(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】植物性ミルク含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20241119BHJP
A23C 11/10 20210101ALI20241119BHJP
A23L 11/60 20210101ALI20241119BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20241119BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20241119BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20241119BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241119BHJP
【FI】
A23L2/52
A23C11/10
A23L2/00 B
A23L11/00 Z
A23L2/38 D
(21)【出願番号】P 2020059476
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】阿部 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕貴
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176377(JP,A)
【文献】特開2002-262806(JP,A)
【文献】特開2016-042792(JP,A)
【文献】国際公開第2018/194519(WO,A1)
【文献】特開2011-206043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-84
A23L 11/00-70
A23C 11/00-10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性ミルクを含有する飲料であって、
前記植物性ミルク由来の固形分濃度が飲料全質量に対して、4質量%未満であり、
1-ヘキサノール濃度が0.01~7ppmであり、
前記植物性ミルクが豆乳を含む、飲料。
【請求項2】
植物性ミルクを含有する飲料であって、
前記植物性ミルク由来の固形分濃度が飲料全質量に対して、4質量%未満であり、
1-ヘキサノール濃度が0.01~7ppmであり、
前記植物性ミルク由来の固形分が、大豆固形分である、飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性ミルク含有飲料に関し、具体的には、青臭さが抑制され、後味が良い植物性ミルク含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多種多様なターゲットに合わせた様々な乳性飲料が開発されている。一方で、乳アレルギーの問題や近年の健康志向や嗜好性の多様化などを背景に、乳性飲料に代わる、新しい植物性ミルク含有飲料の開発も進められている。これまで、豆乳やアーモンドミルク、ココナッツミルクなどの植物性ミルクは、栄養価が高く、特に豆乳などは常温で保存可能な製品も多数販売されている。しかしながら、植物性ミルクを含有する飲料、例えば豆乳などは、保存中に青臭い豆乳臭などが目立ってきて、好ましくない風味が生じるため、青臭さに起因して美味しさが損なわれてしまい、結果として飲みにくくなることが知られていた。このような課題に対し、例えば、香料などを添加することでフルーツの味わいを付与して飲みやすくする工夫がなされているが、植物性ミルク由来の特有のコク味などの味わいも同時に損なわれてしまう可能性がある。
【0003】
そこで、様々な手段で好ましくない上述の青臭さなどをマスキングすることが試みられている。例えば、特許文献1には、加熱劣化臭と、豆乳に由来するn-ヘキサノールやn-ヘキサナールに起因する青臭さや後残りするベタツキ感を抑制した容器詰豆乳飲料に関する技術が記載されており、具体的には、豆乳に微粉砕焙じ茶葉を添加することが記載されている。また、特許文献2には、豆乳に特有のn-ヘキサノールやn-ヘキサナールなどに起因する異味異臭が改善されて、味がさっぱりした、後味の良い調製豆乳又は豆乳飲料に関する技術が記載されており、具体的には、豆乳にパラチノースを添加することが記載されている。
一方で、特許文献3には、上述の豆乳の青臭さの原因の一つであるn-ヘキサノールを用いて、微粉砕紅茶葉を配合するチョコレートの香味の改善方法に関する技術が記載されており、具体的にはグリーン系の香調を有する成分であるn-ヘキサノールを含有した微粉砕紅茶葉を添加することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-042792号公報
【文献】特開2003-230365号公報
【文献】特開2019-058128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、植物性ミルクを含有する飲料(以下、植物性ミルク含有飲料とも呼ぶ)、特に、豆乳を含有する飲料における、青臭さを低減し、後味を良くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、植物性ミルク含有飲料の風味低下を抑制できるフレーバー等や風味低下抑制するための新しい手段等について鋭意検討するなかで、予想外にも、植物性ミルク由来の固形分を低減させるほど青臭さが強くなり、後味の良さが低下し、植物性ミルクに由来するコク味が低減(すっきり感が増加)するが、この場合において、豆乳であまり味において好ましくないとされる1-ヘキサノールを一定の割合で含有させることにより、植物性ミルク含有飲料の青臭さを抑制し、風味をより良くすることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
〔1〕植物性ミルクを含有する飲料であって、前記植物性ミルク由来の固形分濃度が飲料全質量に対して4質量%未満であり、1-ヘキサノール濃度が0.01~7ppmである、飲料。
〔2〕前記植物性ミルクが豆乳を含む、前記〔1〕に記載の飲料。
〔3〕前記植物性ミルク由来の固形分が、大豆固形分である、前記〔1〕に記載の飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、青臭さが抑制され、後味が良い植物性ミルク含有飲料、及びこのような植物性ミルク含有飲料を提供するための手段を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、植物性ミルク由来の固形分濃度が飲料全質量に対して、4質量%未満である植物性ミルク含有飲料であって、1-ヘキサノールを0.01~7ppm含有する飲料に関する。一般に植物性ミルク由来の固形分濃度が飲料全質量に対して、4質量%未満となる濃度で植物性ミルクを飲料に用いる場合に、植物性ミルク由来の1-ヘキサノール濃度が0.01~7ppmとなることはないため、1-ヘキサノールを適量添加することで1-ヘキサノール濃度を調整し、本発明に係る植物性ミルク含有飲料を得ることができる。
ここで、本発明の植物性ミルク含有飲料において、市販品の1-ヘキサノール(香料等)、1-ヘキサノールを含む香料組成物等を植物性ミルク含有飲料に配合して1-ヘキサノール濃度を調整してもよいし、既知濃度の1-ヘキサノールを含有する飲食品、例えば茶抽出液等を植物性ミルク含有飲料に配合して1-ヘキサノール濃度を調整してもよい。なお、植物性ミルク含有飲料における1-ヘキサノールの濃度が未知である場合においては、例えば、本実施例に記載の方法によって、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法により、GC/MS測定に供し、本実施例に記載した条件で測定することができる。
【0009】
発明に係る植物性ミルク含有飲料は、1-ヘキサノールを含有することで、青臭さが抑制され、風味、特に後味が良くなる。本発明における植物性ミルク含有飲料の風味が良くなるとは、具体的には、後味以外に、コク味が増し、全体的に嗜好性が上がることなども意味する。この1-ヘキサノールによる効果の理由の一つには、1-ヘキサノールが単独で、植物性ミルク含有飲料において青臭さに寄与するヘキサナールなどの風味をマスキングできることが考えられる。
【0010】
また、上述したように、植物性ミルク含有飲料において、植物性ミルク由来の固形分を低減させるほど青臭さが強くなり、後味の良さが低下し、植物性ミルクに由来するコク味が低減(すっきり感が増加)するため、本発明の効果を得るためには、植物性ミルク由来の固形分濃度が4質量%未満であり、0.3質量%~3.5質量%であることが好ましく、0.5質量%~2.5質量%であることがより好ましい。なお、飲料中の植物性ミルク由来の固形分濃度は、当該植物性ミルク含有飲料の製造に用いられる原材料に基づいて算出に従い決定することができる。このような当該植物性ミルク含有飲料に対して、1-ヘキサノールを0.01~7ppm、好ましくは0.01~5ppm、より好ましくは0.05~2.5ppm、特に好ましくは0.1~1ppmの濃度で含有させることにより、植物性ミルク含有飲料の青臭さを抑制し、後味をより良くすることができる。なお、本発明に係る植物性ミルク含有飲料において、1-ヘキサノール濃度が0.01ppm未満である場合には、青臭さの抑制効果が得られない恐れがあり、7ppmより多い場合には、香味のバランスを崩し嗜好性が低下する恐れがある。
【0011】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料において、含有する植物性ミルクは、豆乳、アーモンドミルク、カシューミルク、ココナッツミルク、ライスミルク等から選択されるが、例えば、平成30年3月29日農林水産省告示第683号に記載される豆乳、調製豆乳、又は豆乳飲料を含むことが好ましい。また、植物性ミルクは、液状体のほか、粉末体のものを用いてもよい。より具体的には、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は原料として、例えば豆乳粉末を混合したものであってもよい。また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料においては、植物性ミルク由来の固形分は、大豆固形分であることが好ましい。当該大豆固形分は、植物性ミルクとして豆乳を含む飲料の製造に用いられる原材料に基づいて算出に従い決定することができる。また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料において、大豆固形分濃度(質量%):1-ヘキサノール濃度(ppm)の比率が、1~400:1~10であることが好ましく、1~20:1~2であることがより好ましい。
【0012】
ここで、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、pHがほぼ中性であることが好ましく、例えば4.6~8.0であることが好ましく、6.0~7.5であることが特に好ましい。これは植物性ミルクに含まれるタンパク質等の安定性と、良好な風味の理由からである。
【0013】
本発明に係る植物性ミルク含有飲料として好ましい態様は、限定はされないが、例えば、1-ヘキサノールを0.01~5.5ppm含有し、pHが4.6~8.0であり、大豆固形分濃度が1質量%以上4質量%未満である、豆乳含有飲料が挙げられる。
【0014】
本発明に係る植物性ミルク含有飲料の糖度は、ブリックス(Brix又はBxとも表記する)値と同義とする。すなわち、本発明において糖度は、20℃における糖用屈折計の示度とし、例えば、商品名「デジタル屈折計Rx‐5000」(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。当該糖度は、特に限定されないが、3~12°Bxであることが好ましく、5~10°Bxであることがより好ましい。
本発明に係る植物性ミルク含有飲料の糖度は、公知の甘味料を使用することで上記の値に調整することができる。たとえば、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、及び麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類;キシリトール、D-ソルビトール等の低甘味度甘味料;タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、及びサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料を単独で、又は適宜2種類以上を組み合わせて調整することが好ましく、ショ糖や果糖ぶどう糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームで調整することが植物性ミルク含有飲料に求められる自然な甘みや爽やかな酸味といった嗜好性の観点から特に好ましい。
【0015】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、植物性ミルクの乳化状態を良好に保持する点において、乳化剤を含有することが好ましい。乳化剤としては、食品や飲料に用いることができるものであれば特に制限無く用いることができるが、例えば、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アラビアガム、レシチン等が挙げられる。乳化剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用しても良い。
当該植物性ミルク含有飲料への乳化剤の配合割合は、その種類等に応じて本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定できる。該配合割合は、特に制限されないが、例えば、飲料の全質量を基準として、その下限は通常0.0001質量%であり、その上限は通常0.1質量%とすることができる。
【0016】
また、必要に応じて、当該植物性ミルク含有飲料に、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルを含有させることによって、味を調整してもよい。
本発明に用いる水は特に限定されず、例えば、イオン交換水を用いることができる。
【0017】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、動物性乳成分を更に含んでいてもよい。当該動物性乳成分は、例えば、獣乳及び植物乳のいずれの原料乳を由来とするものであってもよい。獣乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳及び馬乳等が挙げられる。乳成分の形態としては、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳たんぱく濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳、生クリーム、及び発酵乳が挙げられる。また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。なかでも、脱脂乳が好ましく、ハンドリングのよさから脱脂粉乳を用いることが特に好ましい。また、乳成分は、単一種類の原料由来であっても、数の種類の原料由来であってもよい。
また、本発明の植物性ミルク含有飲料に対して、風味等を損なわない範囲で、必要に応じて任意の酸性成分として、果汁、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁や、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナ等の果汁を添加してもよい。
【0018】
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、原料(豆乳など)を乳酸菌や酵母等を用いて発酵して得られる、液状又は糊状の発酵豆乳飲食品等を含むものであってもよい。
また、本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、一般的に使用されうる、上述していない甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。
本発明の植物性ミルク含有飲料は、植物性ミルク入りの飲料であれば特に限定されないが、例えば、無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料、清涼飲料水、コーヒー飲料、紅茶飲料、茶系飲料、果実飲料、スポーツ飲料、健康飲料又はアルコール飲料等が挙げられる。
【0019】
本発明に係る植物性ミルク含有飲料は、豆乳や上述した1-ヘキサノール、甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を適宜混合することで得られる。本発明の植物性ミルク含有飲料においては、その製造工程において、適宜必要に応じて、均質化処理や殺菌処理を加えて行なうことができる。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されず、常法に従うことができる。
殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。
殺菌処理後の本発明の植物性ミルク含有飲料を容器に充填する方法としては、例えば、飲料を容器にホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法により行うことができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0020】
各成分の含有値の分析値又は計算値を得るための方法、及び官能評価方法については、以下の通りとした。
≪1 大豆固形分(質量%)≫
大豆固形分は、各サンプル製造に用いられる原材料の表示値と各サンプルの糖度(Bx(°))測定値とに基づいて算出した値とした。
【0021】
≪2 香気成分(1-ヘキサノール、3-メチル-1-ブタノール、及びヘキサナール)(ppm)≫
本実施例においては、飲料中の各香気成分の濃度(ppm)について、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法により、GC/MS測定に供し、以下に示す条件で測定を行った。
装置:GC:Agilent Technologies社製 7890B
MS:Agilent Technologies社製 5977B MSD
HS:Gerstel社製MPS,
TUBE:Tenax TA、CarbopackB/X
カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
定量イオン:1-ヘキサノールm/z=56、3-メチル-1-ブタノールm/z=70、ヘキサナールm/z=56
温度条件:40℃(2分)~8℃/分→240℃(10分)
キャリアガス流量:He 1ml/分
注入法:スプリットレス
イオン源温度:230℃
【0022】
≪3 糖度(Bx°)≫
糖度測定は20℃のサンプルに対して、商品名「デジタル屈折計Rx‐5000」(アタゴ社製)を用いて、測定を行った。
≪4 pH≫
pHは、pHメーター計を用いて、測定を行った。
【0023】
≪5 官能評価方法≫
官能評価は、5名の専門パネリストによって、4℃のサンプルに対し、各実験系の「対照」を基準点である「4」とした分量評定法を用いて行われた。評価項目は、青臭さ(強弱)、後味の良さ、すっきり感(強弱)、及びおいしさ(総合評価)とし、それぞれ7段階で評価し、その評点を平均化した。なお、各パネリストの評点にばらつきはあまりなかった。官能評価基準は、下記表1に示したものに従った。また、青臭さが4点未満で、後味の良さが4点を超えたものを効果ありとして判断した。
【0024】
【0025】
<植物性ミルク由来の固形分と青臭さとの関連>
植物性ミルク由来の固形分としての大豆固形分を調整するために、無調整豆乳(キッコーマン社製、大豆固形分8質量%以上)の濃度が、それぞれ12.5質量%、25質量%、50質量%、及び100質量%(この場合のみ希釈なし)となるようにイオン交換水で希釈して、事前検討1~4のサンプルを作製した。
各サンプルにおける各成分の含有量(濃度)、及び分析値、並びに官能評価結果を表2に示す。表2に示す官能評価においては、事前検討1のサンプルを対照の基準点4に設定して評価した。
【0026】
【0027】
表2の結果から、植物性ミルク含有飲料において、青臭さが課題となるのは、植物性ミルク由来の固形分(大豆固形分)が低い場合であり、特に植物性ミルク(豆乳)の希釈率が50質量%を超えたとき(大豆固形分濃度4質量%未満のとき)であることが分かった。したがって、以下、本発明の課題が生じている事前検討1、及び事前検討2をそれぞれ比較例1、及び比較例2とも呼び、本発明の課題が生じていない事前検討3、及び事前検討4をそれぞれ参考例1、及び参考例2とも呼ぶ。
【0028】
<植物性ミルク由来の固形分と1-ヘキサノール濃度との関連>
無調整豆乳(キッコーマン社製、大豆固形分8質量%以上)の濃度が25質量%となるように水で希釈して得られたサンプル(比較例2に相当する)に、1-ヘキサノールを1ppm添加して実施例1のサンプルを作製した。実施例1のサンプルの官能評価は、比較例2のサンプルを対照の基準点4に設定して評価した。
また、参考データとして、無調整豆乳(キッコーマン社製、大豆固形分8質量%以上)の濃度が50質量%となるように水で希釈して得られたサンプル(参考例1に相当する)に、1-ヘキサノールを1ppm添加して参考例3のサンプルを作製した。参考例3のサンプルの官能評価は、参考例1のサンプルを対照の基準点4に設定して評価した。
各サンプルにおける各成分の含有量(濃度)、及び分析値、並びに官能評価結果を表3に示す。
【0029】
【0030】
表3の結果から、豆乳濃度が25質量%(大豆固形分濃度2質量%以上4質量%未満)の場合、1-ヘキサノールを1ppm添加することで青臭さが軽減され、後味も改善することが確認された。
一方で、豆乳濃度が50質量%(大豆固形分濃度4質量%以上8質量%未満)の場合、表2で示したとおり、そもそも本発明の課題が生じていないため、1-ヘキサノールを1ppm添加しても青臭さの低減効果は得られなかった。
【0031】
<1-ヘキサノール濃度と効果との関連>
無調整豆乳(キッコーマン社製、大豆固形分8質量%以上)の濃度が、12.5質量%(大豆固形分濃度1質量%以上2質量%未満)となるようにイオン交換水で希釈して調整した4つのサンプルに、1-ヘキサノールをそれぞれ0.01ppm、0.1ppm、1ppm、及び5ppm添加して実施例2~5のサンプルを作製した。また、無調整豆乳(キッコーマン社製、大豆固形分8質量%以上)の濃度が、12.5質量%(大豆固形分濃度1質量%以上2質量%未満)となるようにイオン交換水で希釈して調整した4つのサンプルに、1-ヘキサノールと同じアルコールの香気成分である3-メチル-1-ブタノールを1ppm添加して、比較例3のサンプルを作製した。
各サンプルにおける各成分の含有量(濃度)、及び分析値、並びに官能評価結果を表4に示す。表4に示す官能評価においては、比較例1のサンプルを対照の基準点4に設定して評価した。
【0032】
【0033】
表4の結果から、植物性ミルク由来の固形分としての大豆固形分濃度が1質量%以上2質量%未満である植物性ミルク含有飲料において、1-ヘキサノールを0.01~5ppm含有させることで、青臭さが軽減され、後味が改善されることが確認された。
一方で、植物性ミルク由来の固形分としての大豆固形分濃度が1質量%以上2質量%未満である植物性ミルク含有飲料において、3-メチル-1-ブタノールを1ppm含有させた場合には、青臭さは軽減されたが、後味の改善効果はみられなかった。
したがって、本発明の効果は、1-ヘキサノール特有の効果であることが示唆された。