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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】断熱パネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/06 20060101AFI20241119BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
F16L59/06
F16L59/065
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020145980
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040991
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】元岡 新也
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭介
(72)【発明者】
【氏名】新井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】牧之田 誠
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-281387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0305598(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0230918(US,A1)
【文献】特表2019-509436(JP,A)
【文献】特開2017-116097(JP,A)
【文献】特開2013-170652(JP,A)
【文献】特開2015-117830(JP,A)
【文献】特開2015-021541(JP,A)
【文献】特開2014-152847(JP,A)
【文献】特開2013-100912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339490(US,A1)
【文献】特開2002-130583(JP,A)
【文献】特開2001-219281(JP,A)
【文献】特開2006-329482(JP,A)
【文献】国際公開第2011/145481(WO,A1)
【文献】特開昭61-066069(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0288448(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/06
F16L 59/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属扁平筒の軸方向の一方の縁部に第1フランジ部が形成され、前記一方の縁部を閉塞するように前記第1フランジ部が重ねられて溶接されていると共に、
前記金属扁平筒の軸方向の他方の縁部に第2フランジ部が形成され、前記他方の縁部を閉塞するように前記第2フランジ部が重ねられて溶接されており、
前記金属扁平筒の内部に断熱空間が設けられ、
予め扁平化された状態の前記金属扁平筒の内部の前記断熱空間に断熱支持材が内装され、
前記一方の縁部と前記他方の縁部が溶接された対向する2辺と異なる対向する2辺に、前記金属扁平筒の周壁の扁平面から段差無く外側に凸で湾曲して形成された断面視山状若しくは断面視略コ字状の湾曲部が設けられ、
前記断熱支持材が、前記湾曲部が設けられた2辺に近接する前記断熱空間の部分にも内装されていると共に、
前記金属扁平筒の前記一方の縁部の周辺領域の板厚と前記他方の縁部の周辺領域の板厚の双方が、前記一方の縁部の周辺領域と前記他方の縁部の周辺領域との間の前記金属扁平筒の軸方向における中間領域の板厚よりも厚く形成されていることを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
前記断熱空間が減圧空間であり、
前記減圧空間に内装された断熱支持材が、前記湾曲部が設けられた2辺に近接する前記減圧空間の部分にも内装されていることを特徴とする請求項1記載の断熱パネル。
【請求項3】
前記金属扁平筒が、前記湾曲部が形成されるように押圧扁平化して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の断熱パネル。
【請求項4】
請求項記載の断熱パネルの製造方法であって、
金属筒を押し潰すように押圧変形して金属扁平筒を形成すると共に、前記金属扁平筒の周壁の扁平面から段差無く外側に凸で湾曲する断面視山状若しくは断面視略コ字状の湾曲部を形成する第1工程と、
前記金属扁平筒の軸方向の一方の縁部に第1フランジ部を形成し、前記一方の縁部を閉塞するように前記第1フランジ部を重ねて溶接する第2工程と、
袋状の前記金属扁平筒の内部に開放部から袋詰めするように収容して断熱支持材を内装する第3工程と、
前記金属扁平筒の軸方向の他方の縁部に第2フランジ部を形成し、前記他方の縁部を閉塞するように前記第2フランジ部を重ねて溶接する第4工程を備えることを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項記載の断熱パネルの製造方法であって、
金属筒を押し潰すように押圧変形して金属扁平筒を形成すると共に、前記金属扁平筒の周壁の扁平面から段差無く外側に凸で湾曲する断面視山状若しくは断面視略コ字状の湾曲部を形成する第1工程と、
断熱性に方向性がある断熱支持材の方向を調整しながら前記金属扁平筒の内部に前記断熱支持材を内装する第2工程と、
前記金属扁平筒の軸方向の一方の縁部に第1フランジ部を形成し、前記一方の縁部を閉塞するように前記第1フランジ部を重ねて溶接する第3工程と、
前記金属扁平筒の軸方向の他方の縁部に第2フランジ部を形成し、前記他方の縁部を閉塞するように前記第2フランジ部を重ねて溶接する第4工程を備えることを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項6】
前記第4工程において、前記第2フランジ部を重ねた領域を辺方向の一部を排気口として残して溶接し、残した前記排気口から前記金属扁平筒の内部を真空排気した後、前記排気口を封止することを特徴とする請求項4又は5記載の断熱パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重壁の内部に断熱空間が設けられる断熱パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二重壁の内部に断熱空間が設けられる断熱パネルとして特許文献1、2の真空断熱パネルが知られている。この真空断熱パネルは、第1金属板の中央と第2金属板の中央にそれぞれ膨出部を設け、膨出部の内側凹部を対向配置して断熱空間を設けると共に断熱空間に断熱材を収容するようにして第1金属板と第2金属板を積層し、第1金属板の4辺に全周に亘って設けられたフランジ部と第1金属板の4辺に全周に亘って設けられたフランジ部を重ね合わせた状態にして上側電極と下側電極で挟み込み、重ね合わせたフランジ部(縁部)相互をシーム溶接で接合して形成されるものである(特許文献1の段落[0020]、[0051]~[0054]、図1図2図5参照、特許文献2の段落[0021]、[0052]~[0055]、図1図2図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6223507号公報
【文献】特許第6223611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2の真空断熱パネルは、パネルの4辺の全周に亘ってシーム溶接を行う必要があるため、重ね合わせたフランジ部相互を溶接する溶接長、溶接に要する作業時間が長くなってしまう。そのため、断熱パネルの製造に当たり、溶接長をより短くし、溶接作業を減らして製造効率を向上することが求められている。また、重ね合わせたフランジ部相互を溶接するシーム溶接には大電流が必要とされるが、溶接長が長いと必要とされる電流量も多くなり、製造コストが高くなるという別の問題もある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、断熱パネルの製造時における溶接長を格段に短くし、溶接作業を減らして製造効率を向上することができると共に、製造コストを低減することができる断熱パネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の断熱パネルは、金属扁平筒の軸方向の一方の縁部に第1フランジ部が形成され、前記一方の縁部を閉塞するように前記第1フランジ部が重ねられて溶接されていると共に、前記金属扁平筒の軸方向の他方の縁部に第2フランジ部が形成され、前記他方の縁部を閉塞するように前記第2フランジ部が重ねられて溶接されており、前記金属扁平筒の内部に断熱空間が設けられていることを特徴とする。
これによれば、断熱パネルの製造時に、金属扁平筒の一方の縁部と他方の縁部に対応する2辺だけのフランジ部を溶接するだけで足り、他の対向する2辺は溶接せずに済むことから、パネルの4辺の全周に亘って溶接する場合に比べて、溶接長を格段に短くすることができる。従って、断熱パネルの製造時における溶接作業を大幅に減らし、製造効率を向上することができる。また、断熱パネルの製造時における溶接長を格段に短くできることから、溶接コストを大幅に削減し、製造コストを低減することができる。
【0007】
本発明の断熱パネルは、前記断熱空間が減圧空間であり、前記減圧空間に断熱支持材が内装されていることを特徴とする。
これによれば、断熱パネルを内部が減圧空間の真空断熱パネルとする場合に、真空断熱パネルの経時劣化の大きな要因として断熱パネルの製造時に形成した溶接部からのリークがあるが、断熱パネルの製造時におけるパネル全周に対する溶接部を2辺に限定して溶接部を減らすことにより、経時劣化でリークが発生する可能性を格段に低下させることができる。また、断熱支持材を減圧空間に内装することにより、長期に亘って安定して減圧空間を保持し、高度な断熱性能を維持することができる。
【0008】
本発明の断熱パネルは、前記一方の縁部と前記他方の縁部が溶接された対向する2辺と異なる対向する2辺に近接して前記減圧空間が設けられ、前記2辺に近接する前記減圧空間の部分に前記断熱支持材が内装されていることを特徴とする。
これによれば、溶接された対向する2辺と異なる対向する2辺に近接して減圧空間を設けることにより、パネル面の広がり方向において、溶接用の幅広のフランジ部に対応する断熱性に寄与しないパネル領域を極力減らし、断熱性に寄与するパネル領域をより広範囲に設けることが可能となり、真空断熱パネルの断熱性をより高めることができる。また、溶接された対向する2辺と異なる対向する2辺に近接する減圧空間の大きさを断熱支持材で保持し、長期に亘って安定して前述の近接する減圧空間の部分の状態を維持することができ、高度な断熱性能を維持することができる。
【0009】
本発明の断熱パネルは、前記一方の縁部と前記他方の縁部が溶接された対向する2辺と異なる対向する2辺に近接して前記断熱空間が設けられていることを特徴とする。更に、本発明の断熱パネルは、予め扁平化された状態の前記金属扁平筒の内部の前記断熱空間に断熱支持材が内装され、前記一方の縁部と前記他方の縁部が溶接された対向する2辺と異なる対向する2辺に、前記金属扁平筒の周壁の扁平面から段差無く外側に凸で湾曲して形成された断面視山状若しくは断面視略コ字状の湾曲部が設けられ、前記断熱支持材が、前記湾曲部が設けられた2辺に近接する前記断熱空間の部分にも内装されていることを特徴とし、好適には、前記断熱空間を減圧空間とし、前記減圧空間に内装された断熱支持材を、前記湾曲部が設けられた2辺に近接する前記減圧空間の部分にも内装する。また、好適には、前記金属扁平筒の前記一方の縁部の周辺領域の板厚と前記他方の縁部の周辺領域の板厚の双方を、前記一方の縁部の周辺領域と前記他方の縁部の周辺領域との間の前記金属扁平筒の軸方向における中間領域の板厚よりも厚く形成する。
これによれば、溶接された対向する2辺と異なる対向する2辺に近接して断熱空間を設けることにより、パネル面の広がり方向において、溶接用の幅広のフランジ部に対応する断熱性に寄与しないパネル領域を極力減らし、断熱性に寄与するパネル領域をより広範囲に設けることが可能となり、断熱パネルの断熱性をより高めることができる。
【0010】
本発明の断熱パネルは、前記金属扁平筒が押圧扁平化して形成されていることを特徴とする。更に、本発明の断熱パネルは、前記金属扁平筒が、前記湾曲部が形成されるように押圧扁平化して形成されていることを特徴とする。
これによれば、押圧扁平化による弾性復元力でパネル内の断熱空間の厚さを長期に亘って安定して維持することができ、製品寿命の長期化を図ることができる。
【0011】
本発明の断熱パネルの製造方法は、本発明の断熱パネルを製造する方法であって、金属筒を押し潰すように押圧変形して金属扁平筒を形成する工程を備えることを特徴とする。
これによれば、金属筒を押し潰すように押圧変形して金属扁平筒を形成することにより、押し潰しの押圧変形で発生する弾性復元力でパネル内の断熱空間の厚さを長期に亘って安定して維持することができ、製品寿命の長期化を図ることができる。
【0012】
本発明の断熱パネルの製造方法は、金属筒を押し潰すように押圧変形して金属扁平筒を形成する第1工程と、前記金属扁平筒の軸方向の一方の縁部に第1フランジ部を形成し、前記一方の縁部を閉塞するように前記第1フランジ部を重ねて溶接する第2工程と、袋状の前記金属扁平筒の内部に開放部から袋詰めするように収容して断熱支持材を内装する第3工程と、前記金属扁平筒の軸方向の他方の縁部に第2フランジ部を形成し、前記他方の縁部を閉塞するように前記第2フランジ部を重ねて溶接する第4工程を備えることを特徴とする。前記第1工程では、前記金属扁平筒の周壁の扁平面から段差無く外側に凸で湾曲する断面視山状若しくは断面視略コ字状の湾曲部を形成すると好適である。
これによれば、断熱パネルの製造時に、金属扁平筒の一方の縁部と他方の縁部に対応する2辺だけのフランジ部を溶接するだけで足り、他の対向する2辺は溶接せずに済むことから、パネルの4辺の全周に亘って溶接する場合に比べて、溶接長を格段に短くすることができる。従って、断熱パネルの製造時における溶接作業を大幅に減らし、製造効率を向上することができる。また、断熱パネルの製造時における溶接長を格段に短くできることから、溶接コストを大幅に削減し、製造コストを低減することができる。また、金属扁平筒の内部に断熱支持材を内装する際に、1辺で開放された袋状の中間材の金属扁平筒を用いることが可能となり、袋状の金属扁平筒に開放部から収容するようにして、換言すれば袋詰めにするようにして、断熱支持材を金属扁平筒に容易に内装することができると共に、断熱支持材を金属扁平筒の所望の内部領域に正確に内装し、高密度など所望の密度で内装することができる。
【0013】
本発明の断熱パネルの製造方法は、金属筒を押し潰すように押圧変形して金属扁平筒を形成する第1工程と、前記金属扁平筒の内部に断熱支持材を内装する第2工程と、前記金属扁平筒の軸方向の一方の縁部に第1フランジ部を形成し、前記一方の縁部を閉塞するように前記第1フランジ部を重ねて溶接する第3工程と、前記金属扁平筒の軸方向の他方の縁部に第2フランジ部を形成し、前記他方の縁部を閉塞するように前記第2フランジ部を重ねて溶接する第4工程を備えることを特徴とする。前記第1工程では、前記金属扁平筒の周壁の扁平面から段差無く外側に凸で湾曲する断面視山状若しくは断面視略コ字状の湾曲部を形成すると好適である。また、前記第2工程では、断熱性に方向性がある断熱支持材の方向を調整しながら前記金属扁平筒の内部に前記断熱支持材を内装すると好適である。
これによれば、断熱パネルの製造時に、金属扁平筒の一方の縁部と他方の縁部に対応する2辺だけのフランジ部を溶接するだけで足り、他の対向する2辺は溶接せずに済むことから、パネルの4辺の全周に亘って溶接する場合に比べて、溶接長を格段に短くすることができる。従って、断熱パネルの製造時における溶接作業を大幅に減らし、製造効率を向上することができる。また、断熱パネルの製造時における溶接長を格段に短くできることから、溶接コストを大幅に削減し、製造コストを低減することができる。また、金属扁平筒の軸方向の両方の縁部を閉塞する前に金属扁平筒の内部に断熱支持材を内装することにより、熱伝導方向に対して垂直にグラスウール等の繊維を配向させた断熱支持材、或いは熱伝導方向に対して垂直にグラスウール等の繊維を配向させた層材を積層させた断熱支持材など、断熱性を最大限発揮させるために方向性がある断熱支持材を使用する場合に、両方の開放状態の縁部で断熱支持材の方向を調整するなど、方向性を維持した状態で容易且つ確実に断熱支持材を金属扁平筒に内装、設置することができる。
【0014】
本発明の断熱パネルの製造方法は、前記第4工程において、前記第2フランジ部を重ねた領域を辺方向の一部を排気口として残して溶接し、残した前記排気口から前記金属扁平筒の内部を真空排気した後、前記排気口を封止することを特徴とする。
これによれば、真空断熱パネルの経時劣化の大きな要因として断熱パネルの製造時に形成した溶接部からのリークがあるが、断熱パネルの製造時におけるパネル全周に対する溶接部を2辺に限定して溶接部を減らすことにより、経時劣化でリークが発生する可能性を格段に低下させることができる。また、断熱支持材が減圧空間に内装されることにより、長期に亘って安定して減圧空間を保持し、高度な断熱性能を維持することができる。また、第2フランジ部を溶接せずに残した排気口から真空排気して封止することにより、金属扁平筒の周壁に別途の排気口を形成する工程を行う必要が無くなり、製造作業をより効率化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、断熱パネルの製造時における溶接長を格段に短くし、溶接作業を減らして製造効率を向上することができると共に、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による実施形態の断熱パネルを示す斜視図。
図2】実施形態の断熱パネルを示す平面図。
図3】(a)は図2のA-A拡大断面図、(b)は図2のB-B拡大断面図。
図4図3のC部拡大図。
図5図3のD部拡大図。
図6図3のE部拡大図。
図7】(a)~(c)は実施形態の断熱パネルの製造工程の前半を説明する工程説明図。
図8】(a)、(b)は実施形態の断熱パネルの製造工程の後半を説明する工程説明図。
図9】実施形態の断熱パネルの変形例における図4に相当する部分を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の断熱パネル及びその製造方法〕
本発明による実施形態の断熱パネル1は、図1図6に示すように、例えばアルミニウム、或いはステンレス等の金属材で形成され、金属筒2mを押圧扁平化して形成された金属扁平筒2で構成されている。金属扁平筒2の軸方向の一方の縁部31には一方の縁部31を押し潰すようにして第1フランジ部32が形成され、一方の縁部31を閉塞するようにして第1フランジ部32・32が重ねられた状態で、溶接部33で溶接されている。溶接部33は、重ねられた第1フランジ部32・32の延在方向に延びて形成され、後述する辺61の全長に亘って形成されている。
【0018】
金属扁平筒2の軸方向の他方の縁部41には他方の縁部41を押し潰すようにして第2フランジ部42が形成され、他方の縁部41を閉塞するようにして第2フランジ部42・42が重ねられた状態で、溶接部43で溶接されている。溶接部43は、重ねられた第2フランジ部42・42の延在方向に延びて形成され、後述する辺61における真空排気の排気口を封止した封止部44以外で、辺61の全長に亘って形成されている。尚、溶接部33、43は、例えばシーム溶接、レーザー溶接など、適用可能な適宜の溶接方法で形成することが可能である。
【0019】
金属扁平筒2の板厚は本発明の断熱パネルを形成可能な範囲で適宜であるが、例えば板厚0.05mm~1.0mmとすると好適である。また、例えば金属扁平筒2の一方の縁部31の周辺領域と他方の縁部41の周辺領域との間の軸方向における中間領域の板厚を0.1mm以下とする等、かなり薄くとする場合、第1フランジ部32が形成される一方の縁部31の周辺領域の板厚と、第2フランジ部42が形成される他方の縁部41の周辺領域の板厚を0.3mm~0.5mmとする等、中間領域の板厚より厚くして、溶接部33、43を形成し易くすると好適である。
【0020】
溶接部33、43で閉塞された金属扁平筒2の内部には、断熱空間Sが設けられている。本実施形態の断熱パネル1における断熱空間Sは減圧空間になっており、この減圧空間に断熱支持材5が内装され、断熱パネル1は真空断熱パネルを構成している。内装する断熱支持材5には、断熱パネル1の外側の大気圧に抗し且つ断熱性能を発揮する適宜のものを用いることが可能であり、例えばロックウール或いはグラスウール等の繊維材を所要密度で充填したもの、又は発泡プラスチック等とするとよい。尚、本実施形態の断熱パネル1は断熱空間Sを減圧空間とする真空断熱パネルとしたが、断熱空間Sを減圧空間とせずに空気層で構成する断熱パネルとしても良好である。
【0021】
断熱パネル1における、一方の縁部31が溶接部33で溶接され、他方の縁部41が溶接部43で溶接された対向する2つの辺61・61に対し、この対向する2つの辺61・61とは異なる対向する2つの辺62・62は、金属扁平筒2の周壁21を曲げて形成されている。本実施形態の断熱パネル1では、対向する2つの辺62・62において、断面視でなだらかな山状の湾曲部22が金属扁平筒2の周壁21を曲げて形成されている(図4参照)。
【0022】
そして、対向する2つの辺62・62に近接して断熱空間Sが設けられており、本実施形態では対向する2つの辺62・62に近接して減圧空間である断熱空間Sが設けられている。対向する2つの辺62・62に近接する減圧空間である断熱空間Sの部分にも、断熱支持材5が内装されている。即ち、金属扁平筒2の周壁21を曲げて形成される対向する2つの辺62・62に近接する位置まで、断熱性能を発揮可能な領域が設けられている。
【0023】
次に、本実施形態の断熱パネル1を製造する製造工程について説明する。断熱パネル1を製造する際には、アルミニウム、或いはステンレス等の金属材で形成された金属筒2mを用い、図7(a)の太線矢印のように、金属筒2mを押し潰すように押圧変形、押圧扁平化して金属扁平筒2を形成する(図7(a)、(b)参照)。そして、金属扁平筒2の軸方向の一方の縁部31を押し潰すように押圧変形して第1フランジ部32を形成し、一方の縁部31を閉塞するように第1フランジ部32・32を重ねて溶接し、重ねられた第1フランジ部32・32の延在方向に延びるように溶接部33を形成する(図7(c)、図2図5参照)。
【0024】
金属扁平筒2の一方の縁部31を閉塞した後、開放状態の他方の縁部41から例えばロックウール或いはグラスウール等の繊維材を所要密度で充填して、金属扁平筒2の内部に断熱支持材5を内装する(図8(a)参照)。その後、金属扁平筒2の軸方向の他方の縁部41を押し潰すように押圧変形して第2フランジ部42を形成し、他方の縁部42を閉塞するように第2フランジ部42・42を重ねて溶接し、重ねられた第2フランジ部42・42の延在方向に延びるように溶接部43を形成する(図8(b)、図2図6参照)。
【0025】
この他方の縁部42を閉塞するように第2フランジ部42・42を重ねて溶接する工程において、断熱空間Sを空気層とする断熱パネルを製造する場合には、溶接部43を辺61の全長に亘って形成するが、断熱空間Sを減圧空間とする本実施形態の断熱パネル1の場合には、第2フランジ部42・42を重ねた領域を辺方向の一部を排気口として残して溶接部43で溶接する。そして、残した排気口から金属扁平筒2の内部を真空排気した後、この排気口を、ロウ付け或いはガラス封止等による封止部44で封止する。
【0026】
尚、断熱空間Sを減圧空間とする本発明の断熱パネルを製造する場合、前述の排気口を残して溶接部43で溶接し、排気口を封止部44で封止する工程に代え、全体の製造工程中の適宜に工程において、金属筒2m或いは金属扁平筒2の周壁21の排気用領域ERに排気口を形成し、この排気口から金属扁平筒2の内部を真空排気した後、排気口を、ロウ付け或いはガラス封止等による封止部で封止する工程を適用しても良好である。
【0027】
本実施形態によれば、断熱パネル1の製造時に、金属扁平筒2の一方の縁部31と他方の縁部41に対応する2つの辺61・61だけのフランジ部31、41を溶接するだけで足り、他の対向する2つの辺62・62は溶接せずに済むことから、パネルの4辺の全周に亘って溶接する場合に比べて、溶接長を格段に短くすることができる。従って、断熱パネル1の製造時における溶接作業を大幅に減らし、製造効率を向上することができる。また、断熱パネル1の製造時における溶接長を格段に短くできることから、溶接コストを大幅に削減し、製造コストを低減することができる。
【0028】
また、断熱パネル1を内部が減圧空間の真空断熱パネルとする場合に、真空断熱パネルの経時劣化の大きな要因として断熱パネルの製造時に形成した溶接部からのリークがあるが、断熱パネル1の製造時におけるパネル全周に対する溶接部33、43を2辺に限定して溶接部を減らすことにより、経時劣化でリークが発生する可能性を格段に低下させることができる。また、断熱支持材5を減圧空間に内装することにより、長期に亘って安定して減圧空間を保持し、高度な断熱性能を維持することができる。
【0029】
また、溶接された対向する2つの辺61・61と異なる対向する2つの辺62・62に近接して減圧空間を設けることにより、パネル面の広がり方向において、溶接用の幅広のフランジ部に対応する断熱性に寄与しないパネル領域を極力減らし、断熱性に寄与するパネル領域をより広範囲に設けることが可能となり、真空断熱パネルの断熱性をより高めることができる。また、対向する2つの辺62・62に近接する減圧空間の大きさを断熱支持材5で保持し、長期に亘って安定して前述の近接する減圧空間の部分の状態を維持することができ、高度な断熱性能を維持することができる。尚、断熱空間Sを減圧空間ではなく空気層とする場合にも、溶接された対向する2つの辺61・61と異なる対向する2つの辺62・62に近接して断熱空間Sを設けることにより、パネル面の広がり方向において、溶接用の幅広のフランジ部に対応する断熱性に寄与しないパネル領域を極力減らし、断熱性に寄与するパネル領域をより広範囲に設けることが可能となり、断熱パネルの断熱性をより高めることができる。
【0030】
また、金属筒2mを押し潰すように押圧変形、押圧扁平化して金属扁平筒2を形成することにより、押し潰しの押圧変形で発生する、或いは押圧扁平化で変形された状態で発生する弾性復元力により、パネル内の断熱空間の厚さを長期に亘って安定して維持することができ、製品寿命の長期化を図ることができる。
【0031】
また、断熱パネル1の製造時に金属扁平筒2の内部に断熱支持材5を内装する際に、1辺で開放された袋状の中間材の金属扁平筒2を用いる製造工程により、袋状の金属扁平筒2に開放部から収容するようにして、換言すれば袋詰めにするようにして、断熱支持材5を金属扁平筒2に容易に内装することができると共に、断熱支持材5を金属扁平筒2の所望の内部領域に正確に内装し、高密度など所望の密度で内装することができる。
【0032】
また、第2フランジ部42を溶接せずに残した排気口から真空排気して封止部44で封止する製造工程を用いる場合には、金属扁平筒2の周壁21に別途の排気口を形成する工程を行う必要が無くなり、製造作業をより効率化することができる。
【0033】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0034】
例えば上記実施形態の断熱パネル1では、対向する2つの辺62・62の湾曲部22を断面視でなだらかな山形状としたが、図9の変形例に示すように、断面視で略コ字形状の湾曲部22aを金属扁平筒2の周壁21を曲げて形成しても良好である。この湾曲部22aを形成する変形例においても、対向する2つの辺62・62に近接する減圧空間である断熱空間Sの部分にも、断熱支持材5を内装する構成とすると良好である。
【0035】
また、必要に応じて、溶接された対向する2つの辺61・61とは異なる対向する2つの辺62・62においても、断熱パネルの形状をより矩形形状に整形するため等により、図5及び図6と対応する形状のフランジ部を形成することも可能である。この場合には、2つの辺62・62におけるフランジ部の先端の突出量は、第1フランジ部32の先端、及び第フランジ部42の先端よりも小さくすると、断熱性に寄与しないパネル領域を減らすことができて好適である。
【0036】
また、本発明の断熱パネルの平面視形状は、適用可能な範囲で適宜であり、上記図示例の略正方形に近い矩形の平面視形状の断熱パネル1とする構成の他、例えばより軸方向の長さが長い金属扁平筒2で構成され、2つの辺61・61の各辺61の長さよりも2つの辺62・62の各辺62の長さが長い略長方形の平面視形状の断熱パネルとしても良好である。この略長方形の平面視形状の断熱パネルによれば、4辺を溶接する断熱パネルの構造に比べ、より一層溶接長を削減し、溶接作業を低減できる効果を得ることができる。
【0037】
また、上記実施形態の断熱パネル1の製造工程例に代え、金属筒2mを押し潰すように押圧変形、押圧扁平化して金属扁平筒2を形成した後に、金属扁平筒2の内部に断熱支持材5を内装し、その後に、金属扁平筒2の軸方向の一方の縁部31を押し潰すように押圧変形して第1フランジ部32を形成し、一方の縁部31を閉塞するように第1フランジ部32・32を重ねて溶接し、重ねられた第1フランジ部32・32の延在方向に延びるように溶接部33を形成すると共に、金属扁平筒2の軸方向の他方の縁部41を押し潰すように押圧変形して第2フランジ部42を形成し、他方の縁部42を閉塞するように第2フランジ部42・42を重ねて溶接し、重ねられた第2フランジ部42・42の延在方向に延びるように溶接部43を形成する変形例の製造工程により、断熱パネル1を製造しても良好である。この変形例の製造工程によれば、例えば熱伝導方向に対して垂直にグラスウール等の繊維を配向させた断熱支持材、或いは熱伝導方向に対して垂直にグラスウール等の繊維を配向させた層材を積層させた断熱支持材など、断熱性を最大限発揮させるために方向性がある断熱支持材を使用する場合に、両方の開放状態の縁部で断熱支持材の方向を調整するなど、方向性を維持した状態で容易且つ確実に断熱支持材を金属扁平筒に内装、設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば保冷庫、保温庫、建材等の断熱パネル、自動車等のバッテリーを保温する容器を構成する断熱パネル、自動車等のバッテリーの電池セル相互を断熱する断熱パネル等に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…断熱パネル 2…金属扁平筒 21…周壁 22、22a…湾曲部 2m…金属筒 31…一方の縁部 32…第1フランジ部 33…溶接部 41…他方の縁部 42…第2フランジ部 43…溶接部 44…封止部 5…断熱支持材 61、62…辺 S…断熱空間 ER…排気用領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9