(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】香料粒子及びそれを含有する繊維製品処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20241119BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241119BHJP
B01J 13/16 20060101ALI20241119BHJP
D06M 13/00 20060101ALI20241119BHJP
D06M 13/02 20060101ALI20241119BHJP
D06M 15/227 20060101ALI20241119BHJP
D06M 23/12 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
C09K3/00 103L
C09K3/00 103M
B01J13/16
D06M13/00
D06M13/02
D06M15/227
D06M23/12
(21)【出願番号】P 2020148285
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】李 冬瑶
(72)【発明者】
【氏名】山岡 大智
(72)【発明者】
【氏名】市村 真一
(72)【発明者】
【氏名】松井 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】月井 慎一
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102259(JP,A)
【文献】特開平05-222672(JP,A)
【文献】特開2009-249501(JP,A)
【文献】特開平11-171754(JP,A)
【文献】特開昭53-094042(JP,A)
【文献】特表2005-521776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0064615(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00
C09K 3/00
B01J 13/16
C09K 23/00
D06M 13/00
D06M 13/02
D06M 15/227
D06M 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を含有し、ワックスを含有する殻で包含された香料組成物を含有する香料粒子。
(a)成分:ワックス
(b)成分:(b1)炭素数10以上24以下の高級アルコール、(b2)炭素数10以上24以下の高級脂肪酸、(b3)炭素数10以上24以下の脂肪族基を有する脂肪族グリセリルエーテル、(b4)炭素数10以上24以下の脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンとのエステル、及び(b5)炭素数10以上24以下の脂肪酸と多価アルコール(グリセリン又はポリグリセリンを除く)とのエステルから選ばれる1種類以上の有機化合物である、αゲル形成化剤
(c)成分:陽イオン界面活性剤、及び陰イオン界面活性剤から選ばれる1種以上のイオン性界面活性剤
(d)成分:(a)成分として炭素数36のパラフィンを用いて算出した、(a)成分とのHSP距離が2.1以上である香料化合物を含有する香料組成物
【請求項2】
(a)成分が、25℃で固体のワックスである、請求項
1に記載の香料粒子。
【請求項3】
(a)成分であるワックスが、25℃で固体であり、炭化水素、もしくは炭化水素とエステル結合の骨格で構成されている化合物(前記(b1)~(b5)成分を除く)である、請求項1又は2に記載の香料粒子。
【請求項4】
(a)成分を0.5質量%以上15質量%以下、(b)成分を0.2質量%以上20質量%以下、(c)成分を0.1質量%以上10質量%以下、(d)成分を0.5質量%以上60質量%以下、及び水を含有し、前記各成分の含有量は(b)成分に対して20倍の水を香料粒子中に含有するものと仮定して決定した値である、請求項1~3のいずれか1項に記載の香料粒子。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の香料粒子、及び水を含有する香料粒子分散液。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の香料粒子、及び水を含有する繊維製品処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料粒子及びそれを含有する繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
香料組成物を繊維製品に付着させ香料の残香性を高める方法として、香料の分子構造を改変した加水分解性の構造体を用いる方法や、香料組成物を包含するマイクロカプセルを繊維製品の処理剤に配合することは知られている。例えば、特許文献1には、所定のケイ素化合物と、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12~22の炭化水素基を3つ有するアミン化合物、その塩又はその4級化物とを所定量含有し、20℃におけるpHが2~6である繊維製品処理剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、アニオン界面活性剤と、カチオン化ポリマーと、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂で香料を内包したカプセル化香料とを含有する洗剤組成物が開示されている。また、マイクロカプセル香料以外に、特許文献3及び4には、常圧における融点が30℃以上の油脂と香料組成物との混合物を水に乳化分散させることにより得られる乳化物粒子を含有する水性液体、カチオン性化合物を含有する繊維製品用処理剤組成物が記載されている。また固形油剤を用いたマイクロカプセルも知られている。特許文献5には、イオン性界面活性剤、疎水性両親媒性物質、油溶性紫外線吸収剤を含む液状油剤、固体状油剤、及び水を、所定の手順で乳化、冷却して得られる紫外線防御化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-144310号公報
【文献】特開2010-209293号公報
【文献】特開2010-285737号公報
【文献】特開2012-72539号公報
【文献】特開2017-7969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、香料分子の構造を改変した加水分解性の構造体を用いた香料組成物は、特定の香料を反応させて前駆体化するというメカニズムから、香料のバリエーションに限界がある。また、マイクロカプセル香料については、現在実用化されているマイクロカプセル香料の多くは合成高分子化合物によりカプセル化したものであり、近年世界的にプラスチックによる環境汚染の問題が注目されている事から、代替技術の開発が求められている。
【0005】
本発明は、摩擦などの外力により発香できる香料粒子及びそれを含有する繊維製品処理剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記問題を解決するために、ワックスを用いること香料成分を包含できることを見出し、マイクロカプセルの代替となるような香料粒子を開発するに至った。
【0007】
本発明は、ワックスを含有する殻で包含された香料組成物を含有する香料粒子に関する。
また、本発明は、前記本発明の香料粒子、及び水を含有する香料粒子分散液に関する。
また、本発明は、前記本発明の香料粒子、及び水を含有する繊維製品処理剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、摩擦などの外力により発香できる香料粒子及びそれを含有する繊維製品処理剤組成物が提供される。本発明の香料粒子は、香料の揮散を抑制する効果に優れ、一方で、外力、例えば摩擦力の負荷を起因として発香する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例7の香料粒子を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真
【発明を実施するための形態】
【0010】
<香料粒子>
本発明は、ワックスを含有する殻で包含された香料組成物を含有する香料粒子を提供する。ワックスは、後述の(a)成分として説明したものを使用できる。本発明の香料粒子は、ワックスの殻に香料組成物が封入された構造であってよい。本発明の香料粒子は、香料組成物をコア物質、ワックスをシェル物質とする、コア-シェル型の香料粒子であってよい。
【0011】
本発明の香料粒子としては、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を含有する香料粒子が挙げられる。
(a)成分:ワックス
(b)成分:αゲル形成化剤
(c)成分:イオン性界面活性剤
(d)成分:香料組成物
【0012】
<(a)成分>
本発明の(a)成分のワックスは、室温、例えば25℃で固体であり、実質的に炭化水素、もしくは炭化水素とエステル結合の骨格で構成されている化合物(後述する(b1)~(b5)成分を除く)を言い、好ましくはヒドロキシ基及びカルボキシ基を有さない、炭化水素のみで構成されている炭化水素化合物、もしくは炭化水素とエステル結合の骨格のみで構成されている化合物を言う。
(a)成分は(b)成分と異なり実質的に水及び(c)成分の界面活性剤と共にαゲル構造体を構成しない疎水性の有機化合物である。
ワックスは分子量分布を持つ化合物の混合物である場合があることから、固体から流動性のある液体まで広い温度領域を持つ場合があるが、本発明でいう固体とは、室温、例えば25℃で固体の状態であるものを言う。
【0013】
(a)成分としては、例えば、天然ワックスとしては、オゾケライト(融点:66℃-78℃)、セレシン(融点:60℃-80℃)等の鉱物系ワックス;マイクロクリスタリンワックス(融点:60℃-90℃)、パラフィン(融点:40℃-70℃)等の石油系ワックスなどが挙げられる。合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス(融点:94℃-152℃)等が挙げられる。
【0014】
香料粒子の安定性の観点から、(a)成分は、融点が、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃、更に好ましくは70℃以上であり、そして、製造上の観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0015】
本発明の香料粒子は、例えば、(a)成分の融点よりも高い温度で、(a)成分、後述する(b)成分、(c)成分、(d)成分を混合し、(d)成分の香料組成物を包含した状態から、冷却することで(a)成分のワックスの層が固化することでカプセル化して得ることが可能となる。なお(b)成分から前記(a)成分は除かれる。
【0016】
<(b)成分>
(b)成分は、αゲル形成化剤である。本発明で、(b)成分のαゲル形成化剤とは、(c)成分及び水とともにαゲル構造体を形成することができるものをいう。
【0017】
αゲルは、界面活性剤、高級アルコールおよび水からなる場合が多い。ここでいうαゲル構造体を形成することができるかどうかは、具体的に以下の方法で判断する。
〔αゲル構造体の形成確認法〕
操作1.(c)成分のイオン性界面活性剤と(b)成分の化合物、例えば高級アルコールなど、を混合し、加熱融解し、十分均一になるように混合し、水を加え乳化後、冷却する。
操作2.得られた生成物の構造をX線回折によりα-ゲル構造が形成されているか確認する。具体的には、広角X線回折において、Bragg角=21~22°付近に鋭い回折ピークが、少なくとも1本現れる生成体はαゲル構造を有すると判断する。
【0018】
なお上記確認方法において、操作1では、(b)成分/(c)成分は質量比で1.5以上5以下の範囲であってよい。また、操作1では、(b)成分及び(c)成分の合計量に対する水の割合は、水/〔(b)成分+(c)成分〕の質量比で2以上10以下の範囲であってよい。また、加熱融解の温度は、70℃以上98℃以下であってよい。なお、(c)成分として陰イオン界面活性剤を用いる場合は、酸型の化合物を使用することが好ましい。この何れかの条件でαゲル構造体の形成が確認できれば、用いた(b)成分はαゲル形成化剤であると判断してよい。
【0019】
本発明の(b)成分のαゲル形成化剤は、(a)成分の融点以上の温度で(a)成分と溶融できるものが挙げられる。
(b)成分は、(c)成分及び水と共にαゲル構造体を形成することができる化合物であり、例えば、50℃で(c)成分及び水と共にαゲル構造体を形成することができる有機化合物が挙げられる。(b)成分はαゲル構造体を構成することができる化合物である点で(a)成分とは相違する。
【0020】
(b)成分としては、(b1)炭素数10以上24以下の高級アルコール、(b2)炭素数10以上24以下の高級脂肪酸、(b3)炭素数10以上24以下の脂肪族基を有する脂肪族グリセリルエーテル、(b4)炭素数10以上24以下の脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンとのエステル、及び(b5)炭素数10以上24以下の脂肪酸と多価アルコール(グリセリン又はポリグリセリンを除く)とのエステルから選ばれる1種類以上の有機化合物が挙げられる。
【0021】
(b1)の炭素数10以上24以下の高級アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。これらのうち、直鎖アルキル基を有するものが好ましく、炭素数16以上18以下のアルコールがより好ましく、セチルアルコール及びステアリルアルコールから選ばれる1種以上が更に好ましい。また、セチルアルコール及びステアリルアルコールを含むことができる。
【0022】
(b2)の炭素数10以上24以下の高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べへン酸等が挙げられる。これらのうち、炭素数14以上22以下の直鎖状飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16以上22以下の直鎖状飽和脂肪酸がより好ましい。
【0023】
(b3)の炭素数10以上24以下の脂肪族基を有する脂肪族グリセリルエーテルとしては、例えば、モノデシルグリセリルエーテル、モノラウリルグリセリルエーテル、モノミリスチルグリセリルエーテル、モノセチルグリセリルエーテル、モノステアリルグリセリルエーテル、モノベヘニルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0024】
(b4)のグリセリンと炭素数10以上24以下の脂肪酸とのエステルとしては、例えば以下のような構造式で示されるものが挙げられる。
【0025】
【0026】
〔式中、
R1は、水素原子又は-O(CO)-(CH2)x-CH3
R2は、水素原子又は-(CO)-(CH2)y-CH3、
R3は、水素原子又は-(CO)-(CH2)z-CH3、
x、y、zは、それぞれ、8以上22以下の数、
nは1以上10以下の数であり、
nが2以上の場合は、当該エステルは、R2として水素原子及び-(CO)-(CH2)y-CH3の両方を含んでいてもよく、
R1、R2、R3の何れか1つ以上は水素原子であり、但しR1、R2、R3が全て水素原子である場合は除かれる。〕
【0027】
上記の式においてnは、1以上10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下の数である。前記式のエステルは、nが特定整数の単一化合物であってもよく、nが異なる複数の化合物の混合物であってよい。なお、混合物である場合は、最も多く含む化合物におけるnをその混合物におけるnとみなしてよい。αゲル構造を作るために、nは好ましくは1以上5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
また、前記式中のx、y、zは、それぞれ、12以上20以下が好ましく、14以上20以下がより好ましい。
(b4)のエステルのエステル化率は、αゲル構造を作るために、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下である。また、(b4)のエステルは、エステル結合している脂肪酸のエステル化率が異なる化合物の混合物であってもよい。
【0028】
(b5)の炭素数10以上24以下の脂肪酸と多価アルコール(グリセリン又はポリグリセリンを除く)とのエステルとしては、モノエステル体、ジエステル体及びトリエステル体が挙げられる。多価アルコールは、ソルビタン及びエリスリトールから選ばれる化合物が好ましい。
(b5)のエステルのうち、前記脂肪酸とソルビタンとのエステルとしては、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノミリスチン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン、ジラウリン酸ソルビタン、ジミリスチン酸ソルビタン、ジパルミチン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、ジベヘン酸ソルビタン、トリラウリン酸ソルビタン、トリミリスチン酸ソルビタン、トリパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリベヘン酸ソルビタン等が挙げられる。
また、(b5)のエステルのうち、前記脂肪酸とエリスリトールとのエステルとしては、例えば、モノラウリン酸エリスリトール、モノミリスチン酸エリスリトール、モノパルミチン酸エリスリトール、モノステアリン酸エリスリトール、モノベヘン酸エリスリトール、ジラウリン酸エリスリトール、ジミリスチン酸エリスリトール、ジパルミチン酸エリスリトール、ジステアリン酸エリスリトール、ジベヘン酸エリスリトール、トリラウリン酸エリスリトール、トリミリスチン酸エリスリトール、トリパルミチン酸エリスリトール、トリステアリン酸エリスリトール、トリベヘン酸エリスリトール等が挙げられる。
【0029】
これらの他にも、(b)成分としては、疎水性両親媒性物質、例えば、セラミド類、炭素数10以上24以下の脂肪酸とソルビットとのエステル等が挙げられる。
【0030】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、イオン性界面活性剤である。(c)成分としては、陽イオン界面活性剤、及び陰イオン界面活性剤から選ばれる1種以上のイオン性界面活性剤が挙げられる。
【0031】
陽イオン界面活性剤としては、下記一般式(c1)で示されるアミンの4級化物が好ましい。
〔R1c-(T-R3c)m-〕nN(R2c)3-n (c1)
〔式中、R1cは、炭素数15以上23以下の炭化水素基である。R2cは、炭素数1以上3以下の炭化水素基、フェニル基、ベンジル基及びHO-(CpH2pO)r-CqH2q基から選ばれる基であり、n=1の時、R2cが2つのフェニル基又はベンジル基であることはない。R3cは、炭素数1以上6以下のアルキレン基又は-(CpH2pO)r-を示し、Tは、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又はフェニレン基を示す。mは0又は1の数であり、mは0が好ましい。nは1又は2の数であり、nは1が好ましい。p及びqはそれぞれ2又は3の数である。rは0以上5以下の数である。同一分子内にR1c、R2c、HO-(CpH2pO)r-CqH2q基、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【0032】
前記一般式(c1)で表される第3級アミン化合物の4級化物は、一般式(c1)で表される第3級アミン化合物とアルキル化剤とを用いた4級化反応により得ることができる。アルキル化剤は、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等が挙げられ、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる一種以上を用いることが好ましい。すなわち、(c)成分として、一般式(c1)で表される第3級アミン化合物を、塩化メチル、ジメチル硫酸及びジエチル硫酸から選ばれる1種以上のアルキル化剤で4級化した4級化物が挙げられる。
【0033】
陰イオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、脂肪酸セッケン;アルキル硫酸エステル塩;脂肪酸アミドスルホン酸塩;リン酸エステル塩;N-脂肪酸アシルアミノ酸塩等が挙げられる。これらの中でも、長鎖アシルスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤、N-脂肪酸アシルアミノ酸塩、及び石鹸から選ばれる陰イオン界面活性剤が好ましい。陰イオン界面活性剤は、炭素数が12以上22以下、更に14以上22以下、更に16以上22以下のアルキル基を有するものが好ましい。陰イオン界面活性剤の塩は、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0034】
陰イオン界面活性剤として、更に好ましくは、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニン、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸カリウム、ステアリン酸、ラウリン酸、べヘニン酸等が挙げられる。
【0035】
陰イオン界面活性剤としては、αゲル構造体を形成する上でN-脂肪酸アシルアミノ酸塩が好ましく、N-脂肪酸アシルグルタミン酸塩がより好ましく、炭素数が10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下の飽和又は不飽和脂肪酸由来のN-脂肪酸アシルグルタミン酸塩が更に好ましい。N-脂肪酸アシルグルタミン酸塩の中では、ジラウロイルグルタミン酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸モノ塩、N-ステアロイル-L-グルタミン酸塩、N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニン、N-ステアロイルグルタミン酸塩、N-ミリストイル-L-グルタミン酸塩から選ばれる少なくとも1種が好ましい。N-脂肪酸アシルグルタミン酸塩は、天然油脂由来の脂肪酸構成のN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸塩(ココイルグルタミン酸塩という場合もある)、パーム油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸塩であってもよい。
【0036】
(c)成分は、陰イオン界面活性剤が好ましく、N-ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニンが更に好ましい。
【0037】
(c)成分は、(b)成分及び水と共にαゲル構造体を形成することができるイオン性の界面活性剤が好ましい。(c)成分は、前記したαゲル構造体の形成確認法において、(b)成分を、炭素数16の高級アルコール、炭素数18の脂肪酸とソルビタンによるソルビタン脂肪酸ジエステル及び炭素数22の脂肪酸とグリセリンによるグリセリン脂肪酸モノエステルから選ばれる化合物とした条件で、αゲル構造体を形成することができるものが好ましい。
【0038】
<(d)成分>
本発明の(d)成分は、香料組成物である。
香料組成物は、香料化合物を1種又は2種以上含有する。
(d)成分の香料化合物としては、(a)成分とのハンセン溶解度パラメータ(HSP)距離が2.0以上であるHSP値を有する(要件1)香料化合物が好ましい。
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)では、ある物質の溶解性を示すために多次元ベクトルが用いられる。このベクトルは、分散項、極性項、水素結合項で表される。分散項はファンデルワールスの力、極性項はダイポール・モーメントの力、水素結合項は水、アルコールなどが持つ力とされている。HSP距離は、(a)成分のベクトルと(d)成分のベクトルの間の距離である。
【0039】
本発明において、HSP距離は次の手順で求める。まず、HSP解析ソフトウェア、例えば、HSPiPver. 3.0.33を用いて、SMILES式を元に計算を行い、各化合物の極性項(dD)、分散項(dP)、水素結合項(dH)の値を出して求める。その後、以下の式に基づいてHSP距離を計算する。
【0040】
【0041】
(a)成分のワックスは不純物を含み混合物であるものも多く存在する。(a)成分は、石油系ワックスのパラフィンを用いることが好ましい。そこで、本発明では、(d)成分の香料化合物とのHSP距離の算出には、代表的な純n-パラフィンである、炭素数36のパラフィンのハンセン溶解度パラメータ(HSP)[dD=16.2、dP=2.3、dH=2.4]を、(a)成分の基準として用いる。すなわち、本発明の(d)成分は、炭素数36のパラフィンを基準として用いて算出したHSP距離が2.0以上である香料化合物を含有することが好ましい。本発明では、特記しない場合は、HSP距離は、炭素数36のパラフィンを基準として用いて算出したHSP距離である。
【0042】
要件1のHSP距離は、ワックスとの相溶性の観点から、2.1以上であり、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上である。
【0043】
(a)成分のワックスは不純物を含み混合物であるものも多く存在する。混合物であるワックスの際は、前記の通り、炭素数36のパラフィンを基準として用いて算出したHSP距離が2.0以上である香料化合物、例えば、安息香酸ベンジルと混合して高温状態から温度を下げてDSC測定を行い、再結晶化が始まる温度が65℃以上85℃以下、好ましくは、70℃以上80℃以下を満たすワックスであることが好ましい。
【0044】
(d)成分の香料化合物としては、logP値が1.0以上6.0以下である(要件2)香料化合物が挙げられる。
【0045】
要件2のlogP値は、カプセルの製造時の乳化の観点から、1.0以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.3以上、更に好ましくは2.5以上、そして、6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。
【0046】
本発明において、logP値とは、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相からなる溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んで分配平衡に到達した際の、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。今日では、化合物分子を構成する原子の数及び化学結合のタイプによって決められる原子団のフラグメント値を用いた計算プログラムによって算出される、“計算logP(ClogPという場合がある)”の値が広く用いられており、本発明においても、化合物の選択に際して、ClogPの値を用いる。本発明においては、ClogPの値として、米国環境保護庁とSyracuse社が共同開発したソフトウェアEPI Suite(登録商標;The Estimations ProgramsInterface for Windowsversion 4.11)を用いて算出された値を用いる。
【0047】
好ましい香料化合物は、要件1を満たす香料化合物である。例えばシクロペンタデカノリド(3.08、6.2)、シクロヘキサデカノリド(3.08、6.7)を挙げることができる。ここで、( )内の数字は(HSP距離、ClogP)である(以下同様)。
【0048】
より好ましい香料化合物は、要件1と要件2の両方を満たす化合物である。
要件1と要件2の両方を満たす香料化合物として、アミルシンナミックアルデヒド(5.39、4.3)、2-メチルウンデカナール(3.20、4.7)、エチル 3-メチル-3-フェニルオキシラン-2-カルボキシレート(5.65、3.0)、アリルアミルグリコレート(4.22、2.3)、カプロン酸アリル(3.41、3.2)、プロピオン酸アリルシクロヘキシル(2.69、4.5)、ヘプタン酸アリル(3.41、3.2)、アンブレットリド(2.35、5.4)、アンブロキサン(登録商標)(3.20、4.8)、サリチル酸アミル(8.43、4.6)、サリチル酸イソアミル(8.40、4.5)、安息香酸ベンジル(7.93、4.0)、サリチル酸ベンジル(10.86、4.3)、酢酸ベンジル(6.19、2.0)、ブーゲオナール(5.09、3.9)、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル(2.50、4.4)、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル(4.25、4.4)、カシュメラン(登録商標)(4.80、4.5)、セドリルメチルエーテル(3.67、5.0)、1,4-シネオール(2.57、3.1)、1,8-シネオール(2.75、3.1)、シトロネロール(6.33、3.6)、酢酸シトロネリル(2.86、4.6)、シトロネリルニトリル(3.41、3.6)、シクラメンアルデヒド(5.48、3.9)、サリチル酸シクロヘキシル(8.68、4.9)、ダマセノン(3.64、4.2)、α-ダマスコン(3.67、4.3)、β-ダマスコン(4.08、4.4)、δ-ダマスコン(3.69、4.2)、γ-デカラクトン(5.11、2.6)、デカナール(4.03、3.8)、ジヒドロミルセノール(7.83、3.5)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(6.06、2.9)、ジフェニルオキサイド(8.57、4.1)、(1-シクロヘキシル-2-メチルプロパン-2-イル)ブタノエート(2.13、4.4)、エチレンブラシレート(6.83、4.7)、エチレンドデカンジオエート(6.69、4.2)、エチル 2-メチルブチレート(3.45、2.3)、エチルバニリン(13.73、1.6)、オイゲノール(10.59、2.7)、フルーテート(登録商標)(4.86、3.6)、ゲラニオール(7.34、3.5)、酢酸ゲラニル(3.65、4.5)、ゲラニルニトリル(4.88、3.9)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.92、2.8)、酢酸へキシル(3.64、4.8)、サリチル酸へキシル(7.76、5.1)、サリチル酸シス-3-ヘキセニル(8.71、4.8)、イソEスーパー(3.65、5.2)、α-イオノン(3.67、3.9)、β-イオノン(4.08、4.4)、プロパン-2-イル 2-メチルブタノエート(2.78、2.7)、ジャバノール(登録商標)(5.52、4.7)、リリアール(登録商標)(4.59、4.4)、リナロール(8.43、3.0)、酢酸リナリル(3.42、4.4)、リラール(登録商標)(9.85、3.3)、マンザネート(3.27、2.8)、ジヒドロジャスモン酸メチル(5.28、3.5)、メチルアンスラニレート(12.10、2.3)、メチルβ-ナフチルケトン(8.96、2.9)、γ-メチルイオノン(3.40、4.8)、サリチル酸メチル(13.37、2.6)、11-オキサ-16ヘキサデカノリド(3.07、4.9)、ネクタリル(4.64、5.1)、ネロール(7.34、3.7)、ネロリンヤラヤラ(7.52、3.3)、γ-ノナラクトン(5.81、2.1)、ノナナール(4.52、3.3)、オクタナール(5.55、2.8)、フェニルヘキサノール(6.62、3.5)、サンダルマイソールコア(登録商標)(6.24、4.7)、ターピネオール(9.13、3.3)、酢酸ターピニル(3.62、4.3)、テトラヒドロリナロール(6.73、3.6)、酢酸トリシクロデセニル(5.56、2.9)、プロピオン酸トリシクロデセニル(4.99、3.3)、γ-ウンデカラクトン(5.35、3.1)、酢酸オイゲノール(7.09、3.06)、カプロン酸アリル(3.41、3.18)、アリルシクロヘキシルグリコレート(3.99、2.72)、アネトール(6.33、3.39)、ジブチルヒドロキシトルエン(3.36、5.03)、カロン(10.59、2.43)、シス-3-ヘキセナール(9.65、1.61)、シトラール(5.61、3.45)、クマリン(11.59、1.51)、デカノール(6.11、3.65)、イソ酪酸エチル(4.11、1.85)、エチルリナロール(2.33、3.87)、エチルマルトール(15.22、0.3)、γ-テルピネン(2.14、4.75)、ヘリオナール(9.33、4.5)、ヘリオトロピン(11.84、1.77)、イソダマスコン(3.67、4.29)、レボサンドール(5.52、5.14)、ラズベリーケトン(10.44、1.48)、ローズオキシド(3.07、3.58)、トリプラール(5.97、2.85)から選ばれる1種以上の香料化合物が挙げられる。
【0049】
なお、香料組成物は、香料化合物以外に、香料希釈剤又は溶剤を含んでもよい。
【0050】
(d)成分は、要件1を満たす香料化合物を、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含有する。
(d)成分は、要件2を満たす香料化合物を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上含有する。
(d)成分は、要件1及び要件2を満たす香料化合物を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上含有する。
【0051】
(d)成分の香料組成物は、該組成物における平均HSP距離が2.0以上であることが好ましい。この平均HSP距離は、香料組成物中の各香料化合物のHSP距離と当該香料化合物の香料組成物中の含有量(質量比)から算出される平均の値である。
【0052】
<香料粒子の組成等>
本発明の香料粒子は、香料組成物を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下含有する。
【0053】
(a)~(d)成分を含有する本発明の香料粒子は、(a)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは、1質量%以上、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下含有する。
また、(a)~(d)成分を含有する本発明の香料粒子は、(b)成分を、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下含有する。
また、(a)~(d)成分を含有する本発明の香料粒子は、(c)成分を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下含有する。
また、(a)~(d)成分を含有する本発明の香料粒子は、(d)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下含有する。
また、(a)~(d)成分を含有する本発明の香料粒子は、(b)成分の含有量と(c)成分の含有量の合計が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
これらの含有量は、本発明の香料粒子を製造する時の配合量に基づくものであってよい。また、本発明の香料粒子を、(a)~(d)成分を用いて、水系で製造した場合は、αゲルが形成され、αゲルは質量基準で(b)成分の好ましくは15倍以上25倍以下の水を含む。そのため、本発明では、配合に用いる(b)成分に対して20倍の水を香料粒子中に含有するものと仮定して香料粒子中の各成分の含有量を決定してもよい。
【0054】
(a)~(d)成分を含有する本発明の香料粒子は、(a)成分の含有量と(d)成分の含有量との質量比である(a)/(d)が、好ましくは1/30以上、より好ましくは1/20以上、そして、ワックスの殻の形成の観点から、好ましくは1/1以下、より好ましくは1/2以下である。
【0055】
本発明の香料粒子は、その他成分として、抗菌・消臭成分や冷感成分を含有することができる。
【0056】
本発明の香料粒子の平均粒子径は、香料の保持量を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、そして、香料の保持性を向上させる観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。この平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-950」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定されたものである。
【0057】
本発明の香料粒子は、繊維製品処理剤組成物、例えば、洗剤組成物、柔軟剤組成物又は糊剤組成物に用いることができる。本発明の香料粒子は、安定性等を考慮して、配合する組成物において、公知のマイクロカプセル香料と置き換えて用いてもよい。
【0058】
本発明の香料粒子は、液体洗剤組成物又は液体柔軟剤組成物に用いることが好ましい。これらの組成物は水を含有するものが好ましい。その場合、本発明の香料粒子以外に別途香料組成物を液体洗剤組成物又は液体柔軟剤組成物中に添加することができる。また、香料誘導体として、ケイ酸エステルや脂肪酸エステル等で知られている香料前駆体化合物を併用してもよい。また使用目的によっては、公知のマイクロカプセルタイプの香料粒子を併用してもよい。
【0059】
本発明の香料粒子として、香料組成物を含むコアと、該コアを包含する内部シェルと、該内部シェルを包含する外部シェルとを有するコアシェル型の香料粒子であって、前記内部シェルはワックスを含み、前記外部シェルはαゲルを含む、香料粒子が挙げられる。αゲルは、(b)成分、(c)成分及び水を含むものが挙げられる。この香料粒子は、ワックスのシェルが更にαゲルのシェルで被覆されたものである。
【0060】
<香料粒子分散液>
本発明は、本発明の香料粒子、及び水を含有する香料粒子分散液を提供する。本発明の香料粒子分散液には、本発明の香料粒子で述べた事項を適宜適用することができる。
【0061】
本発明の香料粒子は、製造上、溶媒に分散した溶液で得られ、それを溶液のまま使用することができる。例えば水を分散媒体として粒子を製造した場合は、香料粒子を含有する水分散液をそのまま用いることができる。水分散液中の香料粒子の割合は、製造時の添加比率にもよるが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは65質量%以下、より好ましくは55質量%である。香料粒子を含有する水分散液は更に水で希釈されてもよく、粒子の形成に影響がない溶剤、界面活性剤、高分子重合体等を添加してもよい。
【0062】
<香料粒子の製造方法>
本発明の香料粒子は、例えば、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分を加熱、例えば60℃以上100℃以下に加熱し、水と混合させて乳化物を形成する乳化工程と、形成された乳化物を冷却、例えば40℃以下に冷却する冷却工程を有する製造方法より製造することができる。この方法では、香料粒子を有する水分散液が得られる。乳化工程では乳化機を用い、冷却工程では振動式攪拌混合装置を用い、乳化物を、振動式攪拌混合装置内を通過させることで、連続的に(a)成分、(b)成分の固化温度以下まで冷却して香料粒子を有する水分散液を作製することができる。前記乳化工程では、例えば、ホモミキサー、超音波乳化機、高圧乳化機などの乳化装置を用い、加熱下、好ましくは60℃以上、更に80℃以上、そして、好ましくは100℃以下、更に90℃以下で、配合成分を混合する。また、前記冷却工程では、得られた乳化物を、例えば、振動式撹拌混合装置、掻取り式熱交換機、スタティックミキサー、プレート型熱交換機、二重管式熱交換機やそれらを任意に組み合わせたものを用いて冷却する。
【0063】
<繊維製品処理剤組成物>
本発明は、本発明の香料粒子、及び水を含有する繊維製品処理剤組成物を提供する。本発明の繊維製品処理剤組成物には、本発明の香料粒子で述べた事項を適宜適用することができる。
【0064】
本発明の繊維製品処理剤組成物としては、繊維製品用賦香剤組成物、繊維製品用消臭剤組成物、繊維製品用柔軟剤組成物、繊維製品用洗剤組成物、繊維製品用糊剤組成物などが挙げられ、繊維製品用賦香剤、繊維製品用消臭剤組成物、繊維製品用柔軟剤組成物及び繊維製品用洗剤組成物から選ばれる組成物が好ましい。
【0065】
繊維製品処理剤組成物は、本発明の香料粒子を水媒体に分散させたものを繊維製品に直接塗布やあるいは溶液として浸漬して、乾燥させることで繊維製品に賦香性を付与するための賦香剤組成物又は消臭剤組成物、それらに関連して、マイクロカプセルの香料粒子の代替として洗剤組成物や柔軟剤組成物、また香り付け助剤組成物を挙げることができる。
【0066】
本発明の繊維製品処理剤組成物には本発明の香料粒子以外に別途香料組成物を添加してもよく(外香料という場合もある)、また加水分解等により発香する香料誘導体を併用してもよい。また場合によっては、公知のマイクロカプセルタイプの香料粒子を併用してもよい。
【0067】
本発明の繊維製品処理剤組成物を賦香剤として用いる場合は、防腐剤成分を含有する水分散体に前記香料粒子の製造方法の項目で得られた香料粒子分散体を添加する又は香料粒子分散体に当該組成物を添加することによって調製してもよい。賦香剤はマスキングのために用いることができ、例えばスプレーを用いた使用方法で知られている消臭剤組成物に消臭基剤に伴って配合してもよい。本発明の繊維用処理剤組成物や香料粒子は、例えば、特開2018-29836号、特開2017-124076号、特開2015-120987号などに記載されている液体消臭剤組成物に配合してもよい。
【実施例】
【0068】
下記方法により表1に示す組成の香料粒子を作製し、以下の方法によりワックスの殻の形成を確認し、摩擦発香を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
<香料粒子の作製方法>
(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分を85℃加熱させ、水を混合しホモミキサーで分散し、乳化物を得た。各成分の配合量は表1に示すとおりとした。この乳化物を85℃に保ったまま振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ移行時間10秒で供給し、装置内で攪拌体を上下に振動することで乳化物を攪拌しながら連続的に30℃以下まで冷却し、香料粒子を含有する水分散液を得た。振動式攪拌混合装置においては、乳化物の流量は2.5g/secであり、冷却ジャケットを循環する冷却水の総流量は10g/secであり、乳化物の流量に対して、10倍の総流量の冷却水によって冷却された。また、振動式攪拌混合装置の振動数は20Hzであった。
【0070】
<ワックスの殻の形成の確認>
上記で作製した、香料粒子を含む水分散液をイオン交換水で100倍希釈し、軽く攪拌した後、一晩静置させた。ADVANTEC C020A047Aのメンブレンフィルターを用いて、吸引ろ過を行い、イオン交換水2ml、IPA(イソプロピルアルコール)2mlでの洗浄操作を5回繰り返した。メンブレンフィルターを乾燥させ、SEMの試料台にカーボンテープで貼り付け、Au/Pdスパッタリングを行い観察した。観察は、低真空SEM S-3000N(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて行った。観察結果により以下の評価を行った。なお、
図1に、実施例7、
図2に実施例10、
図3に実施例12の香料粒子のSEM写真を示す。また、
図4に、比較例3の香料粒子のSEM写真を示す。
0:ワックスの殻がほとんど形成されていない
1:ワックスの殻が3割程度以下形成されている
2:ワックスの殻が3割程度を超え9割未満程度形成されている
3:ワックスの殻が9割程度以上形成されている
【0071】
<摩擦発香の評価>
香料粒子を含有する水分散液を更に脱イオン水で希釈した評価用水溶液を香料賦香率0.1%o.w.f.(香料として)、水150%o.w.f.になるように6cm×6cmに裁断した試験布(木綿メリヤス布 シルエット加工無し)にピペットマンを用いてゆっくり全体に広がるように滴下することでリーブオンした。平干しで24時間乾燥させた後、試験布を手でこすり香りを嗅いだ。下記の4段階で香りの強度を評価した。
0:香りが分からない
1:香りがわずかに分かる
2:香りが分かる
3:香りがはっきり分かる
【0072】
実施例、比較例で用いた各成分を以下にまとめて示す。
<(a)成分>
(a-1)パラフィンワックス、石油由来の炭化水素ワックスの市販品、HNP-9(融点75℃、日本精蝋株式会社製)
(a-2)セレシンワックス、鉱物由来の炭化水素ワックスの市販品、セレシン♯810(融点74℃、日興リカ株式会社製)
【0073】
<(b)成分>
(b-1)炭素数16の高級アルコール
(b-2)ソルビタン脂肪酸(炭素数18)ジエステル
(b-3)グリセリン脂肪酸(炭素数22)モノエステル
(b-4)ペンタグリセリンヘキサステアリン酸エステル(製品名:サンソフトA-186E-C、メーカー:太陽化学株式会社)
上記(b)成分は、下記(c)成分のそれぞれと、水と共に、αゲル構造体を形成することができる化合物であった。
【0074】
<(c)成分>
(c-1)N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニン[アミノ酸系界面活性剤]
【0075】
<(d)成分>
(d-1)安息香酸ベンジル(Benzyl benzoate)[LogP:4.0、HSP距離=7.93]
(d-2)ジヒドロジャスモン酸メチル(MDJ)[LogP:3.5、HSP距離=5.28]
(d-3)γ-ウンデカラクトン(AldehydeC14peach)[LogP:3.1、HSP距離=5.35]
(d-4)酢酸ベンジル(Benzyl acetate)[LogP:2.0、HSP距離=6.19]
(d-5)ヘキシルシンナミックアルデヒド(HCA)[LogP:2.8、HSP距離=4.92]
(d-6)β-イオノン(Iononebeta)[LogP:4.4、HSP距離=4.08]
(d-7)リモネン(Limonene)[LogP:4.8、HSP距離=2.0]
(d-8)オイゲノール(Eugenol)[LogP:2.7、HSP距離=10.59]
(d-9)リリアール(Lilial)[LogP:4.4、HSP距離=4.59]
上記に示したHSP距離は、(a)成分としてC36のノルマルパラフィンを基準とし、C36のノルマルパラフィンの極性項(D)、分散項(P)、水素結合項(H)の値を用いて算出を行ったHSPに対する距離である。
【0076】