(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ケーブル抜け止め構造およびこの構造を備える電子機器
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20241119BHJP
G01L 19/14 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G01L19/00 Z
G01L19/14
(21)【出願番号】P 2020065783
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 聡
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-092467(JP,U)
【文献】特開平06-085470(JP,A)
【文献】特開昭63-051697(JP,A)
【文献】特開平09-008479(JP,A)
【文献】特開平08-172293(JP,A)
【文献】特開2004-200454(JP,A)
【文献】実開平03-048277(JP,U)
【文献】特開平07-286925(JP,A)
【文献】特表2008-541049(JP,A)
【文献】特開平08-075585(JP,A)
【文献】特開2010-145193(JP,A)
【文献】特開平09-280988(JP,A)
【文献】実開昭52-127297(JP,U)
【文献】特開平05-243753(JP,A)
【文献】特開2008-060163(JP,A)
【文献】特開平11-067293(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105698983(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32,27/00-27/02
H05K 5/00-9/00
G01D 1/00-21/02
G01F 15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルが貫入する貫通孔が形成された筐体に結合する第1挟持要素と、
この第1挟持要素と協働して前記ケーブルを挟持する第2挟持要素とを備え、
前記ケーブルは、導電性材料からなる導線とこの導線の外周を覆う静電遮蔽または磁気遮蔽するシールド部材を少なくとも含み、
前記第1挟持要素と前記第2挟持要素とは、前記シールド部材によって外周が覆われている前記ケーブルの第1区間を挟持するための孔を前記筐体に形成された前記貫通孔と連通する位置に形成し、これにより、前記ケーブルは、前記筐体を通じて
移動が規制されかつ接地がとれるように構成されているケーブル抜け止め構造。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル抜け止め構造において、
前記第1挟持要素または前記第2挟持要素の少なくとも1つに、前記ケーブルと係合する凹状部が形成され、
前記凹状部は、前記ケーブルの前記第1区間における外形寸法以上の開口幅を有し、かつ前記ケーブルの前記第1区間の外形寸法よりも小さな奥行きを有するケーブル抜け止め構造。
【請求項3】
請求項2に記載のケーブル抜け止め構造において、
前記ケーブルは、前記シールド部材の外側を覆う非導電性材料からなる被覆材をさらに含み、
前記開口幅は、前記導線が前記シールド部材と前記被覆材とで覆われた前記ケーブルの第2区間における外形寸法よりも小さいケーブル抜け止め構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のケーブル抜け止め構造において、
前記筐体は、複数の分割筐体から構成され、
前記第1挟持要素は、前記複数の分割筐体の1つである第1の分割筐体に結合しているケーブル抜け止め構造。
【請求項5】
請求項4に記載のケーブル抜け止め構造において、
前記貫通孔の壁面は、前記第1の分割筐体を含む少なくとも2つの前記分割筐体の端面が組合わさって形成されるケーブル抜け止め構造。
【請求項6】
請求項5に記載のケーブル抜け止め構造において、
前記第2挟持要素は、前記第1の分割筐体と異なる第2の分割筐体に結合し、前記貫通孔の壁面は、前記第1の分割筐体の端面と前記第2の分割筐体の端面とが組合わさって形成されるケーブル抜け止め構造。
【請求項7】
前記筐体のなかに電気信号を出力する素子が収容され、この素子に接続して前記電気信号を外部に送信する前記ケーブルの一部が、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のケーブル抜け止め構造によって前記筐体に支持される電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器において、
前記素子は、被測定流体の圧力を前記電気信号として検出する圧力センサ素子であり、
前記ケーブルは、前記電気信号を増幅器に向けて送信するように構成されている圧力センサとしての電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を送信するケーブルの抜け止めを防止する構造、特に、圧力センサにおけるケーブルの抜け止め構造、および当該構造を備える電子機器、特に圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの測定装置は、測定対象となっている物理量や物性値を検出するセンサ素子を備え、このセンサ素子から出力される電気信号を、ケーブルを通じて外部装置に送信するように構成されている。例えば、流体の圧力を測定する圧力センサにおいては、測定対象となっている流体(以下、「被測定流体」と称する。)の圧力変化を、ダイアフラムを通じて機械的変位の形で捉え、さらにこの機械的変位を電気信号(電圧信号)として検出するセンサ素子を備えており、また、当該センサ素子からの電気信号を、外部の装置に送信して被測定流体の圧力を測定するように構成されている。このような構成の圧力センサにおいては、ハウジング内にセンサ素子が収容されたセンサユニットを備え、さらに、水滴や粉塵等から保護するために、その周囲が筐体によって覆われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ダイアフラム部(126a1)およびひずみケージを備えた半導体センサチップ(126)からなるセンサ素子を含んだセンサユニット(圧力検出部120)と、センサユニットから出力される電気信号を外部へ送信する複数の電線(130)と、センサユニットを覆うケース(141)とから構成された半導体式の圧力センサ(100)が開示されている。この圧力センサ(100)においては、センサユニットから出力される電気信号を外部に送信する複数の電線(130)が、センサユニットに設けられた接続端子に半田付け等によって接合され、さらにこれら複数の電線(130)は、ポリ塩化ビニル等で形成された保護チューブで覆われながらケース(141)から引き出されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の圧力センサ(100)においては、例えば以下のような問題がある。
すなわち、接続端子に半田付け等によって接合されているのみの上記複数の電線(133)にあっては、大きな引張荷重が加わったとき容易に外れる(または断線する)ことが想定される。このため、特許文献1に記載の圧力センサ(100)においては、外力に対して耐性が低く、信頼性が低いといった問題がある。
また、電気信号を送信する電線(133)においては、ノイズを防ぐために、接地(アース)をとるのが一般的となっている。圧力センサ(100)においても、特に記載はないが、従来技術にならって、ケース等との間にアース線を配設して接地(アース)をとっているものと解される。このため、圧力センサ(100)においては、部品点数が多く、また組立工数も増えることから、生産コストが増大するといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み創作された発明であって、その目的とするところは、外力に対して耐性が高く、また、アース線を用いなくとも接地をとることを可能にするケーブル抜け止め構造を提案し、また、当該抜け止め構造を備えることで、信頼性が高く、かつ生産コストが抑えられた電子機器、特に圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係るケーブル抜け止め構造(挟持機構M)は、ケーブル(300)が貫入する貫通孔(103)が形成された筐体(100)に結合する第1挟持要素(クリップ受け150)と、この第1挟持要素と協働して前記ケーブルを挟持する第2挟持要素(クリップ500)とを備え、前記ケーブルは、導電性材料からなる導線(310a)とこの導線の外周を覆う静電遮蔽または磁気遮蔽するシールド部材(310b)を少なくとも含み、前記第1挟持要素と前記第2挟持要素とは、前記シールド部材によって外周が覆われている前記ケーブルの第1区間(L1)を挟持し、これにより、前記ケーブルは、前記筐体を通じて移動が規制されかつ接地がとれるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
前記ケーブル抜け止め構造において、前記第1挟持要素または前記第2挟持要素の少なくとも1つに、前記ケーブルと係合する凹状部(505)が形成され、前記凹状部は、前記ケーブルの前記第1区間における外形寸法(H310b)以上の開口幅(H505)を有し、かつ前記ケーブルの前記第1区間の外形寸法よりも小さな奥行き(D505)を有するように構成してもよい。
【0009】
また、前記ケーブル抜け止め構造において、前記ケーブルは、前記シールド部材の外側を覆う非導電性材料からなる被覆材(310c)をさらに含み、前記開口幅は、前記導線が前記シールド部材と前記被覆材とで覆われた前記ケーブルの第2区間(L2)における外形寸法(H310c)よりも小さくなるように構成してもよい。
【0010】
さらに、前記ケーブル抜け止め構造において、前記筐体が、複数の分割筐体から構成され、前記第1挟持要素が、前記複数の分割筐体の1つである第1の分割筐体(110)に結合しているように構成してもよい。
【0011】
また、前記ケーブル抜け止め構造において、前記貫通孔の壁面が、前記第1の分割筐体を含む少なくとも2つの前記分割筐体の端面(113a、123a)が組合わさって形成されるように構成してもよい。
【0012】
さらに、前記ケーブル抜け止め構造において、前記第2挟持要素が、前記第1の分割筐体と異なる第2の分割筐体(120)に結合し、前記貫通孔の壁面は、前記第1の分割筐体の端面(113a)と前記第2の分割筐体の端面(123a)とが組合わさって形成されるように構成してもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明に係る電子機器は、前記筐体のなかに電気信号を出力する素子(圧力センサ素子11)が収容され、この素子に接続して前記電気信号を外部に送信する前記ケーブルの一部が、前記ケーブル抜け止め構造によって前記筐体に支持されることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記電子機器において、前記素子が、被測定流体の圧力を前記電気信号として検出する圧力センサ素子(11)であり、前記ケーブルは、前記電気信号を増幅器に向けて送信するように構成された圧力センサ(1)としての電子機器としてもよい。
【0015】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【発明の効果】
【0016】
圧力センサに係る本発明によれば、外力に対して耐性が高く、また、アース線を用いなくとも接地をとることが可能なケーブル抜け止め構造を提供することができる。また、当該抜け止め構造を備えることで、信頼性が高く、かつ生産コストが抑えられた電子機器、特に圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る電子機器(圧力センサ)を斜め上方から視認したときの斜視図であり、
図1(b)は、本発明の実施の形態に係る電子機器(圧力センサ)を斜め下方から視認したときの斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の実施の形態に係る電子機器(圧力センサ)を斜め上方から視認したときの分解斜視図であり、
図2(b)は、本発明の実施の形態に係る電子機器(圧力センサ)を斜め下方から視認したときの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る電子機器(圧力センサ)が備えるセンサユニットの断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係るケーブル抜け止め構造(挟持機構M)の構成を示す概念図(分解斜視図)である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係るケーブル抜け止め構造(挟持機構M)の構成を示す概念図(平面図)である。
【
図6】
図6は、
図1中のP-P線における断面の部分拡大図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの組立工順に関するフロー図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施の形態に係る圧力センサの組立態様を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態の一つであるケーブル抜け止め構造としての挟持機構M、およびこれを備える圧力センサ1を、
図1ないし
図8に基づいて説明する。ここで、圧力センサ1は、静電容量式の圧力センサ素子を備えた真空計として用いられ、また、圧力センサ素子からの電気信号を増幅するアンプ(特許請求の範囲に記載の「増幅器」に相当。)が自身の外部に配設された、いわゆる分離型の圧力センサ(分離型の真空計)として構成されている。
なお、説明文中の前後、左右および上下は、各図に示された座標軸の±X(+X方向が後方向、-X方向が前方向)、±Y(+Y方向が左方向、-Y方向が右方向)および±Z(+Z方向が上方向、-Z方向が下方向)としてそれぞれ定義する。また、各図は概念図であって、それぞれに示された内容は、実際のケーブル抜け止め構造および圧力センサと必ずしも一致するものではない。
【0019】
はじめに、ケーブル抜け止め構造としての挟持機構Mが適用される圧力センサ1の全体構成を
図1ないし
図3に基づいて説明する。なお、挟持機構Mの構成については、圧力センサ1の構成を明らかにしたのちに説明することとする。
<圧力センサ1の構成>
圧力センサ1は、
図1(a)、(b)の斜視図、および
図2(a)、(b)の分解斜視図に示すように、センサユニット10と、このセンサユニット10を内部に収容する筐体100と、被測定流体が流出入する配管と接続する機械要素である継手200と、センサユニット10から出力される電気信号を外部に送信するケーブル300とから主に構成され、これに、後述する挟持機構Mを備える。
【0020】
〔センサユニット10〕
センサユニット10は、
図3に示すように、圧力センサ素子11と、ケーシング20と、ケーシング20内に収容された台座プレート30と、この台座プレート30に接合しかつケーシング20に橋架された支持ダイアフラム40と、ケーシング20内外を導通接続する電極リード部50とから主に構成されている。
【0021】
[圧力センサ素子11]
圧力センサ素子11は、被測定流体の圧力変化を機械的変位の形で捉え、さらにこの機械的変位を電気信号(例えば、電圧信号)として検出する要素であって、上述したように、例えば、静電容量式の圧力センサ素子として構成されている。この圧力センサ素子11は、例えば、平面視において1cm角の略正方形を呈した薄板形状を有し、薄板状のダイアフラム12と、このダイアフラム12と連接して容量室C1を形成する円板状の台座13と、容量室C1の内部に収容された一対のセンサ電極部14、14と、後述する電極リードピン51との間で電気的に接続するコンタクトパッド15とを備える。
【0022】
ダイアフラム12は、その一表面(受圧面)に導入部20Vに流入した被測定流体が接触することで、例えば
図3の上方(+Z方向)に向けて中央部が凸となるように変形する。このダイアフラム12の変形は、容量室C1内に配設された一対のセンサ電極部14、14の距離を変化させ、結果としてこれら電極間の静電容量を上記変形量に応じて変化させる。このようにして、圧力センサ素子11は、被測定流体の圧力の変化を静電容量の変化として検出する。
【0023】
[ケーシング20]
ケーシング20は、センサユニット10の外枠を構成するとともに、後述する台座プレート30および支持ダイアフラム40を介して圧力センサ素子11を支持し、また、被測定流体が流出入する導入部20Vを画成し、さらに、継手200と連結する部位を形成する。ケーシング20は、ロアハウジング21、アッパーハウジング22およびカバー23から構成され、これらケーシング要素は、例えば、耐食性の金属であるインコネルからそれぞれ形成されている。ロアハウジング21、アッパーハウジング22およびカバー23は、例えば後述する継手200の軸心CL200(被測定流体が流出入する配管の軸心)に沿って当該順序で下から上に積み上げられるようにして構成されており、それぞれの合わせ面は、例えば、後述する継手200の軸心CL200(被測定流体が流出入する配管の軸心と同一であってZ軸に相当する)に垂直な平面(XY平面)上に形成され、対向する部位同士が、例えば溶接により接合されている。
【0024】
ロアハウジング21は、径の大きな大径円筒部21aと径の小さな小径円筒部21bとから形成され、かつこれら2つの部分が同軸となるように連結する円筒状の部位である。大径円筒部21aの上部開口端には、支持ダイアフラム40を介してアッパーハウジング22の下部開口端が接続している。また、小径円筒部21bの内周壁は、被測定流体が流入する導入部20Vを画成している。
【0025】
アッパーハウジング22 は、ロアハウジング21とカバー23との間に介在する略円筒体形状を呈した部位であり、その下部開口端は、上述したように、支持ダイアフラム40を介してロアハウジング21の上部開口端と接続し、その上部開口端は、カバー23と接続している。アッパーハウジング22の径(内径および外径)および軸心は、ロアハウジング21の大径円筒部21aの径(内径および外径)および軸心と略同値および同一である。また、アッパーハウジング22は、カバー23、支持ダイアフラム40、台座プレート30及び圧力センサ素子11とともにケーシング20内に独立した真空の基準真空室20Wを画成している。なお、基準真空室20Wには、所望の真空度を維持するために、いわゆるゲッター( 図示せず) と呼ばれる気体吸着物質が充填されている。また、下部開口端近傍における内周側壁面の適所には、ストッパ22aが突設されている。ストッパ22aが設けられていることで、被測定流体の急激な圧力上昇により台座プレート30 が過度に変移することが規制されている。
【0026】
カバー23は、略円盤状のプレートからなり、所定の位置に電極リード挿通孔23aが形成されている。この電極リード挿通孔23aに、ハーメチックシール60を介して電極リード部50が埋め込まれることで、所定の電気的シール性が確保されている。
【0027】
このように、ケーシング20は、軸心CL200に沿ってロアハウジング21、アッパーハウジング22およびカバー23が積層され、当該軸心CL200をもつ直径の異なる2つの円柱が連接した外形を呈している。
【0028】
[台座プレート30]
台座プレート30は、圧力センサ素子11を支持する構成要素であって、第1の台座プレート31と第2の台座プレート32とから構成されている。台座プレート30は、後述する支持ダイアフラム40を通じてケーシング20 に橋架されるように支持されている。
【0029】
第1の台座プレート31および第2の台座プレート32は、例えば、酸化アルミニウムの単結晶体であるサファイアからなる。第1の台座プレート31および第2の台座プレート32は、いずれもケーシング20の内面から離間した位置にあって、前者は支持ダイアフラム40の上面に接合され、後者は支持ダイアフラム40の下面に接合されている。ここで、第1および第2の台座プレート31、32は、支持ダイアフラム40の厚さに対して十分に厚くなっており、これにより、台座プレート30の熱膨張率と支持ダイアフラム40の熱膨張率との相違に起因した熱応力によって、台座プレート30が反るのを防止している。
【0030】
第1の台座プレート31および第2の台座プレート32は、その略中央に、圧力センサ素子11が備えるダイアフラム12の受圧面が対向する空間C2と被測定流体Lが流入する導入部20Vとを連通させるための導入孔31aおよび導入孔32aが開口している。また、第2の台座プレート32の下面には、導入孔32aと空間C2とが連通するように、酸化アルミニウムベースの接合材を介して圧力センサ素子11が接合されている。なお、第2の台座プレート32と圧力センサ素子11との接合は、周知の方法によって行われる。
【0031】
[支持ダイアフラム40]
支持ダイアフラム40は、上述したように、ケーシング20を通じて台座プレート30を橋架するために設けられた構成要素であって、インコネルの薄板からなり、その形状は、ケーシング20の外周縁形状、具体的には、アッパーハウジング22の下部開口端およびロアハウジング21の上部開口端の外周縁形状と整合した形状を有する。支持ダイアフラム40は、上面に第1の台座プレート31が接合され下面に第2の台座プレート32が接合された状態で、その外周部(周囲縁部)がアッパーハウジング22の下部開口端およびロアハウジング21の上部開口端に挟まれながら溶接等により接合されている。なお、支持ダイアフラム40の厚さは、例えば本実施形態の場合数十ミクロンであって、第1および第2の台座プレート31、32より十分に薄い厚さとなっている。また、支持ダイアフラム40の中央部には、導入孔31aおよび導入孔32aとともに、ダイアフラム12の受圧面が対向する空間C2と被測定流体Lが流入する導入部20Vとを連通させるための導入孔40aが開口している。
【0032】
[電極リード部50]
電極リード部50は、電極リードピン51と金属製のシールド52とを備え、電極リードピン51は金属製のシールド52にガラスなどの絶縁性材料からなるハーメチックシール53によってその中央部分が埋設され、電極リードピン51の両端部間で気密状態を保っている。電極リードピン51およびシールド52の一端は、カバー23の上面から軸心CL200に沿って外部へ突出し、後述するケーブル300が備えるコネクタ部320と接続するように構成され、これにより、圧力センサ1の出力を、外部に配設された増幅器(アンプ)および信号処理部に伝達するように構成されている。なお、シールド52とカバー23との間にも上述の通りハーメチックシール53が介在している。また、電極リードピン51の他方の端部には導電性を有するコンタクトバネ55、56が接続されている。
【0033】
コンタクトバネ55、56は、導入部20V から被測定流体Lが急に流れ込むことで生じる急激な圧力上昇に起因して圧力センサ素子11が変移した場合(より具体的には、上記圧力上昇により支持ダイアフラム40を通じてケーシング20に橋架されている台座プレート30が変移し、これに支持された圧力センサ素子11が変移した場合)、この変移を吸収して圧力センサ素子11の測定精度に影響が及ばないように設けられた弾性要素である。
【0034】
〔筐体100〕
筐体100は、センサユニット10を収容する空間が内側に形成されたケーシング要素であって、例えば、導電性材料であるステンレス製の薄板材を折り曲げまたは接合等することで、
図1(a)、(b)に示すように、その外形が八角柱体を呈するように形成されている。具体的には、長方形の薄板からなる8つの側面部と、略正八角形の薄板からなる略同一形態の上面部101および下面部102とから構成された10面体として形成されている。筐体100の軸心CLは、例えば、小径円筒部21bの軸心または継手200の軸心CL200(被測定流体が流出入する配管の軸心)に一致するように構成されており、これにより、上記8側面部は、軸心CLに対して平行な側面をもつ部位として形成され、上面部101および下面部102は、軸心CLに対して垂直な面(XY平面に平行な面)をもつ部位として形成されている。
【0035】
筐体100の上面部101および下面部102には、それぞれ貫通孔が形成されている。例えば、上面部101には、
図1(a)に示すように、ケーブル300が貫通する第1の貫通孔103が形成されており、また、下面部102には、
図1(b)に示すように、センサユニット10と継手200との接合部CP(小径円筒部21bと後述する継手接合部220とが接合する部分)が貫通する第2の貫通孔104が形成されている。これら2つの貫通孔は、いずれも軸心CLを内側に含む位置(軸心CLが貫通する位置)に形成されている。
【0036】
筐体100は、センサユニット10の全方位(上下方向、左右方向および前後方向)を覆うべく、
図2(a)、(b)に示すように、2つの分割筐体から構成されている。この2つの分割筐体は、例えば、軸心CLに平行な面(例えばXZ平面に平行な面)に沿って筐体100を分割するようにして形成された第1の分割筐体110および第2の分割筐体120から構成されている。当該第1の分割筐体110と第2の分割筐体120においては、互いの合わせ面が軸心CLに沿って形成され、当該合わせ面(後述する端面110a、120a)によって囲まれた開口が、軸心CLに平行な面内に形成されることになる。
【0037】
[第1の分割筐体110]
第1の分割筐体110は、筐体100が備える8つの側面部のうちの5つの側面部と、同上面部101の一部をなす第1の分割上面部111と同下面部102の一部をなす第1の分割下面部112と、を含むように形成されている(
図1(a)、(b)および
図2(a)、(b)を参照)。
【0038】
上記5つの側面部は、いずれも側面視が長方形の薄板部材からなり、隣接する部位同士が互いに連結し、端部に位置する側面部が備える端面110aによって第2の分割筐体120との合わせ面の一部が形成されている。当該合わせ面は、軸心CLに平行な面(XZ平面に平行な面)として形成され、これにより、第1の分割筐体110の開口部が、軸心CLに平行な面(XZ平面に平行な面)内に大きな口を開けるようにして形成されることになる。
【0039】
第1の分割上面部111は、
図2(a)に示すように、その平面視が正八角形を画成する8辺のうちの5辺と2端点を結んだ対角線とによって囲まれた六角状の薄板部材からなり、さらに、U字状の切欠き凹部(以下、この切欠き凹部を「第1の分割上面切欠部113」と称する。)が設けられている。この第1の分割上面切欠部113は、上記対角線の略中央に開口端をもち、当該開口端から中心部に向かって延在する(例えば+Y方向へ延在する)空間として形成されている。第1の分割上面切欠部113は、ケーブル300が貫通する第1の貫通孔103の一部を形成している(
図1(a)を参照)。すなわち、第1の分割上面切欠部113を画成する周縁側壁面113aは、第1の貫通孔103の壁面103aの一部を形成している。
【0040】
第1の分割上面切欠部113の開口端の幅H113は、一例では、ケーブル300の最大幅(最大径)、具体的には、後述する導線310aが非導電性材料からなる被覆材310cおよび導電性材料からなるシールド部材310bに覆われた第2区間L2の幅(外径)H310cよりも大きくなるように設定され、他の例では、後述するケーブル本体部310の第1区間L1、すなわち、シールド部材310bによって外周が覆われている前記ケーブルの第1区間L1の幅(外径)H310bと同値以上かつ第2区間L2の幅(外径)H310cの幅(外径)H310cより小さくなるように設定されている(
図5および
図6を参照)。当該他の例においては、第1の分割上面切欠部113にケーブル本体部310の第2区間L2を挿入することが物理的にできないため、後述する挟持機構Mを通じて接地(アース)がとれないといった好ましくない形態でケーブルが挟持されることを回避することができる。
【0041】
なお、第1の分割筐体110の第1の分割上面部111には、挟持機構Mを構成するクリップ受け150が設けられている。このクリップ受け150の詳細は、後述する「挟持機構M」のところで詳述する。
【0042】
第1の分割下面部112は、
図2(b)に示すように、底面視が略正八角形の薄板にU字状の切欠き凹部(以下、この切欠き凹部を「第1の分割下面切欠部114」と称する。)が設けられた部位として形成されている。この第1の分割下面切欠部114は、その開口端が八辺のうちの一辺、具体的には、後述する第2の分割筐体120を構成する第2の分割下面部122と対向する一辺を含む位置にあって、当該一辺から第1の分割下面部112の中心に向けて延在する(例えば+Y方向へ延在する)空間として形成されている。また、この第1の分割下面切欠部114は、接合部CPが貫通する第2の貫通孔104の一部を形成している(
図1(b)を参照)。すなわち、第1の分割下面切欠部114を画成する周縁側壁面114aは、第2の貫通孔104の壁面104aの一部を形成している。このため、第1の分割下面切欠部114の開口端の幅は、接合部CPの最大幅(最大径)よりも大きくなるように設定されている。
【0043】
[第2の分割筐体120]
第2の分割筐体120は、筐体100が備える8つの側面部のうちの3つの側面部と、同上面部101の一部をなす第2の分割上面部121と、同下面部102の一部をなす第2の分割下面部122とを含むように形成されている(
図1(a)、(b)および
図2(a)、(b)を参照)。
【0044】
上記3つの側面部は、いずれも側面視が長方形の薄板部材からなり、隣接する部位同士が互いに連結し、端部に位置する側面部が備える端面120aによって第1の分割筐体110との合わせ面の一部が形成されている。当該合わせ面は、軸心CLに平行な面(例えばXZ平面)に沿って形成され、これにより、第2の分割筐体120の開口部が、軸心CLに平行な面(XZ平面に平行な面)内に大きな口を開けるようにして形成されることとなる。
【0045】
第2の分割上面部121は、
図2(a)に示すように、平面視略正八角形状の薄板部材から4等分した部分(具体的には、正八角形状を形成する8辺のうちの互いが直交する2組の辺にそれぞれ平行な2つの分割線によって4等分した部分)を取除いた形態にU字状の切欠き凹部(以下、「第2の分割上面切欠部123」と称する。)が形成された薄板部材からなる。第2の分割上面切欠部123は、上記2つの分割線が交差する位置に設けられた空間であって、ケーブル300が貫通する第1の貫通孔103の一部を形成する(
図1(a)を参照)。すなわち、第2の分割上面切欠部123を画成する周縁側壁面123aは、第1の貫通孔103の壁面103aの一部を形成する。
【0046】
第2の分割上面切欠部123の開口端の幅H123は、第1の分割上面切欠部113の開口端の幅H113と同様に、一例では、導線310aが被覆材310cおよびシールド部材310bに覆われた第2区間L2の幅(外径)H310cよりも大きくなるように設定され、また、他の例では、導線310aの外周がシールド部材310bによって覆われている第1区間L1の幅(外径)H310bと同値以上かつ第2区間L2の幅(外径)H310cの幅(外径)H310cより小さくなるように設定されている(
図5および
図6を参照)。当該他の例においては、第2の分割上面切欠部123にケーブル本体部310の第2区間L2を挿入することが物理的にできないため、後述する挟持機構Mを通じて接地(アース)がとれないといった好ましくない形態でケーブルが挟持されることを回避することができる。
【0047】
第2の分割下面部122は、
図2(b)に示すように、底面視が正八角形の一辺と略同じ長さの4辺によって形成された略矩形状の薄板からなる。より具体的には、上記3つの側面部のうちの中央に位置する側面部の下端から筐体100の中心部に向けて延在する(例えば+Y方向へ延在する)底面視略矩形状の凸状部(以下、この凸状部を「第2の分割下面凸部124」と称することがある。本実施の形態では、この第2の分割下面凸部124と第2の分割下面部122とが実質的に同一部位を表すことになる)として形成されている。第2の分割下面凸部124(第2の分割下面部122)の周縁を画成する周縁側壁面のうち、第1の分割下面部112に形成された第1の分割下面切欠部114と対向する周縁側壁面124aは、接合部CPが貫通する第2の貫通孔104の壁面104aの一部を形成している(
図1(b)を参照)。このため、周縁側壁面124aの幅(X軸に沿った方向の長さ)は、接合部CPの幅(外径)よりも大きくなるように設定されている。
【0048】
〔継手200〕
継手200は、被測定流体が流出入する配管と圧力センサ1とが連接するための接続要素であって、例えば、互いが一体となって連結する継手本体部210と継手接合部220とから構成されている。
継手本体部210は、上記配管と同一の軸心をもつステンレス製の六角筒状部材から構成され、上記配管と螺合するためのネジ山(雌ネジ)が内側壁面に形成されている。また、平面視形状(横断面形状)が略正六角形を呈している継手本体部210の外周側壁には、例えばスパナが係合するように構成されている。
継手接合部220は、センサユニット10が備える小径円筒部21bと、例えば溶接により接合される部位であって、内側に導入部20Vと連通する通路が内側に形成された管状部材から構成されている。小径円筒部21bと接合された当該継手接合部220は、上述したように、接合部CPを形成している。
【0049】
〔ケーブル300〕
ケーブル300は、例えば、センサユニット10から出力される電気信号(例えば電圧値を含む電気信号)を増幅するために圧力センサ1の外部に配置されたアンプと電気的に接続するための部位あって、ケーブル本体部310とコネクタ部320とから構成されている。
【0050】
ケーブル本体部310は、導電性材料からなる複数の導線310aと、これら複数の導線310aを覆うシールド部材310b(例えばアルミニウムからなるシールド部材310b)および非導電性材料からなる被覆材310cとから構成されている。ケーブル本体部310は、導線310aのみから形成された区間と、シールド部材310bのみに覆われた導線310aから形成された区間、すなわち、シールド部材310bによって外周が覆われている第1区間L1と、シールド部材310bと被覆材310cとに覆われた導線310aから形成された第2区間L2とを有する。第1区間L1は、後述する挟持機構Mを通じて挟持される部分を形成し、その長さは、例えば、挟持機構Mを構成するクリップ500の厚みと筐体100の上面部101の厚みの合計値以上に設定される。また、ケーブル本体部310の先端部には、アンプと接続するコネクタが設けられている。
コネクタ部320は、センサユニット10に設けられた電極リード部50と接続する部位であって、電極リード部50(より具体的には、電極リードピン51)と着脱自在に係合する端子が設けられている。
【0051】
〔挟持機構M〕
つづいて、本発明の好ましい実施の形態の1つであるケーブル抜け止め構造としての挟持機構Mを、
図4ないし
図6に基づいて説明する。当該挟持機構Mは、
図4に示すように、第1の分割筐体110の第1の分割上面部111に配設されたクリップ受け150と、これと協働してケーブル300を挟持するクリップ500と、クリップ受け150とクリップ500とを所定の軸力で連結させるボルトB500とから構成されている。
【0052】
[クリップ受け150]
クリップ受け150は、特許請求の範囲に記載の「第1挟持要素」に相当する構成要素であって、例えば、略矩形状の断面をもつ導電性材料であるステンレス製の角材を略コの字状に折り曲げることで形成される。当該形態のクリップ受け150においては、互いが対向しながら所定の方向、例えば左右方向(Y軸に沿った方向)へ平行に延在する部分によって第1の分割筐体110と連結する固定部151、152が形成され、また、固定部151、152と直交する方向(X軸に沿った方向)へ延在しながらこれらと連接する部分によって受け部153が形成されている。この受け部153は、クリップ500と協働してケーブル300を挟持する部分、より具体的には、クリップ500と協働してケーブル本体部310における第1区間L1、すなわち、シールド部材310bに覆われた導線310aが延在する第1区間L1を挟持する部分として機能する。受け部153には、クリップ500が挿入される方向、例えば右から左へ伸長(+Y方向へ伸長)する一対の貫通孔154、154が設けられている。これら貫通孔154、154の内側壁面には、取付ボルトB500が螺合する雌ネジが形成されている。
【0053】
上記構成のクリップ受け150は、例えば、第1の分割筐体110が備える第1の分割上面部111の上に、受け部153が左方向外側(+Y方向)を向くように配置され、かつ固定部151、152が、第1の分割筐体110が備える5つの側面部のうちの平行に配置されている2つの側面部115、116の上端部(この上端部は、第1の分割上面部111よりも上方(+Z方向)へ突出するように形成されている)の内側面と対向するように載置されている。固定部151、152と2つの側面部115、116の上端部とは、例えば、溶接や接着剤によって一体的に接合されている。
【0054】
クリップ受け150の内側の空間、すなわち、三方(+Y、+Xおよび-X方向)が固定部151、152および受け部153によって囲まれかつ下方(-Z方向)が第1の分割上面部111によって囲まれた領域には、クリップ500が挿入される。当該領域の下方、すなわち、第1の分割上面部111には、上述したように、第1の分割上面切欠部113が形成されている。
【0055】
[クリップ500]
クリップ500は、特許請求の範囲に記載の「第2挟持要素」に相当する構成要素であって、例えば、略直方体を呈した導電性材料であるステンレス製の部材から形成され、上記領域に嵌入可能な形態(大きさおよび形状)を有している。具体的には、短辺を含む2つの垂直側壁501、502と長辺を含む2つの垂直側壁503、504とを備える。
【0056】
垂直側壁501、502は、クリップ受け150の固定部151、152と対向し、互いの間隔は、固定部151、152のそれよりも小さく設定されている。なお、クリップ500の動き(例えば前後方向/±X方向の動き)が固定部151、152によって規制されるよう、垂直側壁501、502の間隔を、固定部151、152のそれよりも僅かに小さく設定してもよい。
【0057】
垂直側壁503、504のうちの1つ、例えば垂直側壁503は、クリップ受け150に組付けられる際に受け部153と対向し、その略中央に、凹状部505が形成されている。この凹状部505は、クリップ500がクリップ受け150に挿入された際に第1の分割上面切欠部113と連通する位置にあって、クリップ受け150(より具体的には受け部153)と協働することでケーブル300が貫入される貫通孔を形成する。凹状部505は、例えば
図5に示すように、平面視において開口幅(各図におけるX軸方向の寸法)がH505で奥行き(各図におけるY軸方向の寸法)がD505の略矩形状を呈している。これにより、クリップ500がクリップ受け150に当接する位置(クリップ500の垂直側壁503とクリップ受け150の受け部153とが当接する位置)まで組付けられると、幅H505、奥行D505の上記貫通孔が形成されることになる。ここで、開口幅H505は、例えば、導線310aが被覆材310cおよびシールド部材310bに覆われた第2区間L2の幅(外径)H310cよりも小さく、導線310aがシールド部材310bで覆われた第1区間L1の幅(外径)H310bと同値または大きく設定されている。また、奥行D505は、ケーブル本体部310の第1区間L1の幅(外径)H310bより小さく設定されている。なお、奥行D505を導線310aの外形(外径)よりも大きく設定してもよい。
【0058】
上記形態の凹状部505が設けられていることで、ケーブル300が接地(アース)のとれない好ましくない形態で挟持されること(誤組付け)を回避することができる。すなわち、被覆材310cで覆われたケーブル本体部310の第2区間L2は、その幅(外径)H310cが凹状部505の開口幅H505より大きいため、凹状部505への挿入が物理的に規制される。これにより、ケーブル300が第2区間L2で挟持されるといった誤組付けを回避することができる。また、奥行D505が導線310aの外形(外径)よりも大きく設定されている仕様によれば、導線310aを通じてケーブル300が挟持されるといった誤組付けを回避することができる(この仕様によれば、導線310aが上記貫通孔に貫入した状態ではケーブル300の移動が規制されないため、誤組付けであることを組立作業者に認識させることができる。これにより、誤組付けを回避することができる)。さらに、ケーブル本体部310の第1区間L1がコネクタ部320の直近にまで延在する仕様によれば、誤組付けをほぼ完全に回避することができる。
また、凹状部505は、上記機能に加え、挟持機構Mを組立てる際にケーブル300を所定の位置に案内する機能(ガイド機能)を有する。これら機能を有する凹状部505の形態は、上記形態に限定されるわけではなく、ガイド機能を果たす上で好適な形状、例えば、平面視において三角形や半円形状を呈していてもよい。
【0059】
さらに、クリップ500には、垂直側壁503、504を貫く一対の貫通孔506、506が設けられている。この一対の貫通孔506、506は、クリップ500がクリップ受け150に挿入されたときクリップ受け150に設けられた一対の貫通孔154、154と連通する位置にあって、かつ軸心が一致するように形成されている。
【0060】
<圧力センサ1の組立工順>
つぎに、圧力センサ1の組立工順を、
図7および
図8に基づいて説明する。
はじめに、継手200を治具(図示せず)に設置する。このとき、継手200は、軸心CL200が垂直となる向きに配置される(ステップS1、組立態様1)。なお、継手200の大きさ(呼び径)は、被測定流体が流出入する配管の大きさ(呼び径)に応じて適宜変更される。
【0061】
つづいて、継手200とロアハウジング21とを接合する。具体的には、継手接合部220(継手200側)と小径円筒部21b(ロアハウジング21側)とを、例えば、溶接によって接合する(ステップS2、組立態様2)。
【0062】
つぎに、ロアハウジング21の内側に、圧力センサ素子11等を組み入れる。具体的には、ロアハウジング21の内側に、圧力センサ素子11が載置された台座プレート30およびこの台座プレート30と接合しこれを支持する支持ダイアフラム40を組み入れる(ステップS3)。このとき、支持ダイアフラム40の下面をロアハウジング21の上端面に載置する。
【0063】
つづいて、ロアハウジング21の上にアッパーハウジング22およびカバー23を被せる(ステップS4、組立態様3)。具体的には、ロアハウジング21の上端面に載置された支持ダイアフラム40の上面にアッパーハウジング22の下端面を載置し、さらにアッパーハウジング22の上端面にカバー23の下端面を載置する。その後、それぞれの合わせ面を、例えば溶接によって接合する。
【0064】
以上のステップS1ないしステップS4を経ることで、センサユニット10と継手200とが一体となったサブアセンブリ400が組立てられる。ステップS1ないしステップS4は、後述するステップS5ないしステップS7と独立して実施してもよい。例えば、種々のサイズ(呼び径)の配管に対応すべく、異なるサイズ(呼び径)の継手200がセンサユニット10に接合された複数の仕様のサブアセンブリ400を、生産計画に基づいて予め作り溜めしておいてよい。
【0065】
ステップS1ないしステップS4を通じて組立てられたサブアセンブリ400は、ステップS5を通じてケーブル300が取付けられる(組立態様4)。具体的には、センサユニット10に配設された電極リード部50とケーブル300が備えるコネクタ部320とを接続する。
【0066】
つづいて、ケーブル300が取付けられたサブアセンブリ400に、第1の分割筐体110を組付ける(ステップS6、組立態様5)。具体的には、第1の分割筐体110を、例えば左方向から右方向へ移動(+Y方向から-Y方向へ移動)させながら治具に固定されたサブアセンブリ400に組付ける。
【0067】
このとき、第1の分割筐体110の第1の分割上面部111に形成された第1の分割上面切欠部113にケーブル300を係合させるとともに、第1の分割筐体110の第1の分割下面部112に形成された第1の分割下面切欠部114にサブアセンブリ400に形成された接合部CPを係合させる(
図1(a)、(b)および
図2(a)、(b)を参照)。 その後、第1の分割下面部112に形成された3つの穴H1にボルトB1を挿入し、センサユニット10に形成された穴H1´(穴H1´は、サブアセンブリ400に第1の分割筐体110が組付けられた際に穴Hと連通する位置に配設されている)の内側壁面に形成された雌ネジとボルトBとを螺合させて、第1の分割筐体110とサブアセンブリ400とを結合する。
【0068】
上記第1の分割上面切欠部113へケーブル300を係合させる作業は、ケーブル本体部310の第1区間L1を、第1の分割上面切欠部113の周縁側壁面113aに当接させるようにして行われる。ここで、第1の分割上面切欠部113の開口幅H113は、上述したように、一例では同第2区間L2の幅(外径)H310cより大きいが、他の例ではケーブル本体部310の第1区間L1の幅(外径)H310bより大きく、かつ同第2区間L2の幅(外径)H310cより小さく設定されている。このため、他の例では、第1の分割上面切欠部113とケーブル本体部310の第2区間L2とが物理的に係合することはなく、上記係合作業が容易になる。
【0069】
つづいて、第2の分割筐体120を組付ける(ステップS7、組立態様6)。具体的には、第2の分割筐体120を、例えば右方向から左方向へ移動(-Y方向から+Y方向へ移動)させながら治具に固定されたサブアセンブリ400に組付ける。このとき、第2の分割筐体120における第2の分割上面部121に形成された第2の分割上面切欠部123に、ケーブル300を係合させ、第2の分割筐体120に形成された第2の分割下面凸部124(第2の分割下面部122)の周縁側壁面124aをサブアセンブリ400に形成された接合部CPに当接させる(または近接させる)(
図1(a)、(b)および
図2(a)、(b)を参照)。
【0070】
以上のステップを経ることで、サブアセンブリ400にケーブル300、第1の分割筐体110および第2の分割筐体120が組付けられる。その後、第2の分割上面部121に開口する貫通孔H2´にボルトB2を貫通させ、さらに、第1の分割上面部111に開口する貫通孔H2の内側壁面に形成された雌ネジにボルトBを螺合させて、第1の分割筐体110および第2の分割筐体120を結合する(ステップS8)。
【0071】
つぎに、以下の手順によって挟持機構Mを組立てる。
先ず、第1の分割筐体110が備えるクリップ受け150の上記領域にクリップ500を挿入する(ステップS9、組立態様7)。クリップ500がクリップ受け150に当接する位置(クリップ500の垂直側壁503とクリップ受け150の受け部153とが当接する位置)まで挿入されると、上述したように、幅H505、奥行D505の上記貫通孔が形成される。ケーブル300は、この貫通孔に貫入しながらクリップ受け150とクリップ500とで挟持されることになる。
上記挿入作業は、クリップ500の垂直側壁503に形成された凹状部505にケーブル本体部310の第1区間L1を係合させた状態、より好適には、第1区間L1と第2区間L2との境界部に形成される端面(シールド部材310bと被覆材310cとの境界部に形成される段差面)の一部を凹状部505の上面に当接させた状態で行うとよい。これにより、ケーブル300は、ケーブル本体部310の第1区間L1を通じて確実に挟持されることになる。すなわち、ケーブル300は、シールド部材310bを通じて接地(アース)のとれる所望の形態で確実に挟持されることになる。
【0072】
その後、クリップ500に設けられた一対の貫通孔506、506にボルトB500、B500を嵌入させ、さらに、クリップ受け150に設けられた一対の貫通孔154、154の内側壁面に形成された雌ネジにボルトB500、B500を螺合させる。これにより、ケーブル300は、所定の軸力によってクリップ受け150とクリップ500とによって挟持される(より具体的には、受け部153(クリップ受け150側)と垂直側壁503(クリップ500側)とによって挟持される)こととなる。以上により、圧力センサ1の組立てが完了する(ステップS10、組立態様8)。
【0073】
<本実施の形態に係る圧力センサ1の効果>
上記挟持機構Mを備える圧力センサ1によれば、以下の効果がもたらされる。
<効果1> 挟持機構Mが設けられることで、ケーブル300に大きな引張荷重が加わっても、センサユニット10からケーブル300が外れることを防止することができる。また、上記引張荷重を複数の導線から構成されるケーブル300全体で受けることで特定の導線が断線することを防止することができる。これにより、外力に対する耐性が高く信頼性に優れた圧力センサを提供することができる。
<効果2> ケーブル300は、挟持機構Mを介して、シールド部材310bによって外周が覆われたケーブル本体部310の第1区間L1と導電性材料からなる筐体100またはこれに結合する導電性材料からなるクリップ受け150及びクリップ500とが当接(圧接)する形で挟持される。これにより、当該挟持された部位を通じてケーブル300の接地(アース)をとることができる。すなわち、アース線を用いることなく接地がとれるといった効果が上記効果1と同時にもたらされる。これにより、部品点数および組立工数を削減することができ、生産コストが抑えられた低廉な圧力センサを提供することができる。
<効果3> 筐体100を分割することで、挟持機構Mの上記効果とケーブル300の取付を含めた組立性向上の効果とが相乗的にもたらされる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施の形態に係るケーブル抜け止め構造としての挟持機構Mおよびこれを備える圧力センサ1について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、明細書および図面に直接記載のない構成であっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。さらに、上記記載および各図に示した実施の形態は、その目的および構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることも可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態では、筐体100が第1の分割筐体110と第2の分割筐体120とに分割されているが、3つ以上に分割されていてもよいし、分割されていなくてもよい。
【0076】
また、圧力センサ1におけるクリップ500を、第2の分割筐体120と一体的に形成してもよい。当該変形例によれば、第1の分割筐体110と第2の分割筐体120との結合を簡易化することができる。例えば、第2の分割上面部121に形成された穴H2´にボルトB2を挿入した後、第1の分割上面部111に形成された穴H2の内側壁面に形成された雌ネジとボルトB2とを螺合させて第1の分割筐体110と第2の分割筐体120とを結合するといった方法を採らずとも、クリップ受け150とクリップ500とを結合するボルトB500の軸力によって、第1の分割筐体110と第2の分割筐体120とを結合することができる。このため、上記実施の形態に係る圧力センサ1から上記穴H2、穴H2´およびボルトB2を廃することができる。
【0077】
さらに、クリップ500の側に設けられた凹状部505をクリップ受け150の側に凹状部を設け(クリップ500の側に設けられた凹状部505に代わる凹状部をクリップ受け150の側に設け)、またはクリップ受け150およびクリップ500の双方に凹状部を設け(クリップ500の側に設けられた凹状部505に加えてクリップ受け150に凹状部を設け)てもよい。
【0078】
また、別の変形例として、ケーブル300が貫通する第2の貫通孔104を、上面部101ではなく、筐体100の側面、すなわち、継手200の軸心CL200と平行な平面内に形成してもよい。このとき、第1の分割筐体110および第2の分割筐体120の合わせ面の一部を、例えば軸心CLと垂直な面内に形成されるように構成し、当該合わせ面を含む面内に軸心が含まれる第2の貫通孔104が形成されるように、第1の分割筐体110および第2の分割筐体120に、第2の貫通孔104の周縁を画成する切欠き等をそれぞれ設けてもよい。
【0079】
さらに、クリップ受け150およびクリップ500といったケーブル300を挟持する要素に導電性材料からなる弾性部材を配設してもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、電気信号を出力する素子が静電容量式の圧力センサ素子であり、かつ電子機器が真空計を構成する圧力センサとして説明したが、本発明は、当該仕様に限定されるわけではない。例えば、圧力センサ素子が抵抗ゲージを貼り付け又はスパッタ等により成膜した歪ゲージ式や半導体ピエゾ抵抗式等、ダイアフラムの変形を電気信号として検出するセンシング方式を備えた圧力センサ素子及びこれを備える圧力センサであってもよい。また、圧力センサ素子以外の所定の物理量を検出する素子から電気信号が出力され、当該電気信号がケーブルを通じて外部に送信させる電子機器全般に対して適用され得る。
【符号の説明】
【0081】
1…圧力センサ、10…センサユニット、11…圧力センサ素子、21b…小径円筒部、50…電極リード部、100…筐体、101…上面部、102…下面部、103…第1の貫通孔、103a…壁面、104…第2の貫通孔、104a…壁面、110…第1の分割筐体、110a…端面、120a…端面、111…第1の分割上面部、112…第1の分割下面部、113…第1の分割上面切欠部、113a…周縁側壁面、114…第1の分割下面切欠部、114a…周縁側壁面、120…第2の分割筐体、121…第2の分割上面部、122…第2の分割下面部、123…第2の分割上面切欠部、123a…周縁側壁面、124…第2の分割下面凸部、124a…周縁側壁面、150…クリップ受け、200…継手、210…継手本体部、220…継手接合部、300…ケーブル、310…ケーブル本体部、310a…導線、310b…シールド部材、310c…被覆材、320…コネクタ部、400…サブアセンブリ、500…クリップ、505…凹状部、H505…開口幅、CP…接合部、M…機構、L1…第2区間L2…区間、CL…軸心、CL200…軸心。