(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車体構造部材
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20241119BHJP
B22D 17/00 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D25/20 E
B22D17/00 B
(21)【出願番号】P 2019009623
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 宗志朗
(72)【発明者】
【氏名】各務 綾加
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 享史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠
(72)【発明者】
【氏名】有本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】廣川 公
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】草野 顕子
【審判官】横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/73010(US,A1)
【文献】特開2006-347464(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013221512(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D25/08,B62D25/20,B22D17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型により成形された車体構造部材であって、
前記車体構造部材の主要部を構成する一般部と、
前記一般部から立設するリブと、
前記一般部から立設し、当該一般部と前記リブを繋ぐ分岐部における当該リブ側に配置され、当該リブよりも厚肉に形成された中実状の
第1の厚肉部と、
を含んで構成され、
前記車体構造部材は、車両前後方向に沿って配設され、かつ車両上下方向に沿って湾曲し、又は車両幅方向に沿って湾曲してアーチ状に形成され、当該車体構造部材の曲率が大きい側の湾曲部において複数の前記
第1の厚肉部が隣り合って設けられ、隣り合う当該
第1の厚肉部間にはリブは設けられていない車体構造部材。
【請求項2】
前記リブは、車両前後方向に沿って形成された横リブと、車両上下方向に沿って形成され前記横リブと交叉する縦リブと、を含んで構成され、
第2の厚肉部は前記横リブと前記縦リブが交叉する交点に設けられ、
当該リブよりも厚肉に形成されている請求項1に記載の車体構造部材。
【請求項3】
前記車体構造部材には、前記一般部の外縁から立設し前記リブと繋がる側壁部がさらに設けられ、前記
第1の厚肉部は前記側壁部と一体的に設けられている請求項1又は請求項2に記載の車体構造部材。
【請求項4】
少なくとも前記第1の厚肉部は、前記金型が型開きされた状態で金型から前記車体構造部材を離型させるため当該金型から突出する押出し部材が当接し押圧される押出しピン座を含んで構成されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車体構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルミダイキャストで形成され閉断面部を構成する部材(以下、「車体構造部材」という)を介して、フロントサイドメンバとフロアメンバが接続された車体構造に関する技術が開示されている。上記先行技術では、車体構造部材の閉断面部にはトラス形状にリブが形成され、剛性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、車体構造部材に対して車両前後方向に沿って衝突荷重が入力された場合、曲げモーメントの発生により閉断面部が大きく曲げ変形し破断する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、衝突荷重の入力時に曲げ変形を抑制することが可能な車体構造部材を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車体構造部材は、金型により成形された車体構造部材であって、前記車体構造部材の主要部を構成する一般部と、前記一般部から立設するリブと、前記一般部から立設し、当該一般部と前記リブを繋ぐ分岐部における当該リブ側に配置され、当該リブよりも厚肉に形成された中実状の第1の厚肉部と、を含んで構成され、前記車体構造部材は、車両前後方向に沿って配設され、かつ車両上下方向に沿って湾曲し、又は車両幅方向に沿って湾曲してアーチ状に形成され、当該車体構造部材の曲率が大きい側の湾曲部において複数の前記第1の厚肉部が隣り合って設けられ、隣り合う当該第1の厚肉部間にはリブは設けられていない。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車体構造部材は、金型により成形されている。当該車体構造部材の主要部を構成する一般部からはリブ及び当該リブよりも厚肉に形成された第1の厚肉部が立設している。ここで、当該第1の厚肉部は、中実状を成し、一般部とリブを繋ぐ分岐部における当該リブ側に配置されている。言い換えると、当該第1の厚肉部は、車体構造部材の成形時に当該車体構造部材を形成する材料が金型内において一般部を形成する主流から当該リブを形成する支流へ移行する分岐部に配置されている。
【0008】
一般に、成形品において、金型に形成された湯口から金型内に材料が充填される際、金型において、成形品の主要部を構成する一般部を形成する主流から、一般部よりも肉厚が薄いリブ等を形成する支流へ材料が流動するとき、流路が狭くなる分、湯流れが悪くなり(いわゆる湯流れ不良)、成形品において引け巣等の欠陥が生じる可能性がある。
【0009】
このため、本発明では、車体構造部材の一般部とリブを繋ぐ分岐部では、当該一般部を流れる主流からリブを流れる支流へ移行するが、この分岐部におけるリブ側に当該リブよりも厚肉に形成された第1の厚肉部を設けている。これにより、湯流れ不良の抑制を可能としている。その結果、引け巣等による車体構造部材の欠陥を防ぎ、衝突荷重の入力時の曲げ変形を抑制し、衝突荷重の入力時の割れや破断を防ぐことが可能となる。
さらに、本発明では、車体構造部材は、車両前後方向に沿って配設されており、車両上下方向に沿って湾曲し、又は車両幅方向に沿って湾曲してアーチ状に形成されている。そして、当該車体構造部材において、曲率が大きい側の湾曲部に複数の第1の厚肉部が隣り合って設けられており、隣り合う当該第1の厚肉部間にはリブは設けられていない。
前述のように、当該車体構造部材は車両前後方向に沿って配設され、いわゆるアーチ状に形成されている。このため、車両の前面衝突(以下、「車両の前突」という)又は車両の後面衝突(以下、「車両の後突」という)により、車体構造部材において、車両前後方向に沿って衝突荷重が入力されると、車体構造部材には曲げモーメントが発生する。この場合、アーチ状を成す車体構造部材では、曲率の小さい側の湾曲部には引張力が作用し、
曲率が大きい側の湾曲部には圧縮力が作用する。
このため、本発明では、当該車体構造部材の曲率が大きい側の湾曲部において、複数の第1の厚肉部が隣り合って設けられ隣り合う当該第1の厚肉部間にはリブは設けられていない。これにより、当該湾曲部に圧縮力が作用した際、隣り合う第1の厚肉部同士が干渉し、湾曲部の変形を抑制することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る車体構造部材は、請求項1に記載の本発明に係る車体構造部材において、前記リブは、車両前後方向に沿って形成された横リブと、車両上下方向に沿って形成され前記横リブと交叉する縦リブと、を含んで構成され、第2の厚肉部は前記横リブと前記縦リブが交叉する交点に設けられ、当該リブよりも厚肉に形成されている。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る車体構造部材では、リブは横リブ及び縦リブを含んで構成されており、車両前後方向に沿って横リブが形成されると共に、車両上下方向に沿って縦リブが形成されている。また、横リブと縦リブは交叉しており、第2の厚肉部は当該横リブと縦リブが交叉する交点に設けられ、当該リブよりも厚肉に形成されている。
【0012】
このように、車体構造部材において、当該横リブと縦リブを設けることによって車体構造部材自体の剛性を向上させることができる。そして、当該横リブと縦リブの交点に第2の厚肉部を設けることにより、当該横リブ及び縦リブを補強することができ、車体構造部材自体の剛性をさらに向上させ、車体構造部材の変形を抑制することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の本発明に係る車体構造部材は、請求項1又は請求項2に記載の本発明に係る車体構造部材において、前記車体構造部材には、前記一般部の外縁から立設し前記リブと繋がる側壁部がさらに設けられ、前記第1の厚肉部は前記側壁部と一体的に設けられている。
【0018】
請求項3に記載の本発明に係る車体構造部材では、車体構造部材には、一般部の外縁からリブと繋がる側壁部が立設しており、第1の厚肉部は当該側壁部と一体的に設けられている。このように、車体構造部材において、当該側壁部が設けられることによって、車体構造部材自体の剛性をさらに向上させ、車体構造部材の変形をさらに抑制することが可能となる。
【0019】
ここで、一般部の外縁からリブと繋がる側壁部が立設した場合、車体構造部材の成形時において、一般部及び側壁部からリブへ材料が流れることとなる。つまり、請求項1に記載されている「主流」によって一般部及び側壁部が形成される。したがって、請求項1に記載されている車体構造部材における「一般部」には、請求項4において限定される「側壁部」も含まれる概念となる。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る車体構造部材は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の本発明に係る車体構造部材において、少なくとも前記第1の厚肉部は、前記金型が型開きされた状態で金型から前記車体構造部材を離型させるため当該金型から突出する押出し部材が当接し押圧される押出しピン座を含んで構成されている。
【0021】
請求項4に記載の本発明に係る車体構造部材では、少なくとも第1の厚肉部はいわゆる押出しピン座を含んで構成されている。このため、車体構造部材の成形時に、金型が型開きされた状態で、当該金型から突出する押出し部材が押出しピン座に当接し押出しピン座を押圧することにより、当該押出しピン座を介して、車体構造部材は金型から離型する。
【0022】
すなわち、車体構造部材において金型から当該車体構造部材から離型させるために押出しピン座は必須の構成である。このため、湯流れ不良を抑制するため車体構造部材の一般部を流れる主流からリブを流れる支流へ移行する分岐部に設ける厚肉部を当該押出しピン座と兼用させることで、押出しピン座とは別に厚肉部を形成した場合と比較して、車体構造部材の軽量化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の車体構造部材は、衝突荷重の入力時に曲げ変形を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0024】
請求項2に記載の車体構造部材は、車体構造部材自体の剛性を向上させ、車体構造部材の変形を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0026】
請求項3に記載の車体構造部材は、車体構造部材自体の剛性をさらに向上させ、車体構造部材の変形をさらに抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0027】
請求項4に記載の車体構造部材は、車体構造部材自体の剛性を向上させ、かつ車体構造部材の軽量化を図ることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車体構造部材が適用されたリアフロアサイドメンバを備えた車両下部における後部側を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る車体構造部材が適用されたリアフロアサイドメンバを示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る車体構造部材が適用されたリアフロアサイドメンバの側壁部、縦リブ内を流れる主流及び支流を示す説明用の平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る車体構造部材が適用されたリアフロアサイドメンバの要部を拡大した要部拡大斜視図である。
【
図5】比較例であり、
図3に対応する平面図である。
【
図6】比較例であり、
図4に対応する要部拡大斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る車体構造部材が適用されたリアフロアサイドメンバの要部をさらに拡大した要部拡大斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る車体構造部材が適用されたリアフロアサイドメンバの変形例を示す
図7に対応する要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係る車体構造部材について説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは、車両前後方向前側を示しており、矢印UPは、車両上下方向上側を示している。また、矢印OUTは、車両幅方向の外側を示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0030】
「車体構造部材の構成」
まず、本実施の形態に係る車体構造部材が適用された車両の構成について説明する。
【0031】
図1には、本実施の形態に係る車体構造部材が適用された車両10の下部(以下、「車両下部」という)12における車両10の後部(以下、「車両後部」という)14側を示す平面図が示されている。
【0032】
この図に示されるように、車両10の側部(以下、「車両側部」という)16には、車両前後方向に延びるロッカ18が左右に設けられている。この左右のロッカ18は、当該ロッカ18の長手方向に対して直交する方向(車両上下方向及び車両幅方向)に沿って切断したときの断面形状が閉断面形状とされており、それぞれ車両側部16の骨格の一部を構成している。
【0033】
左右のロッカ18間には、車両前後方向かつ車両幅方向に沿って延在され車室内(キャビン)22の床面を構成するフロアパネル24が設けられており、当該フロアパネル24の車両幅方向の両端部は、左右のロッカ18にそれぞれ結合されている。また、ロッカ18の車両前後方向の後端側には、当該左右のロッカ18間において、車両幅方向に沿ってフロアクロスメンバ28が配設されており、当該フロアクロスメンバ28は、フロアパネル24上に結合されている。
【0034】
また、左右のロッカ18の車両前後方向の後方側には、車両前後方向に沿ってリアフロアサイドメンバ20がそれぞれ延在されている。左右のリアフロアサイドメンバ20間には、フロアパネル24の車両前後方向の後方側に位置し車両前後方向かつ車両幅方向に沿って延在されて車室内22の後部側の床面を構成するセンタフロアパネル26が設けられている。そして、このセンタフロアパネル26の車両幅方向の両端部は、左右のリアフロアサイドメンバ20にそれぞれ結合されている。
【0035】
また、当該リアフロアサイドメンバ20の車両前後方向の中央部52には、左右のリアフロアサイドメンバ20間において、車両幅方向に沿ってフロアクロスメンバ30が配設されており、当該フロアクロスメンバ30は、センタフロアパネル26上に結合されている。
【0036】
さらに、リアフロアサイドメンバ20の車両前後方向の後部54には、左右のリアフロアサイドメンバ20間において、車両幅方向に沿ってフロアクロスメンバ32が配設されている。前述したフロアクロスメンバ30と同様に、当該フロアクロスメンバ32もセンタフロアパネル26上に結合されている。
【0037】
なお、左右のリアフロアサイドメンバ20の車両前後方向の前部50側、つまり、フロアクロスメンバ28とフロアクロスメンバ30の間には、センタフロアパネル26の下方側に燃料タンク34が配設されている。また、左右のリアフロアサイドメンバ20の車両幅方向の外側には、図示はしないが、ショックアブソーバが取付けられるサスペンションタワー36等が設けられている。
【0038】
さらに、左右のリアフロアサイドメンバ20の車両前後方向の後方側には、車両前後方向に沿ってリアフロアサイドメンバリア38がそれぞれ延在されている。また、センタフロアパネル26の車両前後方向の後方側には、車両前後方向かつ車両幅方向に沿って延在され荷室内35の床面を構成するリアフロアパネル37が設けられている。このリアフロアパネル37の車両幅方向の両外側には、車両前後方向かつ車両幅方向に沿って延在されたリアフロアサイドパネル39がそれぞれ設けられており、左右のリアフロアサイドメンバリア38は、このリアフロアサイドパネル39にそれぞれ結合されている。
【0039】
[リアフロアサイドメンバ]
ここで、本実施に形態に係る車体構造部材としてのリアフロアサイドメンバ20について詳述する。まず、リアフロアサイドメンバ20の基本構成について説明し、次いで、リアフロアサイドメンバ20の要部について説明する。
【0040】
<リアフロアサイドメンバの基本構成>
図1に示されるように、リアフロアサイドメンバ20は、平面視で車両幅方向の内側へ向かって突出するように湾曲すると共に、
図2に示されるように、当該リアフロアサイドメンバ20の側面視で車両上下方向の上方側へ向かって突出するように湾曲している(いわゆるアーチ型形状)。なお、
図2には、リアフロアサイドメンバ20の側面図が示されている。
【0041】
当該リアフロアサイドメンバ20は、アルミダイキャストで形成されており、リアフロアサイドメンバ20における車両幅方向に沿って型開きする金型が用いられている。また、当該リアフロアサイドメンバ20は、車両上下方向かつ車両幅方向に沿って切断したときの断面形状が、車両幅方向の外側を開口とするハット型形状を成している。
【0042】
すなわち、当該リアフロアサイドメンバ20は、簡単に説明すると、リアフロアサイドメンバ20の主要部を構成する奥壁部(一般部)40と、当該奥壁部40の外縁から立設し互いに対向して配置された一対の側壁部42、44と、当該側壁部42、44の先端からそれぞれ延出されたフランジ部46、48と、を含んで構成されている。
【0043】
ここで、説明の便宜上、リアフロアサイドメンバ20を車両前後方向に沿って前部50、中央部52、後部54に分けて説明する。なお、
図2に示すリアフロアサイドメンバ20において、上下方向に沿って示された直線Pは、リアフロアサイドメンバ20の前部50と中央部52の境界を示し、直線Qは、リアフロアサイドメンバ20の中央部52と後部54の境界を示している。以下、直線Pを「境界線P」と称し、直線Qを「境界線Q」と称する。
【0044】
また、リアフロアサイドメンバ20の前部50及び後部54には、図示はしないが、サスペンションメンバが取り付けられる、いわゆるサスメン取付部55、57がそれぞれ設けられており、前部50及び後部54において示される中心線R、Sは、それぞれサスメン取付部55、57の軸芯線を示している。以下、中心線Rを「軸芯線R」と称し、中心線Sを「軸芯線S」と称する。
【0045】
(リアフロアサイドメンバの前部)
まず、リアフロアサイドメンバ20の前部50(以下、「リアフロアサイドメンバ前部50という」)について説明する。
【0046】
図1に示されるように、リアフロアサイドメンバ前部50は、車両側部16において車両前後方向に延びるロッカ18に接続される。なお、当該ロッカ18は車両前後方向の後部において別部材としてロッカリア19が設けられた構成であってもよい。また、リアフロアサイドメンバ20では、当該リアフロアサイドメンバ前部50において、ロッカ18と接続される接続部21が別途設けられてもよい。
【0047】
図2に示されるように、リアフロアサイドメンバ前部50は、奥壁部40Aと、側壁部42A、44Aと、フランジ部46A、48Aと、を含んで構成されている。当該奥壁部40Aの上端40A1は、リアフロアサイドメンバ前部50の前端50Aから後端50Bに亘って、車両前後方向の後方側へ向かうにつれて車両上下方向の上方側へ向かって緩やかな曲線を成して傾斜する傾斜部41が形成されている。
【0048】
一方、当該奥壁部40Aの下端40A2は、リアフロアサイドメンバ前部50の車両前後方向の前部50C側と後部50D側とで形状が異なっている。具体的に説明すると、奥壁部40Aの下端40A2の当該前部50C側は、奥壁部40Aの上端40A1と略平行に形成されており、車両前後方向の後方側へ向かうにつれて車両上下方向の上方側へ向かって緩やかな曲線を成して傾斜する傾斜部43が形成されている。これに対して、奥壁部40Aの下端40A2の当該後部50D側は、車両前後方向の後方側へ向かって略水平方向に沿って延びる水平部45が形成されている。
【0049】
そして、当該奥壁部40Aの上端40A1、下端40A2からは、当該上端40A1、下端40A2の形状に沿って、側壁部42A、44Aが車両幅方向の外側へ向かってそれぞれ形成されている。すなわち、側壁部42Aは傾斜部41を含んで構成され、側壁部44Aは傾斜部43及び水平部45を含んで構成されている。
【0050】
また、フランジ部46Aは、側壁部42Aの先端から当該側壁部42Aの形状に沿って車両上下方向の上方側へ向かって延出され、フランジ部48Aは、側壁部44Aの先端から当該側壁部44Aの形状に沿って車両上下方向の下方側へ向かって延出されている。なお、フランジ部46Aでは、リアフロアサイドメンバ前部50の前部50C側が切り欠かれている(切欠き部56)。また、側壁部44Aの傾斜部43では、フランジ部48Aは、車両前後方向の後方側かつ車両上下方向の下方側へ向かって延出されている。
【0051】
(リアフロアサイドメンバの中央部)
次に、リアフロアサイドメンバ20の中央部52(以下、「リアフロアサイドメンバ中央部52という」)について説明する。
【0052】
図2に示されるように、リアフロアサイドメンバ中央部52は、奥壁部40Bと、側壁部42B、44Bと、フランジ部46B、48Bと、を含んで構成されている。当該奥壁部40Bの上端40B1には、リアフロアサイドメンバ中央部52の前端52Aから後端52Bに亘って、車両上下方向の上方側へ向かって膨らむ曲線部59が形成されている。
【0053】
一方、当該奥壁部40Bの下端40B2には、リアフロアサイドメンバ中央部52の前部52Cにおいて、車両前後方向の後方側へ向かうにつれて車両上下方向の上方側へ向かって急激に傾斜する急勾配部58が形成されている。さらに、奥壁部40Bの下端40B2には、当該急勾配部58からリアフロアサイドメンバ中央部52の後端52Bに亘って、奥壁部40Bの上端40B1と略平行に形成され、車両上下方向の上方側へ向かって曲線状に膨らむ曲線部(車体構造部材の曲率が大きい側の湾曲部)60が形成されている。
【0054】
当該奥壁部40Bの上端40B1、下端40B2からは、当該上端40B1、下端40B2の形状に沿って、側壁部42B、44Bが車両幅方向の外側へ向かってそれぞれ形成されている。すなわち、側壁部42Bは曲線部59を含んで構成され、側壁部44Bは急勾配部58及び曲線部60を含んで構成されている。
【0055】
また、フランジ部46Bは、側壁部42Bの先端から当該側壁部42Bの形状に沿って車両上下方向の上方側へ向かって延出され、フランジ部48Bは、側壁部44Bの先端から当該側壁部44Bの形状に沿って車両上下方向の下方側へ向かって延出されている。なお、側壁部44Bの急勾配部58では、フランジ部48Bは、車両前後方向の後方側かつ車両上下方向の下方側へ向かって延出されている。
【0056】
(リアフロアサイドメンバの後部)
さらに、リアフロアサイドメンバ20の後部54(以下、「リアフロアサイドメンバ後部54という」)について説明する。
【0057】
図1に示されるように、リアフロアサイドメンバ後部54は、車両後部14において車両前後方向に延びるリアフロアサイドメンバリア38に接続される。
図2に示されるように、リアフロアサイドメンバ後部54は、奥壁部40Cと、側壁部42C、44Cと、フランジ部46C、48Cと、を含んで構成されている。当該奥壁部40Cの上端40C1には、リアフロアサイドメンバ後部54の前端54Aから後端54Bに亘って、車両上下方向の下方側へ向かって僅かに膨らむ曲線部61が形成されている。
【0058】
一方、当該奥壁部40Cの下端40C2には、リアフロアサイドメンバ後部54の前部54Cにおいて、車両前後方向の後方側へ向かうにつれて車両上下方向の下方側へ向かって傾斜する傾斜部62が形成されている。さらに、奥壁部40Cの下端40C2には、リアフロアサイドメンバ後部54の後部54Dにおいて、車両前後方向の後方側へ向かって略水平方向に沿って延びる水平部63が形成されている。
【0059】
当該奥壁部40Cの上端40C1、下端40C2からは、当該上端40C1、下端40C2の形状に沿って、側壁部42C、44Cが車両幅方向の外側へ向かってそれぞれ形成されている。すなわち、側壁部42Cは曲線部61を含んで構成され、側壁部44Cは傾斜部62及び水平部63を含んで構成されている。また、フランジ部46Cは、側壁部42Cの先端から当該側壁部42Cの形状に沿って車両上下方向の上方側へ向かって延出され、フランジ部48Cは、側壁部44Cの先端から当該側壁部44Cの形状に沿って車両上下方向の下方側へ向かって延出されている。
【0060】
<リアフロアサイドメンバの要部>
ところで、本実施形態では、
図2に示されるように、奥壁部40には、側壁部42と側壁部44の間を架け渡すようにして、車両上下方向に沿って形成された板状の縦リブ(リブ)66、78、86等及び車両前後方向に沿って形成された板状の横リブ(リブ)68、80、92等が互いに略直交して設けられている。なお、縦リブ66、78、86等と横リブ68、80、92等の板厚は略同じとなるように設定されている。以下、これらの縦リブ66、78、86、横リブ68、80、92等について詳述する。
【0061】
(リアフロアサイドメンバの前部)
まず、リアフロアサイドメンバ前部50(リアフロアサイドメンバ前部50の前端50Aからリアフロアサイドメンバ中央部52の前端52A(境界線P)までの領域)側について説明する。
【0062】
当該リアフロアサイドメンバ前部50には、複数の縦リブ66が設けられている。この縦リブ66は、リアフロアサイドメンバ前部50の側壁部42Aと側壁部44Aの水平部45の間に架け渡されている。ここで、複数の縦リブ66の中央に位置する縦リブ66Aは、前述したサスメン取付部55の軸芯線Rと車両側面視で重なる位置に設けられている。また、側壁部44Aの傾斜部43側には、縦リブ70が設けられており、当該縦リブ70は、側壁部42Aと後述する横リブ72の間に架け渡されている。
【0063】
また、リアフロアサイドメンバ前部50では、前述した複数の縦リブ66に対して、略直交するようにして複数の横リブ68が設けられている。当該横リブ68は、リアフロアサイドメンバ前部50からリアフロアサイドメンバ中央部52の前部52Cに亘って形成されており、リアフロアサイドメンバ前部50の側壁部42Aとリアフロアサイドメンバ中央部52の側壁部44Bの間に架け渡されている。
【0064】
また、リアフロアサイドメンバ前部50の前部50Cでは、側壁部42Aと側壁部44Aの間に当該側壁部42A、44Aと略平行となるように配置された傾斜リブ(リブ)74、76が形成されており、傾斜リブ74は縦リブ70及び横リブ72と繋がり、傾斜リブ76は横リブ72と繋がっている。
【0065】
(リアフロアサイドメンバの中央部)
次に、リアフロアサイドメンバ中央部52(リアフロアサイドメンバ中央部52の前端52A(境界線P)からリアフロアサイドメンバ後部54の前端54A(境界線Q)までの領域)側について説明する。
【0066】
当該リアフロアサイドメンバ中央部52には、複数の縦リブ78が設けられている。当該縦リブ78は、リアフロアサイドメンバ中央部52の頂部Z付近において、車両前後方向に沿って所定の間隔を保持して複数設けられている。当該縦リブ78は、リアフロアサイドメンバ中央部52の側壁部42Bと側壁部44Bの間に架け渡されており、側壁部44Bの曲線部60の略曲率中心から放射線状に延びるようにしてそれぞれ配置されている。
【0067】
そして、複数の縦リブ78のうち前部に位置する縦リブ78Aと後部に位置する縦リブ78Bとの間に、複数の横リブ80が架け渡されている。当該縦リブ78Aの前方側には、縦リブ78Cが設けられており、当該縦リブ78Cは、側壁部42Bと側壁部44Bの間に架け渡されている。そして、この縦リブ78Cと縦リブ78Aの間には、側壁部42Bとも繋がり、車両前後方向の後方側へ向かうにつれて車両上下方向の下方側へ向かって傾斜する傾斜リブ(リブ)82が架け渡されている。なお、この傾斜リブ82は、側壁部42Bと後述する横リブ80Aにも繋がっている。
【0068】
一方、横リブ80のうち、リアフロアサイドメンバ中央部52の車両上下方向の中央部に位置する横リブ80Aは、縦リブ78Bを越えて側壁部42Bまで延びている。また、横リブ80Aの下方側に位置する横リブ80Bは、側壁部42Aから側壁部42Bを含んで、後述するリアフロアサイドメンバ後部54の側壁部42Cに亘って延びている。なお、横リブ80Aと横リブ80Bの間には、縦リブ78Bとも繋がり、車両前後方向の後方側へ向かうにつれて車両上下方向の下方側へ向かって傾斜する傾斜リブ(リブ)84が架け渡されている。
【0069】
(リアフロアサイドメンバの後部)
そして、リアフロアサイドメンバ後部54(リアフロアサイドメンバ中央部52の前端52A(境界線P)からリアフロアサイドメンバ後部54の前端54Aから後端54Bまでの領域)側について説明する。
【0070】
当該リアフロアサイドメンバ後部54には、縦リブ(リブ)86が設けられている。この縦リブ86は、リアフロアサイドメンバ後部54の側壁部42Cと側壁部44Cの間に架け渡されている。ここで、当該縦リブ86は、前述したサスメン取付部57の軸芯線Sと車両側面視で重なる位置に設けられている。また、当該縦リブ86の前方側及び後方向には、それぞれ縦リブ88、90が設けられている。縦リブ88は、側壁部42Cと後述する横リブ92の間に架け渡されており、縦リブ90は、側壁部42Cと後述する横リブ91の間に架け渡されている。
【0071】
また、リアフロアサイドメンバ後部54では、前述した複数の縦リブ86、88、90に対して、略直交するようにして複数の横リブ92が設けられている。当該横リブ92は、その一部がリアフロアサイドメンバ中央部52の後部52Dからリアフロアサイドメンバ後部54の前部54Cに亘って形成されている。すなわち、横リブ92は、リアフロアサイドメンバ中央部52の側壁部44Bとリアフロアサイドメンバ後部54の側壁部42Cの間に架け渡されている。また、横リブ91、92は、側壁部42C又は側壁部44Cの間で縦リブ86、88、90を繋ぐようにして形成されている。
【0072】
ところで、本実施形態では、前述のように、リアフロアサイドメンバ20はアルミダイキャストで形成されており、リアフロアサイドメンバ20を成形する金型(図示省略)は、リアフロアサイドメンバ20における車両幅方向に沿って型開きするように構成されている。
【0073】
当該金型によってリアフロアサイドメンバ20が成形され、金型が型開きされた状態で、金型からリアフロアサイドメンバ20を離型させるため、図示はしないが、当該金型の一部を構成する可動型側には押出しピンが設けられている。この押出しピンがリアフロアサイドメンバ20に当接し当該リアフロアサイドメンバ20を押圧することによって、リアフロアサイドメンバ20は可動型から離型するようになっている。
【0074】
このため、リアフロアサイドメンバ20には、当該押出しピンが当接する押出しピン座が設けられることとなる。具体的に説明すると、本実施形態では、リアフロアサイドメンバ20の奥壁部40からは、円柱状の押出しピン座93、94、96が複数立設されている。なお、押出しピン座93、94、96の直径は、縦リブ66、78、86横リブ68、80、92等の板厚よりも厚くなるように設定されている。
【0075】
そして、押出しピン座(第1の厚肉部)93は、少なくとも縦リブ66A、86と側壁部42の交点を含み、他の縦リブ66、78、又は横リブ68、80、92と側壁部42の交点に設けられており、当該押出しピン座93と側壁部42とは一体的に形成されている。
【0076】
また、押出しピン座(第1の厚肉部)94は、少なくとも縦リブ66A、86と側壁部44の交点を含み、他の縦リブ66、78、又は横リブ68、72、92と側壁部44の交点に設けられており、当該押出しピン座94と側壁部44とは一体的に形成されている。
【0077】
さらに、押出しピン座(第2の厚肉部)96は、縦リブ66、70と横リブ68が交叉する複数の交点のうちの一部の交点、及び縦リブ78と横リブ80が交叉する複数の交点のうちの一部の交点等に設けられている。
【0078】
前述のように、押出しピン座93は側壁部42と一体的に形成され、押出しピン座94は側壁部44と一体的に形成されているため、当該押出しピン座93、94は、押出しピン座96よりも厚肉とされている。
【0079】
ここで、前述のように、リアフロアサイドメンバ20は、車両前後方向に沿って配設され、車両上下方向に沿って湾曲してアーチ状を成している。このため、本実施形態では、当該リアフロアサイドメンバ20において、曲率が大きい側の曲線部60に、複数の押出しピン座94が当該曲線部60の曲率に沿って隣り合って設けられている。
【0080】
また、ここでは、図示はしないが、リアフロアサイドメンバ20のフランジ部48には、燃料用の配管との干渉を回避するため切欠き部が形成されている場合がある。切欠き部は当該切欠き部が形成されていない部位と比較すると脆弱であるため、切欠き部が形成されている場合は、当該切欠き部の直上側に押出しピン座94は配置される。
【0081】
[車体構造部材の作用及び効果]
次に、本実施の形態に係る車体構造部材の作用及び効果について説明する。
【0082】
本実施形態では、
図2に示されるリアフロアサイドメンバ20はアルミダイキャスト製である。一般に、ダイキャスト製のダイキャスト部材は設計自由度が高いため、部位によって肉厚を厚くして高い剛性が得られるように形成されるが、肉厚を厚くすると、車両重量が増加してしまう。
【0083】
このため、本実施形態では、リアフロアサイドメンバ20において、対向して設けられた側壁部42と側壁部44の間に、車両上下方向に沿って形成された縦リブ66、78、86等及び車両前後方向に沿って形成された横リブ68、80、92等を設けることで、必要最小限の肉厚でリアフロアサイドメンバ20を補強するようにしている。
【0084】
また、本実施形態では、押出しピン座93、94、96の直径は、縦リブ66、78、横リブ68、80等の板厚よりも厚くなるように設定されている。また、押出しピン座93は側壁部42と一体的に形成され、押出しピン座94は側壁部44と一体的に形成されている。このため、押出しピン座93、94は、当該押出しピン座93、94の内側、つまり、側壁部42と側壁部44の間に配置された押出しピン座96よりも厚肉とされている。
【0085】
本実施形態では、
図3に示されるように、例えば、押出しピン座94は、リアフロアサイドメンバ20の成形時に当該リアフロアサイドメンバ20を形成する材料がリアフロアサイドメンバ20のフランジ部48から側壁部44内を流れる主流Aから当該縦リブ78内を流れる支流Bへ移行する分岐部98に配置されており、当該縦リブ78よりも厚肉に形成されている。なお、
図3は、リアフロアサイドメンバ20の側壁部44、縦リブ78内を流れる主流A及び支流Bを示す説明用の平面図であり、本実施形態では、フランジ部48の外端側が金型から材料が充填される湯口となっている。ここで、請求項1に記載されている「一般部」は、
図3では、側壁部44が適用されることとなる。
【0086】
一般に、図示はしないが、金型により成形された成形品では、当該成形品を形成する材料が金型内に充填される際、金型に形成された湯口から材料は充填されるが、金型に形成された中空部(以下、「キャビティ」という)内へ材料を充填する際の流路は、当該成形品の各断面において均一であることが望ましい。つまり、成形品の各断面における肉厚が略一定であることが望ましい。一方、成形品では複雑な形状が形成可能とされるため、成形品の各断面における肉厚は一定ではないことが多い。
【0087】
このため、成形品において、湯口から金型内に材料が充填される際、
図5に示されるように、成形品200の一般部202からリブ204へ材料が流動するとき、急に流路が狭くなるため、湯流れが悪くなり(いわゆる湯流れ不良)、成形品200において引け巣等の欠陥が生じる可能性がある。これにより、衝突荷重の入力時において、
図6に示されるように、成形品200が大きく曲げ変形する可能性がある。なお、
図5は、比較例としての成形品200内を流れる主流A及び支流Bを示す説明用の平面図である。
図6は、比較例としての成形品200が曲げ変形した状態を示す要部拡大斜視図である。
【0088】
これに対して、本実施形態では、
図3に示されるように、リアフロアサイドメンバ20の側壁部44内を流れる主流Aから縦リブ78を流れる支流Bへ移行する分岐部98において、当該縦リブ78よりも厚肉に形成された押出しピン座94を設けることによって、湯流れ不良を抑制することが可能となる。これにより、引け巣等によるリアフロアサイドメンバ20の欠陥を防ぎ、衝突荷重の入力時の曲げ変形を抑制し、衝突荷重の入力時の割れや破断を防ぐことが可能となる。
【0089】
また、本実施形態では、
図2に示されるように、リアフロアサイドメンバ20において、車両前後方向に沿って横リブ68、80、92等が形成されると共に、車両上下方向に沿って縦リブ66、78、86等が形成されている。また、横リブ68、80、92と縦リブ66、78、86は交叉しており、押出しピン座96は当該横リブ68と縦リブ66が交叉する交点、横リブ80と縦リブ78が交叉する交点、横リブ92と縦リブ86が交叉する交点にそれぞれ設けられている。
【0090】
このように、リアフロアサイドメンバ20において、当該横リブ68、80、92等と縦リブ66、78、86等を設けることによって、リアフロアサイドメンバ20自体の剛性を向上させることができる。そして、当該横リブ68と縦リブ66の交点、横リブ80と縦リブ78の交点、横リブ92と縦リブ86の交点にそれぞれ押出しピン座96を設けることにより、当該横リブ68、80、92及び縦リブ66、78、86を補強することができる。これにより、リアフロアサイドメンバ20自体の剛性をさらに向上させ、リアフロアサイドメンバ20の変形を抑制することが可能となる。
【0091】
さらに、本実施形態では、
図2に示されるように、リアフロアサイドメンバ20は、車両前後方向に沿って配設され、車両上下方向に沿って湾曲してアーチ状を成している。そして、当該リアフロアサイドメンバ20において、曲率が大きい側の曲線部60に、複数の押出しピン座94が当該曲線部60の曲率に沿って隣り合って設けられている。
【0092】
前述のように、当該リアフロアサイドメンバ20は車両前後方向に沿って配設され、いわゆるアーチ状に形成されているため、車両の前突又は車両の後突により、リアフロアサイドメンバ20において、車両前後方向に沿って衝突荷重が入力されると、リアフロアサイドメンバ20には曲げモーメントが発生する。この場合、アーチ状を成すリアフロアサイドメンバ20では、曲率の小さい側の曲線部59には引張力が作用し、曲率が大きい側の曲線部60には圧縮力が作用する。
【0093】
このため、前述のように、本実施形態では、
図4に示されるように、当該リアフロアサイドメンバ20の曲率が大きい側の曲線部60において、複数の押出しピン座94が当該曲線部60の曲率に沿って隣り合って設けられている。これにより、当該曲線部60に圧縮力が作用した際、隣り合う押出しピン座94同士が干渉することで、曲線部60の変形を抑制することが可能となり、リアフロアサイドメンバ20の曲げ変形を効果的に抑制することができる。なお、
図4は、リアフロアサイドメンバ20の要部であるリアフロアサイドメンバ中央部52を拡大した要部拡大斜視図である。
【0094】
また、本実施形態では、リアフロアサイドメンバ20には、奥壁部40の外縁から横リブ68、80、92、縦リブ66、78、86等と繋がる側壁部42、44が立設しており、押出しピン座93、94は当該側壁部42、44とそれぞれ一体的に設けられている。このように、リアフロアサイドメンバ20において、当該側壁部42、44が設けられることによって、リアフロアサイドメンバ20自体の剛性をさらに向上させ、リアフロアサイドメンバ20の変形をさらに抑制することが可能となる。
【0095】
さらにまた、本実施形態では、厚肉部は、いわゆる押出しピン座である。このため、リアフロアサイドメンバ20の成形時に、図示しない金型が型開きされた状態で、当該金型から突出する押出し部材が押出しピン座93、94に当接し押出しピン座93、94を押圧することにより、当該押出しピン座93、94を介して、リアフロアサイドメンバ20は金型から離型する。
【0096】
すなわち、リアフロアサイドメンバ20において金型から当該リアフロアサイドメンバ20から離型させるために押出しピン座93、94は必須の構成である。このため、
図3に示されるように、湯流れ不良を抑制するためリアフロアサイドメンバ20の側壁部44を流れる主流Aから縦リブ78を流れる支流Bへ移行する分岐部98に設ける厚肉部を押出しピン座94として兼用することで、当該押出しピン座94とは別に厚肉部を形成した場合と比較して、リアフロアサイドメンバ20の軽量化を図ることが可能となる。
【0097】
すなわち、本実施形態では、リアフロアサイドメンバ20自体の剛性を向上させ、かつリアフロアサイドメンバ20の軽量化を図ることができる。なお、本実施形態では、
図2に示すリアフロアサイドメンバ20のフランジ部48の外端側が金型から材料が充填される湯口となっているが、湯口はこれに限るものではない。例えば、リアフロアサイドメンバ20のフランジ部48の外端側及びフランジ部46の外端側が湯口となっていてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、
図7に示されるように、リアフロアサイドメンバ20の側壁部44に対して、縦リブ78と繋がる厚肉部として押出しピン座94が一体的に設けられ、当該押出しピン座94は円柱状を成しているが、これに限るものではない。例えば、
図8に示されるように、押出しピン座100は、必ずしも円柱状である必要はない。また、縦リブ78と繋がる厚肉部は、当該縦リブ78よりも厚肉に形成されていればよく、また、必ずしも金型の押出しピンが当接する押出しピン座である必要はない。なお、
図7は、リアフロアサイドメンバ20の要部をさらに拡大した要部拡大斜視図であり、
図8は、
図7に対応する要部拡大斜視図である。
【0099】
(本実施形態の補足事項)
本実施形態では、リアフロアサイドメンバ20は、アルミダイキャストで形成されているが、アルミニウムに限らず、亜鉛・マグネシウム・銅等の合金によるダイキャスト製品であってもよく、また、鋳物により形成されてもよい。さらに、リアフロアサイドメンバ20が繊維強化樹脂(FRP)によって成形されてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、リアフロアサイドメンバ20は、車両上下方向に沿って湾曲するアーチ状を成しているが、車両幅方向に沿って湾曲してアーチ状に形成されてもよく、さらには、必ずしもアーチ状を成す必要はない。
【0101】
また、本実施形態では、押出しピン座93は側壁部42と一体的に形成され、押出しピン座94は、側壁部44と一体的に形成されているが、当該側壁部42、44は必ずしも必要ではない。
【0102】
さらに、本実施形態では、リアフロアサイドメンバ20について説明したが、本発明は、車体構造部材であればよいため、これに限るものではない。例えば、サイドメンバ以外にトンネル部、又はフロアクロスメンバ28(
図1参照)等に適用されてもよい。
【0103】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0104】
10 車両
20 リアフロアサイドメンバ(車体構造部材)
28 フロアクロスメンバ(車体構造部材)
40 奥壁部(一般部)
42 側壁部(一般部)
44 側壁部(一般部)
60 曲線部(車体構造部材の曲率が大きい側の湾曲部)
66 縦リブ(リブ)
68 横リブ(リブ)
70 縦リブ(リブ)
72 横リブ(リブ)
74 傾斜リブ(リブ)
76 傾斜リブ(リブ)
78 縦リブ(リブ)
80 横リブ(リブ)
82 傾斜リブ(リブ)
84 傾斜リブ(リブ)
86 縦リブ(リブ)
88 縦リブ(リブ)
90 縦リブ(リブ)
91 横リブ(リブ)
92 横リブ(リブ)
93 押出しピン座(厚肉部)
94 押出しピン座(厚肉部)
96 押出しピン座(厚肉部)
98 分岐部
100 押出しピン座
A 主流
B 支流