(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】液処理装置用基板保持プレート及びその製造方法、並びに液処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241119BHJP
G03F 7/30 20060101ALI20241119BHJP
G03F 7/16 20060101ALI20241119BHJP
C01B 32/00 20170101ALI20241119BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01L21/68 N
G03F7/30 501
G03F7/16 501
C01B32/00
H01L21/30 569C
(21)【出願番号】P 2020161298
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 智也
(72)【発明者】
【氏名】北口 比呂
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏樹
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-092343(JP,A)
【文献】特開2006-135290(JP,A)
【文献】国際公開第2006/043530(WO,A1)
【文献】特開2008-222456(JP,A)
【文献】特開2005-320208(JP,A)
【文献】特開2013-087367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
G03F 7/30
G03F 7/16
C01B 32/00
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に処理液を供給する工程と、前記基板を回転させて前記処理液を除去する工程と、を有する液処理工程において用いられ、前記基板が載置される液処理装置用基板保持プレートであって、
炭素繊維からなる骨材と、前記骨材の間に充填された炭素マトリックスとを有するC/C複合材からなる基材と、
前記基材における少なくとも前記基板が載置される面に形成された熱分解炭素層と、
を有
し、
前記基材における前記熱分解炭素層が形成される面は平坦に研削加工されており、前記熱分解炭素層との界面に、前記炭素繊維の切断面を有する
、液処理装置用基板保持プレート。
【請求項2】
前記炭素繊維はランダムに配向している、請求項
1に記載の液処理装置用基板保持プレート。
【請求項3】
基板の表面に処理液を供給する工程と、前記基板を回転させて前記処理液を除去する工程と、を有する液処理工程において用いられ、前記基板が載置される液処理装置用基板保持プレートの製造方法であって、
炭素繊維からなる骨材と、前記骨材の間に充填された炭素マトリックスとを有するC/C複合材からなる基材を形成する工程と、
前記基材における少なくとも前記基板が載置される面に、熱分解炭素層を形成する工程と、を有
し、
前記基材を形成する工程は、前記C/C複合材における前記熱分解炭素層が形成される面を平坦になるように研削し、前記炭素繊維の切断面を露出させる工程を有する、液処理装置用基板保持プレートの製造方法。
【請求項4】
前記骨材として、前記炭素繊維からなる抄造体又はマットを用いる、請求項
3に記載の液処理装置用基板保持プレートの製造方法。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載の液処理装置用基板保持プレートと、前記液処理装置用基板保持プレートを回転させる回転機構と、前記基板の表面に前記処理液を供給する液供給機構と、前記液処理装置用基板保持プレート及び前記基板を加熱する加熱機構と、を有する液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液処理装置用基板保持プレート及びその製造方法、並びに液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体デバイスの製造時においては、フォトリソグラフィ工程として、半導体ウエハの表面にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、形成されたレジスト膜を選択的に露光して、パターンを現像する現像工程とが実施される。
【0003】
現像工程において使用される現像処理装置は、半導体ウエハを支持するスピンチャック(液処理装置用基板保持プレート)と、スピンチャックに保持された半導体ウエハに現像液を供給する現像液供給ノズルと、現像後の半導体ウエハを洗浄するリンス液を吐出するリンス液吐出ノズルとを有する。
【0004】
このような現像処理装置を用いて現像する際には、まず、スピンチャックにより支持された半導体ウエハを適切な回転数で回転させつつ、この半導体ウエハ上に、現像液供給ノズルから現像液を供給する。このとき、現像液の表面張力によって、半導体ウエハ上に現像液が溜まった状態となる。このような状態の現像液を「現像液パドル(Puddle)」という。
現像液パドルが形成された状態で、所定の時間静止して保持した後に、半導体ウエハを回転させて、現像液を除去しつつ、リンス液吐出ノズルから半導体ウエハ上にリンス液(洗浄液)を吐出させ、現像液を洗い流す。
【0005】
ところで、上記のような現像処理装置においては、半導体ウエハを支持するスピンチャックは、処理条件によっては高温に晒されることがあり、また、半導体ウエハの表面に現像液が供給される際に、スピンチャックも現像液に晒される。
そこで、例えば、耐熱性及び耐薬品性を有する材料として、例えば、フッ化樹脂等が、スピンチャックの材料として使用されている。
【0006】
また、上記現像方法において、現像液を除去する工程では、半導体ウエハに現像液が残存しないように、半導体ウエハの回転数を高く設定する必要がある。これは、半導体ウエハ上に現像液が長く残存すると、現像処理が進みすぎるからである。
しかし、半導体ウエハの回転数を高く設定すると、特に、スピンチャックが樹脂等で形成されている場合には、リンス液と半導体ウエハとの間の摩擦により静電気が発生しやすくなる。そして、この静電気により、現像液中に浮遊しているごみが粒子(パーティクル)となって、半導体ウエハ上に多量に付着することがあり、その結果、半導体装置の品質が低下してしまう。
【0007】
そこで、特許文献1には、基板上の処理液(現像液)を除去する場合に、基板に別の処理液を供給しつつ、基板を低速回転させて所定時間保持する第1工程と、第1工程よりも高速な回転数として基板を所定時間保持する第2工程と、を有する液処理方法が提案されている。
上記特許文献1によると、第1工程において、基板を低速回転させているため、静電気の発生を抑制し、現像液に含まれる不溶解物が基板に付着することを抑制することができる。また、第2工程において、基板を高速回転させているため、基板における現像液の残渣量を低減し、ウエハの品質を高く保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の液処理方法によると、第1工程で基板を低速回転させているため、処理液の除去が遅くなってしまう。特に、現像処理工程を高温で実施した場合には、処理液の反応速度が速くなるため、過剰な反応が生じて、品質の低下をもたらす原因となる。
また、低速回転する第1工程と、高速回転する第2工程とを実施する必要があるため、現像工程が煩雑になるとともに、所要時間が長くなり、半導体デバイスの製造コストが上昇するという問題も発生する。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、耐熱性及び耐薬品性に優れており、基板を高速回転させた場合であっても、基板と処理液との間に静電気が発生しにくく、処理液中の不溶解物が基板に付着することを防止することができるとともに、処理液を短時間で容易に除去することができる液処理装置用基板保持プレート及びその製造方法、並びに液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、本発明に係る下記[1]の液処理装置用基板保持プレートにより達成される。
【0012】
[1] 基板の表面に処理液を供給する工程と、前記基板を回転させて前記処理液を除去する工程と、を有する液処理工程において用いられ、前記基板が載置される液処理装置用基板保持プレートであって、
炭素繊維からなる骨材と、前記骨材の間に充填された炭素マトリックスとを有するC/C複合材からなる基材と、
前記基材における少なくとも前記基板が載置される面に形成された熱分解炭素層と、
を有する液処理装置用基板保持プレート。
【0013】
上記液処理装置用基板保持プレートは、C/C複合材からなる基材における少なくとも基板が載置される面に熱分解炭素層が形成されたものであるため、耐熱性及び耐薬品性に優れており、繰り返し薬液に晒されても劣化することなく、安定して利用することができる。
また、C/C複合材及び熱分解炭素層は、いずれも導電性材料であるため、基板を高速で回転させ、基板と空気又は薬液との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができ、更に、薬液を短時間で容易に除去することができるとともに、高い信頼性を得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る液処理装置用基板保持プレートは、下記[2]及び[3]の態様であることが好ましい。
【0015】
[2] 前記基材における前記熱分解炭素層が形成される面は平坦に研削加工されており、前記熱分解炭素層との界面に、前記炭素繊維の切断面を有する、[1]に記載の液処理装置用基板保持プレート。
【0016】
基材における熱分解炭素層が形成される面が平坦に研削加工されていると、熱分解炭素層の表面についても平坦なものとなり、優れた形状精度を得ることができる。
また、基材における熱分解炭素層が形成される面と熱分解炭素層との界面に、炭素繊維の切断面を有していると、炭素繊維の切断面と熱分解炭素層との熱伝達がスムーズになり、加熱、放熱を速やかに行うことができるとともに、内部応力の集中を抑制することができ、液処理装置用基板保持プレートの変形を抑制することができる。
【0017】
[3] 前記炭素繊維はランダムに配向している、[1]又は[2]に記載の液処理装置用基板保持プレート。
【0018】
炭素繊維がランダムに配向していると、炭素繊維の延在方向に高い結合効果を得ることができるため、液処理装置用基板保持プレートはあらゆる方向に対して高い強度を得ることができる。
【0019】
また、上記の目的は、本発明に係る下記[4]の液処理装置用基板保持プレートの製造方法により達成される。
【0020】
[4] 基板の表面に処理液を供給する工程と、前記基板を回転させて前記処理液を除去する工程と、を有する液処理工程において用いられ、前記基板が載置される液処理装置用基板保持プレートの製造方法であって、
炭素繊維からなる骨材と、前記骨材の間に充填された炭素マトリックスとを有するC/C複合材からなる基材を形成する工程と、
前記基材における少なくとも前記基板が載置される面に、熱分解炭素層を形成する工程と、を有する、液処理装置用基板保持プレートの製造方法。
【0021】
上記液処理装置用基板保持プレートの製造方法によれば、C/C複合材からなる基材における基板が載置される面に熱分解炭素層を形成するため、耐熱性及び耐薬品性に優れており、繰り返し薬液に晒されても劣化することなく、安定して利用することができる液処理装置用基板保持プレートを製造することができる。
また、C/C複合材及び熱分解炭素層は、いずれも導電性材料であるため、基板を高速で回転させ、基板と空気又は薬液との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができ、薬液を短時間で容易に除去することができるとともに、高い信頼性を有する液処理装置用基板保持プレートを製造することができる。
【0022】
また、本発明に係る液処理装置用基板保持プレートの製造方法は、下記[5]及び[6]の態様であることが好ましい。
【0023】
[5] 前記基材を形成する工程は、前記C/C複合材における前記熱分解炭素層が形成される面を平坦になるように研削し、前記炭素繊維の切断面を露出させる工程を有する、[4]に記載の液処理装置用基板保持プレートの製造方法。
【0024】
上記液処理装置用基板保持プレートの製造方法において、C/C複合材における熱分解炭素層が形成される面を平坦になるように研削すると、熱分解炭素層の表面についても平坦なものとなり、優れた形状精度を有する液処理装置用基板保持プレートを製造することができる。
また、C/C複合材における熱分解炭素層が形成される面と熱分解炭素層との界面に、炭素繊維の切断面を露出させると、炭素繊維の切断面と熱分解炭素層との熱伝達がスムーズになり、加熱、放熱を速やかに行うことができるとともに、内部応力の集中を抑制することができ、変形しにくい液処理装置用基板保持プレートを製造することができる。
【0025】
[6] 前記骨材として、前記炭素繊維からなる抄造体又はマットを用いる、[4]又は[5]に記載の液処理装置用基板保持プレートの製造方法。
【0026】
上記液処理装置用基板保持プレートの製造方法において、骨材として、炭素繊維からなる抄造体又はマットを用いると、炭素繊維の延在方向に高い結合効果を得ることができるため、あらゆる方向に対して高い強度を有する液処理装置用基板保持プレートを製造することができる。また、細くくびれた部分を有していても、炭素繊維による補強効果を確保することができ、高い信頼性を有する液処理装置用基板保持プレートを製造することができる。
【0027】
また、上記の目的は、本発明に係る下記[7]の液処理装置により達成される。
【0028】
[7] [1]~[3]のいずれか1つに記載の液処理装置用基板保持プレートと、前記液処理装置用基板保持プレートを回転させる回転機構と、前記基板の表面に前記処理液を供給する液供給機構と、前記液処理装置用基板保持プレート及び前記基板を加熱する加熱機構と、を有する液処理装置。
【0029】
上記液処理装置は、耐熱性及び耐薬品性に優れており、繰り返し薬液に晒されても劣化することがない上記液処理装置用基板保持プレートを有するため、安定して利用することができる。
また、上記液処理装置は、基板と空気又は薬液との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができるため、薬液を短時間で容易に除去することができ、高い信頼性を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る液処理装置用基板保持プレートは、耐熱性及び耐薬品性に優れており、基板を高速回転させた場合であっても、基板と処理液との間に静電気が発生しにくく、処理液中の不溶解物が基板に付着することを防止することができるとともに、処理液を短時間で容易に除去することができる。
【0031】
本発明に係る液処理装置用基板保持プレートの製造方法によれば、耐熱性及び耐薬品性に優れており、基板を高速回転させた場合であっても、基板と処理液との間に静電気が発生しにくく、処理液中の不溶解物が基板に付着することを防止することができるとともに、処理液を短時間で容易に除去することができる液処理装置用基板保持プレートを製造することができる。
【0032】
本発明に係る液処理装置は、耐熱性及び耐薬品性に優れ、薬液を短時間で容易に除去することができ、高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置における基板保持プレートを拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートを示す図であり、
図2におけるA部を拡大して示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートを示す図であり、
図2におけるA部を拡大して示す模式的断面図である。
【
図5】
図5は、フォトリソグラフィ工程において実施される液処理工程の例を示す工程フロー図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートの製造方法を工程順に示す図であり、(a)はC/C複合材を形成する工程を示す断面図であり、(b)はC/C複合材の表面を研削する工程を示す断面図あり、(c)は熱分解炭素層を形成する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らは、静電気の発生を抑制することができるとともに、耐熱性及び耐薬品性に優れた液処理装置用基板保持プレートを得るため、鋭意検討を行った。その結果、液処理装置用基板保持プレートの材料として、C/C複合材と熱分解炭素層とを用いることが効果的であることを見出した。
本発明はこのような知見に基づくものであり、以下において、本発明の実施形態に係る液処理装置用基板保持プレート及びその製造方法、並びに液処理装置について詳細に説明する。以下、液処理装置用基板保持プレートを、単に「基板保持プレート」ということがある。
【0035】
以下、本実施形態に係る液処理装置及び液処理装置用基板保持プレートについて、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に示す実施形態は、液処理装置の一例として、半導体ウエハの表面に所定のパターンを形成するためのフォトリソグラフィ工程において使用される現像処理装置を示したものである。本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0036】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0037】
[1.液処理装置]
図1は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置を示す模式図である。また、
図2は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置における基板保持プレートを拡大して示す断面図である。
図1に示すように、液処理装置10を構成する筐体11の内部に、半導体ウエハ(基板)20が載置される(液処理装置用)基板保持プレート1が配置されている。基板保持プレート1は、回転軸12を介して筐体11の外部に配置されたモータ(回転機構)13に対し、回転可能に取り付けられている。また、基板保持プレート1の上面には、吸着等の(不図示の)固定機能により、半導体ウエハ20を保持できる構成になっている。
固定機能として吸着を用いる場合には、基板保持プレート1は平坦な表面を有することが好ましいが、半導体ウエハ20を機械的に保持するために、基板保持プレート1の表面にピン、溝等の加工が施されていてもよい。
【0038】
筐体11の内部には、基板保持プレート1に対して所定の間隔で下方に離隔した位置に、半導体ウエハ20を加熱する加熱プレート(加熱機構)14が配置されている。さらに、基板保持プレート1に対して所定の間隔で上方に離隔した位置に、液供給ノズル(液供給機構)15が配置されている。液供給ノズル15は、供給管15aを介して筐体11の外部に配置された不図示のタンクに接続されており、半導体ウエハ20の表面に、タンク内に充填された現像液、洗浄液などの処理液を供給することができる。
【0039】
筐体11の外部には、ウエハ搬送アーム16が配置されており、筐体11における開閉可能な搬入口11aを介して、半導体ウエハ20を筐体11の外部から内部に搬入したり、内部から外部に搬出したりすることができるように構成されている。なお、ウエハ搬送アーム16は、半導体ウエハ20のみを搬送するように構成されていてもよいし、半導体ウエハ20と基板保持プレート1とを一緒に搬送するように構成されていてもよい。
【0040】
[2.液処理装置用基板保持プレート]
図3は、本発明の第1実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートを示す図であり、
図2におけるA部を拡大して示す模式的断面図である。
図3に示すように、基板保持プレート1は、C/C複合材からなる基材2と、基材2の表面に形成された熱分解炭素層3とを有する。基材2の材料となるC/C複合材は、複数の炭素繊維4からなる骨材5と、骨材5の隙間に充填された炭素マトリックス6とを有する。
【0041】
本実施形態においては、炭素繊維4を抄造して得られた骨材5を用いたC/C複合材を基材2の材料としている。炭素繊維4からなる抄造体は、例えば長さが0.1~5mmである炭素繊維4が種々の方向にランダムに配向したものであり、その隙間に炭素マトリックス6が充填されることにより、C/C複合材が構成されている。また、基材2における熱分解炭素層3が形成される面は、平坦に研削加工されており、この研削加工により骨材5を構成する炭素繊維4の一部が切断されている。すなわち、基板保持プレート1は、基材2と熱分解炭素層3との界面に、炭素繊維4の切断面4aを有するものとなっている。
【0042】
なお、
図3においては、基材2の表面(上面)の全体に熱分解炭素層3が形成されているが、本実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートの目的を達成するためには、基材2における少なくとも半導体ウエハ(基板)20が載置される面に熱分解炭素層3が形成されていればよい。また、熱分解炭素層3が全面に形成されていてもよい。熱分解炭素層3が全面に形成されていることにより、確実にパーティクルの発生を防止することができる。
【0043】
次に、上記のように構成された液処理装置を使用したフォトリソグラフィ工程について、詳細に説明する。なお、以下に説明するフォトリソグラフィ工程において、上記液処理装置10は、例えば、ウエハ準備工程、脱水ベーク工程、コート工程、現像工程、現像後洗浄工程、ウエットエッチング工程、エッチング後洗浄工程など処理液を取り扱うプロセスにおいて使用することができる。
【0044】
[3.フォトリソグラフィ工程]
<3-1.ウエハ準備工程>
処理前の新しい半導体ウエハ、又は酸化処理、CVD処理等を施した半導体ウエハを洗浄液により洗浄し、表面の汚れを除去する。洗浄液としては、洗浄の対象である汚れに応じて、種々の洗浄液が選択される。
【0045】
<3-2.脱水ベーク工程>
次に、ウエハ準備工程において半導体ウエハを洗浄することにより付着又は吸着した洗浄液を除去する。このとき、必要に応じて疎水化処理が行われることがある。
【0046】
<3-3.コート工程>
その後、半導体ウエハの表面に、スピンコータなどの方法によってレジスト液を薄く塗布する。レジスト液は、後のエッチング工程において、エッチング液から半導体ウエハを保護する役割を有している。
【0047】
<3-4.プリベーク工程>
その後、塗布されたレジスト膜を加熱することにより、レジスト液中の溶媒を除去するとともに、レジスト液を固化させてレジスト膜を形成する。プリベーク工程における加熱温度は、レジスト液中の感光性材料が硬化しない温度が選択される。
【0048】
<3-5.露光工程>
プリベーク工程により得られたレジスト膜に、光を選択的に照射(露光)して、感光性材料を反応させる。光を選択的に照射する方法としては、回路図の形状を描いたマスクを使用する方法、所定の回路図のパターンに従って短波長の光を走査させる方法等を用いることができる。なお、ポジ型のレジスト液を使用した場合には、レジスト膜における不要な領域を露光し、ネガ型のレジスト液を使用した場合には、レジスト膜における必要な領域を露光して硬化させることにより、後述する現像工程で不要な領域を除去することができる。以下、ポジ型のレジスト膜を使用した場合について説明する。
【0049】
<3-6.現像工程>
本実施形態においては、上記液処理装置10を用いて現像処理を実施する。
現像工程においては、露光工程後の半導体ウエハ20を、ウエハ搬送アーム16で保持し、筐体11の内部に搬送するとともに、基板保持プレート1の上に載置する。このとき、半導体ウエハ20は、不図示の固定機能により基板保持プレート1に固定され、保持される。
そして、選択的に露光された半導体ウエハ20の表面に、液供給ノズル15から現像液を供給し、現像液パドルが形成された状態で、所定の時間静止して保持した後に、モータ13により半導体ウエハ20を回転させて、遠心力で現像液を除去する。
これにより、レジスト膜における露光された領域は現像液に溶解し、現像液とともにレジスト膜の不要部分が除去され、回路図の形状を有するレジストマスクが半導体ウエハ20の表面に残存する。
なお、現像液としては、有機溶剤又は有機若しくは無機のアルカリ溶剤が使用される。
【0050】
<3-7.現像後洗浄工程>
その後、レジストマスクが形成された半導体ウエハの表面に、液供給ノズルからリンス液を供給し、現像液を洗浄する。リンス液としては、例えば超純水等が使用される。これにより、レジスト膜における露光された領域は完全に除去される。
【0051】
<3-8.ポストベーク工程>
現像後洗浄工程後に半導体ウエハを加熱することにより、半導体ウエハの表面に残存したリンス液を乾燥させて、完全に除去する。
【0052】
<3-9.ウエットエッチング工程>
レジストマスクを利用して、半導体ウエハの表面にエッチング液を供給し、エッチングを行う。このとき、レジストマスクが形成されていない領域においては、エッチングが進行する。一方、レジストマスクが残存している領域においては、エッチングが進行せず、表面の状態が維持される。
【0053】
<3-10.エッチング後洗浄工程>
半導体ウエハの表面のレジストマスクを、溶剤等により除去する。このようにして、回路が形成される。
以上、上記液処理装置を使用したフォトリソグラフィ工程における各工程について説明した。
【0054】
本実施形態においては、現像工程で液処理装置10を使用している。また、上述のとおり、半導体ウエハ20が載置される基板保持プレート1は、C/C複合材からなる基材2の表面に熱分解炭素層3が形成されたものである。
このように構成された基板保持プレート1は、C/C複合材からなる基材2が熱分解炭素層3により保護されたものであるため、粉落ち、形状崩れ等が発生せず、現像工程における不純物混入を防止することができる。また、C/C複合材及び熱分解炭素層は、いずれも炭素のみからなるため、耐熱性及び耐薬品性に優れており、繰り返し処理液に晒されても劣化することなく、安定して使用することができる。
【0055】
さらに、C/C複合材及び熱分解炭素層3は、いずれも導電性材料であるため、現像工程において現像液を除去するために半導体ウエハ20を高速で回転させ、半導体ウエハ20と空気又は現像液との間で摩擦が発生した場合であっても、発生する静電気を逃し、帯電を抑制することができる。
したがって、静電気の発生を抑制するために、半導体ウエハ20の回転速度を低速にする必要がなく、現像液を短時間で容易に除去することができるとともに、過剰な反応を防止でき、所望の形状のパターンを精度よく形成することができる。また、現像液中に浮遊している不純物粒子が、静電気の影響で半導体ウエハ20の表面に付着することを抑制することができ、高い信頼性を有する半導体デバイスを得ることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る基板保持プレート1において、平坦に研削加工された基材2の表面を熱分解炭素層3で覆われる構造となっている。したがって、熱分解炭素層3の表面についても平坦なものとなり、形状精度の高い液処理装置用基板保持プレートを提供することができる。
さらに、基材2が平坦に研削加工される際に、炭素繊維4も切断されており、炭素繊維4の切断面が基材2の表面に現れている。このような構造であると、炭素繊維4の切断面と熱分解炭素層3との熱伝達がスムーズになり、加熱、放熱を速やかに行うことができる。
【0057】
なお、炭素繊維4の切断面を露出させ、伝熱の効果を十分に得るためには、C/C複合材における熱分解炭素層3が形成される表面(主面)側のみでなく、裏面(主面に対向する面)側も研削加工により除去されていることが好ましい。
【0058】
さらにまた、
図3に示すように、基板保持プレート1における基材2の骨材として、炭素繊維4が種々の方向にランダムに配向された抄造体を用いている。したがって、骨材の層間剥離が発生することがなく、また、炭素繊維4は、その延在方向に高い結合効果を有するため、基板保持プレート1はあらゆる方向に対して高い強度を得ることができる。さらに、基板保持プレート1に、回転軸を取り付けるための突起状のボス構造など主面に垂直方向に強度を要する部分を有する場合であっても、構造的な弱点にならず、炭素繊維4による補強効果を確保することができ、高い信頼性を得ることができる。
【0059】
本実施形態において、基材2を構成するC/C複合材の骨材5としては、炭素繊維4を抄造して得られたものに限定されず、種々の形態のものを使用することができる。
炭素繊維4が種々の方向にランダムに配向された骨材5としては、抄造体のほかマットでも適用することができる。
マットは、抄造体と比較して、炭素繊維の繊維長が長く、湿式法では絡まってスラリー化できない炭素繊維であっても、乾式で製造することによりC/C複合材として利用可能な骨材を得ることができる。
それぞれ使用する炭素繊維の繊維長は特に限定されないが、抄造体では例えば0.1~5mmであり、マットでは例えば5~1000mmである。
【0060】
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0061】
図4は、本発明の第2実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートを示す図であり、
図2におけるA部を拡大して示す模式的断面図である。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、基板保持プレート21は、C/C複合材からなる基材22と、基材22の表面に形成された熱分解炭素層23とを有する。基材22の材料となるC/C複合材は、複数の炭素繊維24からなる骨材25と、骨材25の隙間に充填された炭素マトリックス26とを有する。
【0062】
ただし、第2実施形態において、骨材25は、炭素繊維24を複数本束ねたストランドを、縦糸及び横糸として織り込むことによりクロスを形成し、得られたクロスを複数枚積層することにより構成されている。また、基材22における熱分解炭素層23が形成される方向の面は、平坦に研削加工されており、この研削加工により炭素繊維24の一部が切断され、熱分解炭素層23との界面に、炭素繊維24の切断面24aが現れている。
なお、
図4に示す第2実施形態に係る基板保持プレート21は、例えば、
図1に示す液処理装置10に適用することができる。
【0063】
上記のように構成された第2実施形態においても、炭素繊維24が束ねられてストランドが形成されている点、及びストランドを縦糸及び横糸として織り込まれている点から、クロスの面方向(炭素繊維24の配向方向)については炭素繊維24による高い結合効果を得ることができ、基板保持プレート21の強度を向上させることができる。
ただし、クロスが積層された構造となっている骨材25は、クロスの面方向と直交する方向に対して、剥離しやすい構造となっている。したがって、剥離を抑制するために、クロスの面方向と直交する方向に対して強度を向上させる補強部を内部に設けたり、細くくびれた部分が存在しないような形状に設計することが好ましい。
【0064】
なお、クロスを骨材とするC/C複合材は、炭素繊維24の繊維長さが長い代わりに、表面に凹凸ができやすいとともに、表面に炭素マトリックスと炭素繊維の部分が偏在しやすい。このため、十分な寸法精度が得られなかったり、温度上昇に伴って変形したりしやすくなる。これは、炭素繊維と、炭素マトリックスは、炭素の結合の仕方が異なることから、弾性率、熱膨張係数などの物性値が異なるためである。したがって、研削加工される前のC/C複合材の表面部分は内部応力が集中しやすい構造を有している。
しかし、本実施形態における基材22は、骨材25と炭素マトリックス26とを有するC/C複合材の表面が研削されて、除去されたものであるため、表面部分においては昇温による内部応力による凹凸の発生を防止することができる。
【0065】
第2実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートにおいては、C/C複合材における熱分解炭素層23が形成される面が平坦になるまで、炭素繊維24及び炭素マトリックス26が機械加工されており、炭素繊維24の切断面が現れている。したがって、C/C複合材の内部応力の偏りが取り除かれ、その表面に熱分解炭素層23が形成されることにより、形状精度の高い液処理装置用基板保持プレート21を得ることができる。
なお、応力の集中による基材22の変形を防止する効果を十分に得るためには、C/C複合材における熱分解炭素層23が形成される表面(主面)側のみでなく、裏面(主面に対向する面)側も研削加工により除去されていることが好ましい。
【0066】
また、基板保持プレート21は、C/C複合材からなる基材22が熱分解炭素層23により保護されたものであるため、粉落ち、形状崩れ等の発生を抑制することができる。さらに、C/C複合材及び熱分解炭素層は、いずれも耐熱性及び耐薬品性に優れており、繰り返し処理液に晒されても劣化することなく、液処理装置用基板保持プレートとして安定して好適に使用することができる。
【0067】
さらにまた、C/C複合材及び熱分解炭素層23は、いずれも導電性材料であるため、半導体ウエハ20と空気又は処理液との間で発生する静電気を逃し、帯電を抑制することができる。したがって、処理液を短時間で容易に除去することができるとともに、過剰な反応を防止でき、所望の形状のパターンを精度よく形成することができる。また、処理液中に浮遊している不純物粒子が、静電気の影響で半導体ウエハ20の表面に付着することを抑制することができ、高い信頼性を有する半導体デバイスを得ることができる。
【0068】
なお、上記フォトリソグラフィ工程においては、それぞれ専用の装置内で各処理工程を実施することができるが、1つの装置内で複数の工程を連続して実施することもできる。また、複数の工程を同時に実行することもできる。
【0069】
フォトリソグラフィ工程は、目的とする集積回路、原材料、補助材料、装置等の組み合わせに応じて、条件、プロセス等の多種多様な組合せが製品ごとに決定される。製品が複雑になるにつれて工程数も増え、1枚のウエハに対して洗浄、乾燥の回数や、使用する洗浄液、現像液等の処理液についても、様々の条件が適用される。
【0070】
したがって、フォトリソグラフィ工程において、本実施形態に係る液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置を好適に使用することができる種々の液処理工程を、以下で一般化して説明する。
図5は、フォトリソグラフィ工程において実施される液処理工程の例を示す工程フロー図である。以下、一般的な薬液処理工程から乾燥工程までを
図1~
図3に示す第1実施形態に係る液処理装置を参照して説明する。
【0071】
<STEP1:薬液処理工程>
薬液処理工程とは、半導体ウエハ20、レジスト膜等に対して、液供給ノズル15から薬液を供給し、薬液処理をする工程である。薬液処理工程で使用される薬液は、後の工程で完全に除去することが必要とされる。
薬液処理工程としては、例えば、上記<3-1.ウエハ準備工程>における種々の洗浄液によるウエハの洗浄、上記<3-3.コート工程>におけるスピンコートによる半導体ウエハ上へのレジスト膜の塗布、上記<3-6.現像工程>における現像液によるレジスト膜の不要部分の除去、<3-9.ウエットエッチング工程>におけるエッチング液によるエッチング等が挙げられる。
【0072】
ウエハ準備工程において使用される洗浄液としては、金属、有機物、油脂、自然酸化膜等の様々の汚れを取り除くため、汚れに応じた塩酸、硫酸等の様々の洗浄液を使用することができる。
【0073】
現像工程では、ポジ型のレジスト膜を使用した場合は、露光した領域が現像液によって除去され、ネガ型のレジスト膜、例えば光硬化性樹脂を使用した場合は、露光されていない領域(未硬化領域)が現像液によって除去される。現像液としては、特に限定されないが、例えば、ポジ型のレジスト膜を使用した場合には、塩基水溶液、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム又はコリン等の、金属イオンを含まない水性塩基等が用いられる。また、ネガ型のレジスト膜を使用した場合には、キシレン、アセテート等の有機溶媒、及びこれらの混合液が用いられる。
【0074】
ウエットエッチング工程において使用されるエッチング液としては、フッ硝酸と酢酸との混合液、エチレンジアミンとピロカテコールとの水溶液(EDP:Ethylene diamine+Pyrocatechol+Water)、水酸化カリウム(KOH)とイソプロピルアルコールとの混合液、ヒドラジンとイソプロピルアルコールとの混合液等が挙げられる。
【0075】
なお、薬液処理工程は、必要に応じて加熱プレート14により半導体ウエハ20を加熱しながら実施されることがある。また、薬液処理工程は、十分な洗浄効果を得ることを目的として、また、必要に応じて均等な薬液の厚さを確保することを目的として、液処理装置用基板保持プレート1をモータ13により回転させながら実施されることが好ましい。
【0076】
上記第1及び第2実施形態では、基板保持プレート1が、C/C複合材からなる基材2の表面に熱分解炭素層3が形成されたものであり、いずれも耐熱性及び耐薬品性に優れた材料であるため、液処理装置用基板保持プレート1が、加熱された場合や繰り返し薬液に晒された場合であっても、劣化することなく安定して使用することができる。
また、基材2がC/C複合材からなるものであるため、破損しにくく、高い強度を確保することができる。
【0077】
さらに、C/C複合材及び熱分解炭素層3は、いずれも導電性材料であるため、基板保持プレート1により半導体ウエハ20を高速回転させることにより、半導体ウエハ20と空気、又は半導体ウエハ20と薬液等との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができる。したがって、静電気の発生を抑制するために、半導体ウエハ20の回転速度を低速にする必要がなく、薬液処理工程を短時間で効率よく実施することができるとともに、薬液中の不純物粒子が半導体ウエハ20の表面に付着することを抑制することができる。
【0078】
<STEP2:洗浄工程>
洗浄工程とは、半導体ウエハ20の表面に対して、液供給ノズル15から溶質を含まないリンス液を供給することにより、上記STEP1において使用した薬液を除去する工程である。
洗浄工程としては、例えば、上記<3-7.現像後洗浄工程>における現像液の洗浄、上記<3-10.エッチング後洗浄工程>におけるレジストマスクの除去等が挙げられる。
洗浄工程において使用されるリンス液としては、例えば有機溶媒や超純水を使用することができる。
【0079】
なお、洗浄工程は、リンス液の除去を促進することを目的として、液処理装置用基板保持プレート1を回転させながら実施されることが好ましい。
本発明の第1及び第2実施形態では、基板保持プレート1が、C/C複合材からなる基材2の表面に熱分解炭素層3が形成されたものであり、いずれも耐熱性及び耐薬品性に優れた材料であるため、液処理装置用基板保持プレート1が、繰り返しリンス液に晒された場合であっても、劣化することなく安定して使用することができる。
また、基材2がC/C複合材からなるものであるため、破損しにくく、高い強度を確保することができる。
【0080】
さらに、C/C複合材及び熱分解炭素層3は、いずれも導電性材料であるため、半導体ウエハ20を高速回転させることにより、半導体ウエハ20と空気、又は半導体ウエハ20とリンス液等との間で摩擦が発生した場合であっても帯電しにくく、静電気の発生を抑制することができる。したがって、静電気の発生を抑制するために、半導体ウエハ20の回転速度を低速にする必要がなく、洗浄工程を短時間で効率よく実施することができる。
【0081】
<STEP3:乾燥工程>
乾燥工程とは、リンス液を完全に除去するため、又は薬液中の溶媒を蒸発させて、薬液中の成分を硬化させるために、半導体ウエハ20を加熱プレート14により加熱して、リンス液又は溶媒の蒸発を促進させる工程である。
乾燥工程としては、例えば、上記<3-4.プリベーク工程>におけるレジスト液中の溶媒の除去及びレジスト液の固化、上記<3-8.ポストベーク工程>におけるリンス液の除去、上記<3-7.現像後洗浄工程>及び<3-10.エッチング後洗浄工程>において使用されたリンス液の除去等が挙げられる。
【0082】
上記乾燥工程においては、半導体ウエハ20を保持する基板保持プレート1に対しても同様に加熱される。本発明の第1及び第2実施形態では、基板保持プレート1が、C/C複合材からなる基材2の表面に熱分解炭素層3が形成されたものであり、いずれも耐熱性及び耐薬品性に優れた材料であるため、基板保持プレート1が、繰り返し加熱された場合であっても、劣化することなく安定して使用することができる。
【0083】
なお、STEP2の洗浄工程と、STEP3の乾燥工程が連続した工程である場合は、両工程を同時に行うことができる。例えば、最初に液供給ノズル15から半導体ウエハ20の表面にリンス液を散布し、大部分の薬液を除去したのち、加熱プレート14により半導体ウエハ20の温度を上げて、リンス液を供給しながら乾燥を同時に行ってもよい。
【0084】
以上、具体的に詳述したように、上記第1及び第2実施形態に係る液処理装置用基板保持プレート及び液処理装置は、フォトリソグラフィ工程における上記STEP1の薬液処理工程、STEP2の洗浄工程及びSTEP3の乾燥工程における種々の工程に適用することができる。
また、本実施形態は、フォトリソグラフィ工程に限定されず、液処理装置用基板保持プレートを用いる種々の液処理に対して適用することができる。
【0085】
[4.液処理装置用基板保持プレートの製造方法]
次に、本実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートの製造方法について、具体的に説明する。
図6(a)~
図6(c)は、本実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートの製造方法を工程順に示す断面図である。
【0086】
<4-1.C/C複合材を形成する工程>
図6(a)に示すように、まず、基材の材料となるC/C複合材27を作製する。C/C複合材27の製造方法の一例としては、まず、炭素繊維24を複数本束ねたストランドを、縦糸及び横糸として織り込むことによりクロスを形成し、得られたクロスを複数枚積層することにより骨材25を形成する。
骨材25を形成する方法についてはこれに限定されず、抄造により骨材25を形成することもできる。
【0087】
その後、骨材25に炭素マトリックス26の前駆体をしみこませて、硬化、焼成することにより、C/C複合材27を作製することができる。
骨材25の間に炭素マトリックス26を充填する方法についてもこれに限定されず、例えば化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)により炭素を蒸着させることによっても、C/C複合材27を作製することができる。
【0088】
<4-2.C/C複合材の表面を加工する工程>
その後、
図6(b)に示すように、C/C複合材27の表面を機械により平坦に研削し、基材22を形成する。このとき、炭素繊維24の一部が切断され、基材22の表面に、炭素繊維24の切断面24aが露出する。
【0089】
<4-3.熱分解炭素層を形成する工程>
更にその後、
図6(c)に示すように、平坦に研削された基材22の表面に、熱分解炭素層23を形成する。熱分解炭素層23を形成する方法としては、例えば、基材22をCVD炉の中に置き、成膜温度まで上昇させたのち、原料ガスである炭化水素を導入する。その後、成膜温度を保持し、一定時間原料ガスを導入することで、熱分解炭素層23を基材22の表面に形成することができる。
【0090】
本実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートの製造方法によると、例えば、
図4に示す優れた効果を有する第2実施形態に係る液処理装置用基板保持プレートを製造することができる。
【符号の説明】
【0091】
1,21 基板保持プレート
2,22 基材
3,23 熱分解炭素層
4,24 炭素繊維
5,25 骨材
6,26 炭素マトリックス
10 液処理装置
13 モータ(回転機構)
14 加熱プレート(加熱機構)
15 液供給ノズル(液供給機構)
16 ウエハ搬送アーム
20 半導体ウエハ(基板)
27 C/C複合材