかの区画に土石流対策工基礎工を構築する。
(3)図6(A)に示すように、例えば(2)で構築したいずれかの区画に隣接する区画に基礎工穴Mを掘削する。
新たな基礎工穴を既設土石流対策工構造に隣接させるかどうかは任意に設定してもよい。
(4)次に、図6(B)に示すように、基礎工穴M内において泥状の改良土11Aを生成する。
(5)図6(C)に示すように、上記(4)で示す手順を繰り返して、基礎工穴M内に改良地盤を形成するために所定量の泥状の改良土11Aを集積した集積体11Bを形成する。
(6)次いで、図6(D)に示すように、基礎工穴内に所定量の泥状の改良土11Aが生成され集積体11Bが形成されたら、支持部材20を挿入、建て入れするのに適した硬さまで固化したら、泥状の改良地盤11に複数の支持部材20を挿入、建て入れ、固化して土石流対策工基礎工10が形成される。
【0028】
一実施形態に係る土石流対策工構造、土石流対策工構築方法によれば、軟質な地盤等においても土質変化による品質への影響や転石などの障害物による施工への影響を受けにくく、長期間にわたる耐久性と高い信頼性を確保することができる。
また、改良地盤11と第1支持部材21と、第2支持部材22を構成するH形鋼が一体となった基礎工10は、鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)50等の無流水渓流(小規模渓流)土石流対策構造物1と連結して基礎工10と一体化して土石流や崩壊土砂の外力に抵抗するとともに、セメントミルク又はセメントと水と混合されて強度増加した改良地盤11がH形鋼または鋼管に作用する応力を補強するとともに長期的な耐久性を与えることができる。
また、このように上部構造物と一体となったH形鋼または鋼管は固化した改良地盤と一体になって移動土砂の荷重を支える。こうして、軟質な地盤においても信頼性の高い小規模渓流構造物の土石流対策工基礎工を構築することができる。
また、変形例のように、第1支持部材21と、第2支持部材22とを、梁部材40により上下流方向に連結することにより、改良地盤11と第1支持部材21、第2支持部材22がさらに一体強化された土石流対策工基礎工10を構築することができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、土石流対策工構造1(1A、1B、1C、1D、1E)が支持部材20を有する土石流対策工基礎工10を備えている場合について説明したが、支持部材20を有するかどうかは任意に設定することが可能であり、支持部材20が挿入されていない土石流対策工構造1としてもよい。
この場合、鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)50をアンカー等により土石流対策工基礎工10に固定することで、鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)50の回転(倒れ)や滑動を抑止してもよい。
また、土石流対策工構造1が複数の土石流対策工構造を備えている場合に支持部材20を備えた土石流対策工構造と備えていない土石流対策工構造を任意に配列してもよく、ひとつの改良地盤により土石流対策工構造を構成してもよい。
【0030】
また、上記実施形態においては、土石流対策工構造、土石流対策工構築方法を無流水渓流(小規模渓流)に適用する場合について説明したが、軟弱地盤または支持力が不足する地盤において土砂災害に伴う緊急対策工や地盤に支持、滑動、転倒に対する安定性を要する砂防施設に適用してもよい。
【0031】
また、上記実施形態においては、改良地盤に建て入れされる支持部材がH形鋼からなる第1支持部材21、第2支持部材22により構成されている場合について説明したが、支持部材20(21、22)の配置、構成については任意に設定してもよい。例えば、第1支持部材21のみを備えた構成としてもよいし、第2支持部材22に加えて第1支持部材21と対応して下流側に位置される第3以降の支持部材20を配置してもよい。また、土石流の流れに沿って見たときの幅方向における第1支持部材21と対応しない任意の位置に支持部材20を配置してもよい。
また、第1支持部材21、第2支持部材22、追加配置した支持部材20の全部又は一部を鋼管やチャネルをはじめとする他の種類の形鋼により構成してもよい。
【0032】
また、上記実施形態においては、すべての第1支持部材21と対応して第2支持部材22が配置され、すべての第1支持部材21が対応する第2支持部材22とH形鋼からなる梁部材40により連結されている場合について説明したが、梁部材40の配置、構成については任意に設定してもよい。例えば、第1支持部材21のすべて又は一部が第2支持部材22と梁部材40で連結されていない構成としてもよいし、第1支持部材21が下流方向において対応しない第2支持部材22と連結する(例えばたすき掛け等に配置された梁部材40を備えていてもよい。また、梁部材40の全部又は一部を鋼管やチャネルをはじめとするH形鋼以外の種類の形鋼により構成してもよい。
【0033】
また、上記実施形態においては、バックホウTを用いて基礎工穴の掘削、泥状改良土の生成を行う場合について説明したが、バックホウTは掘削手段の一例であり、その他の掘削手段により基礎工穴を掘削し、または他の撹拌手段等により泥状の改良土11Aを生成してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
G 地盤
M 基礎工穴
T バックホウ
1、1A、1B、1C、1D、1E 土石流対策工構造
10 土石流対策工基礎工
11 改良地盤
11A 泥状の改良土
11B (泥状の改良土の)集積体
20 支持部材
21 第1支持部材
22 第2支持部材
40 梁部材
50 鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材(上部構造物)
【要約】
【課題】本発明は、軟質な地盤等においても土質変化による品質への影響や転石などの障害物による施工への影響を受けにくく、長期間にわたる耐久性と高い信頼性を確保することが可能な土石流対策工構造、土石流対策工構築方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、地盤Gを掘削して形成した基礎工穴内で生成した泥状の改良地盤11と、前記改良地盤11に挿入、建て入れされた複数の支持部材20と、を有し、上部に上部構造物50が配置される土石流対策工基礎工1を備え、前記支持部材は、上部に鋼管やH形鋼からなるフレーム構造の鋼製砂防構造物の部材を連結する連結部が形成されている、ことを特徴とする土石流対策工構造である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6